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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098116
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】歯科診療機器
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
A61C19/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084822
(22)【出願日】2024-05-24
(62)【分割の表示】P 2023039484の分割
【原出願日】2020-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 勇貴
(57)【要約】
【課題】非接触操作でありながら、表示された操作ボタンに対する操作に違和感がなく、従来のタッチパネルやスイッチなど操作感覚で操作を行える歯科診療機器を提供することを目的とする。
【解決手段】制御装置9は、医療診療機器10の操作を行うための操作ボタンの画像を、所定空間に表示する空間表示装置80と、所定空間に対するユーザの操作を検知するセンサ83と、所定空間に表示した操作ボタンに対してユーザの操作をセンサ83が検知した場合に、操作ボタンに応じた医療診療機器10の制御を行う制御装置9と、備える。制御装置9は、所定のイベントが発生した場合、センサ83が検知したユーザの操作を有効として医療診療機器10の制御を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科診療機器であって、
術者から診療を受ける際に患者が座るとともに仰向けにできる診療椅子と、
所定の画像を表示させるモニタと、
トレーテーブルと、
少なくとも口腔内カメラの操作を行うための操作ボタンを含む画像を表示する表示部と、前記表示部に表示された前記画像を前記トレーテーブルの所定空間に結像させる結像板と、を含む空間表示装置と、
前記画像を表示する前記所定空間に対するユーザの操作を検知する検知部と、
前記所定空間に結像された前記画像の前記操作ボタンが操作されたことを前記検知部で検知された場合に、前記所定の画像として、前記口腔内カメラによって撮影された口腔内の画像を前記モニタに表示するモニタ制御部と、を備える、歯科診療機器。
【請求項2】
フートコントローラと、
前記フートコントローラが操作された場合、前記空間表示装置により前記画像を前記所定空間に表示させる制御部と、さらに備える、請求項1に記載の歯科診療機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記フートコントローラが操作された場合と、それ以外の場合とで表示態様を変更して前記空間表示装置に前記画像を表示させる、請求項2に記載の歯科診療機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記フートコントローラが操作された場合であって所定時間内にユーザが前記操作ボタンを操作しないとき、前記検知部でのユーザの操作の検知を禁止し、ユーザに対して前記操作ボタンの操作が不可能である表示態様で前記空間表示装置に前記画像を表示させる、または前記空間表示装置の前記画像を非表示にさせる、請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の歯科診療機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記歯科診療機器の動作状況に応じて、前記検知部でのユーザの操作の検知を禁止し、ユーザに対して前記操作ボタンの操作が不可能である表示態様で前記空間表示装置に前記画像を表示させる、または前記空間表示装置の前記画像を非表示にさせる、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の歯科診療機器。
【請求項6】
前記所定空間が前記歯科診療機器の複数の位置に設けられており、
前記制御部は、前記歯科診療機器の動作状況に応じて、前記空間表示装置が表示する前記操作ボタンの前記画像の位置を変更させる、請求項2~請求項5のいずれか1項に記載の歯科診療機器。
【請求項7】
前記表示部および前記結像板は、前記トレーテーブルの内部の端部側に設けられる、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の歯科診療機器。
【請求項8】
前記表示部は、前記トレーテーブルの底面に対向して設けられ、
前記結像板は、前記画像を前記所定空間に結像できるように、前記表示部に対して所定角度回転させた位置に設けられる、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の歯科診療機器。
【請求項9】
前記結像板は、前記表示部と当接し、当接している辺を軸に、前記所定角度回転させた位置に設けられている、請求項8に記載の歯科診療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科診療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野において、術者(ユーザ)は、制御装置とケーブルなどで接続された歯科用機器(例えば、ハンドピース、スケーラ、口腔内用の三次元スキャナ、2Dハンディカメラ、根管治療器、または、LED光重合器等)を用いて患者の歯を診療する。また、術者は、患者の歯の診療中に制御装置に設けられた操作ボタンを操作することで歯科用機器の設定変更、歯科用機器の起動および停止等の操作を行うことができる。
【0003】
しかし、術者の手や指は、施術中に患者の口腔内と接触したことにより、細菌やウィルス等で汚染されている可能性がある。そのため、施術中に、術者が手や指で制御装置に設けられた操作ボタンを直接操作することは衛生面上好ましくない。
【0004】
そのため、特許文献1では、直接触れることなく制御装置に対して操作を入力することができる医療診療機器が開示されている。特許文献1の医療診療機器には、術者の操作を検知する光位相差式センサ手段が設けられており、当該光位相差式センサ手段で検知した術者の操作に基づいて、直接触れることなく装置に対して操作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5570801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の医療診療機器では、光位相差式センサ手段を採用するため、タッチパネルやスイッチなど操作とは異なるタッチレスモーション操作で歯科用機器の設定変更、歯科用機器の起動および停止等の操作を行う必要がある。そのため、術者は、従来行っているタッチパネルやスイッチなど操作とは別のタッチレスモーション操作を覚える必要があり、また当該操作に慣れるまでに時間がかかる問題があった。
【0007】
さらに、特許文献1の医療診療機器では、PC表示装置に表示された選択アイコンをタッチレスモーション操作でXYZ方向に移動させるが、PC表示装置の表示と術者の手指との間には必ず距離がある。そのため、術者が視認しているPC表示装置上の選択アイコンの位置と、タッチレスモーション操作で操作する位置との間には必ずズレが生じるので、術者がPC表示装置に表示された選択アイコン(操作ボタン)の操作に対して違和感を覚える場合があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、非接触操作でありながら、表示された操作ボタンに対する操作に違和感がなく、従来のタッチパネルやスイッチなど操作感覚で操作を行える歯科診療機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る歯科診療機器は、歯科診療機器であって、術者から診療を受ける際に患者が座るとともに仰向けにできる診療椅子と、所定の画像を表示させるモニタと、トレーテーブルと、少なくとも口腔内カメラの操作を行うための操作ボタンを含む画像を表示する表示部と、表示部に表示された画像をトレーテーブルの所定空間に結像させる結像板と、を含む空間表示装置と、画像を表示する所定空間に対するユーザの操作を検知する検知部と、所定空間に結像された画像の操作ボタンが操作されたことを検知部で検知された場合に、所定の画像として、口腔内カメラによって撮影された口腔内の画像をモニタに表示するモニタ制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る歯科診療機器では、操作ボタンの画像を表示した所定空間に対するユーザの操作を検知部で検知するので、非接触操作でありながら、ユーザが視認している操作ボタンの位置と操作する位置との間にズレがなく、ユーザが違和感なく操作ボタンを操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】医療診療機器の外観の構成を示す概略図である。
図2】医療診療機器の内部の構成を概略的に示すブロック図である。
図3】操作パネル画像の表示を説明するための図である。
図4】操作パネル画像を表示する空間表示装置の構造を説明するための図である。
図5】医療診療機器の表示処理を説明するためのフローチャートである。
図6】操作ボタンの操作が不可能である操作パネル画像の表示態様を説明するための図である。
図7】表示位置が異なる操作パネルの一例を示す図である。
図8】照明装置に表示する操作パネルを説明するための図である。
図9】診療椅子に表示する操作パネルを説明するための図である。
図10】医療診療機器の表示位置の切り替え処理を説明するためのフローチャートである。
図11】モニタの表示を説明するための図である。
図12】別の医療診療機器の操作パネル画像の表示を説明するための図である。
図13】さらに別の医療診療機器の操作パネル画像の表示を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本実施の形態においては、所定空間に操作ボタンの画像を表示する操作パネルの1つの例示的形態として、歯科診療に用いることが可能な医療診療機器の操作パネルについて説明する。なお、医療診療機器の操作パネルは、歯科に限らず、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、および獣医科など、あらゆる医科の診療にも適用することが可能である。また、診療には、診断および治療が含まれる。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、医療診療機器10の外観の構成を示す概略図である。図2は、医療診療機器10の内部の構成を概略的に示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、医療診療機器10は、診療椅子1と、フートコントローラ5と、トレーテーブル3と、制御装置9と、インスツルメントホルダ30と、スピーカ20と、モニタ6,50と、ベースンユニット2と、照明装置7とを備える。
【0016】
また、図2に示すように、医療診療機器10は、機能を発揮する機能部として、操作部12と、シート駆動部11と、パネル制御部13と、診療器具駆動部14と、モニタ制御部15,15aと、ベースン制御部16と、照明制御部17とを備える。これら各機能部は、後述する空間表示装置80(空間表示部)で表示した操作ボタンの画像(以下、操作空間に複数の操作ボタンを表示した画像を操作パネル画像8ともいう)における術者(ユーザ)の操作に基づき機能を発揮する機能部としての役割を有する。なお、これら各機能部や制御装置9は、基板上に実装されたCPU(Central Processing Unit)およびメモリ(ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)(図示は省略)などを備えたコンピュータによって構成される。
【0017】
診療椅子1は、術者から診療を受ける際に患者が座る椅子であり、患者の頭を支えるヘッドレスト1aと、患者の背中を支える背もたれ1bと、患者の尾尻を支える座面シート1cと、患者の足を支える足置き台1dとを備えている。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dは、シート駆動部11に接続されている。シート駆動部11は、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dを駆動する。
【0018】
たとえば、シート駆動部11の制御に基づき、座面シート1cを上昇させることができ(診療椅子1を上昇させるともいう)、これにより診療椅子1に座った患者を上昇させることができる。一方、シート駆動部11の制御に基づき、座面シート1cを下降させることもでき(診療椅子1を下降させるともいう)、これにより診療椅子1に座った患者を下降させることができる。また、シート駆動部11の制御に基づき、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dを、座面シート1cに対して垂直方向に移動させることができ(診療椅子1を起立させるともいう)、これにより診療椅子1に座った患者を座位姿勢にさせることができる。一方、シート駆動部11の制御に基づき、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dを、座面シート1cに対して水平方向に移動させることもでき(診療椅子1を傾斜させるともいう)、これにより診療椅子1に座った患者を仰向け姿勢にさせることができる。
【0019】
このように、シート駆動部11は、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dを駆動することによって、診療椅子1を上昇、下降、起立、および傾斜させる機能を有する。
【0020】
また、シート駆動部11は、挟み込み検知部11aを備えている。挟み込み検知部11aは、診療椅子1に接続されており、診療椅子1の駆動によって患者の衣服やコードなどの挟み込みを検知するとともに、挟み込みを検知した場合には診療椅子1の駆動を禁止する。
【0021】
フートコントローラ5は、術者などの足踏操作によって、診療椅子1を駆動させるための操作を受け付けるとともに、後述する診療器具4を駆動させるための操作を受け付ける。
【0022】
たとえば、フートコントローラ5に設けられた診療椅子駆動用のスイッチを足踏操作することにより、フートコントローラ5が備える操作部12からシート駆動部11に対して制御信号が出力され、シート駆動部11の制御によって診療椅子1が駆動する。また、フートコントローラ5に設けられた診療器具駆動用のスイッチを足踏操作することにより、操作部12から診療器具駆動部14に対して制御信号が出力され、診療器具駆動部14の制御によって診療器具4が駆動する。
【0023】
このように、操作部12は、診療椅子1および診療器具4などを駆動させるための操作を受け付ける機能を有する。
【0024】
トレーテーブル3は、診療時の物置台として用いられる。トレーテーブル3は、診療椅子1または床から延びるアーム(図示は省略)に接続されており、診療椅子1に対して手動で回動、水平移動、および垂直移動することができる。
【0025】
トレーテーブル3の底面には、制御装置9が設けられている。制御装置9には、複数の診療器具4と、空間表示装置80と、センサ83と、インスツルメントホルダ30と、スピーカ20と、モニタ6とが接続されている。制御装置9は、これら各構成を駆動させるための制御部である。
【0026】
診療器具4は、たとえば、エアータ-ビンハンドピース(ハイスピードハンドピース)、マイクロモータハンドピース(ロースピードハンドピース)、スケーラ、スリーウェイシリンジ、バキュームシリンジなど、診療に用いるインスツルメントである。なお、診療器具4は、これらに限らず、口腔内カメラ、光重合用照射器、根管長測定器、および根管拡大器などであってもよいし、鏡や注射器など、駆動しない器具であってもよい。
【0027】
本実施の形態においては、診療器具4a~4eの5種類が用いられる。診療器具4aおよび診療器具4bとしては、ハイスピードハンドピース(HS(HS1、HS2)ともいう)が用いられ、診療器具4cおよび診療器具4dとしては、ロースピードハンドピース(LS(LS1、LS2)ともいう)が用いられ、診療器具4eとしては、スケーラ(SCともいう)が用いられる。これら診療器具4は、インスツルメントホルダ30によって保持される。インスツルメントホルダ30から使用する診療器具4を取り出すと、インスツルメントホルダ30による保持が解除される。インスツルメントホルダ30によって、診療器具4の保持が解除されると、診療器具4が被選択状態となる。
【0028】
各診療器具4は、制御装置9が備える診療器具駆動部14に接続されている。診療器具駆動部14は、操作部12によって受け付けられたユーザの操作に基づき各診療器具4を駆動する。たとえば、診療器具駆動部14の制御に基づき、HS1やHS2のヘッド部に保持される切削工具が回転し、歯科治療に用いることができる。
【0029】
このように、診療器具駆動部14は、ユーザの操作に基づき診療器具4を駆動する機能を有する。
【0030】
空間表示装置80は、トレーテーブル3の所定空間に操作パネル画像8を表示する。後述するように操作パネル画像8は、トレーテーブル3の所定空間としてインスツルメントホルダ30とトレーテーブル3の上面端部との間の空間に表示される(図3参照)。しかし、図1では、空間表示装置80がOFF状態であるので、トレーテーブル3の所定空間に操作パネル画像8は表示されていない。
【0031】
操作パネル画像8は、各機能を発揮させるために操作される各操作ボタンを特定可能なアイコン等で表示してある。術者などのユーザは、操作パネル画像8に表示してある各操作ボタンの位置に手指を移動させることで、各操作ボタンを操作することができる。センサ83は、空間表示装置80で操作パネル画像8を表示する所定空間に対するユーザの操作を検知することができる。そのため、空間表示装置80で表示した操作パネル画像8の操作ボタンの位置にユーザの手指が重なると、当該位置の操作ボタンを操作したとセンサ83が検知する。
【0032】
空間表示装置80およびセンサ83は、制御装置9が備えるパネル制御部13に接続されている。パネル制御部13は、機能を発揮できる機能部に対応する操作ボタンを操作パネル画像8に表示するように空間表示装置80を制御する。さらに、パネル制御部13は、表示した操作ボタンにユーザの手指が重なったことをセンサ83が検知すると、操作された操作ボタンに対応する機能部に対して機能を発揮させる制御信号を出力する。
【0033】
このように、パネル制御部13は、機能を発揮できるか否かに応じて空間表示装置80で表示する操作パネル画像8上に操作ボタンを表示させるとともに、センサ83で検知した操作ボタンの操作に対応する機能を機能部に発揮させる機能を有する。
【0034】
インスツルメントホルダ30は、診療器具4を保持する保持部材であり、制御装置9が備える保持解除特定部18に接続されている。保持解除特定部18は、インスツルメントホルダ30によって保持されている診療器具4と、保持が解除されている診療器具4とを判定するとともに、その判定結果を特定可能な制御信号をパネル制御部13に出力する。
【0035】
スピーカ20は、所定の音声を出力する。スピーカ20は、制御装置9が備える警告音出力部19に接続されている。警告音出力部19は、パネル制御部13からの制御信号に基づき、スピーカ20を駆動して警告音を出力させる。本実施の形態において、例えば、空間表示装置80で表示した操作パネル画像8の操作ボタンを操作しても機能を発揮できない操作ボタンが操作された場合に、警告音出力部19の制御に基づき、スピーカ20から警告音が出力される。
【0036】
モニタ6は、液晶ディスプレイなどで構成され、制御装置9が備えるモニタ制御部15の制御に基づき、所定の画像を表示する。たとえば、モニタ制御部15の制御に基づき、インスツルメントホルダ30から取り出されて使用されている診療器具4や、操作パネル画像8の操作ボタンが操作されて被選択状態とされている診療器具4の駆動情報を示す画像、根管内での切削工具の先端の位置を示す画像、および口腔内カメラによって撮影された口腔内の画像などを、モニタ6に表示することができる。
【0037】
このように、モニタ制御部15は、モニタ6の画面上に所定の画像を表示させる機能を有する。
【0038】
ベースンユニット2は、診療椅子1の側部に備え付けられており、排水口が形成された鉢2aと、コップが載置されるコップ台2bと、コップに給水するための給水栓2cとを備える。ベースンユニット2は、給水栓2cからコップに給水された水を用いて患者がうがいをするための台である。また、ベースンユニット2は、ベースン制御部16を備えており、ベースン制御部16の制御に基づき医療診療機器10で用いられる水の流れを制御する。
【0039】
このように、ベースン制御部16は、医療診療機器10で用いられる水の流れを制御する機能を有する。
【0040】
さらに、ベースンユニット2は、照明制御部17を備えており、照明制御部17の制御に基づき照明装置7の照明および消灯を制御する。
【0041】
このように、照明制御部17は、照明装置7の照明および消灯を制御する機能(照明制御機能ともいう)を有する。
【0042】
また、ベースンユニット2は、モニタ制御部15aおよびモニタ50を備えている。モニタ50は、液晶ディスプレイなどで構成され、モニタ制御部15aの制御に基づき、所定の画像を表示する。たとえば、モニタ制御部15aの制御に基づき、根管内での切削工具の先端の位置を示す画像、および口腔内カメラによって撮影された口腔内の画像などを、モニタ50に表示することができる。
【0043】
このように、モニタ制御部15aは、モニタ50の画面上に所定の画像を表示させる機能を有する。
【0044】
なお、医療診療機器10は、図1に示す構成以外の構成、および図2に示す機能部以外の機能部を備えていてもよい。
【0045】
次に、空間表示装置80で表示する操作パネル画像8について詳しく説明する。図3は、操作パネル画像の表示を説明するための図である。図4は、操作パネル画像を表示する空間表示装置の構造を説明するための図である。空間表示装置80は、ミラーアレイ結像素子を用いて、トレーテーブル3の所定空間に操作パネル画像8を表示する三次元表示装置である。空間表示装置80は、図4に示すようにトレーテーブル3の内部に設けられており、ON状態になるとインスツルメントホルダ30とトレーテーブル3の上面端部との間の空間に操作パネル画像8を表示する。
【0046】
操作パネル画像8は、図3に示すように空間に浮いて表示され、アイコン等の操作ボタンが複数表示される。操作パネル画像8に表示される操作ボタンには、例えば、診療椅子1を1回の押圧操作で所定位置に移動する機能(チェアオート機能ともいう)を発揮する操作ボタン、照明装置7の点灯と消灯とを切り替える機能を発揮する操作ボタン、ロースピードハンドピース(LS)の回転数の設定範囲やスケーラ(SC)の駆動力の設定範囲を切り替える機能を発揮する操作ボタンなどがある。
【0047】
操作パネル画像8には、操作ボタン以外に、設定範囲に応じたLSの最大回転数やSCの最大駆動力を表示するデジタル表示部などが表示される。ユーザは、当該デジタル表示部を見ながら、「マイナス」の操作ボタンを操作すれば、LSの回転数やSCの駆動力を低く設定することができ、また、「プラス」操作ボタンを操作すれば、LSの回転数やSCの駆動力を高く設定することもできる。
【0048】
操作パネル画像8では、空間に浮いて表示され操作ボタンをユーザが操作するので、従来行っているタッチパネルやスイッチなど操作と同じ操作で各機能を発揮させることができる。また、タッチレスモーション操作のような新たな操作を覚える必要がなく、従来の操作パネルの操作に慣れているユーザであれば同じように操作することが可能である。
【0049】
さらに、操作パネル画像8では、空間表示装置80で表示した操作ボタンの位置にユーザの手指が重なると、当該位置の操作ボタンを操作したとセンサ83が検知する。そのため、操作ボタンを操作するときの操作ボタンの位置とユーザの手指とのズレが少なく、ユーザは、光位相差式センサ手段を採用する場合に比べ違和感なく操作ボタンを操作することができる。
【0050】
次に、所定空間に操作ボタンを表示する空間表示装置80の構成について、さらに詳しく説明する。空間表示装置80は、複数の操作ボタンを含む操作パネルの画像を表示する表示部81と、表示部81で表示された画像を所定空間で結像させる結像板82とを備えている。表示部81は、例えば、液晶ディスプレイである。しかし、これに限定されず、表示部81は、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、ブラウン管ディスプレイなど操作パネルの画像を表示することができる表示装置であればよい。
【0051】
結像板82は、ミラーアレイ結像素子であり、隙間を開けて配置した複数の第1光反射部と、第1光反射部に対して直交するように配置された複数の第2光反射部とを有している。そのため、表示部81に操作パネルの画像が表示されると、その画像の光が結像板82の第1光反射部および第2光反射部で反射され、結像板82に対し表示部81とは反対側の空間に操作パネル画像8として操作パネルの画像が結像される。
【0052】
図4に示す空間表示装置80では、トレーテーブル3の内部に設けられている。特に、表示部81は、トレーテーブル3の上面の内側に取り付けられており、トレーテーブル3の底面方向に操作パネルの画像を表示する。つまり、表示部81は、トレーテーブル3の上面と並行で、かつ表示面が底面方向となるように取り付けられている。
【0053】
結像板82は、トレーテーブル3の内部に設けられ、表示部81の一辺と当接している。結像板82は、表示部81と当接している辺を軸に、所定角度、回転させた位置に設けられている。結像板82を表示部81に対して所定角度、回転させた位置に設けた場合、表示部81の画像は、結像板82からさらに所定角度、回転させた位置に結像し操作パネル画像8として表示される。そのため、操作パネル画像8が表示される位置は、トレーテーブル3の端部より外側の空間となる。
【0054】
トレーテーブル3の端部には、さらにセンサ83が設けられている。センサ83は、空間表示装置80で操作パネル画像8を表示する所定空間に対するユーザの操作を検知する検知部である。センサ83は、例えば赤外線センサであり、操作パネル画像8を表示す空間内でのユーザの手指の位置情報を取得し、当該位置と重なる操作パネル画像8の操作ボタンの表示位置の情報とに基づいてユーザの操作を検知する。なお、センサ83は、赤外線センサに限られず、所定空間に対するユーザの操作を検知するセンサであればいずれのセンサであってもよい。
【0055】
次に、図5は、医療診療機器10の表示処理を説明するためのフローチャートである。まず、医療診療機器10の電源がON状態になると、制御装置9は、画像メモリのリセットや空間表示装置80の初期画面の表示などの表示初期処理を実行する(ステップS11)。制御装置9は、操作パネル画像8が表示されセンサ83でユーザの操作を検知可能となるまで、誤ってセンサ83でユーザの操作が検知されないようにセンサ無効処理が実行される(ステップS12)。制御装置9は、後述する操作パネル画像8の操作ボタンの操作を禁止するまでの時間をカウントするカウンタを初期化するカウンタ初期化処理を実行する(ステップS13)。
【0056】
制御装置9は、所定のイベントが発生したか否かを判断する(ステップS14)。制御装置9は、例えば、ユーザがフートコントローラ5を操作し、その制御信号が操作部12から入力されると、所定のイベントが発生した判断する。所定のイベントは、ユーザがフートコントローラ5を操作する場合に限定されず、医療診療機器10に設けた操作部のうちユーザが直接手で操作しない操作部の操作を検知した場合であればよい。ユーザが直接手で操作しない操作部には、例えば、撮像装置を設け、当該撮像装置でユーザの視線の変化、ジェスチャによる操作を受付けること、および、マイクを設け、当該マイクでユーザの音声による操作を受付けること、インスツルメントホルダ30から使用する診療器具4を取り出す操作を受付けることなどが含まれる。
【0057】
所定のイベントが発生していないと判断した場合(ステップS14でNO)、制御装置9は、処理をステップS14に戻し、所定のイベントの発生を監視する。所定のイベントが発生したと判断した場合(ステップS14でYES)、制御装置9は、空間表示装置80により所定空間に操作パネル画像8を表示する空間表示処理を行う(ステップS15)。制御装置9は、空間表示処理として、具体的には、図2に示したようにユーザに対して操作ボタンの操作が可能である表示態様で空間表示装置80に操作パネル画像8を表示させる。
【0058】
本実施の形態では、操作パネル画像8の操作ボタンを空間表示装置80により所定空間に表示し、物理的なボタンやスイッチにユーザが直接触れることなく非接触で操作可能である。しかし、操作パネル画像8の操作ボタンが空間に表示されるだけで物理的に物体が存在している訳ではないため、ユーザが誤って操作ボタンを表示した空間に入ってしまう場合が考えられる。このような場合、ユーザの意図に反して装置が誤動作してしまう。特に、医療診療機器10では、患者の安全を確保するために施術中の誤動作を防止する必要があった。そこで、本実施の形態では、操作パネル画像8の操作ボタンを操作するユーザの意図に基づく所定のイベントが発生した場合にのみ、操作ボタンの操作が可能である表示態様で操作パネル画像8を表示する。
【0059】
一方、所定のイベントが発生していない場合(所定のイベントが発生する以外の場合)、制御装置9は、ユーザに対して操作ボタンの操作が不可能である表示態様で空間表示装置80に画像を表示させる。図6は、操作ボタンの操作が不可能である操作パネル画像8の表示態様を説明するための図である。図6に示す操作パネル画像8には、操作ボタンのアイコンの代わりに、操作ボタンの操作が不可能であることを示す”Not available”の文字が表示される。なお、操作ボタンの操作が不可能である操作パネル画像8の表示態様は、図6に示す表示態様に限定されず、操作ボタンの操作が不可能である旨をユーザに報知することができれば他の表示態様でもよい。当該表示態様には、例えば、操作ボタンの操作の可能、不可能によりアイコンの色を変更する表示態様、操作ボタンの操作の可能なアイコンのみ表示し、不可能なアイコンを表示しない態様などがある。つまり、制御装置9は、所定のイベントが発生した場合と、それ以外の場合とで表示態様を変更して空間表示装置80に表示させればよい。なお、制御装置9は、所定のイベントが発生していない場合、操作パネル画像8の表示自体を行わない態様でもよい。
【0060】
制御装置9は、操作が可能である表示態様で表示した操作パネル画像8の操作ボタンに対して、ユーザの非接触操作があったか否かを判断する(ステップS16)。ここで、ユーザの非接触操作とは、空間表示装置80で表示した操作ボタンの位置にユーザの手指が重なったことをセンサ83で検知することである。ユーザの非接触操作があった場合(ステップS16でYES)、制御装置9は、ユーザの非接触操作があった操作ボタンに応じた機能を発揮させる制御を行うセンサ有効処理が実行される(ステップS17)。これにより、ユーザが、空間に表示された操作パネル画像8の操作ボタンを操作して、シート駆動部11の制御、照明制御部17の制御などを行うことができる。
【0061】
一方、ユーザの非接触操作がなかった場合(ステップS16でNO)、制御装置9は、操作ボタンの操作が可能である表示態様で操作パネル画像8を表示してから、ユーザの非接触操作が行われない期間をカウントするカウンタにおいてカウントを1増加させる(ステップS18)。ここで、カウンタは、例えば、1秒ごとにカウントを1増加させるものとする。制御装置9は、カウントが10より大きいか否かを判断する(ステップS19)。つまり、制御装置9は、ユーザの非接触操作が行われない期間が10秒間継続したか否かを判断する。
【0062】
カウントが10以下と判断した場合(ステップS19でNO)、制御装置9は、処理をステップS14に戻し、所定のイベントが発生し続けている限り、操作パネル画像8の操作ボタンに対して、ユーザの非接触操作があったか否かを判断する処理を続ける。カウントが10より大きいと判断した場合(ステップS19でYES)、制御装置9は、所定時間内にユーザが操作ボタンを操作しないと判断して、センサ83でのユーザの操作の検知を禁止し、ユーザに対して操作ボタンの操作が不可能である表示態様で空間表示装置80に操作パネル画像8を表示させる(ステップS20)。操作ボタンの操作が不可能である表示態様は、例えば、図6で示した態様である。制御装置9は、操作ボタンの操作が不可能である表示態様で操作パネル画像8を表示させる以外に、空間表示装置80での操作パネル画像8の画像自体を非表示してもよい。
【0063】
ステップS17およびステップS20の後、制御装置9は、表示処理の終了を受け付けたか否かを判断する(ステップS21)。表示処理の終了を受け付けた場合(ステップS21でYES)、制御装置9は、表示処理を終了する。一方、表示処理の終了を受け付けていない場合(ステップS21でNO)、制御装置9は、処理をステップS13に戻す。
【0064】
前述の実施の形態では、操作パネル画像8は、図3に示すようにインスツルメントホルダ30とトレーテーブル3の上面端部との間の空間に表示されると説明した。しかし、トレーテーブル3に表示する操作パネル画像8の表示位置は、インスツルメントホルダ30とトレーテーブル3の上面端部との間の空間に限定されない。図7は、表示位置が異なる操作パネルの一例を示す図である。図7(a)は、トレーテーブル3の上面の位置で、かつトレーテーブル3の端部の位置に操作パネル画像8を表示する。図7(b)は、トレーテーブル3の上面の位置で、かつトレーテーブル3の中央の位置に操作パネル画像8を表示する。
【0065】
このように、実施の形態1に係る医療診療機器10を制御する制御装置は、医療診療機器10の操作を行うための操作ボタンの画像を、所定空間に表示する空間表示装置80と、所定空間に対するユーザの操作を検知するセンサ83と、所定空間に表示した操作ボタンに対してユーザの操作をセンサ83が検知した場合に、操作ボタンに応じた医療診療機器10の制御を行う制御装置9と、備える。制御装置9は、所定のイベントが発生した場合、センサ83が検知したユーザの操作を有効として医療診療機器10の制御を行う。
【0066】
このように構成することで、実施の形態1に係る制御装置9は、所定空間に対するユーザの操作をセンサ83で検知するので、非接触操作でありながら、ユーザが視認している操作ボタンの位置と操作する位置との間にズレがなく、ユーザが違和感なく操作ボタンを操作することができる。また、制御装置9は、所定のイベントが発生した場合にのみセンサ83が検知したユーザの操作を有効とするので、誤って操作ボタンを操作することを防止できる。
【0067】
医療診療機器10は、歯科診療機器であってもよい。また、歯科診療機器と、上記の制御装置9と、を備える、歯科診療システムであってもよい。
【0068】
医療診療機器10の操作を行うための操作ボタンの画像を、所定空間に表示する空間表示装置80と、所定空間に対するユーザの操作を検知するセンサ83と、所定空間に表示した操作ボタンに対してユーザの操作をセンサ83が検知した場合に、当該操作ボタンに応じた医療診療機器10の制御を行う制御装置9と、備える医療診療機器10を制御する制御方法である。制御装置9で、所定のイベントが発生した場合か否かを判断するステップと、所定のイベントが発生していると判断した場合、センサ83が検知したユーザの操作を有効として医療診療機器の制御を行うステップと、を含む。このように構成することで、実施の形態1に係る制御方法は、所定のイベントが発生した場合にのみセンサ83が検知したユーザの操作を有効とするので、誤って操作ボタンを操作することを防止できる。
【0069】
制御装置9は、所定のイベントが発生した場合と、それ以外の場合とで表示態様を変更して空間表示装置80に操作パネル画像8を表示させてもよい。これにより、ユーザは、操作パネル画像8での操作が有効か無効かを容易に判断することができる。
【0070】
制御装置9は、所定のイベントが発生した場合、ユーザに対して操作ボタンの操作が可能である表示態様で空間表示装置80に操作パネル画像8を表示させ、それ以外の場合、ユーザに対して操作ボタンの操作が不可能である表示態様で空間表示装置80に操作パネル画像8を表示させてもよい。これにより、ユーザは、操作パネル画像8の操作ボタンの操作が可能か、不可能かを容易に判断することができる。
【0071】
制御装置9は、所定のイベントが発生した場合であって所定時間(例えば、10秒)内にユーザが操作ボタンを操作しないとき、センサ83でのユーザの操作の検知を禁止し、ユーザに対して操作ボタンの操作が不可能である表示態様で空間表示装置80に操作パネル画像8を表示させる、または空間表示装置80の操作パネル画像8を非表示にさせてもよい。これにより、制御装置9は、ユーザが誤って操作ボタンを操作して、ユーザが望まない機能を発揮されてしまうこと防止できる。
【0072】
所定のイベントが発生した場合とは、医療診療機器10に設けた操作部のうちユーザが直接手で操作しない操作部の操作を検知した場合であってもよい。ユーザが直接手で操作しない操作部には、例えば、少なくとも、ユーザの足による操作を受付ける操作部、ユーザのジェスチャによる操作を受付ける操作部、および、ユーザの音声による操作を受付ける操作部などを含む。
【0073】
(実施の形態2)
実施の形態1では、トレーテーブル3に操作パネル画像8を表示する医療診療機器10について説明した。しかし、ユーザが施術中に、トレーテーブルよりも操作しやすい位置に操作パネルを表示させたい場合がある。そこで、実施の形態2では、操作パネル画像8を表示する位置を変更すことができる医療診療機器について説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1で説明した医療診療機器10の構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0074】
実施の形態2に係る医療診療機器では、トレーテーブル3に空間表示装置80が設けられているだけでなく、照明装置7および診療椅子1にも空間表示装置80が設けられているものとする。図8は、照明装置7に表示する操作パネル画像8を説明するための図である。図8に示す照明装置7には、空間表示装置80と撮像装置90とが設けられている。図8(a)では、照明装置7の下側部分に空間表示装置80が設けられているので、操作パネル画像8が照明装置7の下側部分に表示される。図8(b)では、照明装置7の上側部分に空間表示装置80が設けられているので、操作パネル画像8が照明装置7の上側部分に表示される。図8に示す照明装置7では、空間表示装置80の近くに設けた撮像装置90でユーザの視線を監視し、照明装置7の方向にユーザの視線が向けられたと判断した場合に操作パネル画像8を表示する。ここで、撮像装置90は、ユーザの視線方向を検知する視線検知部として動作している。なお、図示していないが、空間表示装置80には、センサが設けられており、操作パネル画像8に対するユーザの操作を検知することができる。また、照明装置7に表示される操作パネル画像8に含まれる操作ボタンの種類は、トレーテーブル3に表示される操作パネル画像8に含まれる操作ボタンの種類と同じではなく、照明装置7に必要な操作ボタンに限定される。
【0075】
また、図9は、診療椅子1に表示する操作パネル画像8を説明するための図である。図9に示す診療椅子1には、背もたれ1bに空間表示装置80と撮像装置90とが設けられている。図9では、ヘッドレスト1aを挟んで背もたれ1bの両側に空間表示装置80がそれぞれ設けられ、それぞれの側で操作パネル画像8が表示されている。撮像装置90は、一方の側に設けられているが、両方に設けてもよい。また、空間表示装置80は、背もたれ1bのいずれか一方の側に設けられる構成でもよい。図9に示す診療椅子1では、空間表示装置80の近くに設けた撮像装置90でユーザの視線を監視し、背もたれ1bの方向にユーザの視線が向けられたと判断した場合に操作パネル画像8を表示する。つまり、ユーザがヘッドレスト1aにある患者の口腔を診ているときは背もたれ1bの操作パネル画像8は表示されず、ユーザが視線を患者の口腔から背もたれ1bの方向に向けると背もたれ1bの操作パネル画像8が表示される。なお、図示していないが、空間表示装置80には、センサが設けられており、操作パネル画像8に対するユーザの操作を検知することができる。また、診療椅子1に表示される操作パネル画像8に含まれる操作ボタンの種類は、トレーテーブル3に表示される操作パネル画像8に含まれる操作ボタンの種類と同じではなく、診療椅子1に必要な操作ボタンに限定される。
【0076】
実施の形態2に係る医療診療機器10では、図示していないが、トレーテーブル3にも、空間表示装置80と撮像装置90とが設けられている。そのため、トレーテーブル3では、空間表示装置80の近くに設けた撮像装置90でユーザの視線を監視し、トレーテーブル3の方向にユーザの視線が向けられたと判断した場合に操作パネル画像8を表示する。
【0077】
次に、制御装置9が、医療診療機器10の複数の位置に設けられた空間表示装置80を切り替えて操作パネル画像8を表示させる処理について説明する。図10は、医療診療機器10の表示位置の切り替え処理を説明するためのフローチャートである。まず、制御装置9は、医療診療機器10の複数の位置に設けられた空間表示装置80のいずれか1つが操作パネル画像8を所定空間に表示中か否かを判断する(ステップS31)。操作パネル画像8を所定空間に表示中でない場合(ステップS31でNO)、制御装置9は、処理をステップS31に戻す。一方、操作パネル画像8を所定空間に表示中の場合(ステップS31でYES)、制御装置9は、医療診療機器10が動作中か否かを判断する(ステップS32)。医療診療機器10が動作中でない場合(ステップS32でNO)、制御装置9は、処理をステップS31に戻す。
【0078】
医療診療機器10が動作中の場合(ステップS32でYES)、制御装置9は、医療診療機器10の動作状況に応じて操作パネル画像8に表示されている操作ボタンの操作を禁止する必要があるか否かを判断する(ステップS33)。医療診療機器10では、例えば、ユーザがフートコントローラ5を操作してハイスピードハンドピースである診療器具4を駆動しているときに、誤って操作ボタンを操作して診療椅子1を移動させてしまうことを禁止する必要がある。そのため、操作ボタンの操作を禁止する必要があると判断した場合(ステップS33で、YES)、制御装置9は、誤ってセンサ83でユーザの操作を検知しないようにセンサ無効処理が実行される(ステップS34)。
【0079】
制御装置9は、ステップS34でセンサ無効処理を実行した後、操作ボタンの操作を禁止する情報をユーザに報知するため、操作禁止の表示を操作パネル画像8として表示する(ステップS35)。例えば、図6に示す操作パネル画像8のように、操作ボタンの操作が不可能であることを示す”Not available”の文字が表示される。
【0080】
ステップS3に戻って、操作ボタンの操作を禁止する必要がないと判断した場合(ステップS33で、NO)、制御装置9は、操作パネル画像8の表示位置を変更する必要があるか否かを判断する(ステップS36)。操作パネル画像8の表示位置を変更する必要がない場合(ステップS36でNO)、制御装置9は、処理をステップS31に戻す。一方、操作パネル画像8の表示位置を変更する必要がある場合(ステップS36でYES)、制御装置9は、所定空間に表示している操作パネル画像8の表示位置を変更する(ステップS37)。
【0081】
前述したように、医療診療機器10が、例えば診療椅子1、トレーテーブル3、および照明装置7のそれぞれに空間表示装置80および撮像装置90を備えている場合、撮像装置90でユーザの視線を検知し、ユーザの視線が向けられた装置に設けられた空間表示装置80で操作パネル画像8を表示する。そのため、ステップS36では、制御装置9が各々の装置に設けられた撮像装置90からの信号に基づき、操作パネル画像8の表示位置を変更する必要があるか否かを判断する。
【0082】
なお、操作パネル画像8の表示位置を変更する必要性は、ユーザの視線の向きに限定されず、医療診療機器10の動作状況、ユーザの操作などで判断してもよい。例えば、制御装置9は、診療椅子1が動作中の場合、患者の近くで操作パネル画像8を操作できるようにトレーテーブル3から図9に示す背もたれ1bに操作パネル画像8の表示を切り替える。また、制御装置9は、ユーザの指示に従い操作パネル画像8の表示位置を切り替える場合として、例えば、フートコントローラ5の表示切替ボタンが操作されると、操作パネル画像8の表示位置を切り替える。
【0083】
このように、実施の形態2に係る医療診療機器10を制御する制御装置9は、医療診療機器10の動作状況に応じて、センサ83でのユーザの操作の検知を禁止し、ユーザに対して操作ボタンの操作が不可能である表示態様で空間表示装置80に操作パネル画像8を表示させる、または空間表示装置80の操作パネル画像8を非表示にさせる。これにより、ユーザが、医療診療機器10の動作状況に応じて禁止されている操作を誤って行うことを防止することができる。
【0084】
所定空間が医療診療機器10の複数の位置に設けられており、制御装置9は、医療診療機器10の動作状況に応じて、空間表示装置80が表示する操作パネル画像8の位置を変更させてもよい。これにより、医療診療機器10の動作状況に応じて、ユーザが操作する必要な操作ボタンを適切な位置に表示することができる。
【0085】
ユーザの視線方向を検知する撮像装置90をさらに備え、制御装置9は、撮像装置90でユーザの視線が所定空間に向けられていると判断した場合、空間表示装置80を用いて所定空間に操作パネル画像8を表示させてもよい。これにより、ユーザの視線方向に操作パネル画像8を表示させることができる。
【0086】
なお、実施の形態2に係る医療診療機器10では、トレーテーブル3の操作パネル画像8から背もたれ1bの操作パネル画像8に表示を切り替える一例を説明したが、これに限定されない。制御装置9は、トレーテーブル3の操作パネル画像8を常に表示させ、他の装置の操作パネル画像8を必要に応じて切り替えて表示するように制御してもよい。もちろん、医療診療機器10は、各々の装置に設けた空間表示装置80のそれぞれが常に操作パネル画像8を表示する構成であってもよい。
【0087】
(変形例)
前述の実施の形態では、診療椅子1、トレーテーブル3、および照明装置7を備える医療診療機器10で空間表示装置80により操作パネル画像8を表示する構成について説明したが、当該医療診療機器10にはモニタ6,50のように表示装置が設けられる場合がある。この表示装置に対して空間表示装置を適用してもよい。図11は、モニタの表示を説明するための図である。図11(a)にはトレーテーブル3に設けられたモニタ6が図示されている。このモニタ6に対して空間表示装置の構成を適用してモニタ6の本来の表示位置より手前の空間に表示画像8aを表示させてもよい。図11(b)にはベースンユニット2に設けられたモニタ50が図示されている。このモニタ50に対して空間表示装置の構成を適用してモニタ50の本来の表示位置より手前の空間に表示画像8bを表示させてもよい。
【0088】
また、前述の実施の形態では、診療椅子1、トレーテーブル3、ベースンユニット2、照明装置7などを備える医療診療機器10について説明したが、医療診療機器10はこれに限定されない。例えば、X線CT装置やレーザ治療装置などの医療診療機器の操作パネルに対して空間表示装置の構成を適用してもよい。図12は、別の医療診療機器の操作パネル画像の表示を説明するための図である。図12に示す医療診療機器は、X線CT装置200である。X線CT装置200では、操作部に空間表示装置の構成を適用して本来の表示位置より手前の空間に操作パネル画像8cを表示している。さらに、図13は、さらに別の医療診療機器の操作パネル画像の表示を説明するための図である。図13に示す医療診療機器は、レーザ治療装置300である。レーザ治療装置300では、操作部に空間表示装置の構成を適用して本来の表示位置より手前の空間に操作パネル画像8dを表示している。
【0089】
前述の実施の形態では、ミラーアレイ結像素子を用いて、所定空間に操作パネル画像8を表示する空間表示装置80について説明し、当該空間表示装置80が表示部81と、結像板82とを含む構成であると説明した。しかし、これに限定されず、空間表示装置80は、所定空間に操作パネル画像8の表示を行う三次元表示装置であれば他の方式の表示装置でもよい。他の方式には、例えば、多くの微小レンズを並べたレンズアレイを用いて所定空間に操作パネル画像8の表示する方式、視差画像を利用して所定空間に操作パネル画像8の表示する方式、インテグラルフォトグラフィー等の光線再生を利用して所定空間に操作パネル画像8の表示する方式、走査により三次元的に光点を配置して所定空間に操作パネル画像8の表示する方式などがある。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 診療椅子、2 ベースンユニット、3 トレーテーブル、4 診療器具、5 フートコントローラ、9 制御装置、10 医療診療機器、11 シート駆動部、12 操作部、13 パネル制御部、14 診療器具駆動部、15 モニタ制御部、16 ベースン制御部、17 照明制御部、18 保持解除特定部、19 警告音出力部、20 スピーカ、30 インスツルメントホルダ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13