(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098118
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電子レンジ用通蒸型パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
B65D81/34 V
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085052
(22)【出願日】2024-05-24
(62)【分割の表示】P 2019108510の分割
【原出願日】2019-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森田 佐保
(57)【要約】
【課題】開封部を手などで直線的にかつ美麗に引き裂くことができ、容易に内容物を取り出すことができる通蒸型パウチを提供する。
【解決手段】胴部材シートと、底面に折り込まれる底部材シートとからなり、胴部材シートの左側面と右側面と底面および、底部材シートとの周縁部をシールしてシール部とし、さらに内容物を充填した後に、胴部材シートの上面を密封シールすることにより、内容物を収容する収容空間を有し、左右側面のシール部の少なくとも一方に、加熱時に収容空間内の蒸気を逃がすための通蒸部と、通蒸部の底面側または上面側に底面とほぼ平行な開封部とを備え、胴部材シートがポリアミドを含まない材料によって構成され、底部材シートが透明蒸着フィルムと、ポリアミドフィルムと、無延伸ポリプロピレンフィルムとを備える、電子レンジ用通蒸型パウチである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部材シートと、底面に折り込まれる底部材シートと、からなり、
前記胴部材シートの左側面と右側面と底面および、前記底部材シートとの周縁部をシールしてシール部とし、さらに内容物を充填した後に、前記胴部材シートの上面を密封シールすることにより、内容物を収容する収容空間を有し、
左右側面のシール部の少なくとも一方に、加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための通蒸部と、前記通蒸部の底面側に底面とほぼ平行な開封部と、を備える電子レンジ用通蒸型パウチであって、
前記開封部が、前記左側面のシール部右端から前記右側面のシール部左端まで前記胴部材シートの切り取りをガイドするガイド部を備え、
前記ガイド部が、前記通蒸部と前記底部材シートの間に設けられており、
前記胴部材シートと底部材シートはそれぞれ最外層、および、シーラント層を少なくとも含む積層体からなり、
前記胴部材シートがポリアミドを含まない材料によって構成され、
前記底部材シートが透明蒸着フィルムと、ポリアミドフィルムと、無延伸ポリプロピレンフィルムとを含む、電子レンジ用通蒸型パウチ。
【請求項2】
前記透明蒸着フィルムが前記最外層であり、前記無延伸ポリプロピレンフィルムが前記シーラント層であり、前記透明蒸着フィルムと前記無延伸ポリプロピレンフィルムとの間に前記ポリアミドフィルムが配置されている、請求項1に記載の電子レンジ用通蒸型パウチ。
【請求項3】
前記胴部材シートが、前記最外層と前記シーラント層との間に積層され且つポリアミドを含まない材料によって構成される中間層をさらに含む、請求項1または2に記載の電子レンジ用通蒸型パウチ。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記中間層に形成された複数の切込を含む、請求項3に記載の電子レンジ用通蒸型パウチ。
【請求項5】
前記開封部が前記左右側面のシール部の少なくとも一方にノッチを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子レンジ用通蒸型パウチ。
【請求項6】
前記通蒸部が前記右側面のシール部の一部によって構成されており且つ当該電子レンジ用通蒸型パウチの外側から内側に凹む形状を有し、
前記右側面のシール部右端が当該電子レンジ用通蒸型パウチの右端の一部を構成している、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子レンジ用通蒸型パウチ。
【請求項7】
前記通蒸部が前記左側面のシール部の一部によって構成されており且つ当該電子レンジ用通蒸型パウチの外側から内側に凹む形状を有し、
前記左側面のシール部左端が当該電子レンジ用通蒸型パウチの左端の一部を構成している、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子レンジ用通蒸型パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封部を手などで容易に引き裂くことができ、また開封後に喫食用の容器としても使用できる通蒸型パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレトルト食品や冷凍食品などの、加熱される内容物を収容する電子レンジ用パウチが広く利用されている。このパウチを電子レンジ内で加熱すると、加熱に伴って内容物に含まれる水分が蒸発してパウチ内の圧力が高まっていく。パウチ内の圧力が高まると、パウチが破袋して内容物が飛散し電子レンジ内を汚してしまう恐れがある。そこで、加熱に伴い高まったパウチ内の圧力を外部に逃がすべく、蒸気抜き機構を備えた通蒸型パウチが知られている。
【0003】
通蒸型パウチは、内容物を収容可能な収容空間が形成されるようにシールされたシート、および、収容空間の圧力の上昇にともない開口するようにシートの一部がシールされた通蒸部を含む。加熱によって、収容空間の圧力がある程度まで上昇した場合、通蒸部を構成するシールが剥離し、収容空間と外部の空間とを連通する通路が通蒸部に形成される。このため、収容空間の水分が通蒸部に形成された通路を通過してパウチの外部に排出され、収容空間の圧力の上昇が抑えられる。
【0004】
特許文献1は、従来の通蒸型パウチの一例である電子レンジ用パウチを開示している。この電子レンジ用パウチは、特許文献1に示されるように、積層シートを備える。積層シートは、基材層、印刷層、他の層、およびシーラント層を含む。内容物を収容した電子レンジ用パウチの加熱手段による加熱が終了した場合、開封部から積層シートが引き裂かれ、収容空間から内容物が取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の電子レンジ用パウチでは、手などで開封部から積層シートを引き裂こうとすると、引き裂いている途中で最内層のシーラント層が延びて、直線的に引き裂けなかったり、引き裂きか所に羽毛立ちが生じたり波状の変形が生じたりすることによって、十分な開口が得られず、開封部から容易に内容物を取り出すことができなくなる問題があった。
【0007】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、通蒸型パウチであって、開封部を手などで直線的にかつ美麗に引き裂くことができ、容易に内容物を取り出すことができる通蒸型パウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通蒸型パウチは、胴部材シートと、底面に折り込まれる底部材シートと、からなり、
左側面と右側面と底面との周縁部をシールし、さらに内容物を充填した後に上面を密封シールすることにより、内容物を収容する収容空間を有し、
左右側面のシール部の少なくとも一方に、加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすため
の通蒸部と、前記通蒸部の底面側または上面側に底面とほぼ平行な開封部と、を備える通蒸型パウチであって、
前記胴部材シートと底部材シートはそれぞれ最外層、および、シーラント層を少なくとも含み、
前記胴部材シートは、ポリアミドを含まない材料によって構成され、前記底部材シートは、ポリアミドを含む材料によって構成される。
【0009】
内容物が収容空間に収容された状態で、通蒸型パウチが加熱された場合、収容空間の圧力の上昇にともない収容空間と外部の空間とを連通する通路が通蒸部に形成される。このため、収容空間の水蒸気が通蒸部に形成された通路を通過して通蒸型パウチの外部に排出され、収容空間の圧力の上昇が抑えられる。また、ポリアミドは耐衝撃性に優れているので、引っ張っても引き裂かれない。従って、易引き裂き性が必要な胴部材シートには適さないが、底部材シートに用いると、適度な腰をもち、底開き性を有するため、容器としての充填適性が確保できる。
【0010】
また、本発明は、前記胴部材シートと底部材シートの両方、または、少なくとも一方が、前記最外層と前記シーラント層との間に積層される中間層をさらに含んでもよい。このため、通蒸型パウチの強度が高められる。
【0011】
また、本発明において、前記中間層は、耐熱性と、幅方向の易引き裂き性に優れた材料によって構成されていてもよい。この場合、シートを容易に引き裂くことができる。このため、シートが引き裂かれた部分から内容物を容易に取り出すことができる。
【0012】
また、本発明において、前記開封部が、前記左右側面のシール部の少なくとも一方にノッチを有し、かつ、左側面シール部右端から右側面シール部左端まで、シートの切り取りをガイドするガイド部をさらに備えてもよい。上記通蒸型パウチによれば、前記ノッチを引き裂きの開始点とし、前記ガイド部に沿ってシートを容易に引き裂くことができる。このため、シートが引き裂かれた部分から内容物を容易に取り出すことができる。
【0013】
また、本発明において、前記ガイド部は、前記中間層に設けられる切取線を含んでもよい。上記通蒸型パウチによれば、前記中間層を備える場合であっても、シートを容易に引き裂くことができる。このため、シートが引き裂かれた部分から内容物を容易に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に関する通蒸型パウチによれば、開封部を手などで直線的にかつ美麗に引き裂くことができ、容易に内容物を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の一例を示す通蒸型パウチの正面図。
【
図2】胴部材シートおよび底部材シートの層構成を示す断面図。
【
図3】開口した状態の通蒸部およびその周辺の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、加熱に適した内容物15の収容、および、内容物15から発生した蒸気の排出が可能な通蒸型パウチ10の一例を示している。内容物15は加熱されることによって、水蒸気を発生する被加熱物である。内容物15の一例は食品である。食品の一例は、シチューおよびスープなどのように流動性を有する食品である。通蒸型パウチ10は内容物15の品質を保ちながら長期間保存できるように構成されている。通蒸型パウチ10が取り得る形状の例は、スタンディングタイプ、ガゼットタイプなどの自立型である。
図1に例示される通蒸型パウチ10の形状はスタンディングタイプである。以下では、通蒸型パウチ10の正面視における通蒸型パウチ10の左右方向を標準幅方向と称し、標準幅方向と直交する方向を標準高さ方向と称する。
【0017】
通蒸型パウチ10は、胴部材シート20、底部材シート23、上面シール部31、底面シール部32、右側面シール部33、左側面シール部34、開封部50、通蒸部60を含む。胴部材シート20は、正面シート21、背面シート22からなる。正面シート21および背面シート22は、内容物15を収容する収容空間11が各シート21、22の間に形成されるように対向している。底部材シート23は、周辺を折り込まれて正面シート21の底部と背面シート22の底部との間を閉じるようにシールされる。
【0018】
胴部材シート20(21、22)および底部材シート23は、複数の層が積層された層構造を備えている。
図2(a)は胴部材シート、
図2(b)は底部材シートの層構成を示す断面図である。胴部材シート20(21、22)は最外層20A、中間層20B、シーラント層20C、第1接着層20D、および、第2接着層20Eを含む。同様に底部材シート23は最外層23A、中間層23B、シーラント層23C、第1接着層23D、および、第2接着層23Eを含む。各シート21~23の製造方法の一例はドライラミネートである。各シート21~23の第1接着層は最外層と中間層の間に設けられ、第2接着層は中間層とシーラント層の間に設けられている。
【0019】
胴部材シート20(21、22)の最外層20Aは主にガス遮断性、印刷適正、および、耐熱性に優れる。最外層20Aは例えば透明蒸着層である。最外層20Aを構成する材料の一例は無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレート(以下では、「蒸着PET」という)である。中間層20Bは主に耐熱性および防湿性に優れる。中間層20Bを構成する材料は、例えば胴部材シート20の幅方向に易引き裂き性を有するポリエチレンテレフタレート(以下では、「易カット性PET」という)である。以下では、各シート21、22を構成する材料の配向方向をMD(Machine Direction)方向と称し、MD方向と直交する方向をTD(Transverse Direction)方向と称する。各シート21、22のMD方向は、標準幅方向に沿う方向である。各シート21、22のTD方向は標準高さ方向に沿う方向である。第1接着層20Dを構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。第2接着層20Eを構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。
【0020】
底部材シート23に関しては、最外層23Aは胴部材シート20の最外層20Aと同様の材料で構成されるが、中間層23Bの材料の一例は易カット性がない無延伸のナイロンである。
【0021】
胴部材シート20のシーラント層20Cは、耐熱性、ヒートシール性、および耐衝撃性に優れる。シーラント層20Cを構成する材料の一例は無延伸ポリプロピレン(以下では、「CPP」という)である。
【0022】
MD方向の引き裂き性に優れるとは、例えば、JIS規格のK7128-1に規定されるトラウザー引裂法に準拠する引裂き力が1.2N以下の場合をいう。トラウザー引裂法では、TD方向の長さが50mm、MD方向の長さが150mmの長方形の試験片の中央に75mmの切り込みを入れ、23℃の恒温室内において、速度200mm/分でMD方向への引裂き力を測定した。
【0023】
底部材シート23のシーラント層23Cは、耐熱性、ヒートシール性、および柔軟性に優れ、底開き適性を有する。また無延伸フィルムであり、引っ張ると伸びる特性を有し、易カット性はない。
【0024】
図1に示される各シール部31~34は、各シート21~23が分離しないように各シート21~23を接合している。シール部31~34を形成する方法の一例はヒートシールである。正面視における通蒸型パウチ10の外郭形状は任意に選択できる。
図1に示される例では、通蒸型パウチの外郭形状は長方形である。
【0025】
開封部50は、左右側面のシール部の少なくとも一方にノッチ51を有する。また、標準高さ方向においてノッチ51と同じ高さで、左側面シール部右端から右側面シール部左端まで、胴部材シート20の切り取りをガイドするガイド部52を胴部材シート20上に備えるのが望ましい。開封部50(ノッチ51、ガイド部52)は、標準高さ方向において、設けられる位置は任意に選択できる。
図1に示される一例では、開封部50は、標準高さ方向において、通蒸部60と底部材シート23との間に設けられる。好ましい例では、標準高さ方向において、底部材シート23よりも通蒸部60に近い位置に設けられる。また別の例では、開封部50は、標準高さ方向において、通蒸部60と上面シール部31との間に設けられる。
【0026】
ガイド部52は、胴部材シート20上に形成されたミシン目の集合であり、胴部材シート20のMD方向に沿うように形成されている。ノッチ51は、ノッチ51の先端部がガイド部52を延長した仮想線上に位置するように、右側面シール部33および左側面シール部34の少なくとも一方に形成される。
図1では、左側面シール部34にノッチ51が形成された例を示している。
【0027】
ガイド部52が形成された開封部50は、ガイド部52が形成されていない胴部材シート20の他の部分よりも引裂強度が低い。このため、開封部50に対してガイド部52に沿う方向に力が加えられた場合、胴部材シート20がガイド部52に沿って容易に引き裂かれる。ガイド部52は標準幅方向において不連続に形成された複数の切込52Aを含む。ガイド部52を形成する手段は例えばミシン目加工機である。
【0028】
切込52Aの形状としては、直線状、曲線状、ミシン目線状、破線状などのいずれでもよく、その本数は、標準高さ方向において一本ないしそれ以上でよく、本発明では切込52A部分が弱体化して開封部50の切れ目として作用すればよい。
【0029】
好ましい例では、切込52Aは胴部材シート20を構成する最外層20A、中間層20B、および、シーラント層20Cの3層の全部を貫通せず、かつ、3層のうちの1層または2層に形成される。切込52Aが胴部材シート20の3層を貫通していないため、収容空間11に収容された内容物15がガイド部52から外部に通過することがない。本実施形態では、切込52Aは胴部材シート20のうちの中間層20Bのみを貫通するように設けられる。
【0030】
通蒸型パウチ10は、内容物15を加熱するために加熱手段によって加熱される。加熱手段の一例は電子レンジである。通蒸型パウチ10が加熱されることにともない内容物15から水蒸気が発生する。水蒸気の発生にともない収容空間11の圧力が上昇する。通蒸部60は収容空間11の圧力の上昇にともない開口し、収容空間11の水蒸気を通蒸型パウチ10の外部に排出できるように構成されている。好ましい例では、通蒸部60は収容空間11の圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合に開口するように構成される。
【0031】
通蒸部60は種々の形態を取り得る。一例では、通蒸部60は右側面シール部33および左側面シール部34の少なくとも一方に設けられる。別の例では、通蒸部60は右側面シール部33および左側面シール部34とは独立して、シール部の内側に設けられる。
図1では、右側面シール部33だけに設けられた例を示している。
【0032】
通蒸部60の形状は、標準幅方向の外側から内側に凹む形状である。通蒸部60における標準幅方向の最も内側の部分である先端部61は、胴部材シート20のうちの収容空間11の圧力が上昇した場合に強い応力集中が生じる場所に設けられている。収容空間11の圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合に開口する。
【0033】
具体的には、収容空間11の圧力の上昇にともない通蒸部60の先端部61において接合されている正面シート21と背面シート22とが剥離し、
図3に示されるように収容空間11と通蒸型パウチ10の外部とを連通する蒸気抜き通路62が通蒸部60に形成される。通蒸部60が剥離する範囲は収容空間11の圧力の大きさに応じて異なる。収容空間11の圧力が高い場合、通蒸部60の根元の部分まで剥離が進行する場合もある。蒸気抜き通路62の通路面積は通蒸部60の剥離が進行するにつれて広くなる。通蒸部60が開口した場合、収容空間11の水蒸気が蒸気抜き通路62を通過して通蒸型パウチ10の外部に排出される。水蒸気が排出されることにより、収容空間11の圧力の上昇が抑えられ、通蒸型パウチ10の破袋が回避される。
【0034】
図4は、調理後に開封部50が開封された、通蒸型パウチ10を示している。開封部50を開封する場合、ノッチ51の先端部から胴部材シート20が引き裂かれ、胴部材シート20の引き裂きがガイド部52に沿って進行するように胴部材シート20に力がかけられ、開封部50の全体が開封される。ユーザーは、開封部50から開封された、通蒸型パウチ10を器として利用し、内容物15を食すことができる。
【実施例0035】
実施例および比較例の試料を用いて、胴部材シート20および底部材シート23の層構成と、引き裂き性、底開き性の関係を確認する試験を実施した。試料は、レトルト用パウチで、内容物はカレーである。試料を600Wの電子レンジで1分間加熱調理後、胴部材シート20を引き裂いた時の引き裂き性(以下では「カット性」という)と底開き性を、5段階の採点法で官能評価した。「5:良い>4:ややよい>3:ふつう>2:ややわるい>1:わるい」とする。表1は試料の層構成およびカット性、底開き性の採点結果を示す。
【0036】
なお、表1に示される材料に関する用語の意味は以下のとおりである。
【0037】
<透明蒸着PET12>
酸化アルミニウムをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)に蒸着した透明蒸着フィルム。
<易カット性PET12>
MD方向の引き裂き性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)で、開封部にミシン目加工が施されていない。MD方向の引き裂き性に優れるとは、例えば、JIS規格のK7128-1に規定されるトラウザー引裂法に準拠する引裂き力が1.2N以下の場合をいう。
<易カット性Ny15>
MD方向の引き裂き性に優れたポリアミドフィルム(厚み15μm)で、開封部にミシン目加工が施されていない。
<PET12>
MD方向の引き裂き性に優れないポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)で、開封部にミシン目加工が施されていない。MD方向の引き裂き性に優れないとは、例えば、JIS規格のK7128-1に規定されるトラウザー引裂法に準拠する引裂き力が1.2N超の場合をいう。
<PET12(ミシン目加工)>
MD方向の引き裂き性に優れないポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)で、開封部にミシン目加工が施されている。
<CPP60>
MD方向の引き裂き性に優れない無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み60μm)。
<Ny15>
MD方向の引き裂き性に優れないポリアミドフィルム(厚み15μm)で、開封部にミシン目加工が施されていない。
【0038】
【0039】
表1を見てわかるように、胴部材シートにポリアミドフィルムが用いられず、易カット性の材料で構成されるか、または開封部にミシン目加工が施され、かつ、底部材シートがポリアミドで構成されるとき、最も良好なカット性と底開き適正を有する通蒸型パウチとなる。
【0040】
以上から、本発明の通蒸型パウチによれば、次のような作用および効果が得られる。内容物が収容空間に収容され、閉鎖された通蒸型パウチが加熱された場合、収容空間の圧力の上昇にともない収容空間と外部とを連通する蒸気抜き通路が通蒸部に形成される。このため、収容空間の水蒸気が蒸気抜き通路を通過して通蒸型パウチの外部に排出され、収容空間の圧力の上昇が抑えられる。
【0041】
また胴部材シートは、ポリアミドフィルムが用いられず、MD方向の引き裂き性に優れた材料によって構成されるか、または、開封部にミシン目加工が施された場合に胴部材シートを、開封部から手で容易に、かつ、直線的に美麗に引き裂くことができる。このため、開封口から内容物を容易に取り出すことができる。また、底部材シートがポリアミドフィルムを含む材料によって構成されるため、柔軟性があり、底開き性を有するので、充填適性を備えた通蒸型パウチを提供することができる。