(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098146
(43)【公開日】2024-07-22
(54)【発明の名称】インクジェットプライマ組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/54 20140101AFI20240712BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240712BHJP
【FI】
C09D11/54
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023217091
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】18/151,587
(32)【優先日】2023-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】セぺール エム. テフラニ
(72)【発明者】
【氏名】ビビー エスター エイブラハム
(72)【発明者】
【氏名】サイード モーシン アリ
(72)【発明者】
【氏名】ミハエラ マリア ビラウ
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB12
4J039AD03
4J039BD02
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE16
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE28
4J039BE30
4J039BE32
4J039CA06
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インク受容層を提供し、続いてその上に水性インクジェットインク組成物を印刷するために使用され得る、インクジェットプライマ組成物、およびインクジェットセットを提供する。
【解決手段】水と、共媒体と、樹脂粒子とを含むインクジェットプライマ組成物であって、前記樹脂粒子が、1つ以上の種類の金属キレートモノマーを含む反応物の重合生成物を含む、インクジェットプライマ組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、共媒体と、樹脂粒子とを含むインクジェットプライマ組成物であって、前記樹脂粒子が、1つ以上の種類の金属キレートモノマーを含む反応物の重合生成物を含む、インクジェットプライマ組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の種類の金属キレートモノマーが、約3以下のpKaを特徴とするものを含む、請求項1に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の種類の金属キレートモノマーが、1つ以上の種類のリン酸モノマー、1つ以上の種類のスルホン酸モノマー、又は1つ以上の種類のリン酸モノマー及び1つ以上の種類のスルホン酸モノマーの両方を含む、請求項1に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項4】
前記樹脂粒子における重合されたリン酸モノマー、重合されたスルホン酸モノマー、又は重合されたリン酸モノマー及び重合されたスルホン酸モノマーの両方の総量が、少なくとも約4重量%である、請求項3に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項5】
前記反応物が、1つ以上の種類の酸性モノマーを更に含む、請求項1に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項6】
前記1つ以上の種類の酸性モノマーが、(メタ)アクリル酸モノマーを含む、請求項5に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項7】
前記樹脂粒子における重合された酸性モノマーの総量に対する前記樹脂粒子における重合された金属キレートモノマーの総量の重量比が、約0.5未満である、請求項5に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項8】
前記反応物が、4-メチルスチレン、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、又はこれらの組み合わせを含まない、請求項1に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項9】
前記1つ以上の種類のリン酸モノマーが、存在し、式P(O)(OR)3を有するものを含み、式中、各Rが、独立して、水素及びエチル(メタ)アクリレートから選択され、少なくとも1つのRが、前記エチル(メタ)アクリレートである、請求項3に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項10】
前記1つ以上の種類のスルホン酸モノマーが、存在し、式R’-S(O)2(OH)を有するものを含み、式中、R’が、スチレン、ビニル、アルキル(メタ)アクリレート、及びアルキル(メタ)アクリルアミドから選択され、前記アルキル(メタ)アクリレート又は前記アルキル(メタ)アクリルアミドのアルキル基が、1~6個の炭素を有する、請求項3に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項11】
前記1つ以上の種類の金属キレートモノマーが、式P(O)(OR)3を有するものを含む1つ以上の種類のリン酸モノマーを含み、式中、各Rが、独立して、水素及びエチル(メタ)アクリレートから選択され、少なくとも1つのRが、前記エチル(メタ)アクリレートであり、
前記反応物が、(メタ)アクリル酸モノマーを含む1つ以上の種類の酸性モノマーを更に含み、
前記反応物が、スチレン及びアルキル(メタ)アクリレートを含む1つ以上の種類の疎水性モノマーを更に含み、
前記反応物が、反応性界面活性剤を更に含む、請求項1に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項12】
前記樹脂粒子における重合された金属キレートモノマー及び酸性モノマーの総量が、少なくとも約8重量%であり、前記樹脂粒子における重合されたリン酸モノマーの総量が、少なくとも約4重量%である、請求項11に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項13】
前記樹脂粒子における重合された酸性モノマーの総量に対する前記樹脂粒子における重合されたリン酸モノマーの総量の重量比が、約0.5未満である、請求項12に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項14】
前記反応物が、4-メチルスチレン、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、又はこれらの組み合わせを含まない、請求項13に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項15】
前記重合生成物が、ポリ[(スチレン)-ran-(ブチルアクリレート)-ran-(リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル)-ran-(ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート)-ran-(メタクリル酸)-ran-(アニオン性エーテルサルフェートを含む、請求項1に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項16】
前記樹脂粒子における重合されたリン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル、重合されたビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート、及び重合されたメタクリル酸の総量が、少なくとも約8重量%であるか、前記樹脂粒子における重合されたリン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル及び重合されたビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートの総量が、少なくとも約4重量%であるか、又は前記樹脂粒子における重合されたメタクリル酸の総量に対する、前記樹脂粒子における重合された重合されたリン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル及び重合されたビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートの総量の重量比が、約0.5未満である、請求項15に記載のインクジェットプライマ組成物。
【請求項17】
インクジェット印刷システムのためのインクジェットセットであって、
水、共媒体、及び樹脂粒子を含むインクジェットプライマ組成物であって、前記樹脂粒子が、1つ以上の種類の金属キレートモノマーを含む反応物の重合生成物を含む、インクジェットプライマ組成物と、
前記インクジェットプライマ組成物の前記樹脂粒子を含むインク受容層の上に印刷するための水性インクジェットインク組成物であって、水、着色剤、及び追加の樹脂粒子を含む、水性インクジェットインク組成物と、を含む、インクジェットセット。
【請求項18】
前記インクジェットプライマ組成物の前記樹脂粒子が、前記インクジェットプライマ組成物中で負に帯電しており、前記水性インクジェットインク組成物の前記追加の樹脂粒子が、前記水性インクジェットインク組成物中で負に帯電している、請求項17に記載のインクジェットセット。
【請求項19】
前記水性インクジェットインク組成物の前記追加の樹脂粒子が、前記インクジェットプライマ組成物の前記樹脂粒子と同じである、請求項17に記載のインクジェットセット。
【請求項20】
前記インク受容層上に印刷された前記水性インクジェットインク組成物が、約1単位未満の光沢差値を示す、請求項17に記載のインクジェットセット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
いくつかの基材、例えば、オフセットコート紙、段ボール、及びプラスチック上へのインクジェット印刷は難しい。そのような基材上に印刷された水性インクジェットインク組成物は、ゆっくりと乾燥し、不良な画像品質及び画像耐久性の低下をもたらし得る。これらの課題に対処するために、いくつかのプライマが開発されている。既存のプライマは、負に帯電したインク構成成分の凝集を誘発させるために、正に帯電した構成成分(例えば、多価金属塩、アミン官能性ポリマー)を含有し、基材の細孔を密封するためにある特定のポリマー結合剤を含み、かつ/又は無機粒子(例えば、シリカ、チタニア)を含む。加えて、多くの既存のプライマは、インクジェット印刷システムを介して印刷可能でない。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、インク受容層を提供し、続いてその上に水性インクジェットインク組成物を印刷するために使用され得る、インクジェットプライマ組成物を提供する。インクジェットプライマ組成物は、水、共媒体(co-medium)及び樹脂粒子を含む。樹脂粒子は、金属キレートモノマーを含む様々なモノマーから重合される。
【0003】
「インクジェットプライマ組成物」における「インクジェット」とは、組成物が、圧電振動要素(piezoelectric vibrating element)の振動(oscillation)によって、下にある基材上にインクジェットプライマ組成物の液滴を吐出するように構成された圧電インクジェット印刷システムを含むインクジェット印刷システムによって、印刷可能、すなわち、噴射可能であることを意味している。インクジェット印刷システムによる印刷適性を以下に更に説明する。別途記載のない限り、本開示における「印刷」などの用語は、インクジェット印刷システムを介した印刷を指す。
【0004】
「インクジェットプライマ組成物」における「プライマ」とは、組成物がインク受容層を形成することが意図されていることを意味している。プライマは、着色剤(例えば、染料、顔料)を任意選択的に有しない、すなわち、含まない。したがって、インクジェットプライマ組成物及びそれらから形成されたインク受容層は、任意選択的に無色である。実施形態では、インクジェットプライマ組成物及びそれらから形成されたインク受容層は、無色である。
【0005】
本明細書で使用される場合、「室温」は、約20℃~約25℃の温度を指す。
【0006】
以下で更に説明するように、インクジェットプライマ組成物の実施形態から形成されたインク受容層は、インク受容層上に印刷された水性インクジェットインク組成物から形成される画像の線幅、斑紋、及びラジェッドネス(raggedness)を改善する。驚くべきことに、インクジェットプライマ組成物(それらから形成されたインク受容層)の実施形態は、続いて印刷される水性インクジェットインク組成物の大幅に低減された光沢差値(Δ光沢)をもたらす。具体的には、以下の実施例は、例示的なインクジェットプライマ組成物から形成されたインク受容層上に印刷された水性インクジェットインク組成物のΔ光沢は、インク受容層なしで基材上に直接印刷された水性インクジェットインク組成物よりも12倍超低かったことを実証している。これは、光沢性能における前例のない顕著な商業的改善である。
【0007】
インクジェットプライマ組成物を提供する。実施形態では、インクジェットプライマ組成物は、水、共媒体、及び樹脂粒子を含み、樹脂粒子は、1つ以上の種類の金属キレートモノマーを含む反応物の重合生成物を含む。
【0008】
インクジェット印刷システムのためのインクジェットセットも提供する。実施形態では、インクジェットセットは、水、共媒体、及び樹脂粒子を含むインクジェットプライマ組成物であって、その樹脂粒子は、1つ以上の種類の金属キレートモノマーを含む反応物の重合生成物を含む、インクジェットプライマ組成物と、インクジェットプライマ組成物の樹脂粒子を含むインク受容層の上に印刷するための水性インクジェットインク組成物であって、水、着色剤、及び追加の樹脂粒子を含む、水性インクジェットインク組成物と、を含む。
【0009】
本開示の他の主要な特徴及び利点は、以下の図面、発明を実施するための形態、及び添付の特許請求の範囲を検討すると当業者には明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
インクジェットプライマ組成物
インクジェットプライマ組成物は、水と、共媒体と、樹脂粒子とを含む。樹脂粒子は、樹脂粒子を構成するポリマー材料を形成する様々なモノマーから合成される。疎水性モノマーは、樹脂粒子を形成するために使用され得る。疎水性であるため、疎水性モノマーは、水中での溶解度/混和性が限定されており、例えば、0.1g/L~3g/Lの水中での室温溶解度。しかしながら、実施形態では、0.1g/L未満の室温溶解度を有する疎水性モノマーは、使用されない。様々な疎水性モノマーが使用され得る、例えば、スチレン;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-クロロエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びブチルメタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;β-カルボキシエチルアクリレート(β-carboxy ethyl acrylate、β-CEA)、フェニルアクリレート、メチルアルファクロロアクリレート;アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、及びビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルベンゾエート、及びビニルブチレートなどのビニルエステル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、及びメチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン;塩化ビニリデン及びクロロフッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;N-ビニルインドール;N-ビニルピロリドン;メタクリレート;ビニルピリジン;ビニルピロリドン;ビニル-N-メチルピリジニウムクロリド;ビニルナフタレン;p-クロロスチレン;塩化ビニル;臭化ビニル;フッ化ビニル;エチレン;プロピレン;ブチレン;並びにイソブチレン。(本開示を通して、例えば、「(メタ)アクリレート」におけるような「(メタ)」の使用は、アクリレート及びメタクリレートの両方を指す。)単一の種類又は異なる種類の疎水性モノマーの組み合わせを使用することができる。「単一の種類」という語句は、同じ化学化合物を指し、「異なる種類」という語句は、異なる化学化合物を指す。例えば、スチレンは、単一の種類の疎水性モノマーであり、スチレン及びアルキル(メタ)アクリレートは、異なる種類の疎水性モノマーである。メチル(メタ)アクリレートは、単一の種類の疎水性モノマー(具体的には、単一の種類のアルキル(メタ)アクリレート)であり、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートは、異なる種類の疎水性モノマー(具体的には、異なる種類のアルキル(メタ)アクリレート)である。したがって、「1つ以上の種類」という語句は、単一の種類のモノマー及び異なる種類のモノマーの両方を包含する。
【0011】
実施形態では、樹脂粒子を形成するために使用される疎水性モノマーは、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせ)、又はこれらの両方を含む(又はこれらからなる)。したがって、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、1個以上の炭素、2個以上の炭素、4個以上の炭素又は1~6個の炭素を有し得る。
【0012】
実施形態では、ある特定の疎水性モノマーは、4-メチルスチレン、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタアクリレート、イソボルニルアクリレート、又はこれらの組み合わせを含む樹脂粒子を形成するためには使用されない。
【0013】
樹脂粒子を形成するためには金属キレートモノマーが使用される。金属キレートモノマーは、重合性部分(例えば、炭素-炭素二重結合)及び金属イオン結合部分を有するモノマーである。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、樹脂粒子が構成されるポリマー材料中に組み込まれる場合、金属キレートモノマーは、これらの金属イオン結合部分に起因して、樹脂粒子が金属イオンと錯体を形成することを可能にすると考えられる。具体的には、金属イオン結合部分は、金属イオン、例えば、Ca2+に(例えば、イオン結合を介して)結合することができる。例えば、金属イオン結合部分は、水中で脱プロトン化することができ、それによって負に帯電し、正に帯電した金属イオンとイオン結合を形成することができる。このような金属キレートモノマーは、それらのpKa値を特徴とし得る。実施形態では、金属キレートモノマーは、3以下のpKa(室温の水中で)を特徴とする。これは、2以下のpKa及び1以下のpKaを含む。実施形態では、金属イオン結合部分は、2個以上、例えば、2個又は3個以上の水素イオンを供与することができる。このような金属キレートモノマーは、2つ以上のpKa値を有するが、上記で言及した値は、金属キレートモノマーの最も低いpKa値を指している。金属キレートモノマーの塩も包含され、例えば、金属イオン結合部分の供与水素はカチオンで置換されている。したがって、「金属キレートモノマー」は、その塩も指す。
【0014】
金属キレートモノマーの例としては、リン酸モノマー、スルホン酸モノマー、又はリン酸モノマー及びスルホン酸モノマーの両方が挙げられる。リン酸モノマーは、重合性部分(例えば、炭素-炭素二重結合)並びにP(O)(OR)3部分(金属イオン結合部分)を有する重合性モノマーである。重合性部分は、R基によって提供され得る。金属キレートモノマーは、2つ以上の重合性基を有し得る。P(O)(OR)3部分において、各Rは、独立して、水素及び有機基から選択され得、少なくとも1つのRは、有機基である。実施形態では、少なくとも1つのRは、水素である。リン酸という用語は、P(O)(OR)3部分が、リン酸であるP(O)(OH)3(3つのヒドロキシル基を有する)に密接に関連しているために使用される。使用されるリン酸モノマーは、同じであっても異なっていてもよい、1つ、2つ、又は3つのそのような有機基を有してもよい。リン酸モノマーの塩も包含され、すなわち、OH基の水素がカチオンによって置き換えられる。したがって、「リン酸モノマー」は、その塩も指す。P(O)(OR)3部分は、式P(O)(OR)2Rを有するホスホン酸部分とは区別される。
【0015】
実施形態では、有機基は、アルキル(メタ)アクリレートである。実施形態では、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、少なくとも2個の炭素、少なくとも3個の炭素、少なくとも4個の炭素、少なくとも5個の炭素、又は1~6個の炭素を有する。実施形態では、少なくとも1つのRは、エチル(メタ)アクリレートである。実施形態では、リン酸モノマーは、1、2、又は3つのエチル(メタ)アクリレート基を有する。例示的なリン酸モノマーとしては、リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル及びビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートが挙げられる。両方の種類のリン酸モノマーを一緒に使用してもよい。
【0016】
実施形態では、有機基は、式Iを有し、
【0017】
【化1】
式中、R
1~3は、独立して、水素及びメチルから選択され、nは、0~20の任意の数を含む0~20であり、「
*」は、P(O)(OR)
3部分の酸素への結合を示す。実施形態では、nは0であり、R
1は水素又はメチルであり、R
3は水素である。1つ、2つ、又は3つのそのような有機基が、リン酸モノマー中に存在し得る。
【0018】
実施形態では、リン酸モノマーはポリ(エチレングリコール)に基づき、式I中、R1は水素又はメチルであり、R2は水素であり、R3は水素であり、nは0~20である。実施形態では、nは、1~20である。これは、2~16及び4~12を含む。1つ、2つ、又は3つのそのような有機基が、リン酸モノマー中に存在し得る。実施形態では、1つのそのような有機基は、ポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレートのリン酸エステル(すなわち、他のR基が水素である)を提供するために存在する。
【0019】
実施形態では、リン酸モノマーは、ポリ(プロピレングリコール)に基づき、式I中、R1は水素又はメチルであり、R2はメチルであり、R3はメチルであり、nは0~20である。実施形態では、nは、1~20である。これは、2~16及び4~12を含む。1つ、2つ、又は3つのそのような有機基が、リン酸モノマー中に存在し得る。実施形態では、1つのそのような有機基が存在して、ポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートのリン酸エステル(すなわち、他のR基が水素である)を提供する。
【0020】
他の有機基が、リン酸モノマーでは使用され得るが、実施形態では、有機基は、一般に、ビニル(すなわち、CH2CH2)ではない。
【0021】
単一の種類又は異なる種類のリン酸モノマーの組み合わせを使用することができる。(「単一の種類」、「異なる種類」、及び「1つ以上の種類」の意味は、疎水性モノマーについて上述したものと類似している。)
【0022】
スルホン酸モノマーは、重合性部分(例えば、炭素-炭素二重結合)及びS(O2)(OH)部分(金属イオン結合部分)を含む有機基を含む。スルホン酸モノマーは、式R’-S(O)2(OH)を有してもよく、式中、R’は、重合性部分を含む有機基である。スルホン酸モノマーの塩も包含され、すなわち、OH基の水素がカチオンによって置き換えられている。したがって、「スルホン酸モノマー」は、その塩も指す。例示的なR’基としては、スチレン、ビニル(CH2CH2)、アルキル(メタ)アクリレート、及びアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。実施形態では、アルキル(メタ)アクリレート又はアルキル(メタ)アクリルアミドのアルキル基は、少なくとも1個の炭素、少なくとも2個の炭素、少なくとも3個の炭素、少なくとも4個の炭素、又は1~6個の炭素を有する。例示的なスルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホネート、2-メタクリロイルオキシメタン-1-スルホン酸、3-メタクリロイルオキシプロパン-1-スルホン酸、3-(ビニルオキシ)プロパン-1-スルホン酸、エチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホエチルアクリレートビニル硫酸、及び4-ビニルフェニル硫酸が挙げられる。実施形態では、スルホン酸モノマーは、スチレンスルホン酸(その塩、例えば、スチレンスルホン酸ナトリウムも指す)である。単一の種類、又は異なる種類のスルホン酸モノマーの組み合わせを使用してもよい。(「単一の種類」、「異なる種類」、及び「1つ以上の種類」の意味は、疎水性モノマーについて上述したものと類似している)
【0023】
実施形態では、金属キレートモノマーには、アミン基を有するものは含まれない。
【0024】
酸性モノマーは、樹脂粒子を形成するために使用され得る。酸性モノマーは、水中で脱プロトン化することができ、それによって酸性モノマーを水中で負に帯電させる酸性部分を有するモノマーである。しかしながら、酸性モノマーは、開示された金属キレートモノマーとは区別され、開示された金属キレートモノマーと比較して異なる種類、すなわち、異なる化学物を指す。加えて、酸性モノマーは、一般に、より大きなpKa値を特徴とするため、酸性モノマーは、一般に、上述した金属キレートモノマーの金属イオン結合能力を示さない。実施形態では、酸性モノマーは、4以上のpKa(室温の水において)を有する。実施形態では、酸性モノマーは、単一のpKaを有する、すなわち、単一の水素イオンを供与することができる。例示的な酸性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、ジメチルアクリル酸、マレイン酸無水物、マレイン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、エチリジン酢酸、プロピリジン酢酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、スチリルアクリル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、フェニルアクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、アコニット酸、フェニルアクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、ビニル安息香酸、N-ビニルスクシンアミド酸、メサコン酸、ビニル安息香酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。金属キレートモノマーと同様に、酸性モノマーにはそれらの塩も含まれる。同様に、単一の種類の酸性モノマー、又は異なる種類の酸性モノマーの組み合わせを使用してもよい。(「単一の種類」、「異なる種類」、及び「1つ以上の種類」の意味は、疎水性モノマーについて上述したものと類似している)
【0025】
実施形態では、酸性モノマーは、金属キレートモノマー(例えば、リン酸モノマー及び/又はスルホン酸モノマー)と共に使用される。実施形態では、酸性モノマーは、(メタ)アクリル酸を含む。実施形態では、酸性モノマーは、アミン基を有するものを含まない。
【0026】
様々な他のモノマーは、樹脂粒子を形成するために使用され得る。例えば、(メタ)アクリル酸と、ジオキサン部分を含むアルコール又はジオキソラン部分を含むアルコールとのエステルであるモノマーが使用され得る。本開示において、この種類のモノマーは、「ジオキサン/ジオキソランモノマー」と称され得る。ジオキサン/ジオキソランモノマーというこの語句は、(メタ)アクリル酸と、ジオキサン部分を含むアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と、ジオキソラン部分を含むアルコールとのエステル、又はそれらの両方であるモノマーを包含する。ジオキサン部分は、1,3-ジオキサン部分であり得、ジオキソラン部分は、1,3-ジオキソラン部分であり得る。ジオキサン/ジオキソラン部分を含むアルコールは、トリオール、トリオールのケタール、又はトリオールのカーボネートであり得る。例示的なトリオールとしては、グリセロール及びトリメチロールプロパンが挙げられる。トリオールは、非置換又は置換であり得る。「置換(substituted)」とは、炭素又は水素への1つ以上の結合が、非水素及び非炭素原子への結合によって置き換えられることを意味する。ジオキサン/ジオキソランモノマーは、以下に示される式II(ジオキサン)又はIII(ジオキソラン)を有し得、式中、Rは、水素及びメチルから選択され、R’は、水素及びエチルから選択され、Zは、水素、カルボニル基の酸素、アルキル基、アリール基、及びアルコキシ基から選択される。モノマーのうちのいずれか又は両方の種類のモノマーが、樹脂粒子に使用され得る。
【0027】
【0028】
カルボニル基は、C=O基を指し、すなわち、Zは、二重結合を介して炭素に共有結合されているOであり、それによって5又は6員環の2つの酸素間にカルボニル基を形成する。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルキル基は、1~20個の炭素を有し得る。これは、1~18個の炭素及び1~10個の炭素、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の炭素を有することを含む。アルキル基は、置換又は非置換であり得る。アリール基は、1つの芳香環、例えば、ベンゼンを有する単環であり得、又は1つ以上の縮合環を有する多環であり得る。アリール基は、アルキル基に関して上記したように非置換であっても置換されていてもよいが、置換アリール基はまた、水素への結合が上記の非置換又は置換アルキル基への結合によって置き換えられるアリール基も包含する。アルコキシ基は-O-アルキル基を指す。
【0029】
例示的なジオキサン/ジオキソランモノマーとしては、グリセロールホルマール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、及びイソプロピリデングリセロール(メタ)アクリレートが挙げられる。単一の種類又は異なる種類のジオキサン/ジオキソランモノマーの組み合わせを使用することができる。しかしながら、実施形態では、ジオキサン/ジオキソランモノマーは、グリセロールホルマール(メタ)アクリレートである。グリセロールホルマール(メタ)アクリレートは、比較的高いT-g(約85~90℃)を有する。本開示において、「グリセロールホルマール(メタ)アクリレート」という名称(並びに、この段落に記載の他のジオキサン/ジオキソランモノマーの名称)は、ジオキサン異性体、ジオキソラン異性体、又はそれらの両方のいずれかを指す。すなわち、全ての可能性は、それらの名称によって包含される。
【0030】
実施形態では、使用される疎水性モノマー、酸性モノマー、及びジオキサン/ジオキソランモノマーは、単官能性であり、これは、単一の重合性基を含むことを意味する。
【0031】
必要ではないが、いくつかの実施形態では、多官能性モノマー、すなわち、2つ以上の重合性基(例えば、2、3、4つ)を含むものを使用して樹脂粒子を形成してもよい。(「多官能性モノマー」という用語は、2つ以上の重合性基を含有し得るリン酸モノマーと区別される用語である。)多官能性モノマーは、樹脂粒子内の架橋を促進するため有用である。例示的な多官能性モノマーとしては、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、例えば、250g/molの分子量を有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレートなどの二官能性モノマーが挙げられる。214g/mol~1000g/mol、214g/mol~500g/mol、及び214g/mol~300g/molの範囲の分子量を有するものを含む他のポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートが使用され得る。これらの分子量の値は、ゲル浸透クロマトグラフィを使用して決定することができる。他の二官能性モノマーとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートなどのエーテル結合を含有するアルキル鎖と結合したジアクリレート化合物、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物、ポリオキシエチレン(2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレートなどの芳香族基及びエーテル結合を含む鎖と結合したジアクリレート化合物、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物が挙げられる。他の二官能性モノマーとしては、イソプレン及びブタジエンなどのジエン化合物、ジビニルベンゼン及びジビニルナフタレンなどの芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-ドデカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの、アルキル鎖と結合したジアクリレート化合物、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物が挙げられる。多官能性モノマーには、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物が挙げられる。
【0032】
しかしながら、実施形態では、樹脂粒子を形成するために使用されるモノマーは、多官能性モノマー、例えば、多官能性アクリレートを含まない。実施形態では、樹脂粒子を形成するために使用されるモノマーは、ジ(メタ)アクリルアミド(例えば、ジアセトンジアクリルアミド)を含まない。同様に、実施形態では、架橋剤、例えば、エポキシド含有化合物は、樹脂粒子を形成するために使用されない。
【0033】
反応性界面活性剤は、樹脂粒子を形成するために使用され得る。好適な反応性界面活性剤は、それらが樹脂粒子に組み込まれるような重合性(及びしたがって反応性)基を含む。例示的な反応性界面活性剤としては、アニオン性エーテルサルフェート反応性界面活性剤、例えば、市販のHitenolシリーズのものなどが挙げられる。好適な反応性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、例えば、Hitenol BC-10、BC-20、BC10-25、BC-2020、BC-30、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、例えば、Hitenol AR-10、AR-1025、AR-20、AR-2020、Noigen RN-10、RN-20、RN-30、RN-40、RN-5065を含む非イオン性ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;及びE-sperse RX-201、RX-202、RX-203、RS-1596、RS-1616、RS-1617、RS-1618、RS-1684を含むEthoxから入手可能な反応性界面活性剤が挙げられる。
【0034】
連鎖移動剤が、樹脂粒子を形成するために使用され得る。連鎖移動剤は、メルカプタン又はチオールであり得る。好適な連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン(n-dodecylmercaptan、NDM)、n-ドデカンチオール(n-dodecanethiol、DDT)、tert-ドデシルメルカプタン、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、オクタンチオール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。四臭化炭素、四塩化炭素、及びこれらの組み合わせなどのハロゲン化炭素は、連鎖移動剤として使用され得る。
【0035】
実施形態では、他のある特定のモノマーは、樹脂粒子を形成する際に除外される。除外され得るモノマーは、12~22個の炭素を有するアルキル基を有する不飽和エチレンモノマーである。
【0036】
樹脂粒子を形成する際には、上述したモノマーの様々な組み合わせが、溶媒を含むモノマーエマルションにおいて使用され得る。水は、溶媒として一般に使用されるが、水溶性又は水混和性有機溶媒(例えば、エタノール)も含まれ得る。モノマーの種類及びそれらの相対量は、以下に説明する特性の値を達成することを含む樹脂粒子の特性を、調整するために選択され得る。例示的な量が、以下に提供される。
【0037】
疎水性モノマーがモノマーエマルション中で使用される場合、疎水性モノマーの総量は、70~97重量%、75重量%~95重量%、又は80重量%~92重量%の範囲にあり得る。(ここで、重量%は、(疎水性モノマーの総重量)/(反応性界面活性剤を除くモノマーエマルション中のモノマーの総重量)*100を指す)。存在する場合、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート)、ブチル(メタ)アクリレート)は、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%又は15重量%~35重量%の範囲の量で存在し得る。(重量%は、疎水性モノマーについて記載されるものと類似の意味を有する)
【0038】
モノマーエマルション中で使用される金属キレートモノマーと酸性モノマーとの総量は、少なくとも8重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、又は少なくとも18重量%であり得る。実施形態では、金属キレートモノマーと酸性モノマーとの総量は、18重量%未満又は17重量%未満である。これらの範囲は、8重量%~25重量%、8重量%~20重量%、8重量%~18重量%、及び10重量%~18重量%の量を包含する。(重量%は、疎水性モノマーについて記載されるものと類似の意味を有する。)モノマーエマルションにおいて使用されるリン酸モノマー若しくはスルホン酸モノマー又はその両方の総量は、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、又は少なくとも4重量%であり得る。実施形態では、リン酸モノマー若しくはスルホン酸モノマー又はその両方の総量は、10重量%未満又は8重量%未満である。これらの範囲は、1重量%~10重量%、1重量%~8重量%、1重量%~6重量%、2重量%~10重量%、2重量%~8重量%、及び2重量%から6重量%の量を包含する。(重量%は、疎水性モノマーについて記載されるものと類似の意味を有する)。上記のように、実施形態では、リン酸モノマー、スルホン酸モノマー、又はその両方に加えて、酸性モノマーを使用する。そのような実施形態では、酸性モノマーの総量に対する、リン酸モノマー、スルホン酸モノマー、又はその両方の総量の重量比は、1.0以下、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、又は0.1~1.0、0.1~0.8、若しくは0.1~0.5である。
【0039】
ジオキサン/ジオキソランモノマーがモノマーエマルション中で使用される場合、ジオキサン/ジオキソランモノマーの総量は、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、及び1重量%~5重量%の範囲にあり得る。(重量%は、疎水性モノマーについて記載されるものと類似の意味を有する)
【0040】
多官能性モノマーがモノマーエマルション中で使用される場合、多官能性モノマーの総量は、0.001~1重量%、0.001重量%~0.8重量%、及び0.01重量%~0.6重量%の範囲にあり得る。(重量%は、疎水性モノマーについて記載されるものと類似の意味を有する)
【0041】
反応性界面活性剤がモノマーエマルション中で使用される場合、反応性界面活性剤の総量は、0.1重量%~6.5重量%の範囲にあり得る。(ここで、重量%は、(反応性界面活性剤の総重量)/(反応性界面活性剤モノマーを含むモノマーエマルション中のモノマーの総重量)*100を指す)。この範囲は、0.3重量%~5重量%を含む。
【0042】
連鎖移動剤は、モノマーエマルション中に存在してもよく、様々な好適な量、例えば、0.25重量%~2.5重量%で使用されてもよい。(ここで、重量%は、(連鎖移動剤の総重量)/(反応性界面活性剤を除くモノマーエマルション中のモノマーの総重量)*100を指す)
実施形態では、モノマーエマルションは、溶媒、及び金属キレートモノマー、例えば、リン酸モノマー、スルホン酸モノマー、又はリン酸モノマー及びスルホン酸モノマーの両方を含む(又はこれらからなる)。実施形態では、モノマーエマルションは、溶媒、疎水性モノマー及び金属キレートモノマー、例えば、リン酸モノマー、スルホン酸モノマー、又はリン酸モノマー及びスルホン酸モノマーの両方を含む(又はこれらからなる)。実施形態では、疎水性モノマーは、スチレン及びアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ブチルアクリレートを含む。実施形態では、リン酸モノマーは、式P(O)(OR)3を有するものを含み、式中、各Rは、独立して、水素及び有機基から選択され、少なくとも1つのRは、有機基である。実施形態では、有機基は、アルキル(メタ)アクリレートである。実施形態では、有機基は式Iを有する。実施形態では、リン酸モノマーは、リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート、又はそれらの組み合わせを含む。実施形態では、リン酸モノマーは、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのリン酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのリン酸エステル、又はそれらの組み合わせを含む。実施形態では、スルホン酸モノマーは、式R’-S(O)2(OH)を有するものを含み、式中、R’は、有機基である。実施形態では、スルホン酸モノマーは、スチレンスルホン酸を含む。この段落における実施形態のいずれかでは、酸性モノマー、例えば、メタクリル酸が、使用され得る。この段落における実施形態のいずれかでは、ジオキサン/ジオキソランモノマー(例えば、グリセロールホルマールメタクリレート)が、使用され得る。この段落における実施形態のいずれかでは、多官能性モノマーが、使用され得る(が、いくつかの実施形態では、多官能性モノマーは使用されない)。この段落における実施形態のいずれかでは、反応性界面活性剤(例えば、アニオン性エーテルサルフェート)が、使用され得る。この段落における実施形態のいずれかでは、連鎖移動剤が、使用され得る。この段落における実施形態のいずれかでは、様々なモノマー、反応性界面活性剤、及び連鎖移動剤の量は、上述した量が使用され得る。残りは、溶媒からなっていてもよい。
【0043】
実施形態では、モノマーエマルションは、界面活性剤を有しない(すなわち、含まない)。しかしながら、他の実施形態では、界面活性剤が使用され得る。ここで、「界面活性剤」は、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecylsulfate、SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム;ジアルキルベンゼンアルキルサルフェート;パルミチン酸;アルキルジフェニルオキシドジスルホネート;及び分岐状ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの非反応性非重合性アニオン性界面活性剤を指す。「界面活性剤」はまた、アルキルベンジルジメチル塩化アンモニウム、ジアルキルベンゼンアルキル塩化アンモニウム、ラウリルトリメチル塩化アンモニウム、アルキルベンジルメチル塩化アンモニウム、アルキルベンジルジメチル臭化アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、セチル臭化ピリジニウム、トリメチル臭化アンモニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、及びドデシルベンジルトリエチル塩化アンモニウムなどの非反応性非重合性カチオン性界面活性剤を指す。「界面活性剤」はまた、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、並びにポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーなどの非反応性非重合性非イオン性界面活性剤を指す。
【0044】
実施形態では、モノマーエマルションは、シリカ粒子のような無機粒子を有しない(すなわち、含まない)。除外され得る市販のシリカ粒子は、以下のものである:FM、SM、HS-30、HS-40、LS、TM-40、TM-50、SM-AS、AS-30、AS-40、AM、HSA、TMA、PX-30、Pt-40、PW-50、CL、及びCL-Pなどの様々なグレードのLUDOXコロイダルシリカ、並びにSNOWTEX ST-20L、ST-30、ST-40、ST-50、ST-OS、ST-O、ST-O-40、ST-OL、ST-C、ST-C-30、ST-CM、ST-N、STN30G、ST-N40、ST-NS、ST-XS、ST-S、ST-UP、ST-O-UP、MA-ST-UP、ST-PS-S、AMT-330S、HX-305M1、及びHX-305M5などの様々なグレードの日産化学シリカ。
【0045】
モノマー欠乏エマルション重合、従来のエマルション重合、懸濁重合、ミニエマルション重合、ナノエマルション重合、シードエマルション重合、及びマイクロエマルション重合などの、様々な重合技術が、樹脂粒子を形成するために使用され得る。これらの重合技術は、上に記載されるモノマーエマルションのいずれかを使用し得る。例示的なモノマー欠乏エマルション重合プロセスが、以下に記載される。しかしながら、使用される重合技術は、水性媒体に不溶性である粒子の形態の重合ポリマーを提供することに留意されたい。これは、重合技術、例えば、有機媒体中に可溶化ポリマーを提供する、米国特許第9,963,592号に記載されているものを含む溶液重合とは対照的である。
【0046】
樹脂粒子を作製する例示的方法は、上述したモノマーエマルションのうちのいずれかを、一定期間にわたってある供給速度で反応性界面活性剤溶液に添加することを含む。反応性界面活性剤溶液は、溶媒及び反応性界面活性剤を含む。上に記載される溶媒のうちのいずれか及び反応性界面活性剤のうちのいずれかも、使用され得る。反応性界面活性剤溶液中の反応性界面活性剤は、モノマーエマルション中に存在し得る反応性界面活性剤と比較して、同じ種類又は異なる種類であってもよい。反応性界面活性剤溶液は、緩衝液を更に含んでもよい。重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化アンモニウムなどの様々な緩衝液が使用され得る。反応性界面活性剤は、0.1重量%~10重量%及び0.5重量%~5重量%の範囲の量で使用され得る。(ここで、重量%は、(反応性界面活性剤の総重量)/(反応性界面活性剤溶液の総重量)*100を指す)。緩衝液は、0.25重量%~2.5重量%の範囲の量で使用され得る。(重量%は、上に記載されるものと同様の意味を有する)
【0047】
反応性界面活性剤溶液中に開始剤が含まれ得る。代替的に、開始剤及び上に記載される溶媒のうちのいずれかを含む別個の開始剤溶液が形成されてもよく、別個の開始剤溶液が反応性界面活性剤溶液に添加される。別個の開始剤溶液を、モノマーエマルションを添加する前に又は添加後に添加してもよい。追加の量の別個の開始剤溶液は、モノマーエマルションの添加後に添加されてもよい。好適な開始剤の例としては、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate、APS)、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウムなどの水溶性開始剤、並びに有機過酸化物、及びVAZO64(商標)などのVazo過酸化物、2-メチル2-2’-アゾビスプロパンニトリル、VAZO88(商標)、2-2’-アゾビスイソブチルアミド無水物を含むアゾ化合物を含む有機可溶性開始剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。使用され得る他の水溶性開始剤としては、アゾアミジン化合物、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジ-ヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロ-リド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジ-ヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。開始剤は、0.05重量%~2.5重量%の範囲の量で使用され得る。(ここで、重量%とは、(開始剤の総重量)/(反応性界面活性剤溶液の総重量又は開始剤溶液の総重量)*100を指す)
【0048】
実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、溶媒(例えば、水)、反応性界面活性剤、並びに任意選択的に開始剤及び緩衝液のうちの1つ以上を含む(又はこれらからなる)。これらの実施形態のうちのいずれかでは、上に記載されるように、反応性界面活性剤、開始剤、及び緩衝液の量が使用され得る。残りは、溶媒からなっていてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、上に記載しれる界面活性剤のうちのいずれも有しない(すなわち、含まない)。少なくともいくつかの実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、上述した無機粒子のうちのいずれも有しない(すなわち、含まない)。結果として、樹脂粒子は、上述した界面活性剤のうちのいずれも、及び/又は無機粒子のうちのいずれも有しない(すなわち、含まない)ことを特徴とし得る。少なくともいくつかの実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、溶液中に存在する反応性界面活性剤モノマー以外のいずれのモノマーも有しない(すなわち、含まない)。
【0049】
反応性界面活性剤溶液へのモノマーエマルションの添加は、不活性ガス(例えば、窒素)下で、及び高温(例えば、50℃~90℃の範囲の温度などの室温よりも高い)で実施され得る。これは、モノマーエマルションを添加する前に、不活性ガスでパージし、反応性界面活性剤溶液を加熱し、モノマーエマルションの添加中に継続することによって達成され得る。
【0050】
上記のように、モノマーエマルションは、一定期間にわたって供給速度で添加される。開始剤の存在下で、モノマーエマルションのモノマーは、重合反応を経て、樹脂粒子を形成する。供給速度は、重合が「モノマー欠乏」条件下で実施されるように十分に遅い。これは、供給速度が、重合反応の速度、例えば、スチレンとアクリレートモノマーとの間の速度以下であることを意味する。例示的な供給速度としては、1Lの総反応体積に基づいて、1mL/分~10mL/分の範囲のものが挙げられる。例示的な期間は、60分~600分の範囲のものを含む。モノマーエマルションを添加した後、更なる開始剤の添加あり又はなしで重合を更なる期間継続させることができる。例示的な追加の期間としては、1時間~18時間の範囲の時間が挙げられる。モノマーエマルションの添加及び添加後の重合はどちらも、不活性ガス下及び高温で実施され得る。任意選択的に、得られた樹脂粒子を含むラテックスは、凝固、溶解及び沈殿、濾過、洗浄、又は乾燥などの標準的な技術によって処理され得る。処理又は未処理のラテックスを使用して、インクジェットプライマ組成物が形成され得る。
【0051】
上に記載されるモノマー欠乏エマルション重合プロセスは、樹脂粒子を形成する際の樹脂シードの使用を伴わない。しかしながら、上記のように、シードエマルション重合技術が使用され得る。
【0052】
本方法は、モノマーエマルションを形成すること、反応性界面活性剤溶液を形成すること、及び/又は開始剤溶液を形成することを更に含み得る。各々は、所望の構成成分を所望の量で組み合わせて、混合することによって形成され得る。
【0053】
樹脂粒子の組成は、モノマーの選択、及びそれらの相対量、並びに上に記載されるような重合生成物を生成する選択されたモノマー間の重合反応に依存する。したがって、様々なモノマーの組み合わせを含む反応物の様々な重合生成物に基づくものを含む、様々な組成が包含される。上記したように、反応物質としては、金属キレートモノマー、例えば、リン酸モノマー、スルホン酸モノマー、又はリン酸モノマー及びスルホン酸モノマーの両方が挙げられるが、他のモノマーの選択は、特に限定されない。明確にするために、樹脂粒子の組成は、重合されるモノマーを参照し、これらのモノマーの化学形態が、一般に重合反応の結果として変化していることを認識することによって特定され得る。樹脂粒子中で重合されると、モノマーは「重合モノマー」と称され得る。
【0054】
実施形態では、樹脂粒子は、金属キレートモノマー、例えば、リン酸モノマー、スルホン酸モノマー、又はリン酸モノマー及びスルホン酸モノマーの両方を含む反応物の重合生成物(例えば、コポリマー)を含む(又はこれらからなる)。実施形態では、樹脂粒子は、疎水性モノマーと、金属キレートモノマー、例えば、リン酸モノマー、スルホン酸モノマー、又はリン酸モノマー及びスルホン酸モノマーの両方と、を含む反応物の重合生成物(例えば、コポリマー)を含む(又はこれらからなる)。実施形態では、疎水性モノマーは、スチレン及びアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ブチルアクリレートを含む。実施形態では、リン酸モノマーは、式P(O)(OR)3を有するものを含み、式中、各Rは、独立して、水素及び有機基から選択され、少なくとも1つのRは、有機基である。実施形態では、有機基は、アルキル(メタ)アクリレートである。実施形態では、有機基は式Iを有する。実施形態では、リン酸モノマーは、リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート、又はそれらの組み合わせを含む。実施形態では、リン酸モノマーは、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのリン酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのリン酸エステル、又はそれらの組み合わせを含む。実施形態では、スルホン酸モノマーは、式R’-S(O)2(OH)を有するものを含み、式中、R’は、有機基である。実施形態では、スルホン酸モノマーは、スチレンスルホン酸を含む。この段落における実施形態のいずれかでは、酸性モノマー、例えば、メタクリル酸が、使用され得る。この段落における実施形態のいずれかでは、ジオキサン/ジオキソランモノマー(例えば、グリセロールホルマールメタクリレート)が、使用され得る。この段落における実施形態のいずれかでは、多官能性モノマーが、使用され得る(が、いくつかの実施形態では、多官能性モノマーは使用されない)。この段落における実施形態のいずれかでは、反応性界面活性剤(例えば、アニオン性エーテルサルフェート)が、使用され得る。この段落における実施形態のいずれかでは、開始剤(又はその一部分)は、樹脂粒子において、各ポリマー鎖の末端部に組み込まれ得る。この段落における実施形態のいずれかでは、樹脂粒子は架橋され得る。
【0055】
直前の段落における実施形態のいずれかでは、重合モノマーは、モノマーエマルション中のモノマーの量に関して上述した量で樹脂粒子中に存在し得る。これは、実験が、重合反応中のモノマーの変換が99.9%を超えることを示しているためである。例えば、樹脂粒子における重合された金属キレートモノマーと酸性モノマーとの総量は、8重量%~25重量%の範囲にあり得る。上で提示した重量%の定義と同様に、樹脂粒子を指す場合、重量%という用語は(重合された金属キレートモノマーと酸性モノマーとの総重量)/(重合された反応性界面活性剤を除いた重合されたモノマーの総重量)*100)を指す。
【0056】
特定の例示的な組成物を使用すると、樹脂粒子の組成物は、ポリ[(スチレン)-ran-(ブチルアクリレート)-ran-(リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル)-ran-(ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート)-ran-(メタクリル酸)-ran-(アニオン性エーテルサルフェート)]と同定され得る。別の特定の例示的な組成物として、樹脂粒子の組成物は、ポリ[(スチレン)-ran-(ブチルアクリレート)-ran-(グリセロールホルマール(メタ)アクリレート)-ran-(スチレンスルホン酸)-ran-(メタクリル酸)-ran-(アニオン性エーテルサルフェート)]と特定され得る。これらの説明では、重合反応から生じる異なる化学部分は、括弧内の対応するモノマーを参照することによって同定され、「ran」は、コポリマーへの異なるモノマーのランダムな組み込みを指している。この記載の使用は、各コポリマーの開始部での開始剤(又はその一部分)の存在、並びに架橋(使用される場合)を包含する。
【0057】
ある特定のモノマー(又は他の反応物)が樹脂粒子を形成することから除外される実施形態では、そのようなモノマー(又は他の反応物)は、樹脂粒子のポリマーマトリックスを形成するための重合反応に関与していないということになる。したがって、これらの実施形態では、樹脂粒子の組成物は、4-メチルスチレン、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジ(メタ)アクリルアミド(例えば、ジアセトンアクリルアミド)、及び12~22個の炭素を有するアルキル基を有する不飽和エチレンモノマーのうちの1つ以上を有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。
【0058】
樹脂粒子は、インクジェットプライマ組成物中に、1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、5重量%~10重量%、及び1重量%~5重量%の範囲の量で存在し得る。(ここで、重量%は、(樹脂粒子の総重量)/(インクジェットプライマ組成物の総重量)*100を指す)。この範囲は、5重量%~10重量%を含む。
【0059】
インクジェットプライマ組成物の樹脂粒子は、それらのサイズを特徴とし得る。粒子のサイズは、D50粒子サイズとして報告され得、これは、試料の50%(体積基準)が当該直径値未満の直径を有する粒子からなる直径を意味する。D50粒子サイズは、Malvern Zetasizer Nano ZSを使用して測定され得る。光散乱技術及び方法の確認には、Microspheres-Nanospheres(MicrotracのCorpuscular会社)又は第三者ベンダー(ThermoFisher Scientificなど)から入手可能な20nm~200nmの範囲内の直径を有するNISTポリスチレンナノスフィア対照試料が使用され得る。実施形態では、樹脂粒子は、50nm~120nmのD50粒子サイズを特徴とする。これは、60nm~110nm及び70nm~100nmを含む。したがって、樹脂粒子は、個々のポリマー分子から区別される。
【0060】
インクジェットプライマ組成物の樹脂粒子はまた、それらのTg値も特徴とし得る。Tg値は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)TA Instruments Discovery DSC 2500を使用して測定することができる。実施形態では、Tgは、40℃~100℃の範囲にある。これは、50℃~90℃、及び60℃~80℃を含む。
【0061】
インクジェットプライマ組成物の樹脂粒子は、それらの電荷も特徴とし得る。実施形態では、樹脂粒子は、インクジェットプライマ組成物中で負に帯電しており、7超~10、7超~9、又は7.5~9のpHを有し得る。上述したように、この負電荷は、金属キレートモノマー及び/又は酸性モノマーの使用によるものである。
【0062】
水
インクジェットプライマ組成物の含水量は、少なくとも40重量%であり得る。これは、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、及び少なくとも70重量%を含む。これらの重量%は、インクジェットプライマ組成物の総重量と比較した水の重量を指している。
【0063】
共媒体
水に加えて、インクジェットプライマ組成物は、共媒体を含む。以下に記載の水溶性有機液体、水混和性有機液体、及び保湿剤を含む、以下の「液体系」において記載した共媒体のいずれかが使用され得る。しかしながら、実施形態では、インクジェットプライマ組成物は、1,2-アルコール(例えば、1,2-ヘキサンジオール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、及びグリセロールを含む。
【0064】
インクジェット組成物に使用される共媒体プライマの総量は、20重量%~50重量%、20重量%~45重量%、又は20重量%~35重量%の範囲にあり得る。これらの重量%は、インクジェット組成物の総重量と比較した、共媒体プライマ(例えば、1,2-アルコール(例えば、1,2-ヘキサンジオール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、及びグリセロール)の重量を指している。
【0065】
添加剤
インクジェットプライマ組成物は、界面活性剤を更に含み得る。以下に記載の界面活性剤において記載されている界面活性剤のうちのいずれかが、使用され得る。実施形態では、界面活性剤は、シリコーン界面活性剤である。界面活性剤が使用される場合、0.01重量%~2重量%の量で存在し得る。(ここで、重量%は、(界面活性剤の総重量)/(インクジェットプライマ組成物の総重量)*100を指す)。2種類以上の界面活性剤が使用される場合、これらの量は、界面活性剤の総量を指す。
【0066】
インクジェットプライマ組成物は、添加剤を更に含み得る。以下の「添加剤」に記載の添加剤のうちのいずれかが、使用され得る。実施形態では、インクジェットプライマ組成物は、湿潤剤、消泡剤、又はその両方を含む。添加剤が使用される場合、それは0.01重量%~5重量%の量で存在し得る。(ここで、重量%は、(添加剤の総重量)/(インクジェットプライマ組成物の総重量)*100を指す)。2種類以上の添加剤が使用される場合、これらの量は、添加剤の総量を指す。
【0067】
実施形態では、インクジェットプライマ組成物は、以下に記載した水溶性樹脂又はエマルション、水性結合剤、ポリマー分散剤のいずれも有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。
【0068】
実施形態では、インクジェットプライマ組成物には、本発明の樹脂粒子自体の樹脂によって提供されるもの以外の樹脂/ポリマーを有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。
【0069】
樹脂粒子を構築する樹脂/ポリマーは、既に重合されているため、インクジェットプライマ組成物自体は、一般に、硬化性ではなく、そのため、開始剤を有しない(すなわち、含まない)。これは、樹脂粒子のポリマー鎖に組み込まれ得る少量の未反応開始剤又は反応した開始剤の存在を排除するものではない。同様に、インクジェットプライマ組成物は、モノマーを有しない(すなわち、モノマーを含まない)ものとして記載され得る。
【0070】
実施形態では、インクジェットプライマ組成物はまた、ホウ酸、ジグリコール酸、分子キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid、EDTA)、又はこれらの組み合わせなどの構成成分を有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。この実施形態では、分子キレート剤の除外は、金属キレートモノマー、例えば、リン酸モノマー及び/又はスルホン酸モノマー(これらは重合して樹脂粒子になる)を除外することを意味しない。
【0071】
実施形態では、インクジェットプライマ組成物はまた、以下に記載したワックスのうちのいずれかを含むワックスを有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。
【0072】
実施形態では、インクジェットプライマ組成物はまた、Ca、Mg(など)又はそれらの塩を含む非重合性(すなわち、重合性基を有しない)多価カチオン又はそれらの塩を有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。実施形態では、インクジェットプライマ組成物はまた、酢酸(など)を含む非重合性(すなわち、重合性基を有しない)有機酸を有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。
【0073】
実施形態では、インクジェットプライマ組成物はまた、ジヒドラジドを有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。
【0074】
実施形態では、インクジェットプライマ組成物はまた、ポリビニルアルコールを有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。
【0075】
インクジェットプライマ組成物はまた、着色剤(以下に記載した着色剤のいずれかを含む)を含まないことによって、本明細書に記載の水性インクジェットインク組成物(及び同様の組成物)と区別される。上記のように、インクジェットプライマ組成物は、無色である。
【0076】
インクジェットプライマ組成物はまた、ラテックスがインクジェット印刷システムを介して印刷されることを可能にするのに十分な量で共媒体を含まないラテックスとは区別される。
【0077】
実施形態では、インクジェットプライマ組成物は、水と、共媒体と、樹脂粒子と、任意選択的に、界面活性剤、湿潤剤、及び消泡剤のうちの1つ以上と、を含む(又はこれらからなる)。これらの実施形態のうちのいずれかでは、構成成分は、本明細書に開示の共溶媒、樹脂粒子、界面活性剤、湿潤剤、及び消泡剤のうちのいずれかから選択され得る。これらの実施形態のうちのいずれかでは、上に記載されるように構成成分の量が使用され得る。
【0078】
インクジェットプライマ組成物は、所望の構成成分を所望の量で組み合わせて、混合することによって、形成され得る。例示的な方法は、開示の樹脂粒子(又は樹脂粒子を含むラテックス)のうちのいずれかを、共媒体及び添加剤を含む混合物に添加することを含む。混合及び/又は加熱を、使用してもよい。インクジェットプライマ組成物は、使用前に濾過してもよい。例示的な詳細を、以下の実施例に提供する。
【0079】
特性
インクジェットプライマ組成物は、それらの粘度を特徴とし得る。粘度値は、Tuning fork振動粘度計(Cole-Parmer)を使用して測定され、かつ37℃においてインクジェットプライマ組成物を形成した1日以内に測定されたものを指し得る。粘度は、10cp未満であり得るか、又は2~10cP及び3~8cPを含む1~15cPの範囲にあり得る。これらの粘度は、インクジェットプライマ組成物が印刷可能である、すなわち、インクジェット印刷システムを介して噴射可能であることを示唆している。そのような値によって、インクジェットプライマ組成物は、顕著に高い粘度、例えば、50cP、100cP、又は1000cPを超える粘度を有し、そのいずれもインクジェット印刷システムを介して印刷可能でない他のプライマ組成物と区別される。
【0080】
インクジェットプライマ組成物は、光沢差を特徴とし得る。インクジェットプライマ組成物は、インクジェットプライマ組成物から形成されたインク受容層上に、続いて印刷される水性インクジェットインク組成物を提供する。光沢差は、以下の実施例に記載されるように測定され得る。実施形態では、インクジェットプライマ組成物は、続いて印刷される水性インクジェットインク組成物(すなわち、印刷画像)に、3単位未満、2単位未満、1単位未満、又は1~3単位の範囲の光沢差を与える。以下の実施例で実証されるように、これらの値は、インク受容層なしで基材上に直接印刷された水性インクジェットインク組成物から得られる光沢差よりも顕著に小さい。
【0081】
水性インクジェットインク組成物
上述した樹脂粒子のうちのいずれかも、水性インクジェットインク組成物を提供するためにも使用され得る。「水性インクジェットインク組成物」における「インクジェット」という用語は、インクジェットプライマ組成物に関して上述したように、組成物がインクジェット印刷システムによって印刷可能である、すなわち噴射可能であることを意味している。水性インクジェットインク組成物は、一般に、樹脂粒子、液体系、着色剤、並びに任意選択的にワックス及び添加剤のうちの1つ以上を含む。したがって、インクジェットプライマ組成物とは異なり、水性インクジェットインク組成物は着色されている。
【0082】
水性インクジェットインク組成物中で使用される樹脂粒子の正確な化学組成は、インクジェットプライマ組成物中で使用される樹脂粒子と異なってもよい。しかしながら、実施形態では、樹脂粒子の両方のセットは、例えば、上述した金属キレートモノマーから選択されるものを含む金属キレートモノマーを、上述した量で含み得る。既存の手法は、一般に、続いて適用されるインク組成物と比較して、顕著に異なる化学組成を有するプライマを利用することから、これは異なるアプローチを表している。実施形態では、水性インクジェットインク組成物における樹脂粒子、及び水性インクジェットインク組成物の前に印刷されるインクジェットプライマ組成物において使用される樹脂粒子は、両方とも、それらのそれぞれの組成物において負に帯電しており、上述した範囲内のpHを有し得る。また、これは、既存のアプローチが、続いて適用されるインク組成物における構成成分の電荷と反対の電荷を有する構成成分を有するプライマを利用してきたことから、異なるアプローチを表している。実施形態では、水性インクジェットインク組成物における樹脂粒子は、水性インクジェットインク組成物の前に印刷されるインクジェットプライマ組成物において使用される樹脂粒子と同じである(すなわち、同じ構成成分が同じ量で使用される)。
【0083】
樹脂粒子は、1重量%~10重量%及び5重量%~10重量%の範囲の量で、水性インクジェットインク組成物中に存在し得る。(ここで、重量%は、(樹脂粒子の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)。この範囲は、5重量%~10重量%を含む。
【0084】
水性インクジェットインク組成物の他の組成物を、以下に記載する。
【0085】
液体システム
水性インクジェットインク組成物は、水に基づく液体系を含む。液体系は、水と、水溶性有機液体、水混和性有機液体、及び保湿剤のうちの1つ以上との混合物を含み得る。水溶性有機液体、水混和性有機液体、及び保湿剤を、本明細書では共媒体と呼ぶ場合がある。好適なそのような共媒体としては、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、グリコールエーテル、ポリグリコールエーテル、長鎖アルコール、一級脂肪族アルコール、二級脂肪族アルコール、1,2-アルコール、1,3-アルコール、1,5-アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、メトキシル化グリセロール、及びエトキシル化グリセロールを含む、アルコール及びアルコール誘導体が挙げられる。用例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシルグリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、3-メトキシブタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、及び2,4-ヘプタンジオールが挙げられる。他の好適な共媒体としては、アミド、エーテル、尿素、置換尿素、例えば、チオ尿素、エチレン尿素、アルキル尿素、アルキルチオ尿素、ジアルキル尿素、及びジアルキルチオ尿素など、カルボン酸及びこれらの塩、例えば、2-メチルペンタン酸、2-エチル-3-プロピルアクリル酸、2-エチル-ヘキサン酸、3-エトキシプロピオン酸など、エステル、有機硫化物、有機スルホキシド、スルホン(スルホランなど)、カルビトール、ブチルカルビトール、セルソルブ(cellusolve)、エーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エーテル誘導体、ヒドロキシエーテル、アミノアルコール、ケトン、N-メチルピロリジノン、2-ピロリジノン、シクロヘキシルピロリドン、アミド、スルホキシド、ラクトン、高分子電解質、メチルスルホニルエタノール、イミダゾール、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ベタイン、糖、例えば、1-デオキシ-D-ガラクチトール、マンニトール、イノシトールなど、置換及び非置換ホルムアミド、並びに置換及び非置換アセトアミドが挙げられる。これらの共媒体の組み合わせを使用してもよい。
【0086】
好適な共媒体としては、4~7の炭素数を有する炭化水素のグリコールが挙げられる。このようなグリコールの例としては、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、エチレン尿素、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,3-ブタントリオール、ソルビトール、ジエチレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、及びトリエチレングリコールが挙げられる。
【0087】
実施形態では、液体系は、水、1,2-アルコール(例えば、1,2-ヘキサンジオール、1,5-アルコール(1,5-ペンタンジオール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、及びグリセロールを含む。
【0088】
水及び共媒体を含む液体系では、水対共媒体の重量比、並びに異なる共媒体の種類及び相対量は、所望の表面張力、粘度などの水性インクジェットインク組成物のある特定の特性を達成するように選択され得る。実施形態では、水対共媒体の重量比は、90:10~51:49である。2つ以上の共媒体が使用される場合、これらの重量比は、共媒体の総量に対するものを指す。これらの重量比は、水性インクジェットインク組成物における水の総量を指す。
【0089】
同様に、様々な液体系の総量が水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。実施形態では、液体系は、50重量%~95重量%、60重量%~90重量%、又は65重量%~90重量%の量で存在する。(ここで、重量%は、(液体系の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)。実施形態では、存在する水の総量は、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%であるか、又は50重量%~95重量%の範囲にある。(ここで、重量%は、(水の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)
【0090】
着色剤
水性インクジェットインク組成物は着色剤を含む。したがって、水性インクジェットインク組成物は、無色であると記載することはできない。代わりに、水性インクジェットインク組成物は、例えば、黒色、白色、青色、赤色、黄色などに着色される。着色剤としては、顔料、染料、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な染料の例としては、アニオン性染料、カチオン性染料、非イオン性染料、及び双性イオン性染料が挙げられる。好適な染料の具体例としては、食用色素のブラックNo.1、食用色素のブラックNo.2、食用色素のレッドNo.40、食用色素のブルーNo.1、食用色素のイエローNo.7など食用色素、FD&C染料、アシッドブラック染料(No.1、7、9、24、26、48、52、58、60、61、63、92、107、109、118、119、131、140、155、156、172、194)、アシッドレッド染料(No.1、8、32、35、37、52、57、92、115、119、154、249、254、256)、アシッドブルー染料(No.1、7、9、25、40、45、62、78、80、92、102、104、113、117、127、158、175、183、193、209)、アシッドイエロー染料(No.3、7、17、19、23、25、29、38、42、49、59、61、72、73、114、128、151)、ダイレクトブラック染料(No.4、14、17、22、27、38、51、112、117、154、168)、ダイレクトブルー染料(No.1、6、8、14、15、25、71、76、78、80、86、90、106、108、123、163、165、199、226)、ダイレクトレッド染料(No.1、2、16、23、24、28、39、62、72、236)、ダイレクトイエロー染料(No.4、11、12、27、28、33、34、39、50、58、86、100、106、107、118、127、132、142、157)、リアクティブレッド染料(No.4、31、56、180)、リアクティブブラック染料(No.31)、リアクティブイエロー染料(No.37)などのリアクティブ染料、アントラキノン染料、モノアゾ染料、ジスアゾ染料、各種フタロシアニンスルホン酸塩を含むフタロシアニン誘導体、アザ(18)アヌレン、ホルマザン銅錯体、及びトリフェノジオキサジンが挙げられる。
【0091】
好適な顔料の例としては、白色顔料、黒色顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料が挙げられる。顔料は、有機粒子又は無機粒子であり得る。好適な無機顔料としては、カーボンブラックが挙げられる。しかしながら、コバルトブルー(CoO-Al2O3)、クロムイエロー(PbCrO4)、酸化鉄、及び二酸化チタン(TiO2)、BaSO4などの他の無機顔料が好適であり得る。好適な有機顔料としては、例えば、ジアゾ顔料及びモノアゾ顔料などアゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンなどフタロシアニン顔料)、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、ピラントロン顔料、及びキノフタロン顔料)、不溶性染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート及び酸性染料型キレート)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、並びにPR168などのアントアントロン顔料が挙げられる。フタロシアニンブルー及びグリーンの代表例としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、及びそれらの誘導体(ピグメントブルー15、ピグメントグリーン7、及びピグメントグリーン36)が挙げられる。キナクリドンの代表例としては、ピグメントオレンジ48、ピグメントオレンジ49、ピグメントレッド122、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントバイオレット19、及びピグメントバイオレット42が挙げられる。アントラキノンの代表例としては、ピグメントレッド43、ピグメントレッド194、ピグメントレッド177、ピグメントレッド216、及びピグメントレッド226が挙げられる。ペリレンの代表例としては、ピグメントレッド123、ピグメントレッド149、ピグメントレッド179、ピグメントレッド190、ピグメントレッド189、及びピグメントレッド224が挙げられる。チオインジゴイドの代表例としては、ピグメントレッド86、ピグメントレッド87、ピグメントレッド88、ピグメントレッド181、ピグメントレッド198、ピグメントバイオレット36、及びピグメントバイオレット38が挙げられる。複素環イエローの代表例としては、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー65、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー90、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー117、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー155、及びピグメントイエロー213が挙げられる。このような顔料は、BASF Corporation、Engelhard Corporation、及びSun Chemical Corporationなど多くの供給元から粉末又はプレスケーキの形態で市販されている。使用可能な黒色顔料の例としては、炭素顔料が挙げられる。炭素顔料は、許容可能な光学濃度及び印刷特性を提供する、任意の市販の炭素顔料であり得る。本系及び方法での使用に好適な炭素顔料は、カーボンブラック、グラファイト、ガラス状炭素、木炭、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このような炭素顔料は、チャンネル法、コンタクト法、ファーネス法、アセチレン法、又はサーマル法など種々の既知の方法で製造することができ、Cabot Corporation、Columbian Chemicals Company、Evonik、及びE.I.DuPont de Nemours and Companyのようなベンダーから市販されている。好適なカーボンブラック顔料としては、MONARCH(登録商標)1400、MONARCH(登録商標)1300、MONARCH(登録商標)1100、MONARCH(登録商標)1000、MONARCH(登録商標)900、MONARCH(登録商標)880、MONARCH(登録商標)800、MONARCH(登録商標)700、CAB-O-JET(登録商標)200、CAB-O-JET(登録商標)300、CAB-O-JET(登録商標)450、REGAL(登録商標)、BLACK PEARLS(登録商標)、ELFTEX(登録商標)、MOGUL(登録商標)、及びVULCAN(登録商標)顔料などCabot社製の顔料、RAVEN(登録商標)5000及びRAVEN(登録商標)3500などColumbian社製の顔料、カラーブラックFW200、FW2、FW2V、FW1、FW18、FW5160、FW5170、スペシャルブラック6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4、PRINTEX(登録商標)U、PRINTEX(登録商標)140U、PRINTEX(登録商標)V、及びPRINTEX(登録商標)140VなどEvonik社製の顔料が挙げられるが、これらに限定されない。他の顔料としては、CAB-O-JET 352K、CAB-O-JET 250C、CAB-O-JET 260M、CAB-O-JET 270Y、CAB-O-JET 465M、CAB-O-JET 470Y、及びCAB-O-JET 480V(Cabot Corporationから入手可能)が挙げられる。他の顔料としては、Kodak,Inc.から入手可能なKodak Specialty Dispersion顔料が挙げられる。これらとしては、Specialty Black Dispersion Type P2、Specialty Cyan Dispersion Type P2、Specialty Yellow Dispersion Type P2、Specialty Magenta Dispersion Type P3、Specialty Black Dispersion Type P4、Specialty Cyan Dispersion Type P1、Specialty Magenta Dispersion Type P1、及びSpecialty Yellow Dispersion Type P1が挙げられる。実施形態では、着色剤は、米国特許第9,359,522号に開示されているキナクリドン系顔料のいずれでもない。
【0092】
上記の顔料リストとしては、未変性顔料微粒子、小分子付着顔料微粒子、自己分散顔料微粒子、及びポリマー分散顔料微粒子が挙げられる。
【0093】
水性インクジェットインク組成物を形成する際、着色剤は、着色剤及び液体(例えば、水)を含む着色剤分散液として提供され得る。着色剤は、粒子の形態であってもよく、20nm~500nm、20nm~400nm、又は30nm~300nmの平均粒子サイズを有し得る。
【0094】
様々な量の着色剤が水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。しかしながら、一般に、水性インクジェットインク組成物の総固形分(一般に樹脂粒子、着色剤、及び存在する場合ワックスによって提供される)が、5重量%~15重量%、6重量%~12重量%、又は7重量%~10重量%であるように、量が選択される。(ここで、重量%は、(固形分の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)
【0095】
水性インクジェットインク組成物の少なくとも実施形態の特徴は、樹脂粒子がインクの着色剤(例えば、顔料)上に付着、吸着、又はコーティングされているのとは対照的に、インク中に自由に分散されることである。これは、水性インクジェットインク組成物の粘度が長期間にわたって高温において変化しないままであることを確認するための粘度測定によって、確認され得る。「変化しない」とは、初期粘度値の±5%以内を意味する。同様に、これは、D50粒子サイズが、長期間にわたって高温で変化しないままである(ここでは、「変化しない」は、変化しない粘度に類似した意味を有する)ことを示す測定値によって確認され得る。
【0096】
ワックス
水性インクジェットインク組成物はワックスを含み得る。例示的なワックスとしては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、微結晶ワックス、ポリオレフィンワックス、モンタン系エステルワックス、及びカルナウバワックスが挙げられる。50℃~150℃の範囲の融点を有するワックスが使用され得る。カルナウバワックス及びパラフィンワックスに基づくナノスケール(例えば、1000nm以下、500nm以下、又は100nm以下の直径)のワックスエマルションが使用され得る。Michelmanのワックスが使用され得る(例えば、Michem Lube 103DI、124、124P135、156、180、182、190、270R、368、511、693、723、743、743P、及び985、並びにMichem Emulsion 24414、34935、36840、41740、43040、43240、44730、47950、48040M2、61355、62330、66035、67235、70750、71150、71152、91735、93235、93335、93935、及び94340)。Aquacer 2500、Aquacer 507、Aquacer 513、Aquacer 530、Aquacer 531、Aquacer 532、Aquacer 535、Aquacer 537、Aquacer 539、及びAquacer 593を含む、Bykからのワックスも使用され得る。実施形態では、ワックスは、Michem Lube 190などのアニオン性ナノスケールワックスエマルションである。
【0097】
様々な量のワックスが水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。しかしながら、一般に、水性インクジェットインク組成物の総固形分含有量が5重量%~15重量%、6重量%~12重量%、又は7重量%~10重量%であるように量が選択される。(ここで、重量%は、(固形分の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)
【0098】
界面活性剤
水性インクジェットインク組成物は、1つ以上の界面活性剤を含み得る。好適な界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate、SLS)、Dextrol OC-40、Strodex PK 90、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、ミレス硫酸ナトリウム、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウムシリーズなど)、非イオン性界面活性剤(Surfynol(登録商標)104シリーズ、Surfynol(登録商標)400シリーズ、Dynol(商標)604、Dynol(商標)607、Dynol(商標)810、EnviroGem(登録商標)360、二級アルコールエトキシレートシリーズ、例えば、Tergitol(商標)15-S-7、Tergitol(商標)15-S-9、TMN-6、TMN-100x、及びTergitol(商標)NP-9、Triton(商標)X-100など)、及びカチオン性界面活性剤(Chemguard S-106A、Chemguard S-208M、Chemguard S-216M)が挙げられる。PolyFox(商標)TMPF-136A、156A、151N、Chemguard S-761p、S-764p、Silsurf(登録商標)A008、Siltec(登録商標)C-408、BYK 345、346、347、348、及び349、ポリエーテルシロキサンコポリマーTEGO(登録商標)Wet-260、270 500などのいくつかのフッ素化又はシリコーン界面活性剤を使用することができる。Chemguard S-500及びChemguard S-111などのアルキルベタインフルオロ界面活性剤又はアルキルアミンオキシドフルオロ界面活性剤などのいくつかの両性フッ素化界面活性剤も使用することができる。使用され得る他の界面活性剤としては、Surfynol PSA 336、Surfynol SE-F、及びSurfynol 107Lが挙げられる。
【0099】
様々な量の界面活性剤が水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。実施形態では、界面活性剤は、0.01重量%~2重量%の範囲の量で存在する。(ここで、重量%は、(界面活性剤の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)。2種類以上の界面活性剤が使用される場合、これらの量は、界面活性剤の総量を指す。
【0100】
添加剤
様々な添加剤を水性インクジェットインク組成物中で使用して、その特性を調整することができる。好適な添加剤は、殺生物剤;殺真菌剤;安定剤;酸又は塩基、リン酸塩、カルボン酸塩、亜硫酸塩、アミン塩、緩衝液などのpH調整剤;発泡防止剤;消泡剤;及び湿潤剤のうちの1つ以上を含む。しかしながら、一般に、分子キレート剤(例えば、EDTA)は含まれない。(分子キレート剤の除外は、金属キレートモノマー、例えば、リン酸モノマー又はスルホン酸モノマー(これらは重合して樹脂粒子になる)を除外することを意味しない)。実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、界面活性剤、湿潤剤、消泡剤、又はこれらの組み合わせを含む。
【0101】
様々な量の添加剤が水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。実施形態では、添加剤は、0.01重量%~5重量%の範囲の量で存在する。(ここで、重量%は、(添加剤の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)。2種類以上の添加剤が使用される場合、これらの量は、添加剤の総量を指す。
【0102】
実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、分子キレート剤(例えば、EDTA)を有しない(すなわち、含まない)。(分子キレート剤の除外は、金属キレートモノマー、例えば、リン酸モノマー又はスルホン酸モノマー(これらは重合して樹脂粒子になる)を除外することを意味しない)
【0103】
水性インクジェットインク組成物は、粘度を更に調整するための添加剤の添加を必ずしも必要としない。これは、水性インクジェットインク組成物が、水溶性樹脂又はエマルション、水性結合剤、ポリマー分散剤、及びこれらの組み合わせを有しない場合がある(すなわち、含まない)。これは、以下に記載される水溶性樹脂又はエマルション、水性結合剤、ポリマー分散剤のいずれかの除外の可能性を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、そのような化合物が含まれ得ることが理解される。最後に、水溶性樹脂、水溶性エマルション、水性結合剤、及びポリマー分散剤という用語はいずれも、本樹脂粒子自体を包含しないことに留意されたい。
【0104】
例示的な水溶性樹脂/エマルションは、ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドンである。
【0105】
例示的な水性結合剤は、Rhohm & Haasから入手可能なRhoplex I-1955、Rhoplex I-2426D、Rhoplex I-62、Rhoplex I-98、Rhoplex E-1691である。他には、DSM Corporationから入手可能なLucidene 190、Lucidene 400、及びLucidene 243;NeoCryl A-1110、NeoCryl A-2092、NeoCryl A-639、NeoRad R-440、NeoRad R-441、NeoRez N-55、972、PVP K-15、PVP K-30、PVP K-60、PVP K-85という名称で、ISPから入手可能な、Ganex P-904LC、PVP/VA W-63である。他の例示的な水性結合剤としては、Joncryl 537、Joncryl H538、Joncryl H538などの、Johnson Polymers(BASF)から入手可能なものが挙げられる。
【0106】
例示的なポリマー分散剤は、スチレン-アクリルコポリマーなどのアクリルポリマー、及びビニルピロリドンコポリマー、ウレタン又はポリウレタン分散液、及びアクリル-ウレタンハイブリッド分散液である。より特定のポリマー分散剤としては、Joncryl(登録商標)671、Joncryl(登録商標)683、Joncryl(登録商標)296、Joncryl(登録商標)690、Joncryl HPD 296、Joncryl HPD96-E、Joncryl LMV 7085、Joncryl 8082などの、Johnson Polymers(BASF)から入手可能なものが挙げられる。他の分散剤としては、分散剤の目的のために参照により組み込まれる欧州特許第2097265号に記載されているもの、及び分散剤の目的のために参照により組み込まれる米国特許出願第2019/284414号に記載されているものが挙げられる。
【0107】
同様に、水性インクジェットインク組成物は、本樹脂粒子の樹脂によって提供しれるもの以外の樹脂を有しない場合がある(すなわち、含まない)。単一の種類の樹脂を使用することができる。同様に、水性インクジェットインク組成物自体は、一般に硬化性ではなく、したがって、開始剤を有しない(すなわち、含まない)。樹脂粒子及びラテックスに関して上記で参照された任意の他の除外は、水性インクジェットインク組成物の実施形態に適用され得ることに留意されたい。
【0108】
実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、液体系と、樹脂粒子と、着色剤と、任意選択的に、ワックス及び添加剤のうちの1つ以上と、を含む(又はこれらからなる)。実施形態では、インク組成物は、液体系と、樹脂粒子と、着色剤と、ワックスと、任意選択的に添加剤と、を含む(又はこれらからなる)。これらの実施形態のうちのいずれかでは、添加剤は、安定剤、界面活性剤、消泡剤、及び湿潤剤から選択され得る。これらの実施形態のうちのいずれかでは、構成成分は、本明細書に開示される液体系、樹脂粒子、着色剤、ワックス、及び添加剤のうちのいずれかから選択され得る。これらの実施形態のうちのいずれかでは、上に記載されるように構成成分の量が使用され得る。実施形態では、樹脂粒子の組成は、ポリ[(スチレン)-ran-(ブチルアクリレート)-ran-(リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル)-ran-(ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート)-ran-(メタクリル酸)-ran-(アニオン性エーテルサルフェート)]と同定され得る。実施形態では、樹脂粒子の組成物は、ポリ[(スチレン)-ran-(ブチルアクリレート)-ran-(グリセロールホルマール(メタ)アクリレート)-ran-(スチレンスルホン酸)-ran-(メタクリル酸)-ran-(アニオン性エーテルサルフェート)]と同定され得る。この記載の使用は、各コポリマーの開始部での開始剤(又はその一部分)の存在、並びに架橋(使用される場合)を包含する。これらの実施形態では、重合モノマーの量は、「インクジェットプライマ組成物」では上述した範囲内であり得る。
【0109】
水性インクジェットインク組成物は、所望の構成成分を所望の量で組み合わせて、混合することによって形成され得る。例示的な方法は、開示の樹脂粒子(又は樹脂粒子を含むラテックス)のうちのいずれかを、着色剤分散液に添加して、第1の混合物を形成することと、液体系及び添加剤を含む第2の混合物を、第1の混合物に添加して、水性インクジェットインク組成物を形成することと、を含む。ワックスを含む第3の混合物を、組み合わせた第1及び第2の混合物に添加してもよい。混合及び/又は加熱を、方法中に使用してもよい。水性インクジェットインク組成物を、使用前に濾過してもよい。例示的な詳細を、以下の実施例に提供する。
【0110】
特性
水性インクジェットインク組成物は、それらの粘度を特徴とし得る。粘度は、測定することができ、「インクジェットプライマ組成物」に関して上述した範囲内であり得る。
【0111】
インクジェット印刷
上述したように、開示のインクジェットプライマ組成物は、基材上に印刷され、その上にインク受容層を形成することができる。印刷は、任意の種類のインクジェット印刷システムによって達成され得る。インクジェット印刷システムは、ノズル内のインクジェットプライマ組成物が、画像様パターンで選択的に加熱され、それによってインクジェットプライマ組成物の液滴を画像様パターンで射出させるサーマルインクジェット印刷プロセスを使用するように構成され得る。代替的に、インクジェット印刷システムは、インクジェットプライマ組成物の液滴を、音響ビームによって、画像様パターンで噴射させる音響インクジェット印刷プロセスを使用するように構成され得る。更に別の実施形態では、インクジェット印刷システムは、インクジェットプライマ組成物の液滴を、圧電振動要素(piezoelectric vibrating element)の振動(oscillation)によって、画像様パターンで射出させる圧電インクジェットプロセスを用いるように構成され得る。インクジェットプライマ組成物から形成される画像様パターンの形態及び寸法は、限定されず、したがって、インク受容層は、テキスト、グラフィックなどを含む様々な形態及び寸法を有し得る。
【0112】
次に、開示の水性インクジェットインク組成物のうちのいずれかが、インク受容層上に印刷され得る。水性インクジェットインク組成物の印刷はまた、開示のインクジェット印刷システムのうちのいずれかを使用して、一般に、インク受容層を形成するために使用されたものと同じインクジェット印刷システム及び同じプリントヘッドを使用して、進められる。水性インクジェットインク組成物を使用して先に印刷されたインク受容層上に印刷される画像は、先に印刷されたインク受容層と同じ形態/寸法であってもよいか、又は異なる形態/寸法を有してもよい。加熱は、インクジェットプライマ組成物の印刷と水性インクジェットインク組成物の印刷との間、又は水性インクジェットインク組成物の印刷後のいずれか、又はその両方で、インク受容層及び印刷画像から水及び共媒体を除去するために使用され得る。
【0113】
開示のインクジェットプライマ組成物のうちのいずれかと、開示の水性インクジェットインク組成物のうちのいずれかとを含むインクジェットセットも、本開示によって包含される。インクジェットセットは、開示のインクジェット印刷システムのうちのいずれかに搭載可能な又は搭載されたプリントヘッドのうちの1つ以上のチャンネルを介して、提供され得る。
【0114】
開示のインクジェットプライマ組成物及び水性インクジェットインク組成物は、任意の好適な基材上に印刷され得る。例示的な基材としては、オフセットコート紙及び段ボールを含む紙、並びにプラスチックが挙げられる。また、本開示に包含されるのは、表面と、表面上(直接に上を含む)のインク受容層と、インク受容層上(直接に上を含む)の印刷画像とを有する基材である。上記のように、インク受容層は、開示のインクジェットプライマ組成物のうちのいずれかを基材上に印刷することによって形成され、印刷画像は、開示の水性インクジェットインク組成物のいずれかをインク受容層上に印刷することによって形成される。インク受容層は、インクジェットプライマ組成物中に存在していた樹脂粒子を含む。インクジェットプライマ組成物の他の構成成分がインク受容層中に存在していてもよいが、一般に、水及び共媒体は蒸発/加熱により除去されている。同様に、印刷画像は、水性インクジェットインク組成物中に存在していた樹脂粒子、並びに着色剤を含む。水性インクジェットインク組成物の他の構成成分が印刷画像中に存在していてもよいが、一般に、水及び共媒体は蒸発/加熱により除去されている。
【実施例0115】
以下の実施例は、本開示の様々な種類を更に定義するために提示される。これらの実施例は、例示のみを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。また、別途記載のない限り、割合及び百分率は重量による。
【0116】
実施例1~2
MontelloからのHitenol AR-1025又はAR-20(両方ともポリオキシエチレンスチレン化エーテル硫酸アンモニウム)のいずれかの反応性界面活性剤溶液を、ガラス反応器中で混合することによって調製した。使用したこれらの構成成分の量を以下の表1に示す。次いで、反応物を窒素で30分間パージした。次いで、反応器を250rpmで撹拌しながら、窒素で連続的にパージした。次いで、反応器を75℃まで加熱し、そこで保持した。これとは別に、脱イオン水と選択したモノマーとを組み合わせ、混合してエマルションを形成することによって、モノマーエマルションを調製した。選択したモノマー及びそれらの量を、以下の表1に示す。別に、過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を水に溶解することによって、開始剤溶液を調製した。これらの構成成分の量を、以下の表1に示す。
【0117】
モノマーエマルションの一部(5重量%)を、反応性界面活性剤溶液を含有する反応器に10分間かけて供給した。更に10分後、開始剤溶液を反応器に添加した。次いで、モノマーエマルションの残りを、2時間かけて反応器に供給し、反応を更に2時間進行させた。モノマーエマルションのモノマーの重合から形成された樹脂粒子を含有する得られたラテックスを、室温に冷却し、ジメチルエタノールアミン(dimethylethanolamine、DMEA)水溶液又はKOH溶液のいずれかでpH8.0に中和した。
【0118】
表1.樹脂粒子を含有するラテックスを形成するために使用される、反応性界面活性剤溶液と、モノマーエマルションと、開始剤溶液との組成物。
【0119】
【0120】
反復実験では、シードフィード乳化重合(seed-feed emulsion polymerization)(上記)の代わりにシードフリースターブドマイクロエマルション重合(seed-free starved microemulsion polymerization)を行うために、反応器に開始剤溶液を充填した後に、モノマーエマルション全部を反応器に供給した。その後の工程は、上記のシードフィードエマルション重合について記載した工程と同様であった。
【0121】
実施例3
実施例2のラテックスを使用して、以下の工程を用いて黒色水性インクジェットインク組成物を形成させた。水性インクジェットインク組成物の配合を、表2に示す。
【0122】
1.黒色顔料分散液を脱イオン水に添加し、Cowlesブレードインペラを使用して約650RPMの速度で約15分間混合した。
【0123】
2.実施例2のラテックスを顔料分散液にゆっくり添加し、約20分間混合した(混合物A)。
【0124】
3.別のビーカーで、共媒体及び添加剤(安定剤、界面活性剤、湿潤剤/消泡剤)を混合して、均一な混合物(混合物B)を形成させた。
【0125】
4.混合物Bを混合物Aにゆっくりと添加した。添加が完了すると、構成成分を更に20分間混合した。
【0126】
5.ワックスを添加し、混合を更に約15分間継続した。
【0127】
6.混合した後、黒色水性インクジェットインク組成物を室温で約60分間放置してから、pH、導電率及び表面張力をチェックした。
【0128】
表2.水性インクジェットインク組成物の組成。
【0129】
【0130】
実施例4
実施例1のラテックスを使用して、実施例3の黒色水性インクジェットインク組成物と同じ工程(黒色顔料分散液含む工程1及びワックスを含む工程5は除く)を使用して、インクジェットプライマ組成物を形成した。インクジェットプライマ組成物の配合を、表3に示す。
【0131】
表3.インクジェットプライマ組成物の組成。
【0132】
【0133】
印刷試験
McCoy(登録商標)光沢番号(gloss#)100及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)を含む2つの基材上に、Dimatix DMP2800プリンターを使用して、黒色水性インクジェットインク組成物及びインクジェットプライマ組成物を噴射した。使用された試験キーパラメータの第1のセットは、以下のとおりであった:液適質量=4.5~4.8ng(すなわち、約4.5ng)、液滴速度=6~7m/秒、周波数=5kHz、電圧=16~20V、印刷温度は20℃~40℃であった。使用された試験キーパラメータの第2のセットは、以下のとおりであった:液適質量=8.5~9ng(すなわち、約9ng)、液滴速度=9~11m/秒、周波数=5kHz、電圧=24~27V、印刷温度は20℃~40℃であった。印刷パラメータは、600×600dpi印刷であった。測定は、デジタルルーペを有するパーソナル画像分析システムであるPIAS II機器を使用して行った。ドットサイズ及び直径を測定するために、約3.2mm×2.4mmの視野を有する高解像度光学モジュール、約5μm/ピクセルを使用した。10~30分を超える連続噴射を合格した水性インクジェットインク組成物/インクジェットプライマ組成物は、良好な潜在性を示すと見なした。
【0134】
光沢
光沢差値を決定するために、光沢測定値を得た。BYK Gardner Micro Gloss計(75°)を、光沢測定に使用した。試料が紙基材上に印刷されると、印刷された試料は24時間保持される。75°での光沢を、デジタルマイクロ光沢計で測定する。次いで、印刷された試料を、ワイプで30回擦り、光沢を再度測定する。30回のワイピング前後の光沢差を計算する。光沢差が低いほど、摩擦に対する印刷堅牢性の品質が良好である。
【0135】
湿潤耐摩擦性(耐水性)
試料を、湿潤耐摩擦性(湿潤Q-tipを使用して20回の二重摩擦)(耐水性)について試験した。各試料の液滴を、所望の基材上に印刷した。表4の数字は、試料の任意の除去が観察される前に得られた二重摩擦の数(3つの測定値の平均)を示している。
【0136】
2つの試料に関する結果を、以下の表4に示す。第1の試料では、実施例4のインクジェットプライマ組成物の9ngの液滴を、McCoy光沢紙上に最初に印刷した。次に、実施例3の黒色水性インクジェットインク組成物の9ngの液滴を、先に印刷したインクジェットプライマ組成物上に印刷した。第2の比較試料では、実施例3の黒色水性インクジェットインク組成物の9ngの液滴を、McCoy光沢紙上に印刷した(インクジェットプライマ組成物は使用しなかった)。
【0137】
表4.McCoy光沢紙上に9ngの液滴のプライマ/インクを使用した特性決定。
【0138】
【0139】
表4に示したように、インクジェットプライマ組成物の使用により、線幅、斑紋、及びラジェッドネスが改善された。注目すべきことに、インクジェットプライマ組成物の使用により、光沢差(Δ光沢)は、2単位未満に減少した。インクジェットプライマ組成物を使用することにより、光沢差は、12倍超改善された。これは、光沢性能における前例のない顕著な商業的改善である。
【0140】
「例示的な」という語は、例、事例、又は例示としての役割を果たすことを意味するために本明細書で使用される。「例示的な」として本明細書で記載される任意の態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計に比べて好ましい又は有利であると解釈されない。更に、本開示の目的のために、特に指定がない限り、「a」又は「an」は、「1つ以上」を意味する。
【0141】
既に含まれていない場合、本開示におけるパラメータの全ての数値は、およそを意味する「約」という用語によって進められる。これは、当業者に理解されるような関連パラメータの測定に固有の変動を包含する。これはまた、開示された数値及び開示された数値を四捨五入した値の正確な値も包含する。
【0142】
本開示の例示的な実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的のために提示される。網羅的であること、又は本開示を開示される正確な形態に限定することを意図するものではなく、上記の教示に照らして修正及び変形が可能であるか、又は本開示の実施から取得されてもよい。本開示の原理を説明するために、及び本開示の実用的な用途として、当業者が様々な実施形態において本開示を利用することを可能にするために、かつ企図される特定の用途に適した様々な修正を用いて、実施形態が選択及び記載される。本開示の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されることが意図される。