(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009816
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ガラス粉末を含有する表面処理剤と組み合わせた多孔質ジルコニア物品を高速焼成するための部材のキット及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 6/878 20200101AFI20240116BHJP
A61K 6/77 20200101ALI20240116BHJP
A61K 6/836 20200101ALI20240116BHJP
【FI】
A61K6/878
A61K6/77
A61K6/836
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023156582
(22)【出願日】2023-09-22
(62)【分割の表示】P 2020545147の分割
【原出願日】2019-02-21
(31)【優先権主張番号】18159089.4
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18192481.2
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ハウプトマン,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ゲーツィンガー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ,ジャクリーン シー.
(72)【発明者】
【氏名】シュミットナー,シビレ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】歯科用ジルコニア修復物を提供する。
【解決手段】焼結歯科用ジルコニア修復物であって、以下のセクション:ガラス層セクションであって、10~200μmの層厚を有する、ガラス層セクションと、前記ガラス層セクションに隣接する中間層セクションであって、前記ガラス層セクションの前記ガラスを浸潤させたジルコニア材料セクションを含有し、且つ0.01~5μmの層厚を有する、中間層セクションと、前記中間層セクションに隣接するジルコニア材料セクションであって、ガラスを含有しない、ジルコニア材料セクションと、を有する、焼結歯科用ジルコニア修復物とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用ジルコニア修復物の製造方法であって、
前記歯科用ジルコニア修復物が、外側表面及び内側表面を有し、
前記方法が、
多孔質歯科用ジルコニア修復物及びガラスを、前記多孔質歯科用ジルコニア修復物が焼結されるまで焼成する工程であって、
前記ガラスは、前記焼成工程中に、前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の前記外側表面の少なくとも一部分上に位置している、焼成する工程を含み、
前記多孔質歯科用ジルコニア修復物のジルコニア材料及び前記ガラスは、前記焼成工程中に、前記ガラスが前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の孔に、深さ5μmを超えない程度に浸潤するように選択される、方法。
【請求項2】
前記ガラスが、前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の前記孔が閉鎖される温度で、少なくとも104Pa*sの粘度を有する、請求項1に記載の歯科用ジルコニア修復物の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス及び前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の前記ジルコニア材料が、以下:
前記ガラスの粘度が、1,300℃の温度で少なくとも104Pa*sであり、かつ前記ジルコニア材料が、焼成前に、40nm以上90nm未満の範囲の平均連結孔径を有するか、
又は、
前記ガラスの粘度が、1,300℃の温度で少なくとも105Pa*sであり、かつ前記ジルコニア材料が、焼成前に、90nm~150nmの範囲の平均連結孔径を有する、
により特徴付けられる、請求項1又は2に記載の歯科用ジルコニア修復物の製造方法。
【請求項4】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクから前記多孔質歯科用ジルコニア修復物を機械加工する工程と、
前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の前記外側表面の少なくとも一部に、前記ガラスを含む表面処理剤を適用する工程と、
任意に、前記多孔質歯科用ジルコニア修復物を乾燥させる工程と、
前記表面処理剤が適用された前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の焼成工程を実施する工程と、を含み、
前記焼成工程が、
第1の熱処理セグメントを含み、
前記第1の熱処理セグメントが、
少なくとも3K/秒の加熱速度を用いて、
前記歯科用ジルコニア修復物の最終焼結温度(℃)の75~90%の温度レベルが達成されるまで実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用ジルコニア修復物の製造方法。
【請求項5】
前記焼成工程が、前記第1の熱処理セグメントの後に引き続いて第2の熱処理のセグメントを含み、
前記第2の熱処理のセグメントは、異なる加熱速度を有し、好ましくは、前記第1の熱処理セグメントの加熱速度よりも低く、
前記第2の熱処理セグメントは、少なくとも1,500℃の焼結温度に達するまで適用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記焼成工程が、最大8分の放置時間によって特徴付けられる、前記第2の熱処理セグメントの後に引き続く第3の熱処理セグメントを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記焼成工程が、前記第3の熱処理セグメントの後に引き続いて、冷却セグメントを含み、前記冷却セグメントが、以下の特徴、
冷却速度:3K/秒以上、
持続時間:6分以下
の単独又は組み合わせで特徴付けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記焼成工程及び前記冷却セグメントの持続時間が、30分以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって得られる焼結歯科用ジルコニア修復物であって、反射モードで450~800nmの波長を用いて厚さ1mmの試料上で測定した場合、前記焼結歯科用修復物の透光性が25%以上である、焼結歯科用ジルコニア修復物。
【請求項10】
以下のセクション:
ガラス層セクションであって、
10~200μmの層厚を有する、ガラス層セクションと、
前記ガラス層セクションに隣接する中間層セクションであって、前記ガラス層セクションの前記ガラスを浸潤させたジルコニア材料セクションを含有し、0.01~5μmの層厚を有する、中間層セクションと、
前記中間層セクションに隣接するジルコニア材料セクションであって、
ガラスを含有しない、ジルコニア材料セクションと、を有する、請求項9に記載の焼結歯科用ジルコニア物品。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法で使用するための、又は請求項9若しくは10に記載の焼結歯科用ジルコニア修復物を製造するための部材のキットであって、前記部材のキットが、多孔質歯科用ジルコニアミルブランク及び表面処理剤を含み、
前記多孔質歯科用ジルコニアミルブランクが、40~150nmの平均連結孔径を有し、
前記表面処理剤が、ガラスを含み、前記ガラスが、1,300℃の温度で、少なくとも104Pa*sの粘度を有し、
前記多孔質歯科用ジルコニアミルブランクの材料が、請求項1~8のいずれか一項に記載の多孔質歯科用ジルコニア修復物のジルコニア材料に対応し、
前記ガラスが、請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスに対応する、部材のキット。
【請求項12】
前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの前記材料が、以下の特徴、
BET表面:5~15m2/g、
密度:2~4g/cm3、
多孔率:30~70%、
平均粒径:50~200nm、
熱膨張係数:8.5×10-6K-1~11.5×10-6K-1、
の単独又は組み合わせで更に特徴付けられる、請求項11に記載の部材のキット。
【請求項13】
前記ガラスが、以下の特徴、
シリカ系ガラスであること、
熱膨張係数:1×10-6K-1~10×10-6K-1、
表面張力:1,300℃で210~300mN/m、
1,100℃~1,350℃の温度でのリトルトン軟化点粘度、
1,300℃~1,650℃の温度での流動点粘度、
のうちの単独で又はそれらを組み合わせて特徴付けられる、請求項11又は12に記載の部材のキット。
【請求項14】
下記の項目:
使用説明書、
前記表面処理剤用の適用器具、
焼結助剤、
粉末として提供される場合、前記ガラスを分散させるための液体、
任意に、シェードガイド、
任意に、研磨助剤、
任意に、焼結オーブン、
のうちの1つ以上を更に含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の部材のキット。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の多孔質歯科用ジルコニアミルブランク、表面処理剤、又は部材のキットの、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法において歯科用ジルコニア修復物を製造するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレイズジルコニア歯科用修復物を得るために、表面処理剤の一部としてガラスと組み合わせて、多孔質ジルコニア歯科材料を最終密度に高速焼成する方法に関する。本発明はまた、高速焼成プロセスにおいて、このような歯科用修復物を製造するのに有用な多孔質歯科材料及びガラスを含む部材のキットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、歯科用修復物は、典型的には、以下のアプローチのうちの1つを使用することによって製造される。
【0003】
1つのアプローチは、診療室内又はチェアサイドで機械加工することができる、開気孔酸化物セラミックを使用することである。
【0004】
しかしながら、ミリング加工工程の後、高強度材料を得るために時間を要する熱処理工程が必要とされる。熱処理工程の間、例えば、ガラス材料を多孔質セラミック物品に浸潤させて(infiltrated)、物品の強度を向上させる。
【0005】
このような方法は、例えば、米国特許出願公開第2012/0064490(A1)号(Rothbrustら)に記載されている。開孔酸化物セラミックの孔への浸潤物質の浸潤は、典型的には、真空中で、開孔酸化物セラミックの厚さの2~90%の深さまで行われる。0.2~0.8mmの範囲の浸潤深さが報告されている。
【0006】
同様に、CN 104774007(B)号(Jinan University)は、(1)0.2mmの厚さを有するガラス層と、(2)0.3mmの厚さを有するガラス透過性ジルコニアの機能傾斜性層と、(3)0.5mmの厚さを有する緻密なジルコニア層との三層構造を得るために歯科用ガラスによって浸潤された、部分的に透過性の機能傾斜ジルコニアセラミック材料を記載している。含浸プロセスに使用されるガラスは、組成:La2O3:15%、ZrO2:5%、Y2O3:5%、SiO2:20%、B2O3:15%、BaO:15%、Al2O3:15%、TiO2:4%、CaO:4%、CeO2:1%、Fe2O3:1%を有する。別のアプローチは、完全に焼結されたジルコニアを粉砕することである。
【0007】
完全に焼結されたジルコニアの強度レベルは、ガラスセラミック材料の強度と比較して高い。しかしながら、審美性は、完全に満足しているとは見なされないことがあり、研削自体も時間がかかる。更に、所望の審美的光沢度を得るために、典型的には、グレイジング又は研磨工程が必要とされる。
【0008】
このようなアプローチは、例えば、米国特許出願公開第2017/143456(A1)号(Cardenら)に記載されており、ここでは、完全に焼結されたジルコニア材料が、チェアサイド粉砕機で歯科用修復物に粉砕される。別のアプローチは、予備焼結されたジルコニア材料を使用することである。
【0009】
ジルコニア歯科用修復物は、予備焼結(多孔質)ブロックを所望の形状に機械加工することによって歯科技工室で作製され、それによって、後の焼成プロセス中のジルコニア材料の収縮を考慮する。完全密度への焼成プロセスは、典型的には、少なくとも45分間を要する。
【0010】
焼成工程の後に、特に光沢があり、非常に審美的な歯科用修復物が望まれる場合、典型的には、第2のいわゆるグレイズ焼成工程が必要とされる。
【0011】
ジルコニア修復物のグレイジングは、多くの場合、対向する歯の摩耗のリスクを低減すること、及び審美的理由のために推奨される。
【0012】
これは、典型的には、歯科技工士によって歯科技工室で行われる。歯科技工士は、焼結されたジルコニア材料の表面上にガラス粉末の層を手動で適用し、多孔質ジルコニア材料を焼結するために使用される焼結温度と比較してはるかに低い温度で両者を焼成する。ガラス粉末は、典型的には、900℃未満の融解温度を有する。
【0013】
文献には、特に、ジルコニア材料の強度を改善し、かつ破壊問題を回避するために、予備焼結ジルコニア材料とガラスセラミック組成物との一種の共焼成の方法が記載されている。
【0014】
国際公開第2016/142234(A1)号(Gebr.Brasseler)は、いわゆる過可燃性ケイ酸リチウム系及び/又は有機液体中に分散された長石系を含む、二酸化ジルコニウムの歯科用修復物の仕上げのための物質混合物を記載している。熱処理は、典型的には、850~950℃の温度で行われる。二酸化ジルコニウムの表面は、好ましくは孔を含まないことが記載されている。
【0015】
米国特許出願公開第2008/0241551(A1)号(Zhangら)は、a)ある種の粉末ガラスセラミック組成物を予備焼結されたジルコニア基材のアクセス可能な表面に適用する工程と、b)ガラスセラミック組成物を基材に浸潤させる工程と、c)加熱により基材を緻密化する工程と、を含む、機能傾斜ガラス/ジルコニア/ガラスサンドイッチ材料を調製する方法を示唆している。
【0016】
実施例の項では、800℃/時の加熱及び冷却速度が報告されている。全体的な浸潤及び緻密化プロセスには、2時間が必要である。勾配層の厚さは、60~150μmの範囲であると言われる。
【0017】
このような方法が多孔質歯科用ジルコニア材料に適用される場合、得られる物品は、審美的な歯科用修復物の要件を満たさない。
【0018】
更に、ガラスセラミック組成物が歯科用修復物の表面の特定の領域(例えば、歯科用ジルコニアクラウン前駆体の外面)にのみ適用される場合、焼結歯科用修復物は、使用される2つの材料の異なる焼結及び収縮挙動によって引き起こされる歪みを示し得る。
【発明の概要】
【0019】
医師が、ジルコニア歯科用修復物をチェアサイドで製造することを可能にする、即ち歯科技工室の使用を必要としない方法に対する要望が存在する。特に、高速な手順が望まれている。
【0020】
理想的には、患者の口腔内の歯科状況の走査から歯科用修復物の着座までに必要な時間は、50分未満であるべきである。
【0021】
理想的には、多孔質歯科用ジルコニア修復物を焼結及びグレイジングするために必要な時間は、30分未満まで低減されるべきである。更に、理想的には、方法は、容易に実行し、予測可能な結果をもたらすべきである。
【0022】
上記目的の1つ以上は、本明細書に記載される本発明によって対処される。
【0023】
一実施形態では、本発明は、特許請求の範囲及び本明細書に記載の歯科用ジルコニア修復物の製造方法であって、
歯科用ジルコニア修復物が、外側表面及び内側表面を有し、
方法が、
多孔質歯科用ジルコニア修復物及びガラスを、多孔質歯科用ジルコニア修復物が焼結されるまで焼成する工程であって、
ガラスは、焼成工程中に、多孔質歯科用ジルコニア修復物の外側表面の少なくとも一部分上に位置している、焼成する工程を含み、
多孔質歯科用ジルコニア修復物のジルコニア材料及びガラスは、焼成工程中に、ガラスが多孔質歯科用ジルコニア修復物の孔に、深さ5μmを超えない程度に浸潤するように選択される、方法を特徴とする。
【0024】
本発明はまた、このような方法によって得られる(obtainable)か、又は得られる(obtained)焼結ジルコニア歯科用修復物に関する。
【0025】
本発明は更に、請求項及び本明細書に記載の多孔質歯科用ジルコニアミルブランクと、ガラスを含む表面処理剤と、を含む部材のキット、及びこのようなキットの、単一の焼成プロセスにおいて焼結されたジルコニア歯科用修復物を製造するための使用に関する。
【0026】
本発明の更なる態様は、請求項及び本明細書に記載されている部材のキット又はその対応する個々の部材の、歯科用ジルコニア修復物を製造するための使用を目的とする。
【0027】
別段の定義のない限り、以下の用語は、以下に記載の意味を有するべきである。
【0028】
用語「歯科用物品」は、歯科の分野で、特に歯科用修復物、及びこれらの部分を製造するために使用される任意の物品を意味する。
【0029】
歯科用物品は、典型的には、凸状及び凹状構造を含む三次元の内側表面及び外側表面を有する。陶器又は敷石などの他の物品と比較して、歯科用物品は、小さく繊細なものである。歯科用物品の厚さは、非常に薄い部分、例えば、縁部及びリム(0.1mm未満)から、かなり厚い部分まで、例えば、咬合領域(最大8mm)まで変化し得る。歯科用ブリッジ内のクラウン部分を架橋するセクションは、最大20mmの厚さを有し得る。
【0030】
外側表面は、典型的には全体的な凸状形状を有するが、一方内側表面は、典型的には全体的な凹状形状を有する。
【0031】
典型的には、本明細書に記載の歯科用物品は、焼結後に、イットリウム安定化ZrO2を含む多結晶セラミック材料を含むか、又はこれから本質的になる。
【0032】
歯科用物品の例としては、クラウン(モノリシックなクラウン等)、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニヤ、前装、コーピング、クラウン及びブリッジフレームワーク、インプラント、アバットメント、歯科矯正装置(例えば、ブラケット、バッカルチューブ、クリート及びボタン)、モノリシックな歯科用修復物(即ち、ベニアを接着する必要のない修復物)及びこれらの一部が挙げられる。歯の表面は、歯科用物品とは見なされない。
【0033】
歯科用物品は、患者の健康に有害である構成成分を含有してはならず、したがって、歯科用物品から移動し得る有害かつ毒性の構成成分を含まない。
【0034】
「歯科用ミルブランク」とは、そこから歯科用物品、歯科用加工物、歯科用支持構造又は歯科用修復物を、任意のサブトラクティブな方法、例えばミリングの外にも研削加工、ドリル加工等によって機械加工することができ、典型的にはこれらの方法によって加工される、材料の中実なブロック(3次元の物品)を意味する。
【0035】
歯科用ミルブランクは、幾何学的に定義された形状を有し、少なくとも1つの平坦な表面を有している。いわゆる「自由成形表面」は、「幾何学的に画定された」とはみなされない。この点で、歯科用修復物(例えば、クラウン又はブリッジ)の形状自体は、歯科用ミルブランクとはみなされない。
【0036】
「ジルコニア物品」とは、x、y、z寸法のうちの少なくとも1つが、少なくとも約5mmである三次元物品を意味するものとし、この物品は、少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%のジルコニアから構成される。
【0037】
「セラミック」とは、熱を加えることによって製造される無機の非金属材料を意味する。セラミックは、通常、硬く、多孔性かつ脆性であり、ガラス又はガラスセラミックとは対照的に、本質的に純粋な結晶質構造を示す。
【0038】
「結晶質」とは、三次元で周期的なパターンで配置される(即ち、X線回折により測定される長範囲結晶構造を有する)原子からなる固体を意味する。ジルコニアセラミックの結晶構造としては、正方晶系、単斜晶系、立方晶系、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
「モノリシックな歯科用修復物」とは、その表面に前装又はベニヤが貼り付けられていない歯科用セラミック物品を意味する。即ち、モノリシックな歯科用修復物は、本質的に、1つの材料組成のみから構成される。しかし、所望であれば、薄いグレイジング層を適用することができる。
【0040】
「ガラス」とは、熱力学的に過冷却され液体である無機の非金属非晶質材料を意味する。ガラスは、硬く、脆性の、透明な固体を指す。典型的な例としては、ソーダ石灰ガラス及びホウケイ酸ガラスが挙げられる。ガラスは、結晶化することなく剛性状態まで冷却された融合物の無機生成物である。ほとんどのガラスは、それらの主ガラス形成成分としてのシリカ及び一定量の中間生成物並びに変性剤酸化物を含有する。本明細書に記載の多孔質セラミック歯科用材料は、ガラスを含有しない。
【0041】
「ガラス-セラミック」とは、この材料が、ガラス材料とセラミック材料とを組み合わせて又は混合物の状態で含むように、1つ以上の結晶相がガラス相によって囲まれている無機の非金属材料を意味する。これはガラスとして形成され、次いで、核形成及び結晶化熱処理によって結晶化される。ガラスセラミックスは、酸化リチウム、酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムの混合物を指す場合がある。
【0042】
本明細書に記載の多孔質歯科用材料は、ガラス-セラミックを含有しない。
【0043】
「粉末」とは、振盪され又は傾けられる際に自由に流動することができる多数の微細な粒子からなる乾燥したバルクを意味する。
【0044】
「粒子」とは、幾何学的に測定できる形状を有する固体である物質を意味する。その形状は規則的か又は不規則的であり得る。粒子は、典型的には、例えば粒度及び粒度分布に関して分析され得る。
【0045】
「密度」とは、物体の体積に対する質量の比を意味する。密度の単位は、典型的には、g/cm3である。物体の密度は、例えば、その体積を求め(例えば、計算により又はアルキメデスの原理若しくは方法を適用することにより)、かつその質量を測定することによって、算出することができる。
【0046】
サンプルの体積は、サンプルの全体の外形寸法に基づいて求めることができる。サンプルの密度は、測定されたサンプル体積及びサンプル質量から算出することができる。セラミック材料の総体積は、サンプルの質量及び使用した材料の密度から計算することができる。サンプル中の気泡の総体積は、サンプル体積の残部であると想定される(100%から材料の総体積を減算したもの)。
【0047】
「多孔質材料」とは、セラミックの技術分野では、空隙又は孔によって形成される部分容積を含む材料を指す。
【0048】
したがって、材料の「連続気泡(open-celled)」構造は「開多孔質(open-porous)」構造と呼ばれることがあり、「独立気泡(closed-celled)」材料の構造は「閉孔(closed-pored)」構造と呼ばれることがある。連続気泡又は開多孔質構造を有する材料には、
例えば気体を通過させることができる。
【0049】
「連続気泡材料」の典型的な値は、15%~75%又は18%~75%、又は30%~70%、又は34%~67%、又は40%~68%、又は42%~67%である。
【0050】
用語「独立気泡」は、「閉多孔率」に関連する。独立気泡は、外側からアクセス不可能であって、周囲条件下でガス又は液体が侵入することができない気泡である。
【0051】
「平均連結孔径(average connected pore diameter)」は、材料の連続気泡孔の平均
サイズを意味する。平均連結孔径は、実施例の項に記載の通り算出することができる。
【0052】
用語「か焼」は、揮発性化学結合成分(例えば、有機構成成分)の少なくとも90重量パーセントを除去するために固体材料を加熱するプロセスを指す(例えば、物理的に結合された水を加熱により除去する乾燥工程と対比される)。か焼は、予備焼結工程の実施に必要な温度よりも低い温度で実施される。
【0053】
用語「焼結(sintering)」又は「焼成(firing)」は互換的に使用される。多孔質セ
ラミック物品は、焼結工程の間、即ち好適な温度が適用されると、収縮する。適用される焼結温度は、選択されたセラミック材料に応じて異なる。ZrO2系セラミックスの場合、典型的な焼結温度範囲は、1,100℃~1,550℃である。高い加熱速度で焼結が行われる場合、より高い温度が必要とされ得る。焼結は、典型的には、多孔質材料を、より高い密度を有する、より多孔質ではない材料(又はより少ない気泡を有する材料)に高密度化することを含み、場合によっては、材料相の組成の変化(例えば、非晶質相から結晶相への部分的変換)を含むこともある。
【0054】
歯科用ジルコニア物品は、「3つのボールのパンチ試験」ISO 6872:2015に従って測定された歯科用セラミックの未加工の破壊抵抗が、15~55MPa又は20~50MPaの範囲内であるような程度まで、歯科用ジルコニア物品が加熱(900~1,100℃の温度範囲)で1~3時間処理された場合に、「予備焼結された」と分類される。
【0055】
予備焼結歯科用セラミックは、通常、多孔質構造を有し、その密度(通常、イットリウム安定化ZrO2セラミックに対して約3.0g/cm3)は、完全に焼結された歯科用セラミックフレームワーク(通常、イットリウム安定化ZrO2セラミックに対して約6.1g/cm3)と比較して低い。
【0056】
「等方性焼結挙動」とは、焼結プロセス中の多孔質体の焼結が、方向x、y及びzに対して本質的に一様に生じることを意味する。「本質的に不変」とは、方向x、y及びzに関する焼結挙動における差が、+/-5%又は+/-2%又は+/-1%以下の範囲であることを意味する。
【0057】
「着色イオン」とは、着色イオンが水中に溶解する(例えば、約0.6mol/L)場合、肉眼で見えるスペクトル範囲(例えば、380~780nm)に吸収を有し、これにより着色した(肉眼で見える)溶液を生じるイオン、及び/又は着色溶液で処理された後に焼結されたジルコニア物品中で着色効果を生じるイオンを意味するものとする。ジルコニア物品の製造に使用される粉末が圧縮される前に、着色イオンも粉末中に存在してもよい。
【0058】
「蛍光剤」とは、可視光領域(380~780nm)で蛍光を示す薬剤を意味するものとする。
【0059】
「機械加工」は、機械による材料のミリング加工、研削、切断、カービング、又は成形を意味する。ミリング加工は、通常、研削よりも速く、費用対効果が高い。「機械加工可能な物品」は、三次元形状を有し、かつ機械加工されるのに十分な強度を有する物品である。
【0060】
「周囲条件」とは、本発明の溶液が、保管及び取り扱いの際に通常曝される条件を意味する。周囲条件は、例えば、圧力900~1100mbar、温度10~40℃及び相対湿度10~100%としてもよい。実験室においては、周囲条件は、20~25℃及び1000~1025mbarに調整される。
【0061】
組成物が特定の成分を本質的な特徴として含有しない場合、この組成物はこの成分を「本質的又は実質的に含まない」。したがって、この成分は、それだけで、又は他の成分若しくは他の成分の含有物質(ingredient)との組合せでのいずれによっても、組成物に意図的に添加されない。特定の成分を本質的に含まない組成物は、通常はその成分を全く含有しない。しかしながら、時には、例えば用いられる原料中に含まれる不純物のために、少量のこの成分が存在するのを回避できないこともある。
【0062】
本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、「1つの(the)」、「少なくとも1つの(at least one)」、及び「1つ以上の(one or more)」は、互換的に
使用される。また、本明細書において、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0063】
「含む(comprise)」又は「含有する(contain)」という用語及びそれらの変形は、
これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲で記載される場合、限定的な意味を有しない。用語「含む(comprise)」はまた、用語「本質的に~からなる(consist essentially of)」及び「~からなる(consists of)」を含むものとする。
【0064】
用語に「(s)」を付加することは、その用語が単数形及び複数形を含むべきであることを意味する。例えば、「添加剤(additive(s))」という用語は、1種の添加剤及び複
数種(例えば2種、3種、4種等)の添加剤を意味する。
【0065】
特に指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている、例えば下に記載するもの等の含有物質の量、物性の測定値を表す全ての数は、全ての例で「約」という用語により修飾されていると理解されるべきである。
【0066】
「及び/又は」は、一方又は両方を意味する。例えば、発現成分A及び/又は成分Bは、成分Aのみ、成分Bのみ、又は成分A及び成分Bの両方を指す。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】イットリウム安定化ジルコニアを焼結するのに有用な焼結プロトコルの一例を示す。
【
図2】ガラスが多孔質ジルコニア材料の孔を、5μm未満の深さだけ浸潤させている、本発明によるジルコニアサンプルのSEM写真を示す。
【
図3】ガラスが多孔質ジルコニア材料の実質的な部分を含浸している、ジルコニアサンプルのSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の一般的概念は、審美的な歯科用ジルコニア修復物が、多孔質ジルコニア物品をその表面上でガラスと一緒に高速焼成することによって得ることができるという発見に基づいている。
【0069】
多孔質ジルコニア前駆体及びガラス粒子の特性を調整することにより、ガラスは、多孔質ジルコニア界面の小領域に含浸するのみである。
【0070】
ガラスのより深い含浸は、典型的には、物品の全体的な透光性が低減されるため、審美性に悪影響を及ぼすことが判明している。
【0071】
更に、含浸深さが低減されると、焼結プロセス中の物品の可能な歪みのリスクが低減される。
【0072】
特に、ガラスの溶融挙動が、焼結プロセス中の多孔質ジルコニア物品の収縮挙動に調整される場合、多孔質ジルコニア材料の開放孔へのガラスの浸透深さの低減を達成することができる。本明細書に記載された発明は、以下の利点を提供する。これは、医師の時間を節約する。これはまた、焼結プロセスを単純化する。
【0073】
本明細書に記載の方法は、少なくとも3K/秒、又は少なくとも4K/秒、又は少なくとも5K/秒の加熱速度を適用することによって高速焼結を可能にする。
【0074】
本明細書に記載の焼成プロセスは、一段階で、歯科用ジルコニア材料を焼結する工程とその材料のグレイジングとを組み合わせる。歯科技工室で典型的に実施される別個のグレイジング又は前装工程が必要とされない。焼成工程は、30分未満又は25分未満で完了することができる。
【0075】
得られたジルコニア物品は、審美的な歯科用ジルコニア修復物の要件を満たす。
【0076】
中間層セクションは、ジルコニア物品が十分な透光性(即ち、不透明度の低下)を示すように十分に薄い。
【0077】
加えて、得られた焼結歯科用ジルコニア物品は、適切な強度を有し、かつ亀裂を示さない。本発明は、歯科用ジルコニア修復物の製造方法に関する。
【0078】
方法は、多孔質ジルコニア歯科用修復物及びガラスを焼成して、焼結歯科用ジルコニア修復物を得る工程を含む。
【0079】
ガラスは、焼成工程中に、多孔質歯科用ジルコニア修復物の表面の少なくとも一部分上に位置している。
【0080】
ガラス及び多孔質ジルコニア修復物のジルコニア材料は、焼成工程中に、ガラスが、多孔質ジルコニア材料の孔に、5μmを超える、又は4μmを超える、又は3μmを超える、又は2μmを超える、又は1μmを超える程度の深さまで浸潤しないように選択される。
【0081】
これは、含浸深さが0.3mm(300μm)以上の範囲である、先行技術(例えば、CN 104774007(B)号)に示唆される含浸手順とは対照的である。
【0082】
本明細書で示唆される多孔質歯科用ジルコニア修復物及びガラスの選択は、通常、多孔質ジルコニア修復物及びガラスの材料並びに物理的特性に基づく。典型的な物理的特性としては、焼成工程中のガラスの粘度、ガラスの表面張力、焼成プロセスが開始される前の多孔質ジルコニア材料の孔径及び焼結挙動、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0083】
多孔質歯科用ジルコニア修復物の孔が閉鎖される温度で、少なくとも0.08MPa*s(104.9Pa*s)、又は少なくとも0.1MPa*s(105Pa*s)、又は少なくとも0.2MPa*s(105.3Pa*s)、又は少なくとも0.5MPa*s(105.7Pa*s)の粘度を有するガラスが、特に有用であることが判明した。
【0084】
ガラスに有用な粘度範囲としては、104.9Pa*s(0.08MPa*s)~107.5Pa*s(30MPa*s)、又は105Pa*s(0.1MPa*s)~107.3Pa*s(20MPa*s)、又は105.3Pa*s(0.2MPa*s)~107.2Pa*s(15MPa*s)が挙げられる。
【0085】
所望であれば、Pa*sにおけるガラスの粘度もlog10スケールで表すことができる。例えば、1MPa*sの粘度はまた、log10(Pa*s)6又は106Pa*sとして表すこともできる。
【0086】
比較のために、焼結歯科用ジルコニア修復物をグレイジングするために使用される市販のガラスは、典型的には、1,300℃で、2~4又は1.5~3の範囲の粘度log10(Pa*s)を有する。
【0087】
所望であれば、焼結中の多孔質ジルコニア物品の孔の閉鎖は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定することができる。
【0088】
実験によってガラスの粘度を決定する代わりに、実施例の項に概説されるように、その化学組成に基づいて粘度を計算することも可能である。信頼性の高いコンピュータプログラムが市販されており、広く使用されている(例えば、SciGlassからのガラスデータベース)。
【0089】
一実施形態によれば、ガラスの粘度は、40~150nmの平均連結孔径を有する多孔質ジルコニア材料について、1,300℃の温度で、少なくとも104.9Pa*s、又は少なくとも105Pa*s、又は少なくとも105.3Pa*s、又は少なくとも105.7Pa*sである。例えば、好適な粘度範囲は、log10(Pa*s)5~log10(Pa*s)7.5である。
【0090】
別の実施形態によれば、ガラスの粘度は、40nm以上90nm未満の平均連結孔径を有する多孔質ジルコニア材料について、1,300℃の温度で、少なくとも104.9Pa*s、又は少なくとも105Pa*s、又は少なくとも105.3Pa*sである。例えば、好適な粘度範囲は、log10(Pa*s)5~log10(Pa*s)7.5である。
【0091】
別の実施形態によれば、ガラスの粘度は、90nm~150nmの平均連結孔径を有する多孔質ジルコニア材料について、1,300℃の温度で、少なくとも106Pa*s、又は少なくとも106.3Pa*s、又は少なくとも106.7Pa*sである。例えば、好適な粘度範囲は、log10(Pa*s)6~log10(Pa*s)7.5である。
【0092】
浸潤ゾーンの厚さは、典型的には、10nm~5μm、又は、20nm~3μm、又は、30nm~2μmの範囲内である。
【0093】
所望であれば、浸潤ゾーンの厚さは、実施例の項に記載の通りに、例えば、SEMによって測定することができる。
【0094】
浸潤ゾーンの厚さがより厚い(例えば、5μmを超える)場合、焼結された歯科用ジルコニア物品の透光性は、多くの場合、歯科用修復物としての使用には許容されないと考えられる。
【0095】
歯科用ジルコニア修復物を製造する全体的な方法は、典型的には、いくつかの異なる工程を含む。
【0096】
まず、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクから多孔質歯科用ジルコニア修復物を機械加工する。
【0097】
機械加工工程は、ミリング加工、ドリル加工、切断、カービング、又は研削の装置によって行うことができる。これらの装置は、例えば、Roland(DMX(商標)ミル)、又はSirona(CEREC(商標)inLab CAD/CAM)などから市販されている。
【0098】
有用なミリングのパラメータとしては下記が挙げられる。
ミリングツールの回転速度:5,000~40,000回転/分、
供給速度:20~5,000mm/分、
ミリングカッター径:0.8~4mm。
【0099】
所望であれば、機械加工された多孔質歯科用ジルコニア修復物を洗浄し、例えば、加圧空気を用いて粉砕粉塵を除去する。
【0100】
多孔質歯科用ジルコニアミルブランクが多孔質歯科用ジルコニア修復物を製造するために使用されるとき、多孔質歯科用ジルコニアミルブランクの材料は、多孔質歯科用ジルコニア物品の材料と同じである。多孔質歯科用ジルコニアミルブランクは、典型的にはブロック又は円盤の形状を有する。
【0101】
多孔質歯科用ジルコニアミルブランクがブロックの形状を有する場合、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、典型的には以下の寸法を有する。
x寸法:12~45mm、又は15~40mm、
y寸法:12~70mm、又は15~60mm、
z寸法:10~40mm、又は15~25mm。
【0102】
多孔質歯科用ジルコニアミルブランクが円盤の形状を有する場合、多孔質歯科用ジルコニアミルブランクは、典型的には以下の寸法を有する。
x、y寸法:90~110mm、又は95~105mm、
z寸法:5~35mm、又は10~30mm。
【0103】
機械加工装置、特にこのような装置のクランプ器具への歯科用ジルコニアミルブランクの取り付け又は固定は、ブランクにそのための好適な手段を提供することによって行うこともできる。好適な手段としては、フレーム、ノッチ、突出部、マンドレル、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0104】
別の実施形態では、歯科用ジルコニアミルブランクは、保持装置に固定されるか、又は保持装置内に収容される。歯科用ミルブランクを収容する保持装置は、次いで、ブランクを機械加工装置に取り付けるための手段として機能することができる。
【0105】
歯科用ジルコニアミルブランクの保持装置への固定は、クランピング、接着、ねじ込み、及びこれらの組合せによって影響され得る。
【0106】
有用な保持装置としては、フレーム(開閉式)又は突出部、又はマンドレルが挙げられる。保持装置を使用することは、機械加工装置による歯科用物品の製造を容易にすることができる。
【0107】
有用な保持装置の例は、米国特許第8,141,217(B2)号(Gublerら)、国際公開第02/45614(A1)号(ETH Zurich)、独国特許第20316004(U1)号(Stuehrenberg)、米国特許第7,985,119(B2)号(Baslerら)又は国際公開第01/13862号(3M)に記載されている。保持装置の説明に関するこれら文献の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0108】
多孔質ジルコニアミルブランクは、以下のように製造することができる。
【0109】
歯科用ミルブランクの多孔質ジルコニア材料は、
材料中に含まれるそれぞれの酸化物の粉末を混合して粉末混合物を得る工程と、
粉末混合物をプレスする工程と、を含む方法によって得ることができる。
【0110】
酸化物粉末の混合は、粉末を振盪するか、又はミル(例えばボールミル)に粉末を入れて、均一な粉末混合物が得られるまで粉末を粉砕することによって達成することができる。更に可能な混合装置としては、ふるい又は造粒機が挙げられる。
【0111】
プレス工程を容易にするため、所望により、プレス助剤を加えることができる。
【0112】
好適なプレス助剤としては、結合剤、潤滑剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0113】
所望により、これらの助剤は、粉末混合物の主成分である酸化ジルコニア粉末に加えることができる。
【0114】
好適な金属酸化物粉末は、東ソー株式会社(日本)をはじめとする様々な供給元から市販されている。
【0115】
次いで粉末混合物を金型に入れて歯科用ミルブランクの形状にプレスする。
【0116】
加える圧力は、典型的には、150~300MPaの範囲である。あるいは、加える圧力は、プレスされたセラミック体が特定の密度、例えばジルコニアセラミックの場合、2.8g/cm3~3.5g/cm3の密度に達するように設定される。
【0117】
粉末混合物をプレスした後に得られた物品を、任意の所望の形状に機械加工又はスライスすることができる。所望であれば、か焼工程を行うことができる。
【0118】
更なる工程では、多孔質歯科用ミルブランクを得るために、圧縮組成物に熱処理を加える。
【0119】
熱処理の温度は、典型的には、800~1100℃、又は900~1,000℃の範囲である。熱処理は、典型的には、30~70時間、又は35~60時間の持続時間にわたって適用される。
【0120】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクは、典型的には、ミリング加工機内での歯科用ミルブランクの取り付けを可能にする形態で顧客に提供される。
【0121】
多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの上面又は下面のいずれかは、典型的には、ミリング加工機内の歯科用ミルブランクの正しい方向付けを容易にするマーキング要素(例えば、印刷又は彫刻)を含有する。
【0122】
本発明によれば、ガラスを含む表面処理剤は、焼結される多孔質歯科用ジルコニア修復物の表面の少なくとも一部に適用される。多孔質歯科用ジルコニアは、乾燥状態である。
【0123】
表面処理剤は、多孔質歯科用ジルコニア修復物の外側表面に適用される。
【0124】
表面処理剤は、典型的には、焼結歯科用ジルコニア修復物が患者の歯構造に固定された後、患者の口腔内で可視のままである、多孔質歯科用ジルコニア修復物の外側表面のこれらの部分に少なくとも適用される。
【0125】
典型的には、表面処理剤は、多孔質歯科用ジルコニア修復物の外側表面の少なくとも30%、又は少なくとも50%、又は少なくとも70%、又は少なくとも90%に適用される。
【0126】
表面処理剤は、典型的には、多孔質歯科用ジルコニア修復物の内側表面には適用されない。
【0127】
内側表面の表面処理は、歯面に焼結歯科用ジルコニア修復物の後の固定プロセス(例えば、セメンティング工程)に有害であり得る。
【0128】
したがって、多孔質歯科用修復物の内側表面は、そのような固定プロセスに悪影響を及ぼすであろう程度までには処理されない。
【0129】
表面処理剤の適用は、典型的には、好適な適用用具で行われる。好適な適用用具は、以下に更に記載される。
【0130】
例えば、表面処理剤の適用は、ブラッシング又は噴霧によって行うことができる。
【0131】
これは、表面処理剤が液体中のガラス粉末の分散体として提供される場合、特に実現可能である。
【0132】
しかしながら、ガラスは、例えば、コーピング、前装、ペースト、又はシートの形態で、異なる形態で適用することもできる。
【0133】
表面処理剤がガラスのための液体又は分散剤を含む場合、液体又は分散剤は、焼成工程が行われる前に蒸発してもよい。したがって、焼結プロセスが開始される前に、任意に乾燥工程が行われる。
【0134】
次の工程では、その外側表面上にガラスを含む表面処理剤を用いた多孔質歯科用ジルコニア修復物の焼成工程が実施される。
【0135】
焼成プロセス中に、多孔質歯科用物品は、その最終形状まで焼結され、これによって、寸法、密度、硬度、曲げ強度及び/又は粒度に関して変化が起きる。
【0136】
焼成工程は、許容し得る歯に似た色(例えば、Vita(商標)シェードガイドに適合する色)を有する歯科用セラミック修復物をもたらす条件下で行われなくてはならない。
【0137】
概して、焼成条件は、焼結された歯科用セラミック修復物が、理論的に達成可能な密度に比べて、約98%又は99%以上の密度を有するように調整される。本明細書に記載の方法は、第1の熱処理セグメントを含む。
【0138】
第1の熱処理セグメントは、少なくとも3K/秒、又は少なくとも4K/秒、又は少なくとも5K/秒の加熱速度で行われる。
【0139】
加熱速度は、最終生成物の透光性に悪影響を及ぼし得るため、15K/秒、又は12K/秒、又は10K/秒の速度を超えるべきではない。
【0140】
典型的な加熱速度は、したがって、3~15K/秒、又は4~12K/秒の範囲内である。
【0141】
このような加熱速度で、少なくとも180~240℃/分の温度上昇を得ることができる。
【0142】
したがって、歯科用多孔質ジルコニア物品の焼結が開始する温度は、4~8分の時間枠内に到達することができる。
【0143】
これとは対照的に、先行技術に記載されている焼結プロセスは、典型的には、この温度に達するために少なくとも45分を必要とする。
【0144】
第1の熱処理セグメントは、典型的には、歯科用ジルコニア物品の最終焼結温度の75~90%、又は80~88%の温度レベルに達するまで行われる。
【0145】
ジルコニア材料の場合、それぞれの温度は、典型的には、1,200~1,400℃、又は1,250~1,350℃の範囲である。
【0146】
この温度では、焼結は部分的に開始しているが、歯科用ジルコニア物品は、孔、特に開孔をなお含有する。
【0147】
第1の熱処理セグメントが、最終焼結温度(℃)の上記範囲を超える温度レベルまで実施される場合、得られる歯科用ジルコニア物品は、歪み又は亀裂を示すことがある。
【0148】
最終焼結温度は、多孔質ジルコニア材料の孔(開気孔及び閉気孔)が周囲気圧(約1,013hPa)下で閉鎖される温度である。所望であれば、この状態は、走査型電子顕微鏡を使用することによって決定することができる。
【0149】
最終的に焼結されたジルコニア材料は、典型的には、理論密度の少なくとも99%の密度を有する。
【0150】
最終焼結温度は、典型的には、第2の熱処理セグメントの後に到達した温度に相当する。
【0151】
ジルコニア物品の場合、最終焼結温度は、典型的には、1,500~1,650℃の範囲内である。
【0152】
第1の熱処理セグメントは、典型的には、第2の熱処理セグメントに続く。
【0153】
第2の熱処理セグメントは、典型的には、第1の熱処理セグメントの加熱速度とは異なる加熱速度で行われる。
【0154】
一実施形態によれば、第2の熱処理セグメントの加熱速度は、第1の熱処理セグメントの加熱速度よりも低い。
【0155】
使用することができる加熱速度は、典型的には、2K/秒(又はそれ以下)、又は1K/秒(又はそれ以下)である。
【0156】
第2の熱処理セグメントは、典型的には、歯科用ジルコニア物品の焼結温度に達するまで行われる。
【0157】
第2の熱処理セグメントの終了時の温度は、典型的には、最終焼結温度に対応する。
【0158】
焼結温度は、典型的には、少なくとも1,500℃、又は少なくとも1,520℃、又は少なくとも1,550℃である。
【0159】
焼結温度は、典型的には、1,650℃以下、又は1,600℃以下である。
【0160】
第2の熱処理セグメントの持続時間は、典型的には、焼結される多孔質歯科用ジルコニア物品のサイズ及び寸法に依存する。
【0161】
第2の熱処理セグメントの持続時間は、典型的には、1~15分、又は2~14分、又は5~12分の範囲である。
【0162】
より大きな歯科用物品、特に、例えば15mmを超える壁厚を有する歯科用物品は、典型的には、より小さい物品よりも多くの時間を必要とする。
【0163】
第2の熱処理セグメントは、典型的には、第3の熱処理セグメントに続く。
【0164】
第3の熱処理セグメントの間、温度は、典型的には、更に上昇しないが、いわゆる放置時間(dwell time)に維持される。
【0165】
好適な放置時間は、典型的には8分~1分、又は5分~1分、又は3分~1分である。
【0166】
第3の熱処理セグメントの間、最終的な焼結が行われ、歯科用ジルコニア物品の残りの孔が閉鎖される。
【0167】
上記のように、第2の熱処理セグメントの持続時間は、典型的には、焼結される歯科用ジルコニア物品のサイズ及び寸法に依存する。第3の熱処理セグメントは、典型的には、冷却セグメントに続く。
【0168】
冷却セグメント中、焼結歯科用ジルコニア物品は、約1,000℃まで冷却される。この温度に達すると、炉が自動的に開放して、焼結歯科用ジルコニアを室温(23℃)に冷却する。
【0169】
冷却速度は、上記の加熱速度と同じであってもよく、又は異なっていてもよい。典型的な冷却速度は、少なくとも3K/秒、又は少なくとも4K/秒、又は少なくとも5K/秒の範囲であってもよい。
【0170】
【0171】
この例では、焼結プロトコルは、以下のセグメントを含む。
a)約4分以内に到達する、約1,350℃の温度までの第1の熱処理セグメント、
b)約2分以内に到達する、約1,580℃の温度までの第2の熱処理セグメント、
c)約2分間の第3の熱処理セグメント(放置時間)、及び
d)約3分以内に到達する、約1,000℃の温度までの冷却セグメント。
【0172】
熱処理セグメントは、典型的には、周囲気圧及び空気中、又は不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)中で実施される。
【0173】
上述の熱処理セグメント及び冷却セグメントは、いわゆる焼結プロトコルにコンパイルすることができる。
【0174】
図1は、好適な焼結プロトコルの理想化された例を示す。当業者には既知であるように、制御工学における遅延により、特にそれぞれのセグメント間の境界面において、小さい温度偏差(例えば、+/-3%)が存在し得る。
【0175】
一実施形態によれば、焼結歯科用ジルコニア修復物を製造するために使用される焼成工程は、以下の特徴:
第1の熱処理セグメント:3~7K/秒の加熱速度、持続時間:8分以下;
第2の熱処理セグメント:0.2~1.0K/秒、又は0.3~0.6K/秒の加熱速度、持続時間:25分以下;
第3の熱処理セグメント:約0K/秒の加熱速度、持続時間:8分以下、又は5分以下、又は3分以下;
冷却セグメント:冷却速度3K/秒以上、持続時間:6分以下
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0176】
熱処理(第1、第2、及び第3の熱処理セグメントを含む)並びに歯科用ジルコニア物品を冷却するのに必要な全体の時間は、典型的には30分以下、25分以下である。
【0177】
全体の時間は、典型的には、焼結されるジルコニア物品の体積にもある程度依存する。大型物品は、典型的には、より小さい物品よりも長い熱処理時間を必要とする。
【0178】
物品を人工球に適合させることによって焼結される物品の体積を特徴付けることは、適切な焼結プロトコルを選択するのに役立ち得る。このようなアプローチは、国際公開第2018/029244(A1)号(Sirona)に記載されている。
【0179】
本明細書に記載の方法に使用できるオーブンは、Dentsply Sironaから市販されている(SpeedFire(商標))。
【0180】
好適な炉もまた、国際公開第2017/144644(A1)号(Sirona)に記載されている。この炉は、歯科用交換部品の熱処理を実行するためのものであり、誘導コイル、複写ヒーター、絶縁層、及び炉室を備える。更に、炉は、炉室の内部温度を制御するための冷却システムを有する。
【0181】
一般に、焼成工程中に適用される有用な熱処理条件は、以下の特徴:
a)加熱速度:3~7K/秒、又は5~7K/秒;
b)焼結温度:少なくとも1,400℃、又は少なくとも1,450℃、又は少なくとも1,500℃;
c)雰囲気:空気又は不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン);
d)持続時間:材料の最終密度の少なくとも95、又は少なくとも98、又は少なくとも99%に到達するまで;
e)放置時間:0~10分、又は1~5分;
f)圧力:周囲気圧
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0182】
以下の特徴の組合せ:a)及びb)、a)、b)及びd)、a)、b)、c)、d)及びe)が好ましいことがある。
【0183】
焼成温度及び放置時間(即ち、物品がその温度で保持される間の時間)は、相関することが多い。
【0184】
典型的には、より高い温度は、短い放置時間のみを必要とする。したがって、放置時間は、0(例えば、焼成温度が1,550℃の場合)~10分(例えば、焼成温度が1,100℃の場合)続いてもよい。
【0185】
あるいは、高い加熱速度が使用される上述の高速熱処理プロセスに対して、焼結プロセスはまた、より低い加熱速度を使用することによって実施することもできる。
【0186】
それぞれの焼結プロトコルは、以下:
焼結温度:1,350~1,600℃、
持続時間:50~360分、
加熱速度:1~30℃/分
により特徴付けることができる。
【0187】
多孔質歯科用ジルコニア物品の材料は、40~150nmの平均連結孔径を有し、以下のパラメータ:
a)BET表面:5~15m2/g、又は5.5~11m2/g、
b)密度:2.5~4g/cm3、又は2.85~3.35g/cm3、
c)平均粒径:50~200nm、又は60~180nm、又は80~160nm
の単独又は組み合わせで更に特徴付けることができる。
【0188】
以下の特徴の組合せ:a)及びb)、a)及びc)、a)、b)及びc)が好ましいことがある。
【0189】
多孔質歯科用ジルコニア物品の材料はまた、以下:
a)平均連結孔径が40~150nmであることと、
b)密度:2.85~3.35g/cm3、
c)平均粒径:50~200nm
により特徴付けることができる。
【0190】
40~150nmの平均連結孔径を有する材料を使用することは、(例えば、粉末を圧縮し、予備焼結工程を行うことによって)製造するのが比較的容易であるため、有益であり得る。
【0191】
更に、平均連結孔径は、焼結プロセス中のガラスの貫入が5μm以下の深さに制限させる範囲である。
【0192】
平均連結孔径を増加させると、ガラスの粘度は好ましくは調整されるべきであり、例えば、より高い融解挙動を有するガラスを使用するべきである。
【0193】
その材料が上記で指定された範囲のBET表面を有する、多孔質歯科用ジルコニア物品を使用することは、熱処理プロセス前及び熱処理プロセス中に、特に高い加熱速度を有する第1の熱処理セグメント中の材料の適切な焼結活性を確実にするために、時には有利であることが判明した。
【0194】
適切な焼結活性は、短い焼結時間内の所望の透光性を示すジルコニア物品を得るために有益であり得る。
【0195】
特定の理論に束縛されるものではないが、BET表面が高すぎる場合、焼結される多孔質歯科用ジルコニア物品中には多くの孔が存在すると考えられる。これは、物品の焼結に悪影響を及ぼし、適切な強度及び/又は透光性を有する歯科用ジルコニア物品を達成することがより困難になる場合がある。
【0196】
他方では、BET表面が低すぎる場合、多孔質ジルコニア物品は、適切な焼結活性を有しないと考えられる。これは、第1の熱処理工程中の多孔質歯科用ジルコニア物品の焼結挙動(例えば、焼結収縮、残存焼結助剤の脱ガス)に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0197】
BET表面に言及するとき、多孔質物品の表面は、物品の製造に使用される粉末の表面ではないことを意味する。
【0198】
あるいは、又はBET表面に加えて、密度は、多くの場合、全体の孔容積に関連するため、多孔質歯科用ジルコニア修復物の材料を特徴付けるために密度を使用してもよい。
【0199】
あるいは、又は加えて、多孔質歯科用ジルコニア物品の材料は、以下のパラメータ:
a)2軸曲げ強度:多孔性状態での測定に適合した3つのボールのパンチ試験を適用するISO 6872:2015に従って決定された(測定セットアップ:3.6mmパンチ直径、荷重速度0.1mm/分、サンプル厚2mm、支持ボール直径6mm、支持する球の直径14mm)15~55、
b)ビッカース硬度:15~150(HV 0.5)又は20~140(HV 0.5)、
c)熱膨張係数:8.5×10-6K-1~11.5×10-6K-1
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0200】
以下の特徴の組合せ:a)及びb)、a)及びc)、a)、b)及びc)が好ましいことがある。
【0201】
所望であれば、それぞれの特性は、実施例の項に記載の通りに測定することができる。
【0202】
材料のビッカース硬度が低すぎると、機械加工性が品質に悪影響を及ぼす可能性があり(加工品の縁部チッピング又は破損)並びに歯科用修復物又はモノリシックな修復物のフレームを個別化するための手動の再加工の容易さが損なわれる可能性がある。
【0203】
材料のビッカース硬度が高すぎる場合、工作機械の摩耗が増し、工具寿命を許容できないレベルまで短縮させる場合があり、又は工具が加工品を破損及び破壊する可能性がある。
【0204】
材料の2軸曲げ強度が低すぎる場合、ミリング加工の際又は歯科技工士による手作業での仕上げ加工の際に、材料が亀裂を生じやすい場合があることが判明した。
【0205】
一方、材料の2軸曲げ強度が高すぎる場合、フライス盤による材料の加工は、適切な実施では不可能であることが多い。使用されるミリングツール又はミリング加工された材料は、欠けたり、又は破壊しやすいことがある。このような場合には、材料の成形は、例えばCerec(商標)研削機(Sirona)を使用した研削によって行わなければならなかった。
【0206】
亀裂の危険性を更に低減するために、ジルコニア材料の熱膨張係数(CTE)は、高速焼成プロセス中に使用されるガラスのCTEに調整されるべきである。
【0207】
多孔質歯科用ジルコニア物品の材料は、セラミック成分及び安定化成分を含む。
【0208】
任意に、着色成分及び蛍光成分が存在し得る。
【0209】
セラミック成分は、典型的には、Zr、Hf、Alの酸化物及びこれらの混合物から選択される。
【0210】
したがって、ジルコニアに加えて、多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの材料は、典型的には、Hfの酸化物及び任意にAlの酸化物を、典型的にはわずかな量で含む。
【0211】
安定化成分は、典型的には、Y、Mg、Ca、Ceの酸化物、及びこれらの混合物(例えば、Y2O3、MgO、CaO、CeO2)から選択され、ここでは、Yの酸化物が好ましい。
【0212】
存在する場合、着色成分は、典型的には、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Er、Pr、Nd、V、Tbの酸化物から選択され、特に、Mn、Er、Pr、Co、V、Tbの酸化物及びこれらの混合物(例えば、MnO2、Er2O3、Pr2O3、CoO、V2O5、Tb2O3)から選択される。
【0213】
存在する場合、蛍光剤は、典型的には、Biの酸化物及びこれらの混合物から選択される。
【0214】
セラミック成分は、典型的には、多孔質歯科用ミルブランクの重量に対して、80~95重量%、又は85~95重量%、又は90~95重量%の量で存在する。
【0215】
安定化成分は、典型的には、多孔質歯科用ミルブランクの重量に対して、3~12重量%、又は5~10重量%、又は6~10重量%の量で存在する。
【0216】
存在する場合、着色成分は、典型的には、多孔質歯科用ミルブランクの重量に対して、0.01~2重量%、又は0.02~1.5重量%、又は0.03~1.2重量%の量で存在する。
【0217】
存在する場合、蛍光剤は、典型的には、多孔質歯科用ミルブランクの重量に対して、0~1重量%、又は0.005~0.8重量%、又は0.01~0.1重量%の量で存在する。
【0218】
重量%は、それぞれの酸化物又はセラミック成分、安定化成分、着色成分、及び蛍光剤の量に基づいて計算される。
【0219】
審美的歯科物品を得るために、以下の濃度が有用であることが判明した。
セラミック成分:80~95重量%、又は85~95重量%、
安定化成分:3~12重量%、又は5~11重量%、
着色成分:0~2重量%、又は0.01~1.5重量%、
蛍光剤:0~1重量%、又は0.005~0.8重量%、
重量%は、多孔質歯科用ミルブランクの重量に対するものである。
【0220】
一実施形態によれば、多孔質歯科用ジルコニアミルブランクの材料は、以下:
ZrO2含量:70~98モル%、又は80~97モル%、
HfO2含量:0~2モル%、又は0.1~1.8モル%、
Y2O3含量:1~15モル%、又は1.5~10モル%、又は2~5モル%、
Al2O3含量:0~1モル%、又は0.005~0.5モル%、又は0.01~0.1モル%
により特徴付けることができる。
【0221】
更なる実施形態によれば、多孔質歯科用ジルコニアミルブランクの材料は、以下:
ZrO2含量:90~98モル%、
HfO2含量:0~2モル%、
Y2O3含量:3~5モル%。
Al2O3含量:0~0.1モル%
により特徴付けられる。
【0222】
より高いY2O3含量は、典型的には、材料を最終密度に焼結した後にジルコニアセラミック材料中の立方晶相の増加をもたらすことが判明した。立方晶相の含量が高いほど、より良好な透光性に寄与し得る。
【0223】
本明細書に記載の多孔質歯科用ジルコニア物品の材料は、約3、4、又は5モル%のイットリアを含有してもよい。これらの材料は、3Y-TZP、4Y-TZP、又は5-YTZP材料と称される場合がある。
【0224】
これらの材料は、本明細書に記載されるような焼成プロセスにおいて審美的ジルコニア修復物を製造するのに特に有用であることが判明している。
【0225】
別の実施形態では、多孔質歯科用ジルコニア物品の材料は、以下:
ZrO2+HfO2:90~95重量%、
Y2O3:4~10重量%、
Al2O3:0~0.15重量%、
着色酸化物:0.01~2重量%、
を含み、重量%は、多孔質歯科用ジルコニア物品の重量に対するものである。
【0226】
アルミナが存在する必要はないが、少量のアルミナの存在は、焼結後のジルコニア物品のより良好な水熱安定性に寄与し得るため、有益であり得る。
【0227】
しかしながら、アルミナの量が多すぎると、焼結後のジルコニア物品の透光性に悪影響を及ぼし得る。
【0228】
したがって、アルミナは、0~0.15重量%、又は0~0.12重量%、又は0~0.1重量%の量で存在してもよい。
【0229】
多孔質歯科用ジルコニア物品の材料は、典型的には、ガラスを含む表面処理剤を用いた焼成プロセスが行われる前に、多孔質ジルコニア歯科用物品の材料の重量に対して1重量%を上回る量で、以下の成分:ガラス又はガラスセラミック、Si、Fe、K、Naの酸化物を、単独で又は組み合わせて含まない。
【0230】
これらの要素の存在は、機械加工された物品の機械加工又は焼結中の多孔質歯科用ジルコニア物品の全体的な性能に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0231】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって得られる(obtainable)か、又は得られる(obtained)焼結歯科用ジルコニア修復物にも関する。
【0232】
本明細書に記載の焼結歯科用ジルコニア修復物は、反射モードで450~800nmの波長を用いて厚さ1mmのサンプル上で測定した場合、好ましくは、25%以上、又は30%以上の透光性を有する。
【0233】
本明細書に記載の方法によって得られるか、又は得ることができる焼結歯科用ジルコニア修復物は、異なるセクション又はゾーンを含有する。焼結歯科用ジルコニア修復物は、ガラス層セクションを含む。
【0234】
ガラス層セクションは、典型的には、5~200μm、又は10~150μm、又は20~100μmの層厚を有する。
【0235】
焼結歯科用ジルコニア修復物は、ガラス層セクションに隣接する中間層セクションを含む。中間層セクションは、ガラスによって浸潤されたジルコニア材料セクションを含有する。
【0236】
中間層セクションは、典型的には、0.01~5μm、又は0.02~4μm、又は0.03~3μm、又は0.05~2μm、又は0.1~1μmの層厚を有する。
【0237】
焼結歯科用ジルコニア修復物は、中間層セクションに隣接するジルコニア材料セクションを含む。
【0238】
ジルコニア材料セクションは、中間層セクションに隣接し、かつガラスを含有しない。ジルコニア材料セクションの厚さは、歯科用修復物の形状に依存する。この厚さは、典型的には、0.1mm~10mm、又は0.2~8mmの範囲内である。焼結歯科用ジルコニア修復物の形状は特に限定されない。
【0239】
焼結歯科用ジルコニア物品は、歯科用ブリッジ、クラウン、アバットメント、又はこれらの部分の形状を有してもよい。
【0240】
多孔質歯科ジルコニア物品がガラスを用いずに焼結される場合、それぞれの焼結歯科用ジルコニア物品は、典型的には、以下の特徴:
a)密度:理論密度の少なくとも98.5(いくつかの実施形態では、99、99.5、99.9、又は更には少なくとも99.99)パーセント、
b)2軸曲げ強度:ISO 6872:2015に従って測定した、500~1,500MPa、又は800~1,400MPa、
c)ビッカース硬度:450MPa~2,200MPa、又は500MPa~1,800MPa HV(2)、
d)相含量 正方晶相:10~80重量%、又は20~70重量%、又は40~70重量%、
e)相含量 立方晶相:10~80重量%、又は20~70重量%、又は30~60重量%、
f)透光性:450~800nmの波長の反射モードで1mmの厚さを有するサンプル上で測定された、25%以上、
g)歯の色をしていること
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0241】
以下の特徴の組合せ:a)及びb)、a)及びc)、a)、d)、及びe)、又はa)、b)、d)、e)、及びf)が好ましいことがある。
【0242】
一実施形態によれば、ガラスを用いずに焼結された歯科用ジルコニア物品は、以下の特徴:
a)密度:理論密度の少なくとも98.5パーセント
b)2軸曲げ強度:ISO 6872:2015に従って測定された、800~1,400MPa、
c)ビッカース硬度:500MPa~1,800MPa HV(2)、
d)相含量 正方晶相:40~70重量%、
e)相含量 立方晶相:30~60重量%、
f)透光性:450~800nmの波長の反射モードで1mmの厚さを有するサンプル上で測定された、25%以上、
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0243】
以下の特徴の組合せ:a)及びb)、a)及びc)、a)、d)、及びe)、又はa)、b)、d)、e)、及びf)が好ましいことがある。
【0244】
本発明は、部材のキットにも関する。部材のキットは、焼結歯科用ジルコニア修復物を製造するためのものであり、具体的には、本明細書に記載されるような焼成プロセスで使用するためのものである。
【0245】
部材のキットは、多孔質歯科用ジルコニアミルブランク及び表面処理剤を含む。
【0246】
多孔質歯科用ジルコニアミルブランクの材料は、40~150nmの範囲の平均連結孔径を有する。この範囲は、40nm以上90nm未満の範囲、及び90nm~150nmの範囲を含む。表面処理剤は、ガラスを含む。
【0247】
ガラスは、1,300℃の温度で少なくとも104Pa*s、又は少なくとも105Pa*sの粘度を有し得る。
【0248】
多孔質歯科用ジルコニアミルブランクの材料及び表面処理剤又はその中に含まれるガラスは、本明細書に記載されるものと同じである。
【0249】
表面処理剤に含まれるガラスは、典型的には、以下の特徴:
a)粘度:1,300℃の温度範囲において少なくとも104Pa*s、
b)熱膨張係数:1×10-6K-1~10×10-6K-1、又は2.5×10-6K-1~9×10-6K-1、
c)表面張力:1,300℃で210~300mN/m、
d)1,100℃~1,350℃の温度でのリトルトン(Littleton)軟化点粘度、
e)1,300℃~1,650℃の温度おける流動点粘度
のうちの単独で又は組み合わせて特徴付けることができる。
【0250】
以下の特徴の組合せ:a)及びb)、a)及びc)、a)及びd)、a)及びe)、a)及びf)、a)、b)及びc)、a)、b)及びd)、a)、b)及びe)、a)、b)、d)及びf)が好ましいことがある。
【0251】
ガラスは、典型的には、焼結温度で十分に高い粘度を有するので、ガラスは、多孔質ジルコニア歯科用物品の孔内に所望の程度を超えて移動することはない。
【0252】
ガラスの熱膨張係数の値がジルコニア材料の熱膨張よりも小さい場合、有益であり得る。これは、最終的な歯科用修復物の圧縮強度を増大させる助けとなり得、耐久性のある歯科用修復物の提供を容易にし得る。
【0253】
ガラスは、粉末、ペースト、コーピング、前装、又はシート形態を含む、異なる形状で提供することができる。
【0254】
ガラスが粉末として提供される場合、D50粒径は、典型的には、1~40μm、又は2~30μmの範囲である。粒子のサイズは、典型的には、0.1μm~50μm、又は0.25μm~40μmの範囲である。
【0255】
理想的には、ガラス粉末の粒径は、多孔質ジルコニア歯科用物品の焼結プロセス中にガラス粉末の均質な溶融を可能にする範囲である。
【0256】
所望により、粒径及び粘度は、実施例の項で記載される通りに測定又は得られる。
【0257】
ガラスは、典型的には、シリカ系ガラスである。ガラスは、典型的には、少なくとも80モル%のSiO2を含む。
【0258】
ガラスは、以下の組成を含むことによって特徴付けることができる。
SiO2:80~98モル%、
B2O3:2~15モル%、
ここでのモル%はガラス粉末の組成に対するものである。
【0259】
他の実施形態によれば、ガラスは、以下の組成のいずれかを含むことによって、特徴付けられる。
【表1】
量はガラス組成に対してモル%で表される。
【0260】
ガラスは、典型的には、以下の成分を単独で、又は組み合わせて含まない。
0.1モル%を超える量のLi2O、
0.1モル%を超える量のF、
0.1モル%を超える量のP2O5。
【0261】
これらの成分の存在は、ガラスの融解挙動、表面張力、又は粘度のような特性に悪影響を及ぼし得る。
【0262】
表面処理剤は、粉末として提供される場合、ガラスを分散させるための液体を更に含んでもよい。
【0263】
したがって、表面処理剤は、粉末、分散体、又はペーストであってもよい。
【0264】
液体中のガラス粉末の分散は、典型的には、多孔質歯科用ジルコニア物品の表面へのガラス粉末の適用を容易にする。
【0265】
液体の性質は、所望の結果が達成不能でない限り、特に限定されない。
【0266】
液体は、高速焼成プロセス中に、複雑な問題なく、又は焼成プロセスが開始される前に任意に実行される乾燥工程中に、液体が蒸発することを可能にする沸点を有するべきである。
【0267】
液体は、高速焼成プロセスに使用される焼結炉への損傷を引き起こし得る成分又は化学元素を含有するべきではない。
【0268】
ハロゲン成分(例えば、F、Cl、Br)を含有しない液体を使用することが好ましい場合がある。
【0269】
液体の沸点は高すぎるべきではない。そうでなければ、焼成プロセス中の液体の蒸発は、十分に速くなくてもよい。
【0270】
液体の沸点はまた、好適な分子量を有する液体を使用することによって調整されてもよい。
【0271】
液体の粘度が、ガラス粉末が容易に分散され得るようなものであることが有益である。
【0272】
液体は、典型的には、以下の特徴:
分子量(MW):18~1,000g/モル、
沸点:50~300℃、
粘度:1~2,000mPa*s、又は10~1,500mPa*s、又は100~1,000mPa*s(剪断速度50s-1で23℃で測定)、
の単独又は組み合わせで特徴付けることができる。
【0273】
Mw(物質)は、ポリマーが使用される場合、平均分子量である。
【0274】
好適な液体としては、水及びアルコール(ポリエチレングリコールなどのポリアルコールを含む)並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0275】
一実施形態によると、溶媒は水である。
【0276】
別の実施形態によれば、溶媒は水とは異なる。
【0277】
液体又は溶媒は、典型的には水と混和性である。
【0278】
有用な液体としては、ポリオール(ポリビニルアルコールを含む)、グリコールエーテル(例えば、PEG 200、PEG 400、PEG 600、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル)、アルコール(1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、エタノール、(n-及びイソ-)プロパノール、グリセロール)、グリセロールエーテル、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0279】
液体が存在する場合、グレイジング組成物中のガラス粉末対液体の重量比は、典型的には、1:1~1:15、又は1:2~1:12の範囲である。
【0280】
表面処理剤は、着色剤も含有してもよい。
【0281】
着色剤を添加することは、特に、表面処理剤が透明であるか、又はジルコニアの粉砕された修復物と同じ色である場合、使用中の表面処理剤の視認性を高めるのに有益であり得る。
【0282】
したがって医師は、歯科用物品の表面のどの部分に既に表面処理剤が適用されたか、またどの部分がまだ処理されておらず、処理せずに残すべきかを、容易に判断することができる。典型的には有機性質である着色剤は、後の焼結工程中に燃え尽き、したがって歯科用物品には組み込まれない。
【0283】
使用できる可溶性着色剤の例としては、Riboflavin(E101)、Ponceau 4R(E124)、Green S(E142)が挙げられる。
【0284】
表面処理剤は、典型的には、容器(receptacle)、例えば、液体を入れる容器(vessel)、ボトル又はフラスコに入れられる。
【0285】
したがって、本明細書の部材のキットは、粉末として提供される場合、多孔質歯科用ジルコニアミルブランク、ガラスを含有する表面処理剤、及び任意にガラスを分散させるための液体を、別個の部分として含む。
【0286】
部材のキットは、典型的には、使用説明書を医師に提供する。
【0287】
この使用説明書には、部材のキットをどのような目的で使用することを意図しているのか、どのように機械加工を行うべきか、及び、どのような焼結条件を適用すべきかという情報が含まれている。
【0288】
所望であれば、部材のキットは、以下の項目:
焼結助剤、
表面処理剤用の適用器具、
任意に、シェードガイド、
任意に研磨助剤、
任意に、焼結オーブン、
のうちの1つ以上を更に含んでもよい。
【0289】
焼結助剤としては、例えば、焼結ビーズ、及び焼結プロセス中に焼結される物品を機械的に支持するのに好適な他の装置が挙げられる。
【0290】
適用器具としては、例えば、ブラシ、ブラシペン、スポンジ、及びスプレー器具が挙げられる。
【0291】
本明細書に記載の高速焼成プロセスは、典型的には短時間で行われるため、最大7K/秒の加熱速度を提供する能力を有する焼結オーブン又は焼結炉を使用する必要がある。
【0292】
本発明はまた、本明細書に記載の表面処理剤及び/又は歯科用ジルコニア物品の、本明細書に記載の高速焼成プロセスにおいて歯科用ジルコニアの修復物を製造するための使用にも関する。
【0293】
本発明は更に、本明細書に記載の部材のキットの、好ましくは本明細書に記載の方法を適用することによる、歯科用修復物の製造のための使用に関する。
【0294】
本発明の更なる実施形態を以下に概説する。
【0295】
実施形態1
本明細書に記載の方法で使用するための、又は本明細書に記載の焼結歯科用物品を製造するための部材のキットであって、多孔質歯科用ジルコニアミルブランク及び表面処理剤を含む部材のキットであって、
多孔質歯科用ジルコニアミルブランクの材料が、以下:
約3又は4又は5モル%のイットリア含量を有するジルコニアから構成されること、
40~150nmの平均連結孔径を有すること、
30~70%の多孔率を有すること、
によって特徴付けられ、
表面処理剤が、以下:
ガラス粉末を含むこと、
ガラス粉末が、1~40μmの範囲のD50粒径を有すること、
ガラス粉末のガラスが、1,300℃の温度で少なくとも104Pa*sの粘度を有すること、
によって特徴付けられる、部材のキットである。
【0296】
実施形態2
歯科用ジルコニア物品の製造方法であって、
歯科用ジルコニア物品が、外側表面及び内側表面を有し、
方法が、
多孔質歯科ジルコニア物品及びガラス粉末を焼成して、焼結歯科用ジルコニア物品を得る工程であって、
ガラス粉末は、焼成工程中に、多孔質歯科用ジルコニア物品の外側表面の少なくとも一部分上に位置している、工程を含み、
多孔質歯科用ジルコニア物品は、40~150nmの範囲の平均連結孔径を有し、
ガラスは、1,300℃の温度で少なくとも104Pa*sの粘度を有し、
ガラスは、焼成工程中に、多孔質歯科ジルコニア物品の孔に、深さ5μmを超えない程度に浸潤する、方法である。
【0297】
実施形態3
歯科用ジルコニア物品の製造方法であって、
歯科用ジルコニア物品が、外側表面及び内側表面を有し、
方法が、
多孔質歯科ジルコニア物品及びガラス粉末を焼成して、焼結歯科用ジルコニア物品を得る工程であって、
ガラス粉末は、焼成工程中に、多孔質歯科用ジルコニア物品の外側表面の少なくとも一部分上に位置している、焼成する工程を含み、
多孔質歯科用ジルコニア物品は、40~150nmの範囲の平均連結孔径を有し、
ガラスは、1,300℃の温度で少なくとも105Pa*sの粘度を有し、
ガラスは、焼成工程中に、多孔質歯科ジルコニア物品の孔に、深さ5μmを超えない程度に浸潤する、方法である。
【0298】
実施形態4
歯科用ジルコニア物品の製造方法であって、
歯科用ジルコニア物品が、外側表面及び内側表面を有し、
方法が、
多孔質歯科ジルコニア物品及びガラス粉末を焼成して、焼結歯科用ジルコニア物品を得る工程であって、
ガラス粉末は、焼成工程中に、多孔質歯科用ジルコニア物品の外側表面の少なくとも一部分上に位置している、焼成する工程を含み、
多孔質歯科用ジルコニア物品は、40~150nmの範囲の平均連結孔径を有し、
ガラスは、1,300℃の温度で少なくとも10
5Pa
*sの粘度を有し、
ガラスは、焼成工程中に、多孔質歯科ジルコニア物品の孔に、深さ5μmを超えない程度に浸潤し、
ガラスは、以下の組成のいずれか:
【表2】
を含むことを特徴とし、量は、ガラス組成に対してモル%で表される、方法である。
【0299】
本明細書に引用した特許、特許文献、及び刊行物の全開示は、それぞれが個別に組み込まれたかのごとく、それらの全体が参照により組み込まれる。本発明に対する様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。上述の明細書、実施例及びデータは、本発明に関する組成物の製造及び使用並びに方法の説明を提供するものである。本発明は、本明細書に開示された実施形態には限定されない。当業者であれば、本発明の多くの代替的実施形態が、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく実施できることを理解するであろう。以下の実施例は、本発明を例解するために与えられる。
【実施例0300】
特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。更に、特に指示がない限り、全ての実験は周囲条件(23℃、1013mbar)で実施した。
【0301】
方法
イオン濃度
所望により、イオンの濃度は、蛍光X線分光法(XRF)により測定できる。XRF装置の中には、例えば日本の株式会社リガク製ZSX PRIMUS IIのように、液体溶液中のイオン濃度を直接測定可能なものがある。
【0302】
蛍光
所望により、例えば薄層クロマトグラフィー板の検査に使用されるUV光の箱の中に、サンプルを置く。蛍光は、黒色の背景に対して、サンプルを照明することによって、肉眼により検出できる。
【0303】
BET表面
多孔質物品のBET表面は、典型的には、以下のように測定される:総孔容積及び平均孔径は、N2吸着等温線及びBET表面積分析を使用することで分析できる。直管に挿入するため、必要であれば、より大きいサンプルから約0.1~2gのサンプルを切断した。全てのサンプルを、分析前に120℃で1時間超、真空脱気する。次いで、Belsorb II(Robotherm Prazisionsmesstechnik,Bochum,Germanyによって配給)を用い、9mmのセルで2cmのバルブ及び5mmのガラスロッドで、サンプルをN2ガスの吸着及び脱着によって分析した。液体窒素の温度で、吸収データポイントを0.1~0.99p/p0で収集し、脱着ポイントを、0.99~0.5p/p0で収集する。比表面積Sは、p/p0 0.25~0.3でのBET法によって計算される(詳細は、Belsorb Analysis Software User Manual Operating Manual,Chapter
12,Bel Japan.INCの計算に関する第12章を参照されたい)。
【0304】
透光性(TL)を測定する方法
所望であれば、セラミック物品の透光性は、以下の手順で評価することができる:およそ1±0.05mmの厚さ、及び直径少なくとも12mmの測定面積を有するディスクの形状の試験片を提供する。試験片の調製のために、予備焼結サンプルは、乾燥切断鋸を使用して、およそ1.3mmの厚さを有するウェハに鋸で引かれる。ウェハの平行な大きな面は、炭化ケイ素研磨紙(P2500)を使用して研削される。粉砕サンプルを、適切な炉内で、1±0.05mmの厚さを有する焼結サンプルに焼結する。焼結サンプルは、白色及び黒色の背景に対して反射モードで分光光度計(X-Rite Color i7、Grand Rapids,USA)を用いて焼成したまま測定して、材料の不透明度を得る。透光性は、T=1-不透明度に従って計算される。より高い透光性の値は、光の透過率がより高く、不透明度がより低いことを示す。
【0305】
所望であれば、L*a*b*値を、同じ装置を使用して不透明度に加えて決定することができる。
【0306】
粒径(マイクロサイズ粒子に好適)
平均粒径を含む粒径分布を、それが望ましい場合には、Cilas 1064(FA.Quantacrome)粒径検出装置を用いて決定できる。
【0307】
密度
所望であれば、焼結された材料の密度は、アルキメデス法により測定することができる。この測定は、密度測定キット(Sartorius AGから「YDK01」の名称)を用いて、精密天びん(Sartorius AG,Gottingen,Germanyから「BP221S」の名称)上で行われる。この手順において、まずサンプルを空気中で計量し(A)、次に水に浸漬する(B)。水は、0.05重量%のテンシド溶液である(例えば、「Berol 266,Fa.Hoesch)。密度は、式ρ=(A/(A-B))ρ0を用いて算出される(式中、ρ0は水の密度である)。相対密度は、材料の理論密度(ρt)を参照することにより、算出することができる。ρrel=(ρ/ρt)100
【0308】
多孔率
所望であれば、多孔率は以下のように決定することができる。多孔率=(1-(多孔質材料の密度/焼結した材料の密度))×100。多孔質材料の密度は、重量と体積の割算によって計算することができる。容積は幾何学的測定によって得ることができる。
【0309】
平均連結孔径
所望であれば、平均連結孔径は、以下のように測定することができる。ポロシメータ(Quantachrome Poremaster)を用いて高圧下で水銀を多孔質材料に導入する。加えられる圧力は、水銀の表面張力に対して反対の力によって、孔サイズに関連するものである。いわゆるWashburn方程式を使用して、平均連結孔径を測定することができる。以下の測定パラメータが適用されるか、又は結果の計算に使用される。圧力範囲20~60000PSIA、測定中の温度20℃、Hg接触角140°及びHg表面張力480mN/m。
【0310】
平均粒径
所望により、平均粒径は、直線切片分析を用いて測定することができる。70,000倍の倍率を有するFESEM顕微鏡写真が、粒度測定に使用される。焼結体の異なる区域から撮られた3枚又は4枚の顕微鏡写真を、各サンプルについて使用する。各顕微鏡写真の高さに対してほぼ等しい間隔で離れて配置される10本の水平線を引く。各直線上で観察した粒界切片の数を計数し、これを用いて切片間の平均距離を算定する。各直線についての平均距離に1.56を乗じて粒度を求め、この値を各サンプルの全ての顕微鏡写真の全ての直線にわたって平均する。
【0311】
2軸曲げ強度
所望であれば、予備焼結された材料の2軸曲げ強度は、ISO 6872:2015に従って、以下の修正を加えて測定することができる。予備焼結されたサンプルを、ドライカットソーを用いて2+/-0.1mmの厚さのウェハに切断する。サンプルの直径は、17+/-2mmでなくてはならない。ウェハの平行な大きな面は、炭化ケイ素研磨紙(P2500)を使用して研削される。各ウェハは、14mmの支持直径を有する3つの鋼球(球の直径6mm)の支持体の中心に置かれる。ウェハと接触するパンチ直径は3.6mmである。パンチは、0.1mm/分の速度でウェハ上に押し込まれる。平均強度を決定するために、最低15サンプルを測定する。試験は、Instron5566万能試験機(Instron Deutschland GmbH)で実施してもよい。
【0312】
ビッカース硬度
所望により、ビッカース硬度は、以下の修正を加えて、ISO 843-4に従って測定することができる。予備焼結されたサンプルの表面を、炭化ケイ素研磨紙(P2500)を使用して研削する。焼結サンプルの表面は、20μmダイヤモンド懸濁液で研磨される。試験荷重は、サンプルの硬度レベルに調整する。用いた試験荷重は0.2kg~2kgであり、各凹部に15秒間加える。最低10個の凹部を測定し、平均ビッカース硬度を求める。試験は、硬度試験器Leco M-400-G(Leco Instrumente GmbH)によって実施可能である。
【0313】
浸潤ゾーンの厚さ
所望であれば、浸潤ゾーンの厚さは、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって決定することができる。手動でサンディングされた(研磨紙P2500)ジルコニアディスクサンプル(厚さ2mm)をグレイジング組成物で処理し、それぞれの焼結プロトコルに従って焼成し、走査型電子顕微鏡Leco M-400-G2で分析する。
【0314】
この技術はまた、焼結プロセス中に孔の閉鎖を可視化するために使用することができる。
【0315】
ガラスの粘度/表面張力
所望であれば、ガラスの粘度及び表面張力は、ソフトウェアツールを用いてSciGlassから計算することができる。より詳細には、本明細書に記載のガラス組成物の特性を計算するために、以下のソフトウェアツールを使用した:SciGlass Professional,Version 7.12,Model Priven 2000。
【0316】
【0317】
ミルブランクの製造方法
全般的な説明
ミルブランクサンプルを、3Y-TZP粉末から製造した。以下の工程を適用した:
- 粉末組成物を型に充填する(直径:24.9mm)工程。
- 粉末充填物に圧力(200MPa)を加える工程。
- 圧縮された本体を型から取り出す工程。
- 970℃で約2時間の熱処理を適用する工程。
【0318】
ミルブランクの材料は、約78nmの平均連結孔径を有した。
【0319】
試験サンプルを製造するための方法
サンプルを、ミルブランクサンプルから切り出した(サンプル寸法:1.6mm×18.5mm(高さ)×25.6mm)。
【0320】
ガラス粉末を製造するための方法
ガラス粉末G1及びG2を以下のように製造した。
【0321】
それぞれの酸化物を秤量し、ポリプロピレンボトルに充填した。スラリーが得られるまでイソプロピルアルコールを添加した。ジルコニア粉砕媒体を添加し、混合物をローラーミル上で一晩圧延した。混合物をプラスチック製のペトリ皿にふるい落とし、乾燥させた。乾燥した粉末をアルミナるつぼに充填し、800℃で2時間か焼した。か焼した粉末をPt/Rhるつぼに充填し、1,550℃に加熱し、1,550℃で2時間保持した。溶融ガラスを脱イオン水中で急冷することによって冷却した。ガラスを粉砕し、ボールミル粉砕して、2.5μmの平均粒径を有する粉砕されたガラス粉末を得た。
【0322】
使用したガラス粉末は、以下の組成及び特性を有した。
【表4】
【0323】
表面処理のための方法
ガラス粉末1gを2mlのイソプロパノール中に分散させて、液体中のガラス粉末の分散体を得た。Dust-off(商標)の缶に取り付けられた固定スプレーノズルを使用して、試験サンプルの片側に分散体を適用した。
【0324】
焼成プロセス
表面処理された試験サンプルを、Dentsply SironaからのCEREC SpeedFire(商標)炉を使用して、以下の焼結プロトコルに従って熱処理した。
【0325】
焼結プロトコル
a)約4分以内に到達する、約1,350℃の温度までの第1の熱処理セグメント(加熱速度5.3K/秒)と、
b)約9.5分以内に到達する、約1,580℃の温度までの第2の熱処理セグメント(加熱速度0.4K/秒)と、
c)約2分間の第3の熱処理セグメント(放置時間)と、
d)約3分以内に到達する、約1,000℃の温度までの冷却セグメント。
【0326】
冷却後、サンプルを、浸潤深さ及び透光性に関して調査した。
【0327】
【0328】
結果
本発明による方法及び材料を使用した場合、多孔質ジルコニア物品の孔へのガラスの浸潤深さは低く、得られた焼結ジルコニア物品は高い透光性を示した。
【0329】
Ex1及びComp.Ex1のサンプルのSEM写真を、
図2及び
図3に示す。
【0330】
Ex1では、1~2μmのグレイジングの貫入深さが観察された。
【0331】
Comp.Ex1では、7~8μmのグレイジングの貫入深さが観察された。
本明細書に引用した特許、特許文献、及び刊行物の全開示は、それぞれが個別に組み込まれたかのごとく、それらの全体が参照により組み込まれる。本発明に対する様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。上述の明細書、実施例及びデータは、本発明に関する組成物の製造及び使用並びに方法の説明を提供するものである。本発明は、本明細書に開示された実施形態には限定されない。当業者であれば、本発明の多くの代替的実施形態が、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく実施できることを理解するであろう。以下の実施例は、本発明を例解するために与えられる。
本発明は以下の態様を包含する。
(項目1)歯科用ジルコニア修復物の製造方法であって、
前記歯科用ジルコニア修復物が、外側表面及び内側表面を有し、
前記方法が、
多孔質歯科用ジルコニア修復物及びガラスを、前記多孔質歯科用ジルコニア修復物が焼結されるまで焼成する工程であって、
前記ガラスは、前記焼成工程中に、前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の前記外側表面の少なくとも一部分上に位置している、焼成する工程を含み、
前記多孔質歯科用ジルコニア修復物のジルコニア材料及び前記ガラスは、前記焼成工程中に、前記ガラスが前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の孔に、深さ5μmを超えない程度に浸潤するように選択される、方法。
(項目2)前記ガラスが、前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の前記孔が閉鎖される温度で、少なくとも10
4
Pa
*
sの粘度を有する、項目1に記載の歯科用ジルコニア修復物の製造方法。
(項目3)前記ガラス及び前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の前記ジルコニア材料が、以下:
前記ガラスの粘度が、1,300℃の温度で少なくとも10
4
Pa
*
sであり、かつ前記ジルコニア材料が、焼成前に、40nm以上90nm未満の範囲の平均連結孔径を有するか、
又は、
前記ガラスの粘度が、1,300℃の温度で少なくとも10
5
Pa
*
sであり、かつ前記ジルコニア材料が、焼成前に、90nm~150nmの範囲の平均連結孔径を有する、
により特徴付けられる、項目1又は2に記載の歯科用ジルコニア修復物の製造方法。
(項目4)多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクから前記多孔質歯科用ジルコニア修復物を機械加工する工程と、
前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の前記外側表面の少なくとも一部に、前記ガラスを含む表面処理剤を適用する工程と、
任意に、前記多孔質歯科用ジルコニア修復物を乾燥させる工程と、
前記表面処理剤が適用された前記多孔質歯科用ジルコニア修復物の焼成工程を実施する工程と、を含み、
前記焼成工程が、
第1の熱処理セグメントを含み、
前記第1の熱処理セグメントが、
少なくとも3K/秒の加熱速度を用いて、
前記歯科用ジルコニア修復物の最終焼結温度(℃)の75~90%の温度レベルが達成されるまで実施される、項目1~3のいずれかに記載の歯科用ジルコニア修復物の製造方法。
(項目5)前記焼成工程が、前記第1の熱処理セグメントの後に引き続いて第2の熱処理のセグメントを含み、
前記第2の熱処理のセグメントは、異なる加熱速度を有し、好ましくは、前記第1の熱処理セグメントの加熱速度よりも低く、
前記第2の熱処理セグメントは、少なくとも1,500℃の焼結温度に達するまで適用される、項目1~4のいずれかに記載の方法。
(項目6)前記焼成工程が、最大8分の放置時間によって特徴付けられる、前記第2の熱処理セグメントの後に引き続く第3の熱処理セグメントを含む、項目1~5のいずれかに記載の方法。
(項目7)前記焼成工程が、前記第3の熱処理セグメントの後に引き続いて、冷却セグメントを含み、前記冷却セグメントが、以下の特徴、
冷却速度:3K/秒以上、
持続時間:6分以下
の単独又は組み合わせで特徴付けられる、項目1~6のいずれかに記載の方法。
(項目8)前記焼成工程及び前記冷却セグメントの持続時間が、30分以下である、項目7に記載の方法。
(項目9)項目1~8のいずれかに記載の方法によって得られる焼結歯科用ジルコニア修復物であって、反射モードで450~800nmの波長を用いて厚さ1mmの試料上で測定した場合、前記焼結歯科用修復物の透光性が25%以上である、焼結歯科用ジルコニア修復物。
(項目10)以下のセクション:
ガラス層セクションであって、
10~200μmの層厚を有する、ガラス層セクションと、
前記ガラス層セクションに隣接する中間層セクションであって、前記ガラス層セクションの前記ガラスを浸潤させたジルコニア材料セクションを含有し、0.01~5μmの層厚を有する、中間層セクションと、
前記中間層セクションに隣接するジルコニア材料セクションであって、
ガラスを含有しない、ジルコニア材料セクションと、を有する、項目9に記載の焼結歯科用ジルコニア物品。
(項目11)項目1~8のいずれかに記載の方法で使用するための、又は項目9若しくは10に記載の焼結歯科用ジルコニア修復物を製造するための部材のキットであって、前記部材のキットが、多孔質歯科用ジルコニアミルブランク及び表面処理剤を含み、
前記多孔質歯科用ジルコニアミルブランクが、40~150nmの平均連結孔径を有し、
前記表面処理剤が、ガラスを含み、前記ガラスが、1,300℃の温度で、少なくとも10
4
Pa
*
sの粘度を有し、
前記多孔質歯科用ジルコニアミルブランクの材料が、項目1~8のいずれかに記載の多孔質歯科用ジルコニア修復物のジルコニア材料に対応し、
前記ガラスが、項目1~8のいずれかに記載のガラスに対応する、部材のキット。
(項目12)前記多孔質ジルコニア歯科用ミルブランクの前記材料が、以下の特徴、
BET表面:5~15m
2
/g、
密度:2~4g/cm
3
、
多孔率:30~70%、
平均粒径:50~200nm、
熱膨張係数:8.5×10
-6
K
-1
~11.5×10
-6
K
-1
、
の単独又は組み合わせで更に特徴付けられる、項目11に記載の部材のキット。
(項目13)前記ガラスが、以下の特徴、
シリカ系ガラスであること、
熱膨張係数:1×10
-6
K
-1
~10×10
-6
K
-1
、
表面張力:1,300℃で210~300mN/m、
1,100℃~1,350℃の温度でのリトルトン軟化点粘度、
1,300℃~1,650℃の温度での流動点粘度、
のうちの単独で又はそれらを組み合わせて特徴付けられる、項目11又は12に記載の部材のキット。
(項目14)下記の項目:
使用説明書、
前記表面処理剤用の適用器具、
焼結助剤、
粉末として提供される場合、前記ガラスを分散させるための液体、
任意に、シェードガイド、
任意に、研磨助剤、
任意に、焼結オーブン、
のうちの1つ以上を更に含む、項目11~13のいずれかに記載の部材のキット。
(項目15)項目1~14のいずれかに記載の多孔質歯科用ジルコニアミルブランク、表面処理剤、又は部材のキットの、項目1~8のいずれかに記載の方法において歯科用ジルコニア修復物を製造するための使用。