(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098163
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】電力補償装置
(51)【国際特許分類】
B60M 3/06 20060101AFI20240716BHJP
B60M 3/02 20060101ALI20240716BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B60M3/06 B
B60M3/02 A
H02J7/34 C
H02J7/34 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001424
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200218
【弁理士】
【氏名又は名称】沼尾 吉照
(72)【発明者】
【氏名】生熊 律志
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA08
5G503DA16
5G503DA17
5G503DA18
5G503DA19
5G503GB03
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】 蓄電池に蓄電された電力を積極的に充放電することにより、電力の有効活用と
、省エネに寄与することを目的とする。
【解決手段】 電力補償装置は、三相交流電源に接続されたスコット結線変圧器と、スコ
ット結線変圧器の一方の二次側に接続された第1の単相変換器と、スコット結線変圧器の
他方の二次側に接続された第2の単相変換器と、第1の単相変換器と第2の単相変換器と
の直流側を接続する直流回路と、直流回路に接続された電力変換装置と、電力変換装置に
接続された蓄電池とを有し、軽負荷時に充電を行い高負荷時に放電を行うように電力変換
装置を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源に接続されたスコット結線変圧器と、
スコット結線変圧器の一方の二次側に接続された第1の単相変換器と、
スコット結線変圧器の他方の二次側に接続された第2の単相変換器と、
第1の単相変換器と第2の単相変換器との直流側を接続する直流回路と、
直流回路に接続された電力変換装置と、
電力変換装置に接続された蓄電池とを有する電力補償装置。
【請求項2】
電力変換装置は、走行する列車が発生させる回生電力を蓄電池に充電するように制御す
る請求項1記載の電力補償装置。
【請求項3】
電力変換装置は、蓄電池のSOCに応じて蓄電池を充放電するように制御する請求項1
記載の電力補償装置。
【請求項4】
電力変換装置は、予め定められた充放電パターンに沿って蓄電池を充放電するように制
御する請求項1記載の電力補償装置。
【請求項5】
充放電パターンは、軽負荷時に充電を行い、高負荷時に放電を行うように設定されてい
る請求項4記載の電力補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄道き電システムに用いられる電力補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、スコット巻線変圧器を用いた交流き電系統へ設置される鉄道用単相電力補償
装置(RPC:Railway static Power Conditioner)が知られている。スコット巻線変圧
器は、交流き電系統で一般的に使用される変圧器である。三相交流電圧を90°の位相差
のある二つの単相電圧回路に変換する。単相交流はM座とT座にき電され、列車走行の電
力として使用される。列車走行時の負荷状況によってはM座とT座に電圧差が生じて単相
交流間が不平衡となり、変換器の一次側にも三相不平衡が現れることがある。そのため、
鉄道用電力補償装置が、スコット巻線変圧器の2つの単相回路(M座、T座)側に接続さ
れる。鉄道用電力補償装置(RPC)は、M座に接続された単相変換器とT座に接続され
た単相変換器とが直流回路で接続されると共にコンデンサが接続され、直流回路を介して
M座とT座との間で有効電力の融通を行い、且つ、M座側変換器とT座側変換器とがそれ
ぞれ独立に無効電力を出力して、不平衡の抑制を行っている。
【0003】
また、列車が減速したときに回生電力が発生するとき、同一き電区間に力行列車がいる
場合、回生電力を活用することができるが、不在となる場合には回生電力を活用できない
。このため、力行列車が同一き電区間内に不在となる場合でも回生電力を有効活用する技
術が必要とされている。これに対しては、鉄道用電力補償装置に用いられるコンデンサの
代わりにニッケル水素電池を採用することにより、回生電力を電力融通に活用し、き電用
変圧器一次側の三相不平衡を軽減する手法や列車の非常時走行に活用する手法が提案され
ている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ニッケル水素電池を採用したシステムでは、蓄電池としての能力とキャパシタ
としての能力との両方を活用しようとするものであり、蓄電池の活用としては限定的なも
のとなっている。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、蓄電池に蓄電された電力を積極的に充放電
することにより、電力の有効活用と、省エネに寄与する電力補償装置を提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電力補償装置は、三相交流電源に接続されたスコット結線変圧器と、スコッ
ト結線変圧器の一方の二次側に接続された第1の単相変換器と、スコット結線変圧器の他
方の二次側に接続された第2の単相変換器と、第1の単相変換器と第2の単相変換器との
直流側を接続する直流回路と、直流回路に接続された電力変換装置と、電力変換装置に接
続された蓄電池とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電力補償装置の構成図である。
【
図2】
図2は、回生電力を蓄電池に蓄積する様子を示した図である。
【
図3】
図3は、三相交流電源からの受電電力を蓄電池に蓄積する様子を示した図である。
【
図4】
図4は、SOCが低いときに蓄電池を充電する様子を示した図である。
【
図5】
図5は、SOCが高いときに蓄電池を放電する様子を示した図である。
【
図6】
図6は、閑散時間帯に蓄電池を充電する様子を示した図である。
【
図7】
図7は、ラッシュ時間帯に蓄電池を放電する様子を示した図である。
【
図8】
図8は、蓄電池に蓄積した電力を力行列車に供給する様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電力補償装置の構成図である。
電力補償装置は、スコット結線変圧器1と、第1の単相変換器2と、第2の単相変換器
3と、電力変換器4と、蓄電池5とを備える。
スコット結線変圧器1は、三相交流電源に接続され、三相交流電圧を2つ単相交流電圧
に変換する。
第1の単相変換器2は、スコット結線変圧器1のM座側に接続され、第2の単相変換器
3は、スコット結線変圧器1のT座側に接続される。また、第1の単相変換器2と第2の
単相変換器3の直流側は互いに直流回路で接続される。
電力変換装置4は、第1の単相変換器2と第2の単相変換器3との直流回路に接続され
る。
蓄電池5は、電力変換装置4に接続される。
【0010】
第1の単相変換器2と第2の単相変換器3とは、M座とT座とに出力される有効電力の
融通を行い、M座とT座とのそれぞれに無効電力を出力することにより、M座とT座間の
電圧差による不平衡の抑制を行う。
電力変換装置4は、蓄電池5の充放電を制御することにより、三相交流電源、M座およ
びT座との電力のやり取りを行う。
【0011】
図2は、回生電力を蓄電池に蓄積する様子を示した図である。
図2では、M座側を走行する列車が減速または抑速を行うことにより回生電力を発生さ
せたときである。このとき、同じM座側に他の列車が存在しており、かつ力行運転を行っ
ていれば、その列車が回生電力を消費することができる。
一方で力行列車が存在しないときは、本実施形態では電力変換装置4を制御して、蓄電
池5に回生電力を蓄積する。例えば、回生電力を蓄電池に蓄積する制御を行うときは、列
車ダイヤ情報に基づき回生列車が存在し、かつ力行列車が存在しないときに行っても良い
し、M座またはT座側の電圧検出器により架線電圧が上昇することを検知したときに行っ
ても良い。また、M座とT座に電圧差が生じることによる不平衡を抑制するためのM座と
T座での有効電力の融通は行われており、直ちに回生電力を蓄電池に蓄積する必要はなく
、所定値を超えるときに蓄電池への蓄積を行っても良い。
【0012】
これにより、従来は力行列車が存在しないときは、三相交流電源側に電力を戻していた
が、本実施形態によればき電設備として回生電力を有効活用することができる。また、蓄
電池5に対して充放電用の電力変換装置4を設けることにより、より効率的に回生電力を
蓄積することが可能となる。
【0013】
図3は、三相交流電源からの受電電力を蓄電池に蓄積する様子を示した図である。
図3では、T座側を走行する列車がないときや少ないときであり、無負荷や軽負荷であ
る。このようなときは、本実施形態では電力変換装置4を制御して、蓄電池5に受電電力
を蓄積する。例えば、列車ダイヤ情報に力行列車が存在しないときや、M座またはT座側
の電圧検出器により架線電圧が所定値より高い状態を継続していることを検知したときに
、蓄電池に電力を蓄積するように電力変換装置を制御しても良い。
これにより、軽負荷時に蓄電池に電力を蓄積することで、き電設備として受電電力を有
効活用することができる。
【0014】
図4はSOCが低いときに蓄電池を充電する様子を示した図であり、
図5はSOCが高
いときに蓄電池を放電する様子を示した図である。
図4および
図5では、SOCの状況に応じて電力変換装置4を制御して、蓄電池5を充
放電している。
これにより、電圧変動に追従して充放電を行う制御に加えて、SOCが低い時は積極的
に蓄電池を充電し、SOCが高い時は積極的に蓄電池を放電することができる。蓄電池の
SOCを所定の範囲に保つことができ、蓄電池の劣化を抑制することができる。また、S
OCを所定の値よりも低くすることで、余剰の回生電力等を充電する余裕を確保すること
ができる。
【0015】
図6は閑散時間帯に蓄電池を充電する様子を示した図であり、
図7はラッシュ時間帯に
蓄電池を放電する様子を示した図である。
図6および
図7では、運転時間帯に応じて電力変換装置4を制御して、蓄電池5を充放
電している。
例えば、閑散時間帯では 列車本数が少なく、力行列車に供給できない余剰回生電力が
発生するため、余剰回生電力を積極的に蓄電池へ充電する。また、ラッシュ時間帯では、
列車本数が多いため、蓄電池に蓄積された電力を、力行列車に積極的に供給する。
これにより、受電電力をき電設備において有効に活用することができる。
また、閑散時間帯やラッシュ時間帯に限らず、充放電パターンを変更することは可能で
ある。例えば、平日の運転ダイヤや休日の運転ダイヤに応じて充放電パターンを変更して
も良い。
【0016】
図8は、蓄電池に蓄積した電力を力行列車に供給する様子を示した図である。
図8では、M座を走行する力行列車の負荷電力が高まったときであり、例えば力行列車
のみであるときや、力行列車の負荷電力が回生列車の回生電力よりも大きいときである。
このときは、M座の負荷が高まるため、受電電力の負荷も大きくなる。よって、本実施
形態では電力変換装置を制御して、蓄電池5を放電することで、受電電力を削減すること
が可能となる
このとき蓄電池5からの電力は、閑散時間帯などの軽負荷時に充電されたものとするこ
とで、き電システムとして、負荷分散を実現することができる。
また、列車運行の多いラッシュ時間帯に力行列車へ電力供給を行うことで、受電電力の
ピークカットに寄与することができ、コスト削減を行うことも可能となる。
また、列車負荷が高いときに力行列車へ電力供給を行うことで、負荷変動を抑制するこ
とも可能となる。
【0017】
以上のように、本実施形態によれば、蓄電池に対して充放電用の電力変換装置を設ける
ことにより、積極的に蓄電池の充放電を行うことが可能となり、電力の有効活用と、省エ
ネを実現することが可能となる。
【0018】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり
、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々
な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置
き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含
まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0019】
1…スコット結線変圧器
2…第1の単相変換器
3…第2の単相変換器
4…電力変換装置
5…蓄電池