(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098164
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】粒子線がん治療装置における飛程測定装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240716BHJP
G01T 1/29 20060101ALI20240716BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G01T1/20 F
G01T1/29 A
G01T1/20 L
A61N5/10 H
A61N5/10 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001425
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【弁理士】
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】友 亮人
【テーマコード(参考)】
2G188
4C082
【Fターム(参考)】
2G188AA01
2G188CC22
2G188DD09
2G188DD24
2G188DD25
2G188DD28
2G188DD31
2G188EE01
2G188EE29
2G188EE39
4C082AC04
4C082AE03
4C082AP01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】粒子線の入射角度に依存せず、複数のエネルギーにおける粒子線の飛程測定を短時間で実施することができる粒子線がん治療装置における飛程測定装置を得ることにある。
【解決手段】実施形態は、粒子線治療を行う治療室が内部に設けられた回転ガントリー1aと、前記回転ガントリーの内周面に固定され、前記回転ガントリーの回転とともに回転可能な照射ポート2を有する粒子線がん治療装置1において、前記照射ポートに取り付けられ、粒子線に反応して発光しこの粒子線の飛程測定を行うためのシンチレータ4と、前記粒子線がん治療装置が設置された建物に接続され、前記照射ポートから放出された粒子線のエネルギーを減衰させるエネルギー減衰用フィルタ3と、前記シンチレータの発光を撮影するためのカメラ5と、前記カメラの映像データによって前記照射ポートから放出された粒子線の飛程を解析する飛程解析装置7を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線治療を行う治療室が内部に設けられた回転ガントリーと、
前記回転ガントリーの内周面に固定され、前記回転ガントリーの回転とともに回転可能
な照射ポートを有する粒子線がん治療装置において、
前記照射ポートに取り付けられ、粒子線に反応して発光しこの粒子線の飛程測定を行う
ためのシンチレータと、
前記粒子線がん治療装置が設置された建物に接続され、前記照射ポートから放出された
粒子線のエネルギーを減衰させるエネルギー減衰用フィルタと、
前記シンチレータの発光を撮影するためのカメラと、
前記カメラの映像データによって前記照射ポートから放出された粒子線の飛程を解析す
る飛程解析装置を有することを特徴とする粒子線がん治療装置における飛程測定装置。
【請求項2】
前記エネルギー減衰用フィルタは、円筒形状または球状であり、円筒形状の前記エネル
ギー減衰用フィルタにおいては円筒の中心軸が、また球状の前記エネルギー減衰用フィル
タにおいては球の中心が、前記回転ガントリーの回転中心と一致するように配置されてい
ることを特徴とする請求項1記載の粒子線がん治療装置における飛程測定装置。
【請求項3】
前記シンチレータは、前記照射ポートに固定治具を介して着脱自在に固定されているこ
とを特徴とする請求項1または請求項2記載の粒子線がん治療装置における飛程測定装置
。
【請求項4】
前記シンチレータの粒子線入射方向手前に設置され粒子線が衝突すると発光する蛍光膜
と、この蛍光膜の発光を撮影するためのプロファイル測定用カメラと、このプロファイル
測定用カメラで撮影した映像データから前記蛍光膜の発光強度を解析する発光強度解析装
置を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の粒子線がん治療装置における
飛程測定装置。
【請求項5】
前記発光強度解析装置は、前記蛍光膜の発光強度を解析し、前記粒子線のプロファイル
情報である前記粒子線のエネルギーサイズおよび入射位置を取得することを特徴とする請
求項4記載の粒子線がん治療装置における飛程測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、粒子線がん治療装置における飛程測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子線がん治療において、粒子線エネルギーが増えることにより治療計画の幅が広がる
ため、複数の利用可能な粒子線エネルギーが求められる。その各々の粒子線エネルギーに
対して粒子線のエネルギーサイズや入射位置というプロファイル情報は治療計画を作成す
るための重要なパラメータである。
【0003】
粒子線エネルギーは粒子線の飛程を決定するものである。粒子線の飛程測定方法として
線量分布測定および、シンチレータを用いた輝度測定があげられる。線量分布測定では人
体を模擬した水槽内に、位置変更が可能な駆動系に取り付けられた電離箱を用いて水中で
の線量分布の深さ依存性を測定する。シンチレータを用いた輝度測定方法は、シンチレー
タが粒子線と反応した時に生じる光から、粒子線の飛程を測定する方法である。
【0004】
また、粒子線のサイズや位置を測定するためには粒子線を可視化する必要がある。その
ため、蛍光膜等で粒子線の形状を反映することで、粒子線のプロファイル情報を取得して
いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の線量分布測定方法は水槽を設置し、電離箱に駆動系を取り付ける場合、水槽を用
いているため、水がこぼれない条件(床に対して垂直方向)に設置する必要があり、粒子
線の入射角度に制限が生じていた。そして、測定位置を変化させるため、測定が長時間に
なるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記実施形態は、粒子線治療を行う治療室が内部に設けられた回転ガントリーと、前記
回転ガントリーの内周面に固定され、前記回転ガントリーの回転とともに回転可能な照射
ポートを有する粒子線がん治療装置において、前記照射ポートに取り付けられ、粒子線に
反応して発光しこの粒子線の飛程測定を行うためのシンチレータと、前記粒子線がん治療
装置が設置された建物に接続され、前記照射ポートから放出された粒子線のエネルギーを
減衰させるエネルギー減衰用フィルタと、前記シンチレータの発光を撮影するためのカメ
ラと、前記カメラの映像データによって前記照射ポートから放出された粒子線の飛程を解
析する飛程解析装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態に係る粒子線がん治療装置における飛程測定装置は、粒子線の入射角
度に依存せず、複数のエネルギーにおける粒子線の飛程測定を短時間で実施することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る粒子線がん治療装置における飛程測定装置の概略図。
【
図2】(a)および(b)は各々
図1に示したエネルギー減衰用フィルタを拡大して示す概略斜視図。
【
図3】(a)から(c)は
図1に示した回転ガントリーの角度を変更した場合を示す概略正面図。
【
図4】第2実施形態を説明する粒子線がん治療装置における飛程測定装置の要部概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に関わる飛程測定装置の実施例について図面を参照して説明する。
【0011】
(実施例1)
図1は本実施形態に係る粒子線がん治療装置1における飛程測定装置の概略図である。
【0012】
図1に示す粒子線がん治療装置1の円筒状の回転ガントリー1aにおける飛程測定装置
15において、円筒形状を成し粒子線治療を行う治療室(図示せず)が内部に設けられた
回転ガントリー1aの照射ポート2から放出された粒子線8は、粒子線がん治療装置1が
設置された建物に粒子線がん治療装置1とは独立して配置され、治療室内に挿入され治療
される人体等の組織等価物質と呼ばれるパラフィン、アクリル樹脂等で形成されているエ
ネルギー減衰用フィルタ3を通過し、照射ポート2に固定治具13を介して着脱自在に固
定されている測定器14のシンチレータ4に入射する。
【0013】
この粒子線8に反応したシンチレータ4は光を放出するため、その光を飛程測定用カメ
ラ5で撮影する。撮影した映像データ(映像)は接続ケーブル6を介して飛程解析装置7
に送信され、飛程解析装置7で受信した映像データからシンチレータ4が発光した長さを
解析し、シンチレータ4に入射した粒子線8の飛程を測定する。
【0014】
図2および、
図3はエネルギー減衰用フィルタ3を示し、
図2(a)および(b)は各
々
図1に示したエネルギー減衰用フィルタを拡大して示す概略斜視図であり、
図3(a)
から(c)は
図1に示した回転ガントリーの角度を変更した場合を示す概略正面図である
。なお、
図2、
図3において
図1と同一部分には同一符号を付し、その部分の構成の説明
は省略する。
【0015】
図2において、エネルギー減衰用フィルタ3の形状は、照射ポート2から放出される粒
子線8の入射角度に対して厚さが変化しない
図2(a)に示す円筒形状のエネルギー減衰
用フィルタ3aまたは
図2(b)に示す球状のエネルギー減衰用フィルタ3bとし、ビー
ムエネルギーが低い場合にフィルタ内で停止してしまわないためにビームエネルギーに応
じて直径の異なるものを自由に取り付け、取り外せるものとしている。
【0016】
エネルギー減衰用フィルタ3の
図2(a)に示す円筒形状のエネルギー減衰用フィルタ
3aにおいては円筒の中心軸Aが、また
図2(b)に示す球状のエネルギー減衰用フィルタ
3bにおいては球の中心が、粒子線がん治療装置1の回転ガントリー1aの回転中心Bと
一致するようにエネルギー減衰用フィルタ3は配置されている。
【0017】
そして、
図3に示すように回転ガントリー1aが回転し、照射ポート2が(a)から(
c)のように回転してもエネルギー減衰用フィルタ3の中心は回転ガントリー1aの回転
中心Bと一致しているので、その粒子線がん治療装置1における飛程測定装置15は、粒
子線8の入射角度に依存せず、複数のエネルギーにおける粒子線の飛程測定を短時間で実
施することができる。
【0018】
なお、本実施例において、エネルギー減衰用フィルタ3は粒子線の飛程測定に適切な(
測定されるビームにおける粒子がシンチレータ内で止まる)エネルギーとなるようにエネ
ルギー減衰用フィルタ3の取り付け、取り外しを行い調整される。
【0019】
よって、粒子線の飛程測定を短時間で実施することができ、複数エネルギーの粒子線に
対して飛程測定を実施することができる。
【0020】
(実施例2)
図4は実施例1のシンチレータ4の粒子線8の入射向き(入射方向)の手前に蛍光膜1
0とプロファイル測定用カメラ9を設置した第2実施形態を説明する粒子線がん治療装置
における飛程測定装置15の要部概略図である。なお、
図4において
図1と同一部分には
同一符号を付してその部分の構成の説明は省略する。また
図4において、
図1で図示した
照射ポート2、固定治具13は省略している。
【0021】
図4において、照射ポート2から放出され測定器14内に入射した粒子線8が蛍光膜1
0に当たることで蛍光膜10が発光する。この蛍光膜10をプロファイル測定用カメラ9
で撮影し、撮影した映像データは接続ケーブル11を介して発光強度解析装置12に送信
される。発光強度解析装置12によって、プロファイル測定用カメラ9で撮影し、接続ケ
ーブル11を介して送信された映像データから蛍光膜10の発光強度を解析し、粒子線8
のプロファイル情報である粒子線8のエネルギーサイズおよび入射位置を取得する。
【0022】
上述した構成により、実施例1と同一の設置に付加することによって粒子線8の飛程測
定と粒子線のエネルギーサイズおよび入射位置の測定を実施することができるため、測定
装置の設置時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…粒子線がん治療装置
1a…回転ガントリー
2…照射ポート
3、3a、3b…エネルギー減衰用フィルタ
4…シンチレータ
5…飛程測定用カメラ
6…接続ケーブル
7…飛程解析装置
8…粒子線
9…プロファイル測定用カメラ
10…蛍光膜
11…接続ケーブル
12…発光強度解析装置
13…固定治具
14…測定器
15…飛程測定装置