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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098172
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】車両用スプラッシュガード構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/18 20060101AFI20240716BHJP
   B62D 25/16 20060101ALI20240716BHJP
   B60J 10/86 20160101ALI20240716BHJP
【FI】
B62D25/18 G
B62D25/16 E
B60J10/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001450
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】大川 慶
【テーマコード(参考)】
3D201
3D203
【Fターム(参考)】
3D201AA05
3D201CA23
3D203AA02
3D203BB57
3D203BC04
3D203BC22
3D203CB09
3D203CB10
3D203CB13
3D203CB19
3D203DA32
(57)【要約】
【課題】スプラッシュガードを車体パネルに組み付ける際の工数を減らすことができ、さらに組付け精度や組付け強度を向上させることができる車両用スプラッシュガード構造を提供する。
【解決手段】車両用スプラッシュガード構造100において、ドアパネル104で形成されたホイールアーチ110に設置されたスプラッシュガード106は、ホイールアーチを車外側から覆って意匠面を形成する外側部134と外側部から車内側に屈曲してホイールアーチの車内側に回り込む延長部136とを有する本体130と、ホイールアーチに車内側から固定される一端部138と本体の延長部に重ねられて固定される他端部138とを有しホイールアーチに本体を固定する取付ブラケット132と、本体の外側部に設けられ取付ブラケットの一端部とともにホイールアーチを挟持して一端部とともに共締めされる挟持固定部158a、158b、158c、158dとを有する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の車体パネルで形成されたホイールアーチと、該ホイールアーチに設置されたスプラッシュガードとを備える車両用スプラッシュガード構造において、
前記スプラッシュガードは、
前記ホイールアーチに沿って延びる所定の本体であって、該ホイールアーチを車外側から覆って意匠面を形成する外側部と、該外側部から車内側に屈曲して前記ホイールアーチの車内側に回り込む延長部とを有する本体と、
前記本体に沿って延びて前記ホイールアーチに前記本体を固定する取付ブラケットであって、前記ホイールアーチに車内側から固定される一端部と、前記本体の延長部に重ねられて固定される他端部とを有する取付ブラケットと、
前記本体の外側部に設けられ前記取付ブラケットの一端部とともに前記ホイールアーチを挟持して該一端部とともに共締めされる挟持固定部とを有することを特徴とする車両用スプラッシュガード構造。
【請求項2】
前記ホイールアーチを形成する車体パネルは、車外側のアウタパネルと車内側のインナパネルとを含み、
前記取付ブラケットの前記他端部は、前記一端部から連続し車外側に屈曲して延びていて、
前記スプラッシュガードはさらに、
前記本体の外側部に設けられ前記挟持固定部よりも前記ホイールアーチの縁から離れていて前記車体パネルのアウタパネルに固定された第1固定部と、
前記本体の延長部に設けられ前記取付ブラケットの前記他端部に重ねられて固定された第2固定部とを有し、
前記取付ブラケットはさらに、
前記一端部に設けられ前記挟持固定部に重ねられて前記車体パネルのインナパネルに車内側から固定された一端側固定部と、
前記他端部に設けられ前記第2固定部に重ねられて前記本体の延長部に固定された他端側固定部とを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用スプラッシュガード構造。
【請求項3】
前記車体パネルはドアパネルであって、
前記取付ブラケットはさらに、前記一端部の角部に設けられドア閉時に車体に当接するダストシールが固定されたシール固定部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用スプラッシュガード構造。
【請求項4】
当該車両用スプラッシュガード構造はさらに、車体のサイドボディの下端に固定され車両前後方向に延びるサイドスプラッシュを備え、
前記車体パネルはドアパネルであって、
前記サイドスプラッシュの後端には車両上方に突出した凸部が形成されていて、
前記スプラッシュガードの下端にはドア閉時に前記凸部が嵌まる凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用スプラッシュガード構造。
【請求項5】
前記スプラッシュガードの凹部は、前記取付ブラケットの下端に形成されていて、
前記取付ブラケットの下端には、前記凹部から下方に突出した突起部が形成されていて、
前記本体の下端には、下方に開放された開口部と、該開口部の開口端から車内側に張り出したフランジと、該フランジに設けられた孔部とが形成されていて、
前記取付ブラケットの下端に形成された突起部は、前記本体の下端に形成された孔部に係合していることを特徴とする請求項4に記載の車両用スプラッシュガード構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スプラッシュガード構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両では、ドアパネルなどの所定の車体パネルで形成されたホイールアーチにスプラッシュガードが設置される場合がある。スプラッシュガードは、車体パネルを保護するだけでなく、意匠性を向上させる役目も果たす部材である。
【0003】
特許文献1には、ドアにドア側オーバーフェンダが取り付けられたオーバーフェンダ取付け構造が記載されている。このドア側オーバーフェンダは、その外周縁がエンドラバーでドアアウタパネルに当接し、その内周縁がブラケットを介してドアアウタパネルに結合している。ブラケットは、その外周縁がドアアウタパネルにグロメットとスクリューとで結合され、その内周縁が2ピースクリップによってドア側オーバーフェンダの内周縁と結合している。
【0004】
特許文献1では、ドアの下部とドア側オーバーフェンダの内周縁とにわたって取り付けられるブラケットの長さを短くできるので、ブラケットの剛性を確保して、ドア側オーバーフェンダの取付け剛性を確保できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-19642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1のオーバーフェンダ取付け構造では、前工程で車体パネルにブラケットを別途設置するため、その分、工数が必要となる。また、ブラケットが別途設置された車体パネルを保管するスペースを確保する必要がある。さらに、車体パネルにブラケットが設置された状態で、ドア側オーバーフェンダをブラケットに結合する必要があるため、組付け精度が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、スプラッシュガードを車体パネルに組み付ける際の工数を減らすことができ、さらに組付け精度を向上させることができる車両用スプラッシュガード構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用スプラッシュガード構造の代表的な構成は、所定の車体パネルで形成されたホイールアーチと、ホイールアーチに設置されたスプラッシュガードとを備える車両用スプラッシュガード構造において、スプラッシュガードは、ホイールアーチに沿って延びる所定の本体であって、ホイールアーチを車外側から覆って意匠面を形成する外側部と、外側部から車内側に屈曲してホイールアーチの車内側に回り込む延長部とを有する本体と、本体に沿って延びてホイールアーチに本体を固定する取付ブラケットであって、ホイールアーチに車内側から固定される一端部と、本体の延長部に重ねられて固定される他端部とを有する取付ブラケットと、本体の外側部に設けられ取付ブラケットの一端部とともにホイールアーチを挟持して一端部とともに共締めされる挟持固定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スプラッシュガードを車体パネルに組み付ける際の工数を減らすことができ、さらに組付け精度や組付け強度を向上させることができる車両用スプラッシュガード構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る車両用スプラッシュガード構造が適用される車両を示す図である。
図2図1の車両用スプラッシュガード構造の一部を示す図である。
図3図1の車両用スプラッシュガード構造のドアパネルおよびスプラッシュガードを示す図である。
図4図3からスプラッシュガードを省略したドアパネルを示す図である。
図5図3のスプラッシュガードの取付ブラケットを示す図である。
図6図3のスプラッシュガードの本体を示す図である。
図7図1の車両用スプラッシュガード構造の要部を示す図である。
図8図1の車両用スプラッシュガード構造のA-A断面図である。
図9図1の車両用スプラッシュガード構造の一部を透過して示す図である。
図10図9の車両用スプラッシュガード構造の一部およびB-B断面を示す図である。
図11図10の車両用スプラッシュガード構造のC-C断面およびD-D断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用スプラッシュガード構造の代表的な構成は、所定の車体パネルで形成されたホイールアーチと、ホイールアーチに設置されたスプラッシュガードとを備える車両用スプラッシュガード構造において、スプラッシュガードは、ホイールアーチに沿って延びる所定の本体であって、ホイールアーチを車外側から覆って意匠面を形成する外側部と、外側部から車内側に屈曲してホイールアーチの車内側に回り込む延長部とを有する本体と、本体に沿って延びてホイールアーチに本体を固定する取付ブラケットであって、ホイールアーチに車内側から固定される一端部と、本体の延長部に重ねられて固定される他端部とを有する取付ブラケットと、本体の外側部に設けられ取付ブラケットの一端部とともにホイールアーチを挟持して一端部とともに共締めされる挟持固定部とを有することを特徴とする。
【0012】
上記構成では、スプラッシュガードは、挟持固定部によって取付ブラケットの一端部と本体とが共締めされ、車体パネルで形成されたホイールアーチを挟持して固定される。このため、前工程で車体パネルに接合される専用ブラケットが不要となり、工数を減らすことができる。また、専用ブラケットが接合された車体パネルを保管するスペースを確保する必要がないため、生産ラインでの保管スペースを削減でき、さらに作業中の危害性も低減できる。
【0013】
また挟持固定部によってホイールアーチを挟持して共締めする構造であるため、スプラッシュガードの本体および取付ブラケットの、車体パネルのホイールアーチに対する位置決めを容易に行うことができる。そしてスプラッシュガードでは、車体パネルのホイールアーチに対する本体および取付ブラケットの位置を容易に修正できるため、組付け精度を向上させることができる。さらにスプラッシュガードの組付け強度を、クリップで組付ける場合に比べて強固にできるため、使用時の接触などでスプラッシュガードが脱落することを防止できる。
【0014】
上記のホイールアーチを形成する車体パネルは、車外側のアウタパネルと車内側のインナパネルとを含み、取付ブラケットの他端部は、一端部から連続し車外側に屈曲して延びていて、スプラッシュガードはさらに、本体の外側部に設けられ挟持固定部よりもホイールアーチの縁から離れていて車体パネルのアウタパネルに固定された第1固定部と、本体の延長部に設けられ取付ブラケットの他端部に重ねられて固定された第2固定部とを有し、取付ブラケットはさらに、一端部に設けられ挟持固定部に重ねられて車体パネルのインナパネルに車内側から固定された一端側固定部と、他端部に設けられ第2固定部に重ねられて本体の延長部に固定された他端側固定部とを有する。
【0015】
このように、スプラッシュガードの本体は、挟持固定部に加え、第1固定部によって車体パネルのアウタパネルに固定され、第2固定部によって取付ブラケットの他端部に固定されている。また取付ブラケットは、一端部の一端側固定部によって車体パネルのインナパネルに固定され、他端部の他端側固定部によって本体の延長部に固定されている。これにより、車体パネルのホイールアーチに対するスプラッシュガードの位置決めを確実に行うことができるため、外観精度を向上させることができる。またスプラッシュガードの組付け強度をさらに強固にできるため、使用時の接触などでスプラッシュガードが脱落することを防止できる。
【0016】
上記の車体パネルはドアパネルであって、取付ブラケットはさらに、一端部の角部に設けられドア閉時に車体に当接するダストシールが固定されたシール固定部を有する。
【0017】
このようにスプラッシュガードでは、取付ブラケットのシール固定部によってダストシールが固定されているので、ドアパネルと車体との間への異物の侵入を防止できる。このため、スプラッシュガードとしての機能を向上させることができる。
【0018】
また取付ブラケットにダストシールを固定することにより、ドアパネルにダストシールを直接取り付ける作業が不要となる。これにより、スプラッシュガードをドアパネルに組み付ける組付作業において、一例として、取付ブラケットにダストシールを固定した組立体を用意し、本体をドアパネルに組み付ける途中で、組立体をドアパネルに組み付けることが可能となる。このようにして、組付作業の自由度が増して作業性を改善することができる。
【0019】
さらに取付ブラケットにダストシールを固定しているため、ドアパネルにダストシールを直接取り付けるよりも、ダストシールの位置合わせが容易になるため、組付け精度を向上させることができる。
【0020】
上記の車両用スプラッシュガード構造はさらに、車体のサイドボディの下端に固定され車両前後方向に延びるサイドスプラッシュを備え、車体パネルはドアパネルであって、サイドスプラッシュの後端には車両上方に突出した凸部が形成されていて、スプラッシュガードの下端にはドア閉時に凸部が嵌まる凹部が形成されている。
【0021】
これにより、サイドスプラッシュの後端の凸部とスプラッシュガードの下端の凹部とは、ドア閉時において重なる構造となっている。このため、ドア閉時にドアパネルと車体の間さらにはドアパネルとスプラッシュガードの間に異物が侵入することを防止することができる。
【0022】
上記のスプラッシュガードの凹部は、取付ブラケットの下端に形成されていて、取付ブラケットの下端には、凹部から下方に突出した突起部が形成されていて、本体の下端には、下方に開放された開口部と、開口部の開口端から車内側に張り出したフランジと、フランジに設けられた孔部とが形成されていて、取付ブラケットの下端に形成された突起部は、本体の下端に形成された孔部に係合している。
【0023】
このように、取付ブラケットの下端に形成された突起部が本体の下端に形成された孔部に係合しているため、取付ブラケットの剛性を高めることができる。さらに、スプラッシュガードの本体に取付ブラケットを取り付けるときに位置決めを行うことができるため、組付作業を容易に行うことができる。
【実施例0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施例に係る車両用スプラッシュガード構造100が適用される車両102を示す図である。図2は、図1の車両用スプラッシュガード構造100の一部を示す図である。以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。なお以下の説明では、図1の車両右側の車両用スプラッシュガード構造100を例示するが、車両左側に本実施例を適用してもよい。
【0026】
車両用スプラッシュガード構造100は、図1および図2(a)に示すように所定の車体パネルとしてのドアパネル104と、スプラッシュガード106と、サイドスプラッシュ108とを備える。ドアパネル104は、ホイールアーチ110(図4参照)を形成している。スプラッシュガード106は、ドアパネル104のホイールアーチ110に設置されていて、ドアパネル104を保護し、さらに意匠性を向上させる。
【0027】
図2(b)は、図2(a)の車両用スプラッシュガード構造100からドアパネル104およびスプラッシュガード106を省略した状態を示している。サイドスプラッシュ108は、図2(b)に示す車両102のサイドボディ112の下端114(例えばサイドシル)に固定され、車両前後方向に延びる部材である。サイドスプラッシュ108は、サイドボディ112の下端114を保護し、さらに意匠性を向上させる。
【0028】
また図2(a)に示すようにスプラッシュガード106の下端116は、ドア閉時にサイドスプラッシュ108の後端118と隣接している。サイドスプラッシュ108の後端118には、図2(b)に示す車両上方に突出した凸部120が形成されている。このサイドスプラッシュ108の凸部120は、例えば乗員の乗り込み時に、乗員がサイドスプラッシュ108に足を掛けることを防止するために設けられている。
【0029】
図3は、図1の車両用スプラッシュガード構造100のドアパネル104およびスプラッシュガード106を示す図である。図3(a)は、図2(a)の一部を示す図である。図3(b)は、図3(a)のドアパネル104およびスプラッシュガード106の車内側を斜め後方から見た状態を示す図である。図4は、図3からスプラッシュガード106を省略したドアパネル104を示す図である。
【0030】
ドアパネル104は、図4(a)に示す車外側のアウタパネル122と、図4(b)に示す車内側のインナパネル124とを含み、アウタパネル122およびインナパネル124によってホイールアーチ110を形成している。またドアパネル104の下端126には、切欠き128が形成されている。
【0031】
ホイールアーチ110に設置されたスプラッシュガード106は、図3(a)に示す本体130と、図3(b)に示す取付ブラケット132とを有する。本体130は、ホイールアーチ110に沿って延びる部材であって、図3(b)に示す外側部134と延長部136とを有する。外側部134は、ホイールアーチ110を車外側から覆って意匠面を形成する。延長部136は、外側部134から車内側に屈曲して、ホイールアーチ110の車内側に回り込んでいる。
【0032】
取付ブラケット132は、本体130に沿って延びていて、ホイールアーチ110に本体130を固定する。また取付ブラケット132は、図3(b)に示す一端部138と、他端部140(図5(a)参照)とを有する。一端部138は、ホイールアーチ110を形成するドアパネル104のインナパネル124に車内側から固定される。他端部140は、一端部138から連続し車外側に屈曲して、本体130の延長部136に重ねられて固定される。
【0033】
取付ブラケット132の下端142は、一端部138と他端部140をつないでいて(図5参照)、取付ブラケット132の剛性を高めている。さらに取付ブラケット132の下端142には、図3(b)に示す凹部144が形成されている。取付ブラケット132の凹部144は、図4に示すドアパネル104の下端126の切欠き128に対応する位置に設定されている。また取付ブラケット132には、ダストシール146が固定されている。
【0034】
図5は、図3のスプラッシュガード106の取付ブラケット132を示す図である。取付ブラケット132は、図5(a)に示す複数(ここでは8つ)のシール固定部148を有する。複数のシール固定部148は、一端部138の角部150に沿って所定間隔で設けられていて、ダストシール146を固定する。ダストシール146は、ドア閉時に車体すなわちサイドボディ112(図2参照)に設けられた樹脂部品であるプロテクタ151(図2(b)参照)に当接し、ドアパネル104とサイドボディ112との間への異物の侵入を防止できる(図10(b)、図11(a)および図11(b)参照)。
【0035】
また取付ブラケット132は、複数(ここでは4つ)の一端側固定部152a、152b、152c、152dと、複数(ここでは3つ)の他端側固定部154a、154b、154cとを有する。一端側固定部152a、152b、152c、152dは、一端部138に沿って所定間隔で設けられていて、ドアパネル104のインナパネル124に車内側から固定される。また一端側固定部152a、152b、152c、152dには、ボルト155a、155b、155c、155dが取り付けられている。
【0036】
他端側固定部154a、154b、154cは、他端部140に沿って所定間隔で設けられていて、本体130の延長部136に固定される。さらに図5に示すように、取付ブラケット132の下端142には、凹部144から下方に突出した突起156a、156bが形成されている。
【0037】
図6は、図3のスプラッシュガード106の本体130を示す図である。図7は、図1の車両用スプラッシュガード構造100の要部を示す図である。図7(a)、図7(b)はそれぞれ、図2(b)、図3(b)の一部を拡大して示す図である。ただし図7(b)では、取付ブラケット132に固定されたダストシート146を省略している。図7(c)は、スプラッシュガード106の下端116を示す図である。
【0038】
スプラッシュガード106はさらに、図6(a)に示すように複数(ここでは4つ)の挟持固定部158a、158b、158c、158dを有する。挟持固定部158a、158b、158c、158dには、ナット159a、159b、159c、159dが取り付けられている。またスプラッシュガード106は、複数(ここでは4つ)の第1固定部160a、160b、160c、160dを有する。第1固定部160a、160b、160c、160dには、クリップ161a、161b、161c、161dが取り付けられている。さらにスプラッシュガード106は、複数(ここでは3つ)の第2固定部162a、162b、162cを有する。第2固定部162a、162b、162cには、図6(b)に示すクリップ163a、163b、163cが挿入される。
【0039】
また本体130の下端164には、図6(b)および図7(c)に示すように、下方に開放された開口部166と、フランジ168と、フランジ168に設けられた孔部170a、170bとが形成されている。フランジ168は、開口部166の開口端172(図7(c)参照)から車内側に張り出している。また取付ブラケット132の下端142に形成された突起部156a、156bは、本体130の下端164に形成された孔部170a、170bに係合している。このため、取付ブラケット132の剛性を高めることができる。さらに、スプラッシュガード106の本体130に取付ブラケット132を取り付けるときに位置決めを行うことができるため、組付作業を容易に行うことができる。
【0040】
図8は、図1の車両用スプラッシュガード構造100のA-A断面図である。車両用スプラッシュガード構造100では、図7(a)および図8に示すサイドボディ112の下端114に固定されたサイドスプラッシュ108の凸部120が、取付ブラケット132の下端142に形成された凹部144に嵌まって重なっている。このため、ドア閉時にドアパネル104とサイドボディ112の間さらにはドアパネル104とスプラッシュガード106の間に異物が侵入することを防止することができる。
【0041】
またスプラッシュガード106の挟持固定部158dは、本体130の外側部134に設けられていて(図6(a)参照)、取付ブラケット132の一端部138の一端側固定部152dに重ねられて一端部138とともにホイールアーチ110を挟持する。またスプラッシュガード106では、一端側固定部152dのボルト155dがホイールアーチ110を貫通し、挟持固定部158dのナット159dと螺合することで、挟持固定部158dが取付ブラケット132の一端部138とともに共締めされる。
【0042】
図9は、図1の車両用スプラッシュガード構造100の一部を透過して示す図である。図10は、図9の車両用スプラッシュガード構造100の一部およびB-B断面を示す図である。図11は、図10の車両用スプラッシュガード構造100のC-C断面およびD-D断面を示す図である。なお図10(b)、図11(a)および図11(b)では、図8と異なり、ドアパネル104およびサイドボディ112を模式的に示している。
【0043】
図10(a)は、車両用スプラッシュガード構造100の上部を示している。このため図10(a)に示すスプラッシュガード106には、本体130に設けられた第1固定部160a、挟持固定部158aおよび第2固定部162a、さらに取付ブラケット132のシール固定部148が位置している。
【0044】
第1固定部160aは、図10(b)のB-B断面に示すように、本体130の外側部134に設けられ、ドアパネル104のアウタパネル122をクリップ161aが貫通することで、アウタパネル122に固定されている。さらに第1固定部160aは、図11(a)のC-C断面に示すように、挟持固定部158aよりもホイールアーチ110の縁174から離れている位置に設定されている。
【0045】
挟持固定部158aは、図11(a)に示すように、本体130の外側部134に設けられていて、取付ブラケット132の一端部138の一端側固定部152aに重ねられて一端部138とともにホイールアーチ110を挟持する。またスプラッシュガード106では、一端側固定部152aのボルト155aがホイールアーチ110を貫通し、挟持固定部158aのナット159aと螺合することで、挟持固定部158aが取付ブラケット132の一端部138とともに共締めされる。さらに取付ブラケット132の一端部138の角部150には、シール固定部148によってダストシール146が固定されている。
【0046】
取付ブラケット132に固定されたダストシール146は、図10(b)、図11(a)および図11(b)に示すように、サイドボディ112に設けられたプロテクタ151に当接している。なおプロテクタ151は、例えばクリップおよび接着剤(両面テープ)によってサイドボディ112に固定されている。このようにしてダストシール146は、ドアパネル104とサイドボディ112との間への異物の侵入を防止できる。
【0047】
なお他の第1固定部160b、160c、160dは、本体130の外側部134に設けられ、挟持固定部158b、158c、158dよりもホイールアーチ110の縁174から離れていてドアパネル104のアウタパネル122に固定されている。
【0048】
さらに他の挟持固定部158b、158cは、本体130の外側部134に設けられていて、取付ブラケット132の一端部138の一端側固定部152b、152cに重ねられて一端部138とともにホイールアーチ110を挟持する。またスプラッシュガード106では、一端側固定部152b、152cのボルト155b、155cがホイールアーチ110を貫通し、挟持固定部158b、158cのナット159b、159cと螺合することで、挟持固定部158b、158cが取付ブラケット132の一端部138とともに共締めされる。
【0049】
第2固定部162aは、図11(b)のD-D断面に示すように、本体130の延長部136に設けられ、取付ブラケット132の他端部140の他端側固定部154aに重ねられ、さらに他端部140の他端側固定部154aをクリップ163aが貫通することで、他端部140に固定されている。なお他の第2固定部162b、162cは、本体130の延長部136に設けられ、取付ブラケット132の他端部140の他端側固定部154b、154cに重ねられ、さらに他端部140の他端側固定部154b、154cをクリップ163b、163cが貫通することで、他端部140に固定されている。
【0050】
このようにスプラッシュガード106は、挟持固定部158a、158b、158c、158dによって取付ブラケット132の一端部138と本体130とがボルト155a、155b、155c、155dを用いて共締めされ、ドアパネル104で形成されたホイールアーチ110を挟持して固定される。
【0051】
このため車両用スプラッシュガード構造100によれば、前工程でドアパネル104に接合される専用ブラケットが不要となるため、工数を減らすことができる。また、専用ブラケットが接合されたドアパネルを保管するスペースを確保する必要がないため、生産ラインでの保管スペースを削減でき、さらに作業中の危害性も低減できる。
【0052】
また挟持固定部158a、158b、158c、158dによってホイールアーチ110を挟持して共締めする構造であるため、スプラッシュガード106の本体130および取付ブラケット132の、ドアパネル104のホイールアーチ110に対する位置決めを容易に行うことができる。
【0053】
またスプラッシュガード106では、ドアパネル104のホイールアーチ110に対する本体130および取付ブラケット132の位置を容易に修正できるため、組付け精度を向上させることができる。さらに車両用スプラッシュガード構造100では、スプラッシュガード106の組付け強度を、単にクリップで組付ける場合に比べて強固にできるため、使用時の接触などでスプラッシュガード106が脱落することを防止できる。
【0054】
さらにスプラッシュガード106の本体130は、挟持固定部158a、158b、158c、158dに加え、第1固定部160a、160b、160c、160dによってドアパネル104のアウタパネル122に固定され、第2固定部162a、162b、162cによって取付ブラケット132の他端部140に固定されている。また取付ブラケット132は、一端部138の一端側固定部152a、152b、152c、152dによってドアパネル104のインナパネル124に固定され、他端部140の他端側固定部154a、154b、154cによって本体130の延長部136に固定されている。
【0055】
これにより車両用スプラッシュガード構造100では、ドアパネル104のホイールアーチ110に対するスプラッシュガード106の位置決めを確実に行うことができるため、外観精度を向上させることができる。またスプラッシュガード106の組付け強度をさらに強固にできるため、使用時の接触などでスプラッシュガード106が脱落することを防止できる。
【0056】
また車両用スプラッシュガード構造100では、取付ブラケット132にダストシール146を固定しているため、ドアパネル104にダストシール146を直接取り付ける作業が不要となる。さらにドアパネル104にダストシール146を直接取り付けるよりも、ダストシール146の位置合わせが容易になるため、組付け精度を向上させることができる。
【0057】
ここでスプラッシュガード106をドアパネル104に組み付ける組付作業の手順について説明する。まず図5(a)および図5(b)に示すように取付ブラケット132にシール固定部148によってダストシール146を固定した組立体を用意する。つぎに、図4(a)に示すドアパネル104のアウタパネル122に設けられた孔部176a、176b、176c、176dに、スプラッシュガード106の本体130に設けられた第1固定部160a、160b、160c、160dのクリップ161a、161b、161c、161dをそれぞれ挿入してクリップ固定を行う。
【0058】
続いて、取付ブラケット132の一端部138に設けられた一端側固定部152a、152b、152c、152dのボルト155a、155b、155c、155dを、図4(a)および図4(b)に示すドアパネル104のホイールアーチ110の孔部178a、178b、178c、178dに貫通させて、さらに本体130の挟持固定部158a、158b、158c、158dのナット159a、159b、159c、159dと螺合させる。このようにして、取付ブラケット132にダストシール146を固定した組立体を、本体130およびホイールアーチ110に組み付ける。
【0059】
そして、本体130の延長部136に設けられた第2固定部162a、162b、162cを、取付ブラケット132の他端部140の他端側固定部154a、154b、154cに重ねて、さらに第2固定部162a、162b、162cのクリップ163a、163b、163cを、他端側固定部154a、154b、154cにそれぞれ挿入してクリップ固定を行う。このような手順によって、スプラッシュガード106をドアパネル104に組み付ける組付作業を行うことができる。
【0060】
このように車両用スプラッシュガード構造100では、取付ブラケット132にダストシール146を固定した組立体を用意し、本体130をドアパネル104に組み付ける途中で、組立体をドアパネル104に組み付けることが可能となる。このため、組付作業の自由度が増して作業性を改善することができる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車両用スプラッシュガード構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
100…車両用スプラッシュガード構造、102…車両、104…ドアパネル、106…スプラッシュガード、108…サイドスプラッシュ、110…ホイールアーチ、112…サイドボディ、114…サイドボディの下端、116…スプラッシュガードの下端、118…サイドスプラッシュの後端、120…サイドスプラッシュの凸部、122…アウタパネル、124…インナパネル、126…ドアパネルの下端、128…ドアパネルの切欠き、130…スプラッシュガードの本体、132…取付ブラケット、134…本体の外側部、136…本体の延長部、138…取付ブラケットの一端部、140…取付ブラケットの他端部、142…取付ブラケットの下端、144…取付ブラケットの凹部、146…ダストシール、148…シール固定部、150…一端部の角部、151…プロテクタ、152a、152b、152c、152d…一端側固定部、154a、154b、154c…他端側固定部、155a、155b、155c、155d…ボルト、156a、156b…突起、158a、158b、158c、158d…挟持固定部、159a、159b、159c、159d…ナット、160a、160b、160c、160d…第1固定部、161a、161b、161c、161d、163a、163b、163c…クリップ、162a、162b、162c…第2固定部、164…本体の下端、166…開口部、168…フランジ、170a、170b…フランジの孔部、172…開口部の開口端、174…ホイールアーチの縁、176a、176b、176c、176d…アウタパネルの孔部、178a、178b、178c、178d…ホイールアーチの孔部
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