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  • 特開-オイルタンクのバッフルセット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098176
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】オイルタンクのバッフルセット
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/52 20060101AFI20240716BHJP
   B65D 90/02 20190101ALI20240716BHJP
   B65D 25/02 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B65D90/52
B65D90/02 S
B65D25/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001459
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】596103400
【氏名又は名称】株式会社サンダイヤ
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸四郎
(72)【発明者】
【氏名】手塚 裕
【テーマコード(参考)】
3E062
3E170
【Fターム(参考)】
3E062AA06
3E062AB03
3E062AC03
3E062BB05
3E062CA02
3E062CA12
3E062EA03
3E062EB02
3E062EC01
3E062ED01
3E170AA03
3E170AB03
3E170BA06
3E170DA01
3E170GB02
3E170GB04
3E170GB13
3E170QA09
(57)【要約】
【課題】地上設置型のオイルタンクの胴部に与える加熱または変形による悪影響を少なくして、地震による横揺れでオイルの急激な偏りを低減するためのバッフルをオイルタンク内に設置したオイルタンクのバッフルセットを提供する。
【解決手段】連通部を有する2枚以上のバッフルと、前記バッフルを一定の間隔で保持する1本以上の補強フレームとを備えるバッフルセットであって、前記バッフルがオイルタンクの内壁に溶接されることにより、前記バッフルセットが前記オイルタンク内に設置されることを特徴とする
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通部を有する2枚以上のバッフルと、前記バッフルを一定の間隔で保持する1本以上の補強フレームとを備えるバッフルセットであって、前記バッフルがオイルタンクの内壁に溶接されることにより、前記バッフルセットが前記オイルタンク内に設置されることを特徴とするオイルタンクのバッフルセット。
【請求項2】
前記バッフルの前記連通部は、前記バッフルの下部および/または上部を切り欠くことで構成されることを特徴とする請求項1に記載のオイルタンクのバッフルセット。
【請求項3】
前記バッフルは、開口部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のオイルタンクのバッフルセット。
【請求項4】
前記バッフルの形状は、下部に連通部を有する半円形であること特徴とする請求項1または2に記載のオイルタンクのバッフルセット。
【請求項5】
前記バッフルの形状は、上下部に連通部を有する円形であること特徴とする請求項1または2に記載のオイルタンクのバッフルセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上設置型のオイルタンクに用いるバッフルセットに関し、特に、オイルタンクの耐震性能を向上させるためのオイルタンクのバッフルセットに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は、地震が多く発生するため、耐震設計が適用されている地上設置型のオイルタンクがある。例えば、図5に示すオイルタンクは、耐震設計震度0.6に対応するように脚部が設計されている。さらに耐震強化された図6に示すオイルタンクでは、耐震設計震度1.0に対応するように脚部が設計されている。図6では、耐震強化のために、脚部にブレースが追加されている。このように、耐震性を強化する対策として、従来、脚部を強化する対策がとられている。
【0003】
耐震性を強化する他の対策として、特許文献1には、地震の揺れを緩和して燃料タンクの破損及び燃料漏れを防止するために、キャビネット1内の左右位置に所定高さの取付台1cを設け、その左右の取付台1cの間に燃料タンク4を収容した防油堤5を配置し、その防油堤5の左右の一部を前記取付台1cに防振ゴム6を介して設置して防油堤5の底面を浮いた状態にし、防油堤5の揺動の変位を所定幅に規制する規制具7を設けている。これによって、地震が発生しても、その揺れが防振ゴム6で吸収・減衰・緩和されて燃料タンク4に小さく伝わり、燃料タンク4の破損や燃料漏れが起き難くなる考案が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3181450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、出願人は、地上設置型のオイルタンクにおいて、もっとも重量があるのは、オイルタンク内に収容されている灯油、軽油等のオイルであり、地震の際の横揺れによるオイルの急激な偏りを低減させることができれば、瞬間的な偏荷重によるタンク本体および脚部の破損を防止できると考えた。
【0006】
現在まで、地上設置型のオイルタンクの地震対策としては、上記のように脚部の耐震強化、地震の揺れを防振ゴムで吸収・減衰・緩和する対策が行われているが、オイルタンク内に何らかの装置を設置して、地震による横揺れによるオイルの急激な偏りを低減させる対策は、行われていなかった。
【0007】
一方、自動車の燃料タンクにおいては、車両の急発進、走行中の急旋回、急停止などによる燃料の急激な流動による流動音を低減させるために、バッフルを燃料タンク内に設置することが行われている。
【0008】
バッフルを自動車の燃料タンク内に設置する方法として、バッフルを燃料タンクの内壁にスポット溶接、隅肉溶接等により接合する方法、L字形のストッパーの一片を燃料タンクの内壁にスポット溶接等により接合させ、他の一片をバッフルに当接させることでバッフルを固定する方法、燃料タンクの胴部とバッフルとを同一形状に塑性変形させ、その部分を互いにかみ合わせることでバッフルを固定するカシメ加工による方法等が行われている。
さらに、上記を複数組み合わせて、例えば、カシメ加工とL字形のストッパーとによりバッフルを燃料タンク内に固定することが行われている。
【0009】
しかし、上記のバッフルを燃料タンクの内壁に溶接により接合する方法およびストッパーを燃料タンクの内壁に溶接により接合する方法は、オイルタンクの胴部を局部的に高温加熱するため、オイルタンクの胴部は熱影響により溶接ひずみが発生し、場合によってはオイルタンクの胴部が変形する恐れがある。また、カシメ加工によりオイルタンクの胴部とバッフルとに塑性変形を行うことにより、変形部が硬化し、場合によっては割れが発生する恐れがある。
【0010】
そこで、本発明は、地上設置型のオイルタンクの胴部に与える加熱または変形による悪影響を少なくして、地震による横揺れでオイルの急激な偏りを低減するためのバッフルをオイルタンク内に設置したオイルタンクのバッフルセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、連通部を有する2枚以上のバッフルと、前記バッフルを一定の間隔で保持する1本以上の補強フレームとを備えるバッフルセットであって、前記バッフルがオイルタンクの胴部の内壁に溶接されることにより、前記バッフルセットが前記オイルタンク内に設置されることを特徴としている。
【0012】
地震による横揺れでオイルの急激な偏りを低減させるために、オイルタンク内にバッフルセットが設置される。本発明によるバッフルセットは、バッフルがオイルタンクの内壁に溶接されるが、補強フレームが前後のバッフルを強固に保持することにより、地震の横揺れによるオイルの急激な流動による力が繰り返しバッフルに作用しても、バッフルの溶接部に疲労による亀裂が発生することはない。補強フレームを採用する利点として、補強フレームは、バッフルのみに接触しており、オイルタンクの内壁とは接触していない。すなわち、上記のL字形のストッパーおよびカシメ加工のようにオイルタンクの胴部を加熱および塑性変形する必要がないので、オイルタンクの胴部に悪影響を与えることはない。さらに、必要に応じて補強フレームの本数を増やすことで、どのような激しい条件下でも確実にバッフルを保持することができる。
【0013】
前記バッフルの連通部は、前記バッフルの下部および/または上部を切り欠くことで構成されることを特徴としている。
【0014】
バッフルの下部の連通部は、地震の横揺れによるオイルの急激な流動時に連通部を通してオイルを流通させることにより、バッフルへの過度な衝撃を和らげることができる。バッフルの上部の連通部は、地震の横揺れによるオイルの急激な流動により空気が急激に圧縮されることによるバッフルへの過度な衝撃を、連通部を通して空気を流通させることにより、和らげることができる。
【0015】
前記バッフルは、開口部を有することを特徴としている。
【0016】
バッフルの開口部は、地震の横揺れによるオイルの急激な流動時に開口部を通してオイルを流通させることにより、バッフルへの過度な衝撃を和らげることができる。
【0017】
前記バッフルの形状は、下部に連通部を有する半円形であることを特徴としている。
【0018】
バッフルの面積を小さくすることにより、地震によるオイルの急激な偏りによるバッフルへの過度な衝撃が少なくなるように考慮されている。この場合は、脚部の耐震強化の対策と共に行われてもよい。
【0019】
前記バッフルの形状は、上下部に連通部を有する円形であることを特徴としている。
【0020】
バッフルの面積を大きくすることにより、地震によるオイルの急激な偏りを極力バッフルで受けるように考慮されている。これに伴い、補強フレームによるバッフルの保持が、強固になるように補強フレームの本数を調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のバッフルセットの斜視図である。
図2図1のバッフルセットを組み込んだオイルタンクの胴部の部分断面斜視図である。
図3図1のバッフルセットを組み込んだオイルタンクの断面図である。
図4】本発明のバッフルセットの別の実施形態の斜視図である。
図5】既存の耐震構造の脚部を有するオイルタンクの図である。
図6】既存の別の耐震構造の脚部を有するオイルタンクの図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、従来の地上設置型のオイルタンクの製造工程を簡単に説明する。図5図6に示すオイルタンクの製造工程は、次の通りである。
工程1:オイルタンク100の胴部110の製作
工程2:オイルタンク100のヘッド部120の製作
工程3:脚部200の製作
工程4:胴部110にヘッド部120を溶接により取付て、オイルタンク100の製作
工程5:オイルタンク100の溶接部の検査・処理
工程6:オイルタンク100に脚部200の取付
工程7:オイルタンク100に通気管121、油量計111等の付属品の取付
工程8:オイルタンク100の洗浄、寸法検査、機密耐圧検査
【0023】
本発明は、図1、2に示すようにバッフルセット150がオイルタンク100の胴部110の内部に設置されるので、上記工程4の前に、下記工程が追加になる。
工程a:バッフル160の製作
工程b:バッフル160と補強フレーム170とを組み立てて、バッフルセット150の製作
工程c:バッフルセット150を胴部110内に取付
【0024】
以下、本発明の実施形態について図1~4を参照して説明する。なお、各図において、同様の部分には、同一符号を付している。
【0025】
図1は、本発明のバッフルセット150の斜視図である。本発明のバッフルセット150は、バッフル160の下部に連通部131を有するバッフル160と補強フレーム170とから構成されている。
【0026】
バッフル160は、板材から製作される。図1では、バッフル160は、下部に連通部131を有する半円形で、補強フレーム170を通すためのL型の補強フレーム用開口171が2か所、円形の開口部161が5か所設けられている。バッフル160の材質は、オイルタンク100の材質に合わせる。例えば、オイルタンク100がSUS304の場合は、バッフル160もSUS304とする。バッフル160の枚数は、2枚以上であれば、適宜選択することができる。図1では、2枚のバッフルが使用されている。
【0027】
補強フレーム170は、図1では、アングル材を使用している。補強フレーム170の種類は、アングル材の代わりに棒材、パイプ材、フラットバー材、チャンネル材等を使用することができる。材質は、オイルタンク100の材質に合わせる。例えば、オイルタンク100がSUS304の場合は、補強フレーム170もSUS304とする。補強フレーム170の本数は、1本以上であれば、適宜選択することができる。図1では、2本のアングル材が使用されている。
【0028】
補強フレーム170は、バッフル160に突合せ溶接によって接合される。具体的には、バッフル160のL型の補強フレーム用開口171に補強フレーム170のL型の端部を通し、バッフル160の外面と補強フレーム170のL型の端面とが同一レベルになるように調整し、バッフル160の外側から突合せ溶接によってバッフル160と補強フレーム170とを接合させる。突合せ溶接において、開先を取る範囲、すなわち、完全溶け込みとする範囲は、適宜選択することができる。補強フレーム170のアングル材の一方の端部の突合せ溶接後に、他方の端部と他方のバッフル160との突合せ溶接を行う。2本目の補強フレーム170についても1本目の補強フレーム170と同様に、補強フレーム170を2枚のバッフル160に突合せ溶接によって接合させる。
【0029】
開口部161は、円形の開口であって5か所設けている。開口の大きさおよび数は、適宜選択することができる。また、開口部161の形状も、円形以外に適宜選択することができる。例えば、縦方向に長い長円形の開口であってもよい。
【0030】
図2は、図1のバッフルセット150をオイルタンク100の胴部110に組み込んだ状態を示している。バッフルセット150は、バッフルセット150の各バッフル160を胴部110の内壁に胴部110の内側から隅肉溶接を行うことにより胴部110に対して固定される。図2では、一方のバッフル160において胴部110の内壁に対して片側で3か所、両側で計6か所の隅肉溶接を行っている。他方のバッフル160も同様に計6か所の隅肉溶接を行っている。隅肉溶接の施工範囲は、適宜選択することができる。例えば、バッフル160と胴部110との接触部の全てに対して隅肉溶接を行ってもよい。
【0031】
さらに、胴部110に対する溶接による熱影響を最小にするために、バッフル160と胴部110との隅肉溶接を、例えば、胴部110の内壁に対して片側で1か所にして、両側で計2か所の隅肉溶接で済ませてもよい。この場合は、耐震強度を保持するために、より強度のある補強フレームに変更してもよい。例えば、アングル材からチャンネル材に変更してもよく、または補強フレームの使用本数を増やしてもよい。
【0032】
図3は、オイルタンク100にバッフルセット150を組み込んだ後の断面図を示している。図3(a)は、側面視における断面図であり、図3(b)は、正面視における断面図である。図3では、本来設置されている通気管121、油量計111等の付属品は、省略されている。
【0033】
図3では、バッフル160は、オイルタンク100内に2枚設置され、オイルタンク100内の下半分が3室に区画されている。バッフルの枚数は適宜選択することができる。例えば、バッフルを3枚使用すると、オイルタンク100内の下半分が4室に区画される。
【0034】
図4は、本発明のバッフルセット150の別の実施形態を示している。バッフル160は、上下に連通部131を有する円形で、補強フレーム170を通すためのL型の補強フレーム用開口171が4か所、円形の開口部161が10か所設けられている。補強フレーム170は、4本のアングル材170が使用されている。図4のバッフルセット150をオイルタンク100内に設置すると、オイルタンク100内が3室に区画される。もちろん、バッフルの枚数および補強フレームの種類または本数は、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0035】
100 オイルタンク
110 胴部
111 油量計
112 給油口
113 戻り口
114 水抜口
120 ヘッド部
122 送油口
121 通気管
131 連通部
150 バッフルセット
160 バッフル
161 開口部
170 補強フレーム
171 補強フレーム用開口
200 脚部
210 支柱
220 横梁
230 ブレース
240 ブラケット
250 ベースプレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6