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  • 特開-着脱治具 図1
  • 特開-着脱治具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098178
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】着脱治具
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001461
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】仲條 真布
(72)【発明者】
【氏名】小澤 芽衣
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405CA53
5G405FA08
(57)【要約】
【課題】支持棒を用いて感知器の着脱を行う作業において、作業負荷の軽減および作業時間の短縮化を図る。
【解決手段】作業者が一端を持って操作する支持棒と、作業者が持つ一端とは他方の端部に取り付けられ、感知器本体を保持可能な爪部を有する治具本体部とを備え、設置面に取り付けられた感知器ベースに対して感知器本体を着脱する作業時に用いられる着脱治具であって、治具本体部よりも作業者側に位置するように支持棒に取り付けられており、空気より比重の小さい気体が収容されたバルーンをさらに備えるものであり、支持棒を操作する作業者にとって、実質的に支持棒の軽量化を図ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が一端を持って操作する支持棒と、
前記作業者が持つ前記一端とは他方の端部に取り付けられ、感知器本体を保持可能な爪部を有する治具本体部と
を備え、設置面に取り付けられた感知器ベースに対して前記感知器本体を着脱する作業時に用いられる着脱治具であって、
前記治具本体部よりも前記作業者側に位置するように前記支持棒に取り付けられており、空気より比重の小さい気体が収容されたバルーンをさらに備える着脱治具。
【請求項2】
前記気体が収容され、前記バルーンと配管を介して接続されるガスボンベを有し、
前記バルーンは、前記気体を前記ガスボンベより吸気および外部へ排気可能な弁が設けられる
請求項1に記載の着脱治具。
【請求項3】
前記ガスボンベより吸気および外部へ排気可能な前記弁は、
前記配管の経路上に設けられ、開状態となることで前記ガスボンベに収容された前記気体を前記バルーンに供給する吸気用電磁弁と、
開状態となることで前記バルーンに収容された前記気体を外部に排気する排気用電磁弁であり、
前記支持棒の一端側に取り付けられたコントローラと
をさらに備え、
前記コントローラは、作業者の操作入力に基づいて、前記吸気用電磁弁および前記排気用電磁弁の開閉制御を可能とする
請求項2に記載の着脱治具。
【請求項4】
前記バルーンは、支持棒を所持する作業者が前記バルーンを介して前記治具本体部を視認可能とする透明あるいは半透明の材質で形成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の着脱治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天井などの設置面に設置される火災感知器(以降、感知器と記載)の着脱作業時において、設置面に直接取り付けられる感知器ベースに対して感知器本体を着脱するために用いられる着脱治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、核燃料等の放射性物質を取り扱う施設でセル内に設置されている煙感知器を遠隔操作で交換するための治具がある(例えば、特許文献1参照)。このような治具を遠隔操作することで、作業者の被爆のおそれを低減することができる。
【0003】
しかしながら、放射線を取り扱わない通常の施設等に設置された感知器の保守点検を行う際には、作業者による手動作業によって、感知器ベースから感知器本体を取り外した上での点検作業が行われているのが一般的である。
【0004】
すなわち、特許文献1に開示されたような遠隔操作を可能とする治具は、価格、大きさの観点から通常の施設等での点検作業にとっては不向きであり、作業者の手動操作により点検作業が行われている。
【0005】
天井等の高所に設置される感知器から感知器本体を手動で着脱するには、一般的に、支持棒の先端に着脱器を取り付けた着脱治具が使用される。着脱器は、感知器を覆うコップ型形状を有しており、作業者は、設置面に取り付けられた感知器ベースから感知器本体を取り外す際、支持棒の他端を持ち、着脱器の先端部にある爪部を、感知器本体に設けられているスリットと嵌合させてホールド状態とした後に、支持棒を捻じるように回転させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3510191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
作業者は、感知器本体を着脱器でホールドする際には、着脱器の先端部にある爪部と、感知器本体に設けられているスリットとの位置合わせを行う必要がある。
【0008】
従って、感知器が高所、例えば作業者から5m~10m離れた高さの天井面等に設置される場合、支持棒が長尺になり、その分、支持棒と感知器の位置合せ作業が難しくなる。さらに、着脱器が一端に取り付けられている支持棒の他端を持って操作する作業では、重量が重くなることで、作業者の作業負荷が増加するとともに、作業時間の増加も招いていた。
【0009】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、支持棒を用いて感知器本体の着脱を行う作業において、作業負荷の軽減および作業時間の短縮化を図ることのできる着脱治具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る着脱治具は、作業者が一端を持って操作する支持棒と、作業者が持つ一端とは他方の端部に取り付けられ、感知器本体を保持可能な爪部を有する治具本体部とを備え、設置面に取り付けられた感知器ベースに対して感知器本体を着脱する作業時に用いられる着脱治具であって、治具本体部よりも作業者側に位置するように支持棒に取り付けられており、空気より比重の小さい気体が収容されたバルーンをさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、支持棒を用いて感知器本体の着脱を行う作業において、作業負荷の軽減および作業時間の短縮化を図ることのできる着脱治具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1に係る着脱治具の全体構成を示した図である。
図2】本開示の実施の形態2に係る着脱治具の全体構成を示した図である。
図3】本開示の実施の形態2に係るコントローラの具体的な構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の着脱治具の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る着脱治具は、天井や壁などの設置面に取り付けられた感知器ベースに対して感知器本体を着脱する作業時に用いられるものであって、空気より比重の小さい気体が収容されたバルーンを支持棒に取り付けることで、支持棒を所持する作業者にとって、実質的な重量を軽減させることができる構成を備えたことを技術的特徴とするものである。この結果、作業負荷の軽減および作業時間の短縮化による着脱作業効率の改善を図ることができる。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る着脱治具の全体構成を示した図である。図1に示した着脱治具は、支持棒10、治具本体部20、およびバルーン30を備えて構成されている。支持棒10の一端に取り付けられた治具本体部20は、爪部20aを有して構成されている。
【0015】
天井に取り付けられた火災感知器1(以降、単に感知器1と記載)は、設置面に直接取り付けられた感知器ベースに感知器本体1aが取り付けられて構成されている。そのような感知器1から感知器本体1aを取り外す際に、作業者は、支持棒10の一端、具体的には、着脱治具使用時に設置面に近い側の端部に取り付けられた治具本体部20に設けられた爪部21aを、感知器本体1aに設けられているスリットと嵌合させて感知器本体1aを保持可能なホールド状態とした後に、支持棒10を捻じるように回転させることとなる。
【0016】
感知器1の設置面である天井が高く、支持棒の長さが5~10mとなる場合には、治具本体部20が一端に取り付けられている支持棒10の他方の端部である他端を持って操作する作業者にとっては、支持棒10の重量が重くなり、作業負荷および作業時間の増加を招く。
【0017】
そこで、本実施の形態1に係る着脱治具は、作業者にとって支持棒10の実質的な軽量化を図る目的で、支持棒10にバルーン30が設けられている。図1の例では、バルーン30は、治具本体部20が取り付けられている支持棒10の一端側において、治具本体部20の直下、つまり治具本体部20よりも作業者側の位置で支持棒10に取り付けられている。
【0018】
バルーン30の内部には、空気より比重の小さい気体が収容されている。空気より比重の小さい気体としては、例えばヘリウムガスが挙げられる。バルーン30は、伸縮可能な素材で形成されており、収容する気体の量によってバルーン30を所望の大きさとすることができる。
【0019】
本実施の形態1におけるバルーン30としては、支持棒10の重量に対して作業員の作業負荷が軽減できる浮力を有する量の気体を収容した大きさとすることが望ましい。このようなバルーン30が支持棒10の一端側に取り付けられることで、設置面と離れた床面から支持棒10の他端側を所持して着脱操作を行う作業者にとって、実質的な重量の軽量化を図ることができる。
【0020】
なお、支持棒10にバルーン30が装着されることで作業者にとって治具本体部20や感知器1の視認性が悪化することを防止するために、バルーン30の材質を透明あるいは半透明とすることが考えられる。透明あるいは半透明の材質でバルーン30を形成することで、作業者は、バルーン30を通して治具本体部20や感知器1が視認可能となる。
【0021】
また、図1では、支持棒10の外周にバルーン30の内周が密着している構成を例示しているが、本開示に係るバルーン30は、このような構成に限定されるものではない。作業者にとって治具本体部20の視認性を確保するために、支持棒10の外周とバルーン30の内周との間に空間を設け、支持棒10とバルーン30を棒などで接続することで、ドーナツ状のバルーン30を装着できる構成とすることも考えられる。
【0022】
このような構成を採用することで、バルーン30の材質が透明あるいは半透明でないとしても、作業者は、支持棒10の外周とバルーン30の内周との間の空間を利用して治具本体部20を直接視認することが可能となる。
【0023】
以上のように、実施の形態1によれば、空気より比重の小さい気体が収容されたバルーンを支持棒に装着した構成を備えている。この結果、支持棒を操作する作業者にとって、実質的に支持棒の軽量化を図ることができ、支持棒を用いて感知器本体の着脱を行う作業において、作業負荷の軽減および作業時間の短縮化を図ることのできる着脱治具を実現できる。
【0024】
実施の形態2.
本実施の形態2では、バルーン30内に気体を収容する操作、およびバルーン30内の気体を吸気および排気することができる構成をさらに備えた着脱治具について説明する。なお、以下では、空気より比重の小さい気体としてヘリウムを用いる場合を具体例として説明する。
【0025】
図2は、本開示の実施の形態2に係る着脱治具の全体構成を示した図である。図2に示した着脱治具は、支持棒10、治具本体部20、バルーン30を備えるとともに、コントローラ40、ガスボンベ50、配管60、吸気可能な弁として吸気用電磁弁71、および外部へ排気可能な弁として排気用電磁弁72をさらに備えて構成されている。そこで、本実施の形態2でさらに追加された構成を中心に、以下に詳細に説明する。
【0026】
コントローラ40は、支持棒10の他端側に取り付けられており、支持棒10を所持した状態における作業者の操作入力に基づいて、後述する吸気用電磁弁71および排気用電磁弁72の開閉制御を可能とする。
【0027】
ガスボンベ50は、一例としてヘリウムガスが収容されている。ガスボンベ50は、バルーン30と配管60を介して接続されている。
【0028】
ガスボンベ50から吸気可能な弁として設けられる、吸気用電磁弁71は、配管60の経路上に設けられ、開状態となることでガスボンベ50に収容されたヘリウムガスをバルーン30に供給する働きをする。また、外部へ排気可能な弁として設けられる、排気用電磁弁72は、開状態となることでバルーン30に収容されたヘリウムガスを外部に排気する働きをする。どちらの弁も本実施の形態2では電磁弁として説明するが、これに限られない。
【0029】
コントローラ40と吸気用電磁弁71および排気用電磁弁72の接続方法については、詳細な電気配線等は図示を省略しているが、支持棒10を介して電気配線がコントローラ40と吸気用電磁弁71および排気用電磁弁72を直接接続するように構成されてもよいし、コントローラ40と、吸気用電磁弁71および排気用電磁弁72が無線で接続され、電磁弁の開閉をリモート制御可能とするように構成されてもよい。
【0030】
図3は、本開示の実施の形態2に係るコントローラ40の具体的な構成例を示した図である。図3に例示したように、コントローラ40の表面には、吸気用電磁弁71の開閉制御を行うための操作ボタン41、42と、排気用電磁弁72の開閉制御を行うための操作ボタン43、44が設けられている。コントローラ40と吸気用電磁弁71および排気用電磁弁72が無線または有線で接続されている。
【0031】
操作ボタン41は、吸気用電磁弁71を開状態とするための操作入力を受け付ける操作ボタンである。操作ボタン41が押されることに伴ってコントローラ40から吸気用電磁弁71に出力される開指令信号によって、吸気用電磁弁71が開状態に切り替わることで、ガスボンベ50からバルーン30に対してヘリウムガスが供給される。一例として、操作ボタン41の表面には「ON 供給」という表示が設けられている。
【0032】
操作ボタン42は、吸気用電磁弁71を閉状態とするための操作入力を受け付ける操作ボタンである。操作ボタン42が押されることに伴ってコントローラ40から吸気用電磁弁71に出力される閉指令信号によって、吸気用電磁弁71が閉状態に切り替わることで、ガスボンベ50からバルーン30に対するヘリウムガスの供給が停止される。一例として、操作ボタン42の表面には「OFF 停止」という表示が設けられている。
【0033】
なお、操作ボタン42を設けず、操作ボタン41のみを設けるものとして、操作ボタン41が押されている状態の間、吸気用電磁弁71に出力される開信号を出し続け、操作ボタン41の押状態が終了すると閉指令信号を出す構成としてもよい。
【0034】
操作ボタン43は、排気用電磁弁72を開状態とするための操作入力を受け付ける操作ボタンである。操作ボタン43が押されることに伴ってコントローラ40から排気用電磁弁72に出力される開指令信号によって、排気用電磁弁72が開状態に切り替わることで、バルーン30内に収容されているヘリウムガスがバルーン30の外部に排気される。一例として、操作ボタン43の表面には「ON 排気」という表示が設けられている。
【0035】
操作ボタン44は、排気用電磁弁72を閉状態とするための操作入力を受け付ける操作ボタンである。操作ボタン44が押されることに伴ってコントローラ40から排気用電磁弁72に出力される閉指令信号によって、排気用電磁弁72が閉状態に切り替わることで、バルーン30内に収容されているヘリウムガスの排気が停止される。一例として、操作ボタン44の表面には「OFF 停止」という表示が設けられている。
【0036】
なお、前述の操作ボタン41および操作ボタン42の構成と同様、操作ボタン44を設けず、操作ボタン43のみを設けるものとしてもよい。
【0037】
このように、本実施の形態2に係る着脱治具は、先の実施の形態1に係る着脱治具の構成に加え、コントローラ40、ガスボンベ50、配管60、吸気用電磁弁71、および排気用電磁弁72をさらに備えて構成されている。この結果、作業者は、バルーン30へのヘリウムガスの供給、およびバルーン30からのヘリウムガスの排気を、支持棒10を所持しながらの作業中において、コントローラ40の操作によって容易に実現することができる。
【0038】
以上のように、実施の形態2によれば、作業者の手元側での簡単な操作により、支持棒の先端側に取り付けられたバルーン30の膨脹/収縮を、感知器の着脱作業時における所望のタイミングで容易に行うことができる。この結果、支持棒を用いて感知器本体の着脱を行う作業において、作業負荷の軽減および作業時間の短縮化を図ることができる着脱治具を実現できる。
【0039】
特に、作業者は、着脱作業を実施中に、バルーン30の内部の気体を吸気および排気して気体量を制御することで、大きさを自在に変えることができる。このため、感知器1が設置される天井等の付近の梁や柱等にバルーン30が干渉しないように、バルーン30の大きさを自在に制御することができる。作業者から感知器1や治具本体部20の視認性を確保するとともに、感知器1の設置位置が狭い場所でも着脱作業が可能であり、かつ操作性のよい支持棒を実現することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 火災感知器(感知器)、1a 感知器本体、10 支持棒、20 治具本体部、21a 爪部、30 バルーン、40 コントローラ、41~44 操作ボタン、50 ガスボンベ、60 配管、71 吸気用電磁弁、72 排気用電磁弁。
図1
図2
図3