(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098181
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】鉄筋籠及び鉄筋籠の建込方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/34 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001466
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 精亮
(72)【発明者】
【氏名】金城 雄也
(72)【発明者】
【氏名】渡部 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】平山 武志
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 大介
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA33
2D041DA03
2D041EB10
(57)【要約】
【課題】より簡易な施工を可能にする鉄筋籠及び鉄筋籠の建込方法を実現する。
【解決手段】モルタル充填式の機械継手を用いることなく、複数の固定鉄筋(4,5)で第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20を簡易に接続してなる鉄筋籠100であって、第1の鉄筋籠ユニット10の主筋1の上端部と第2の鉄筋籠ユニット20の主筋1の下端部が重ね継手の配置にされ、その主筋1の重ね継手部分を覆うように螺旋状部材3が配設されているので、鉄筋籠100が建て込まれた杭穴H内に打設された固化材料が螺旋状部材3に拘束されるようになって、固化材料と螺旋状部材3と第1の鉄筋籠ユニット10の主筋1と第2の鉄筋籠ユニット20の主筋1とが一体化する。主筋1の重ね継手部分を覆う螺旋状部材3が固化材料を拘束することで、その重ね継手部分の定着強度が向上し、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20の連結が強固なものになる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に適宜間隔をあけて配されて上下方向に延在している複数の主筋と、上下方向に適宜間隔をあけて前記複数の主筋に取り付けられている複数の帯筋とを有する鉄筋籠ユニットが、上下に複数連結されてなる鉄筋籠であって、
下側の配置となる第1の鉄筋籠ユニットにおける主筋の上端部と、上側の配置となる第2の鉄筋籠ユニットにおける主筋の下端部とが重ね継手の配置にされており、その重ね継手部分を覆う複数の螺旋状部材と、
下端部が前記第1の鉄筋籠ユニットにおける少なくとも1つの帯筋に繋がれ、上端部が前記第2の鉄筋籠ユニットにおける少なくとも1つの帯筋に繋がれており、前記第1の鉄筋籠ユニットと前記第2の鉄筋籠ユニットとを接続している複数の固定鉄筋と、
を備えていることを特徴とする鉄筋籠。
【請求項2】
前記複数の固定鉄筋のうちの少なくとも1つは、前記上端部と前記下端部とがそれぞれ折曲されたフック状に形成されており、そのフック状の前記上端部が前記第2の鉄筋籠ユニットの下方側の帯筋に掛けられ、フック状の前記下端部が前記第1の鉄筋籠ユニットの上方側の帯筋に掛けられていることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋籠。
【請求項3】
前記複数の固定鉄筋のうちの少なくとも1つは、前記上端部が前記第2の鉄筋籠ユニットの下方側の帯筋に固定され、前記下端部が前記第1の鉄筋籠ユニットの上方側の帯筋に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄筋籠。
【請求項4】
周方向に適宜間隔をあけて配されて上下方向に延在している複数の主筋と、上下方向に適宜間隔をあけて前記複数の主筋に取り付けられている複数の帯筋とを有する鉄筋籠ユニットを、上下に複数連結して杭穴に建て込む鉄筋籠の建込方法であって、
第1の鉄筋籠ユニットを前記杭穴に送り込み、その第1の鉄筋籠ユニットの上部が前記杭穴から突き出している状態で保持する工程と、
前記第1の鉄筋籠ユニットにおける主筋の上端部をその内側に挿通させるように螺旋状部材を取り付ける工程と、
第2の鉄筋籠ユニットにおける主筋の下端部を前記螺旋状部材に挿し入れ、前記第1の鉄筋籠ユニットの主筋の上端部と前記第2の鉄筋籠ユニットの主筋の下端部とを重ね継手の配置にする工程と、
上端部と下端部とにそれぞれフックが形成されている第1固定鉄筋の上側のフックを第2の鉄筋籠ユニットの下方側の帯筋に掛ける工程と、
前記第2の鉄筋籠ユニットを吊り上げ、前記第1固定鉄筋の下側のフックを第1の鉄筋籠ユニットの上方側の帯筋に掛けて、前記第1固定鉄筋を介して前記第1の鉄筋籠ユニットを吊り下げた状態にする工程と、
連結状態にある前記第1の鉄筋籠ユニットおよび前記第2の鉄筋籠ユニットの前記第2の鉄筋籠ユニットの上部が前記杭穴から突き出している状態になるまで送り込んで保持する工程と、
を有することを特徴とする鉄筋籠の建込方法。
【請求項5】
前記第2の鉄筋籠ユニットを吊り上げて、前記第1固定鉄筋を介して前記第1の鉄筋籠ユニットを吊り下げた状態にした後、第2固定鉄筋の上端部を前記第2の鉄筋籠ユニットの下方側の帯筋に固定し、その第2固定鉄筋の下端部を前記第1の鉄筋籠ユニットの上方側の帯筋に固定する工程を有することを特徴とする請求項4に記載の鉄筋籠の建込方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋籠及び鉄筋籠の建込方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ち杭の杭長が長くなる場合、複数に分割された鉄筋籠ユニットを連結しつつ、鉄筋籠を杭穴に建て込んでいく技術が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
具体的には、鉄筋籠ユニットは、複数の主筋と、それら複数の主筋を囲む複数の帯筋とを有しており、杭穴に仮設されている第1の鉄筋籠ユニットの主筋の上端部と、第1の鉄筋籠ユニットの上に連結される第2の鉄筋籠ユニットの主筋の下端部をモルタル充填式の機械継手で繋ぐ作業を繰り返すようにして、鉄筋籠ユニットを連結してなる鉄筋籠を杭穴に建て込んでいくようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物 丸善出版 P449-454、国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編、平成24年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記非特許文献1の技術のように、鉄筋籠を建て込むのにモルタル充填式の機械継手を用いた場合、その施工コストや施工工期が増大するといった問題があった。
【0005】
本発明の目的は、より簡易な施工を可能にする鉄筋籠及び鉄筋籠の建込方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本出願に係る一の発明は、
周方向に適宜間隔をあけて配されて上下方向に延在している複数の主筋と、上下方向に適宜間隔をあけて前記複数の主筋に取り付けられている複数の帯筋とを有する鉄筋籠ユニットが、上下に複数連結されてなる鉄筋籠であって、
下側の配置となる第1の鉄筋籠ユニットにおける主筋の上端部と、上側の配置となる第2の鉄筋籠ユニットにおける主筋の下端部とが重ね継手の配置にされており、その重ね継手部分を覆う複数の螺旋状部材と、
下端部が前記第1の鉄筋籠ユニットにおける少なくとも1つの帯筋に繋がれ、上端部が前記第2の鉄筋籠ユニットにおける少なくとも1つの帯筋に繋がれており、前記第1の鉄筋籠ユニットと前記第2の鉄筋籠ユニットとを接続している複数の固定鉄筋と、
を備えているようにした。
【0007】
かかる構成の鉄筋籠であれば、モルタル充填式の機械継手を用いることなく、複数の固定鉄筋で第1の鉄筋籠ユニットと第2の鉄筋籠ユニットを比較的簡易に接続して鉄筋籠を組み立てることができる。
特に、第1の鉄筋籠ユニットの主筋の上端部と第2の鉄筋籠ユニットの主筋の下端部が重ね継手の配置にされ、その主筋の重ね継手部分を覆うように螺旋状部材が配設されているので、この鉄筋籠が建て込まれた杭穴内に打設されたコンクリートなどの固化材料が螺旋状部材に拘束されるようになって、その固化材料と螺旋状部材と第1の鉄筋籠ユニットの主筋と第2の鉄筋籠ユニットの主筋とが一体化する。
このように、主筋の重ね継手部分を覆う螺旋状部材が固化材料を拘束することで、その主筋の重ね継手部分の定着強度を向上させることができるので、第1の鉄筋籠ユニットと第2の鉄筋籠ユニットの連結が強固なものになる。
【0008】
また、望ましくは、
前記複数の固定鉄筋のうちの少なくとも1つは、前記上端部と前記下端部とがそれぞれ折曲されたフック状に形成されており、そのフック状の前記上端部が前記第2の鉄筋籠ユニットの下方側の帯筋に掛けられ、フック状の前記下端部が前記第1の鉄筋籠ユニットの上方側の帯筋に掛けられているようにする。
【0009】
第1固定鉄筋のフック状の上端部を第2の鉄筋籠ユニットの帯筋に引っ掛け、第1固定鉄筋のフック状の下端部を第1の鉄筋籠ユニットの帯筋に引っ掛けるようにして、第1の鉄筋籠ユニットと第2の鉄筋籠ユニットとの接続を簡易にすることができる。
【0010】
また、望ましくは、
前記複数の固定鉄筋のうちの少なくとも1つは、前記上端部が前記第2の鉄筋籠ユニットの下方側の帯筋に固定され、前記下端部が前記第1の鉄筋籠ユニットの上方側の帯筋に固定されているようにする。
【0011】
第2固定鉄筋の上端部を第2の鉄筋籠ユニットの帯筋に無溶接用の固定治具や溶接で固定したり、第2固定鉄筋の下端部を第1の鉄筋籠ユニットの帯筋に無溶接用の固定治具や溶接で固定したりするようにして、第1の鉄筋籠ユニットと第2の鉄筋籠ユニットとの接続を簡易にすることができる。
【0012】
また、本出願に係る他の発明は、
周方向に適宜間隔をあけて配されて上下方向に延在している複数の主筋と、上下方向に適宜間隔をあけて前記複数の主筋に取り付けられている複数の帯筋とを有する鉄筋籠ユニットを、上下に複数連結して杭穴に建て込む鉄筋籠の建込方法であって、
第1の鉄筋籠ユニットを前記杭穴に送り込み、その第1の鉄筋籠ユニットの上部が前記杭穴から突き出している状態で保持する工程と、
前記第1の鉄筋籠ユニットにおける主筋の上端部をその内側に挿通させるように螺旋状部材を取り付ける工程と、
第2の鉄筋籠ユニットにおける主筋の下端部を前記螺旋状部材に挿し入れ、前記第1の鉄筋籠ユニットの主筋の上端部と前記第2の鉄筋籠ユニットの主筋の下端部とを重ね継手の配置にする工程と、
上端部と下端部とにそれぞれフックが形成されている第1固定鉄筋の上側のフック(上端部)を第2の鉄筋籠ユニットの下方側の帯筋に掛ける工程と、
前記第2の鉄筋籠ユニットを吊り上げ、前記第1固定鉄筋の下側のフック(下端部)を第1の鉄筋籠ユニットの上方側の帯筋に掛けて、前記第1固定鉄筋を介して前記第1の鉄筋籠ユニットを吊り下げた状態にする工程と、
連結状態にある前記第1の鉄筋籠ユニットおよび前記第2の鉄筋籠ユニットの前記第2の鉄筋籠ユニットの上部が前記杭穴から突き出している状態になるまで送り込んで保持する工程と、
を有するようにした。
【0013】
かかる構成の鉄筋籠の建込方法であれば、モルタル充填式の機械継手を用いることなく、第1固定鉄筋を利用して、第1固定鉄筋のフック状の上端部を第2の鉄筋籠ユニットの帯筋に引っ掛け、第1固定鉄筋のフック状の下端部を第1の鉄筋籠ユニットの帯筋に引っ掛けるようにして、第1固定鉄筋を介して第1の鉄筋籠ユニットと第2の鉄筋籠ユニットを比較的簡易に連結して鉄筋籠を組み立てることができる。
具体的には、第2の鉄筋籠ユニットの帯筋に第1固定鉄筋のフック状の上端部を引っ掛けた状態で、クレーンなどで第2の鉄筋籠ユニットを吊り上げ、第1固定鉄筋のフック状の下端部を第1の鉄筋籠ユニットの帯筋に引っ掛けるようにして、第1固定鉄筋を介して第2の鉄筋籠ユニットに第1の鉄筋籠ユニットを吊り下げた状態にして連結することができる。
【0014】
特に、第1の鉄筋籠ユニットの主筋の上端部と第2の鉄筋籠ユニットの主筋の下端部が重ね継手の配置にされ、その主筋の重ね継手部分を覆うように螺旋状部材が配設された態様になっているので、この鉄筋籠が建て込まれた杭穴内に打設されたコンクリートなどの固化材料が螺旋状部材に拘束されるようになって、その固化材料と螺旋状部材と第1の鉄筋籠ユニットの主筋と第2の鉄筋籠ユニットの主筋とが一体化する。
このように、主筋の重ね継手部分を覆う螺旋状部材が固化材料を拘束することで、その主筋の重ね継手部分の定着強度を向上させることができるので、第1の鉄筋籠ユニットと第2の鉄筋籠ユニットの連結が強固なものになる。
【0015】
また、望ましくは、
前記第2の鉄筋籠ユニットを吊り上げて、前記第1固定鉄筋を介して前記第1の鉄筋籠ユニットを吊り下げた状態にした後、第2固定鉄筋の上端部を前記第2の鉄筋籠ユニットの下方側の帯筋に固定し、その第2固定鉄筋の下端部を前記第1の鉄筋籠ユニットの上方側の帯筋に固定する工程を有するようにする。
【0016】
第2固定鉄筋の上端部を第2の鉄筋籠ユニットの帯筋に無溶接用の固定治具や溶接によって固定したり、第2固定鉄筋の下端部を第1の鉄筋籠ユニットの帯筋に無溶接用の固定治具や溶接によって固定したりすれば、第1の鉄筋籠ユニットと第2の鉄筋籠ユニットとの連結をより強固にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より簡易な施工を可能にする鉄筋籠と、その鉄筋籠の建込方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の鉄筋籠を示す概略側面図である。
【
図2】本実施形態の鉄筋籠の建込方法に関する工程図である。
【
図3】本実施形態の鉄筋籠の建込方法に関する工程図である。
【
図4】本実施形態の鉄筋籠の建込方法に関する工程図である。
【
図5】本実施形態の鉄筋籠の建込方法に関する工程図である。
【
図6】本実施形態の鉄筋籠の建込方法に関する工程図である。
【
図7】本実施形態の鉄筋籠の建込方法に関する工程図である。
【
図8】本実施形態の鉄筋籠の建込方法に関する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る鉄筋籠及び鉄筋籠の建込方法の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0020】
本実施形態の鉄筋籠100は、例えば、
図1に示すように、周方向に適宜間隔をあけて配されて上下方向に延在している複数の主筋1と、上下方向に適宜間隔をあけて複数の主筋1に取り付けられている複数の帯筋2とを有する鉄筋籠ユニット(10,20)が、上下に複数連結されてなる場所打ち杭用の鉄筋籠である。なお、帯筋2は、複数の主筋1に巻き付けられた態様で取り付けられている。
ここでは、下側の配置となる第1の鉄筋籠ユニット10と、上側の配置となる第2の鉄筋籠ユニット20とが連結されてなる鉄筋籠100を例示している。
鉄筋籠ユニット(10,20)を構成している主筋1と帯筋2は、それぞれ異形鉄筋であり、帯筋2は主筋1に番線(図示省略)や無溶接用の固定治具(図示省略)にて固定されている。
なお、複数の主筋1は、四周に沿った配置(四方の周りに沿った配置)に配されていても、円周に沿った配置に配されていてもよい。
【0021】
下側の配置となる第1の鉄筋籠ユニット10における主筋1の上端部と、上側の配置となる第2の鉄筋籠ユニット20における主筋1の下端部とは重ね継手の配置にされており、その重ね継手部分を覆うように複数の螺旋状部材3が配設されている。
ここでは、全ての主筋1の重ね継手部分に螺旋状部材3が配設されている。
螺旋状部材3は、例えば、線状の鋼材(棒鋼、線材など)を同心状に巻いて形成したスパイラル状の部材であり、少なくとも2本の主筋1を挿通可能な内径を有している。
2本の主筋1の重ね継手部分を螺旋状部材3が覆うことで、鉄筋や鋼材が重なる部分が多くなる。
この螺旋状部材3は、後述する杭穴Hに打設される固化材料(例えば、コンクリート)を拘束するようにして、その固化材料と一体化するようになる。
主筋1の重ね継手部分を覆う螺旋状部材3がコンクリートやモルタルなどの固化材料を拘束するようになっているので、その重ね継手の定着強度を向上させることができ、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20の連結強度が向上する。
【0022】
また、下端部が第1の鉄筋籠ユニット10における少なくとも1つの帯筋2に繋がれ、上端部が第2の鉄筋籠ユニット20における少なくとも1つの帯筋2に繋がれており、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20とを接続している複数の固定鉄筋(4,5)が配設されている。
本実施形態の鉄筋籠100には、上端部4aと下端部4bとがそれぞれ折曲されたフック状に形成されており、そのフック状の上端部4aが第2の鉄筋籠ユニット20の帯筋2に掛けられ、フック状の下端部4bが第1の鉄筋籠ユニット10の帯筋2に掛けられている第1固定鉄筋4が配設されている。
また、本実施形態の鉄筋籠100には、上端部が第2の鉄筋籠ユニット20の帯筋2に固定され、下端部が第1の鉄筋籠ユニット10の帯筋2に固定されている第2固定鉄筋5が配設されている。例えば、第2固定鉄筋5の上端部と下端部は、無溶接用の固定治具や溶接、番線によって帯筋2に固定されている。
この第1固定鉄筋4と第2固定鉄筋5は、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20の間に、それぞれ複数配設されている。
第1固定鉄筋4と第2固定鉄筋5は、それぞれ異形鉄筋であり、螺旋状部材3より長いサイズに形成されている。
【0023】
このような鉄筋籠100が後述する杭穴Hに建て込まれ、その杭穴Hにコンクリートやモルタルなどの固化材料が打設されて、場所打ち杭が構築される。
【0024】
次に、本実施形態の鉄筋籠100を杭穴Hに建て込む建込方法について説明する。
【0025】
まず、
図2に示すように、第1の鉄筋籠ユニット10を杭穴Hに送り込み、その第1の鉄筋籠ユニット10の上部が杭穴Hから突き出している状態で保持する(第1工程)。
例えば、クレーンなどで吊った第1の鉄筋籠ユニット10を上方から杭穴Hに落とし込むようにし、「かんざし」などと称される仮設部材Bを用いて第1の鉄筋籠ユニット10を杭穴Hに吊るした状態で支持する。
【0026】
次いで、
図3に示すように、第1の鉄筋籠ユニット10における主筋1の上端部をその内側に挿通させるように螺旋状部材3を取り付ける(第2工程)。
その螺旋状部材3は、第1の鉄筋籠ユニット10の最上段の帯筋2に載置された態様で、第1の鉄筋籠ユニット10の主筋1の上端部に取り付けられている。
次いで、
図4に示すように、クレーンなどで吊っている第2の鉄筋籠ユニット20を第1の鉄筋籠ユニット10に向けて降下させ、第2の鉄筋籠ユニット20における主筋1の下端部を螺旋状部材3に挿し入れ、第1の鉄筋籠ユニット10の主筋1の上端部と第2の鉄筋籠ユニット20の主筋1の下端部とを重ね継手の配置にする(第3工程)。
この段階(第3工程)で、螺旋状部材3が第1の鉄筋籠ユニット10の主筋1と第2の鉄筋籠ユニット20の主筋1の重ね継手部分を覆った状態になっている。
【0027】
次いで、
図5に示すように、上端部4aと下端部4bとがそれぞれフック状に形成されている第1固定鉄筋4の上端部4aを第2の鉄筋籠ユニット20の帯筋2に掛ける(第4工程)。
ここでは、第2の鉄筋籠ユニット20における最下段の帯筋2に複数の第1固定鉄筋4を掛けている。
次いで、
図6に示すように、クレーンなどで吊っている第2の鉄筋籠ユニット20を吊り上げ、第1固定鉄筋4の下端部4bを第1の鉄筋籠ユニット10の帯筋2に掛けて、複数の第1固定鉄筋4を介して第1の鉄筋籠ユニット10を吊り下げた状態にする(第5工程)。
ここでは、第1の鉄筋籠ユニット10における最上段の帯筋2に第1固定鉄筋4の下端部4bを掛けている。
なお、クレーンなどで第2の鉄筋籠ユニット20を所定の高さに吊り上げて、第1固定鉄筋4を介して第1の鉄筋籠ユニット10が吊り下げられた状態になったら、仮設部材Bを杭穴Hの開口部から一旦撤去する。
また、この段階(第5工程)で、螺旋状部材3を番線(図示省略)にて主筋1に固定する。
また、第1固定鉄筋4を番線にて帯筋2に固定してもよい。
【0028】
なお、第2の鉄筋籠ユニット20に第1固定鉄筋4を介して第1の鉄筋籠ユニット10が吊り下げられている状態において、第1固定鉄筋4が主筋1の重ね継手の長さを規制している。
換言すれば、第1固定鉄筋4は、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20の間隔を所定長に保持する機能を有している。
【0029】
次いで、
図7に示すように、クレーンなどで吊り上げられている第2の鉄筋籠ユニット20に複数の第1固定鉄筋4を介して第1の鉄筋籠ユニット10が吊り下げられている状態で、第2固定鉄筋5の上端部を第2の鉄筋籠ユニット20の帯筋2に無溶接用の固定治具や溶接にて固定し、その第2固定鉄筋5の下端部を第1の鉄筋籠ユニット10の帯筋2に無溶接用の固定治具や溶接にて固定する(第6工程)。
なお、第2固定鉄筋5の上端部と下端部を番線にて各鉄筋籠ユニットの帯筋2に固定してもよい。
ここでは、第2固定鉄筋5の上端部を第2の鉄筋籠ユニット20の最下段の帯筋2に固定し、第2固定鉄筋5の下端部を第1の鉄筋籠ユニット10の最上段の帯筋2に固定している。
【0030】
次いで、
図8に示すように、第1固定鉄筋4や第2固定鉄筋5を介して連結された第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20を杭穴Hに送り込み、その第2の鉄筋籠ユニット20の上部が杭穴Hから突き出している状態で保持する(第7工程)。
例えば、仮設部材Bを用いて第1の鉄筋籠ユニット10および第2の鉄筋籠ユニット20を杭穴Hに吊るした状態で支持する。
【0031】
このようにして第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20とが連結された鉄筋籠100が設計した長さになり、鉄筋籠100の下端が杭穴Hの底面の近傍に達していれば、鉄筋籠100の建て込みは実質終了する。
そして、鉄筋籠100の建て込んだ杭穴H内にコンクリートなどの固化材料を打設することによって、場所打ち杭を構築することができる。
【0032】
一方、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20とを連結した鉄筋籠100が設計した長さに達していなければ、第2工程から第7工程を繰り返すようにして、その鉄筋籠100の上部に第2の鉄筋籠ユニット20を連結する。
このとき、鉄筋籠100の上部を第1の鉄筋籠ユニット10に見立て、そこに第2の鉄筋籠ユニット20を連結する。
この第2の鉄筋籠ユニット20の連結は、鉄筋籠100が設計した長さになるまで繰り返す。
【0033】
以上のように、本実施形態の鉄筋籠100は、モルタル充填式の機械継手を用いることなく、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20を連結して組み立てることができる。
この第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20の連結には第1固定鉄筋4と第2固定鉄筋5を用いており、第1固定鉄筋4のフック状の上端部4aと下端部4bをそれぞれ第2の鉄筋籠ユニット20の帯筋2と第1の鉄筋籠ユニット10の帯筋2に引っ掛けたり、第2固定鉄筋5の上端部と下端部をそれぞれ第2の鉄筋籠ユニット20の帯筋2と第1の鉄筋籠ユニット10の帯筋2に無溶接用の固定治具や溶接で固定したりすることで、それらを連結しているので、比較的容易に短時間で鉄筋籠100を組み立てることができる。
【0034】
特に、第1の鉄筋籠ユニット10の主筋1の上端部と第2の鉄筋籠ユニット20の主筋1の下端部を重ね継手の配置にし、その主筋1の重ね継手部分を覆うように螺旋状部材3を配設しているので、この鉄筋籠100が建て込まれた杭穴H内に打設したコンクリートなどの固化材料が螺旋状部材3に拘束されるようになって、その固化材料と螺旋状部材3と第1の鉄筋籠ユニット10の主筋1と第2の鉄筋籠ユニット20の主筋1とが一体化する。
このように、主筋1の重ね継手部分を覆う螺旋状部材3が固化材料を拘束するようになっており、その主筋1の重ね継手部分の定着強度を向上させることができるので、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20の連結は強固なものになる。
本発明者らは、主筋1の重ね継手部分を覆う螺旋状部材3が固化材料を拘束している第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20の連結箇所の強度が、モルタル充填式の機械継手を用いて連結した場合と同等であることを各種試験によって確認している。
【0035】
このような本実施形態の鉄筋籠の建込方法によって杭穴Hに建て込まれる鉄筋籠100は、比較的簡易な施工によって組み立てることができるので、モルタル充填式の機械継手を用いた鉄筋籠の建て込みに比べて、施工コストを抑え、施工工期を短縮することができる。
【0036】
なお、以上の実施の形態においては、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20との連結箇所において、全ての主筋1(重ね継手部分)に対し螺旋状部材3を配設したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20との連結強度が十分に得られるのであれば、連結強度の向上に有効な主筋1(重ね継手部分)のみに螺旋状部材3を配設するようにしてもよい。
【0037】
また、第1の鉄筋籠ユニット10と第2の鉄筋籠ユニット20が連結された箇所であって、第1固定鉄筋4と第2固定鉄筋5が設置された箇所の周囲に、後付けて帯筋を設置してもよい。
【0038】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 主筋
2 帯筋
3 螺旋状部材
4 第1固定鉄筋
4a 上端部
4b 下端部
5 第2固定鉄筋
10 第1の鉄筋籠ユニット
20 第2の鉄筋籠ユニット
100 鉄筋籠
H 杭穴
B 仮設部材