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特開2024-98184粘着テープ又は粘着シート及び粘着テープ又は粘着シートの製造方法
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  • 特開-粘着テープ又は粘着シート及び粘着テープ又は粘着シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098184
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】粘着テープ又は粘着シート及び粘着テープ又は粘着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240716BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001472
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】504302691
【氏名又は名称】APMジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】金塚 洋平
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J040DF021
4J040JB09
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】
比較的低コストで製造することができ、軟質塩化ビニル樹脂を主体とする被着体に貼り付けた際にも糊残りしにくい粘着テープ又は粘着シートを提供する。
【解決手段】
基材11と、前記基材11の一側に積層された粘着剤層12とを備えた粘着テープ10又は粘着シートにおいて、前記粘着剤層12は、アクリル系ポリマー(A)と、硬化剤(B)とを含むようにし、前記粘着テープ10又は粘着シートにおける前記粘着剤層12を、軟質塩化ビニル樹脂を主体とするデスクマットに対して貼り付け、温度約23°C、湿度約50%の条件下で10分間静置した後、前記粘着テープ10又は前記粘着シートを剥離角度約180°で剥がした際に、前記基材11側に残存する前記粘着剤層12の残存率が90%以上となるようにした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一側に積層された粘着剤層とを備えた粘着テープ又は粘着シートであって、
前記粘着剤層は、
アクリル系ポリマー(A)と、
硬化剤(B)と
を含み、
前記粘着テープ又は粘着シートにおける前記粘着剤層を、軟質塩化ビニル樹脂を主体とするデスクマットに対して貼り付け、温度約23°C、湿度約50%の条件下で10分間静置した後、前記粘着テープ又は前記粘着シートを剥離角度約180°で剥がした際に、前記基材側に残存する前記粘着剤層の残存率が90%以上である
粘着テープ又は粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層のゲル分率が、40%以上、90%以下である請求項1記載の粘着テープ又は粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の、JIS Z0237に準拠して測定されたSUSに対する粘着力が、2N/25mm以上、20N/25mm以下であり、
前記粘着剤層の、JIS Z0237に準拠して測定されたボールタックが、No.3以上、No.32以下である
請求項1記載の粘着テープ又は粘着シート。
【請求項4】
アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基含有モノマー(a1)由来のモノマー単位を含み、
硬化剤(B)は、カルボキシル基に対する反応性が水酸基に対する反応性よりも高い第一硬化剤(b1)と、水酸基に対する反応性がカルボキシル基に対する反応性よりも高い第二硬化剤(b2)とを含む
請求項1記載の粘着テープ又は粘着シート。
【請求項5】
第一硬化剤(b1)が、エポキシ系硬化剤、キレート系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤及びアジリジン系硬化剤からなる群より選択される1又は2以上の硬化剤であり、
第二硬化剤(b2)が、イソシアネート系硬化剤である
請求項4記載の粘着テープ又は粘着シート。
【請求項6】
アクリル系ポリマー(A)が、水酸基含有モノマー由来のモノマー単位を実質的に含まない請求項4記載の粘着テープ又は粘着シート。
【請求項7】
再剥離用である請求項1記載の粘着テープ又は粘着シート。
【請求項8】
基材と、前記基材の一側に積層された粘着剤層とを備えた粘着テープ又は粘着シートの製造方法であって、
アクリル系ポリマー(A)と、硬化剤(B)とを含む粘着剤組成物を調製する工程と、
前記基材の一側に前記粘着剤組成物を塗工し乾燥させることによって前記粘着剤層を形成する工程と
を含み、
製造した前記粘着テープ又は前記粘着シートにおける前記粘着剤層を、軟質塩化ビニル樹脂を主体とするデスクマットに対して貼り付け、温度約23°C、湿度約50%の条件下で10分間静置した後、前記粘着テープ又は前記粘着シートを剥離角度約180°で剥がした際に、前記基材側に残存する前記粘着剤層の残存率が90%以上である
粘着テープ又は粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ又は粘着シートに関する。本発明は、また、粘着テープ又は粘着シートの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、養生テープやマスキングテープ等の粘着テープは、工事現場等において、仮止めやマスキング等を行うための業務用途に使用されてきた。しかし、近年、台風時の窓ガラス飛散防止用や個人間売買の梱包用に用いられる等、業務用使用に限らず一般家庭での使用が拡大している。家庭用使用においては、業務用使用の場合に比べて使い方や被着体が想定しにくく、様々なトラブルが散見されるようになった。
【0003】
このようなトラブルとしては、例えば、軟質塩化ビニル樹脂を主体とする被着体(例えば、デスクマットや、フロアマットや、壁紙や、電気コードの被覆材や、人工皮革等)に対する糊残り(被着体に粘着テープを貼り付け、しばらくしてから剥がした際に、粘着テープの粘着剤層が被着体側に残ってしまう現象のこと。以下同じ。)が挙げられる。軟質塩化ビニル樹脂は、一般的に可塑剤を含んでおり、これを主体とする被着体に従来の養生テープ等を貼り付けると、可塑剤が養生テープ等の粘着剤に移行して粘着剤の凝集力低下を招き、糊残りを誘発してしまうのである。業務用使用の場合には、軟質塩化ビニル樹脂への貼り付けを避ける注意喚起を行うことにより、ある程度この種のトラブルを避けることができるが、家庭用使用の場合には、被着体の材質を認識して使用するケースは稀であり、流通量の多い軟質塩化ビニル樹脂に養生テープ等を貼り付けてトラブルとなる事例が増えている。
【0004】
このような事情に鑑みてか、特許文献1には、長期剥離性の向上を図った養生テープが記載されている。同文献に記載の養生テープは、基材と、前記基材上に設けられた粘着剤層とを備えている。前記基材は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムで構成され、前記粘着剤層は、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と粘着付与剤を含有する粘着剤からなり、前記共重合体は、スチレンコンテントが21~40質量%であり、かつジブロック率が45~80質量%であり、前記共重合体に対する前記粘着付与剤の質量比が0.50~0.75である。
【0005】
特許文献1の段落0035には、同文献の養生テープを、塩ビ板を含む各被着体(ベニヤ板、アクリル板、アルミ板、塩ビ板)に貼り付け、温度60°C、湿度80%の雰囲気中に3ヶ月放置したのち、室温(温度23°C、湿度50%)まで冷却し、テープを手で剥がし、被着体に粘着剤が残っているかどうかを調べたことが記載されている。そして、同文献の表1(段落0027)には、実施例1、3、4、6、8、11、12、13において、糊残りの面積が最も大きい被着体での糊残りの面積が10%以下であったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-204003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、引用文献1に記載の養生テープでは、粘着剤層のベースポリマーとしてブロック共重合体を採用しているところ、ブロック共重合体は高コストであるため、結果として養生テープの価格が高くなりすぎてしまうという問題があった。加えて、そもそも、同文献で試験に用いている「塩ビ板」は、「板」であることから、軟質塩化ビニル樹脂ではなく硬質塩化ビニル樹脂(可塑剤を含まない、又は含んでいても微量である塩化ビニル樹脂)であると考えられる。硬質塩化ビニル樹脂は、一般的に、軟質塩化ビニル樹脂に比べて糊残りしにくい。したがって、同文献に記載の養生テープが、軟質塩化ビニルに対しても糊残りしにくいとは限らない。同様の問題は、粘着テープだけでなく粘着シートにも存在した。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、比較的低コストで製造することができ、軟質塩化ビニル樹脂を主体とする被着体に貼り付けた際にも糊残りしにくい粘着テープ又は粘着シートを提供するものである。また、この粘着テープ又は粘着シートの製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、
基材と、前記基材の一側に積層された粘着剤層とを備えた粘着テープ又は粘着シートであって、
前記粘着剤層は、
アクリル系ポリマー(A)と、
硬化剤(B)と
を含み、
前記粘着テープ又は粘着シートにおける前記粘着剤層を、軟質塩化ビニル樹脂を主体とするデスクマットに対して貼り付け、温度約23°C、湿度約50%の条件下で10分間静置した後、前記粘着テープ又は前記粘着シートを剥離角度約180°で剥がした際に、前記基材側に残存する前記粘着剤層の残存率が90%以上である
粘着テープ又は粘着シート
を提供することによって解決される。
【0010】
上記の粘着テープ又は粘着シートは、
基材と、前記基材の一側に積層された粘着剤層とを備えた粘着テープ又は粘着シートの製造方法であって、
アクリル系ポリマー(A)と、硬化剤(B)とを含む粘着剤組成物を調製する工程と、
前記基材の一側に前記粘着剤組成物を塗工し乾燥させることによって前記粘着剤層を形成する工程と
を含み、
製造した前記粘着テープ又は前記粘着シートにおける前記粘着剤層を、軟質塩化ビニル樹脂を主体とするデスクマットに対して貼り付け、温度約23°C、湿度約50%の条件下で10分間静置した後、前記粘着テープ又は前記粘着シートを剥離角度約180°で剥がした際に、前記基材側に残存する前記粘着剤層の残存率が90%以上である
粘着テープ又は粘着シートの製造方法
によって製造することができる。
【0011】
上記の粘着テープ又は粘着シートは、粘着剤層に比較的廉価なアクリル系ポリマー(A)を採用しているため、比較的低コストで製造することができる。加えて、上記の粘着テープ又は粘着シートは、軟質塩化ビニル樹脂を主体とするデスクマットに対して貼り付けた際の基材側粘着剤残存率が90%以上となっている。すなわち、軟質塩化ビニル樹脂を主体とする被着体に貼り付けた際にも糊残りしにくい。
【0012】
上記の粘着テープ又は粘着シートにおいては、前記粘着剤層のゲル分率が、40%以上、90%以下であることができる。
【0013】
上記の粘着テープ又は粘着シートにおいては、前記粘着剤層の、JIS Z0237に準拠して測定されたSUSに対する粘着力が、2N/25mm以上、20N/25mm以下であることができる。また、前記粘着剤層の、JIS Z0237に準拠して測定されたボールタックが、No.3以上、No.32以下であることができる。
【0014】
上記の粘着テープ又は粘着シートにおいて、アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基含有モノマー(a1)由来のモノマー単位を含むことができ、硬化剤(B)は、カルボキシル基に対する反応性が水酸基に対する反応性よりも高い第一硬化剤(b1)と、水酸基に対する反応性がカルボキシル基に対する反応性よりも高い第二硬化剤(b2)とを含むことができる。ここで、「カルボキシル基に対する反応性が水酸基に対する反応性よりも高い」とは、水酸基に対する反応性が全くない場合も含むものとし、「水酸基に対する反応性がカルボキシル基に対する反応性よりも高い」とは、カルボキシル基に対する反応性が全くない場合も含むものとする。以下においても同様とする。
【0015】
上記の粘着テープ又は粘着シートにおいては、第一硬化剤(b1)として、エポキシ系硬化剤、キレート系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤及びアジリジン系硬化剤からなる群より選択される1又は2以上の硬化剤を採用することができる。また、第二硬化剤(b2)として、イソシアネート系硬化剤を採用することができる。
【0016】
上記の粘着テープ又は粘着シートにおいては、アクリル系ポリマー(A)を、水酸基含有モノマー由来のモノマー単位を実質的に含まないものとすることができる。ここで、「実質的に含まない」とは、製造過程において積極的に加えられなかったという意味である。したがって、アクリル系ポリマー(A)に、(例えば不純物等として)意図せず微量の水酸基含有モノマー由来のモノマー単位が含まれていた場合も、「実質的に含まない」に該当する。以下においても同様とする。
【0017】
上記の粘着テープ又は粘着シートは、例えば、再剥離用とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によって、比較的低コストで製造することができ、軟質塩化ビニル樹脂を主体とする被着体に貼り付けた際にも糊残りしにくい粘着テープ又は粘着シートを提供することが可能になる。また、この粘着テープ又は粘着シートの製造方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の粘着テープを模式的に示した断面図である。
図2】他の実施形態の粘着シートを模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.概要
本発明の好適な実施形態について、より具体的に説明する。図1は、本実施形態の粘着テープ10を模式的に示した断面図である。以下においては、本発明を粘着テープ10として実施する場合を例に挙げて説明するが、後で詳しく説明するように、本発明の実施形態は粘着テープ10に限定されず、粘着シート20(後掲の図2参照。)とすることもできる。
【0021】
本実施形態の粘着テープ10は、図1に示すように、基材11と、基材11の一側に積層された粘着剤層12とを備えている。この粘着テープ10は、粘着剤層12を保護するセパレーターフィルムを備えておらず、巻回されたテープロールRの状態で供給される。ただし、粘着テープ10は、セパレーターフィルムを備えたものとすることもできる。また、テープロールRではなく短冊状のテープの状態で供給することもできる。
【0022】
本実施形態の粘着テープ10は、軟質塩化ビニル樹脂を主体とする被着体に対して貼り付けた場合にも、糊残りしにくいものとなっている。具体的には、粘着テープ10の粘着剤層12を、軟質塩化ビニル樹脂を主体とするデスクマットに対して貼り付け、温度約23°C、湿度約50%の条件下で10分間静置した後、粘着テープ10を剥離角度約180°で剥がした際に、基材11側に残存する粘着剤層12の残存率(基材側粘着剤残存率)が90%以上である。したがって、例えば家庭用使用において、フロアマットや、壁紙等に粘着テープ10を貼り付けたとしても、糊残りしにくい。基材側粘着剤残存率は、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましい。基材側粘着剤残存率は、通常100%以下とされる。
【0023】
基材側粘着剤残存率の測定には、塩化ビニル樹脂を主体とする可撓性のデスクマットを使用する。このデスクマットは、塩化ビニル樹脂100重量部(固形分量。以下同じ。)に対する可塑剤の含有量が、30重量部(固形分量。以下同じ。)以上であることが好ましく、40重量部以上であることがより好ましい。また、塩化ビニル樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量が、70重量部以下であることが好ましく、60重量部以下であることがより好ましい。この場合の可塑剤は、その種類を特に限定されないが、フタル酸エステル系の可塑剤や、ポリエステル系の可塑剤であることができる。
【0024】
粘着テープ10の用途は、後で詳しく説明するように限定されないが、本実施形態の粘着テープ10は、再剥離用の養生テープである。再剥離用テープは、再剥離する前提で使用されるものであるため、被着体に糊残りしにくいことが極めて重要であるところ、本実施形態の粘着テープ10は、従来糊残りの制御が難しかった塩化ビニル樹脂に対しても糊残りしにくく、再剥離用テープとして非常に優れている。
【0025】
粘着テープ10の粘着力(実施例に記載の方法により測定した粘着剤層12の粘着力。以下同じ。)は、限定されないが、2N/25mm以上であることが好ましく、2.5N/25mm以上であることがより好ましく、3N/25mm以上であることがさらに好ましい。また、粘着テープ10の粘着力は、20N/25mm以下であることが好ましく、15N/25mm以下であることがより好ましく、10N/25mm以下であることがさらに好ましく、6N/25mm以下であることがよりさらに好ましい。
【0026】
粘着テープ10のボールタック(実施例に記載の方法により測定した粘着剤層12のボールタック。以下同じ。)は、限定されないが、No.3以上であることが好ましい。粘着テープ10のボールタックは、No.4以上であることがより好ましく、No.5以上であることがさらに好ましい。また、粘着テープ10のボールタックは、通常No.32以下とされる。粘着テープ10のボールタックは、No.25以下であることが好ましく、No.20以下であることがより好ましい。
【0027】
2.基材
基材11は、可撓性のシート状素材であれば、その具体的な素材を限定されない。基材11としては、例えば、樹脂製シート、布、紙、金属箔等を採用することができる。樹脂製シートとしては、例えば、フラットヤーンクロス、樹脂製フィルム(例えば、セロハン、OPP、アセテートフィルム等)等を採用することができる。布としては、例えば、織布、不織布、編布等を採用することができる。樹脂製シートを構成する樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂からなる群より選択される1又は2以上の樹脂を採用することができる。基材11は、1種類の素材で形成されたものとすることもできるし、2種類以上の素材を組み合わせて形成されたものとすることもできる。本実施形態においては、基材11として、ポリオレフィン樹脂製の樹脂製シートを採用しており、より具体的には、ポリエチレンでラミネートをしたポリエステルクロスを採用している。
【0028】
3.粘着剤層
粘着剤層12は、アクリル系ポリマー(A)と、硬化剤(B)とを含んでいる。
【0029】
3.1 アクリル系ポリマー(A)
本実施形態におけるアクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基含有モノマー(a1)由来のモノマー単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)由来のモノマー単位とを含む共重合体である。以下においては、「カルボキシル基含有モノマー(a1)由来のモノマー単位」を、単に「カルボキシル基含有モノマー(a1)単位」と表記することがある。また、「(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)由来のモノマー単位」を、単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)単位」と表記することがある。
【0030】
カルボキシル基含有モノマー(a1)は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)と共重合可能であり、かつ、分子内に少なくとも1箇所のカルボキシル基を有するものであれば、その具体的な種類を限定されない。カルボキシル基含有モノマー(a1)としては、分子内に、(メタ)アクリロイル基又はビニル基と、カルボキシル基とを有するものを用いることができる。なお、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味するものとする。同様に、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味するものとする。以下においても同様とする。
【0031】
カルボキシル基含有モノマー(a1)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸や、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基含有モノマー(a1)単位を、1種類だけ含むこともできるし、2種類以上含むこともできる。
【0032】
アクリル系ポリマー(A)におけるカルボキシル基含有モノマー(a1)単位の含有率は、限定されないが、低すぎると粘着剤層12の凝集力を高めにくくなり、粘着テープ10の糊残りを防ぎにくくなるおそれがある。一方、カルボキシル基含有モノマー(a1)単位の含有率が高すぎると、粘着剤層12の粘着力やタック性を高めにくくなるおそれがある。このため、アクリル系ポリマー(A)におけるカルボキシル基含有モノマー(a1)単位の含有率は、1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましい。また、アクリル系ポリマー(A)におけるカルボキシル基含有モノマー(a1)単位の含有率は、15重量%以下であることが好ましく、12重量%以下であることがより好ましく、9重量%以下であることがさらに好ましい。本実施形態におけるアクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基含有モノマー(a1)単位を4重量%~8重量%含んでいる。
【0033】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)単位は、その具体的な種類を限定されない。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)におけるアルキル基の炭素数は、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、6以上であることがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)におけるアルキル基の炭素数は、14以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)におけるアルキル基は、直鎖状のものであることもできるし、分岐を1箇所以上有する分岐鎖状のものであることもできるし、環状のものであることもできる。本実施形態においては、炭素数8の分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)を採用している。
【0034】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)は、これを単独で重合させたホモポリマーのガラス転移温度(以下、単に「重合後Tg」と表現することがある。)を特に限定されない。ただし、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)の重合後Tgが高すぎると、粘着剤層12のタック(初期接着力)を高めにくくなるおそれがある。このため、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)の重合後Tgは、-40°C以下であることが好ましく、-50°C以下であることがより好ましく、-60°C以下であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)の重合後Tgは、通常、-80°C以上とされる。
【0035】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)は、その具体的な種類を限定されない。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル等が挙げられる。アクリル系ポリマー(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)単位を、1種類だけ含むこともできるし、2種類以上含むこともできる。
【0036】
アクリル系ポリマー(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)単位の含有率は、限定されないが、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。また、アクリル系ポリマー(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)単位の含有率は、99重量%以下であることが好ましく、98重量%以下であることがより好ましい。本実施形態におけるアクリル系ポリマー(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)単位を92重量%~96重量%含んでいる。
【0037】
アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基含有モノマー(a1)単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)単位に加えて、コモノマー(a3)由来のモノマー単位(以下、単に「コモノマー(a3)単位」と表記することがある。)を含むこともできる。コモノマー(a3)は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)と共重合可能なものであれば、その具体的な種類を限定されない。コモノマー(a3)は、カルボキシル基含有モノマー(a1)及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)の両方と共重合可能なものとすることができる。
【0038】
コモノマー(a3)としては、分子内に少なくとも1箇所のビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有するものを採用することができる。コモノマー(a3)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル等が挙げられる。アクリル系ポリマー(A)は、コモノマー(a3)単位を、1種類だけ含むこともできるし、2種類以上含むこともできる。
【0039】
アクリル系ポリマー(A)がコモノマー(a3)単位を含む場合において、アクリル系ポリマー(A)におけるコモノマー(a3)単位の含有率は、限定されないが、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましい。また、アクリル系ポリマー(A)におけるコモノマー(a3)単位の含有率は、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。
【0040】
アクリル系ポリマー(A)は、水酸基含有モノマー(a4)由来のモノマー単位(以下、単に「水酸基含有モノマー(a4)単位」と表記することがある。)を含むこともできる。ただし、アクリル系ポリマー(A)における水酸基含有モノマー(a4)単位の含有率が高すぎると、粘着剤層12の粘着力を高めにくくなるおそれがある。このため、アクリル系ポリマー(A)における水酸基含有モノマー(a4)単位の含有率は、限定されないが、0重量%以上0.3重量%以下であることが好ましく、0重量%以上0.1重量%以下であることがより好ましく、0重量%以上0.01重量%以下であることがさらに好ましい。本実施形態におけるアクリル系ポリマー(A)は、水酸基含有モノマー(a4)単位を実質的に含んでいない。水酸基含有モノマー(a4)としては、例えば、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸-6-ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。
【0041】
アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、特に限定されない。ただし、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が小さすぎると、粘着剤層12の耐久性を高めにくくなるおそれがあり、大きすぎると、アクリル系ポリマー(A)の粘度が高くなりすぎてアクリル系ポリマー(A)を扱いにくくなるおそれがある。このため、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、10万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。また、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、120万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましく、80万以下であることがさらに好ましい。なお、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、標準ポリスチレン分子量換算により測定することができる。
【0042】
アクリル系ポリマー(A)の理論ガラス転移温度(Foxの式を用いて、各モノマーの重合後Tg及び含有率から求めた理論値。以下、単に「理論Tg」と表記することがある。)は、限定されない。ただし、アクリル系ポリマー(A)の理論Tgが高すぎると、粘着剤層12のタックを高めにくくなるおそれがある。このため、アクリル系ポリマー(A)の理論Tgは、-30°C以下であることが好ましく、-40°C以下であることがより好ましく、-50°C以下であることがさらに好ましい。アクリル系ポリマー(A)の理論Tgは、通常、-80°C以上とされる。
【0043】
3.2 硬化剤(B)
本実施形態における硬化剤(B)は、カルボキシル基に対する反応性が水酸基に対する反応性よりも高い第一硬化剤(b1)と、水酸基に対する反応性がカルボキシル基に対する反応性よりも高い第二硬化剤(b2)とを含んでいる。なお、硬化剤(B)は、3種類以上の硬化剤を含むこともできる。
【0044】
第一硬化剤(b1)としては、例えば、エポキシ系硬化剤、キレート系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤及びアジリジン系硬化剤からなる群より選択される1又は2以上の硬化剤を採用することができる。中でも、エポキシ系硬化剤又はキレート系硬化剤を採用することが好ましい。
【0045】
エポキシ系硬化剤は、分子内に2箇所以上のエポキシ基を有するものであれば、その種類を限定されない。エポキシ系硬化剤は、分子内に3箇所以上のエポキシ基を有するものであることが好ましく、分子内に4箇所以上のエポキシ基を有するものであることがより好ましい。
【0046】
エポキシ系硬化剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルp-アミノフェノール、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン系硬化剤、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系硬化剤等が挙げられる。エポキシ系硬化剤は、1種類だけ用いることもできるし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。本実施形態においては、エポキシ系硬化剤として、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンを採用している。
【0047】
キレート系硬化剤は、その具体的な種類を限定されない。キレート系硬化剤としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、バナジウム等の多価金属と、アルキルアセトアセテート、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン、アセチルアセトネート等の配位子との配位化合物を用いることができる。
【0048】
キレート系硬化剤としては、例えば、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトナートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムエチレート等が挙げられる。キレート系硬化剤は、1種類だけ用いることもできるし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0049】
粘着剤層12における第一硬化剤(b1)の含有量は、限定されないが、少なすぎると粘着剤層12の凝集力を高めにくくなるおそれがあり、多すぎると粘着剤層12の粘着力を高めにくくなるおそれがある。このため、粘着剤層12における第一硬化剤(b1)の含有量は、アクリル系ポリマー(A)100重量部(固形分量。以下同じ。)に対して0.005重量部(固形分量。以下同じ。)以上であることが好ましい。また、粘着剤層12における第一硬化剤(b1)の含有量は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して1.0重量部以下であることが好ましい。
【0050】
第一硬化剤(b1)としてエポキシ系硬化剤を採用する場合において、粘着剤層12におけるエポキシ系硬化剤の含有量は、限定されないが、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して0.005重量部(固形分量。以下同じ。)以上であることが好ましく、0.02重量部以上であることがより好ましく、0.025重量部以上であることがさらに好ましく、0.03重量部以上であることがよりさらに好ましい。また、粘着剤層12におけるエポキシ系硬化剤の含有量は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して0.2重量部以下であることが好ましく、0.15重量部以下であることがより好ましく、0.1重量部以下であることがさらに好ましく、0.08重量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0051】
第一硬化剤(b1)としてキレート系硬化剤を採用する場合において、粘着剤層12におけるキレート系硬化剤の含有量は、限定されないが、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して0.1重量部以上であることが好ましく、0.2重量部以上であることがより好ましく、0.3重量部以上であることがさらに好ましい。また、粘着剤層12におけるキレート系硬化剤の含有量は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して1.0重量部以下であることが好ましく、0.7重量部以下であることがより好ましく、0.5重量部以下であることがさらに好ましい。
【0052】
第二硬化剤(b2)としては、例えば、イソシアネート系硬化剤を採用することができる。イソシアネート系硬化剤は、分子内に2箇所以上のイソシアネート基を有するものであれば、その種類を限定されない。イソシアネート系硬化剤は、分子内に3箇所以上のイソシアネート基を有するものであることが好ましい。
【0053】
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネートと、ポリオール化合物(例えば、トリメチロールプロパン等)とのアダクト体を用いることができる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族トリイソシアネートや、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート系硬化剤は、1種類だけ用いることもできるし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。本実施形態においては、イソシアネート系硬化剤として、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体を採用している。
【0054】
粘着剤層12における第二硬化剤(b2)の含有量は、限定されないが、少なすぎると、粘着剤層12が基材11から剥がれやすくなる(基材密着性を高めにくくなる)おそれがあり、粘着テープ10の糊残りを防ぎにくくなるおそれがある。一方、第二硬化剤(b2)の含有量が多すぎると、粘着剤層12の粘着力を高めにくくなるおそれがある。このため、粘着剤層12における第二硬化剤(b2)の含有量は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して0.4重量部(固形分量。以下同じ。)以上であることが好ましく、0.6重量部以上であることがより好ましく、0.8重量部以上であることがさらに好ましい。また、粘着剤層12における第二硬化剤(b2)の含有量は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。
【0055】
3.3 その他
粘着剤層12は、アクリル系ポリマー(A)と、硬化剤(B)に加えて、他の成分も含むことができる。他の成分としては、例えば、粘着付与剤(C)、軟化剤、老化防止剤、充填剤等が挙げられる。粘着剤層12は、他の成分を1種類だけ含むこともできるし、2種類以上含むこともできる。
【0056】
粘着剤層12が粘着付与剤(C)を含む場合において、粘着付与剤(C)は、その種類を特に限定されない。粘着付与剤(C)の軟化点は、50°C~150°C程度であることが好ましく、70°C~140°C程度であることがより好ましく、80°C~130°C程度であることがさらに好ましい。粘着付与剤(C)としては、例えば、ロジン系粘着付与剤、ロジンエステル系粘着付与剤、水添ロジン系粘着付与剤、不均化ロジン系粘着付与剤、フェノール変性ロジン系粘着付与剤、テルペンフェノール系粘着付与剤、芳香族変性テルペン系粘着付与剤、炭素数5~9の石油系樹脂、スチレン系粘着付与樹脂等を用いることができる。粘着付与剤は、1種類だけ用いることも、2種類以上を用いることもできる。
【0057】
粘着剤層12が粘着付与剤(C)を含む場合において、粘着剤層12における粘着付与剤(C)の添加量は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して5重量部(固形分量。以下同じ。)以上であることが好ましく、15重量部以上であることがより好ましい。また、粘着剤層12における粘着付与剤(C)の添加量は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して40重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましい。
【0058】
粘着剤層12のゲル分率(実施例に記載の方法により測定したゲル分率。以下同じ。)は、限定されないが、低すぎると粘着剤層12の凝集力を高めにくくなるおそれがあり、高すぎると粘着剤層12のボールタックを高めにくくなるおそれがある。このため、粘着剤層12のゲル分率は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、58%以上であることがさらに好ましい。また、粘着剤層12のゲル分率は、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
4.製造方法
本実施形態の粘着テープ10は、粘着剤組成物調製工程と、基材表面処理工程と、粘着剤層形成工程とを経ることにより製造することができる。
【0060】
4.1 粘着剤組成物調製工程
粘着剤組成物調製工程は、アクリル系ポリマー(A)と、硬化剤(B)とを含む粘着剤組成物を調製する工程である。アクリル系ポリマー(A)としては、溶剤中に分散された溶剤型のものを用いることも、エマルジョン型のものを用いることもできるが、溶剤型のものを用いることが好ましい。硬化剤(B)は、通常、溶剤中に溶解されたものを使用する。
【0061】
本実施形態における粘着剤組成物調製工程では、溶剤型のアクリル系ポリマー(A)に対し、溶剤中に溶解された第一硬化剤(b1)と溶剤中に溶解された第二硬化剤(b2)とをそれぞれ所定量加えて均一になるまで混合することで粘着剤組成物を調製する。なお、粘着剤組成物に粘着付与剤(C)を加える場合には、まずアクリル系ポリマー(A)に粘着付与剤(C)を加えて均一になるまで混合してから、第一硬化剤(b1)及び第二硬化剤(b2)を加えることが好ましい。
【0062】
4.2 基材表面処理工程
基材表面処理工程は、基材11の表面処理を行う工程である。これにより、基材11表面に官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基等)を導入して、基材11と粘着剤層12との接着性(基材密着性)を高めやすくすることができる。基材11の一側だけに粘着剤層12を設ける場合には、基材11の一側だけを表面処理すれば足りる。基材11の両面に粘着剤層を設ける場合には、基材11の両面を表面処理することが好ましい。
【0063】
この基材表面処理工程は、基材11を形成する素材が、水酸基を実質的に含まない場合に行うことが好ましい。より具体的には、基材11を形成する素材がポリオレフィン系樹脂である場合に行うことが好ましい。換言すると、基材表面処理工程は、基材11が水酸基を有する素材(例えば、紙、天然繊維、水酸基含有合成樹脂等)で形成されている場合には、省略することができる。
【0064】
基材11の表面処理を行う方法としては、例えば、コロナ放電処理、低温プラズマ処理、電子線照射処理、UV照射処理、火炎処理等が挙げられる。本実施形態においては、コロナ放電処理を採用している。コロナ放電処理は、通常、酸素存在下で行われる。本実施形態においては、空気雰囲気下で行っている。コロナ放電処理時の放電量は、限定されないが、処理後の濡れ指数が36ダイン以上となるように行うことがより好ましい。
【0065】
4.3 粘着剤層形成工程
粘着剤層形成工程は、基材11の一側に、粘着剤組成物調製工程で調製された粘着剤組成物を塗工し乾燥させることによって、粘着剤層12を形成する工程である。粘着剤層形成工程は、粘着剤組成物が調製されてから10時間以内に行うことが好ましく、8時間以内に行うことがより好ましい。本実施形態においては、基材表面処理工程でコロナ放電処理を行った基材11の一側面に、粘着剤組成物を塗工し乾燥させるようにしている。
【0066】
粘着剤組成物の塗工方法は、特に限定されないが、コンマコーター、グラビアコーター、ダイコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、キスコーター等を用いて行うことができる。粘着剤組成物の塗工量は、限定されないが、乾燥養生後の粘着剤層12の厚みが、10μm以上となるようにすることが好ましく、20μm以上となるようにすることがより好ましい。また、粘着剤層12の厚みが、60μm以下となるようにすることが好ましく、40μm以下となるようにすることがより好ましい。本実施形態においては、乾燥養生後の粘着剤層12の厚みが、25~30μm程度となるように粘着剤組成物の塗工量を調節している。
【0067】
塗工後の粘着剤組成物の乾燥は、常温で行うこともできるが、50°C~100°C程度で行うことが好ましく、70°C~90°C程度で行うことがより好ましい。乾燥方法は、風乾、静置乾燥、減圧乾燥等を採用することができる。乾燥後の粘着剤組成物(粘着剤層12)は、通常、常温にて7日間程度養生される。
【0068】
5.用途
以上においては、粘着テープ10が再剥離用の養生テープである場合を例に挙げて説明したが、粘着テープ10は、その用途を限定されない。粘着テープ10は、例えば、再剥離テープ(例えば、養生テープやマスキングテープ等)や、フィルム粘着テープ(例えば、OPP粘着テープや、セロハンテープや、ポリエステルテープや、ポリエチレンテープ等)や、クラフト粘着テープ(例えば、紙ガムテープ等)や、布粘着テープ(例えば、布ガムテープ等)や、ビニールテープ等とすることができる。
【0069】
6.他の実施形態
図2は、他の実施形態の粘着シート20を模式的に示した断面図である。他の実施形態の粘着シート20は、基材21と、基材21の一側に積層された一側粘着剤層22と、一側粘着剤層22の一側に積層された一側剥離シート22aと、基材21の他側に積層された他側粘着剤層23と、他側粘着剤層23の他側に積層された他側剥離シート23aとを備えている。すなわち、図2に示す粘着シート20は、基材21の両面に粘着剤層22,23を備えた両面粘着シートとなっている。
【0070】
基材21としては、上述した基材11と同様の構成を採用することができる。また、一側粘着剤層22としては、上述した粘着剤層12と同様の構成を採用することができる。一方、他側粘着剤層23は、その具体的な構成を特に限定されない。他側粘着剤層23は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びシリコーン系粘着剤からなる群より選択される1又は2以上の粘着剤により形成されたものとすることができる。
【実施例0071】
[粘着テープの製造]
後掲の表1及び表2に記載の試験例1~24につき、以下の要領で粘着テープを製造した。
【0072】
(粘着剤組成物の調製)
表1及び表2に記載された配合に従って、アクリル系ポリマー(A)と硬化剤(B)とを混合し、均一になるまで30分程度、十分に攪拌することにより、粘着剤組成物を製造した。なお、アクリル系ポリマー(A)や硬化剤(B)は、通常、溶液中に溶解又は分散した状態で供給されるところ、表1及び表2に記載の分量は、いずれも溶液成分を除いた固形成分の分量である。
【0073】
表1及び表2に示した各成分の具体的内容は、以下の通りである。

<アクリル系ポリマー(A)のポリマー組成>
「ポリマーP1」 2EHA:AA=96:4
「ポリマーP2」 2EHA:AA=94:6
「ポリマーP3」 2EHA:AA=92:8
「ポリマーP4」 BA:AA=90:10
「ポリマーP5」 BA:2EHA:AA:2HEA=45:51.5:3:0.5

ただし、ポリマー組成中におけるモノマー略称は以下の通りである。
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
BA: アクリル酸ブチル
AA: アクリル酸
2HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル

<硬化剤(B)>
エポキシ系硬化剤: 綜研化学株式会社製 E-5XM
キレート系硬化剤: 綜研化学株式会社製 M-5A
イソシアネート系硬化剤: 綜研化学株式会社製 L-45K
【0074】
(粘着剤層の形成)
粘着テープの基材としては、ポリエチレンラミネートポリエステルクロスを採用した。まず、基材の一側面を、コロナ放電処理した。コロナ放電処理は、処理後の濡れ指数が40ダインとなるよう調整した。続いて、基材におけるコロナ放電処理をした面に、上記(粘着剤組成物の調製)で調整した粘着剤組成物を、乾燥後の粘着剤層の厚みが約25μmとなるようにコーティングした。粘着剤組成物をコーティングした基材を、80°C環境下で3分間静置することにより、粘着剤組成物に含まれる溶剤を除去し、粘着剤層を形成した。粘着剤層の一側(基材に接していない側)に、セパレーターフィルムを貼り合わせ、常温(20°C~25°C程度)で7日間養生した。養生後の粘着テープを、試験例1~24の試験用粘着テープとした。
【0075】
[評価]
(粘着力)
粘着力の評価は、JIS Z0237に準拠して行った。すなわち、まず、上記[粘着テープの製造]で得られた粘着テープを25mm幅に切断し、試験片とした。続いて、試験片からセパレーターフィルムを剥がし、露出した粘着剤層を、光輝熱処理を施したSUS板に貼り合わせて、2kgローラーで3往復圧着したのち、室温(23°C程度)で20分間静置した。静置後の試験片を、万能引張試験機を用いて、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件でSUS板から剥離し、剥離の際の抵抗力から粘着力を求めた。
【0076】
(ボールタック)
ボールタックの評価は、JIS Z0237に準拠して行った。すなわち、まず、上記[粘着テープの製造]で得られた粘着テープを100mm長さに切断し、試験片とした。続いて、試験片からセパレーターフィルムを剥がし、露出した粘着剤層が上側を向くように、傾斜角度30°の斜面上に試験片を置いた。試験片の手前100mmの位置から、No.2(2/32インチ)~No.32(32/32)インチの鋼球を順に転がした。このときの試験片上で停止した鋼球のうち、最も直径が大きい鋼球の番号をタック値とした。
【0077】
(ゲル分率)
まず、上記[粘着テープの製造]で得られた粘着テープを約20mm角に切断し、試験片とした。続いて、試験片からセパレーターフィルムを剥がし、基材と粘着剤層の合計重量(G)を測定した。重量測定後の試験片を酢酸エチルに浸漬し、室温(23°C程度)で2時間静置した。試験片を酢酸エチルから取り出して乾燥させ、乾燥後の試験片(基材と、基材に残留している粘着剤層)の重量(G)を測定した。最後に、試験片に残っている粘着剤層をアセトンに含浸させて全部掻き落とし、残った基材の重量(G)を測定した。得られた重量値G、G及びGから、下記の式(1)によってゲル分率を算出した。

ゲル分率[%]=(G-G)/(G-G)×100 ・・・(1)
【0078】
(基材側粘着剤残存率)
まず、上記[粘着テープの製造]で得られた粘着テープを、50mm×100mmの大きさに切断し、試験片とした。続いて、試験片からセパレーターフィルムを剥がし、基材と粘着剤層の合計重量(W)を測定した。軟質塩化ビニル樹脂を主体とするデスクマット(プラス株式会社製デスクマット(塩ビ)エコノミータイプ薄手1.2mm厚シングルタイプ。無色透明であり、表面に光沢を有する。移行防止処理なし。)の表面をイソプロピルアルコールで拭き汚れを除去した状態で、重量測定後の試験片の粘着剤層を貼り合わせ、2kgローラーで3往復圧着したのち、温度約23°C、湿度約50%の条件下で10分間静置した。静置後の試験片を、剥離角度約180°、剥離速度300mm/分の条件でデスクマットから剥離し、剥離後の試験片(基材と、基材に残存している粘着剤層)の重量(W)を測定した。最後に、試験片に残っている粘着剤層をアセトンに含浸させて略全部掻き落とし、残った基材の重量(W)を測定した。得られた重量値W、W及びWから、下記の式(2)によって基材側粘着剤残存率を算出した。

基材側粘着剤残存率[%]=(W-W)/(W-W)×100 ・・・(2)

[結果]
評価結果を表1及び表2に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1に示される試験例1~12の粘着テープでは、基材側粘着剤残存率が98~100%となっており、軟質塩化ビニル樹脂を主体とするデスクマットに対してもほとんど糊残りしないという結果が得られた。これに対し、表2に示される試験例13~16、18~24の粘着テープでは、基材側粘着剤残存率が85%以下であった。
【符号の説明】
【0082】
10 粘着テープ
11 基材
12 粘着剤層
20 粘着シート
21 基材
22 一側粘着剤層
22a 一側剥離シート
23 他側粘着剤層
23a 他側剥離シート
R テープロール
図1
図2