(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098186
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】樹脂フィルム及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B65D85/50 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001474
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】松岡 みなも
【テーマコード(参考)】
3E035
【Fターム(参考)】
3E035AA11
3E035BA08
3E035BB02
3E035BC02
3E035BD01
3E035CA06
(57)【要約】
【課題】常温下での根菜類の保管中に、根菜類の表面での黒色斑点の発生を抑制できる包装袋と、前記包装袋を構成するための樹脂フィルムと、の提供。
【解決手段】根菜類を包装し、保管したときに、前記根菜類の表面において、黒色斑点の発生を抑制するための樹脂フィルム1であって、樹脂フィルム1は、平均直径が8000μm以下の貫通孔12を、1~40個/m
2の数で有し、90%RHの雰囲気下における樹脂フィルム1の水蒸気透過量が50g/m
2・day以上である、樹脂フィルム1。樹脂フィルム1を用いて構成された包装袋101。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムであって、
前記樹脂フィルムは、根菜類を包装し、保管したときに、前記根菜類の表面において、黒色斑点の発生を抑制するためのものであり、
前記樹脂フィルムは、平均直径が8000μm以下の貫通孔を、1~40個/m2の数で有し、
90%RHの雰囲気下における前記樹脂フィルムの水蒸気透過量が50g/m2・day以上である、樹脂フィルム。
【請求項2】
前記根菜類がダイコンである、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂フィルムを用いて構成された包装袋。
【請求項4】
大気下において、前記包装袋の収納部に前記根菜類を収納し、次いで、前記包装袋の開口部を閉塞することにより閉塞済み包装袋を作製し、前記閉塞済み包装袋を常温下で24時間保管したとき、前記閉塞済み包装袋の収納部内のガスにおいて、酸素ガスの濃度が5体積%以下となり、二酸化炭素ガスの濃度が15体積%以上となる、請求項3に記載の包装袋。
【請求項5】
前記包装袋の開口部を閉塞したときに、前記包装袋の容量が30L以下となる、請求項3に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱処理が行われていない青果物等の食品を収納して保存する場合には、食品の鮮度を落とさず、新鮮な状態を維持できることが、包装袋には求められる。
青果物を包装袋に収納して保存する場合には、青果物が保管中にも継続して呼吸を行うことに起因して、包装袋中の酸素ガスと二酸化炭素ガスの濃度が変化するという問題点がある。青果物は、包装袋中では、酸素ガス濃度が高いと呼吸が盛んになり、消耗することが知られている。そこで、このような不具合を抑制するために、包装袋と包装方法が種々検討されている。
【0003】
例えば、野菜等の植物資材用の包装袋として、包装袋を構成するフィルムの材質に固有の、特定範囲の水蒸気透過率を有し、さらに、このフィルムが有する孔によって、特定範囲の酸素透過率を有する包装袋が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、青果物の中でも、特にダイコン等の根菜類の場合、その保管中に、表面に黒色斑点が発生することがある。これは、常温下での保管で特に顕著である。
図1は、表面に黒色斑点が発生しているダイコンの撮像データである。このような黒色斑点は、ダイコンの保管中に徐々にその数が増大することが知られている。これは、外部環境に晒されているダイコンの表面において、何らかの劣化が生じたときに、ダイコンの組織がその機能を停止することが原因であると推測される。ただし、黒色斑点が発生するのは表面(表層部位)だけなので、表面(表層部位)よりも深い部位の品質には問題がなく、この表面を取り除けば、ダイコンを食用に供するのに問題はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、常温下での保管中に、このような黒色斑点の発生を抑制する手段は、これまでに開示されていない。常温下で保管中の根菜類において、黒色斑点の発生を抑制できれば、食材の廃棄量を低減でき、その意義は大きい。
【0007】
本発明は、常温下での根菜類の保管中に、根菜類の表面での黒色斑点の発生を抑制できる包装袋と、前記包装袋を構成するための樹脂フィルムと、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 樹脂フィルムであって、前記樹脂フィルムは、根菜類を包装し、保管したときに、前記根菜類の表面において、黒色斑点の発生を抑制するためのものであり、前記樹脂フィルムは、平均直径が8000μm以下の貫通孔を、1~40個/m2の数で有し、90%RHの雰囲気下における前記樹脂フィルムの水蒸気透過量が50g/m2・day以上である、樹脂フィルム。
[2] 前記根菜類がダイコンである、[1]に記載の樹脂フィルム。
[3] [1]又は[2]に記載の樹脂フィルムを用いて構成された包装袋。
【0009】
[4] 大気下において、前記包装袋の収納部に前記根菜類を収納し、次いで、前記包装袋の開口部を閉塞することにより閉塞済み包装袋を作製し、前記閉塞済み包装袋を常温下で24時間保管したとき、前記閉塞済み包装袋の収納部内のガスにおいて、酸素ガスの濃度が5体積%以下となり、二酸化炭素ガスの濃度が15体積%以上となる、[3]に記載の包装袋。
[5] 前記包装袋の開口部を閉塞したときに、前記包装袋の容量が30L以下となる、[3]又は[4]に記載の包装袋。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、常温下での根菜類の保管中に、根菜類の表面での黒色斑点の発生を抑制できる包装袋と、前記包装袋を構成するための樹脂フィルムと、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】表面に黒色斑点が発生しているダイコンの撮像データである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る包装袋の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る包装袋の他の例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る包装袋を用いて根菜類を包装した状態の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る包装袋を用いて根菜類を包装した状態の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る包装袋を用いて根菜類を包装した状態の他の例を模式的に示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る包装袋を用いて根菜類を包装した状態の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図8】実施例1及び比較例1において、包装袋の黒色斑点の発生を抑制する効果を評価するときの、評価基準を示す概略図である。
【
図9】実施例1及び比較例1における、包装袋の黒色斑点の発生を抑制する効果の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<樹脂フィルム>>
本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムは、根菜類を包装し、保管したときに、前記根菜類の表面において、黒色斑点の発生を抑制するためのものであり、前記樹脂フィルムは、平均直径が8000μm以下の貫通孔を、1~40個/m2の数で有し、90%RHの雰囲気下における前記樹脂フィルムの水蒸気透過量が50g/m2・day以上である。
本実施形態の樹脂フィルムを用いて構成された包装袋によって、根菜類を包装することで、常温下での根菜類の保管中に、根菜類の表面での黒色斑点の発生を抑制できる。
【0013】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0014】
前記根菜類としては、例えば、ダイコン、ニンジン、サトイモ、ゴボウ等が挙げられる。
なかでも、前記黒色斑点の発生を抑制する効果がより高い点では、前記根菜類はダイコンであることが好ましい。
【0015】
前記樹脂フィルムが含む樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のエチレン系共重合体(エチレンから誘導された構成単位と、それ以外の構成単位と、を有する共重合体);ポリ塩化ビニル等のポリビニル系樹脂(ビニル基(エテニル基)を有するモノマーから誘導された構成単位を有する樹脂);ポリカーボネート等が挙げられる。
【0016】
前記樹脂フィルムが含む樹脂のうち、前記ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセンLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
【0017】
本明細書において、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.910g/cm3以上、0.945g/cm3未満である。
中密度ポリエチレンの密度は、0.945g/cm3以上、0.955g/cm3未満である。
高密度ポリエチレンの密度は、0.955g/cm3以上である。
【0018】
前記樹脂フィルムが含む樹脂のうち、前記ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン(hPP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体(別名:ポリプロピレンランダムコポリマー、本明細書においては、「rPP」と称することがある)、プロピレン-エチレンブロック共重合体(別名:ポリプロピレンブロックコポリマー、本明細書においては、「bPP」と称することがある)等が挙げられる。
【0019】
前記樹脂フィルムが含む前記樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0020】
前記樹脂フィルムは、前記樹脂以外に、他の成分を含んでいてもよい。すなわち、前記樹脂フィルムは、前記樹脂と、前記他の成分と、を含んで構成されていてもよい。
【0021】
前記樹脂フィルムが含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0022】
前記他の成分は、非樹脂成分であれば特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤等が挙げられる。
【0023】
前記添加剤としては、例えば、防曇剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0024】
前記樹脂フィルムにおいて、前記樹脂フィルムの総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合([樹脂フィルムの他の成分の含有量(質量部)]/[樹脂フィルムの総質量(質量部)]×100)は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、例えば、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。前記他の成分の含有量の割合が前記上限値以下であることで、樹脂フィルムが前記樹脂を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。
一方、前記他の成分の含有量の割合は、0質量%以上である。
【0025】
換言すると、前記樹脂フィルムにおいて、前記樹脂フィルムの総質量(質量部)に対する、前記樹脂の含有量(質量部)の割合([樹脂フィルムの樹脂の含有量(質量部)]/[樹脂フィルムの総質量(質量部)]×100)は、80量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。
一方、前記樹脂の含有量の割合は、100質量%以下である。
前記樹脂の含有量の割合は、通常、後述する樹脂フィルム形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、樹脂の含有量(質量部)の割合([樹脂フィルム形成用組成物の樹脂の含有量(質量部)]/[樹脂フィルム形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)と同じである。
【0026】
前記樹脂フィルムにおいて、前記樹脂の含有量(質量部)に対する、前記ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニル系樹脂及びポリカーボネートの合計含有量(質量部)の割合([樹脂フィルムのポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニル系樹脂及びポリカーボネートの合計含有量(質量部)]/[樹脂フィルムの樹脂の含有量(質量部)]×100)は、80量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記合計含有量の割合が前記下限値以上であることで、樹脂フィルムを用いて製造された包装袋によって、根菜類を包装し、保管したときに、根菜類の表面での黒色斑点の発生を抑制する効果が、より高くなる。
一方、前記合計含有量の割合は、100質量%以下である。
前記合計含有量の割合は、通常、後述する樹脂フィルム形成用組成物における、樹脂の含有量(質量部)に対する、前記ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニル系樹脂及びポリカーボネートの合計含有量(質量部)の割合([樹脂フィルム形成用組成物のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニル系樹脂及びポリカーボネートの合計含有量(質量部)]/[樹脂フィルム形成用組成物の樹脂の含有量(質量部)]×100)と同じである。
ここで、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニル系樹脂及びポリカーボネートのうち、樹脂フィルム及び樹脂フィルム形成用組成物が含有していない樹脂については、樹脂フィルム及び樹脂フィルム形成用組成物の、その樹脂の含有量は、0質量部である。
【0027】
前記樹脂フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記樹脂フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0028】
本明細書においては、前記樹脂フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0029】
前記樹脂フィルムが複数層からなる場合には、そのうちの一方の最表層は、シーラント層であってもよい。前記、シーラント層は公知のものであってよい。
【0030】
前記樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、15~40μmであることが好ましく、20~30μmであることがより好ましい。
ここで、「樹脂フィルムの厚さ」とは、樹脂フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる樹脂フィルムの厚さとは、樹脂フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0031】
前記樹脂フィルムは、平均直径(平均径)が8000μm以下の貫通孔を有する。
樹脂フィルムの表面における前記貫通孔の開口部の形状、及び前記貫通孔の、その長手方向に対して垂直な断面における開口部の形状は、特に限定されず、例えば、円形状;楕円形状;三角形状、四角形状等の多角形状;円形、楕円形及び多角形からなる群より選択される2種以上の形が組み合わされた形状等、いずれであってもよい。ただし、貫通孔の形成が容易である点から、前記形状は、円形状であることが好ましい。
なお、本明細書において、「貫通孔の開口部」とは、特に断りのない限り、上述の樹脂フィルムの表面における貫通孔の開口部と、貫通孔の、その長手方向に対して垂直な断面における開口部と、の両方を意味するものとする。
【0032】
貫通孔の前記開口部の形状が、円形状以外である場合、貫通孔の直径は、前記開口部の異なる2点間を結ぶ線分の長さのうち、最大の長さ(最大径)を意味するものとする。
【0033】
前記貫通孔の平均直径は、50~8000μmであることが好ましく、60~4500μmであることがより好ましく、70~1000μmであることが特に好ましく、例えば、70~700μm、及び70~300μmのいずれかであってもよい。貫通孔の平均直径がこのような範囲であることで、前記樹脂フィルムを用いて製造された包装袋の収納部内に包装対象物(例えば、前記根菜類)を収納し、保管したときに、前記収納部内での酸素ガス、二酸化炭素ガス及び水蒸気の濃度を、より適した範囲にバランスよく調節できる。さらに、貫通孔の平均直径が前記下限値以上であることで、樹脂フィルムの製造がより容易となる。
【0034】
前記樹脂フィルムが有する前記貫通孔の数(樹脂フィルムの単位面積あたりの貫通孔の数)は、1~40個/m2であり、2~30個/m2であることが好ましく、3~20個/m2であることがより好ましく、4~10個/m2であることが特に好ましい。貫通孔の数がこのような範囲であることで、前記樹脂フィルムを用いて製造された包装袋の収納部内に包装対象物(例えば、前記根菜類)を収納し、保管したときに、前記収納部内での酸素ガス、二酸化炭素ガス及び水蒸気の濃度を、より適した範囲にバランスよく調節できる。
【0035】
前記樹脂フィルムが有する前記貫通孔の数、すなわち、樹脂フィルムの単位面積(1m2)あたりの貫通孔の数は、樹脂フィルムの面積と、樹脂フィルム1枚あたりの貫通孔の数と、のいずれか一方又は両方を調節することで、調節できる。
【0036】
前記樹脂フィルムにおける貫通孔の位置は、特に限定されないが、後述する包装袋の製造時における加熱シール部位と、切断部位と、熱溶着部位と、のいずれにも該当しない他の領域であることが好ましい。このようにすることで、樹脂フィルムにおける貫通孔を、包装袋においてもすべて有効に機能させることができる。
【0037】
前記樹脂フィルムの、90%RH(相対湿度90%)の雰囲気下における水蒸気透過量は、50g/m2・day以上であり、70g/m2・day以上であることが好ましく、80g/m2・day以上であることがより好ましく、100g/m2・day以上であることが特に好ましい。樹脂フィルムの前記水蒸気透過量が前記下限値以上であることで、樹脂フィルムを用いて製造された包装袋によって、包装対象物(例えば、前記根菜類)を、その鮮度を落とさず、新鮮な状態を維持したまま保管できる十分な効果が得られる。
【0038】
前記樹脂フィルムの、90%RH(相対湿度90%)の雰囲気下における水蒸気透過量の上限値は、特に限定されない。
例えば、樹脂フィルムを用いて製造された包装袋の収納部内に包装対象物(例えば、前記根菜類)を収納し、保管したときに、包装対象物の乾燥及び萎れの抑制効果が高くなる点では、前記水蒸気透過量は、400g/m2・day以下であることが好ましい。
一実施形態において、前記樹脂フィルムの前記水蒸気透過量は、例えば、50~400g/m2・day、70~400g/m2・day、80~400g/m2・day、及び100~400g/m2・dayのいずれかであってもよい。ただし、これらは前記水蒸気透過量の一例である。
【0039】
前記樹脂フィルムの前記水蒸気透過量は、40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量であることが好ましい。
【0040】
前記樹脂フィルムの前記水蒸気透過量は、例えば、前記貫通孔の大きさ若しくは数、又は前記樹脂フィルムを構成する各層の含有成分の種類若しくは厚さ等を調節することにより、調節できる。
【0041】
前記樹脂フィルムの前記水蒸気透過量は、JIS K 7129Bに準拠して、測定できる。
【0042】
<<樹脂フィルムの製造方法>>
前記樹脂フィルムは、これを構成するための成分を含む樹脂フィルム形成用組成物を用いて、公知の方法で製造できる。
前記樹脂フィルム形成用組成物は、樹脂フィルムが目的とする成分を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、樹脂フィルム形成用組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、樹脂フィルム中の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0043】
樹脂フィルム形成用組成物としては、例えば、前記樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、必要に応じて溶媒と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0044】
前記溶媒を用いることで、樹脂フィルム形成用組成物の取り扱い性の向上が可能な場合がある。
本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、対象成分を溶解させるものだけでなく、対象成分を分散させる分散媒も含む概念とする。
前記溶媒としては、例えば、有機溶媒、水等が挙げられる。
【0045】
樹脂フィルム形成用組成物が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
樹脂フィルム形成用組成物の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0046】
前記樹脂フィルムは、例えば、押出機を用いて、樹脂フィルム形成用組成物を溶融押出し、成形することで、前記貫通孔を有しない未加工樹脂フィルムを作製し、前記未加工樹脂フィルムに対して、前記貫通孔を形成することで製造できる。
1層(単層)からなる樹脂フィルムを製造する場合には、上記方法によって、1層からなる未加工樹脂フィルムを作製すればよく、複数層からなる前記樹脂フィルムを製造する場合には、例えば、数台の押出機を用いて、各層を形成するためのそれぞれの樹脂フィルム形成用組成物を共押出し、成形することで、複数層からなる未加工樹脂フィルムを作製すればよい。
【0047】
複数層からなる未加工樹脂フィルムは、例えば、そのうちのいずれか2層以上を構成するための2枚以上のフィルムをあらかじめ別々に作製又は用意しておき、接着剤を用いずに、サーマル(熱)ラミネート法等によって、これら2枚以上のフィルムを貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、作製できる。
【0048】
複数層からなる未加工樹脂フィルムは、例えば、そのうちのいずれか1層又は2層以上となるフィルムをあらかじめ作製又は用意しておき、未加工樹脂フィルム中のそれ以外の層を構成するための樹脂フィルム形成用組成物を、このフィルム上に塗工し、乾燥させることによって、2層又は3層以上の積層構造を形成し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、作製できる。
【0049】
1層(単層)又は複数層からなる未加工樹脂フィルムは、例えば、樹脂フィルム形成用組成物を用いて、インフレーション法により、チューブ状のものとして、作製することもできる。
【0050】
前記未加工樹脂フィルムに前記貫通孔を形成する方法としては、例えば、未加工樹脂フィルムに対して、針を突き刺す方法、レーザーを照射する方法等、公知の方法が挙げられる。
【0051】
<<包装袋>>
本発明の一実施形態に係る包装袋は、上述の本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムを用いて構成されている。
本実施形態の包装袋が前記樹脂フィルムを用いて構成されていることにより、本実施形態の包装袋を用いて、根菜類を包装し、保管したときに、常温下で保管中の根菜類の表面での黒色斑点の発生を抑制できる。
【0052】
図2は、本実施形態の包装袋の一例を示す模式的に示す斜視図である。
ここに示す包装袋101は、上述の本発明の一実施形態に係る樹脂フィルム1を用いて構成されている。なお、
図2においては、樹脂フィルム1が有する貫通孔の図示を省略している。
【0053】
包装袋101の全体の形状は薄型の袋状であり、包装袋101が有する開口部10の開口面積が狭くなっている。
包装袋101の2つの主面の平面形状は、矩形である。包装袋101中の第1辺101aと、これに対向する第2辺101bと、第1辺101a及び第2辺101bを繋ぐ第3辺101cと、のうち、少なくとも1辺は、加熱シールにより形成されている。そして、第1辺101aと、第2辺101bと、第3辺101cと、のうち、加熱シールにより形成されていないものは、樹脂フィルム1の折り畳みにより形成されている。
【0054】
包装対象物(例えば、根菜類)は、包装袋101の開口部10から収納部11に収納し、開口部10を閉塞することで、包装できる。
【0055】
本明細書においては、包装袋101の場合に限らず、開口部の閉塞とは、包装袋の収納部に対する物品の出し入れを阻害可能な程度に、開口部を塞ぐ操作を意味し、例えば、開口部の全領域をシールすることによって、収納部内の物品を密封する操作と、開口部の全領域又は一部の領域をシールすることなく、物品の通過を阻害する程度に、開口部の開口面積を狭める操作と、を含む。開口部の開口面積を狭める操作は、開口部を捩じる操作を含む。開口部の開口面積を狭める操作を行ったときには、この開口面積が狭められている状態を維持するための結束具等の治具を、この閉塞部に装着してもよい。
【0056】
図3は、本実施形態の包装袋の他の例を模式的に示す斜視図である。
なお、
図3以降の図においては、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここに示す包装袋102も、上述の本発明の一実施形態に係る樹脂フィルム1を用いて構成されている。
図3においても、樹脂フィルム1が有する貫通孔の図示を省略している。
【0057】
包装袋102の全体の形状は、幅が広い袋状であり、包装袋102が有する開口部20の開口面積が広くなっている。さらに、包装袋102は、底部102aを有する。
【0058】
包装対象物(例えば、根菜類)は、包装袋102の開口部20から収納部21に収納し、開口部20を閉塞することで、包装できる。
【0059】
本実施形態の包装袋の形状は、袋状であれば、
図2~
図3に示すものに限定されない。
例えば、
図2に示す包装袋101は、閉じられた状態では、その平面形状が矩形であり、
図3に示す包装袋102の全体形状はかご状であるが、本実施形態の包装袋は、有底筒状(一方の端部に底部が設けられ、閉塞されている筒状)等の他の形状であってもよいし、これらのように、明確に定義可能な形状を有していなくてもよい。
【0060】
図4は、本実施形態の包装袋を用いて根菜類を包装した状態の一例を模式的に示す斜視図であり、
図5は断面図である。
【0061】
ここに示す包装袋101は、先の説明のとおり、樹脂フィルム1を用いて構成されており、包装袋101の収納部11内には、10本の根菜類9が収納されている。
より具体的には、収納部11内において、5本の根菜類9が、これらの長さ方向と向きをすべて一致させ、1列に整列して配置されている。さらに、これら1列(5本)の根菜類9の上には、5本の根菜類9が同様に、これらの長さ方向と向きをすべて一致させ、1列に整列して、5本の根菜類9に重ねられて配置されている。すなわち、包装袋101の収納部11内には、1列あたり5本の根菜類9が2列重ねられ、10本の全ての根菜類の長さ方向と向きが揃えられて、配置されている。
【0062】
図5は、根菜類の長さ方向に対して垂直な方向における、根菜類を包装した状態の包装袋の断面図である。
図5に示すように、樹脂フィルム1においては、その一方の面(収納部11側とは反対側の面)1aから、他方の面(収納部11側の面)1bにまで到達し、樹脂フィルム1の厚さ方向において貫通している貫通孔12が、複数個設けられている。なお、
図4中の樹脂フィルム1においては、貫通孔の図示を省略している。
【0063】
包装袋101は、根菜類9の収納後、その開口部10が捩じられ、さらに結束具8を用いてこの状態が維持されており、包装袋101の開口部10は閉塞され、閉塞済み開口部10’となっている。
包装袋101を、その上方で、かつ根菜類9の全長を見渡せる位置から見下ろしたとき、閉塞済み開口部10’(開口部10)は、根菜類9とは重ならない位置(より具体的には、根菜類9の一方の端部から、根菜類9側とは反対側に離れた位置)に配置されている。
【0064】
結束具8はリング状であるが、本実施形態において結束具は、このような開口部10の閉塞を維持できる治具であれば、その形状と閉塞(結束)方法は、特に限定されない。
例えば、本実施形態においては、結束具として結束バンドを用い、結束バンドで包装袋101の開口部10を縛ることによって、開口部10を閉塞してもよいし、結束具として紐を用い、紐で包装袋101の開口部10を縛ることによって、開口部10を閉塞してもよいし、結束具として輪ゴムを用い、輪ゴムによって包装袋101の開口部10を引き絞ることによって、開口部10を閉塞してもよい。ただし、これらは、結束具による開口部の閉塞方法の一例である。また、本実施形態においては、結束具を用いずに、包装袋101のうち、開口部10よりも収納部11側の部位を縛ることによって、開口部10を閉塞してもよい。
【0065】
図6は、本実施形態の包装袋を用いて根菜類を包装した状態の他の例を模式的に示す斜視図であり、
図7は断面図である。
【0066】
ここに示す包装袋102は、先の説明のとおり、樹脂フィルム1を用いて構成されており、包装袋102の収納部21内には、10本の根菜類9が収納されている。
包装袋102の収納部21内での10本の根菜類9の収納の態様は、包装袋101の収納部11内での10本の根菜類9の収納の態様と同様であり、包装袋102の収納部21内には、1列あたり5本の根菜類9が2列重ねられ、10本の全ての根菜類の長さ方向と向きが揃えられて、配置されている。
【0067】
図7は、
図5と同様に、根菜類の長さ方向に対して垂直な方向における、根菜類を包装した状態の包装袋の断面図である。
図7に示すように、樹脂フィルム1においては、
図5に示す場合と同様に、貫通孔12が複数個設けられている。なお、
図6中の樹脂フィルム1においては、貫通孔の図示を省略している。
【0068】
包装袋102は、根菜類9の収納後、その開口部20が捩じられ、さらに結束具8を用いてこの状態が維持されており、包装袋102の開口部20は閉塞され、閉塞済み開口部20’となっている。
包装袋102を、その上方で、かつ根菜類9の全長を見渡せる位置から見下ろしたとき、閉塞済み開口部20’(開口部20)は、根菜類9と重なる位置に配置されている。
【0069】
包装袋102の開口部20は、結束具の使用の有無を含めて、包装袋101の開口部10の場合と同じ方法で閉塞できる。
【0070】
本実施形態の包装袋における、根菜類の包装の態様は、
図4~
図7に示すものに限定されない。
例えば、
図4~
図7においては、1枚の包装袋に10本の根菜類を収納しているが、1枚の包装袋に収納する根菜類の数は、包装袋の大きさ、根菜類の種類等に応じて、適宜調節できる。
例えば、
図4~
図7においては、包装袋の収納部内で、根菜類を2列に配置しているが、2列以外の列数で配置してもよい。また、
図4~
図7においては、根菜類の長さ方向と向きをすべて一致させているが、一部の根菜類の長さ方向と向きを異なるものとしてもよいし、すべての根菜類の長さ方向を一致させ、かつ一部の根菜類の向きを他の根菜類の向きとは逆にしてもよい。
例えば、
図4~
図7においては、複数本の根菜類を、これらの長さ方向を一致させて配置しているが、複数の根菜類の配置は、根菜類の形状に応じて任意に調節でき、特に限定されない。根菜類において長さ方向を明りょうに規定できない場合には、根菜類の配置を規定しなくてもよい。
【0071】
包装袋の収納部を形成している領域における、前記貫通孔の数(収納部形成領域の単位面積あたりの貫通孔の数)は、1~40個/m2であることが好ましく、2~30個/m2であることがより好ましく、3~20個/m2であることがさらに好ましく、4~10個/m2であることが特に好ましい。収納部形成領域における貫通孔の数がこのような範囲であることで、収納部内での酸素ガス、二酸化炭素ガス及び水蒸気の濃度を、より適した範囲にバランスよく調節できる。そして、根菜類の常温下での保管中に、根菜類の表面での黒色斑点の発生を抑制する効果が、より高くなる。
【0072】
包装袋の開口部(例えば、
図2に示す開口部10、
図3に示す開口部20)を閉塞したときに、包装袋の容量(例えば、
図2に示す開口部10を閉塞済み開口部10’としたときの収納部11の容量、
図3に示す開口部20を閉塞済み開口部20’としたときの収納部21の容量)は、1L以上となることが好ましく、例えば、5L以上、10L以上、及び15L以上のいずれかとなってもよい。このようにすることで、根菜類の常温下での保管中に、根菜類の表面での黒色斑点の発生を抑制する効果が、より高くなる。
なお、本明細書において、包装袋の容量とは、特に断りのない限り、包装袋の開口部を閉塞したときの、収納部内には収納物(包装対象物)が存在しないと仮定したときの収納部の容量を意味する。
【0073】
一方、包装袋の開口部を閉塞したときに、上述の包装袋の容量は、特に限定されない。例えば、根菜類を収納した包装袋の取り扱い性がより高くなる点では、包装袋の開口部を閉塞したときに、上述の包装袋の容量は、30L以下となることが好ましい。
一実施形態において、包装袋の開口部を閉塞したときに、上述の包装袋の容量は、例えば、1~30L、5~30L、10~30L、及び15~30Lのいずれかであってもよい。ただし、これらは上述の包装袋101の容量の一例である。
【0074】
なかでも、このような容量の包装袋は、収納する根菜類の総質量が、5~30kgである場合に好ましく、7~15kgである場合により好ましい。このような条件を満たす場合、根菜類の常温下での保管中に、根菜類の表面での黒色斑点の発生を抑制する効果が、特に高くなる。
【0075】
大気下において、本実施形態の包装袋の収納部に根菜類を収納し、次いで、前記包装袋の開口部を閉塞することにより閉塞済み包装袋を作製し、前記閉塞済み包装袋を常温下で24時間保管したとき、前記閉塞済み包装袋の収納部内のガスにおいて、酸素ガスの濃度は5体積%以下となり、二酸化炭素ガスの濃度は15体積%以上となることが好ましい。包装された根菜類が、このように、酸素ガスの濃度が低水準で、二酸化炭素ガスの濃度が高水準である環境下で保管されることにより、常温下で保管中の根菜類の表面において、黒色斑点の発生が抑制される効果がより高くなる。これは、保管中の根菜類の呼吸がより適切な範囲で低水準に抑制されて、根菜類の代謝がより適切な範囲で抑制されるからであると推測される。
【0076】
一方、上述のように、閉塞済み包装袋を常温下で24時間保管したとき、前記閉塞済み包装袋の収納部内のガスにおいて、酸素ガスの濃度は1体積%以上となり、二酸化炭素ガスの濃度が25体積%以下となることが好ましい。酸素ガスの濃度が前記下限値以上となり、二酸化炭素ガスの濃度が前記上限値以下となることで、常温下で保管中の根菜類の表面において、黒色斑点の発生が抑制される効果と、根菜類を、その鮮度を落とさず、新鮮な状態を維持したまま保管できる効果と、がともに高くなる。
【0077】
上述のように、閉塞済み包装袋を常温下で24時間保管したとき、閉塞済み包装袋の収納部内のガスにおいて、酸素ガスの濃度が5体積%以下となり、二酸化炭素ガスの濃度が15体積%以上となったときには、このような酸素ガス及び二酸化炭素ガスの濃度は、保管開始から24時間以降も維持される。例えば、5体積%以下という酸素ガスの濃度と、15体積%以上という二酸化炭素ガスの濃度は、閉塞済み包装袋の保管開始から120時間後まで、維持可能である。
【0078】
上述のように、閉塞済み包装袋を常温下で24時間保管したときの、閉塞済み包装袋の収納部内のガスにおける、酸素ガスの濃度と二酸化炭素ガスの濃度は、例えば、前記樹脂フィルムにおける、前記貫通孔の設け方、前記樹脂フィルムの主要成分の種類及び含有量等を調節することで、調節できる。
【0079】
閉塞済み包装袋は、さらに、段ボール箱、樹脂製箱等の、公知の保管箱に詰め、ただし、閉塞済み包装袋を詰めた後の保管箱は封止せずに、保管することが好ましい。このようにすることで、常温下で保管中の根菜類の表面において、黒色斑点の発生が抑制される効果に加え、保管中の根菜類の破損を抑制する効果が得られる。
【0080】
<<包装袋の製造方法>>
前記包装袋は、公知の方法で製造できる。
例えば、1枚の前記樹脂フィルムを用い、目的とする箇所を折り畳んだ後、前記開口部及び収納部を形成するように、対向する周縁部同士を加熱シールすることによって、包装袋を製造できる。
例えば、2枚の前記樹脂フィルムを用い、前記開口部及び収納部を形成するように、対向する周縁部同士を加熱シールすることによっても、包装袋を製造できる。
このような製造方法は、例えば、
図2に示す包装袋の製造方法として好適である。
【0081】
例えば、インフレーション法により、チューブ状の前記未加工樹脂フィルムを作製した後、前記未加工樹脂フィルムに前記貫通孔を形成することで、チューブ状の前記樹脂フィルムを製造し、このチューブ状の前記樹脂フィルムを目的とする長さに切断するとともに、切断部位を熱溶着させることでも、包装袋を製造できる。
例えば、インフレーション法により、チューブ状の前記未加工樹脂フィルムを作製した後、このチューブ状の前記未加工樹脂フィルムを目的とする長さに切断するとともに、切断部位を熱溶着させ、この切断及び熱溶着後の前記未加工樹脂フィルムに前記貫通孔を形成することでも、包装袋を製造できる。
このような製造方法は、例えば、
図3に示す包装袋の製造方法として好適である。
【0082】
<<包装対象物の包装方法>>
前記根菜類等の包装対象物は、公知の方法で包装できる。
例えば、上記のとおり、包装対象物(例えば、根菜類)は、包装袋の開口部から収納部に収納し、開口部を閉塞することで、包装できる。
開口部の閉塞方法は、先に説明したとおりである。
【0083】
包装袋の収納部への包装対象物の収納と、包装袋の開口部の閉塞は、いずれも大気下において行うことが好ましい。このようにすることで、閉塞済み包装袋を常温下で24時間保管したときと、さらにそれ以降引き続き保管したときに、閉塞済み包装袋の収納部内のガスにおいて、酸素ガスの濃度を5体積%以下とし、二酸化炭素ガスの濃度を15体積%以上とすることが、より容易となる。
【0084】
閉塞済み包装袋は、その製造原料である前記樹脂フィルム、包装袋の開口部の閉塞方法等を調節することで、閉塞済み包装袋を常温下で24時間以上保管したとき、好ましくは、24時間以降引き続き保管したときに、閉塞済み包装袋の収納部内のガスにおいて、酸素ガスの濃度を5体積%以下とし、二酸化炭素ガスの濃度を15体積%以上とすることが好ましい。このように根菜類を保管することにより、常温下で保管中の根菜類の表面での黒色斑点の発生を抑制する効果が、より高くなる。
【実施例0085】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
<<包装袋の製造>>
樹脂フィルムとして、ポリアミド層(厚さ27μm)及びエチレン-ビニルアルコール共重合体層(厚さ3μm)が積層された構成された2層構成であり、平均直径が120μmの貫通孔を6個/m2の数で有し、厚さが30μmであり、40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量が150g/m2・dayであるものを用意した。
この樹脂フィルムを、エチレン-ビニルアルコール共重合体層を内側として折り畳み、対向する2辺を加熱シールする(エチレン-ビニルアルコール共重合体層同士を加熱シールする)ことにより、開口部を有する、大きさが1000mm×1000mm(表面積が2×106mm2)の包装袋を製造した。
得られた包装袋の収納部形成領域における貫通孔の数は、6個/m2であった。
【0087】
<<包装袋の評価>>
大気下及び常温下で、上記で得られた包装袋の収納部に、収穫直後の5本のダイコンを1列に整列させて配置し、さらに、これら1列のダイコンの上に、収穫直後の5本のダイコンを同様に、1列に整列させて重ねて配置することにより、
図4~
図5に示すように、合計で10本のダイコンを2列に整列させて収納した。ただし、これら10本のダイコンはすべて、その長さ方向を一致させたが、その向きを一部で逆とした。これらダイコンは、千葉県銚子市産であり、その1本の質量が0.9~1.5kgであり、これらダイコンの総質量は12kgであった。
これら10本のダイコンを収納後、包装袋の開口部を捩じり、さらに結束具を用いてこの状態を維持することにより、包装袋の開口部を閉塞し、10本のダイコンを包装した。このとき、包装袋(収納部)の容量を約25Lとした。
【0088】
次いで、この閉塞済み包装袋を、さらに、大きさが575mm×343mm×156mmの段ボール箱に詰め、この段ボールを、その開口部を折り込んで箱状とし、ただし、折り込み部位は封止しなかった。この状態で、段ボール内の閉塞済み包装袋を、大気下、25℃の温度条件下で保管した。
【0089】
ガス濃度測定器(MOCON Europe社製「CheckPoint」)を用いて、保管開始から時間が経過した閉塞済み包装袋の収納部内の、酸素ガスと二酸化炭素ガスの濃度を測定した。その結果、保管開始から24時間が経過した時点と、さらにそれ以降は、酸素ガスの濃度が4体積%で、二酸化炭素ガスの濃度が17体積%で安定していることを確認した。
【0090】
保管開始から時間が経過した閉塞済み包装袋を段ボール箱から取り出し、10本のダイコンを1本ずつ、包装袋越しに目視観察した。そして、ダイコンの表面に認められる黒色斑点の数を、
図8に示す基準で5段階のいずれかの水準に分類し、ダイコン1本ごとに評価点を与えた。そして、10個の評価点の平均値を、包装袋の黒色斑点の発生を抑制する効果の評価点として採用した。評価後の閉塞済み包装袋は、再度段ボール箱に詰め、引き続き保管を行い、このような評価を複数のタイミングで行った。このときの評価結果を
図9に示す。
【0091】
<<包装袋の製造及び評価>>
[比較例1]
10本のダイコンを収納後、包装袋を、その開口部を捩じらず、開放した状態のままで、段ボール箱に詰めた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、包装袋を製造及び評価した。用いたダイコンは、千葉県銚子市産であり、その1本の質量が0.9~1.5kgであり、これらダイコンの総質量は12kgであった。評価結果を
図9に示す。
本比較例でも、実施例1の場合と同じ方法で、保管開始から時間が経過した未閉塞包装袋の収納部内の、酸素ガスと二酸化炭素ガスの濃度を測定した。その結果、保管開始から24時間が経過した時点と、さらにそれ以降は、酸素ガスの濃度が21体積%で、二酸化炭素ガスの濃度が0体積%(検出限界値未満)で安定していることを確認した。
【0092】
図9から明らかなように、実施例1では、保管開始から5日後であっても、評価点は約3点と高水準であった。保管開始から5日後の段階で、10本すべてのダイコンで、黒色斑点の数は数個程度(10個未満)であり、ダイコンの表面積に対する、黒色斑点が認められる領域の面積の割合は、5%未満であった。このように、実施例1の包装袋は、ダイコンの保管中に、ダイコンの表面での黒色斑点の発生を抑制する高い効果を有していた。
【0093】
実施例1の包装袋がこのような結果を示した理由は、前記樹脂フィルムを用い、包装袋の開口部を閉塞したからであると推測された。これにより、常温下で保管中の閉塞済み包装袋の収納部内で、酸素ガスの濃度が低く、二酸化炭素ガスの濃度が高く維持され、ダイコンの呼吸が低水準に抑制されて、ダイコンの代謝が抑制されたと推測された。
【0094】
これに対して、比較例1においては、保管開始直後から、評価点が低下し続け、5日後には10本すべてのダイコンで黒色斑点の数が激増しており、ダイコンの表面積に対する、黒色斑点が認められる領域の面積の割合は、50%を超えていた。このように、比較例1の包装袋は、常温下でのダイコンの保管中に、ダイコンの表面での黒色斑点の発生を抑制しなかった。
【0095】
比較例1の包装袋がこのような結果を示した理由は、前記樹脂フィルムを用いているにも関わらず、包装袋の開口部を閉塞しなかったからであると推測された。これにより、保管中の包装袋の収納部内で、ガスの組成が大気に近付き、酸素ガスの濃度が高く、二酸化炭素ガスの濃度が低く維持され、ダイコンの呼吸が抑制されず、ダイコンの代謝が抑制されなかったと推測された。