(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098199
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】センサの取付構造
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20240716BHJP
G01N 27/41 20060101ALI20240716BHJP
G01N 27/419 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/41 325H
G01N27/419 327H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001510
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】島崎 雄次
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将之
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BC02
2G004BF05
2G004BF19
2G004BF20
2G004BF27
2G004BH06
2G004BJ03
(57)【要約】
【課題】ガスセンサのプロテクタを長期にわたって確実に保持することができるセンサの取付構造を提供する。
【解決手段】センサ素子21と、センサ素子の検知部22を突出させつつセンサ素子の周囲を取り囲む主体金具11と、を備えたガスセンサ1Aと、検知部を覆う筒状のプロテクタ60Aと、ガスセンサが主体金具を介して取り付けられ、被測定ガスが流れるガス管100と、を備えたセンサの取付構造200であって、主体金具の外面には雄ネジ13が設けられ、ガス管は、管壁101を貫通するとともに雄ネジと噛み合う雌ネジ103Mが自身の内面に設けられた筒状の取付ボス103を備え、プロテクタの後端には径方向外側に延びるフランジ部51f、61fが設けられ、取付ボスには径方向内側に延びる環状の棚部105が設けられ、フランジ部は、棚部の外面105eと、主体金具の先端向き面11sとの間に挟持されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びて先端側に検知部を有するセンサ素子と、前記センサ素子の前記検知部を突出させつつ前記センサ素子の周囲を取り囲む主体金具と、を備えたガスセンサと、
前記検知部を覆う筒状のプロテクタと、
前記ガスセンサが前記主体金具を介して取り付けられ、被測定ガスが流れるガス管と、
を備えたセンサの取付構造であって、
前記主体金具の外面には雄ネジが設けられ、前記ガス管は、管壁を貫通するとともに前記雄ネジと噛み合う雌ネジが自身の内面に設けられた筒状の取付ボスを備え、
前記プロテクタの後端には径方向外側に延びるフランジ部が設けられ、前記取付ボスには径方向内側に延びる環状の棚部が設けられ、
前記フランジ部は、前記棚部の外面と、前記主体金具の先端向き面との間に挟持されていることを特徴とするセンサの取付構造。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記棚部の外面と、前記主体金具の先端向き面とによって厚み方向に圧縮されていることを特徴とする請求項1記載のセンサの取付構造。
【請求項3】
前記棚部を除く前記取付ボスの最小内径よりも、前記フランジ部の最大外径が小さいことを特徴とする請求項1記載のセンサの取付構造。
【請求項4】
前記プロテクタは、内側プロテクタと、前記内側プロテクタの外側に離間して配置される外側プロテクタとを備え、前記内側プロテクタと前記外側プロテクタが共に前記フランジ部を有することを特徴とする請求項1記載のセンサの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサをガス管に取り付けてなるセンサの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気ガスや吸気中の酸素やNOx等の特定ガス成分の濃度を検出するガスセンサが知られている(特許文献1)。ガスセンサ先端にはガスを検出するセンサ素子を備え、センサ素子は主体金具に保持されている。また、センサ素子を筒状のプロテクタが覆い、プロテクタの後端は主体金具に溶接されている。
このガスセンサは、排気管を貫通するようにして排気管にネジ止めされ、排気管を流れる排気ガス等の被測定ガスがガスセンサ先端のセンサ素子に接触することで、ガスを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気管には高温の排気ガスが断続的に流れ、ガスセンサにも高温(例えば650℃以上)から室温までの冷熱サイクルが繰り返し掛かる。すると、プロテクタの溶接部も冷熱サイクルが掛かって伸び縮みし、亀裂や剥離が生じることがある。そして、その結果、プロテクタが初期の位置からズレたり、脱落する恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、ガスセンサのプロテクタを長期にわたって確実に保持することができるセンサの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のセンサの取付構造は、軸線方向に延びて先端側に検知部を有するセンサ素子と、前記センサ素子の前記検知部を突出させつつ前記センサ素子の周囲を取り囲む主体金具と、を備えたガスセンサと、前記検知部を覆う筒状のプロテクタと、前記ガスセンサが前記主体金具を介して取り付けられ、被測定ガスが流れるガス管と、を備えたセンサの取付構造であって、前記主体金具の外面には雄ネジが設けられ、前記ガス管は、管壁を貫通するとともに前記雄ネジと噛み合う雌ネジが自身の内面に設けられた筒状の取付ボスを備え、前記プロテクタの後端には径方向外側に延びるフランジ部が設けられ、前記取付ボスには径方向内側に延びる環状の棚部が設けられ、前記フランジ部は、前記棚部の外面と、前記主体金具の先端向き面との間に挟持されていることを特徴とする。
【0007】
このセンサの取付構造によれば、ガスセンサのプロテクタを、棚部の外面と、主体金具の先端向き面との間で各フランジ部を挟み込んで保持するので、プロテクタを主体金具に溶接する必要がなく、溶接部に冷熱サイクルが掛かって亀裂や剥離が生じることを防止できる。
その結果、ガスセンサのプロテクタを長期にわたって確実に保持することができる。
また、プロテクタとして溶接適性に優れた材料を選ばなくてもよく、例えば安価なステンレス鋼をプロテクタに用いることができる。
【0008】
本発明のセンサの取付構造において、前記フランジ部は、前記棚部の外面と、前記主体金具の先端向き面とによって厚み方向に圧縮されていてもよい。
このセンサの取付構造によれば、フランジ部が外面と先端向き面との間でグラつくことなく固定される。
【0009】
本発明のセンサの取付構造において、前記棚部を除く前記取付ボスの最小内径よりも、前記フランジ部の最大外径が小さくてもよい。
このようにすると、フランジ部を上から取付ボスに挿入する際に雌ネジに干渉せずにスムーズに挿入できる。
【0010】
本発明のセンサの取付構造において、前記プロテクタは、内側プロテクタと、前記内側プロテクタの外側に離間して配置される外側プロテクタとを備え、前記内側プロテクタと前記外側プロテクタが共に前記フランジ部を有してもよい。
このセンサの取付構造によれば、内側プロテクタと外側プロテクタとをそれぞれフランジ部を介してガスセンサに確実に保持できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ガスセンサのプロテクタを長期にわたって確実に保持することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るセンサの取付構造の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るセンサの取付構造の変形例の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかるセンサの取付構造200の断面図である。
図1は、センサの取付構造200におけるガスセンサ1Aの軸線O方向に沿った(ガス管100の軸方向に沿った)断面図を示す。
図1において、センサの取付構造200は、ガスセンサ1Aと、プロテクタ60Aと、ガスセンサ1Aが取り付けられて被測定ガスが流れるガス管(エンジンの排気管)100とを、備える。
なお、本例ではプロテクタ60Aは、予めガスセンサ1A側(主体金具11)に固定(溶接等)されている。但し、プロテクタ60Aが予めガス管100側に固定されていて、ガス管100側のプロテクタ60Aに後からガスセンサ1A(主体金具11)を嵌めるような形態でもよい。
【0014】
ガスセンサ(全領域空燃比ガスセンサ)1Aは、センサ素子21と、軸線O方向に貫通してセンサ素子21を挿通させる貫通孔32を有するホルダ(セラミックホルダ)30Aと、ホルダ30Aの径方向周囲を取り囲む主体金具11と、プロテクタ60Aと、を備えている。
そして、センサ素子21のうち、検知部22が形成された先端寄り部位が、ホルダ30Aより先端に突出している。このように貫通孔32を通されたセンサ素子21は、ホルダ30Aの後端面側(図示上側)に配置されたシール部材41を、絶縁材からなる(セラミック)スリーブ43、リングワッシャ45を介して先後方向に圧縮することによって、主体金具11の内側において先後方向に気密を保持して固定されている。
【0015】
なお、センサ素子21の後端29を含む後端寄り部位はスリーブ43及び主体金具11より後方に突出しており、その後端寄り部位に形成された各電極端子24に、ゴム製のグロメット85を通して外部に引き出された各リード線71の先端に設けられた端子金具75が圧接され、電気的に接続されている。また、この電極端子24を含むセンサ素子21の後端寄り部位は、外筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
【0016】
センサ素子21は軸線O方向に延びると共に、測定対象に向けられる先端側(図示下側)に、検知用電極等(図示せず)からなり被検出ガス中の特定ガス成分を検出する検知部22を備えた帯板状(板状)をなしている。センサ素子21の横断面は、先後において一定の大きさの長方形(矩形)をなし、セラミック(固体電解質等)を主体として細長いものとして形成されている。このセンサ素子21自体は、従来公知のものと同じものであり、固体電解質(部材)の先端寄り部位に検知部22をなす一対の検知用電極が配置され、これに連なり後端寄り部位には、検知用出力取り出し用のリード線71接続用の電極端子24が露出形成されている。
【0017】
また、本例では、センサ素子21のうち、固体電解質(部材)に積層状に形成されたセラミック材の先端寄り部位内部にヒータ(図示せず)が設けられており、後端寄り部位には、このヒータへの電圧印加用のリード線71接続用の電極端子24が露出形成されている。なお、図示はしないが、これら電極端子24は縦長矩形に形成され、例えばセンサ素子21の後端寄り部位において、帯板の幅広面(両面)に3つ又は2つの電極端子が横に並んでいる。
なお、センサ素子21の検知部22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層23が被覆されている。
【0018】
主体金具11は軸線O方向に貫通する貫通孔を有し、先後において同心異径の筒状をなしている。又、主体金具11は、先端側が小径で円筒状の円環状部(以下、円筒部ともいう)18を有し、その後方(図示上方)の外周面には、それより大径をなす、排気管100への固定用の雄ネジ13が設けられている。そして、その後方には、この雄ネジ13によってセンサ1をねじ込むための多角形部14を備えている。
また、この多角形部14の後方には、ガスセンサ1Aの後方をカバーする保護筒(外筒)81を外嵌して溶接する円筒部15が連設され、その後方には外径がそれより小さく薄肉のカシメ用円筒部16を備えている。なお、このカシメ用円筒部16は、
図1では、カシメ後のために内側に曲げられている。なお、多角形部14の下面には、ねじ込み時におけるシール用のガスケット19が取着されている。
さらに、主体金具11の円環状部18近傍の内周面には、後端側から先端側に向かって径方向内側に先細るテーパ状の段部17を有している。
【0019】
主体金具11の(貫通孔の)内側には、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)からなり、概略短円筒状に形成されたホルダ30Aが配置されている。ホルダ30Aは、先端に向かって先細りのテーパ状に形成された先端向き面30fを有している。そして、先端向き面30fの外周寄りの部位が段部17に係止されつつ、ホルダ30Aが後端側からシール部材41で押圧されることで主体金具11内にホルダ30Aが位置決めされ、かつ隙間嵌めされている。
一方、貫通孔32は、ホルダ30Aの中心に設けられると共に、センサ素子21が略隙間なく通るように、センサ素子21の横断面とほぼ同一の寸法の矩形の開口とされている。
【0020】
センサ素子21は、ホルダ30Aの貫通孔32に通され、センサ素子21の先端をホルダ30A及び主体金具11の先端よりも先方に突出させている。
一方、センサ素子21の先端部位は、筒状をなし、被測定ガスを導入又は排出可能なプロテクタ60Aで覆われている。本形態では、プロテクタ60Aは、通気孔56及び排出孔53を有する有底円筒状の内側プロテクタ51と、通気孔67及び排出孔69を有する有底円筒状の外側プロテクタ61とを離間して配置した2重プロテクタからなる。
【0021】
内側プロテクタ51と外側プロテクタ61の後端側は円環状部18の外面に嵌合されている。さらに内側プロテクタ51及び外側プロテクタ61の後端縁には、それぞれ径方向外側に延びるフランジ部51f、61fが設けられている。
なお、フランジ部51fはフランジ部61fよりも後端側に位置し、フランジ部51fがフランジ部61fの後端側に重なるようにして両者が延びている。
【0022】
一方、
図1に示すように、センサ素子21の後端寄り部位に形成された各電極端子24には、外部にグロメット85を通して引き出された各リード線71の先端に設けられた各端子金具75がそのバネ性により圧接され、電気的に接続されている。そして、この圧接部を含む各端子金具75は、本例ガスセンサ1Aでは、外筒81内に配置された絶縁性のセパレータ91内に設けられた各収容部内に、それぞれ対向配置で設けられている。なお、セパレータ91は、外筒81内にカシメ固定された保持部材82を介して径方向及び先端側への動きが規制されている。そして、この外筒81の先端部を、主体金具11の後端寄り部位の円筒部15に外嵌して溶接することで、ガスセンサ1Aの後方が気密状にカバーされている。
なお、リード線71は外筒81の後端部の内側に配置されたグロメット85を通されて外部に引き出されており、この小径筒部83を縮径カシメしてこのグロメット85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
【0023】
因みに、外筒81の軸線O方向の中央よりやや後端側には、先端側が径大の段部81dが形成され、この段部81dの内面がセパレータ91の後端を先方に押すように支持する。一方、セパレータ91はその外周に形成されたフランジ93を外筒81の内側に固定された保持部材82の上に支持させられており、段部81dと保持部材82とによってセパレータ91が軸線O方向に保持されている。
【0024】
一方、排気管100は、自身の内面を被測定ガスが流れ、管壁101を貫通するとともに雄ネジ13と噛み合う雌ネジ103Mが自身の内面に設けられた筒状の取付ボス103を備えている。取付ボス103は管壁101に溶接されている。
さらに、取付ボス103の排気管100側(
図1の下側)には径方向内側に延びる環状の棚部105が設けられている。
【0025】
そして、各フランジ部51f、61fは、棚部105の外面(排気管100から遠ざかる向きの面(
図1の上側の面))105eと、主体金具11の先端向き面11sとの間に挟持されている。
これにより、ガスセンサ1Aのプロテクタ60Aを、棚部105の外面105eと、主体金具11の先端向き面11sとの間で各フランジ部51f、61fを挟み込んで保持するので、プロテクタ60Aを主体金具11に溶接する必要がなく、溶接部に冷熱サイクルが掛かって亀裂や剥離が生じることを防止できる。
その結果、ガスセンサ1Aのプロテクタ60Aを長期にわたって確実に保持することができる。
また、プロテクタ60Aとして溶接適性に優れた材料を選ばなくてもよく、例えば安価なステンレス鋼をプロテクタ60Aに用いることができる。
【0026】
フランジ部51f、61fは、棚部105の外面105eと、主体金具11の先端向き面11sとによって厚み方向に圧縮されていてもよい。
このようにすると、フランジ部51f、61fが外面105eと先端向き面11sとの間でグラつくことなく固定される。
【0027】
棚部105を除く取付ボス103の最小内径(つまり、雌ネジ103Mの山部の最大径)よりも、フランジ部51f、61fの最大外径が小さくてもよい。
このようにすると、フランジ部51f、61fを上から取付ボス103に挿入する際に雌ネジ103Mに干渉せずにスムーズに挿入できる。
なお、フランジ部51f、61fの最大外径とは、フランジ部51f、61fのうち径方向にはみ出した方の外径をいう。
【0028】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
プロテクタとしては二重に限らず、一重プロテクタでもよい。
【0029】
また、二重プロテクタの場合、
図2に示すように、内側プロテクタ51と外側プロテクタ61の後端側を溶接して、主体金具11まで到達する溶接部Wを設けても良い。
溶接部Wを設けると、溶接作業は増えるが、ガスセンサ1Aを取付ボス103にネジ止めする際、プロテクタ60Aがガスセンサ1Aから脱落することを抑制できる。
また、ガスセンサの使用時に冷熱サイクルが掛かって溶接部Wに亀裂や剥離が生じても、プロテクタ60A自体はフランジ部51f、61fを介して外面105eと先端向き面11sとの間に挟持されていることになる。
【0030】
又、ガスセンサとしては、NOxセンサの他、酸素センサ、全領域ガスセンサが挙げられる。
センサ素子は板状に限らず、筒状の素子を用いることもできる。
ガス管も排気管に限られず、取付ボスの形状も限定されない。
【符号の説明】
【0031】
1A ガスセンサ
11 主体金具
11s 主体金具の先端向き面
13 雄ネジ
21 センサ素子
22 検知部
60A プロテクタ
51 内側プロテクタ
61 外側プロテクタ
51f、61f フランジ部
100 ガス管(排気管)
101 管壁
103 取付ボス
103M 雌ネジ
105 棚部
105e 棚部の外面
200 センサの取付構造
O 軸線