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特開2024-98201色調整履歴情報管理装置及び色調整履歴情報管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098201
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】色調整履歴情報管理装置及び色調整履歴情報管理方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/62 20060101AFI20240716BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H04N1/62
B41J2/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001514
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩一郎
【テーマコード(参考)】
2C262
5C079
【Fターム(参考)】
2C262AA02
2C262AB11
2C262BA02
2C262BA18
2C262BC19
2C262FA13
2C262FA14
5C079HB01
5C079HB03
5C079HB08
5C079HB11
5C079KA15
5C079LA02
5C079LA10
5C079LA31
5C079LB01
5C079MA17
5C079MA20
5C079NA03
5C079NA13
5C079PA03
(57)【要約】
【課題】色再現用の調整値に、調整の履歴の内容を反映させる。
【解決手段】本発明の一側面に係る色調整履歴情報管理サーバー3は、調整が行われた特定色の情報をクラスタリングして得られるクラスターの情報と、特定色の再現に用いられた調整値の情報との対応情報に基づいて、特定色の再現用の調整値を決定する調整値決定部31を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の印刷可能色域内の色を用いて特定色を再現するための調整の履歴情報を管理する色調整履歴情報管理装置であって、
調整が行われた前記特定色の情報をクラスタリングして得られるクラスターの情報と、前記特定色の再現に用いられた調整値の情報との対応情報に基づいて、前記特定色の再現用の調整値を決定する調整値決定部を備える
色調整履歴情報管理装置。
【請求項2】
前記特定色は、前記画像形成装置の印刷可能色域の外にある特色である
請求項1に記載の色調整履歴情報管理装置。
【請求項3】
前記クラスターの情報は、表示系の色空間におけるクラスターの領域の位置及び大きさを示す情報であり、
前記調整値決定部は、再現対象の前記特定色が分類されているクラスターを特定し、特定した前記クラスターと前記調整値との対応情報に基づいて、再現対象の前記特定色の調整値を算出する
請求項2に記載の色調整履歴情報管理装置。
【請求項4】
前記クラスターの情報と前記調整値の情報との対応情報は、前記クラスターに分類された各特定色を起点とし、該特定色と対応付けられた調整値を終点とするベクトルである写像ベクトルの、前記クラスターにおける代表値によって示される
請求項3に記載の色調整履歴情報管理装置。
【請求項5】
前記調整値決定部は、前記写像ベクトルの前記クラスターにおける代表値と、前記画像形成装置の印刷可能色域の表面との交点にある色値を、再現対象の前記特定色の調整値として算出する
請求項4に記載の色調整履歴情報管理装置。
【請求項6】
前記写像ベクトルによって前記特定色と対応付けられる調整値には、前記調整値決定部が算出した調整値に対してユーザーが微調整した後の調整値も含まれる
請求項4に記載の色調整履歴情報管理装置。
【請求項7】
前記特定色の再現に用いられた調整値は、前記特定色の属性情報と対応付けて管理され、
前記調整値決定部は、再現対象の前記特定色の属性情報と対応付けられた調整値を、前記特定色の再現用の調整値として決定する
請求項1に記載の色調整履歴情報管理装置。
【請求項8】
画像形成装置の印刷可能色域内の色を用いて特定色を再現するための調整の履歴情報を管理する色調整履歴情報管理装置により行われる色履歴情報管理方法であって、
調整が行われた前記特定色の情報をクラスタリングして得られるクラスターの情報と、前記特定色の再現に用いられた調整値の情報との対応情報に基づいて、前記特定色の再現用の調整値を決定する手順を有する
色調整履歴情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調整履歴情報管理装置及び色調整履歴情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特色とは、C(シアン)、M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)等のプロセスカラーでは再現できない色を表現するために予め調合された特色インクによって表現される色である。しかし、特色インクのコストはプロセスカラーのインクよりも高いため、特色を使用して印刷を行うとコストが上がってしまうという課題が存在する。そこで、コスト削減のために、特色を完全に再現できずともプロセスカラーの組合せにより疑似的に特色を再現するという運用も行われている。しかし、プロセスカラーによる特色調整には、専門の知識と高度のスキルとを要する。
【0003】
特許文献1には、指定色が印刷可能色域の内にある外にあるかに応じて、指定色の印刷に適した色のパッチを探し易いカラーチャートの印刷データを生成するカラーチャート生成技術が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、指定色に応じた適切な候補色のパッチが配列されるため、熟練者でなくとも最適なパッチを迅速に選択でき、指定色を再現できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7141021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特色等の特定の色(以下、特定色とも称する)を再現するための調整においては、再現対象の色とは色差が離れたとしても、色味もしくは明るさを重視する等の、トレンドやユーザーの好みに応じた調整が行われることがある。しかし、特許文献1に記載の技術においては、過去の調整履歴情報は参照されないため、色再現用の調整値に、トレンドや好み等に合わせて行われた調整の履歴の内容を反映させることができない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、色再現用の調整値に、調整の履歴の内容を反映させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る色調整履歴情報管理装置は、画像形成装置の印刷可能色域内の色を用いて特定色を再現するための調整の履歴情報を管理する色調整履歴情報管理装置である。本発明の一態様に係る色調整履歴情報管理装置は、調整が行われた特定色の情報をクラスタリングして得られるクラスターの情報と、特定色の再現に用いられた調整値の情報との対応情報に基づいて、特定色の再現用の調整値を決定する調整値決定部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、色再現用の調整値に、調整の履歴の内容を反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成システムに含まれるクライアント端末、印刷装置及び色調整履歴情報管理サーバーの制御系の構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る色調整履歴情報DBの構成例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る色調整履歴クラスター情報DBの構成例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る調整値決定部による調整値算出方法の概要を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る調整値決定部による調整値算出方法の概要を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る色調整画面の構成例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る色調整画面の構成例を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る調整値の微調整と写像ベクトルとの対応例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る色調整履歴情報管理サーバーによる色調整履歴情報管理処理の手順の例を示すフローチャートである。
図11】変形例に係る色調整履歴情報DBの構成例を示す図である。
図12】変形例に係る色調整履歴クラスター情報DBの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
<画像形成システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成システム100の全体構成を示す概略図である。図1に示す画像形成システム100は、クライアント端末1と、印刷装置2a及び2bの2台の印刷装置2(画像形成装置の一例)と、色調整履歴情報管理サーバー3と、を含む。クライアント端末1と、2台の印刷装置2とはLAN(Local Area Network)等のネットワークN1で接続され、クライアント端末1及び2台の印刷装置2と色調整履歴情報管理サーバー3とは、公衆回線網等のネットワークN2を介して接続される。
【0012】
クライアント端末1は、例えばPC(Personal Computer)等で構成され、印刷ジョブを印刷装置2a又は2bに出力したり、ユーザーの操作に基づいて色調整を行ったりする。色調整には、特色、又は、特色以外の特定色等を再現するための調整や、調整結果を目視で確認した結果に基づくユーザーによる微調整などがある。
【0013】
図1に示す例では、クライアント端末1には、測色機4が接続されている。測色機4は、例えば分光測色計等で構成され、再現対象の色、又は、調整結果の色を測色して色値を出力する。
【0014】
印刷装置2a及び2bは、クライアント端末1から出力された印刷ジョブに基づいて、画像を用紙に形成(印刷)する。印刷装置2a、2bは、例えば、電子写真式で画像形成を行う画像形成装置で構成される。なお、印刷装置2a、2bの画像形成方式は電子写真方式に限定されず、インクジェット方式等の他の方式であってもよい。また、図1には、印刷装置2が2台である例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0015】
図1に示す例では、印刷装置2aの内部に、インライン測色機27が設けられている。インライン測色機27は、例えばラインセンサ等で構成され、印刷装置2aから出力された印刷物に含まれる色を測色し、測色の結果得られた色値をクライアント端末1に出力する。
【0016】
色調整履歴情報管理サーバー3(色調整履歴情報管理装置の一例)は、例えば、クラウド環境に設けられたサーバーによって構成され、クライアント端末1によって行われた色調整の情報を取得して、色調整履歴情報DB(データベース)321(図3参照)に格納する。また、色調整履歴情報管理サーバー3は、色調整履歴情報DB321に格納された色調整の履歴情報をクラスタリングして得られる情報を、色調整履歴クラスター情報DB322(図4参照)に格納する。
【0017】
さらに、色調整履歴情報管理サーバー3は、色調整履歴クラスター情報DB322に記載の情報に基づいて、特色再現用の調整値を算出し、該調整値をクライアント端末1に送信する。
【0018】
<画像形成システムの制御系の構成>
次に、図2を参照して、本実施形態に係る画像形成システム100の制御系の構成について説明する。図2は、画像形成システム100に含まれるクライアント端末1、印刷装置2及び色調整履歴情報管理サーバー3の制御系の構成例を示すブロック図である。
【0019】
[クライアント端末]
クライアント端末1は、制御部10と、記憶部11と、操作表示部12と、通信部13と、を備える。
【0020】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)101と、RAM(Random Access Memory)102と、ROM(Read Only Memory)103と、を含む。
CPU101は、中央演算処理装置であり、クライアント端末1を構成する各部の動作を制御する。例えば、CPU101は、色調整履歴情報管理サーバー3から送信された調整値の情報を、調整値の微調整を行う色調整画面(図7図8参照)に表示させる制御や、色調整画面を介してユーザーによって微調整された調整値の情報を、色調整履歴情報管理サーバー3に送信する制御などを行う。
【0021】
RAM102は、CPU101によるプログラムの実行時にワークエリアとして使用される。
ROM103には、クライアント端末1を動作させるシステムプログラムや、該システムプログラム上で実行可能な、本発明の機能を実現するためのプログラム等が格納される。これらのプログラム又はアプリケーションは、コンピュータが読取り可能なプログラムコードの形態で格納される。つまり、ROM103は、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0022】
記憶部11は、例えば、不揮発性の半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等によって構成され、クライアント端末1が印刷装置2に送信した印刷ジョブに含まれる原稿データ等が格納される。なお、記憶部11内には、本発明の機能を実現するためのプログラムが格納されてもよい。この場合、記憶部11は、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0023】
操作表示部12は、例えば、タッチセンサと表示パネルとが一体に形成されたタッチパネルにより構成される。操作表示部12の画面には、印刷やコピーなどの各種機能の設定を行う設定画面や、色調整履歴情報管理サーバー3の調整値決定部31によって決定された調整値の微調整を行う色調整画面などが表示される。また、操作表示部12は、設定画面や調整画面などを介してユーザーによって入力された内容に対応する操作信号を生成して、該操作信号をCPU101に供給する。なお、操作表示部12は、キーボードやマウスなどより構成される操作入力部と、表示パネル等で構成される表示部とが別々に構成されてもよい。
【0024】
通信部13は、例えば、NIC(Network Interface Card)等で構成され、ネットワークN1又はN2を介して、印刷装置2、色調整履歴情報管理サーバー3との間における各種データの送受信動作を制御する。
【0025】
[印刷装置]
印刷装置2は、制御部20と、記憶部21と、通信部22と、搬送制御部23と、画像形成部24と、定着部25と、操作表示部26と、インライン測色機27と、を含む。
【0026】
制御部20は、CPU201と、RAM202と、ROM203と、を含む。
CPU201は、中央演算処理装置であり、印刷装置2を構成する各部の動作を制御する。
RAM202は、CPU201によるプログラムの実行時にワークエリアとして使用される。
ROM203には、印刷装置2を動作させるシステムプログラムや、該システムプログラム上で実行可能な、本発明の機能を実現するためのプログラム等が格納される。これらのプログラム又はアプリケーションは、コンピュータが読取り可能なプログラムコードの形態で格納される。つまり、ROM203は、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0027】
記憶部21は、例えば、不揮発性の半導体メモリー、HDD、SSD等によって構成される。記憶部21には、クライアント端末1から送信された印刷ジョブに含まれる原稿データ等が格納される。なお、記憶部21内に、本発明の機能を実現するためのプログラムが格納されてもよい。この場合、記憶部21は、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0028】
通信部22は、例えば、NIC等で構成され、ネットワークN1又はN2を介して、クライアント端末1、色調整履歴情報管理サーバー3との間における各種データの送受信動作を制御する。
搬送制御部23は、不図示の給紙トレイから用紙を給紙する動作、及び、給紙した用紙を不図示の搬送路を介して搬送させる動作を制御する。
【0029】
画像形成部24は、クライアント端末1から送信された印刷ジョブに含まれる原稿データを、印刷用のデータ(印刷データ)に変換し、該印刷データに基づく画像を用紙に印刷(形成)する。
定着部25は、画像が形成された用紙を不図示の定着ローラーによって挟んで加熱することにより、用紙に形成された画像を用紙に定着させる。
【0030】
操作表示部26は、タッチセンサと表示パネルとが一体に形成されたタッチパネルにより構成される。操作表示部26の画面には、コピーの画質の設定、用紙設定等を行う各種設定画面等が表示される。また、操作表示部26は、設定画面を介してユーザーによって入力された内容に対応する操作信号を生成して、該操作信号をCPU201に供給する。
【0031】
インライン測色機27については、図1を参照して説明済みであるため、ここでは説明は省略する。
【0032】
[色調整履歴情報管理サーバー]
色調整履歴情報管理サーバー3は、制御部30と、調整値決定部31と、記憶部32と、通信部33と、を含む。
CPU301は、中央演算処理装置であり、色調整履歴情報管理サーバー3を構成する各部の動作を制御する。
RAM302は、CPU301によるプログラムの実行時にワークエリアとして使用される。
ROM303には、色調整履歴情報管理サーバー3を動作させるシステムプログラムや、該システムプログラム上で実行可能な、本発明の機能を実現するためのプログラム等が格納される。これらのプログラム又はアプリケーションは、コンピュータが読取り可能なプログラムコードの形態で格納される。つまり、ROM303は、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0033】
調整値決定部31は、色調整履歴情報DB321に格納された色調整履歴情報に含まれる各特色値を分類(クラスタリング)して調整履歴クラスター情報を生成し、生成した該調整履歴クラスター情報を色調整履歴クラスター情報DB322に格納する。クラスタリングの手法には、例えば、クラスタリング数を自動で算出可能なx-means法等を用いることができる。なお、クラスタリングの手法は、x-means法に限定されず、k-means法等の他の手法が用いられてもよい。
【0034】
また、調整値決定部31は、特色値が属するクラスターに紐けられた写像ベクトルの代表値と、多面体により表現される印刷装置2で印刷可能な色域の表面とが交わる点を、調整値として算出する。写像ベクトルは、クラスターに含まれる、すなわち、クラスターに分類された各特色値を起点とし、印刷装置2で印刷可能な色域内にある調整値を終点とするベクトルである。調整値決定部31による調整値の算出方法については、後述の図5及び図6を参照して詳述する。
【0035】
記憶部32は、例えば、不揮発性の半導体メモリー、HDD、SSD等によって構成される。記憶部32には、色調整履歴情報DB321又は色調整履歴クラスター情報DB322等が格納される。なお、記憶部32内に、本発明の機能を実現するためのプログラムが格納されてもよい。この場合、記憶部32は、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0036】
通信部33は、例えば、NIC等で構成され、ネットワークN1又はN2を介して、クライアント端末1、印刷装置2との間における各種データの送受信動作を制御する。
【0037】
なお、図2には、色調整履歴情報管理サーバー3内に、調整値決定部31、色調整履歴情報DB321及び色調整履歴クラスター情報DB322が設けられる例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。画像形成システム100に含まれる各機能部、データベースは、各装置に分散して配置されてもよい。例えば、色調整履歴情報DB321及び色調整履歴クラスター情報DB322は色調整履歴情報管理サーバー3に内に設けられ、調整値決定部31はクライアント端末1内に設けられてもよい。
【0038】
<色調整履歴情報DBの構成>
次に、図3を参照して、色調整履歴情報DB321の構成について説明する。図3は、色調整履歴情報DB321の構成例を示す図である。図3に示すように、色調整履歴情報DB321は、「No」、「特色名」、「調整値」及び「写像ベクトル」の各項目を有する。
【0039】
「No」の項目には、色調整履歴情報DB321を構成する各レコードに割り振られる連番の情報が格納される。
「特色名」の項目には、“A101”、“B220”等の特色の名称の情報が格納される。
【0040】
「特色値」の項目には、測色機4又はインライン測色機27によって測色された、再現すべき特色の色値の値が格納される。
「調整値」の項目には、調整値を用いて再現(又は微調整)された色を印刷した画像の測色結果(色値)の情報が格納される。特色値及び調整値は、それぞれ、L*a*b*色空間における値(Lab値)によって示される。
【0041】
なお、本実施形態では、特色値及び調整値がL*a*b*色空間における値によって示される例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。表示系の色空間における値であれば、XYZ色空間、sRGB色空間等の他の色空間における色で表されてもよい。ただし、XYZ色空間、sRGB色空間においては、色差に対応する距離が色空間内において一定でないため、距離に対する重みづけ等の処理が行われる必要がある。
【0042】
「写像ベクトル」の項目には、特色値と調整値とを結んだ写像ベクトルの値が格納される。写像ベクトルは、L*a*b*色空間における値(Lab値)によって示される。
【0043】
<色調整履歴クラスター情報DBの構成>
次に、図4を参照して、色調整履歴クラスター情報DB322の構成について説明する。図4は、色調整履歴クラスター情報DB322の構成例を示す図である。図4に示すように、色調整履歴クラスター情報DB322は、「No」、「調整点数」、「クラスター領域情報」及び「写像ベクトル」の各項目を有する。
【0044】
「No」の項目には、色調整履歴クラスター情報DB322を構成する各レコードに割り振られる連番の情報が格納される。
「調整点数」の項目には、クラスターに含まれる(分類された)特色値の数、すなわち、特色値の調整が実行された回数(調整回数)の情報が格納される。
【0045】
「クラスター領域情報」の項目には、クラスターの領域に関する情報として、クラスターの中心座標及び半径が格納される。本実施形態では、クラスターの形状は楕円球体で示されるものとする。
【0046】
「写像ベクトル」の項目には、クラスターに紐づけられた写像ベクトルの情報(クラスターの情報と調整値の情報との対応情報の一例)が格納される。クラスターに紐づけられる写像ベクトルは、クラスターに含まれる個々の調整値に対応付けられた写像ベクトルを平均すること等によって算出できる。なお、クラスターに紐づけられる写像ベクトルの算出方法は、平均に限定されず、代表値を算出可能な手法であれば他の手法であってもよい。
【0047】
<調整値算出方法>
次に、調整値決定部31による調整値算出方法について、図5及び図6を参照して説明する。図5及び図6は、調整値決定部31による調整値算出方法の概要を示す図である。
【0048】
図5及び図6において、印刷装置2による印刷可能色域Cpは、L*a*b*色空間における多面体によって示される。
【0049】
図5には、印刷可能色域Cpの周囲に、クラスターCL1~CL3が配置された様子を示す。クラスターCL1~CL3は、それぞれ色調整履歴情報DB321に格納された特色値を調整値決定部31がクラスタリングすることによって生成されたクラスターである。特色は、印刷装置2によって正確に再現することができない色であるため、特色値が分類されたクラスターCL1~CL3は、印刷可能色域Cpの外に存在する。
【0050】
図6には、クラスターCL1に分類された各特色値と、該特色値に対応付けられた調整値とを結ぶ写像ベクトルとを示す。調整値は、印刷装置2によって再現された色の色値であるため、多面体により表現される印刷可能色域Cp内の値となる。また、図6には、クラスターCL1に分類された各特色値に対応付けられた写像ベクトルの平均値である、クラスター写像ベクトルを太字の矢印で示す。
【0051】
調整値決定部31は、クラスターに対応付けられた写像ベクトルの平均値と、印刷可能色域Cp表面との交点に位置する色値を、再現の対象(目標)となる特色値の再現用の調整値として算出(決定)する。そして、調整値決定部31によって算出された調整値は、印刷装置2に送信され、印刷装置2における色調整画面(図7図8参照)に、調整前の値又は中央値として表示される。
【0052】
<色調整画面の構成>
次に、図7図8を参照して、色調整画面の構成について説明する。図7及び図8は、色調整画面の構成例を示す図である。
【0053】
図7に示す色調整画面Sc1は、ユーザーがCMYKの値を直接入力することにより、調整値を微調整することが可能な画面である。色調整画面Sc1の右側には、C,M,Y,Kの各パラメータの値を変更可能な、パラメータ調整部Paが配置されている。パラメータ調整部Paは、C,M,Y,Kの各パラメータを示すテキストボックスと、テキストボックスに示された値を増減させることが可能なスピンボタンとで構成される。
【0054】
パラメータ調整部Paの左側には、調整前の色及び調整後の色を示す色表示部Dc1が設けられている。色表示部Dc1の左半分には調整前の色が表示され、右半分には調整後の色が表示される。ユーザーは、色表示部Dc1に表示された調整後の色を目視して確認しながら、パラメータ調整部Paにおいてパラメータを調整することにより、特色値の調整値を微調整することができる。
【0055】
図8に示す色調整画面Sc2の右側には候補色表示部Dc2が設けられ、左側には、上からステップ調整部Pas、番号選択部Sn、グループ選択部Sgが設けられる。
【0056】
候補色表示部Dc2には、特色値の調整値の候補が、縦3列×横3列のパッチを一まとまり(1グループ)とする9つのグループにより示される。調整値決定部31によって算出された調整値による色は、中央に配置されたグループの中央のパッチP0に示される。1つのグループを構成する各パッチは、中央に位置するパッチの色値(CMYK値)を、指定された変化量(ステップ)(%)で8段階に変化させたものである。
【0057】
ステップ調整部Pasは、隣り合うパッチ間におけるCMYK値の変化量(ステップ)(%)を調整するための入力インタフェースであり、変動量の値が示されるテキストボックスと、テキストボックスに表示された値を増減可能なスピンボタンとで構成される。
【0058】
番号選択部Snは、縦3列×横3列の各パッチに割り振られた“1”~“9”の番号の中から、調整値として選択するパッチの番号を選択するための入力インタフェースであり、コンボボックスで構成される。
【0059】
グループ選択部Sgは、調整値として選択するグループの番号を選択するための入力インタフェースであり、コンボボックスで構成される。
【0060】
ユーザーは、図7に示した色調整画面Sc1や図8に示した色調整画面Sc2などを介して、調整前の色又は中央値として示された色、すなわち、調整値決定部31によって算出された調整値を示す色(調整色)と、自らが調整した色とを見比べながら、トレンドや好みなどに合わせて色を調整することができる。
【0061】
<調整値の微調整と写像ベクトルとの対応例>
次に、図9を参照して、調整値の微調整と写像ベクトルとの対応例について説明する。図9は、調整値の微調整と写像ベクトルとの対応例を示す図である。図9Aには、微調整前の写像ベクトルVc0を示し、図9Bに、微調整前の写像ベクトルVc0及び微調整後の写像ベクトルVc1を示す。
【0062】
図7又は図8に示した色調整画面に基づく調整値の微調整がユーザーによって行われることにより、特色値と調整値とを結ぶ写像ベクトルは、図7及び図8に示した写像ベクトルVc0から、写像ベクトルVc1に変更される。そして、この変更後の調整値及び写像ベクトルVc1の情報は、調整値決定部31によって、色調整履歴情報DB321(図3参照)に新たに登録される。さらに、調整値決定部31は、色調整履歴情報DB321に新たに登録された情報を用いて、色調整履歴クラスター情報DB322(図4参照)の内容も更新する。
【0063】
このように、微調整が行われる度にその調整の情報が色調整履歴情報DB321に蓄積され、色調整履歴クラスター情報DB322が更新されていくことにより、色調整履歴情報DB321及び色調整履歴クラスター情報DB322は、トレンドやユーザーの好みに応じて実施された調整値の微調整の内容を反映したものとなる。
【0064】
<画像形成システムによる色調整履歴情報管理処理>
次に、図10を参照して、画像形成システム100による色調整履歴情報管理処理について説明する。図10は、色調整履歴情報管理サーバー3による色調整履歴情報管理処理の手順の例を示すフローチャートである。
【0065】
まず、色調整履歴情報管理サーバー3の調整値決定部31(図2参照)は、再現(又は微調整)の対象となる特色の色の情報の入力を受け付ける(ステップS1)。特色の色の情報の入力は、例えば、図7又は図8に示した色調整画面の前段階で表示される画面に対するユーザーによる特色名の入力や、測色機4又はインライン測色機27によって測色された色値の受信などの方法で行われる。
【0066】
次いで、調整値決定部31は、ステップS1で入力された特色に対応付けられた調整履歴の情報の、色調整履歴クラスター情報DB322から取得する(ステップS2)。次いで、調整値決定部31は、ステップS1で入力された特色に対応付けられたクラスターの情報が、色調整履歴クラスター情報DB322内に存在したか否かを判定する(ステップS3)。すなわち、特色に対応付けられたクラスターの情報を取得できたか否かを判定する。
【0067】
ステップS3で、特色に対応するクラスター情報はないと判定された場合(ステップS3がNO判定の場合)、調整値決定部31は、印刷可能色域Cp(図5図6参照)の情報に基づいて調整値を算出する(ステップS4)。具体的には、調整値決定部31は、ステップS1で入力された特色の色値(特色値)からの距離が最短となる印刷可能色域Cpの表面の値を、調整値として算出する。
【0068】
一方、ステップS3で特色に対応するクラスター情報はあると判定された場合(ステップS3がYES判定の場合)、調整値決定部31は、特色値が分類されたクラスターに対応付けられた写像ベクトル(写像ベクトルの代表値)と、印刷可能色域Cpとが交わる点を、調整値として算出する(ステップS5)。
【0069】
ステップS4又はステップS5の処理後、調整値決定部31は、調整値の微調整を行うか否かを判定する(ステップS6)。微調整を行うか否かは、ユーザーによって指示される。ステップS6で、微調整を行うと判定された場合、調整値決定部31は、調整値を調整前の値又は中央値とした色調整画面を、クライアント端末1の操作表示部12(図2参照)に表示させる(ステップS7)。
【0070】
ステップS7の処理後、又は、ステップS6がNO判定の場合、調整値決定部31は、ユーザーによる微調整の操作を受け付ける(ステップS8)。次いで、調整値決定部31は、ステップS8で受け付けた微調整の内容で、色調整履歴情報DB321の内容を更新する(ステップS9)。次いで、調整値決定部31は、ステップS9で更新された色調整履歴情報DB321の情報に基づいて、色調整履歴クラスター情報DB322の内容を更新する(ステップS10)。ステップS10の処理後、画像形成システム100による色調整履歴情報管理処理は終了する。
【0071】
なお、図10には、色調整履歴情報DB321の内容の更新の都度、色調整履歴クラスター情報DB322の内容の更新も行われる例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。色調整履歴クラスター情報DB322の内容の更新は、バッチ処理等によって、色調整履歴クラスター情報DB322の内容の更新タイミングとは異なるタイミングでまとめて実施されてもよい。
【0072】
上述した実施形態では、調整値決定部31は、調整が行われた特色の情報をクラスタリングして得られるクラスターの情報と、特色の再現に用いられた調整値の情報との対応情報に基づいて、特色の再現用の調整値を決定する。したがって、本実施形態によれば、色再現用の調整値に調整の履歴の内容を反映させることができる。
【0073】
また、上述した実施形態では、調整値決定部31は、調整(再現)対象となる特色が属しているクラスターに対応付けられた写像ベクトルの代表値(平均値)と、印刷装置2の印刷可能色域Cpの表面との交点にある色値を、再現対象の特定色の調整値として算出する。写像ベクトルの代表値は、調整(再現)対象となる特色を起点とし、該特色の調整値を終点とする写像ベクトルの平均値等によって算出されるものである。
【0074】
そして、写像ベクトルは、ユーザーの好みやトレンドを反映した微調整が行われた結果の調整値と、調整対象の特色値とを対応付けるものである。したがって、該写像ベクトルと印刷可能色域Cpの表面との交点にある色値から算出された調整値は、ユーザーの好みやトレンドを反映したものとなる。すなわち、本実施形態によれば、特色の再現用の調整値に、ユーザーの好みやトレンドを反映させることができる。
【0075】
なお、上述した実施形態では、調整を行う対象が特色である例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。調整(再現)の対象となる色であれば、特色以外の色、すなわち、印刷可能色域Cp内の色(プロセスカラー)であってもよい。
【0076】
例えば、インドにおいては印刷物の色は実際の色よりも原色に近いペンキのような濃い色が好まれる傾向があるなど、好まれる(再現すべき)色は、国や地域によって異なることが知られている。したがって、例えば、画像の種類や地域などの情報を、再現対象の色の属性情報として、調整値と対応付けて管理することが行われてもよい。
【0077】
図11は、変形例に係る色調整履歴情報DB321aの構成例を示す図であり、図12は、変形例に係る色調整履歴クラスター情報DB322aの構成例を示す図である。
【0078】
図11に示す色調整履歴情報DB321aは、「属性」及び「調整値」の項目を有する。
「属性」の項目は、「画像」及び「地域」の項目を有する。
「画像」の項目には、「空」、「草原」などの、画像の種類の情報が格納される。
「地域」の項目には、国や州、都道府県などの地域の名称又は識別情報などが格納される。図11に示す例では、地域の情報として、「A」、「B」、「C」の情報が格納されている。
【0079】
「調整値」の項目には、調整値を用いて調整(再現)された色を印刷した画像の測色結果(色値)の情報が格納される。
【0080】
図12に示す色調整履歴クラスター情報DB322aは、図11に示した色調整履歴情報DB321aに格納された調整履歴情報をクラスタリングした結果得られた情報を格納したデータベースであり、「属性」、「調整点数」及び「調整値」の各項目を有する。
【0081】
「属性」の項目は、「画像」及び「地域」の項目を有する。「画像」及び「地域」の各項目には、「画像」及び「地域」の組合せをクラスタリングして得られる、各クラスターの情報(画像、地域)が格納される。
【0082】
「調整点数」の項目には、クラスターに含まれる(分類された)、「画像」及び「地域」の各情報により特性される色の数、すなわち、その色の調整が実行された回数の情報が格納される。
【0083】
「調整値」の項目には、クラスターに含まれるすべての調整値の平均値が格納される。すなわち、「調整値」の項目に格納された調整値は、そのクラスターに分類された色の調整履歴を反映した値であると言える。ユーザーが自身の好みやトレンドに合わせた色調整を行った場合には、調整値は、それらの調整内容も反映した値となる。
そして、調整値決定部31(図2参照)は、画像の種類及び地域によって特定される色の調整値として、色調整履歴クラスター情報DB322aに格納された調整値を用いる。
【0084】
変形例によれば、画像形成システム100は、画像の種類及び地域と対応付けて管理される色の調整値として、ユーザーの好みやトレンドが反映された調整値をユーザーに提示することができる。
【0085】
なお、変形例においては、色の属性情報として、色の種類及び地域の情報を用いた例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。調整(再現)対象となる色を特製することが可能な属性情報であれば、他の属性情報が用いられてもよい。
【0086】
なお、上述した実施形態又は変形例は、本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0087】
また、図2において実線、実線で示した制御線又は情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0088】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【符号の説明】
【0089】
1…クライアント端末、2…印刷装置、3…色調整履歴情報管理サーバー、4…測色機、12…操作表示部、27…インライン測色機、30…制御部、31…調整値決定部、100…画像形成システム、321…色調整履歴情報DB、322…色調整履歴クラスター情報DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12