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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098202
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】サンプル測定装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001515
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克典
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 巧
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707BS10
3C707DS01
3C707FS01
3C707FT02
3C707KS34
3C707LU08
3C707LV07
3C707LV09
3C707NS09
(57)【要約】
【課題】サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセットから取り出したサンプルを適切に測定することができるサンプル測定装置を提供する。
【解決手段】サンプル測定装置は、サンプルを測定する測定器と、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセットからサンプルを取り出して測定器へ搬送する搬送装置と、を備える。カセットは、第1方向に設けられた第1端部と、第1方向と直交する第2方向に設けられた第2端部と、を有する。搬送装置は、カセット内で第1端部と第2端部を基準としてサンプルを位置決めする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを測定する測定器と、
サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセットから前記サンプルを取り出して前記測定器へ搬送する搬送装置と、
を備え、
前記カセットは、第1方向に設けられた第1端部と、前記第1方向と直交する第2方向に設けられた第2端部と、を有し、
前記搬送装置は、前記カセット内で前記第1端部と前記第2端部を基準として前記サンプルを位置決めする
サンプル測定装置。
【請求項2】
前記搬送装置を制御する制御部をさらに備え、
前記搬送装置は、前記サンプルを吸着可能な吸着パッドを有するハンド部を備え、
前記制御部は、まず、前記サンプルを前記第1端部に押し当てた後、前記吸着パッドによって前記サンプルを吸着し、次に、前記サンプルを前記第2端部に押し当てて前記吸着パッドによる前記サンプルの吸着を解除し、その後、前記吸着パッドによって前記サンプルの所定位置を吸着するように、前記搬送装置を制御する
請求項1に記載のサンプル測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記サンプルのサイズ情報に基づいて、前記サンプルの所定位置を特定する
請求項2に記載のサンプル測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記吸着パッドによって前記サンプルの所定位置を吸着した後、前記サンプルを前記測定器へ搬送するとともに、前記サンプルの被測定位置が前記測定器の測定位置に一致するように、前記搬送装置を制御する
請求項2に記載のサンプル測定装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記第1端部に前記サンプルを押し当てるために前記ハンド部に取り付けられたサンプル押し当て用部材をさらに備える
請求項2に記載のサンプル測定装置。
【請求項6】
前記サンプル押し当て用部材の下端部は、前記吸着パッドよりも前記サンプルから離間する位置に配置されている
請求項5に記載のサンプル測定装置。
【請求項7】
前記サンプル押し当て用部材は、前記サンプル押し当て用部材によって前記サンプルを前記第1端部に押し当てるときに前記サンプルに接触する接触面を有し、
前記接触面は、平面状に形成されている
請求項5に記載のサンプル測定装置。
【請求項8】
前記ハンド部は、ハンドフレームと、前記ハンドフレームを貫通する状態で前記ハンドフレームに移動自在に取り付けられたシャフトと、をさらに有し、
前記吸着パッドは、前記シャフトの一端側に配置され、
前記サンプル押し当て用部材は、前記ハンドフレームを間に挟んで前記吸着パッドと反対側に位置する前記シャフトの他端側に取り付けられている
請求項5に記載のサンプル測定装置。
【請求項9】
前記測定器及び前記カセットと別の場所に配置されたサンプル位置決め治具を備える
請求項1に記載のサンプル測定装置。
【請求項10】
前記搬送装置は、前記カセットから取り出した前記サンプルを前記サンプル位置決め治具へ搬送し、前記サンプル位置決め治具で前記サンプルを位置決めしてから前記測定器へ搬送する
請求項9に記載のサンプル測定装置。
【請求項11】
前記サンプル位置決め治具は、それぞれ位置決め基準面を有する第1位置決め部及び第2位置決め部を備え、
前記第1位置決め部の前記位置決め基準面と前記第2位置決め部の前記位置決め基準面は、直角に配置され、
前記搬送装置は、前記サンプルを前記第1位置決め部の前記位置決め基準面と前記第2位置決め部の前記位置決め基準面に押し当てることにより、前記サンプルを位置決めする
請求項9に記載のサンプル測定装置。
【請求項12】
前記搬送装置は、前記カセット内で前記サンプルを前記第2端部に押し当てることなく、前記サンプルを前記カセットから取り出す
請求項10に記載のサンプル測定装置。
【請求項13】
前記カセットに収納された前記サンプルに関する情報を入力するための操作部を有する
請求項1に記載のサンプル測定装置。
【請求項14】
前記搬送装置は、力覚センサを備える搬送ロボットによって構成されている
請求項1に記載のサンプル測定装置。
【請求項15】
前記測定器は、前記サンプルの表面状態を測定する
請求項1に記載のサンプル測定装置。
【請求項16】
前記サンプルの表面状態は、前記サンプルの色、表面性及び光沢度のうち少なくともいずれか1つである
請求項15に記載のサンプル測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サンプルを測定器で測定する場合は、予め決められたサンプルの測定対象部位を測定器の計測部に位置合わせするために、サンプルのサイズに適合するL字形プレートを計測部の近傍に取り付け、このL字形プレートにサンプルを押し当ててサンプルを測定する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、ワークの位置決めに関して、ハンド部でワークを把持した後、ハンド部の把持力を低減してワークを平面に落下させることにより、ワークを平面に倣わせ、そのワークをハンド部で再度把持する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-206206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の技術において、サイズが異なるサンプルを順次自動で測定するには、計測部の近傍に取り付けるL字形プレートをサンプルのサイズに合わせて自動で交換する必要がある。このため、自動測定のための装置構成が複雑化してしまう。一方、特許文献1に記載された技術によってサンプルを位置決めする場合は、落下による衝撃でサンプルがダメージを受けたり、サンプルの被測定面に傷や汚れがついたりして、サンプルを適切に測定できなくなるおそれがある。
【0006】
また、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセットにおいては、サイズが大きいサンプルに合わせてサンプル積載部(サンプルが載置状態で支持される部分)を構成する必要がある。このため、サイズが小さいサンプルを収納すると、カセット内でサンプルの収納位置が前後左右にずれている可能性がある。したがって、吸着パッドを用いてカセットからサンプルを取り出す場合は、サンプルの収納位置に合わせて吸着位置を調整しないと、サンプルの吸着に失敗したり所定位置からずれた位置でサンプルを吸着したりするおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセットから取り出したサンプルを適切に測定することができるサンプル測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るサンプル測定装置は、サンプルを測定する測定器と、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセットからサンプルを取り出して測定器へ搬送する搬送装置と、を備える。カセットは、第1方向に設けられた第1端部と、第1方向と直交する第2方向に設けられた第2端部と、を有する。搬送装置は、カセット内で第1端部と第2端部を基準としてサンプルを位置決めする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセットから取り出したサンプルを適切に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るサンプル測定装置の構成を示す概略斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るサンプル測定装置の構成を示す概略平面図である。
図3】カセットの構成を示す概略斜視図である。
図4】カセットの構成を示す概略平面図である。
図5】搬送装置のハンド部の構成を示す概略側面図である。
図6】搬送装置のハンド部をカセット内に進入させた状態を示す概略平面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るサンプル測定装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第1実施形態に係るサンプル測定装置の動作手順を示すフローチャートである。
図9図8のステップS2で行われる取り出し動作の手順を示すサブルーチンである。
図10】カセットにおけるサンプルの収納位置の一例を示す概略平面図である。
図11】サンプルを背板部の内面に押し当てた状態を示す概略側面図である。
図12】サンプルを背板部の内面に押し当てた状態を示す概略平面図である。
図13】サンプルの真上に吸着パッドを配置した状態を示す概略側面図である。
図14】吸着パッドにサンプルを吸着させた状態を示す概略側面図である。
図15】ハンドフレームにサンプル押し当て用部材を取り付けた例を示す概略側面図である。
図16】ハンドフレームにサンプル押し当て用部材を取り付けた場合に起こりうる不具合を説明するための図である。
図17】サンプルを側板部の内面に押し当てた状態を示す概略平面図である。
図18】カセット内で位置決めしたサンプルを吸着パッドで吸着した状態を示す概略側断面図である。
図19図8のステップS3で行われるサンプルの測定動作の手順を示すサブルーチンである。
図20図8のステップS4で行われるサンプルの収納動作の手順を示すサブルーチンである。
図21】本発明の第2実施形態に係るサンプル測定装置の構成を示す概略平面図である。
図22】本発明の第2実施形態に係るサンプル測定装置が備えるサンプル位置決め治具を拡大した平面図である。
図23】本発明の第2実施形態に係るサンプル測定装置の動作手順を示すフローチャートである。
図24図23のステップS16で行われる第2の取り出し動作の手順を示すサブルーチンである。
図25図23のステップS17で行われるサンプルの位置決め動作の手順を示すサブルーチンである。
図26】サンプルの形状の一例を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るサンプル測定装置の構成を示す概略斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係るサンプル測定装置の構成を示す概略平面図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、サンプル測定装置10は、サンプル(図示せず)を測定する測定器11と、カセット12からサンプルを取り出して測定器11へ搬送する搬送装置13と、を備えている。測定器11と搬送装置13は、架台14の上に設置されている。
【0014】
測定器11は、計測部15を有している。計測部15は、予め決められた測定項目について、サンプルを計測(測定)する部分である。例えば、測定器11がサンプルの表面状態を測定する機器であれば、計測部15は、サンプルの表面状態を計測する部分となる。サンプルの表面状態は、サンプルの色、表面性及び光沢度のうち少なくともいずれか1つである。サンプルの表面性は、典型的にはサンプルの表面粗さである。本実施形態においては、一例として、測定器11は、サンプルの色を測定する機器、すなわち測色器であるものとする。測定対象となるサンプルは、測定器11の計測部15にサンプルの被測定面を近接かつ対向する状態で配置される。
【0015】
カセット12は、複数のサンプルを収納可能なカセットである。カセット12は、測定器11及び搬送装置13と共に、サンプル測定装置10を構成する要素であってもよい。1つのカセット12には、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能となっている。測定対象となるサンプルは、典型的には板状のサンプルであり、より典型的には平らな板状のサンプルである。サイズが異なるサンプルは、典型的には形状が同じでサイズが異なるサンプルであるが、これに限らず、例えば、形状が異なるサンプルでもよい。本実施形態において、サンプルの形状とは、板状のサンプルを正面から見た場合の形状、言い換えると水平に置かれたサンプルの平面視形状をいう。本実施形態においては、一例として、平面視四角形(例えば、長方形、正方形など)の板状のサンプルを測定対象とする。サンプルは、実質的に可視光などを透過しない材料、すなわち不透明な材料によって構成される。
【0016】
ここで、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセット12を使用する理由について説明する。
1つのカセット12に同一サイズのサンプルのみを収納する場合は、サンプルのサイズごとに専用のカセット12を用意する必要がある。このため、例えば1つのカセット12に50個のサンプルを収納可能な場合でも、測定対象のサンプルのなかに1個でも別サイズのサンプルが含まれていると、サイズが異なるサンプルを2つのカセット12に分けて収納しなければならなくなる。その結果、1個のサンプルしか収納していないカセット12が、50個のサンプルを収納可能なカセットと同じ面積を専有することになり、サンプル測定装置10全体として搭載可能なサンプル数が減ってしまう。これに対して、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセット12を使用する場合は、上述した別サイズのサンプルを他のサンプルと一緒に1つのカセット12にまとめて収納することができる。したがって、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセット12を使用すれば、1つのカセット12に同一サイズのサンプルのみを収納する場合に比べて、サンプル測定装置10全体として搭載可能なサンプル数を増やすことができる。
以上の理由により、本実施形態においては、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能なカセット12を使用する。
【0017】
カセット12は、架台14の上に複数載置されている。複数のカセット12には、測定前のサンプル(以下、「未測定のサンプル」ともいう。)が収納されたカセット12と、測定を終えたサンプル(以下、「測定済みのサンプル」ともいう。)を収納するためのカセット12が含まれる。架台14に載置可能なカセット12の数は、必要に応じて変更可能である。図2においては、一例として、合計9つのカセット12が架台14上に載置されている。
【0018】
個々のカセット12は、複数のサンプルを上下方向に所定の間隔をあけて積載した状態、すなわち上下方向に複数段(多段)に並べて収納可能である。本実施形態においては、一例として、1つのカセット12に、サイズが異なる複数のサンプルが混載されるものとする。カセット12の各段には、サンプルが被測定面を下向きにした状態で収納される。
【0019】
搬送装置13は、指定のカセット12からサンプルを順に取り出して測定器11へ搬送する。搬送装置13は、多軸ロボットによって構成されている。本実施形態においては、一例として、搬送装置13が6軸ロボットによって構成されている。搬送装置13としての6軸ロボットは、図示しない力覚センサ(6軸力覚センサ)を備えている。
【0020】
搬送装置13は、サンプルを保持するハンド部16を備えている。ハンド部16は、搬送装置13を構成する6軸ロボットの先端部に配置されている。搬送装置13は、カセット12に収納されている未測定のサンプルをハンド部16によって1つずつ保持し、保持したサンプルを測定器11の計測部15に向けて搬送する。また、搬送装置13は、測定器11の計測部15にサンプルを配置し、計測部15でサンプルの色の測定(計測)を終えると、測定済みのサンプルを指定のカセット12に向けて搬送する。未測定のサンプルを収納するカセット12と、測定済みのサンプルを収納するカセット12は、別々に指定される。このため、いずれかのカセット12から取り出されたサンプルは、測定器11による測定が完了した後、別のカセット12に収納される。
【0021】
図3は、カセットの構成を示す概略斜視図であり、図4は、カセットの構成を示す概略平面図である。図3及び図4においては、カセットの各部の位置関係等を明確にするため、カセットの幅方向をX方向、カセットの奥行き方向をY方向、カセットの高さ方向をZ方向としている。カセット12は、サンプルを水平方向(奥行き方向Y)から出し入れ可能である。このため、カセットの奥行き方向Yの手前側は、サンプルを出し入れするために開放されている。カセットの高さ方向Zにおいて、下方は、底板部121によって閉じられ、上方は、搬送装置13のハンド部16と干渉(接触)しないように開放されている。
【0022】
図3及び図4に示すように、カセット12は、底板部121と、底板部121から垂直に起立する一対の側板部122,123と、一対の側板部122,123を連結する背板部124とを備えている。底板部121は、カセット12の高さ方向Zの最下部に配置されている。一対の側板部122,123は、カセット12の幅方向Xで互いに対向する状態に配置されている。背板部124は、カセット12の奥行き方向Yの奥側に配置されている。背板部124は、一対の側板部122,123とほぼ同じ高さ寸法を有する。背板部124の内面124aは、カセット12の奥行き方向Yで手前側(図4の下側)を向いて配置されている。
【0023】
一対の側板部122,123の内面122a,123aは、カセット12の幅方向Xで互いに対向している。側板部122の内面122aには、複数の支持部125が設けられ、側板部123の内面123aには、複数の支持部126が設けられている。複数の支持部125は、カセット12の高さ方向Zに所定の間隔をあけて配置され、複数の支持部126も、カセット12の高さ方向Zに所定の間隔をあけて配置されている。複数の支持部125と複数の支持部126は、1つのカセット12に複数のサンプルを複数段に積載して収納する場合に、各々の段でサンプルを載置状態に支持する部分(サンプル積載部)である。同じ段でサンプルを支持する支持部125,126は、カセット12の高さ方向Zでは同じ位置に配置され、カセット12の幅方向Xでは互いに対向する状態に配置されている。支持部125は、カセット12の奥行き方向Yに長い平板状に形成され、支持部126も、カセット12の奥行き方向Yに長い平板状に形成されている。また、支持部125は、側板部122の内面122aからカセット12の幅方向中心側に突出する状態に配置され、支持部126は、側板部123の内面123aからカセット12の幅方向中心側に突出する状態に配置されている。カセット12に収納されたサンプルは、被測定面の端部が一対の支持部125,126に載置された状態で、水平な姿勢に支持される。
【0024】
上記構成からなるカセット12において、カセット12の奥行き方向Yは、第1方向に相当し、カセット12の幅方向Xは、第1方向と直交する第2方向に相当する。また、背板部124の内面124aは、第1方向に設けられた第1端部に相当し、側板部123の内面123aは、第2方向に設けられた第2端部に相当する。第1端部は、カセット12に収納されているサンプルを第1方向で押し当てにより位置決めするための第1押し当て端となり、第2端部は、カセット12に収納されているサンプルを第2方向で押し当てにより位置決めするための第2押し当て端となる。
【0025】
なお、本実施形態においては、一対の側板部122,123の内面122a,123aにそれぞれ支持部125,126が設けられているが、カセット12はこれに限らず、例えば図示はしないが、一対の側板部122,123の内面122a,123aにそれぞれサンプルを支持するための複数の溝が複数段(多段)に形成された構成であってもよい。すなわち、カセット12は、サイズが異なる複数のサンプルを収納可能な構成であればよい。また、カセット12の内部では、各々のサンプルが水平な姿勢で支持される。
【0026】
図5は、搬送装置のハンド部の構成を示す概略側面図である。図6は、搬送装置のハンド部をカセット内に進入させた状態を示す概略平面図である。
図5及び図6に示すように、搬送装置13(図1参照)のハンド部16は、ハンドフレーム21と、軸受22と、シャフト23と、真空発生器24と、付勢用の弾性体であるバネ25と、吸着パッド26と、サンプル押し当て用部材27とを備えている。
【0027】
ハンドフレーム21の基端部は、搬送装置13としての6軸ロボットの先端部に取り付けられる。軸受22は、ハンドフレーム21の先端部に取り付けられている。シャフト23は、ハンドフレーム21に軸受22を介して移動自在に支持されている。シャフト23は、ハンドフレーム21を貫通する状態で配置されている。真空発生器24は、シャフト23の下端部に取り付けられている。真空発生器24は、真空吸着のための吸着力を発生させる機器である。バネ25は、軸受22と真空発生器24との間に位置してシャフト23に取り付けられている。バネ25は、シャフト23及び真空発生器24を図5の下方に付勢する部材である。なお、図示はしないが、シャフト23の一部は、バネ25の付勢力によってストッパーに突き当てられている。
【0028】
吸着パッド26は、シャフト23の下端側に配置されている。具体的には、吸着パッド26は、真空発生器24の下端部に取り付けられている。吸着パッド26は、サンプル30を吸着可能なゴム製のパッドである。吸着パッド26は筒状に形成されている。吸着パッド26は、サンプル30の被測定面30aと反対側の面(以下、「被吸着面」ともいう。)30bを吸着する。サンプル30の被測定面30aは、図1及び図2に示す測定器11の計測部15でサンプル30の表面状態(本実施形態の例ではサンプル30の色)を測定するときに、計測部15に近接かつ対向する状態で配置される面である。
【0029】
サンプル押し当て用部材27は、カセット12に収納されているサンプル30を背板部124の内面124aに押し当てるための部材である。サンプル押し当て用部材27は、ハンドフレーム21を間に挟んで吸着パッド26と反対側に位置するシャフト23の上端側に取り付けられている。
【0030】
サンプル押し当て用部材27は、第1アーム部271と、第2アーム部272とを備えている。第1アーム部271と第2アーム部272は、一体構造になっていてもよいし、別体構造になっていてもよい。第1アーム部271の基端部は、シャフト23の上端部に、例えばネジ止め、圧入等によって固定されている。このため、サンプル押し当て用部材27は、シャフト23と一体に図5の上下方向に移動する。第1アーム部271は、シャフト23の上端部から水平方向に延在している。第2アーム部272は、第1アーム部271の先端部から鉛直下方に延在している。第2アーム部272は、第1アーム部271と直角をなす向きに配置されている。
【0031】
第2アーム部272の下端部272aは、吸着パッド26に吸着されるサンプル30に対して、吸着パッド26よりもサンプル30から離間する位置に配置されている。本実施形態では、カセット12からサンプル30を取り出すときのハンド部16の姿勢を基準に上下方向を規定している。シャフト23の中心軸方向において、第2アーム部272の下端部272aと吸着パッド26の下端部との段差寸法Lg(図13参照)は、カセット12の高さ方向Zで隣り合う2つの支持部125(又は2つの支持部126)の離間距離よりも小さい。
【0032】
第2アーム部272の下端部272aには、接触面272bが形成されている。接触面272bは、サンプル押し当て用部材27によってサンプル30を背板部124の内面124aに押し当てる場合に、サンプル30に接触する。接触面272bは、サンプル30に対してサンプル押し当て用部材27が平らな面で接触するよう、平面状に形成されている。接触面272bを平面状に形成することにより、サンプル押し当て用部材27によってサンプル30を背板部124に押し当てるときに、サンプル30の曲がりや回転を抑制して、サンプル30を真っ直ぐに押し当てることができる。
【0033】
図7は、本発明の第1実施形態に係るサンプル測定装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、サンプル測定装置10は、上述した測定器11及び搬送装置13の他に、制御部17及び操作部18を備えている。制御部17は、例えばコンピュータのハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを備えている。制御部17は、CPUがROMから所定のプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムをCPUが実行することにより、サンプル測定装置10の各部の動作を統括的に制御する。
【0034】
具体的には、制御部17は、未測定のサンプル30を指定のカセット12から取り出すときの搬送装置13の動作(以下、「取り出し動作」という。)と、サンプル30を測定するときの測定器11及び搬送装置13の動作(以下、「測定動作」という。)と、測定済みのサンプル30を指定のカセット12に収納するときの搬送装置13の動作(以下、「収納動作」という。)を制御する。制御部17の制御下におけるサンプル測定装置10の動作手順については後段で詳しく説明する。
【0035】
操作部18は、サンプル測定装置10を使用するユーザーに対して各種の情報を表示したり、ユーザーから各種の情報の入力を受け付けたりするユーザーインターフェースとして機能する。操作部18は、例えば、図示しない表示部及び入力部を備える。操作部18を介して入力される情報には、カセット12に収納されたサンプル30に関する情報が含まれる。サンプル30に関する情報には、サンプル30の種別を示す情報と、サンプル30のサイズ(形状を含む)を示す情報と、未測定(測定対象)のサンプル30が収納されたカセット12を指定する情報と、測定済みのサンプル30を収納すべきカセット12を指定する情報などが含まれる。これらの情報は、後述するサンプル測定装置の動作を開始する前に、ユーザーが操作部18を操作することにより入力される。
【0036】
ユーザーによる情報の入力形態としては、例えば、サンプル30に関する情報をタッチパネルやキーボードの操作等で直接入力する場合、或いは、サンプル30に関する情報が保存されているコンピュータ上の保存場所又はネットワーク上の保存場所をタッチパネルやキー操作等で指定し、指定先の保存場所からサンプル30に関する情報を読み出して入力する場合などが考えられる。本発明はどのような入力形態であってもよい。
【0037】
図8は、本発明の第1実施形態に係るサンプル測定装置の動作手順を示すフローチャートである。サンプル測定装置10の動作を制御する主体は制御部17であり、この制御部17が制御する客体は測定器11及び搬送装置13である。
【0038】
まず、制御部17は、未測定サンプルの収納先として指定されたカセット12に、未測定のサンプル30があるか否かを判断する(ステップS1)。未測定サンプルの収納先となるカセット12は、予めユーザーが操作部18からカセット指定情報を入力することにより指定される。カセット指定情報は、例えば、架台14上におけるカセット12の載置位置を示す情報、カセット12の識別情報などである。未測定サンプルの収納先として指定されるカセット12の数は1つでも複数でもよい。制御部17は、指定されたカセット12に未測定のサンプル30があると判断した場合は、次のステップS2に進み、指定されたカセット12に未測定のサンプル30がないと判断した場合は、一連の処理を終える。
【0039】
次に、制御部17は、搬送装置13によるサンプルの取り出し動作(ステップS2)と、測定器11及び搬送装置13によるサンプルの測定動作(ステップS3)と、搬送装置13によるサンプルの収納動作(ステップS4)を順に実行させる。そして、ステップS4のサンプルの収納動作を終えると、上記ステップS1に戻る。
【0040】
図9は、図8のステップS2で行われるサンプルの取り出し動作の手順を示すサブルーチンである。サンプルの取り出し動作は、制御部17が搬送装置13の駆動を制御することにより実行される。また、指定されたカセット12に複数のサンプル30が収納されている場合は、上段から下段に向かって1つずつサンプル30が取り出される。
【0041】
まず、制御部17は、予め決められたホームポジションから、未測定サンプルの収納先として指定されたカセット12の手前までハンド部16を移動させる(ステップS2a)。このステップS2aにおいて、制御部17は、指定されたカセット12に向けてハンド部16の移動を開始させるとともに、そのカセット12から取り出すべきサンプル30が収納されている段の手前に吸着パッド26が配置される位置でハンド部16の移動を停止させる。このとき、サンプル押し当て用部材27の下端部272aは、カセット12から取り出すべきサンプル30とほぼ同じ高さ位置に配置される。ステップS2aの時点では、今回の取り出し動作によってカセット12から取り出すべきサンプル30が、例えば図10に示す位置に収納されているものとする。
【0042】
次に、制御部17は、ハンド部16の水平移動により、第1端部である背板部124の内面124aにサンプル30の端面を押し当てる(ステップS2b)。このステップS2bにおいて、制御部17は、カセット12の手前側から奥側に向かってハンド部16の水平移動を開始させるとともに、この水平移動によりサンプル押し当て用部材27の接触面272b(図5参照)をサンプル30の手前側の端面300(図10参照)に接触させ、その接触状態を維持しながら図11及び図12に示すように背板部124の内面124aにサンプル30の奥側の端面301を押し当てる。これにより、カセット12の奥行き方向Yにおいて、サンプル30は、背板部124の内面124aを基準に位置決めされる。
また、ステップS2bにおいて、制御部17は、ハンド部16の水平移動中にサンプル30の端面301が背板部124の内面124aに突き当たったか否かを、搬送装置13が備える力覚センサの検出信号に基づいて判断し、否定判断している間はハンド部16の水平移動を継続し、肯定判断した時点でハンド部16の水平移動を停止させる。
【0043】
次に、制御部17は、上述した水平移動を開始する前の位置までハンド部16を移動させる(ステップS2c)。
【0044】
次に、制御部17は、図13に示すように、取り出すべきサンプル30の真上に吸着パッド26を配置する(ステップS2d)。このステップS2dにおいて、制御部17は、指定されたカセット12の上方に向けてハンド部16の移動を開始させるとともに、そのカセット12から取り出すべきサンプル30の真上に吸着パッド26が配置される位置でハンド部16の移動を停止させる。
【0045】
次に、制御部17は、図14に示すように、吸着パッド26にサンプル30を吸着させる(ステップS2e)。このステップS2eにおいて、制御部17は、取り出すべきサンプル30に向かってハンド部16を下降させることにより、サンプル30の被吸着面30bに吸着パッド26を接触させ、その状態で真空発生器24による真空吸着力を発生させることにより、吸着パッド26にサンプル30を吸着させる。
【0046】
その際、ハンド部16(ハンドフレーム21)の下降によって吸着パッド26がサンプル30に接触し、その接触圧が所定値を超えると、バネ25が圧縮する。そうすると、吸着パッド26は、バネ25の圧縮による反力(付勢力)を受けてサンプル30に押し付けられる。このため、吸着パッド26をサンプル30に密着させることができる。
【0047】
また、上述のようにバネ25が圧縮すると、ハンドフレーム21に対するシャフト23の相対位置は変化するが、シャフト23の絶対位置はほとんど変化しない。つまり、ハンドフレーム21の下降によってバネ25が圧縮しても、上下方向(カセット12の高さ方向Z)におけるシャフト23の位置はほとんど変化しない。
【0048】
本実施形態では、サンプル押し当て用部材27がシャフト23の上端部に取り付けられている。このため、ハンドフレーム21の下降によって吸着パッド26がサンプル30に接触した後は、さらなるハンドフレーム21の下降によってバネ25を圧縮させても、バネ25の付勢力を受けて吸着パッド26が僅かに弾性変形するだけで、シャフト23及びサンプル押し当て用部材27の位置はほとんど変化しない。したがって、ハンド部16の下降によって吸着パッド26にサンプル30を吸着させる場合に、サンプル押し当て用部材27とサンプル30との干渉(接触)を避けることができる。
【0049】
これに対し、例えば図15に示すように、ハンドフレーム21にサンプル押し当て用部材27が取り付けられている場合は、次のようになる。
まず、カセット12の高さ方向Zで隣り合う2つのサンプル30のうち、上段のサンプル30が下段のサンプル30よりも小さい場合は、第2アーム部272の長さを適宜調整することにより、下段のサンプル30に吸着パッド26を接触させることなく、サンプル押し当て用部材27の下端部272aを上段のサンプル30に接触させ、上段のサンプル30をサンプル押し当て用部材27によって背板部124の内面124aに押し当てることができる。
【0050】
しかしながら、その後のステップ2eで、ハンド部16(ハンドフレーム21)の下降によって上段のサンプル30を吸着パッド26で吸着する場合は、ハンドフレーム21の下降によってバネ25が圧縮した後も、サンプル押し当て用部材27がハンドフレーム21と一緒に下降する。このため、図16に示すように、ハンド部16の下降によって吸着パッド26にサンプル30を吸着させる場合に、サンプル押し当て用部材27の下端部272aが上段のサンプル30に接触しやすくなる。よって、サンプル押し当て用部材27は、図5に示すように、シャフト23の上端部に取り付けられていることが好ましい。
【0051】
再び図9に戻って説明する。
次に、制御部17は、第2端部である側板部123の内面123aにサンプル30を押し当てる(ステップS2f)。このステップS2fにおいて、制御部17は、吸着パッド26でサンプル30を吸着しながらハンド部16をカセット12の幅方向Xに移動させることにより、図17に示すように、側板部123の内面123aにサンプル30の側方の端面302を押し当てる(ステップS2f)。これにより、カセット12の幅方向Xにおいて、サンプル30は、側板部123の内面123aを基準に位置決めされる。また、ステップS2fにおいて、制御部17は、ハンド部16の移動中にサンプル30の端面302が側板部123の内面123aに突き当たったか否かを、搬送装置13が備える力覚センサの検出信号に基づいて判断し、否定判断している間はハンド部16の移動を継続し、肯定判断した時点でハンド部16の移動を停止させる。
【0052】
次に、制御部17は、吸着パッド26によるサンプル30の吸着を解除する(ステップS2g)。このステップS2gにおいて、制御部17は、真空発生器24による真空吸着力を消滅させることにより、吸着パッド26による吸着状態からサンプル30を解放する。
【0053】
次に、制御部17は、吸着パッド26とサンプル30との間に隙間が確保されるようにハンド部16を所定量だけ上昇させた後、吸着パッド26をサンプル30の中心位置に移動させる(ステップS2h)。サンプル30の中心位置は、サンプル30の被吸着面30bの中心位置である。制御部17は、予め操作部18を介して入力される、サンプルに関する情報のうち、サンプル30のサイズ情報に基づいて、サンプル30の中心位置を特定する。サンプル30の中心位置は、サンプル30の所定位置として好ましい位置である。サンプル30の所定位置は、吸着パッド26によるサンプル30の吸着や、測定器11によるサンプル30の測定などに支障が生じないかぎり、サンプル30の中心位置以外でもよい。
【0054】
次に、制御部17は、図18に示すように、吸着パッド26にサンプル30を吸着させる(ステップS2i)。このステップS2iにおいて、制御部17は、サンプル30に向かってハンド部16を下降させることにより、サンプル30の中心位置に吸着パッド26を接触させ、その状態で真空発生器24による真空吸着力を発生させることにより、吸着パッド26にサンプル30を吸着させる。これにより、サンプル30の中心位置を吸着パッド26に吸着させることができる。吸着パッド26によるサンプル30の吸着は、後述する収納動作において、吸着パッド26によるサンプル30の吸着を解除するまで維持(継続)される。
【0055】
次に、制御部17は、ハンド部16を所定量だけ上昇させることにより、支持部125,126からサンプル30を少し持ち上げる(ステップS2j)。これにより、サンプル30は、それまで収納されていた段の支持部125,126と、その1つ上の段の支持部125,126との間に配置される。
【0056】
次に、制御部17は、カセット12の奥側から手前側に向かってハンド部16を水平移動させることにより、カセット12からサンプル30を取り出す(ステップS2k)。
以上で、サンプルの取り出し動作が終了する。
【0057】
図19は、図8のステップS3で行われるサンプルの測定動作の手順を示すサブルーチンである。サンプルの測定動作は、制御部17が測定器11及び搬送装置13の駆動を制御することにより実行される。また、サンプルの測定動作は、指定のカセット12から1つのサンプル(未測定のサンプル)30が取り出されるたびに実行される。
【0058】
まず、制御部17は、吸着パッド26に吸着されているサンプル30を測定器11の計測位置に移動させる(ステップS30a)。このステップS30aにおいて、制御部17は、吸着パッド26でサンプル30を吸着しながらハンド部16を測定器11に向けて移動させる。また、制御部17は、ハンド部16の姿勢と位置を適宜変更することにより、サンプル30の被測定面30a(図5参照)を測定器11の計測部15に押し当てる。制御部17において、測定器11の計測部15にサンプル30の被測定面30aが接触したか否かの判断は、搬送装置13が備える力覚センサの検出信号に基づいて行われる。これにより、サンプル30の被測定面30aは、測定器11の計測部15に近接かつ対向する状態に配置される。このとき、吸着パッド26は、サンプル30の中心位置を吸着している。このため、制御部17は、ハンド部16の姿勢と位置を適宜変更することにより、吸着パッド26によるサンプル30の吸着位置を、測定器11の計測部15の中心位置に合わせる。つまり、制御部17は、サンプル30の被測定位置が測定器11の測定位置に一致するように、搬送装置13を制御する。
【0059】
次に、制御部17は、サンプル30の測定を実施する(ステップS3b)。このステップS3bにおいて、制御部17は、例えば図示はしないが、測定器11が備える光源から測定用の光をサンプル30の被測定面30aに照射するとともに、被測定面30aから反射する光を、測定器11が備えるセンサで受光することにより、サンプル30の表面状態を測定する。測定器11の構成は、サンプル30の何を測定するかによって変わる可能性がある。本実施形態では、上記ステップS3aで述べたとおり、吸着パッド26によるサンプル30の吸着位置を、測定器11の計測部15の中心位置に合わせるため、サンプル30の被測定面30aの中心部を対象に、サンプル30の表面状態を測定することができる。
以上で、サンプルの測定動作が終了する。
【0060】
図20は、図8のステップS4で行われるサンプルの収納動作の手順を示すサブルーチンである。サンプルの収納動作は、1つのサンプル30の測定を終えるたびに実行される。
【0061】
まず、制御部17は、吸着パッド26でサンプル30を吸着しながら、測定済みサンプルの収納先として指定されたカセット12の手前までハンド部16を移動させる(ステップS4a)。このステップS4aにおいて、制御部17は、指定されたカセット12に向けてハンド部16の移動を開始させるとともに、そのカセット12においてサンプル30を収納すべき段(以下、「所定の段」ともいう。)の手前に吸着パッド26が配置される位置でハンド部16の移動を停止させる。
【0062】
次に、制御部17は、ハンド部16の水平移動により吸着パッド26をカセット12の手前側から奥側に移動させることにより、サンプル30をカセット12内の所定の段に進入させる(ステップS4b)。このステップS4bにおいて、制御部17は、操作部18からの入力情報を基に特定されるサンプル30のサイズに応じて、ハンド部16の水平移動量を制御する。
【0063】
次に、制御部17は、ハンド部16の下降により、所定の段を形成している支持部125,126の近傍までサンプル30を下げた後、吸着パッド26によるサンプル30の吸着を解除する(ステップS4c)。これにより、測定済みのサンプル30は、所定の段で支持部125,126に載置状態に支持される。
【0064】
次に、制御部17は、ハンド部16を所定量だけ上昇させることにより、サンプル30から吸着パッド26を分離させる(ステップS4d)。
【0065】
次に、制御部17は、ハンド部16をホームポジションまで移動させる(ステップS4e)。ホームポジションは、サンプルの取り出し動作を開始するときにハンド部16が配置されていたポジションである。
以上で、サンプルの収納動作が終了する。
【0066】
以上説明したように、本発明の第1実施形態において、搬送装置13は、カセット12内で背板部124の内面124a(第1端部)と側板部123の内面123a(第2端部)を基準としてサンプル30を位置決めし、その後、サンプル30からカセット12から取り出す。これにより、サイズが異なる複数のサンプル30を収納可能なカセット12から、高い位置精度でサンプル30を取り出すことができる。したがって、測定器11においては、サンプル30のサイズに合わせて計測部15の近傍にL字形プレートを取り付けたり、このL字形プレートを交換したりしなくても、サイズが異なるサンプル30を自動で適切に測定することができる。
【0067】
<第2実施形態>
図21は、本発明の第2実施形態に係るサンプル測定装置の構成を示す概略平面図である。
図21に示すように、サンプル測定装置10Aは、上記第1実施形態に係るサンプル測定装置10(図2参照)と比較して、サンプル位置決め治具20を備える点が異なる。サンプル位置決め治具20は、架台14上において、測定器11及びカセット12と別の場所に配置されている。サンプル位置決め治具20は、カセット12から取り出された未測定のサンプル30を高精度に位置決めするための治具である。本明細書において、「高精度」なサンプル30の位置決めとは、上記第1実施形態のようにカセット12の側板部123と背板部124を利用してサンプル30を位置決めする場合に比べて、サンプル30の位置精度が高いという意味である。
なお、第2実施形態に係るサンプル測定装置10Aの制御系の構成は、第1実施形態に係るサンプル測定装置10の制御系の構成(図7)と同様である。
【0068】
図22は、本発明の第2実施形態に係るサンプル測定装置が備えるサンプル位置決め治具を拡大した平面図である。
図22に示すように、サンプル位置決め治具20は、一対のサンプル受け部201,202と、第1位置決め部203と、一対の第2位置決め部204,205とを備えている。一対のサンプル受け部201,202は、サンプル30を下から受けて支持する部分である。一対のサンプル受け部201,202は、第1位置決め部203及び一対の第2位置決め部204,205よりも一段凹んだ位置に配置されている。第1位置決め部203と第2位置決め部204,205は、それぞれ直方体形状に形成されている。
【0069】
第1位置決め部203は位置決め基準面203aを有している。また、第2位置決め部204は位置決め基準面204aを有し、第2位置決め部205は位置決め基準面205aを有している。第1位置決め部203と第2位置決め部204,205は、一対のサンプル受け部201,202よりも一段高い位置に、平面視略U字形(コ字形)に配置されている。位置決め基準面203aは、位置決め基準面204aと直角に配置されている。位置決め基準面204aと位置決め基準面205aは、互いに平行かつ対向する状態に配置されている。
【0070】
図23は、本発明の第2実施形態に係るサンプル測定装置の動作手順を示すフローチャートである。第2実施形態において、サンプル測定装置10Aの動作を制御する主体は制御部17であり、この制御部17が制御する客体は測定器11及び搬送装置13である。
【0071】
まず、制御部17は、未測定サンプルの収納先として指定されたカセット12に、未測定のサンプル30があるか否かを判断し(ステップS11)、未測定のサンプル30があると判断した場合は、次のステップS12に進み、未測定のサンプル30がないと判断した場合は、一連の処理を終える。
【0072】
次に、制御部17は、次に測定すべきサンプル30が、高精度な位置決めが必要なサンプルか否かを判断する(ステップS12)。このステップS12において、制御部17は、予め操作部18を介して入力される、サンプル30に関する情報に基づいて、高精度な位置決めが必要なサンプルか否かを判断する。そして、ステップS12で否定判断した場合はステップS13に進み、ステップS12で肯定判断した場合はステップS16に移行する。
【0073】
なお、ステップS13で行われる第1の取り出し動作は、上記図8のステップS2で行われる取り出し動作と同じである。また、ステップS14で行われる測定動作は、上記図8のステップS3で行われる測定動作と同じであり、ステップS15で行われる収納動作は、上記図8のステップS4で行われる収納動作と同じである。よって、第2実施形態においては、ステップS16で行われる第2の取り出し動作と、ステップS17で行われる位置決め動作についてのみ詳しく説明する。
【0074】
図24は、図23のステップS16で行われる第2の取り出し動作の手順を示すサブルーチンである。
まず、制御部17は、予め決められたホームポジションから、未測定サンプルの収納先として指定されたカセット12の手前までハンド部16を移動させる(ステップS16a)。
次に、制御部17は、ハンド部16の水平移動により、第1端部である背板部124の内面124aにサンプル30の端面を押し当てる(ステップS16b)。
次に、制御部17は、上述した水平移動を開始する前の位置までハンド部16を移動させる(ステップS16c)。
次に、制御部17は、取り出すべきサンプル30の真上に吸着パッド26を配置する(ステップS16d)。
次に、制御部17は、吸着パッド26にサンプル30を吸着させる(ステップS16e)。
なお、ステップS16a~S16eの動作は、上記図9のステップS2a~S2eの動作と同じである。
【0075】
次に、制御部17は、ハンド部16を所定量だけ上昇させることにより、支持部125,126からサンプル30を少し持ち上げる(ステップS16f)。このステップS16fの動作は、上記図9のステップS2jの動作と同じである。
【0076】
次に、制御部17は、カセット12の奥側から手前側に向かってハンド部16を水平移動させることにより、カセット12からサンプル30を取り出す(ステップS16g)。このステップS16gの動作は、上記図9のステップS2kの動作と同じである。
以上で、第2の取り出し動作が終了する。
【0077】
図25は、図23のステップS17で行われるサンプルの位置決め動作の手順を示すサブルーチンである。
まず、制御部17は、サンプル30をサンプル位置決め治具20の真上に移動させる(ステップS17a)。このステップS17aにおいて、制御部17は、吸着パッド26でサンプル30を吸着しながらハンド部16をサンプル位置決め治具20に向けて移動させる。
【0078】
次に、制御部17は、サンプル30の被測定面30a(図5参照)がサンプル受け部201,202の上面に近接するように、ハンド部16を下降させる(ステップS17b)。これにより、サンプル30は、図22に示すように、第1位置決め部203と第2位置決め部204,205によって三方を囲まれた空間内に配置される。
【0079】
次に、制御部17は、図22の左方向にハンド部16を水平移動させることにより、サンプル30の端面301を第1位置決め部203の位置決め基準面203aに押し当てる(ステップS17c)。これにより、サンプル30は、図22の左右方向において、第1位置決め部203の位置決め基準面203aを基準に位置決めされる。また、ステップS17cにおいて、制御部17は、ハンド部16の水平移動中にサンプル30の端面301が第1位置決め部203の位置決め基準面203aに突き当たったか否かを、搬送装置13が備える力覚センサの検出信号に基づいて判断し、否定判断している間はハンド部16の水平移動を継続し、肯定判断した時点でハンド部16の水平移動を停止させる。
【0080】
次に、制御部17は、図22の上方向にハンド部16を水平移動させることにより、サンプル30の端面302を第2位置決め部204の位置決め基準面204aに押し当てる(ステップS17d)。これにより、サンプル30は、図22の上下方向において、第2位置決め部204の位置決め基準面204aを基準に位置決めされる。また、ステップS17dにおいて、制御部17は、ハンド部16の水平移動中にサンプル30の端面302が第2位置決め部204の位置決め基準面204aに突き当たったか否かを、搬送装置13が備える力覚センサの検出信号に基づいて判断し、否定判断している間はハンド部16の水平移動を継続し、肯定判断した時点でハンド部16の水平移動を停止させる。
【0081】
なお、図22の上下方向でサンプル30を位置決めする場合は、第2位置決め部205の位置決め基準面205aにサンプル30の端面を押し当ててもよい。また、ステップS17dの動作を行ってからステップS17cの動作を行ってもよい。
【0082】
次に、制御部17は、吸着パッド26によるサンプル30の吸着を解除する(ステップS17e)。これにより、サンプル30は、一対のサンプル受け部201,202に載置された状態になる。
【0083】
次に、制御部17は、吸着パッド26とサンプル30との間に隙間が確保されるようにハンド部16を所定量だけ上昇させた後、吸着パッド26をサンプル30の中心位置に移動させる(ステップS17f)。このステップS17fの動作は、図9のステップS2hの動作と基本的に同じである。
【0084】
次に、制御部17は、吸着パッド26にサンプル30を吸着させる(ステップS17g)。このステップS17gの動作は、図9のステップS2iの動作と基本的に同じである。
以上で、サンプルの位置決め動作が終了する。
【0085】
なお、図23において、ステップS13からステップS14に進む場合と、ステップS17からステップS14に移行する場合では、測定動作の開始時にハンド部16が移動を開始する位置が異なる。具体的には、ステップS13からステップS14に進む場合は、サンプル30の取り出しが行われたカセット12の近くからハンド部16が移動を開始する。また、ステップS17からステップS14に移行する場合は、サンプル位置決め治具20の近くからハンド部16が移動を開始する。
【0086】
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係るサンプル測定装置10Aは、測定器11及びカセット12と別の場所に配置されたサンプル位置決め治具20を備えている。このため、カセット12の側板部123と背板部124を利用してサンプル30を位置決めする場合に比べて、サンプル30を精度良く位置決めすることができる。
【0087】
また、搬送装置13は、カセット12から取り出したサンプル30をサンプル位置決め治具20へ搬送し、サンプル位置決め治具20でサンプル30を位置決めしてから測定器11へ搬送する。このため、高い位置精度が求められるサンプル30を取り扱う場合でも、サンプル30の測定を適切に行うことができる。
【0088】
また、搬送装置13は、カセット12内でサンプル30を側板部123の内面123a(第1端部)に押し当てた後、サンプル30を背板部124の内面124a(第2端部)押し当てることなく、カセット12から取り出す。これにより、サンプル30の収納位置に合わせて吸着パッド26の吸着位置を調整しなくても、サンプル30の吸着に失敗するおそれがなくなる。また、所定位置からずれた位置でサンプル30を吸着した場合でも、その後、サンプル位置決め治具20でサンプル30を位置決めすることにより、吸着位置のずれを補正することができる。
【0089】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0090】
例えば、カセット12の幅方向Xにおいては、側板部123の内面123aに代えて、側板部122の内面122aにサンプル30を押し当てることにより、サンプル30を位置決めしてもよい。
【0091】
また、上記第1実施形態においては、搬送装置13のハンド部16にサンプル押し当て用部材27を取り付け、このサンプル押し当て用部材27をサンプル30に接触させて、カセット12の側板部123の内面123aにサンプル30を押し当てる構成を採用しているが、本発明はこれに限らない。例えば、ハンド部16にサンプル押し当て用部材27を取り付けることなく、ハンド部16の一部(例えば、真空発生器24又は吸着パッド26)をサンプル30に接触させて、カセット12の側板部123の内面123aにサンプル30を押し当てる構成を採用してもよい。
【0092】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態においては、平面視四角形のサンプル30を例に挙げて説明したが、本発明に係るサンプル測定装置は、種々の形状のサンプルを測定することができる。一例を挙げると、本発明に係るサンプル測定装置は、図26に示すように、平面視円形のサンプル30Aを測定することができる。つまり、本発明に係るサンプル測定装置は、カセット12に収納可能で、かつ、吸着パッド26等を用いて保持することができるサンプルであれば、どのような形状のサンプルでも測定可能である。
【符号の説明】
【0093】
10,10A…サンプル測定装置
11…測定器
12…カセット
13…搬送装置
15…計測部
16…ハンド部
17…制御部
18…操作部
20…サンプル位置決め治具
21…ハンドフレーム
23…シャフト
26…吸着パッド
27…サンプル押し当て用部材
272b…接触面
30,30A…サンプル
123a…内面(第1端部)
124a…内面(第2端部)
203…第1位置決め部
203a…位置決め基準面
204,205…第2位置決め部
204a,205a…位置決め基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26