(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098203
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置、シェーディング補正方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/21 20060101AFI20240716BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 209
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001516
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光崎 雅弘
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA11
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB30
2C056EB31
2C056EB41
2C056EB45
2C056EB58
2C056EB59
2C056EC75
2C056EC79
2C056FA13
(57)【要約】
【課題】多数枚印刷時において、適正なむら補正ができない印刷物の枚数を最低限に抑えることができるインクジェット記録装置、シェーディング補正方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】記録材に形成された調整用チャートの濃度を読み取る画像読取部と、画像読取部の読取結果と、連続印刷枚数に応じて変化する濃度むらのむら挙動特性とに基づいて記録材に形成される画像の面内の濃度むらを調整するための調整量を決定する制御部と、を備え、制御部は、ジョブ内容、印刷環境、又は、調整量を適正に選定するために任意に設定される適正化要件のうち少なくとも一つを調整量の決定要件として用いる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に形成された調整用チャートの濃度を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部の読取結果と、連続印刷枚数に応じて変化する濃度むらのむら挙動特性とに基づいて前記記録材に形成される画像の面内の濃度むらを調整するための調整量を決定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記調整量の決定要件として、ジョブ内容、印刷環境、又は、前記調整量を適正に選定するために任意に設定される適正化要件のうち少なくとも一つを用いる
インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記ジョブ内容は、画像データ、用紙種、又は、印刷モードの少なくともいずれかの情報を含み、前記ジョブ内容の情報は、前記むら挙動特性の変動要因として適用され、
前記制御部は、前記変動要因に基づいて前記むら挙動特性の変動を予測し、修正する
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記印刷環境は、マシン履歴に関する情報を含み、前記印刷環境の情報は、前記むら挙動特性の変動要因として適用され、
前記制御部は、前記変動要因に基づいて、前記むら挙動特性の変動を予測し、修正する
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記修正されたむら挙動特性に基づいて、前記調整量を決定する
請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記適正化要件は、許容される濃度むらの色差値に関する情報を含み、前記色差値の情報は、前記調整量を用いてむら補正した後の濃度むらが許容レベルの範囲内であるか否かを推定する推定要件に適用される
請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記適正化要件は、判定モードに関する情報を含み、前記判定モードの情報は、前記調整量が適正であるか否かの判定条件に適用される
請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記判定モードは、前記調整量を用いてむら補正した調整後のむら挙動特性において、むら改善が未達成である枚数又は割合を最小化するモードを有する
請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記判定モードは、N枚目(Nは任意の整数)における濃度むらを最小にするモードを有する
請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記判定モードは、連続印字枚数に応じて前記濃度むらが許容レベルを超える前に調整量を切り替えるモードを有する
請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
記録材に形成された調整用チャートの濃度を読み取り、
前記調整用チャートの読取結果と、連続印刷枚数に応じて変化する濃度むらのむら挙動特性とに基づいて前記記録材に形成される画像の面内の濃度むらを調整するための調整量を決定し、
前記調整量の決定要件として、ジョブ内容、印刷環境、又は、前記調整量を適正に選定するために任意に設定される適正化要件のうち少なくとも一つを用いる
シェーディング補正方法。
【請求項11】
記録材に形成された調整用チャートの濃度を読み取る手順と、
前記調整用チャートの読取結果と、連続印刷枚数に応じて変化する濃度むらのむら挙動特性とに基づいて前記記録材に形成される画像の面内の濃度むらを調整するための調整量を決定する手順であって、ジョブ内容、印刷環境、又は、前記調整量を適正に選定するために任意に設定される適正化要件の少なくとも一つを決定要件として決定する手順と、
をコンピューターに実行させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置、シェーディング補正方法、及び、プログラム
【背景技術】
【0002】
複数のノズルを有するインクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させながら、複数のノズルからインク滴を吐出(射出)させ、用紙等の記録媒体上に着弾させることによって画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置、即ちインクジェット記録装置がある。この種のインクジェット記録装置では、記録速度の向上を目的として、インクジェットヘッドを複数、上記相対移動の方向と交差する方向に配列して長尺のヘッドユニットを構成し、当該長尺のヘッドユニットによって画像を形成する技術が用いられている。
【0003】
インクジェット記録装置では、単体のインクジェットヘッドが有している複数のノズル間でインク滴の吐出量にばらつきがあると、記録媒体に形成した画像(以下、「形成画像」と記述する場合がある)に濃度むらが生じるため、形成画像の画質低下に繋がる。また、インクジェットヘッドの数が複数になると、インクジェットヘッドごとにインク滴の吐出量のばらつきが生じることがあり、インクジェットヘッドごとの吐出量のばらつきによっても、形成画像に濃度むらが生じ、画質低下に繋がる。このため、単体のインクジェットヘッド内、及びインクジェットヘッド間での挙動に起因する濃度むらを抑制することが大きな品質上の課題となっている。
【0004】
このようなインク滴の吐出量のばらつきに起因して発生する画質低下を抑制するための技術が、特許文献1に開示されている。特許文献1には、同一の補正用チャートの画像を複数枚の用紙に形成し、複数の補正用チャートの濃度を平均して得た濃度平均値に基づいてシェーディング補正用の補正データを生成して、濃度むらについて補正をするむら補正を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ある条件下でむら補正が達成されていても、その状態を常に維持できないことも多く発生する。連続して多数枚の印刷を行う多数枚印刷時では、インクジェットヘッド内における温度分布状態の変動が画像変動に影響する。このため、1つの補正データを使用する場合には、印刷の開始時から終了時まで、全ての印刷物を適切に補正することが困難な場合がある。したがって、1つの補正データを用いて多数枚印刷を行う場合には、適正なむら補正がなされない印刷物が出てくる。
【0007】
そこで、本発明は、多数枚印刷時において、適正なむら補正ができない印刷物の枚数を最低限に抑えることができるインクジェット記録装置、シェーディング補正方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のインクジェット記録装置は、記録材に形成された補正用チャートの濃度を読み取る画像読取部と、画像読取部の読取結果と、連続印刷枚数に応じて変化する濃度むらのむら挙動特性とに基づいて前記記録材に形成される画像の面内の濃度むらを調整するための調整量を決定する制御部とを備える。制御部は、ジョブ内容、印刷環境、又は、調整量を適正に選定するために任意に設定される適正化要件のうち少なくとも一つを調整量の決定要件として用いる。
【0009】
本発明のシェーディング補正方法は、記録材に形成された補正用チャートの濃度を読み取り、調整用チャートの読取結果と、連続印刷枚数に応じて変化する濃度むらのむら挙動特性とに基づいて記録材に形成される画像の面内の濃度むらを調整するための調整量を決定する。そして、調整量の決定要件として、ジョブ内容、印刷環境、又は、調整量を適正に選定するために任意に設定される適正化要件のうち少なくとも一つを用いる。
【0010】
本発明のプログラムは、記録材に形成された補正用チャートの濃度を読み取る手順と、調整用チャートの読取結果と、連続印刷枚数に応じて変化する濃度むらのむら挙動特性とに基づいて記録材に形成される画像の面内の濃度むらを調整するための調整量を決定する手順であって、ジョブ内容、印刷環境、又は、調整量を適正に選定するために任意に設定される適正化要件の少なくとも一つを決定要件として決定する手順とをコンピューターに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多数枚印刷時において、適正なむら補正ができない印刷物の枚数を最低限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置1の全体構成を示す概略構成図である。
【
図2】ヘッドユニット24を記録材P側から見た状態を示す平面図である。
【
図3】インクジェット記録装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置1の機能構成例を示すブロック図である。
【
図5】ヘッドユニット24のうち、所定のヘッド242における明度分布を示した図である。
【
図6】むら挙動データベース442に蓄積されたむら挙動特性データの一例である。
【
図7】ジョブ内容検出部411、印刷環境検出部412、及び、適正化要件検出部413で検出され、補正データ生成部416に入力される項目と、その内容、及び、補正データ生成部416における適用例を表で表したものである。
【
図8】
図8Aは、補正していない無補正時におけるヘッドA及びヘッドBの濃度むらを示した図である。また、
図8Bは、
図8AにおけるヘッドA及びヘッドBの補正例である。
【
図9】補正制御部における画像処理方法の手順を示すフローチャートである
【
図10】むら補正データを作成する基本的な流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図10のステップS5の詳細な手順を示したフローチャートである。
【
図12】
図11におけるステップS54におけるむら挙動特性の変動予測、及び、その変動予測に基づくむら挙動特性の補正に係る手順を示すフローチャートである。
【
図13】基本のむら挙動特性と、修正したむら変動特性を複数示した図である。
【
図14】
図11におけるステップS56におけるむら補正の調整量の予測及び判定に係る手順を示すフローチャートである。
【
図15】修正済みのむら挙動特性、むら補正の調整量候補値、調整後のむら挙動特性、及びむら許容値を示した図である。
【
図16】異なる必要枚数に応じて設定される調整ターゲットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0014】
[インクジェット記録装置の全体構成]
始めに、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係るインクジェット記録装置の構成例について、
図1を参照して説明する。
図1は、インクジェット記録装置1の全体構成を示す概略構成図である。
【0015】
インクジェット記録装置1は、後述する
図2に示すインクジェットヘッド242に設けたノズル244からインクを吐出することで記録材P(記録媒体)に画像を形成(記録)する。本実施形態では、記録媒体として用紙を適用した例を説明するが、これに限定されるものではなく、記録媒体としては、フィルムや布地等その他各種のものが適用可能である。
【0016】
このインクジェット記録装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のインクを重ね合わせるカラーインクジェット記録装置である。インクジェット記録装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40とを有している。そして、インクジェット記録装置1は、端末装置2(
図3参照)から入力された画像データを記録材Pに形成する。
【0017】
給紙部10は、給紙トレー11と、記録材供給部12とを有している。給紙トレー11は、記録材Pを載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレー11は、載置された記録材Pの枚数に応じて上下方向に移動可能に設けられている。そして、給紙トレー11に載置された複数の記録材Pのうち上下方向の最上部の記録材Pは、記録材供給部12により搬送される位置で保持される。
【0018】
記録材供給部12は、複数(本例では、2つ)のローラー121,122と、搬送ベルト123とを有している。搬送ベルト123は、長手方向の両端が接続された無端状に形成されている。搬送ベルト123は、ローラー121,122に張架されている。そして、ローラー121,122のうち一方のローラーが回転駆動することで、搬送ベルト123は、2つのローラー121,122の間を循環移動する。これにより、搬送ベルト123に載置された記録材Pが搬送される。
【0019】
また、記録材供給部12は、ローラー121,122を回転駆動する不図示の駆動部や、給紙トレー11に載置された最上部の記録材Pを搬送ベルト123に受け渡す供給装置(図示略)を有している。そして、記録材供給部12は、搬送ベルト123に載置された記録材Pを画像形成部20に向けて搬送し、画像形成部20に給紙する。
【0020】
画像形成部20は、画像形成ドラム21と、受け渡しユニット22と、加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、画像読取部26と、記録材排出部27と、記録材反転部28とを有しており、記録材Pに画像を形成する。
【0021】
画像形成ドラム21は、円筒状に形成されている。画像形成ドラム21は、不図示の駆動モーターにより反時計回りに回転する。画像形成ドラム21の外周面には、給紙部10から供給された記録材Pが担持される。画像形成ドラム21は、外周面を三等分した3面の保持領域211を有している。保持領域211は、ステンレス鋼(SUS)シート等の表面に樹脂シート等が貼り付けられ、各保持領域211の表面において記録材Pを保持することが可能となっている。そして、画像形成ドラム21は、回転駆動することで記録材Pを排紙部30に向けて搬送する。また、画像形成ドラム21の外周面には、加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25及び画像読取部26が対向して配置されている。
【0022】
受け渡しユニット22は、給紙部10の記録材供給部12と画像形成ドラム21との間に設けられている。受け渡しユニット22は、爪部221と、円筒状の受け渡しドラム222等を有している。爪部221は、記録材供給部12により搬送された記録材Pの一端を担持する。受け渡しドラム222は、爪部221に担持された記録材Pを画像形成ドラム21に向けて誘導する。これにより、記録材Pは、受け渡しユニット22を介して記録材供給部12から画像形成ドラム21の外周面に受け渡される。
【0023】
受け渡しドラム222における記録材Pの搬送方向の下流側には、加熱部23が配置されている。加熱部23は、例えば電熱線等を有し、通電に応じて発熱する。加熱部23は、制御部40による制御により、画像形成ドラム21に担持されて加熱部23の近傍を通過する記録材Pが所定の温度となるように発熱を行う。
【0024】
また、加熱部23の近傍には、不図示の温度センサーが設けられている。温度センサーは、加熱部23付近の温度を検知する。そして、制御部40は、温度センサーが検知した温度情報に基づいて、加熱部23の温度を制御する。
【0025】
加熱部23における記録材Pの搬送方向の下流側には、ヘッドユニット24が設けられている。ヘッドユニット24は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)に応じて4つ設けられている。4つのヘッドユニット24は、記録材Pの搬送方向に対して上流側から、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に配置されている。
【0026】
ヘッドユニット24は、記録材Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)において記録材Pの全体を覆う長さ(幅)に設定されている。すなわち、インクジェット記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。4つのヘッドユニット24は、それぞれ吐出するインクの色が異なるのみで、互いに同一の構成を有している。
【0027】
次に、ヘッドユニット24の構成例を説明する。
図2は、ヘッドユニット24を記録材P側から見た状態を示す平面図である。
【0028】
ヘッドユニット24は、複数(本例では、16個)のインクジェットヘッド242(インク吐出部の例)を有している。そして、2つのインクジェットヘッド242が1組となって、1つのインクジェットモジュール243を構成している。そのため、本例のヘッドユニット24には、8つのインクジェットモジュール243が設けられている。
【0029】
8つのインクジェットモジュール243は、記録材Pの搬送方向に沿って2列並べられている。そして、一列のインクジェットモジュール243は、記録材Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)に沿って4つ並べて配置されている。また、8つのインクジェットモジュール243は、2列のインクジェットモジュール243が記録材Pの搬送方向に沿って互い違いの千鳥状に配置されている。
【0030】
なお、インクジェットモジュール243の数及び配置は、上述したものに限定されるものではなく、6又は10以上のインクジェットモジュール243を配置してもよい。
【0031】
また、インクジェットヘッド242は、複数のノズル244を有している。そして、インクジェットヘッド242は、ノズル244からインクを記録材Pに向けて吐出する。これにより、画像形成ドラム21に担持された記録材Pに画像が形成される。
【0032】
4つのヘッドユニット24における搬送方向の下流側には、定着部25が配置されている。定着部25としては、例えば、低圧水銀ランプ等の紫外線を照射する蛍光管が適用される。そして、定着部25は、紫外線を画像形成ドラム21により搬送された記録材Pに向けて照射し、記録材P上に吐出されたインクを硬化させる。これにより、定着部25は、記録材Pに形成された画像を定着させる。
【0033】
紫外線を発する蛍光管としては、低圧水銀ランプの他、数百Pa~1MPa程度の動作圧力を有する水銀ランプ、殺菌灯として利用可能な光源、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプ、発光ダイオードなどが挙げられる。これらの中で、紫外線をより高照度で照射可能であって消費電力の少ない光源(例えば発光ダイオード等)がより望ましい。
【0034】
なお、定着部25としては紫外線を照射するものに限定されるものではなく、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線を照射するものであればよく、光源もエネルギー線の波長などに応じて置換される。また、定着部25としては、紫外線等の光を照射するものに限定されるものではない。定着部としては、例えば、記録材に熱を与えることでインクを乾燥させたり、インクに化学的な変化を起こさせる液体を付与させたりするもの等その他各種の方法を適用できるものである。
【0035】
また、定着部25における搬送方向の下流側には、画像読取部26が配置されている。画像読取部26は、光源から読み取り対象に光を照射し、その反射画像を読み取る。画像読取部26は、複数の検出素子が記録材Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)に沿って並べられたインラインセンサで構成されており、ヘッドユニット24及び定着部25により記録材Pに形成された2次元の反射画像や、画像形成ドラム21の表面の反射画像を読み取る。画像読取部26が読み取った画像のデータは、制御部40に送られる。
【0036】
なお、画像読取部26を構成する検出素子の間隔は、インクジェットヘッド242のノズル244の間隔よりも広く設定されている。すなわち、画像読取部26の分解能は、ヘッドユニット24の解像度よりも粗く設定されている。また、画像読取部26は、画像形成ドラム21の幅方向よりも長く形成され、画像形成ドラム21の表面の保持領域211の幅方向の全体を読み取ることができるように形成されている。
【0037】
また、画像読取部26の搬送方向の下流側には、記録材排出部27と、記録材反転部28が設けられている。記録材排出部27は、画像形成ドラム21により搬送された記録材Pを排紙部30に向けて搬送する。
【0038】
記録材排出部27は、円筒状の分離ドラム271と、排出ベルト272とを有している。分離ドラム271は、画像形成ドラム21に担持された記録材Pを画像形成ドラム21の外周面から分離させる。そして、分離ドラム271は、記録材Pを排出ベルト272又は記録材反転部28に記録材Pを誘導する。
【0039】
分離ドラム271は、片面画像形成におけるフェースアップ排紙を行う場合に、記録材Pを排出ベルト272に誘導する。また、分離ドラム271は、片面画像形成におけるフェースダウン排紙及び両面画像形成を行う場合に、記録材Pを記録材反転部28に誘導する。
【0040】
排出ベルト272は、記録材供給部12の搬送ベルト123と同様に、無端状に形成されている。排出ベルト272は、複数のローラーにより回転可能に支持されている。排出ベルト272は、分離ドラム271による受け渡された記録材Pを排紙部30に送り出す。
【0041】
記録材反転部28は、複数の反転ローラー281,282と、反転ベルト283とを有している。フェースダウン排紙を行う場合、記録材反転部28は、分離ドラム271により誘導された記録材Pの表裏を反転し、記録材排出部27に搬送する。これにより、記録材Pは、記録材排出部27による画像が形成された面が上下方向の下方を向いた状態で排紙部30に搬送される。
【0042】
また、両面画像形成を行う場合、記録材反転部28は、分離ドラム271により誘導された記録材Pの表裏を反転し、再び画像形成ドラム21の外周面に搬送する。これにより、記録材Pは、画像形成ドラム21により搬送され、再び加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25及び画像読取部26を通過する。
【0043】
排紙部30は、記録材排出部27により画像形成部20から送り出された記録材Pを格納する。排紙部30は、平板状の排紙トレー31を有している。そして、排紙部30は、排紙トレー31上に画像が形成された記録材Pを載置する。
【0044】
[インクジェット記録装置のハードウェア構成]
次に、インクジェット記録装置1のハードウェア構成例について説明する。
図3は、インクジェット記録装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0045】
インクジェット記録装置1は、制御部40を備えている。制御部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)41と、CPU41の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)42と、CPU41が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)43とを有する。さらに、制御部40は、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)又は半導体メモリ等からなる記憶部44を有している。記憶部44には、制御プログラム(例えば、画像処理プログラム)や各種データ等
のインクジェット記録装置1を制御するための情報が格納される。このため、ROM43及び記憶部44は、CPU41が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録している。すなわち、ROM43及び記憶部44は、インクジェット記録装置1を動作させるコンピューターによって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な記録媒体の一例として用いられる。
【0046】
また、インクジェット記録装置1は、上述の構成の他、画像形成ドラム21、記録材排出部27や記録材反転部28等の搬送系の駆動を行い、記録材Pを搬送する搬送部51と、操作表示部52と、入出力インターフェース53とを有している。
【0047】
制御部40のCPU41は、加熱部23、ヘッドユニット24、定着部25、画像読取部26、RAM42、ROM43、記憶部44にそれぞれシステムバス54を介して接続され、装置全体を制御する。また、CPU41は、搬送部51、操作表示部52、入出力インターフェース53にそれぞれシステムバス54を介して接続されている。
【0048】
操作表示部52は、液晶表示装置(LCD)又は有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイからなるタッチパネルである。この操作表示部52は、オペレーターに対する指示メニュー、ノズル244の吐出検出動作に関する情報や取得した画像データに関する情報等のインクジェット記録装置1に関する情報を表示する。さらに、操作表示部52は、複数のキーを備え、オペレーターのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータの入力を受け付ける入力部としての役割を持っている。これにより、オペレーターが操作表示部52を通じてインクジェット記録装置1に対する操作が行える。なお、操作表示部52を、操作部と表示部に分けて構成してもよい。この場合、オペレーターは、操作部を通じてインクジェット記録装置1を操作し、表示部は、インクジェット記録装置1に関する情報を表示する。
【0049】
入出力インターフェース53は、PC(パーソナルコンピュータ)や、ファクシミリ装置等の端末装置2に接続されている。そして、入出力インターフェース53は、端末装置2から画像データを受信する。入出力インターフェース53は、受信した画像データを制御部40に出力する。そして、制御部40は、入出力インターフェース53から受信した画像データに対し、必要に応じて、シェーディング補正、画像濃度調整、画像圧縮等の画像処理を行う。
【0050】
ヘッドユニット24は、制御部40によって画像処理された画像データを受け取り、画像データに基づいて記録材P上に所定の画像を形成する。具体的には、ヘッドユニット24は、ヘッド駆動部241を駆動することで、インクジェットヘッド242からインクを所定の位置に吐出させる。
【0051】
ヘッドユニット24により記録材Pに形成された画像は、画像読取部26によって読み取られ、その画像データが制御部40に送られる。また、ノズル244の吐出不良の判定動作を行う際、制御部40は、画像読取部26から送られた画像データに基づいて吐出不良が生じているノズル244を判別する。そして、制御部40は、例えば、吐出不良が発生したノズル244に隣接するノズル244からのインクの吐出量を増やすことで、ヘッドユニット24のシェーディング補正処理を行う。
【0052】
また、本実施形態の制御部40は、記憶部44に記憶された画像データに対して所定の画像処理を行って、得られた画像データを記憶部44に記憶する機能を有する。この画像処理には、後述するシェーディング補正の他、色変換処理、階調補正処理、ハーフトーン処理などが含まれる。以下に、制御部40で行われる画像処理のうち、シェーディング補正に係る機能構成例について説明する。
【0053】
[インクジェット記録装置の機能構成]
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置1の機能構成例について
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1の機能構成例を示すブロック図である。以下の説明において、インクジェットヘッド242を、単にヘッドと記す。また、ここでは、本実施形態のシェーディング補正に要される機能構成について説明する。
【0054】
インクジェット記録装置1の制御部40は、補正制御部410及び画像記録制御部430を備える。また、制御部40は、画像データ記憶部441、むら挙動データベース442、及び出力設定情報記憶部443を備える。画像データ記憶部441、むら挙動データベース442、及び出力設定情報記憶部443は、記憶部44又はRAM42を用いて構成される。
【0055】
画像データ記憶部441には、印刷ジョブの原稿画像(以下「入力画像」とも称する)及び補正用チャートの画像データが記憶されている。
【0056】
むら挙動データベース442には、出力枚数に応じたヘッド内の濃度むらの挙動に関する情報が記憶されている。ここで、ヘッド内で生じる濃度むらについて説明する。
図5は、ヘッドユニット24のうち、所定のヘッド242における明度分布を示した図である。
図5の横軸はヘッド内の列方向におけるノズル位置を示し、
図5の縦軸は、明度を示している。また、ヘッド242内では、ヘッド242の列方向における端部よりも中央部において明度が高いことがわかる。これは、ヘッド242内において温度むらが発生することに起因する。また、印刷枚数が増加するにつれて、ヘッド242内の明度が変化することがわかる。これは、連続印字枚数に応じてヘッド242内の温度が変化することに起因する。このように、それぞれのヘッド242内では、連続印字枚数に応じて濃度むらの挙動が変化する。
【0057】
図6は、むら挙動データベース442に蓄積されたむら挙動特性データの一例である。
図6の横軸は、連続印刷枚数であり、縦軸は、ヘッド242内の濃度むらΔLである。濃度むらΔLは、1枚目の濃度を基準としたときの1枚目とN枚目との濃度差である。
【0058】
むら挙動データベース442では、例えば、中間濃度、高濃度、低濃度等、濃度別に濃度むらのむら挙動特性データが記憶されている。
図6に示されるように、濃度むらΔLは、1枚目を基準として、印刷枚数が増えるにつれて大きくなる特徴を有する。
【0059】
さらに、
図6に示すように、濃度むらΔLは、所定の印刷枚数からほぼ一定の値になる。また、濃度むらΔLの絶対値は、低濃度、高濃度、中間濃度の順に大きくなる特徴を有する。さらに、濃度むらΔLの変化が収束する飽和枚数は、高濃度、中間濃度、低濃度の順に大きくなる特徴を有する。
【0060】
なお、むら挙動データベース442に記憶されている濃度むらのむら挙動特性データは、標準用紙に対する情報であってもよく、用紙の種類毎の情報であってもよい。また、むら挙動データベースに記憶された濃度むらのむら挙動特性データは、後述する読取画像生成部415から送信されてくる調整用チャートの読取画像データによって随時、修正及び更新されてもよい。
【0061】
出力設定情報記憶部443には、印刷ジョブの出力設定情報が記憶されている。出力設定情報記憶部443に記憶された出力設定情報は、補正制御部410から出力された補正データに基づいて決定された出力設定情報である。例えば出力設定情報には、画像の画素ごとの色情報及び濃度情報が含まれる。
【0062】
補正制御部410は、ジョブ内容検出部411、印刷環境検出部412、適正化要件検出部413、読取画像生成部415、及び、補正データ生成部416を備える。
【0063】
ジョブ内容検出部411は、例えば、操作表示部52や、外部の端末装置2からユーザーによって入力されたジョブの内容を検出する。ジョブ内容検出部411で検出されるジョブの内容の項目としては、印刷する対象画像の画像データ、記録材となる用紙情報、印刷設定、必要量(印刷枚数)が挙げられる。このうち、画像データについては、画像データ記憶部441に記憶されている画像データを読み込む構成としてもよい。ジョブ内容検出部411で検出されたジョブの内容は、補正データ生成部416に送信される。
【0064】
印刷環境検出部412は、画像形成システムの稼働状況や、外部環境等を検出する。印刷環境検出部412で検出される印刷環境の項目としては、直前に実施されたジョブの履歴、マシン履歴、及び、外部環境が挙げられる。印刷環境検出部412で検出された印刷環境の内容は、補正データ生成部416に送信される。
【0065】
適正化要件検出部413は、シェーディング補正を行う際の適正な調整量を選定するための適正化要件を検出する。適正化要件検出部413で検出される適正化要件の項目としては、濃度むらの許容レベル、優先濃度領域、及び、判定モード等が挙げられる。適正化要件検出部413で検出された適正化要件の内容は、補正データ生成部416に送信される。
【0066】
ここで、ジョブ内容検出部411、印刷環境検出部412、及び、適正化要件検出部413で検出される各項目、その内容、及び適用例について説明する。
図7は、ジョブ内容検出部411、印刷環境検出部412、及び、適正化要件検出部413で検出され、補正データ生成部416に入力される項目と、その内容、及び、補正データ生成部416における適用例を表で表したものである。
【0067】
図7に示すように、ジョブ内容検出部411で検出される『対象画像』の検出内容は、画像データであり、画像データは、各色のインク使用量の分布状態の情報を有する。したがって、画像データから、インク使用量の分布状態を検出することで、印刷される画像の濃度分布を含むコンテンツ情報及びカバレッジ情報(インク使用量)を検出することができる。ところで、印刷される画像に応じてインク使用量や濃度分布が異なり、これによって濃度むらのむら挙動特性も異なってくる。本実施形態では、『対象画像』の検出内容は、後述する補正データ生成部416において、むら挙動特性の変動要因として使用される。
【0068】
ジョブ内容検出部411で検出される『用紙情報』の検出内容は、用紙の種類である。一般的なむら補正の調整量は、用紙の種類に応じて異なる。したがって、『用紙情報』の検出内容は、用紙の種類に応じたむら補正の調整量を選択する際に使用される。用紙の種類に応じたむら補正の調整量は事前に取得され、例えば、記憶部44に記憶されている。
【0069】
ジョブ内容検出部411で検出される『印刷設定』の検出内容は、高画質モードや、高精細モード等に代表される印刷モードである。一般的なむら補正の調整量は、印刷モードに応じて異なる。したがって、『印刷設定』の検出内容は、印刷モードに応じたむら補正の調整量を選択する際に使用される。印刷モードに応じたむら補正の調整量は事前に取得され、例えば、記憶部44に記憶されている。
【0070】
ジョブ内容検出部411で検出される『必要量』の検出内容は、入力された印刷枚数である。
図6で示したように、濃度むらは印刷枚数に応じてその挙動が変動する。したがって、印刷枚数と、
図6で示す濃度むらのむら挙動特性を照らし合わせることで、何枚目の印刷物にどの程度の濃度むらがあるかを予測(推定)することができる。本実施形態では、『必要量』の検出内容は、後述する補正データ生成部416において、むら補正の調整量を決定する際の調整量候補値の判定条件として使用される。
【0071】
印刷環境検出部412で検出される『直前ジョブ歴』の検出内容は、直前のジョブにおける停止期間、及び印刷準備後の待機時間等の情報を含む。濃度むらのむら挙動特性は、主にヘッドの温度によって異なってくる。本実施形態では、『直前ジョブ歴』の検出内容は、後述する補正データ生成部416において、濃度むらのむら挙動特性の変動要因に使用される。
【0072】
印刷環境検出部412で検出される『マシン履歴』の検出内容は、各ヘッドから噴出された累積のインク射出量(累積射出量)と、使用されているヘッド情報等の情報を含む。濃度むらのむら挙動特性は、ヘッドの耐久状態によっても異なってくる。本実施形態では、『マシン前歴』の検出内容は、後述する補正データ生成部416において、濃度むらのむら挙動特性の変動要因に使用される。
【0073】
印刷環境検出部412で検出される『外部環境』の検出内容は、外部の温度や、湿度等の情報を含む。外部の温度や、湿度もまた、ヘッドの状態に影響を及ぼす。この結果、外部の温度又は湿度に応じて濃度むらのむら挙動特性が異なってくる。本実施形態では、『外部環境』の検出内容は、後述する補正データ生成部416において、濃度むらのむら挙動特性の変動要因に使用される。
【0074】
適正化要件検出部413で検出される『許容レベル』の検出内容は、許容される色差値の閾値に関する情報を含む。設定される色差値はユーザーによって設定されるものであってもよく、また、予め設定されているものであってもよい。検出された『許容レベル』に設定されている色差値は、後述する補正データ生成部416において、調整量候補値に対するむら改善の達成可否を推定する推定要件として使用される。
【0075】
適正化要件検出部413で検出される『優先濃度領域』の検出内容は、むら補正を優先的に行う濃度領域が、高濃度領域であるか、中間濃度領域であるか、低濃度領域であるか、コンテンツ依存の自動設定であるかの情報を含む。『優先濃度領域』に設定されている内容は、後述する補正データ生成部416において、調整量候補値に対するむら改善の達成可否を推定する推定要件として使用される。
【0076】
『優先濃度領域』が高濃度優先に設定されている場合には、高濃度領域を優先的にむら補正するための調整量が設定される。また、『優先濃度領域』が中間濃度優先に設定されている場合には、中間濃度領域を優先的にむら補正するための調整量が設定される。また、『優先濃度領域』が低濃度優先に設定されている場合には、低濃度領域を優先的にむら補正するための調整量が設定される。一方、『優先濃度領域』が自動に設定されている場合には、入力された画像データの内容に応じてむら補正の調整量が設定される。
【0077】
適正化要件検出部413で検出される『判定モード』の検出内容は、むら補正の調整量の選定基準(判定基準)を設定するための情報を含む。『判定モード』の検出内容としては、例えば、むら補正が許容レベルに達しなかった未達枚数を最小とするモード、N枚目(Nはユーザーによって任意に設定)の濃度むらを最小とするモード、連続印字枚数に応じて許容レベルを超える前に調整量を切り替えるモード等がある。『判定モード』に設定されている内容は、後述する補正データ生成部416において、むら補正の調整量を決定する際に、調整量候補値の判定条件に使用される。
【0078】
図6に示した各項目、検出内容、適用例は、一例であり、種々の変更、追加が可能である。ユーザーによって、むら挙動特性の変動予測に適用可能な項目や、むら補正の調整量の選定基準の要件となり得る項目が設定可能である。
図6に示した各項目の検出タイミング等については、後述するシェーディング補正方法で詳述する。
【0079】
読取画像生成部415は、画像読取部26で記録材Pに形成された画像の濃度を読み取り、読取結果(濃度データ)から読取画像データを生成する。読取画像生成部415は、RGB値の読取データをCMYK値ごとの読取画像データに変換する。読取画像生成部415で生成された読取画像データは、むら挙動データベース442及び、補正データ生成部416に送られる。
【0080】
補正データ生成部416は、各部から送信されてきた情報に基づいて、濃度むらの補正のための調整量を決定すると共に、調整量を反映したむら補正データを生成する。具体的には、補正データ生成部416は、ジョブ内容検出部411及び印刷環境検出部412から送信されてきたむら補正要件に基づいて、むら挙動データベース442から送信されてきた基本のむら挙動特性データの変動を予測して補正する。さらに、補正データ生成部416では、補正後のむら挙動特性と、適正化要件検出部413から送信されてきた要件に基づいて、適正な調整量が決定される。
【0081】
ここで、各ヘッドにおける濃度むらの補正例について説明する。
図8Aは、補正していない無補正時におけるヘッドA及びヘッドBの濃度むらを示した図である。また、
図8Bは、
図8AにおけるヘッドA及びヘッドBの補正例である。
図8A及び
図8BにおいてヘッドA及びヘッドBは、ヘッドユニット24を構成するヘッドであり、それぞれ異なるヘッドを示している。
図8Aにおける縦軸は、ヘッドから射出されるインクの濃度を示し、横軸はヘッドの列方向におけるノズル位置に対応する。また、
図8Bにおける縦軸は、補正後の階調レベルを示し、横軸はヘッドの列方向におけるノズル位置に対応する。
【0082】
ヘッドAにおいて、
図8Aに示すような濃度むらがある場合、矢印LAで示す濃度むらを調整(相殺)するため、
図8Bに示す補正を行う。同様に、ヘッドBにおいて、
図8Aに示すような濃度むらがある場合、矢印LBで示す濃度むらを調整(相殺)するため、
図7Bに示す補正を行う。このような補正を行うことで、ヘッド内における濃度むらを低減することができる。本実施形態では、補正データ生成部416において、濃度むらのむら挙動特性と、適正化要件検出部413で検出された適正化要件に基づいて、各ヘッドの調整量を決定する。
【0083】
そして、補正データ生成部416では、調整用チャートの画像データと、記録材Pに形成された調整用チャートを読み取って生成された読取画像データと、決定された調整量とに基づいて、濃度むらの調整値を算出する。その後、算出された濃度むらの調整値に基づいて補正された補正データを算出する。補正データ生成部416は、出力設定情報記憶部443に記憶された出力設定情報に対し補正データを反映して、出力設定情報を更新する。濃度むらの調整値の算出方法については後で詳述する。
【0084】
画像記録制御部430は、ヘッド242によるインク滴の吐出を制御して記録材Pに画像を形成する。本実施形態では、画像記録制御部430は、通常印刷モード時に印刷ジョブに基づいて画像を形成し、テストモード時に補正用チャートを形成する。また、画像記録制御部430は、通常印刷モード時には、出力設定情報記憶部443から送信されてきた補正データに基づいて、画像を印刷する。
【0085】
3.シェーディング補正方法
次に、本実施形態に係るシェーディング補正方法について説明する。まず、シェーディング補正方法に説明に先立ち、補正制御部410で行われる一例の補正手順について説明する。
図9は、補正制御部410における画像処理方法の手順を示すフローチャートである。
【0086】
外部の端末装置2や操作表示部52からジョブの開始が入力されることで、
図9のフローチャートがスタートする。まず、補正制御部410は、入力された画像データを受領する(ステップS100)。
【0087】
次に、補正制御部410の画像生成部において、RGB値の読取データをCMYK値ごとの読取画像データに変換する(ステップS101)。
【0088】
次に、補正制御部410の補正データ生成部416において、濃度むらを調整するむら補正データを生成すると共に、むら補正データに基づいて画像データを補正する(ステップS102)。本実施形態では、むら補正データの生成方法(いわゆるシェーディング方法)に特徴を有する。ステップS102におけるむら補正データの生成方法については後で詳述する。
【0089】
次に、補正制御部410の補正データ生成部416において、むら補正後の画像データに対して階調補正を行う(ステップS103)。
【0090】
次に、補正制御部410の補正データ生成部416において、階調処理後の画像データにハーフトーン処理を行う(ステップS104)。ハーフトーン処理は、256階調などの連続的な階調画像データを、画像形成装置100に適用される記録方式(本例の場合にはインクジェット方式)で記録可能な階調数に変換する処理である。ハーフトーン処理には様々な処理方式があるが、例えばディザマクス処理や誤差拡散処理が知られている。
【0091】
次に、補正制御部410の補正データ生成部416において、調整用データに基づいてノズル欠を補正する(ステップS105)。
【0092】
補正制御部410の補正データ生成部416は、入力画像の画像データに対して上記の一連の補正処理が施された補正データを、出力設定情報記憶部443に送信するデータとして決定する(ステップS106)。
【0093】
以下に、
図9のステップS102で実施されるむら補正データの生成方法について説明する。
図10は、むら補正データを作成する基本的な流れを示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、むら補正データの作成又は更新の指示が入力された場合に開始される。
【0094】
まず、むら補正データの作成又は更新の指示が入力された場合、画像記録制御部430は、ジョブ内容検出部411から取得される『用紙情報』及び『印刷設定』の検出結果に基づいて、印刷モードと、用紙種の設定を行う(ステップS1)。
【0095】
次に、画像記録制御部430は、ジョブ内容検出部411から送信されてきた調整用チャートのデータと、ステップS1で設定された印刷モード及び用紙種の情報に基づいて、調整用チャートを印刷する(ステップS2)。
図7に示したように、用紙種及び印刷モード毎に、むら補正の調整量が事前に取得されている。したがって、ここでは、用紙種及び印刷モードに応じて選択された濃度むらの調整量を用いて、補正用チャートの印刷を行う。
【0096】
次に、画像読取部26は、調整用チャートが印刷された用紙が搬送されてくるタイミングで、調整用チャートの画像を読み取る(ステップS3)。読み取られた調整用チャートの読取画像は、読取画像生成部415に送信される。読取画像生成部415では、画像読取部26で記録材Pに形成された画像の濃度を読み取り、読取結果(濃度データ)から読取画像データを生成する。生成された読取画像データは、補正データ生成部416に送信される。
【0097】
補正データ生成部416では、送信されてきた読取画像データから、読取画像の階調変動を検出する(ステップS4)。
【0098】
次に、補正データ生成部416は、ジョブ内容検出部411、印刷環境検出部412及び適正化要件検出部413から送信されてくるむら補正の各補正要件と、ステップS4で検出された階調変動とから、適正な調整量を決定する。そして、決定された調整量と、入力画像データとから、むら補正データを作成する(ステップS5)。本実施形態では、ステップS5におけるむら補正のための調整量の算出方法に特徴を有する。ステップS5の詳細な内容については、
図11、
図12、及び、
図14に示すフローチャートを用いて説明する。
【0099】
その後、補正データ生成部416は、作成されたむら補正データを出力設定情報記憶部443に送信する。これにより、出力設定情報記憶部443は送信されてきたむら補正データを保存する。この場合、既にむら補正データが記憶されていた場合には、むら補正データを更新する設定であってもよい。
【0100】
次に、
図10のステップS5の詳細な手順について説明する。
図11は、
図10のステップS5の詳細な手順を示したフローチャートである。
【0101】
まず、補正データ生成部416は、むら挙動データベース442から、基本となるむら挙動特性データを取得すると共に、直近の補正用チャートの読取画像データを取得する(ステップS51)。取得されるむら挙動特性データは、むら挙動データベース442に予め記憶されたデータであってもよく、また、読取画像生成部415から送信されてきた調整用チャートの読取画像データで更新されたデータであってもよい。ところで、むら挙動データベース442には、所定の条件に応じて、
図6に示すような複数のむら挙動特性データが記憶されている。
【0102】
前述したように、濃度むらは、印刷枚数に応じて変化する。
図6に示すむら挙動特性データは、印刷枚数に応じて濃度むらがどのように変化するかを示したものである。検出した装置状態に応じた補正値で印刷を行った場合、スタート時の印刷物に濃度むらは残らないため、スタート時はゼロとなる。その後印刷を継続するとヘッド内の温度分布などが徐々にかわるため濃度むらが拡大し、所定の枚数で飽和する。この基本のむら挙動特性データは、
図6に示すように、濃度領域や、階調レベルによって異なる。したがって、予め、所定の濃度領域や、階調レベル(例えば、低、中、高、もしくは20%刻みの階調レベル)に応じて複数のむら挙動特性データがむら挙動データベース442に記憶されているのが好ましい。また、印刷のモード設定や用紙設定情報が変わることで挙動が変動する場合がある。したがって。印刷モード及び用紙設定情報に対応付けられた変動特性データがむら挙動データベース442に記憶されていてもよい。
【0103】
本実施形態では、補正データ生成部416は、むら挙動データベース442が有する複数のデータから、ジョブ内容検出部411で検出された印刷モード、及び、用紙種の情報に対応したむら挙動特性データを選択し、取得する。また、本実施形態では、
図6に示すように、高濃度分布、中間濃度分布、及び低濃度分布など複数の濃度毎にむら変動特性を取得する例としてもよい。
【0104】
次に、補正データ生成部416は、ジョブ内容検出部411で検出された項目から、濃度むらの変動要因を取得する(ステップS52)。例えば、
図7で示すジョブ内容検出部411で検出される項目のうち、『対象画像』が濃度むらの変動要因となる。したがって、補正データ生成部416は、
図7に示す『対象画像』の情報を取得する。
【0105】
次に、補正データ生成部416は、印刷環境検出部412で検出された項目から、濃度むらの変動要因を取得する(ステップS53)。例えば、
図6で示す印刷環境検出部412で検出項目のうち、『直前ジョブ前歴』、『マシン履歴』、及び、『外部環境』の全てが濃度むらの変動要因となる。したがって、補正データ生成部416は、
図7に示す『直前ジョブ前歴』、『マシン履歴』、及び、『外部環境』の情報を取得する。
【0106】
次に、補正データ生成部416は、ステップS52及びステップS53で取得された基本の変動特性データ及濃度むらの変動要因に基づいて、濃度むらの変動予測、及び、その変動予測に基づくむら挙動特性データの補正を行う(ステップS54)。ステップS54に詳細な手順は、
図12を用いて後述する。
【0107】
次に、補正データ生成部416は、適正化要件検出部413で検出された項目から、適正化要件(調整量候補値の濃度むら改善の達成可否を推定する推定要件、及び、濃度むら改善の判定条件)を取得する(ステップS55)。例えば、
図7で示す適正化要件検出部413で検出される項目のうち、『許容レベル』及び『優先濃度領域』が、調整量候補値の濃度むら改善の達成可否を推定する推定要件となる。また、
図7で示す適正化要件検出部413で検出される項目のうち、『判定モード』が調整量候補値における濃度むら改善の判定条件となる。
【0108】
その後、補正データ生成部416は、適正化要件検出部413で検出される調整量候補値の決定要件に基づいて、濃度むら補正の調整量候補値を算出すると共に、濃度むらの補正効果を予測して判定する。(ステップS56)。ステップS56における詳細な手順は、
図12を用いて後述する。
【0109】
ステップS56の濃度むらの調整量候補値の補正効果の判定に基づいて、調整量が適正であると判定された場合には、その調整量を用いてむら補正データを生成する(ステップS57)。
【0110】
以上のフローチャートにより、濃度むらの調整量の決定、及び、その調整量を用いたむら補正データの生成がなされる。次に、ステップS54及びステップS56における詳細な手順を説明する。
図12は、
図11におけるステップS54におけるむら挙動特性の変動予測、及び、その変動予測に基づくむら挙動特性の補正に係る手順を示すフローチャートである。
【0111】
まず、
図12を用いて、ステップS54におけるむら挙動特性の変動予測、及びその変動予測に基づくむら変動特性の補正に係る手順について説明する。
図11のステップS54における濃度むらの変動予測が開始された場合、まず、補正データ生成部416では、ステップS51で取得した基本のむら挙動特性データと、直近の調整用チャートの読取画像データとに基づいて、むら挙動特性を修正すると共に更新する(ステップS541)。ここで用いられる直近の調整用チャートの読取画像は、1枚であっても複数枚であってもよい。
【0112】
調整用チャートの印刷時においては、
図10のステップS2で説明したように、『用紙情報』及び『印刷設定』に応じて選択された調整量を用いてむら補正が行われる。このむら補正が正常に行われている場合には、濃度むらはゼロとなる。しかしながら、何等かの要因により1枚目の調整用チャートにむらが発生していた場合には、その濃度むらに応じて、むら挙動特性データを修正、更新する。このように、1枚である場合には、1枚目で発生した濃度むらに基づいて、基本のむら挙動特性データを修正する。一方、複数枚の調整用チャートの読取画像を用いる場合には、むら挙動特性データが飽和するまでのカーブ修正を行うことができる。
【0113】
次に、補正データ生成部416では、ステップS52で取得した『対象画像』の検出内容に基づいて、むら挙動特性データの変装を予測し、その変動予測に基づいて、むら挙動特性データの修正、更新を行う(ステップS542)。『対象画像』の検出内容は、画像データの情報に係るものであり、コンテンツ情報及びカバレッジ情報(インクの使用量)を含む。基本のむら挙動特性は、ある特定の画像データに合致するデータである。したがって、画像データによっては、基本のむら変動特性が異なる。また、使用しない色や、階調においては、むら補正を行う必要が無い。ここでは、画像データに基づいて、必要な色、階調を選択する。また、カバレッジ情報の大小に応じて、むら挙動特性が飽和するまでの枚数が異なることを考慮し、むら挙動特性の変動を予測してむら挙動特性のカーブを修正する。
【0114】
図13は、基本のむら挙動特性と、修正したむら変動特性を複数示した図である。
図13に示す線Aが、基本のむら挙動特性であり、その他の線A´、B1、B2、C1、C2がむら変動特性の修正例である。ステップS542におけるむら変動特性の修正では、カバレッジ情報(インクの使用量)に基づいて、むら挙動特性の変動を予測し、むら挙動特性カーブを
図12の左右方向(枚数方向)に変化させる。この場合におけるむら挙動特性カーブの変化量(むら挙動特性の修正量)は、インクの使用量に基づいて予め設定された値が用いられる。
【0115】
次に、補正データ生成部416は、ステップS53で取得した『直前ジョブ前歴』、『マシン履歴』、及び、『外部環境』の検出内容に基づいて、むら挙動特性の変動予測、及び修正を行う(ステップS543)。『直前ジョブ前歴』、『マシン履歴』、及び、『外部環境』の検出内容は、マシンの前歴情報やヘッド情報を含む。
【0116】
むら挙動特性は、装置の環境が異なる場合に変動が生じる。具体的には、前歴の印刷量が多い場合には、飽和持の濃度むらの絶対値が低減することが知られている。また、ヘッドの耐久状態や、外部環境によっても、むら挙動特性に変動が生じる。したがって、本実施形態では、『直前ジョブ前歴』、『マシン履歴』、及び、『外部環境』の検出内容に基づいて、むら挙動特性の変動を予測し、むら挙動特性を
図13の上下方向(濃度方向)に修正する。これにより、印刷環境を要因とした変動をむら挙動特性に反映させることができる。この場合における、飽和時のむら挙動特性の絶対値は、マシンの停止期間、印刷準備後の退勤時間、ヘッド累積射出量、使用ヘッド情報、外部の温度、及び、湿度に応じて予め設定された値が用いられる。
【0117】
そして、補正データ生成部416は、ステップS541~ステップS543で修正されたむら挙動特性を、
図11のステップS55で用いられるむら挙動特性として決定する。
【0118】
次に、
図11のステップS56におけるむら調整効果の予測、及び判定に係る手順について説明する。
図14は、
図11におけるステップS56におけるむら調整効果の予測及び判定に係る手順を示すフローチャートである。
【0119】
まず、
図11のステップS55で取得した『判定モード』の検出内容に基づいて、むら調整効果の判定条件を設定する(ステップS561)。ここでは、『判定モード』の検出内容に基づいて、むら改善が未達成である枚数(又は割合)を最小化するモード、N枚目のむらを最小化するモード、又は、連続印字枚数に応じて許容を超える前に調整量を切り替えるモードのいずれかが設定される。なお、『判定モード』の検出内容は、上述のモード設定に限られるものではなく、種々の変更が可能である。
【0120】
次に、ステップS54で決定された修正済みのむら挙動特性に基づいて、むら補正の調整量候補値を決定する(S562)。
図15は、修正済みのむら挙動特性、むら補正の調整量候補値、調整後のむら挙動特性、及びむら許容値を示した図である。むら補正の調整量候補値は、修正済みのむら挙動特性の飽和時のレベルに至るまでの範囲で適宜決定できる。なお、ステップS55において、適正化要件検出部413が、『優先濃度領域』を検出していた場合には、設定された優先濃度に応じたむら挙動特性が用いられる。
【0121】
次に、補正データ生成部416は、修正後のむら挙動特性と、ステップS562で設定されたむら補正の調整量候補値とに基づいて、調整後のむら変動特性の推定値を算出する(ステップS563)。
【0122】
次に、補正データ生成部416は、調整後のむら変動特性の推定値と、
図11のステップS55で取得した『許容レベル』に基づいて設定されたむら許容レベルとを比較し、調整量候補値の適正度の推定値を算出する(ステップS564)。調整量候補値の適正度の推定値は、調整後のむら変動特性が適正であるか否かを推定するための値である。この推定値は、判定モードの判定基準に応じて求めることが好ましい。例えば、適正度推定値は、調整後において、濃度むらが改善されない印刷物の枚数又は割合に応じて算出してもよく、良品率や良品印刷物に発生した平均の残存むらに応じて算出してもよい。この場合、ジョブ内容検出部411で検出される『必要枚数』に基づいて、適正度推定値が算出される。
【0123】
次に、補正データ生成部416は、ステップS561で設定された判定条件と、ステップS564で算出された調整量候補値の適正度推定値とに基づいて、その調整量候補値が適正であるか否かを判定する(ステップS565)。
【0124】
例えば、ステップS561で設定された判定条件として、むら補正が許容レベルに達しなかった未達枚数を所定の閾値以下とするモードが選択されていた場合には、その閾値と、ステップS564で算出された濃度むらが改善されなかった印刷物の枚数とを比較することで判定される。
図15で示す例では、線Cで示すむら挙動特性の推定値より、Nx枚目までの印刷物において、その濃度むらが許容レベルに達しないと推定される。したがって、このNx枚目が閾値以下であるか否かによって、調整量候補値が適正であるか否かを判定する。
【0125】
ところで、印刷枚数に応じて、適正な調整量は異なる。
図16は、必要枚数に応じて調整量を変更した場合にそれぞれの必要枚数に最適な、むら挙動特性に対する調整ターゲット例を示している。例えば、印刷枚数が15枚である場合には、
図16の線aで示す調整ターゲットに基づいて調整量候補値を設定することで、むら補正が許容レベルに達しなかった未達枚数を低減することができる。一方、印刷枚数が例えば150枚である場合には、
図16の線bで示す調整ターゲットに基づいて調整量候補値を設定することで、むら補正が許容レベルに達しなかった未達成枚数を低減することができる。
【0126】
また、『判定モード』において、連続印字枚数に応じて濃度むらが許容レベルを超える前に切り替えるモードが選択されている場合には、印字枚数毎に異なる調整量候補値を設定してもよい。例えば、1枚目から10枚目までと、11枚目から20枚目までと、21枚目以降で、それぞれ調整量を切り替える場合には、それぞれの調整量候補値について適正か否かを判定する。
【0127】
ステップS565において、「NO」と判定された場合、すなわち、調整量候補値が適正でないと判定された場合には、新たな調整量候補値を設定する(ステップS566)。その後、ステップS563からのフローを再度繰り返す。
【0128】
一方、ステップS565において「YES」と判定された場合、すなわち、調整量候補値が適正であると判定された場合には、その調整量候補値を、入力されたジョブに対するむら補正の調整量として決定する(ステップS567)。
【0129】
以上のようにして、本実施形態では、むら補正の調整量が決定される。本実施形態では、ステップS567で決定された調整量と、入力画像データとに基づいて、むら補正データが生成される。
【0130】
本実施形態では、上述のように、ジョブの内容や、印刷環境等のむら挙動の変動要因に基づいて、基本のむら挙動特性の変動を予測し、修正する。これにより、温度変化によって変化するヘッド特性に応じたむら挙動特性を予め把握することができる。これにより、印刷開始時から印刷終了時までに発生するむら挙動特性に基づいてむら補正データを作成することができ、より高いむら補正効果を得ることができる。
【0131】
さらに、本実施形態では、必要な印刷枚数の情報と、適正化要件として得られる許容するむらの範囲の情報を活用し、濃度むらが許容外となる印刷部数が最小となるような、むら補正のための調整値を設定することができる。
【0132】
本実施形態では、ジョブ内容、印刷環境、及び適正化要件の全てを用いてむら補正のための調整値を決定する構成としたが、これに限られるものではない。ジョブ内容、印刷環境、又は適正化要件のうち、いずれか一つを決定条件としてむら補正の調整量を決定することで、本発明の効果を得ることができる。
【0133】
例えば、ジョブ内容検出部411又は印刷環境検出部412で取得される濃度むらの変動要件のみを用いる場合には、基本のむら挙動特性に対して、濃度むらの変動を予測して、むら挙動特性の修正を行う。その後、修正されたむら挙動特性において、濃度むらの飽和置よりも低い濃度むらを調整ターゲットとして調整量を求める。これにより、濃度むらが改善されない印刷物の枚数を減らすことができる。
【0134】
一方、適正化要件検出部413で検出される適正化要件のみを用いる場合には、基本のむら挙動特性と、適正化要件とを用いて、適正な調整量を決定する。これにより、印刷される必要枚数のうち、濃度むらが改善されない印刷物の枚数を減らすことができる。
【0135】
上述した実施形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成について他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0136】
1…インクジェット記録装置、2…端末装置、10…給紙部、11…給紙トレー、12…記録材供給部、20…画像形成部、21…画像形成ドラム、23…加熱部、24…ヘッドユニット、25…定着部、26…画像読取部、27…記録材排出部、28…記録材反転部、30…排紙部、31…排紙トレー、40…制御部、41…CPU、42…RAM、43…ROM、44…記憶部、51…搬送部、52…操作表示部、53…入出力インターフェース、54…システムバス、100…画像形成装置、121…ローラー、123…搬送ベルト、211…保持領域、221…爪部、222…渡しドラム、241…ヘッド駆動部、
242…インクジェットヘッド、243…インクジェットモジュール、244…ノズル、271…分離ドラム、272…排出ベルト、281…反転ローラー、283…反転ベルト、410…補正制御部、411…ジョブ内容検出部、412…印刷環境検出部、413…適正化要件検出部、415…読取画像生成部、416…補正データ生成部、430…画像記録制御部、441…画像データ記憶部、442…挙動データベース、443…出力設定情報記憶部