(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098207
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】液体吐出装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/195 20060101AFI20240716BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240716BHJP
B41J 2/015 20060101ALI20240716BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B41J2/195
B41J2/01 401
B41J2/015 101
B41J2/14 301
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001523
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山岸 健
(72)【発明者】
【氏名】山縣 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】松林 友大
(72)【発明者】
【氏名】名和 研人
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB03
2C056EB08
2C056EB29
2C056EB30
2C056EC03
2C056EC08
2C056EC38
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA05
2C057AF99
2C057AG14
2C057AG33
2C057AG44
2C057AL03
2C057AL14
2C057AL24
2C057AM03
2C057AM16
2C057AN01
2C057AP02
2C057AQ06
2C057BA04
2C057BA14
2C057DA03
2C057DD06
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドの圧力室内の液体の温度を高精度に検出する。
【解決手段】第1ノズルと、第1ノズルに連通する第1圧力室と、第1圧力室内の液体に圧力を付与する第1圧電素子と、第1圧電素子に接続される第1駆動配線と、第1圧力室内の液体の温度を計測するための第1抵抗体と、を有する第1の液体吐出部と、第2ノズルと、第2ノズルに連通する第2圧力室と、第2圧力室内の液体に圧力を付与する第2圧電素子と、を有する第2の液体吐出部と、を含む液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置の駆動方法であって、第1ノズルから液体を吐出せずに第2ノズルから吐出される液体により記録媒体に第1画像を印刷する第1印刷処理の実行期間中に、第1駆動配線に印加される電位状態を第1ノズルから液体を吐出させない状態で、第1抵抗体の電位を検出する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ノズルと、
前記第1ノズルに連通する第1圧力室と、
前記第1圧力室内の液体に圧力を付与する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に接続される第1駆動配線と、
前記第1圧力室内の液体の温度を計測するための第1抵抗体と、
を有する第1の液体吐出部と、
第2ノズルと、
前記第2ノズルに連通する第2圧力室と、
前記第2圧力室内の液体に圧力を付与する第2圧電素子と、
を有する第2の液体吐出部と、
を含む液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置の駆動方法であって、
前記第1圧電素子および前記第2圧電素子のそれぞれは、
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置される圧電体と、を有し、
前記第1抵抗体は、前記第1電極、前記第2電極および前記第1駆動配線のうちのいずれかと同一材料で構成されており、
前記第1ノズルから液体を吐出せずに前記第2ノズルから吐出される液体により記録媒体に第1画像を印刷する第1印刷処理の実行期間中に、前記第1駆動配線に印加される電位状態を前記第1ノズルから液体を吐出させない状態で、前記第1抵抗体の電位を検出する、
ことを特徴とする液体吐出装置の駆動方法。
【請求項2】
前記第1抵抗体は、前記第1圧電素子の前記圧電体に接触する部分を有し、前記第2の液体吐出部とは接触しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の駆動方法。
【請求項3】
前記第1印刷処理の実行期間中において、前記第1抵抗体の電位を検出する期間にわたり、前記第1駆動配線に電位を印加しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の駆動方法。
【請求項4】
前記第1印刷処理の実行期間中において、前記第1抵抗体の電位を検出する期間にわたり、前記第1駆動配線に一定の電位を印加する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の駆動方法。
【請求項5】
前記第1印刷処理の実行期間中において、前記第2圧電素子は、駆動信号の供給を受けて前記第2ノズルから液体を吐出させるように駆動し、
前記第1印刷処理の実行期間中において、前記第1抵抗体の電位を検出する期間にわたり、前記第1駆動配線に前記駆動信号よりも電位変化の小さい電位を印加する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の駆動方法。
【請求項6】
前記第1印刷処理の実行期間中において、前記第1抵抗体の電位を検出する期間とは別の期間にわたり、前記第1ノズルから液体を吐出させずに前記第1ノズル内の液体を撹拌するように変化する電位を前記第1駆動配線に印加する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の駆動方法。
【請求項7】
前記第1抵抗体の電位に基づいて、前記第2圧電素子に供給される駆動信号を補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の駆動方法。
【請求項8】
前記第1ノズルおよび前記第2ノズルに対向する記録媒体を支持する支持部は、ヒーターにより設定温度に加熱され、
前記第1抵抗体の電位に基づいて、前記設定温度を補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の駆動方法。
【請求項9】
前記第2の液体吐出部は、
前記第2圧電素子に接続される第2駆動配線と、
前記第2圧力室内の液体の温度を計測するための第2抵抗体と、をさらに含み、
前記第2抵抗体は、前記第1電極、前記第2電極および前記第2駆動配線のうちのいずれかと同一材料で構成されており、
前記第2ノズルから液体を吐出せずに前記第1ノズルから吐出される液体により記録媒体に第2画像を印刷する第2印刷処理の実行期間中に、前記第2駆動配線に印加される電位状態を前記第2ノズルから液体を吐出させない状態で、前記第2抵抗体の電位を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターに代表される液体吐出装置は、一般に、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドを備える。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の液体吐出ヘッドは、液体を吐出するノズルと、ノズルに連通する圧力室と、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧電素子と、圧力室の温度を検出するための抵抗配線と、を備える。ここで、当該抵抗配線は、圧電素子の電極または当該電極に接続される配線と同一材料で構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、特許文献1に記載の液体吐出ヘッドを用いて圧力室内の液体の温度を検出する場合、圧電素子を駆動するための駆動信号からのノイズが検出信号に重畳してしまい、この結果、検出精度の低下を招くという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係る液体吐出装置の駆動方法は、第1ノズルと、前記第1ノズルに連通する第1圧力室と、前記第1圧力室内の液体に圧力を付与する第1圧電素子と、前記第1圧電素子に接続される第1駆動配線と、前記第1圧力室内の液体の温度を計測するための第1抵抗体と、を有する第1の液体吐出部と、第2ノズルと、前記第2ノズルに連通する第2圧力室と、前記第2圧力室内の液体に圧力を付与する第2圧電素子と、を有する第2の液体吐出部と、を備える液体吐出装置の駆動方法であって、前記第1圧電素子および前記第2圧電素子のそれぞれは、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される圧電体と、を有し、前記第1抵抗体は、前記第1電極、前記第2電極および前記第1駆動配線のうちのいずれかと同一材料で構成されており、前記第1ノズルから液体を吐出せずに前記第2ノズルから吐出される液体により記録媒体に第1画像を印刷する第1印刷処理の実行期間中に、前記第1駆動配線に印加される電位状態を前記第1ノズルから液体を吐出させない状態で、前記第1抵抗体の電位を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る液体吐出装置の構成例を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る液体吐出装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るヘッドチップの断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るヘッドチップの平面図である。
【
図8】圧電素子に供給される供給駆動信号と抵抗体の電位に基づく検出信号とのそれぞれの経時変化を示す図である。
【
図9】第1実施形態における第1印刷処理、第2印刷処理および電位検出の実行期間の関係を示す図である。
【
図10】第2実施形態における第1印刷処理、第2印刷処理および電位検出の実行期間の関係を示す図である。
【
図11】第3実施形態における液体吐出ヘッドを説明するための図である。
【
図12】第4実施形態における液体吐出ヘッドを説明するための図である。
【
図13】第5実施形態における液体吐出ヘッドに用いるヘッドチップを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0009】
以下の説明は、位置または方向等を特定するための便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。
【0010】
ここで、典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。ただし、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0011】
A:第1実施形態
A1:液体吐出装置の全体構成
図1は、第1実施形態に係る液体吐出装置100の構成例を示す模式図である。液体吐出装置100は、「液体」の一例であるインクを液滴として記録媒体Mに向けて吐出するインクジェット方式の印刷装置である。記録媒体Mは、例えば、印刷用紙である。なお、記録媒体Mは、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象であってもよい。
【0012】
液体吐出装置100は、
図1に示すように、液体容器10と制御モジュール20と搬送機構30と移動機構40と液体吐出ヘッド50と支持部60とヒーター70とを有する。
【0013】
液体容器10は、インクを貯留する。液体容器10の具体的な態様としては、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで構成される袋状のインクパック、および、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器10に貯留されるインクの種類は任意である。
【0014】
制御モジュール20は、液体吐出装置100の各要素の動作を制御する。ここで、制御モジュール20は、液体吐出ヘッド50を駆動するための駆動信号Comと、液体吐出ヘッド50の駆動を制御するための制御信号SIと、を出力する。また、制御モジュール20には、液体吐出ヘッド50の温度を示す検出信号Dtが入力される。制御モジュール20は、検出信号Dtに基づいて、駆動信号Comを補正したり、ヒーター70の設定温度を調整したりする。制御モジュール20の詳細については、後に
図2に基づいて説明する。
【0015】
搬送機構30は、制御モジュール20による制御のもとで、記録媒体MをY軸に沿って搬送する。
【0016】
移動機構40は、制御モジュール20による制御のもとで、液体吐出ヘッド50をX軸に沿って往復させる。移動機構40は、液体吐出ヘッド50を収容するキャリッジと称される略箱型の搬送体41と、搬送体41が固定される無端の搬送ベルト42と、を有する。なお、搬送体41に搭載される液体吐出ヘッド50の数は、1個に限定されず、複数個でもよい。また、搬送体41には、液体吐出ヘッド50のほかに、前述の液体容器10が搭載されてもよい。
【0017】
液体吐出ヘッド50は、制御モジュール20による制御のもと、液体容器10から供給されるインクを複数のノズルのそれぞれから記録媒体Mに吐出する。この吐出が搬送機構30による記録媒体Mの搬送と移動機構40による液体吐出ヘッド50の往復移動とに並行して行われることにより、記録媒体Mの表面にインクによる画像が形成される。
【0018】
図1に示す例では、液体吐出ヘッド50が複数のヘッドチップ51を備える。ヘッドチップ51は、インクを吐出する複数のノズルNを有する。ヘッドチップ51の構成例については、後に
図3から
図7に基づいて説明する。なお、液体吐出ヘッド50の有するヘッドチップ51の数は、
図1に示す例に限定されず、1個以上3個以下であってもよいし、5個以上でもよい。
【0019】
支持部60は、液体吐出ヘッド50から吐出されるインクの着弾を受ける状態の記録媒体Mを支持する台であり、プラテンとも称される。このような支持部60は、印刷時の液体吐出ヘッド50の複数のノズルNに対向する記録媒体Mを支持する。
【0020】
ヒーター70は、制御モジュール20による制御のもと、支持部60を設定温度に加熱する。この加熱により、記録媒体M上のインクの乾燥を促進させることができる。この結果、記録媒体M上のインクが所望位置に留められるので、画質を向上させることができる。
【0021】
A2:液体吐出装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る液体吐出装置100の電気的な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、液体吐出ヘッド50は、ヘッドチップ51_1、51_2と、駆動回路52_1、52_2と、検出回路53と、を有する。なお、
図2では、複数のヘッドチップ51のうちの2個のヘッドチップ51としてヘッドチップ51_1、51_2が代表的に図示される。ただし、
図2では、ヘッドチップ51_1、51_2がそれぞれ1個ずつ図示されるが、液体吐出ヘッド50は、複数のヘッドチップ51_1と複数のヘッドチップ51_2とを有する。
【0022】
ヘッドチップ51_1およびヘッドチップ51_2は、互いに異なる種類のインクを用いること以外は、互いに同様に構成される。ヘッドチップ51_1およびヘッドチップ51_2に用いるインクの種類の組み合わせとしては、例えば、カラーインクとホワイトインクとの組み合わせ、マットブラックインクとフォトブラックインクとの組み合わせ、上塗りクリアーインクとカラーインクとの組み合わせ、メタリックインクとカラーインクとの組み合わせ、ブラックインクとブラック以外のカラーインクとの組み合わせ等が挙げられる。
【0023】
ヘッドチップ51_1、51_2のそれぞれは、複数の圧電素子560と抵抗体80とを有する。ここで、ヘッドチップ51_1の有する圧電素子560は、「第1圧電素子」の一例である。ヘッドチップ51_2の有する圧電素子560は、「第2圧電素子」の一例である。ヘッドチップ51_1の有する抵抗体80は、「第1抵抗体」の一例である。ヘッドチップ51_2の有する抵抗体80は、「第2抵抗体」の一例である。
【0024】
ヘッドチップ51_1の有する複数の圧電素子560のそれぞれは、供給駆動信号Vin_1の供給を受けて逆圧電効果により駆動する。同様に、ヘッドチップ51_2の有する複数の圧電素子560のそれぞれは、供給駆動信号Vin_2の供給を受けて逆圧電効果により駆動する。抵抗体80は、温度変化に応じて抵抗値の変化する特性を有する。なお、ヘッドチップ51の詳細については、後に
図3から
図7に基づいて説明する。以下では、供給駆動信号Vin_1、Vin_2のそれぞれを供給駆動信号Vinという場合がある。
【0025】
駆動回路52_1は、ヘッドチップ51_1ごとに対応して設けられ、制御モジュール20による制御のもと、対応するヘッドチップ51_1の圧電素子560を駆動する。同様に、駆動回路52_2は、ヘッドチップ51_2ごとに対応して設けられ、制御モジュール20による制御のもと、対応するヘッドチップ51_2の圧電素子560を駆動する。
【0026】
ここで、制御モジュール20は、駆動信号Comとして個別の駆動信号Com_1、Com_2を出力する。そして、駆動回路52_1は、制御モジュール20による制御のもと、ヘッドチップ51_1の有する複数の圧電素子560のそれぞれについて、制御モジュール20から出力される駆動信号Com_1を供給駆動信号Vin_1として供給するか否かを切り替える。同様に、駆動回路52_2は、制御モジュール20による制御のもと、ヘッドチップ51_2の有する複数の圧電素子560のそれぞれについて、制御モジュール20から出力される駆動信号Com_2を供給駆動信号Vin_2として供給するか否かを切り替える。なお、以下では、駆動回路52_1、52_2のそれぞれを駆動回路52という場合がある。
【0027】
検出回路53は、ヘッドチップ51_1、51_2のそれぞれの温度を検出するための回路である。具体的には、検出回路53は、ヘッドチップ51_1の抵抗体80に電流Idを供給する回路と、ヘッドチップ51_1の抵抗体80に印加される電圧に応じた電位Vd_1を検出する回路と、を有し、電位Vd_1に応じた検出信号Dt_1を出力する。同様に、検出回路53は、ヘッドチップ51_2の抵抗体80に電流Idを供給する回路と、ヘッドチップ51_2の抵抗体80に印加される電圧に応じた電位Vd_2を検出する回路と、を有し、電位Vd_2に応じた検出信号Dt_2を出力する。なお、以下では、電位Vd_1および電位Vd_2のそれぞれを電位Vdという場合がある。検出信号Dt_1および検出信号Dt_2のそれぞれを検出信号Dtという場合がある。
【0028】
電流Idは、抵抗体80の両端等の所定の2つの位置間に流れる所定の定電流である。電位Vdは、オフセット電位VBS等の定電位を基準電位とした抵抗体80の電位である。電位Vdは、抵抗体80の抵抗値に応じて変化する。前述のように抵抗体80の抵抗値が温度変化に応じて変化することから、電位Vdは、温度変化に応じて変化する。したがって、電位Vdに応じた検出信号Dtは、ヘッドチップ51の温度、より具体的には、ヘッドチップ51の後述の圧力室C内のインクの温度を示す信号である。
【0029】
図2に示すように、制御モジュール20は、制御回路21と記憶回路22と電源回路23と駆動信号生成回路24とを有する。
【0030】
制御回路21は、液体吐出装置100の各部の動作を制御する機能と、各種データを処理する機能と、を有する。
【0031】
制御回路21は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、制御回路21は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。また、制御回路21は、複数のプロセッサーで構成される場合、例えば、駆動回路52の動作制御と検出回路53の動作制御とが別々のプロセッサーで行われてもよい。また、制御回路21が複数のプロセッサーで構成される場合、当該複数のプロセッサーが互いに異なる基板等に実装されてもよい。
【0032】
記憶回路22は、制御回路21が実行する各種プログラムと、制御回路21が処理する印刷データ等の各種データと、を記憶する。記憶回路22は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。印刷データは、パーソナルコンピューターまたはデジタルカメラ等の外部装置から供給される。なお、記憶回路22の一部または全部は、制御回路21の一部として構成されてもよい。
【0033】
電源回路23は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、液体吐出装置100の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路23は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、液体吐出ヘッド50に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路24に供給される。
【0034】
駆動信号生成回路24は、各圧電素子560を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路24は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路24では、当該DA変換回路が制御回路21からの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路23からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、圧電素子560に実際に供給される波形の信号が前述の供給駆動信号Vinである。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。
【0035】
本実施形態では、駆動信号生成回路24は、駆動信号Comとして駆動信号Com_1および駆動信号Com_2を個別に生成する。駆動信号Com_1は、駆動回路52_1に供給される駆動信号Comであり、ヘッドチップ51_1の圧電素子560を駆動するための波形を含む。駆動信号Com_2は、駆動回路52_2に供給される駆動信号Comであり、ヘッドチップ51_2の圧電素子560を駆動するための波形を含む。このような駆動信号生成回路24は、例えば、駆動信号Com_1を生成するためのDA変換回路および増幅回路と、駆動信号Com_2を生成するためのDA変換回路および増幅回路と、を個別に有する。波形指定信号dComは、駆動信号Com_1の波形を規定するための信号と、駆動信号Com_2の波形を規定するための信号と、を含む。
【0036】
なお、駆動信号生成回路24は、ヘッドチップ51_1の圧電素子560およびヘッドチップ51_2の圧電素子560を駆動する、単一の駆動信号Comを生成してもよい。
【0037】
以上の制御モジュール20では、制御回路21が、記憶回路22に記憶されるプログラムを実行することで、液体吐出装置100の各部の動作を制御する。ここで、制御回路21は、当該プログラムの実行により、液体吐出装置100の各部の動作を制御するための信号として、制御信号Sk1と制御信号Sk2と制御信号Sk3と制御信号SIと波形指定信号dComとを生成する。
【0038】
制御信号Sk1は、搬送機構30の駆動を制御するための信号である。制御信号Sk2は、移動機構40の駆動を制御するための信号である。制御信号Sk3は、ヒーター70の駆動を制御するための信号である。制御信号SIは、圧電素子560の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。なお、制御信号SIには、圧電素子560の駆動タイミングを規定するためのタイミング信号が含まれてもよい。当該タイミング信号は、例えば、前述の搬送体41の位置を検出するエンコーダーの出力に基づいて生成される。
【0039】
また、制御回路21は、記憶回路22に記憶されるプログラムを実行することで、補正部21aとして機能する。
【0040】
補正部21aは、検出信号Dtに基づいて、波形指定信号dComおよび制御信号Sk3のうちの一方または両方を調整する。この調整により、補正部21aは、駆動信号Comを補正したり、ヒーター70の設定温度を補正したりする。
【0041】
A3:ヘッド
図3は、第1実施形態に係るヘッドチップ51の分解斜視図である。
図4は、第1実施形態に係るヘッドチップ51の断面図である。なお、
図4は、
図3中のA-A線断面図である。
【0042】
図3および
図4に示すように、ヘッドチップ51は、Y軸に沿う方向に配列される複数のノズルNを有する。ここで、前述のヘッドチップ51_1の有するノズルNは、「第1ノズル」の一例である。述のヘッドチップ51_2の有するノズルNは、「第2ノズル」の一例である。
【0043】
ヘッドチップ51の有する複数のノズルNは、X軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列Ln1と第2ノズル列Ln2とに区分される。第1ノズル列Ln1および第2ノズル列Ln2のそれぞれは、Y軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。
【0044】
ヘッドチップ51は、X軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。ただし、第1ノズル列Ln1の複数のノズルNと第2ノズル列Ln2の複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置は、互いに一致してもよいし異なってもよい。
図3および
図4では、第1ノズル列Ln1の複数のノズルNと第2ノズル列Ln2の複数のノズルNとのY軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0045】
図3および
図4に示すように、ヘッドチップ51は、流路基板510と、圧力室基板520と、ノズル基板530と、吸振体540と、振動板550と、複数の圧電素子560と、保護基板570と、ケース580と、配線基板590と、を有する。
【0046】
流路基板510および圧力室基板520は、この順でZ1方向に積層されており、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する。流路基板510および圧力室基板520からなる積層体よりもZ1方向に位置する領域には、振動板550と複数の圧電素子560と保護基板570とケース580と配線基板590と駆動回路52とが設置される。他方、当該積層体よりもZ2方向に位置する領域には、ノズル基板530と吸振体540とが設置される。ヘッドチップ51の各要素は、概略的にはY方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により、互いに接合される。以下、ヘッドチップ51の各要素を順に説明する。
【0047】
ノズル基板530は、第1ノズル列Ln1および第2ノズル列Ln2のそれぞれの複数のノズルNが設けられた板状部材である。複数のノズルNのそれぞれは、インクを通過させる貫通孔である。ここで、ノズル基板530のZ2方向を向く面がノズル面FNである。ノズル基板530は、例えば、ドライエッチングまたはウェットエッチング等の加工技術を用いる半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、ノズル基板530の製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。また、ノズルの断面形状は、典型的には円形状であるが、これに限定されず、例えば、多角形または楕円形等の非円形状であってもよい。
【0048】
流路基板510には、第1ノズル列Ln1および第2ノズル列Ln2のそれぞれについて、空間R1と複数の供給流路Raと複数の連通流路Naとが設けられる。空間R1は、Z軸に沿う方向でみた平面視で、Y軸に沿う方向に延びる長尺状の開口である。供給流路Raおよび連通流路Naのそれぞれは、ノズルNごとに形成された貫通孔である。各供給流路Raは、空間R1に連通する。
【0049】
圧力室基板520は、第1ノズル列Ln1および第2ノズル列Ln2のそれぞれについて、キャビティと称される複数の圧力室Cが設けられた板状部材である。複数の圧力室Cは、Y軸に沿う方向に配列される。各圧力室Cは、ノズルNごとに形成され、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状の空間である。なお、本実施形態では、前述のヘッドチップ51_1の圧力室Cが「第1圧力室」の一例であり、前述のヘッドチップ51_2の圧力室Cが「第2圧力室」の一例である。
【0050】
流路基板510および圧力室基板520それぞれは、前述のノズル基板530と同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、流路基板510および圧力室基板520のそれぞれの製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
【0051】
圧力室Cは、流路基板510と振動板550との間に位置する。第1ノズル列Ln1および第2ノズル列Ln2のそれぞれについて、複数の圧力室CがY軸に沿う方向に配列される。また、圧力室Cは、連通流路Naおよび供給流路Raのそれぞれに連通する。したがって、圧力室Cは、連通流路Naを介してノズルNに連通し、かつ、供給流路Raを介して空間R1に連通する。
【0052】
圧力室基板520のZ1方向を向く面には、振動板550が配置される。振動板550は、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板550の詳細については、後に
図5から
図7に基づいて説明する。
【0053】
振動板550のZ1方向を向く面には、第1ノズル列Ln1および第2ノズル列Ln2のそれぞれについて、互いにノズルNに対応する複数の圧電素子560が配置される。各圧電素子560は、駆動信号Comに応じた供給駆動信号Vinの供給により変形する受動素子であり、圧力室C内のインクに圧力変動を生じさせる。各圧電素子560は、平面視でX軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の圧電素子560は、複数の圧力室Cに対応するようにY軸に沿う方向に配列される。圧電素子560は、平面視で圧力室Cに重なる。圧電素子560の詳細については、後に
図5から
図7に基づいて説明する。
【0054】
保護基板570は、振動板550のZ1方向を向く面に設置される板状部材であり、複数の圧電素子560を保護するとともに振動板550の機械的な強度を補強する。ここで、保護基板570と振動板550との間の空間Sには、複数の圧電素子560が収容される。保護基板570は、例えば、樹脂材料で構成される。
【0055】
ケース580は、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するためのケースである。ケース580は、例えば、樹脂材料で構成される。ケース580には、第1ノズル列Ln1および第2ノズル列Ln2のそれぞれについて、空間R2が設けられる。空間R2は、前述の空間R1に連通する空間であり、空間R1とともに、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するリザーバーRとして機能する。ケース580には、各リザーバーRにインクを供給するための導入口HLが設けられる。各リザーバーR内のインクは、各供給流路Raを介して圧力室Cに供給される。
【0056】
吸振体540は、コンプライアンス基板とも称され、リザーバーRの壁面を構成する可撓性の樹脂フィルムであり、リザーバーR内のインクの圧力変動を吸収する。なお、吸振体540は、金属製の可撓性を有する薄板であってもよい。吸振体540のZ1方向を向く面は、流路基板510に接着剤等により接合される。
【0057】
配線基板590は、振動板550のZ1方向を向く面に実装されており、制御モジュール20とヘッドチップ51とを電気的に接続するための実装部品である。配線基板590は、例えば、COF(Chip On Film)、FPC(Flexible Printed Circuit)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板である。本実施形態の配線基板590には、前述の駆動回路52が実装される。なお、配線基板590は、リジッド基板でもよい。この場合、当該リジッド基板上または当該リジッド基板に接続されるフレキシブル基板上に駆動回路52が実装される。
【0058】
図5は、第1実施形態に係るヘッドチップ51の平面図である。
図6は、
図5中のB-B線断面図である。
図7は、
図5中のC-C線断面図である。なお、これらの図では、説明の便宜上、ヘッドチップ51を構成する要素のうち、振動板550上において配線基板590に電気的に接続される要素およびその関連要素が代表的に示される。
【0059】
ヘッドチップ51は、
図5から
図7に示すように、前述の構成要素のほかに、個別駆動配線91と共通駆動配線92と検出用配線93と抵抗体80とを有する。ここで、本実施形態では、ヘッドチップ51_1が「第1の液体吐出部の」の一例であり、ヘッドチップ51_2が「第2の液体吐出部の」の一例である。前述のヘッドチップ51_1の有する個別駆動配線91および共通駆動配線92のそれぞれは、「第1駆動配線」の一例である。前述のヘッドチップ51_2の有する個別駆動配線91および共通駆動配線92のそれぞれは、「第2駆動配線」の一例である。
【0060】
以下、まず、これらの配線および抵抗体80の説明に先立ち、振動板550および圧電素子560について説明する。
【0061】
図6および
図7に示すように、振動板550は、弾性膜551と絶縁膜552とを有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。
【0062】
弾性膜551は、例えば、酸化シリコン(SiO2)で構成されており、シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。絶縁膜552は、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)で構成されており、スパッタ法によりジルコニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。
【0063】
なお、振動板550は、前述の弾性膜551および絶縁膜552の積層による構成に限定されず、例えば、単層で構成されてもよいし、3層以上で構成されてもよい。また、振動板550を構成する各層の材料は、前述の材料に限定されず、例えば、シリコンまたは窒化ケイ素等であってもよい。
【0064】
以上の振動板550のZ1方向を向く面には、複数の圧電素子560が配置される。
図6および
図7に示すように、各圧電素子560は、第1電極561と圧電体562と第2電極563とを有し、この順でこれらがZ1方向に積層される。
【0065】
第1電極561は、圧電素子560ごとに互いに離間して配置される個別電極である。第1電極561には、駆動信号Comに応じた供給駆動信号Vinが供給される。第2電極563は、複数の圧電素子560にわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状の共通電極である。第2電極563には、例えば、定電位が供給される。これらの電極の金属材料としては、例えば、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銅(Cu)等の金属材料が挙げられ、これらのうち、1種を単独でまたは2種以上を合金または積層等の態様で組み合わせて用いることができる。
【0066】
圧電体562は、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O
3)等の圧電材料で構成される。
図5に示す例では、圧電体562は、複数の圧電素子560にわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状をなす。ここで、圧電体562には、互いに隣り合う各圧力室Cの間隙に平面視で対応する領域に、圧電体562を貫通する貫通孔562aがX軸に沿う方向に延びて設けられる。なお、圧電体562が圧電素子560ごとに個別に設けられてもよい。
【0067】
本実施形態の圧電素子560は、
図7に示すように、前述の第1電極561と圧電体562と第2電極563とのほか、配線部564を有する。配線部564は、圧電素子560ごとに個別に設けられ、第2電極563よりも配線基板590に近い位置で、第2電極563に対して間隔を隔てて、圧電体562と第1電極561とに跨るように配置される。配線部564は、第2電極563と同一の成膜工程により一括形成されることが好ましい。この場合、ヘッドチップ51の製造工程を簡単化することができ、この結果、ヘッドチップ51の低コスト化を図ることができる。
【0068】
このような圧電素子560では、第1電極561と第2電極563との間に電圧が印加されることにより、圧電体562が逆圧電効果により変形する。この変形に連動して振動板550が振動すると、圧力室C内の圧力が変動することにより、インクがノズルNから吐出される。
【0069】
以上の圧電素子560は、
図5に示すように、個別駆動配線91および共通駆動配線92を介して配線基板590に電気的に接続される。
【0070】
個別駆動配線91は、圧電素子560ごとに個別に設けられ、対応する圧電素子560の第1電極561に電気的に接続される。一方、共通駆動配線92は、複数の圧電素子560に共通して設けられ、第2電極563に電気的に接続される。
【0071】
個別駆動配線91および共通駆動配線92は、互いに間隔を隔てて配置される。ここで、個別駆動配線91および共通駆動配線92は、同一の成膜工程により一括形成されることが好ましい。この場合、ヘッドチップ51の製造工程を簡単化することができ、この結果、ヘッドチップ51の低コスト化を図ることができる。
【0072】
個別駆動配線91および共通駆動配線92のそれぞれの構成材料としては、導電性を有する材料であればよく、特に限定されないが、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等の金属が挙げられる。中でも、個別駆動配線91および共通駆動配線92の構成材料としては、金(Au)が好適に用いられる。なお、個別駆動配線91および共通駆動配線92は、第1電極561、第2電極563および振動板550との密着性を向上するための密着層を有していてもよい。
【0073】
本実施形態では、個別駆動配線91は、
図7に示すように、配線部564を介して第1電極561に接続されており、圧電素子560ごとに、配線部564上から配線基板590に向かう方向に振動板550上まで引き出される。
【0074】
一方、共通駆動配線92は、
図5に示すように、第2電極563のY1方向およびY2方向の両端部において、第2電極563上から配線基板590に向かう方向に振動板550上まで引き出される。ここで、共通駆動配線92は、Y軸に沿う方向に延びる1対の部分92a、92bを有する。共通駆動配線92の部分92aは、Z軸に沿う方向にみて圧力室CのX軸に沿う方向での両端のうち配線基板590から遠いほうの端に重なる。一方、共通駆動配線92の部分92bは、Z軸に沿う方向にみて圧力室CのX軸に沿う方向での両端のうち配線基板590に近いほうの端に重なる。以上から理解されるように、部分92a、92bのそれぞれは、Y軸に沿う方向に並ぶ複数の圧力室Cにわたり、Y軸に沿う方向に延びる。
【0075】
抵抗体80は、圧力室C内のインクの温度を検出するための抵抗配線であり、温度変化に応じて抵抗値の変化する特性を有する。したがって、抵抗体80は、電気抵抗値が温度依存性を有する材料で構成される。ただし、抵抗体80は、第1電極561、第2電極563、個別駆動配線91および共通駆動配線92のうちのいずれかと同一材料で構成される。具体的には、抵抗体80を構成する材料としては、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の金属が挙げられる。これらのうち、白金(Pt)は、他の金属に比べて、温度変化による抵抗値変化が大きく、かつ、高精度な温度検出が可能であることから、抵抗体80を構成する材料として好適に採用される。
【0076】
図5に示すように、抵抗体80は、前述の個別駆動配線91および共通駆動配線92に対して間隔を隔てて配置される。
図5に示す例では、抵抗体80は、Z軸に沿う方向にみて圧力室Cに重ならない位置に配置される。このため、振動板550の変形の影響を受けずに、抵抗体80を用いて圧力室Cの温度を検出することができる。なお、抵抗体80は、Z軸に沿う方向にみて圧力室Cに重なる位置に配置されてもよい。この場合、抵抗体80を用いた温度検出には、必要に応じて、振動板550の変形を考慮した補正処理が用いられる。
【0077】
図5に示す例では、抵抗体80は、Z軸に沿う方向にみて、第1ノズル列Ln1に対応する複数の圧力室Cと第2ノズル列Ln2に対応する複数の圧力室Cとの全体を囲むように延びる形状をなす。ここで、
図5および
図7に示すように、抵抗体80は、第1ノズル列Ln1および第2ノズル列Ln2のノズル列ごとに、Y軸に沿う方向に延びる複数の部分81を有する。この複数の部分81は、X軸に沿う方向に互いに間隔を隔てて並ぶ。そして、複数の部分81のうちの互いに隣り合う2つの部分81の一端同士は、交互に連結される。これにより、抵抗体80は、蛇行した形状をなす部分を有する。このため、当該部分を有しない構成に比べて、抵抗体80の長さを長くすることができる。この結果、抵抗体80の温度変化に対する抵抗値の変化が大きくなるので、抵抗体80を用いた温度検出の精度を高めることができる。なお、抵抗体80の平面視形状は、
図5に示す例に限定されず、任意である。
【0078】
図7に示す例では、抵抗体80が振動板550と圧電体562と間に配置されており、振動板550および圧電体562のそれぞれに接する。このような構成では、抵抗体80が圧電体562のZ1方向を向く面上に配置される構成に比べて、抵抗体80を用いた温度検出の精度を高めやすいという利点がある。なお、抵抗体80の配置は、ヘッドチップ51の一部となる位置であればよく、
図7に示す配置に限定されない。例えば、抵抗体80は、抵抗体80が圧電体562のZ1方向を向く面上に配置されてもよいし、振動板550と圧電体562と間に配置されずに振動板550上に配置されてもよい。
【0079】
ここで、本実施形態の抵抗体80は、第1電極561に対して間隔を隔てて配置されるが、第1電極561と同一の成膜工程により一括形成されることが好ましい。この場合、ヘッドチップ51の製造工程を簡単化することができ、この結果、ヘッドチップ51の低コスト化を図ることができる。
【0080】
以上の抵抗体80は、検出用配線93を介して配線基板590に電気的に接続される。検出用配線93は、抵抗体80の一端に接続される検出用配線93aと、抵抗体80の他端に接続される検出用配線93bと、を有する。検出用配線93a、93bは、配線基板590を介して、検出回路53に電気的に接続される。このため、検出用配線93a、93bを介して、検出回路53から抵抗体80に電流Idを供給したり検出回路53で抵抗体80の電位Vdを検出したりすることができる。
【0081】
検出用配線93aおよび検出用配線93bを含む検出用配線93は、個別駆動配線91および共通駆動配線92に対して間隔を隔てて配置されるが、個別駆動配線91および共通駆動配線92と同一の成膜工程により一括形成されることが好ましい。この場合、ヘッドチップ51の製造工程を簡単化することができ、この結果、ヘッドチップ51の低コスト化を図ることができる。
【0082】
検出用配線93を構成する材料としては、導電性を有する材料であればよく、特に限定されないが、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等の金属が挙げられる。中でも、検出用配線93の構成材料を個別駆動配線91および共通駆動配線92の構成材料と同一とする観点から、検出用配線93の構成材料としては、金(Au)が好ましい。この場合、と同じ材料である。なお、検出用配線93は、個別駆動配線91および共通駆動配線92と同様、抵抗体80または振動板550との密着性を向上するための密着層を有していてもよい。
【0083】
A4:印刷処理および検出処理
図8は、圧電素子560に供給される供給駆動信号Vinと抵抗体80の電位Vdに基づく検出信号Dtとのそれぞれの経時変化を示す図である。
図8中、横軸は、時間tであり、上段の縦軸は、供給駆動信号Vinであり、下段の縦軸は、検出信号Dtである。
【0084】
図8に示すように、印刷処理の実行期間Tの供給駆動信号Vinには、駆動信号ComのパルスPDが含まれる。パルスPDは、ノズルNからインクを吐出させる程度に圧力室C内のインクに圧力変動を生じさせるように圧電素子560を駆動する電位パルスである。なお、パルスPDの波形は、ノズルNからインクを吐出させる程度に圧力室C内のインクに圧力変動を生じさせることができればよく、
図8に示す例に限定されず、任意である。
【0085】
ここで、印刷処理の実行期間Tでは、検出信号DtにパルスPDに起因するノイズが混入する。これは、抵抗体80が液体吐出ヘッド50内において圧電素子560に極めて近い位置に配置されることに起因する。したがって、印刷処理の実行期間T中では、抵抗体80を用いた温度検出の精度低下を招いてしまう。
【0086】
そこで、本実施形態では、印刷処理の実行期間Tとは異なる期間中に、抵抗体80を用いた温度検出が行われる。以下、この点を詳細に説明する。
【0087】
図9は、第1印刷処理、第2印刷処理および電位検出の実行期間の関係を示す図である。
図9中、横軸は、時間tであり、1段目の縦軸は、ヘッドチップ51_1の供給駆動信号Vin_1であり、2段目の縦軸は、ヘッドチップ51_1の検出信号Dt_1であり、3段目の縦軸は、ヘッドチップ51_2の供給駆動信号Vin_2であり、4段目の縦軸は、ヘッドチップ51_2の検出信号Dt_2である。
【0088】
図9では、第2印刷処理の実行後に第1印刷処理を実行する態様が例示される。ここで、第1印刷処理は、ヘッドチップ51_1のノズルN1からインクを吐出せずに、ヘッドチップ51_2のノズルN2から吐出されるインクにより記録媒体Mに第1画像を印刷する。第2印刷処理は、ヘッドチップ51_2のノズルN2からインクを吐出せずに、ヘッドチップ51_1のノズルN1から吐出されるインクにより記録媒体Mに第2画像を印刷する。なお、第1印刷処理および第2印刷処理のいずれか一方を複数回繰り返すこともできる。または、第1印刷処理と第2印刷処理を交互に繰り返すこともできる。または、第1印刷処理および第2印刷処理のいずれか一方を1回のみを実行することもできる。
【0089】
当該第1画像および当該第2画像は、互いに異なる種類のインクにより形成される画像である。例えば、当該第1画像および当該第2画像の組み合わせとしては、カラーインクによる画像とホワイトインクによる画像との組み合わせ、マットブラックインクによる画像とフォトブラックインクによる画像との組み合わせ、上塗りクリアーインクによる画像とカラーインクによる画像との組み合わせ、メタリックインクによる画像とカラーインクによる画像との組み合わせ、ブラックインクによる画像とブラック以外のカラーインクによる画像との組み合わせ等が挙げられる。なお、当該第1画像および当該第2画像は、多パス印刷における互いに異なるパスでの画像であってもよいし、個別の印刷データに基づく画像であってもよい。
【0090】
第1印刷処理の実行期間T1中には、供給駆動信号Vin_2にパルスPDが含まれており、ヘッドチップ51_2のノズルNからインクが吐出されるようにヘッドチップ51_2の圧電素子560が駆動する。なお、実行期間T1の供給駆動信号Vin_2に含まれるパルスPDの数は、
図9に示す例に限定されず、任意である。
【0091】
ここで、第1印刷処理の実行期間T1中には、期間T3_1にわたり、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を検出する検出処理が行われる。印刷処理に使用しないヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に印加される電位状態は、ヘッドチップ51_1のノズルNから液体を吐出させない状態であるので、前述のような検出信号Dt_1へのノイズの混入を防止することができる。
【0092】
具体的には、期間T3_1にわたり、ヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に駆動信号Com_2よりも電位変化の小さい電位が印加される。
図9に示す例では、期間T3_1にわたり、ヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に電位が印加されない。例えば、駆動回路52_1が、制御モジュール20の制御のもと、駆動信号Com_1の信号線と、供給駆動信号Vin_1の信号線とを接続しない状態に切り替える。または、期間T3_1にわたり、ヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に一定の電位が印加される。例えば、駆動回路52_1が、制御モジュール20の制御のもと、駆動信号Com_1のパルスPDを含む期間において、駆動信号Com_1の信号線と、供給駆動信号Vin_1の信号線とを接続しない状態とし、駆動信号Com_1のパルスPDを含まない電位が一定に維持される期間において、駆動信号Com_1の信号線と、供給駆動信号Vin_1の信号線とを接続状態とするように切り替える。または、駆動回路52_1が、制御モジュール20の制御のもと、駆動信号Com_1以外の一定の電位を維持する駆動信号Comの信号線と、供給駆動信号Vin_1の信号線とを接続した状態に切り替える。なお、期間T3_1は、実行期間T1中であればよく、
図9に示す例に限定されず、任意である。また、期間T3_1にわたりヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に印加される電位は、駆動信号Com_2よりも電位変化の小さい電位であればよく、
図9に示す例に限定されず、任意である。
【0093】
第2印刷処理の実行期間T2中には、供給駆動信号Vin_1にパルスPDが含まれており、ヘッドチップ51_1のノズルNからインクが吐出されるようにヘッドチップ51_1の圧電素子560が駆動する。なお、実行期間T2の供給駆動信号Vin_1に含まれるパルスPDの数は、
図9に示す例に限定されず、任意である。
【0094】
ここで、第2印刷処理の実行期間T2中には、期間T3_2にわたり、ヘッドチップ51_2の抵抗体80の電位を検出する検出処理が行われる。印刷処理に使用しないヘッドチップ51_2の個別駆動配線91および共通駆動配線92に印加される電位状態は、ヘッドチップ51_2のノズルNから液体を吐出させない状態であるので、前述のような検出信号Dt_1へのノイズの混入を防止することができる。
【0095】
具体的には、期間T3_2にわたり、ヘッドチップ51_2の個別駆動配線91および共通駆動配線92に駆動信号Com_1よりも電位変化の小さい電位が印加される。
図9に示す例では、期間T3_2にわたり、ヘッドチップ51_2の個別駆動配線91および共通駆動配線92に電位が印加されない。例えば、駆動回路52_2が、制御モジュール20の制御のもと、駆動信号Com_2の信号線と、供給駆動信号Vin_2の信号線とを接続しない状態に切り替える。または、期間T3_2にわたり、ヘッドチップ51_2の個別駆動配線91および共通駆動配線92に一定の電位が印加される。例えば、駆動回路52_2が、制御モジュール20の制御のもと、駆動信号Com_2のパルスPDを含む期間において、駆動信号Com_2の信号線と、供給駆動信号Vin_2の信号線とを接続しない状態とし、駆動信号Com_2のパルスPDを含まない電位が一定に維持される期間において、駆動信号Com_2の信号線と、供給駆動信号Vin_2の信号線とを接続状態とするように切り替える。または、駆動回路52_2が、制御モジュール20の制御のもと、駆動信号Com_2以外の一定の電位を維持する駆動信号Comの信号線と、供給駆動信号Vin_2の信号線とを接続した状態に切り替える。なお、期間T3_2は、実行期間T2中であればよく、
図9に示す例に限定されず、任意である。また、期間T3_1にわたりヘッドチップ51_2の個別駆動配線91および共通駆動配線92に印加される電位は、駆動信号Com_1よりも電位変化の小さい電位であればよく、
図9に示す例に限定されず、任意である。
【0096】
本実施形態では、第1印刷処理において、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位が検出回路53により検出される。検出回路53は、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位Vd_1に基づく検出信号Dt_1を出力する。そして、ヘッドチップ51_1とヘッドチップ51_2は同じ液体吐出ヘッド50のノズル面FNに配置され、同様の環境に置かれていることから、ヘッドチップ51_1の温度とヘッドチップ51_2の温度は類似するため、第1印刷処理中に、補正部21aは、検出信号Dt_1に基づいて、ヘッドチップ51_2の圧電素子560に供給される駆動信号Com_2を補正したり、ヒーター70により設定温度を調整したりする。
【0097】
また、第2印刷処理において、ヘッドチップ51_2の抵抗体80の電位が検出回路53により検出される。検出回路53は、ヘッドチップ51_2の抵抗体80の電位Vd_2に基づく検出信号Dt_2を出力する。そして、第2印刷処理中に、補正部21aは、検出信号Dt_2に基づいて、ヘッドチップ51_1の圧電素子560に供給される駆動信号Com_1を補正したり、ヒーター70により設定温度を調整したりする。
【0098】
これにより、印刷処理に使用しないヘッドチップ51を利用して精度よく温度を測定し、印刷処理に使用しているヘッドチップの51に供給される駆動信号Comおよびヒーター70の温度を調整することで、温度測定のため印刷処理を中断する必要がなくスループットを低下させずに印刷品質を維持することができる。
【0099】
なお、補正部21aは、検出信号Dt_1に基づいて、ヘッドチップ51_1の圧電素子560に供給される駆動信号Com_1を補正したり、ヒーター70により設定温度を調整したりすることもできる。また、補正部21aは、検出信号Dt_2に基づいて、ヘッドチップ51_2の圧電素子560に供給される駆動信号Com_2を補正したり、ヒーター70により設定温度を調整したりすることもできる。
【0100】
以上のように、液体吐出装置100は、「第1ノズル」の一例としてヘッドチップ51_1のノズルNと、「第1圧力室」の一例としてヘッドチップ51_1の圧力室Cと、「第1圧電素子」の一例としてヘッドチップ51_1の圧電素子560と、「第1駆動配線」の一例としてヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92と、「第1抵抗体」の一例としてヘッドチップ51_1の抵抗体80と、「第2ノズル」の一例としてヘッドチップ51_2のノズルNと、「第2圧力室」の一例としてヘッドチップ51_2の圧力室Cと、「第2圧電素子」の一例としてヘッドチップ51_2の圧電素子560と、を含む。
【0101】
ここで、ヘッドチップ51_1の圧力室Cは、ヘッドチップ51_1のノズルNに連通する。ヘッドチップ51_1の圧電素子560は、ヘッドチップ51_1の圧力室C内の液体に圧力を付与する。ヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92は、ヘッドチップ51_1の圧電素子560に接続される。ヘッドチップ51_1の抵抗体80は、ヘッドチップ51_1の圧力室C内の液体の温度を計測するための抵抗体である。
【0102】
ヘッドチップ51_2の圧力室Cは、ヘッドチップ51_2のノズルNに連通する。ヘッドチップ51_2の圧電素子560は、ヘッドチップ51_2の圧力室C内の液体に圧力を付与する。
【0103】
ヘッドチップ51_1、51_2のそれぞれの圧電素子560は、第1電極561と、第2電極563と、第1電極561と第2電極563との間に配置される圧電体562と、を有する。ヘッドチップ51_1の抵抗体80は、ヘッドチップ51_1の第1電極561、第2電極563、個別駆動配線91および共通駆動配線92のうちのいずれかと同一材料で構成される。
【0104】
このような液体吐出装置100の駆動方法は、ヘッドチップ51_2のノズルNから吐出される液体により記録媒体Mに第1画像を印刷する第1印刷処理の実行期間T1中に、ヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に印加される電位がヘッドチップ51_1のノズルNから液体を吐出させない状態である際に、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を検出する。
【0105】
以上の駆動方法では、ヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に印加される電位がヘッドチップ51_1のノズルNから液体を吐出させない状態である際に、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位が検出されるので、ヘッドチップ51_1の抵抗体80が液体吐出ヘッド50内に設けられていても、ヘッドチップ51_1の圧電素子560をノズルN1からインクを吐出させるように駆動する駆動信号Com_1に応じた供給駆動信号Vin_1の影響を受けずに、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を高精度に検出することができる。この結果、当該電位に基づいてヘッドチップ51_1の圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。
【0106】
ここで、ヘッドチップ51_2のノズルN2からインクを吐出して第1画像を印刷する第1印刷処理の実行期間T1中の温度検出が、第1画像の印刷には使用されないヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を検出して行われるので、実行期間T1の期間中にヘッドチップ51_2のノズルN2からインクを吐出させない期間を設けてヘッドチップ51_2の抵抗体80の電位を検出する場合に比べて、印刷処理のスループットの低下を防止することができる。
【0107】
本実施形態では、前述のように、ヘッドチップ51_1の抵抗体80は、ヘッドチップ51_1の圧電素子560の圧電体562に接触する部分を有し、ヘッドチップ51_2とは接触しない。このため、ヘッドチップ51_1の抵抗体80が圧電体562に接触しない構成に比べて、ヘッドチップ51_1における抵抗体80と圧力室Cとの間の距離を短くすることができる。この結果、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位に基づいてヘッドチップ51_1の圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。また、このような構成では、圧電素子560を駆動すると、抵抗体80の電位に基づく検出信号Dt_1に駆動信号Com_1に応じた供給駆動信号Vin_1によるノイズが混入しやすいが、ヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に印加される電位がヘッドチップ51_1のノズルNから液体を吐出させない状態である際にヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を検出することによる効果が顕著となる。また、ヘッドチップ51_2のノズルN2から吐出した液体で第1画像を印刷している期間であっても、ヘッドチップ51_1の抵抗体80は、ヘッドチップ51_2と接触しない構成であるため、ヘッドチップ51_2に供給される駆動信号Com_2に応じた供給駆動信号Vin_2によるノイズが検出信号Dt_1に混入せず、ヘッドチップ51_1の圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。
【0108】
また、ヘッドチップ51_2の抵抗体80は、ヘッドチップ51_2の圧電素子560の圧電体562に接触する部分を有し、ヘッドチップ51_1とは接触しない。これにより、ヘッドチップ51_1のノズルN1から吐出した液体で第2画像を印刷している期間であっても、ヘッドチップ51_1に供給される駆動信号Com_1に応じた供給駆動信号Vin_1によるノイズが検出信号Dt_2に混入せず、ヘッドチップ51_2の圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。
【0109】
また、本実施形態の駆動方法は、前述のように、第1印刷処理の実行期間T1中において、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を検出する期間T3_1にわたり、ヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に電位を印加しない。このため、ヘッドチップ51_1の圧電素子560を駆動する駆動信号Com_1に応じた供給駆動信号Vin_1の影響を受けずに、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を高精度に検出することができる。
【0110】
ここで、本実施形態の駆動方法は、前述のように、第1印刷処理の実行期間T1中において、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を検出する期間T3_1にわたり、ヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に一定の電位を印加する。このため、ヘッドチップ51_1の圧電素子560を駆動する駆動信号Com_1に応じた供給駆動信号Vin_1の影響を受けずに、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を高精度に検出することができる。
【0111】
また、前述のように、第1印刷処理の実行期間T1中において、ヘッドチップ51_2の圧電素子560は、駆動信号Com_2に応じた供給駆動信号Vin_2の供給を受けてノズルN2からインクを吐出させるように駆動する。そのうえで、本実施形態の駆動方法は、第1印刷処理の実行期間T1中において、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を検出する期間T3_1にわたり、ヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に駆動信号Com_2よりも電位変化の小さい電位を印加する。このため、ヘッドチップ51_1の圧電素子560を駆動する駆動信号Com_1に対応する供給駆動信号Vin_1の影響を受けずに、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を高精度に検出することができる。
【0112】
さらに、本実施形態の駆動方法は、前述のように、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位に基づいて、ヘッドチップ51_2の圧電素子560に供給される駆動信号Com_1を補正する。このため、ヘッドチップ51_1の圧力室C内の液体の温度変化に応じて適切な駆動信号Com_1をヘッドチップ51_2の圧電素子560に供給することができる。
【0113】
また、前述のように、ヘッドチップ51_1、51_2のノズルN1、N2に対向する記録媒体Mを支持する支持部60は、ヒーター70により設定温度に加熱される。そのうえで、本実施形態の駆動方法は、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位に基づいて、当該設定温度を補正する。このため、ヘッドチップ51_1の圧力室C内の液体の温度変化に応じて適切な温度で支持部60を加熱することができる。
【0114】
さらに、前述のように、液体吐出ヘッド50は、「第2駆動配線」の一例としてヘッドチップ51_2の個別駆動配線91および共通駆動配線92と、「第2抵抗体」の一例としてヘッドチップ51_2の抵抗体80と、をさらに含む。ヘッドチップ51_2の個別駆動配線91および共通駆動配線92は、ヘッドチップ51_2の圧電素子560に接続される。ヘッドチップ51_2の抵抗体80は、ヘッドチップ51_2の圧力室C内の液体の温度を計測するための抵抗体である。ヘッドチップ51_2の抵抗体80は、ヘッドチップ51_2の第1電極561、第2電極563、個別駆動配線91および共通駆動配線92のうちのいずれかと同一材料で構成される。
【0115】
そのうえで、本実施形態の駆動方法は、前述のように、ヘッドチップ51_1のノズルNから吐出される液体により記録媒体Mに第2画像を印刷する第2印刷処理の実行期間T2中に、ヘッドチップ51_2の個別駆動配線91および共通駆動配線92に印加される電位がヘッドチップ51_2のノズルNから液体を吐出させない状態である際に、ヘッドチップ51_2の抵抗体80の電位を検出する。
【0116】
このため、ヘッドチップ51_2の抵抗体80が液体吐出ヘッド内に設けられていても、ヘッドチップ51_2の圧電素子560を駆動する駆動信号の影響を受けずに、ヘッドチップ51_2の抵抗体80の電位を高精度に検出することができる。この結果、当該電位に基づいてヘッドチップ51_2の圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。ここで、ヘッドチップ51_2の抵抗体80の電位の検出が第2印刷処理の実行期間T2中に行われるので、実行期間T2以外の期間中にヘッドチップ51_2の抵抗体80の電位を検出する場合に比べて、印刷処理のスループットの低下を防止することができる。
【0117】
B:第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0118】
図10は、第2実施形態における第1印刷処理、第2印刷処理および電位検出の実行期間の関係を示す図である。第2実施形態は、微振動処理を加えたこと以外は、前述の第1実施形態と同様である。
【0119】
本実施形態の第1印刷処理の実行期間T1中には、期間T3_1にわたる検出処理の後、期間T4_1にわたり、ヘッドチップ51_1のノズルNからインクを吐出させずにノズルN内のインクのメニスカスを微振動させる微振動処理が行われる。期間T4_1の供給駆動信号Vin_1には、パルスPVが含まれる。パルスPVは、ノズルNからインクを吐出させない強さの圧力変動を圧力室Cに生じさせるように圧電素子560を駆動させる電位パルスである。パルスPVが圧電素子560に供給されることにより、ノズルNからインクを吐出させずに、ノズルN内のインクのメニスカスを微振動させる。この微振動により、ノズルN内のインクが撹拌されるので、ノズルNと連通流路Naとの間でインクの置換が円滑に行われる。このため、ノズルN内のインクの増粘等が防止される。なお、期間T3_1、T4_1の長さ等は、
図10に示す例に限定されず、任意である。
【0120】
図10に示す例では、期間T4_1が期間T3_1と重複しない。このため、期間T4_1が期間T3_1と重複する態様に比べて、ヘッドチップ51_1の抵抗体80を用いた温度検出を高精度に行うことができる。なお、期間T4_1が期間T3_1と重複してもよい。この場合であっても、パルスPVの電位変化がパルスPDの電位変化よりも小さいので、実行期間T1以外の期間中にヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を検出する場合に比べて、ヘッドチップ51_1の抵抗体80を用いた温度検出を高精度に行うことができる。
【0121】
ここで、前述のように期間T4_1が期間T3_1の後であるが、インクの吐出直後の所定期間のノズルNでは、インクのメニスカスが残留振動により振動するので、インクが撹拌される。このため、期間T3_1においてノズルN内のインクのメニスカスを振動させるために圧電素子560の駆動が別途行われなくても、ノズルN内のインクの増粘等が防止される。なお、期間T4_1は、期間T3_1よりも前であってもよい。
【0122】
以上の第1印刷処理と同様に、本実施形態の第2印刷処理の実行期間T2中には、期間T3_2にわたる検出処理の後、期間T4_2にわたり、ヘッドチップ51_2のノズルNからインクを吐出させずにノズルN内のインクのメニスカスを微振動させる微振動処理が行われる。期間T4_2の供給駆動信号Vin_2には、パルスPVが含まれる。なお、期間T3_2、T4_2の長さ等は、
図10に示す例に限定されず、任意である。
【0123】
以上の第2実施形態によっても、液体吐出ヘッド50の圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。本実施形態の駆動方法は、前述のように、第1印刷処理の実行期間T1中において、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位を検出する期間T3_1とは別の期間T4_1にわたり、ヘッドチップ51_1のノズルNから液体を吐出させずにヘッドチップ51_1のノズルN内の液体を撹拌するように変化する電位をヘッドチップ51_1の個別駆動配線91および共通駆動配線92に印加する。このため、第1印刷処理の実行期間T1を有効利用するとともに、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位の検出精度を低下させることなく、ヘッドチップ51_1のノズルN内の液体を撹拌することができる。
【0124】
C:第3実施形態
以下、本開示の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0125】
図11は、第3実施形態における液体吐出ヘッド50Aを説明するための図である。液体吐出ヘッド50Aは、ヘッドチップ51の数および配置が異なること以外は、前述の第1実施形態の液体吐出ヘッド50と同様に構成される。
【0126】
図11に示すように、液体吐出ヘッド50Aは、千鳥配置される複数のヘッドチップ51を有する。
図11に示す例では、液体吐出ヘッド50Aの有するヘッドチップ51の数が12個である。なお、液体吐出ヘッド50Aの有するヘッドチップ51の数は、
図11に示す例に限定されず、任意である。
【0127】
液体吐出ヘッド50Aの有する複数のヘッドチップ51は、X軸に沿う方向に並ぶ複数のヘッドチップ51からなるグループGr_aと、グループGr_aよりもY1方向にずれた位置でX軸に沿う方向に並ぶ複数のヘッドチップ51からなるグループGr_bと、に区分される。グループGr_aおよびグループGr_bに用いるインクの種類は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。なお、各グループに属するヘッドチップ51の数は、
図11に示す例に限定されず、任意である。
【0128】
以上のような液体吐出ヘッド50Aでは、グループGr_aおよびグループGr_bに用いるインクの種類が互いに異なる場合、グループGr_bを用いて第1印刷処理が行われる。また、この場合、この第1印刷処理の実行期間とは別の期間に、グループGr_aを用いて第2印刷処理が行われる。ここで、第1印刷処理の実行期間中において、グループGr_bの抵抗体80を用いた温度検出が行われる。同様に、第2印刷処理の実行期間中において、グループGr_aの抵抗体80を用いた温度検出が行われる。つまり、グループGr_aに属するヘッドチップ51がヘッドチップ51_1であり、グループGr_bに属するヘッドチップ51がヘッドチップ51_2である。
【0129】
なお、グループGr_bの抵抗体80を用いた温度検出は、グループGr_bに属する複数のヘッドチップ51_2のうちの少なくとも1つのヘッドチップ51の抵抗体80を用いて行えばよい。同様に、グループGr_aの抵抗体80を用いた温度検出は、グループGr_aに属する複数のヘッドチップ51のうちの少なくとも1つのヘッドチップ51_1の抵抗体80を用いて行えばよい。ここで、複数のヘッドチップ51の抵抗体80を用いて温度検出を行う場合、例えば、複数の抵抗体80の電位Vdの平均値、中央値または最頻値等の統計値に基づいて検出信号Vtが生成される。
【0130】
また、液体吐出ヘッド50Aでは、グループGr_aおよびグループGr_bに用いるインクの種類が互いに同一である場合、印刷速度よりも画質を優先するとき、グループGr_aとグループGr_bとの両方を用いて印刷が行われる。また、この場合、画質よりも印刷速度を優先するとき、グループGr_aを用いずにグループGr_bを用いて印刷が行われる。ここで、画質よりも印刷速度を優先するとき、グループGr_bを用いた第1印刷処理により記録媒体Mに第1画像が形成される。その第1印刷処理の実行期間中において、グループGr_bの抵抗体80を用いた温度検出が行われる。つまり、グループGr_aに属するヘッドチップ51がヘッドチップ51_1であり、グループGr_bに属するヘッドチップ51がヘッドチップ51_2である。
【0131】
なお、画質よりも印刷速度を優先するとき、グループGr_bを用いずにグループGr_aを用いた第2印刷処理により印刷が行われてもよい。ここで、その第2印刷処理の実行期間中において、グループGr_aの抵抗体80を用いた温度検出が行われる。
【0132】
なお、本実施形態では、第1印刷処理において、グループGr_aに属するヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位が検出回路53により検出される。検出回路53は、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位Vd_1に基づく検出信号Dt_1を出力する。そして、グループGr_aのヘッドチップ51_1とグループGr_bのヘッドチップ51_2は同じ液体吐出ヘッド50Aのノズル面FNに配置され、同様の環境に置かれていることから、ヘッドチップ51_1の温度とヘッドチップ51_2の温度は類似するため、第1印刷処理中に、補正部21aは、検出信号Dt_1に基づいて、ヘッドチップ51_2の圧電素子560に供給される駆動信号Com_2を補正したり、ヒーター70により設定温度を調整したりする。
【0133】
また、第2印刷処理において、グループGr_bに属するヘッドチップ51_2の抵抗体80の電位が検出回路53により検出される。検出回路53は、ヘッドチップ51_2の抵抗体80の電位Vd_2に基づく検出信号Dt_2を出力する。そして、第2印刷処理中に、補正部21aは、検出信号Dt_2に基づいて、ヘッドチップ51_1の圧電素子560に供給される駆動信号Com_1を補正したり、ヒーター70により設定温度を調整したりする。
【0134】
これにより、印刷処理に使用しないヘッドチップ51を利用して精度よく温度を測定し、印刷処理に使用しているヘッドチップの51に供給される駆動信号Comおよびヒーター70の温度を調整することで、スループットを低下させることなく印刷品質を維持することができる。
【0135】
以上の第3実施形態によっても、液体吐出ヘッド50Aの圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。なお、本実施形態では、第1印刷処理で温度検出に用いるグループに属するヘッドチップ51において、ノズルNが「第1ノズル」に相当し、圧力室Cが「第1圧力室」に相当し、圧電素子560が「第1圧電素子」に相当し、個別駆動配線91および共通駆動配線92が「第1駆動配線」に相当し、抵抗体80が「第1抵抗体」に相当する。また、第2印刷処理で温度検出に用いるグループに属するヘッドチップ51において、ノズルNが「第2ノズル」に相当し、圧力室Cが「第2圧力室」に相当し、圧電素子560が「第2圧電素子」に相当し、個別駆動配線91および共通駆動配線92が「第2駆動配線」に相当し、抵抗体80が「第2抵抗体」に相当する。
【0136】
D:第4実施形態
以下、本開示の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0137】
図12は、第4実施形態における液体吐出ヘッド50Bを説明するための図である。液体吐出ヘッド50Bは、ヘッドチップ51の数および配置が異なること以外は、前述の第1実施形態の液体吐出ヘッド50と同様に構成される。
【0138】
図12に示すように、液体吐出ヘッド50Bは、前述の第3実施形態と同様、千鳥配置される複数のヘッドチップ51を有する。なお、液体吐出ヘッド50Bの有するヘッドチップ51の数は、
図12に示す例に限定されず、任意である。
【0139】
液体吐出ヘッド50Bの有するヘッドチップ51は、液体吐出ヘッド50BのX軸に沿う方向での中央付近に位置する複数のヘッドチップ51からなるグループGr_dと、グループGr_dよりもX1方向およびX2方向のそれぞれの位置に配置される複数のヘッドチップ51からなるグループGr_cと、に区分される。なお、各グループに属するヘッドチップ51の数は、
図12に示す例に限定されず、任意である。
【0140】
グループGr_cに属するヘッドチップ51-2は、ノズルNから吐出されるインクにより記録媒体Mに第1画像を印刷する第1印刷処理に用いられる。これに対し、グループGr_dに属するヘッドチップ51_1は、印刷処理に用いられずに温度検出のみに用いられる。ここで、グループGr_dに属するヘッドチップ51-1には、インクが充填されなくてもよいが、温度検出の精度を高める観点から、グループGr_cに属するヘッドチップ51_2に用いるインクと同一または近似した温度特性を有する液体が充填されることが好ましい。
【0141】
以上のような液体吐出ヘッド50Bでは、グループGr_cを用いて第1印刷処理が行われる。この第1印刷処理の実行期間中において、グループGr_dの抵抗体80を用いた温度検出が行われる。
【0142】
本実施形態では、第1印刷処理において、グループGr_dに属するヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位が検出回路53により検出される。検出回路53は、ヘッドチップ51_1の抵抗体80の電位Vd_1に基づく検出信号Dt_1を出力する。そして、グループGr_dのヘッドチップ51_1とグループGr_cのヘッドチップ51_2は同じ液体吐出ヘッド50Bのノズル面FNに配置され、同様の環境に置かれていることから、ヘッドチップ51_1の温度とヘッドチップ51_2の温度は類似するため、第1印刷処理中に、補正部21aは、検出信号Dt_1に基づいて、ヘッドチップ51_2の圧電素子560に供給される駆動信号Com_2を補正したり、ヒーター70により設定温度を調整したりする。
【0143】
これにより、印刷処理に使用しないヘッドチップ51を利用して精度よく温度を測定し、印刷処理に使用しているヘッドチップの51に供給される駆動信号Comおよびヒーター70の温度を調整することで、スループットを低下させることなく印刷品質を維持することができる。
【0144】
以上の第4実施形態によっても、液体吐出ヘッド50Bの圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。なお、本実施形態では、第1印刷処理で温度検出に用いるグループに属するヘッドチップ51において、ノズルNが「第1ノズル」に相当し、圧力室Cが「第1圧力室」に相当し、圧電素子560が「第1圧電素子」に相当し、個別駆動配線91および共通駆動配線92が「第1駆動配線」に相当し、抵抗体80が「第1抵抗体」に相当する。
【0145】
E:第5実施形態
以下、本開示の第5実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0146】
図13は、第5実施形態における液体吐出ヘッドに用いるヘッドチップ51Cを説明するための図である。ヘッドチップ51Cは、抵抗体80に代えて抵抗体80a、80bを有するとともに、検出用配線93に代えて検出用配線93Cを有すること以外は、前述の第1実施形態のヘッドチップ51と同様に構成される。
【0147】
抵抗体80a、80bは、配線基板590と振動板550との接続位置を境界として第1実施形態の抵抗体80を二分割したように構成したこと以外は、第1実施形態の抵抗体80と同様に構成される。ここで、抵抗体80aは、Z軸に沿う方向にみて、第1ノズル列Ln1に対応する複数の圧力室Cを囲むように延びる形状をなす。抵抗体80bは、Z軸に沿う方向にみて、第2ノズル列Ln2に対応する複数の圧力室Cを囲むように延びる形状をなす。
【0148】
以上の抵抗体80a、80bは、検出用配線93Cを介して配線基板590に電気的に接続される。検出用配線93Cは、抵抗体80aの両端に接続される1対の検出用配線93aと、抵抗体80bの両端に接続される1対の検出用配線93bと、を有する。1対の検出用配線93aおよび1対の検出用配線93bは、配線基板590を介して、検出回路53に電気的に接続される。このため、1対の検出用配線93aを介して、検出回路53から抵抗体80aに電流Idを供給したり検出回路53で抵抗体80aの電位Vdを検出したりすることができる。同様に、1対の検出用配線93bを介して、検出回路53から抵抗体80bに電流Idを供給したり検出回路53で抵抗体80bの電位Vdを検出したりすることができる。
【0149】
以上のヘッドチップ51Cを用いる場合、第2ノズル列Ln2を用いて第1印刷処理が行われる。また、この場合、この第1印刷処理の実行期間とは別の期間に、第1ノズル列Ln1を用いて第2印刷処理が行われる。ここで、第1印刷処理の実行期間中において、第1ノズル列Ln1に対応する抵抗体80を用いた温度検出が行われる。同様に、第2印刷処理の実行期間中において、第2ノズル列Ln2に対応する抵抗体80を用いた温度検出が行われる。
【0150】
ここで、本実施形態では、第1ノズル列Ln1が「第1の液体吐出部」の一例であり、第2ノズル列Ln2が「第2の液体吐出部」の一例である。第1ノズル列Ln1を構成する複数のノズルNのそれぞれは、「第1ノズル」の一例であり、第2ノズル列Ln2を構成する複数のノズルNのそれぞれは、「第2ノズル」の一例である。このように、「第1ノズル」に相当するノズルNと「第2ノズル」に相当するノズルNとが同一のヘッドチップ51Cの構成要素であってもよい。なお、本実施形態において、第1ノズル列Ln1から吐出される液体の種類は、第2ノズル列Ln2から吐出される液体の種類と同一であっても異なっていてもよい。
【0151】
本実施形態では、第1印刷処理において、第1ノズル列Ln1のノズルN1から液体を吐出せずに、第2ノズル列Ln2のノズルN2から吐出される液体により記録媒体Mに第1画像を印刷する。第1画像の印刷においてノズルN1から液体を吐出しない第1ノズル列Ln1に対応する抵抗体80aの電位が検出回路53により検出される。検出回路53は、第1ノズル列Ln1に対応する抵抗体80の電位Vd_1に基づく検出信号Dt_1を出力する。そして、第1ノズル列Ln1と第2ノズル列Ln2は同じヘッドチップ51内に構成され、同様の環境に置かれていることから、第1ノズル列Ln1の温度と第2ノズル列Ln2の温度は類似するため、第1印刷処理中に、補正部21aは、検出信号Dt_1に基づいて、ヘッドチップ51の圧電素子560に供給される駆動信号Comを補正したり、ヒーター70により設定温度を調整したりする。また、第1ノズル列Ln1の抵抗体80aは、第1ノズル列Ln1の圧電素子560の圧電体562に接触する部分を有し、第2ノズル列Ln2とは接触しない。抵抗体80aが第2ノズル列Ln2と接触しないとは、第2ノズル列Ln2に含まれる圧電素子560、個別駆動配線91および共通駆動配線92と接触しないことを意味する。これにより、第2ノズル列Ln2のノズルN2から吐出した液体で第1画像を印刷している期間であっても、第2ノズル列Ln2に供給される駆動信号Comに応じた供給駆動信号Vin_2によるノイズが検出信号Dt_1に混入せず、第1ノズル列Ln1の圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。
【0152】
また、第2印刷処理において、第2ノズル列Ln2のノズルN2から液体を吐出せずに、第1ノズル列Ln1のノズルN1から吐出される液体により記録媒体Mに第2画像を印刷する。第2画像の印刷においてノズルN2から液体を吐出しない第2ノズル列Ln2に対応する抵抗体80の電位が検出回路53により検出される。検出回路53は、第2ノズル列Ln2に対応する抵抗体80の電位Vd_2に基づく検出信号Dt_2を出力する。そして、第1ノズル列Ln1と第2ノズル列Ln2は同じヘッドチップ51内に構成され、同様の環境に置かれていることから、第1ノズル列Ln1の温度と第2ノズル列Ln2の温度は類似するため、第2印刷処理中に、補正部21aは、検出信号Dt_2に基づいて、ヘッドチップ51の圧電素子560に供給される駆動信号Comを補正したり、ヒーター70により設定温度を調整したりする。また、第2ノズル列Ln2の抵抗体80bは、第2ノズル列Ln2の圧電素子560の圧電体562に接触する部分を有し、第1ノズル列Ln1とは接触しない。抵抗体80bが第1ノズル列Ln1と接触しないとは、第2ノズル列Ln2に含まれる圧電素子560、個別駆動配線91および共通駆動配線92と接触しないことを意味する。これにより、第1ノズル列Ln1のノズルN1から吐出した液体で第2画像を印刷している期間であっても、第1ノズル列Ln1に供給される駆動信号Comに応じた供給駆動信号Vin_1によるノイズが検出信号Dt_2に混入せず、第2ノズル列Ln2の圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。
【0153】
これにより、印刷処理に使用しないノズル列Lnを利用して精度よく温度を測定し、印刷処理に使用しているノズル列Lnに供給される駆動信号Comおよびヒーター70の温度を調整することで、スループットを低下させることなく印刷品質を維持することができる。
【0154】
以上の第5実施形態によっても、液体吐出ヘッドの圧力室C内の液体の温度を高精度に検出することができる。なお、本実施形態では、第1印刷処理で印刷に用いる第2ノズル列Ln2に対応する要素について、圧力室Cが「第2圧力室」に相当し、圧電素子560が「第2圧電素子」に相当し、個別駆動配線91および共通駆動配線92が「第2駆動配線」に相当し、抵抗体80が「第2抵抗体」に相当する。また、第2印刷処理で印刷に用いる第1ノズル列Ln1に対応する要素について、圧力室Cが「第2圧力室」に相当し、圧電素子560が「第2圧電素子」に相当し、個別駆動配線91および共通駆動配線92が「第2駆動配線」に相当し、抵抗体80が「第2抵抗体」に相当する。
【0155】
F:変形例
以上に例示される各形態は、多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択される態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0156】
F1:変形例1
前述の各形態では、ヘッドチップ51を搭載した搬送体41を往復させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示したが、複数のノズルNが記録媒体Mの全幅にわたり分布するライン方式の液体吐出装置にも本開示は適用される。
【0157】
F2:変形例2
前述の形態で例示した液体吐出装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用されてもよく、本開示の用途は特に限定されない。もっとも、液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示パネル等の表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、生体に関する有機物の溶液を噴出する液体吐出装置は、例えばバイオチップを製造する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0158】
10…液体容器、20…制御モジュール、21…制御回路、21a…補正部、22…記憶回路、23…電源回路、24…駆動信号生成回路、30…搬送機構、40…移動機構、41…搬送体、42…搬送ベルト、50…液体吐出ヘッド、50A…液体吐出ヘッド、50B…液体吐出ヘッド、51…ヘッドチップ、51C…ヘッドチップ、51_1…ヘッドチップ、51_2…ヘッドチップ、52…駆動回路、52_1…駆動回路、52_2…駆動回路、53…検出回路、60…支持部、70…ヒーター、80…抵抗体、80a…抵抗体、80b…抵抗体、81…部分、91…個別駆動配線、92…共通駆動配線、92a…部分、92b…部分、93…検出用配線、93C…検出用配線、93a…検出用配線、93b…検出用配線、100…液体吐出装置、510…流路基板、520…圧力室基板、530…ノズル基板、540…吸振体、550…振動板、551…弾性膜、552…絶縁膜、560…圧電素子、561…第1電極、562…圧電体、562a…貫通孔、563…第2電極、564…配線部、570…保護基板、580…ケース、590…配線基板、C…圧力室、Com…駆動信号、Com_1…駆動信号、Com_2…駆動信号、Dt…検出信号、Dt_1…検出信号、Dt_2…検出信号、FN…ノズル面、Gr_a…グループ、Gr_b…グループ、Gr_c…グループ、Gr_d…グループ、HL…導入口、Id…電流、Ln1…第1ノズル列、Ln2…第2ノズル列、M…記録媒体、N…ノズル、Na…連通流路、PD…パルス、PV…パルス、R…リザーバー、R1…空間、R2…空間、Ra…供給流路、S…空間、SI…制御信号、Sk1…制御信号、Sk2…制御信号、Sk3…制御信号、T…実行期間、T1…実行期間、T2…実行期間、T3_1…期間、T3_2…期間、T4…期間、T4_1…期間、T4_2…期間、VBS…オフセット電位、VHV…電源電位、Vd…電位、Vd_1…電位、Vd_2…電位、Vin…供給駆動信号、Vin_1…供給駆動信号、Vin_2…供給駆動信号、Vt…検出信号、dCom…波形指定信号、t…時間。