(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009822
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】組換え微生物を用いて炎症性皮膚疾患を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20240116BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240116BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240116BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240116BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240116BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
C12N1/21
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N5/10
C12N15/11 Z
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023160723
(22)【出願日】2023-09-25
(62)【分割の表示】P 2020513607の分割
【原出願日】2018-09-05
(31)【優先権主張番号】62/554,271
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/685,687
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519445624
【氏名又は名称】アジトラ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィットフィル,トラヴィス,マイケル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】炎症性皮膚疾患の処置のための単離されたプラスミド、組換え微生物、キット、および方法を提供する。
【解決手段】ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物。
【請求項2】
移行シグナルを発現することができる遺伝子を含む第3のコード配列をさらに含む、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項3】
第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列の発現が、プロモーターの制御下にある、請求項1または2に記載の組換え微生物。
【請求項4】
第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列の配置が、インフレームである、請求項3に記載の組換え微生物。
【請求項5】
第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列が、プロモーターに機能し得る形で連結されている、請求項2に記載の組換え微生物。
【請求項6】
組換え微生物が、細菌、または細菌の組合せである、請求項2に記載の組換え微生物。
【請求項7】
ポリペプチドが、フィラグリン、またはそのバリアントである、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項8】
ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項9】
微生物が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ブレヴィバクテリウム(Brevibacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、もしくはオエノコッカス(Oenococcus)、またはその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項10】
組換え微生物が、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)である、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項11】
微生物が、フィラグリン融合タンパク質を分泌する、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項12】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、核酸。
【請求項13】
生きた生物治療組成物を製造するための方法であって、
(a)細胞に、(i)治療ポリペプチドを発現することができる核酸配列を含む第1のコード配列、および(ii)細胞透過性ペプチドを発現することができる核酸配列を含む第2のコード配列をトランスフェクトすることと、
(b)トランスフェクトされた細胞に、治療ポリペプチド融合タンパク質を産生させることと、
(c)生きた生物治療組成物を取得することと、
を含む、方法。
【請求項14】
(iii)細胞に、移行シグナルを発現することができる核酸配列を含む第3のコード配列をトランスフェクトすることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列が、単一のプラスミド中に配置される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列の配置が、プロモーターに機能し得る形で連結される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
細胞が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ブレヴィバクテリウム(Brevibacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、もしくはオエノコッカス(Oenococcus)、またはその組合せからなる群から選択される微生物からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
細胞が、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
治療ポリペプチド融合タンパク質が、フィラグリン融合タンパク質、またはそのバリアントである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
請求項13~19のいずれか一項に記載の方法によって得られた組成物。
【請求項21】
水性溶液、エマルジョン、クリーム、ローション、ゲル、または軟膏からなる群から選択される製薬上許容し得る担体を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
組換え微生物を含む生きた生物治療組成物であって、組換え微生物が、
(i)治療ポリペプチドを発現することができる核酸配列を含む第1のコード配列;
(ii)細胞透過性ペプチドを発現することができる核酸配列を含む第2のコード配列;
(iii)移行シグナルを発現することができる核酸配列を含む第3のコード配列;ならびに (iv)第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列に機能し得る形で連結されているプロモーター
を含み、
第1のコード配列、第2のコード配列および第1のコード配列が、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントを発現することができる、生きた生物治療組成物。
【請求項23】
組換え微生物が、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
移行シグナルが、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントを、組換え微生物から外部へ輸送する、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
細胞透過性ペプチドが、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントの、ヒトケラチノサイトへの進入を容易にする、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項26】
水性溶液、エマルジョン、クリーム、ローション、ゲル、または軟膏からなる群から選択される製薬上許容し得る担体を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
請求項22~26のいずれか一項に記載の組成物、および、使用のための指示書を含む、キット。
【請求項28】
皮膚疾患の処置を必要とする対象に、請求項1~12または20~25のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、皮膚疾患を処置する方法。
【請求項29】
皮膚疾患がアトピー性皮膚炎である、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年9月5日に出願された米国仮特許出願第62/554,271号、および2018年6月15日に出願された米国仮特許出願第62/685,687号の優先権を主張し、その両方の内容全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は組換え微生物を用いて炎症性皮膚疾患を処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
アトピー性皮膚炎(AD)、または湿疹は、世界の子供の5~20%が罹患する慢性、掻痒性、炎症性皮膚疾患(Williams, H.ら、J Allergy Clin. Immunol. 1999;103(1 Pt 1):125-138)であり、多くの成人においても高頻度に見られる。アトピー性皮膚炎の有病率は増大しており、いくつかの形態のアトピー性皮膚炎は、米国集団の11%(Shaw, T.E.ら、J Invest Dermatol. 2011;131(1):67-73)、または約3500万人が罹患し、米国だけで50億ドルの直接費用がかかっている。この疾患の主な特徴は、乾燥した、鱗状の、痒い皮膚である。世界でのアトピー性皮膚炎の有病率の増大およびその有意な疾患負荷にも拘わらず、利用可能な標的化された有効な治療選択肢はわずかである。特に、多くの一般的に用いられる処置方法としては、限定されるものではないが、皮膚水分補給、漂泊浴、UV処置、食事介入、抗菌剤、抗ヒスタミン剤、全身性免疫調節剤、および局所コルチコステロイドの投与などの、広い非特異的手法が挙げられる。しかしながら、これらの多くの選択肢にも拘わらず、症状の長く続く解消をもたらすものはわずかであり、アトピー性皮膚炎の再発は多くの個体において一般的である。さらに、2013 National Health and Wellness Surveyは、非アトピー性皮膚炎患者と比較した場合、高レベルの医療財源(医療提供者/ER訪問)、低い健康関連QOL、およびほぼ2倍多い労働生産性の損失を報告するアトピー性皮膚炎患者に関する有意な関連負荷を示した。さらに、アトピー性皮膚炎患者は、顕著により高いアレルギー(46%対20%)、喘息(22%対8%)、不安(43%対21%)、および抑鬱(37%対21%)の有病率を有していた(Whiteley, J.ら、Current Medical Research and Opinion. 2016:1-32)。したがって、アトピー性皮膚炎が我々の医療システムに対して有する有意な負荷を考慮する大きな満たされない必要性が存在する。
【0004】
最近の研究により、アトピー性皮膚炎の病態生理が解明され、皮膚バリアの欠陥が、多くの場合、アトピー性皮膚炎の開始の主な原因であり、経表皮水分蒸散量(TEWLまたはTWL)と、抗原および病原体曝露の増加との両方をもたらすことが示された。同時に、アトピー性皮膚炎は、アトピー性皮膚炎の顕著な特徴である腸内毒素症(または微生物不均衡、その重症度は疾患重症度と関連する;Kong, H. H.ら、Genome research. 2012;22(5):850-859;および
図1を参照されたい)、およびアトピー性皮膚炎フレアの間に、および未処置の皮膚において黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によって支配される、皮膚微生物叢の多様性の欠如を特徴とすることが多い。最後に、特に、TH2に加重したプロファイルへの全身性スイッチを示す、病変および非病変皮膚に存在する、優位である2型ヘルパーT細胞プロファイル(TH2)を有する、IL-4/IL-13によって駆動される、活性化炎症応答がある(Sidbury, R.ら、Current allergy and asthma reports. 2017;17(7):42)。かくして、理想的なアトピー性皮膚炎処置は、これらの根本的な原因の全て、すなわち、皮膚バリアの欠陥、腸内毒素症、および活性化皮膚免疫応答に同時に対処するものである。本発明は、これらの原因に対処する。
【0005】
操作されたプロバイオティクスは、治療目的で皮膚微生物叢を活用することに基づく新しい手法である。特に、操作されたプロバイオティクスは、患者の皮膚上での居住を確立し、治療タンパク質をin situで継続的かつ安定的に送達するため、薬物送達の他の方法よりも重要な利点を有する。さらに、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(SE)のある特定の株は、アトピー性皮膚炎の疾患表現型および重症度と関連する、皮膚において重要で有益な免疫調節効果および抗病原体効果を示した。さらに、プロフィラグリンから誘導される構造タンパク質であるフィラグリンの送達は、皮膚バリアにおけるフィラグリンの役割および経表皮水分蒸散量を低減し、皮膚水分補給を改善する能力のため、治療手法をさらに増強する。本発明は、アトピー性皮膚炎の病態生理に対処するためのヒトフィラグリン(例えば、AZT-01)を分泌する皮膚薬物送達系として、表皮ブドウ球菌の遺伝子操作された組換え株を用いて、皮膚疾患、例えば、アトピー性皮膚炎を処置するための方法および組成物を提供する驚くべき利点を有する。皮膚に適用されたら、皮膚への安定な定着およびin situでのその後のフィラグリンの分泌は、疾患を解消することができる。本発明の利益としては、非ステロイド性治療選択肢としてのその安全性、フィラグリンの分泌に由来する利益と、表皮ブドウ球菌の局所適用の利益との本発明の組合せに起因するその効能、および低頻度の適用(1日1回以下)であっても治療的に有効であるその能力が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Williams, H.ら、J Allergy Clin. Immunol. 1999;103(1 Pt 1):125-138
【非特許文献2】Shaw, T.E.ら、J Invest Dermatol. 2011;131(1):67-73
【非特許文献3】Whiteley, J.ら、Current Medical Research and Opinion. 2016:1-32
【非特許文献4】Kong, H. H.ら、Genome research. 2012;22(5):850-859
【非特許文献5】Sidbury, R.ら、Current allergy and asthma reports. 2017;17(7):42
【発明の概要】
【0007】
本発明は、したがって、アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患のための有効な処置の長年にわたる切実な必要に対処する。本発明はまた、皮膚疾患を処置する治療タンパク質を分泌することができる片利共生皮膚細菌の初めて報告された証明の1つでもある。
【0008】
本発明は、有効成分として、治療的に関連する組換え融合ポリペプチド(すなわち、タンパク質、ペプチド、またはアミノ酸)を発現することができる操作された微生物を含む炎症性皮膚疾患を処置するための方法および組成物に言及する。
【0009】
本発明は、第1の態様において、ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を特徴とする。関連する実施形態において、組換え微生物は、移行シグナルを発現することができる遺伝子を含む第3のコード配列をさらに含む。さらに別の実施形態において、第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列の発現は、プロモーターの制御下にある。他の実施形態において、第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列の配置は、インフレームである。さらに別の関連する実施形態において、第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列は、プロモーターに機能し得る形で連結されている。一実施形態においては、組換え微生物は、細菌、または細菌の組合せである。別の実施形態においては、ポリペプチドは、フィラグリン、またはそのバリアント(変異体)である。他の実施形態においては、微生物は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ブレヴィバクテリウム(Brevibacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、もしくはオエノコッカス(Oenococcus)、またはその組合せからなる群から選択される。さらに他の実施形態においては、組換え微生物は、表皮ブドウ球菌である。別の実施形態においては、微生物は、フィラグリン融合タンパク質を分泌する。一実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号1との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。一実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号2との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。一実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号3との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。一実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号4との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。一実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号5との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。一実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号6との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。一実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号7との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。一実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号8との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。一実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号9との少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0010】
本発明は、さらなる態様において、生きた生物治療組成物を製造するための方法であって、(a)細胞に、(i)治療ポリペプチドを発現することができる核酸配列を含む第1のコード配列、および(ii)細胞透過性ペプチドを発現することができる核酸配列を含む第2のコード配列をトランスフェクトすることと、(b)トランスフェクトされた細胞に治療ポリペプチド融合タンパク質を産生させることと、(c)生きた生物治療組成物を取得することとを含む、方法を特徴とする。関連する実施形態においては、方法は、(iii)細胞に、移行シグナルを発現することができる核酸配列を含む第3のコード配列をトランスフェクトすることをさらに含む。別の実施形態においては、第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列は、単一のプラスミド中に配置される。さらに別の実施形態においては、第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列は、プロモーターに機能し得る形で連結されている。他の実施形態においては、細胞は、Bifidobacterium、Brevibacterium、Propionibacterium、Lactococcus、Streptococcus、Staphylococcus、Lactobacillus、Enterococcus、Pediococcus、Leuconostoc、もしくはOenococcus、またはその組合せからなる群から選択される微生物からなる群から選択される。さらに他の実施形態においては、細胞は、表皮ブドウ球菌である。他の実施形態においては、治療ポリペプチド融合タンパク質は、フィラグリン融合タンパク質、またはそのバリアントである。
【0011】
本発明は、別の態様においては、本明細書の態様または実施形態のいずれか1つに記載されるポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸を特徴とする。
【0012】
本発明は、さらなる態様において、本明細書に開示または記載される方法のいずれか1つによって得られる組成物を特徴とする。関連する実施形態においては、組成物は、水性溶液、エマルジョン、クリーム、ローション、ゲル、または軟膏からなる群から選択される製薬上許容し得る担体を含む。
【0013】
本発明は、さらなる態様において、(i)治療ポリペプチドを発現することができる核酸配列を含む第1のコード配列;(ii)細胞透過性ペプチドを発現することができる核酸配列を含む第2のコード配列;(iii)移行シグナル(輸出シグナル)を発現することができる核酸配列を含む第3のコード配列;ならびに(iv)第1のコード配列、第2のコード配列および第3のコード配列に機能し得る形で連結されているプロモーターを含む組換え微生物であって、第1のコード配列、第2のコード配列および第1のコード配列が、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントを発現することができる、組換え微生物を含む生きた生物治療組成物を特徴とする。関連する実施形態においては、組換え微生物は、表皮ブドウ球菌である。さらなる実施形態においては、移行シグナルは、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントを、組換え微生物から外部へ輸送する。さらに別の実施形態においては、細胞透過性ペプチドは、フィラグリン融合産物、またはそのバリアントの、ヒトケラチノサイトへの進入を容易にする(促進する)。別の実施形態においては、組成物は、水性溶液、エマルジョン、クリーム、ローション、ゲル、または軟膏からなる群から選択される製薬上許容し得る担体を含む。
本発明は、さらなる態様において、本明細書に開示または記載される組成物のいずれか1つおよび使用のための指示書を含むキットを特徴とする。
【0014】
本発明は、さらなる態様においては、皮膚疾患の処置を必要とする対象に、本明細書に開示または記載される組成物のいずれか1つの組成物を投与することを含む、皮膚疾患を処置する方法を特徴とする。別の実施形態においては、皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1-1】
図1A~Fは、ブドウ球菌種とアトピー性皮膚炎との関係を描写する。
図1Aは、処置(trt)なしおよび間欠的trtフレアによって分類された肘前および膝窩皮線(AcPC、n=12)でのアトピー性皮膚炎における黄色ブドウ球菌(S.aureus)の平均割合の長期的傾向を示す。
図1Bは、AcPcにおける黄色ブドウ球菌の割合およびShannon多様度指数を示す。部分的相関(疾患状態、AcPcについて調整する)。
図1Cは、AcPcにおける表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の平均割合の長期的傾向を示す。
【
図1-2】
図1Dは、それぞれの部位(AcPc、手のひら側前腕[Vf]、鼻孔[N])に関する、S.aureusの割合と、客観的SCORADとの相関を示す。部分的相関(疾患状態について調整する)。
【
図1-3】
図1Eは、処置なしおよび間欠的処置フレア(n=12、Ac)によって分類されたアトピー性皮膚炎における長期的なShannon多様度の傾向を示す。
図1Fは、アトピー性皮膚炎の微生物叢進行仮説を示す。(
*)皮膚微生物多様性、ブドウ球菌の割合、および疾患重症度のシフト間の提唱される関係。
【
図2-1】
図2Aは、本明細書に記載されるような、表皮ブドウ球菌に基づくタンパク質送達系の略図を描写する。構築物設計は、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、移行シグナル、フィラグリン発現配列、および細胞透過性ペプチド配列を含む。
図2Bは、タンパク質発現の調整可能な制御のためのある特定のプロモーターの特性評価を示す(リポーターとしてGFPを用いる)。
図2Cは、SEから外部へのタンパク質輸送のための移行シグナルの特性評価を示す(リポーターとしてGFPを用いる)。
【
図2-2】
図2Dは、表皮ブドウ球菌から産生されるヒトフィラグリン、表皮ブドウ球菌から産生されるマウスフィラグリン、および全マウス皮膚のウェスタンブロット分析を示す(抗マウスフィラグリン抗体を用いた)。
【
図3】
図3A~3Dは、再構成されたヒト表皮(RHE)におけるGFPを産生する表皮ブドウ球菌の特性評価を描写する。
図3Aは、表皮ブドウ球菌-GFPの過去2時間の適用での約25μmのRHEの蛍光および光波長オーバーレイを示す。
図3B~3Dは、ダーマローラー適用、次いで、表皮ブドウ球菌-GFP局所適用の2時間後のRHEの蛍光および光波長オーバーレイを示す。深さは0μm(
図3B)、50μm(
図3C)、および70μm(
図3D)とした。
【
図4】
図4A~4Eは、マウスにおけるSE-GFP定着の特性評価を描写する。
図4A~4Cは、GFPを発現する表皮ブドウ球菌の処置の3日後のマウス皮膚のin vivoでの2光子励起顕微鏡写真を示す。
図4Aは25μm;および
図4Bは50μmの深さの非剃毛マウス耳皮膚、ならびに
図4Cは80μmの深さの剃毛背部皮膚を示す。
図4Dは、SE-GFP適用後のマウスの背部皮膚の光学顕微鏡写真を示す。
図4Eは、SE-GFP適用後のマウスの背部皮膚の光学顕微鏡写真を示す。
【
図5-1】
図5A~5Kは、RHEにおけるリポーターとして50μgのGFPを使用する、RMRシグナルを用いた、および用いないタンパク質の特性評価を描写する。
図5A~5Dは、30分(
図5A、
図5C、
図5E、
図5G)または60分(
図5B、
図5D、
図5F、
図5H)でのRMRシグナルを用いる(
図5C、
図5D)または用いない(
図5A、
図5B)、局所適用されたGFPの2光子画像を示す。画像は、2D平面上に投影されたコンパイルされたZスタックである。
【
図6-1】
図6は、16S rRNA配列決定の実験的概略を描写する。
【
図7】
図7は、全ヒトフィラグリン(hFLG)配列(Uniprot P20930)のアミノ酸位置の関数としての疎水性スコアを示すグラフである。
【
図8】
図8は、全マウスフィラグリン(mFLG)配列(NCBI参照配列:XP017175331.1)のアミノ酸位置の関数としての疎水性スコアを示すグラフである。
【
図9】
図9は、ドメイン9および10の単位セグメントを含む、アミノ酸1400で開始して1800までのhFLG領域のアミノ酸位置の関数としての疎水性スコアを示すグラフである。
【
図10】
図10は、hFLGにおけるアミノ酸位置1400からアミノ酸位置1800までのhFLG[9-10](1429-1774)のアミノ酸位置の関数としての疎水性スコアを示すグラフである。
【
図11】
図11は、hFLG[9-10](1429-1777)の開始および終止位置のアミノ酸位置の関数としての疎水性スコアを示すグラフである。
【
図12】
図12は、低疎水性の点から、低疎水性の次の点まで(矢印で示される)のアミノ酸位置の関数としての疎水性スコアを示すグラフである。
【
図13-1】
図13は、ヒトフィラグリン二量体hFLG[3-4]、hFLG[5-6]、hFLG[7-8]、hFLG[9-10]、hFLG[11-12]、hFLG[13-14]、hFLG[15-16]、hFLG[17-18]、hFLG[19-20]、hFLG[21-22]のアラインメントを示す。
【
図14】
図14は、37℃で2hにわたる1μg/ウェルでのバックグラウンドFLG結合を示すグラフである(非特異的結合-NSB)。
【
図15】
図15は、ヒト皮膚硬結ケラチンへのhFLGセグメントの結合を示すグラフである(NSBが除去されている)。
【
図16】
図16は、IgY抗hFLGの滴定を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.概説および定義
別段の定義のない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される多くの用語の一般的定義を提供する:Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (第2版、1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker(編)、1988); The Glossary of Genetics、第5版、R. Riegerら(編)、Springer Verlag (1991);およびHale & Marham、The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段の特定のない限り、以下のものに帰する意味を有する。
【0017】
冠詞「a」および「an」は、1または1より多い(すなわち、少なくとも1)その冠詞の文法的目的語を指すように本明細書で使用される。例えば、「要素(an element)」は、1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0018】
本明細書で使用される用語「含む(including)」は、語句「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味し、それと互換的に使用される。
【0019】
本明細書で使用される用語「または」は、文脈が別途明確に示さない限り、用語「および/または」を意味し、それと互換的に使用される。
【0020】
本明細書で使用される用語「など(such as)」は、語句「限定されるものではないが、~など(such as but not limited to)」を意味し、それと互換的に使用される。
【0021】
本明細書で使用される以下の用語は、それとは反対に明示的に記述されない限り、以下の意味を有する。本明細書で使用される用語「異常な皮膚状態」または「皮膚疾患」(例えば、炎症性皮膚疾患)は、ヒトの皮膚の正常な、またはベースライン状態と比較して一般的に望ましくない、または有害である皮膚状態または状態を意味する。異常な皮膚状態の例としては、乾癬、にきび、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、表皮剥離性角質増殖症、脂漏性皮膚炎、湿疹、乾燥肌、アレルギー、発疹、UV刺激性皮膚、洗剤刺激性皮膚(酵素および洗浄用洗剤において使用される分子およびラウリル硫酸ナトリウムによって引き起こされる刺激を含む)、皮膚菲薄化(例えば、高齢者および小児からの皮膚)、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、膿痂疹、白斑、脱毛症、および多毛症が挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される用語「患者」または「対象」とは、本発明の処置および組成物を受けるであろうヒトまたは動物(動物の場合、より典型的には、家畜哺乳動物などの哺乳動物、または家禽動物および魚類および他の海産物もしくは淡水食物生物などの動物)を指す。そのような患者または対象は、本発明の医薬組成物または異常な皮膚状態もしくは皮膚疾患(例えば、炎症性皮膚疾患)を処置する、防止する、もしくはそのリスクを低減する方法を必要とすると考えられる。
【0023】
本明細書で使用される用語「治療上有効な量(治療有効量)」とは、薬学活性化合物、生きた生物治療組成物、化合物もしくは組成物の組合せの量、または単独で、もしくは組み合わせて投与した場合、疾患状態もしくは状態、例えば、異常な皮膚状態もしくは皮膚疾患(例えば、炎症性皮膚疾患)を処置する、防止する、もしくはそのリスクを低減するための、操作された細菌株もしくは複数の株、例えば、皮膚処置剤もしくは複数の薬剤によって送達される、薬学活性化合物の量を指す。この用語はまた、活性化合物もしくは化合物の組合せまたは薬学活性化合物を送達する操作された細菌株もしくは複数の株を含有する医薬組成物の量も指す。例えば、有効量とは、化合物の量または生物活性、例えば、異常な皮膚状態もしくは皮膚疾患(例えば、炎症性皮膚疾患)を処置もしくは防止するための活性を惹起するのに十分なレシピエント患者もしくは対象に与えられる製剤中に存在する操作された細菌株(もしくは組換え細菌株)もしくは複数の株によって送達される化合物の量を指す。
【0024】
本明細書で使用される語句「製薬上許容し得る(製薬上許容される)」とは、正しい医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合う、過剰の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしにヒトおよび動物の組織との接触における使用にとって好適である、活性化合物、材料、操作された細菌株もしくは複数の株、組成物、担体、および/または剤形を指す。本明細書で使用される用語「処置すること」とは、異常な皮膚状態を治癒させる、または改善するための治療的介入を提供することを指す。
【0025】
本明細書で使用される用語「防止すること」とは、例えば、患者または対象が異常な皮膚状態の素因があるか、または異常な皮膚状態に罹るリスクがある場合に、異常な皮膚状態が生じるのを完全に、またはほぼ完全に停止させることを指す。防止することはまた、異常な皮膚状態の発生を阻害すること、すなわち、停止させることを含んでもよい。
【0026】
本明細書で使用される用語「リスクを低減すること」とは、例えば、患者または対象が異常な皮膚状態の素因があるか、または異常な皮膚状態に罹るリスクがある場合に、異常な皮膚状態が生じる可能性または確率を低下させることを指す。
【0027】
本明細書で使用される用語「操作された細菌株」または「組換え細菌株」とは、生物外で調製されたDNAの細菌株への導入によって「遺伝子改変された」または「操作された」細菌の株を指す。例えば、新しい遺伝子または他の核酸配列を含有するプラスミドの細菌中への導入は、細菌に、それらの遺伝子または他の核酸配列を発現させることができる。あるいは、新しい遺伝子または他の核酸配列を含有するプラスミドを細菌に導入した後、細菌のゲノム中に組み込むことができ、そこで細菌はこれらの遺伝子または他の核酸配列を発現するであろう。
【0028】
本明細書で使用される用語「担体」、「担体システム」または「ビヒクル」とは、医薬品有効成分または患者もしくは対象に局所適用される組成物中の投与のための他の材料を送達する、含有する、または「担持する」のに好適である適合性物質を指す。本明細書において有用な担体は、製薬上許容し得るものであるべきである。本明細書において有用な担体およびビヒクルは、非毒性的であり、有害な様式でそれが含有される製剤の他の成分と相互作用しない、当業界で公知の任意のそのような材料を含む。用語「水性」とは、水を含有するか、または皮膚もしくは粘膜組織への適用後に水を含有するようになる製剤を指す。「担体」のさらなる例としては、水、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、単糖類、二糖類、多糖類、炭化水素油、脂肪および油、ワックス、脂肪酸、シリコーン油、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ならびにそのような担体の水ベースの混合物およびエマルジョンベースの混合物が挙げられる。
【0029】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、鎖として一緒に結合するアミノ酸残基から構成される生体分子、または高分子を指す。本明細書で使用されるポリペプチドの定義は、アミノ酸残基の1つ以上の長い鎖から構成されるタンパク質(一般的には、より高い分子量)および数個のアミノ酸の低分子(一般的には、低い分子量)を包含することが意図される。他の実施形態においては、技術的にはポリペプチドではないが、単一のアミノ酸も、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0030】
本明細書で使用される用語「生きた生物治療製品」(またはLBP)とは、細菌、酵母、および/または他の微生物を含有する製品候補を指す。
【0031】
本発明の目的のための用語「単離された」は、その元の環境(それが天然に存在する環境)から取り出された生物材料(細胞、核酸またはタンパク質)を指す。例えば、植物または動物中に天然状態で存在するポリヌクレオチドは単離されていないが、天然に存在する隣接する核酸から分離された同じポリヌクレオチドは、「単離された」とされる。
【0032】
「単離された核酸分子」(例えば、単離されたプロモーターなど)は、核酸の天然の供給源中に存在する他の核酸分子から分離されたものである。例えば、ゲノムDNAに関して、用語「単離された」は、ゲノムDNAが天然に結合した染色体から分離された核酸分子を含む。好ましくは、「単離された」核酸分子は、該核酸分子が由来する生物のゲノムDNA中で、天然で該核酸分子の両側に存在する(フランキングする)配列を含まない。
【0033】
本発明は、皮膚疾患の処置または防止のための組換え治療ポリペプチドを発現するように遺伝的に変化した皮膚定着性細菌を提供する(
図2)。遺伝子操作されたタンパク質産生細菌の使用は、皮膚疾患を処置する先行技術の方法を超えるいくつかの利点を有する。治療タンパク質は、皮膚状態をもたらす欠陥の根本的な原因を処置することができる。さらに、細菌は、挿入遺伝子を保持しながら自己複製して、治療タンパク質を継続的に産生することができる。
【0034】
本発明は、例えば、ヒトフィラグリンを発現するように遺伝的に変化した表皮ブドウ球菌などの皮膚定着性細菌を提供する。遺伝子操作されたフィラグリン産生細菌の使用は、フィラグリン補給の使用を超えるいくつかの利点を有する。第1に、細菌は、挿入されたフィラグリン遺伝子を保持しながら自己複製することができる。第2に、表皮ブドウ球菌は、通常、皮膚上に存在し、ADフレア中の皮膚微生物叢を支配する同じ分野の細菌種である黄色ブドウ球菌の増殖を阻害することが示されている。
【0035】
II.本発明の方法および組成物
本発明は、皮膚疾患の処置または防止のための組換え治療ポリペプチドを発現するように遺伝的に変化した皮膚定着性微生物、例えば、細菌を提供する(
図2)。遺伝子操作されたタンパク質産生微生物、例えば、細菌の使用は、皮膚疾患を処置する先行技術の方法を超えるいくつかの利点を有する。治療タンパク質は、皮膚状態をもたらす欠陥の根本的な原因を処置することができる。さらに、微生物、例えば、細菌は、挿入された核酸(例えば、遺伝子)を保持しながら自己複製して、治療タンパク質を継続的に産生することができる。
【0036】
本発明は、治療タンパク質、例えば、ヒトフィラグリンを発現するように遺伝的に変化した、例えば、表皮ブドウ球菌などの皮膚定着性微生物、例えば、細菌を提供する。遺伝子操作されたフィラグリン産生微生物、例えば、細菌の使用は、フィラグリン補給の使用を超えるいくつかの利点を有する。第1に、微生物、例えば、細菌は、挿入されたフィラグリン核酸配列(例えば、遺伝子)を保持しながら自己複製することができる。第2に、表皮ブドウ球菌は、通常、皮膚上に存在し、アトピー性皮膚炎フレア中の皮膚微生物叢を支配する同じ分野の細菌種である黄色ブドウ球菌の増殖を阻害することが示されている。
【0037】
細菌株
本発明は、組換え治療タンパク質を発現することができる、遺伝的に変化した微生物、例えば、細菌を提供する。広範囲の微生物が、本発明における使用にとって好適である。例としては、限定されるものではないが、非病原性細菌および片利共生細菌が挙げられる。本発明における使用にとって好適な細菌としては、限定されるものではないが、Bifidobacterium、Brevibacterium、Propionibacterium、Lactococcus、Streptococcus、Staphylococcus (例えば、S. epidermidis)、Lactobacillus (例えば、L. acidophilus)、Pediococcus、Leuconostoc、またはOenococcusが挙げられる。本発明のある特定の実施形態においては、細菌は、表皮ブドウ球菌である。本発明の好ましい実施形態においては、使用される表皮ブドウ球菌の株は、バイオフィルムを産生することができない。バイオフィルムを産生することができない表皮ブドウ球菌の株の1つのそのような例は、表皮ブドウ球菌株ATCC 12228である。しかしながら、本発明のさらに他の実施形態においては、皮膚上に見出される他の関連する、または類似する種を用いることができる。
【0038】
治療タンパク質
本発明は、組換え治療タンパク質を発現することができる、遺伝的に変化した微生物、例えば、細菌を提供する。
【0039】
いくつかの実施形態においては、本開示は、フィラグリンポリペプチドアミノ酸配列を含む治療タンパク質に関する。いくつかの実施形態においては、本開示は、フィラグリンポリペプチドアミノ酸配列と、細胞透過性ポリペプチドアミノ酸配列とを含む治療タンパク質に関する。いくつかの実施形態においては、本開示は、フィラグリンポリペプチドアミノ酸配列、細胞透過性ポリペプチドアミノ酸配列および分泌シグナルまたは移行シグナルポリペプチド配列を含む治療タンパク質に関する。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、一般的には、約2~約10,000個以上のアミノ酸残基のペプチド配列を指すように本明細書で定義される。用語「アミノ酸」は、天然に合成されたタンパク質中の20種の一般的なアミノ酸を包含するだけでなく、任意の改変された、非通常の、または合成のアミノ酸も含む。当業者であれば、改変された、非通常の、または合成のアミノ酸に精通しているであろう。
【0040】
本発明のポリペプチドは、天然配列と比較してアミノ酸の欠失および/または置換を有してもよい;かくして、欠失を有する配列、置換を有する配列、ならびに欠失および置換を有する配列が、本発明のポリペプチド中への含有について企図される(想定される)。いくつかの実施形態においては、これらのポリペプチドは、挿入または追加のアミノ酸、例えば、リンカーをさらに含んでもよい。
【0041】
置換または置き換えバリアントは、典型的には、タンパク質内の1つ以上の部位でのあるアミノ酸の別のアミノ酸への交換を含有し、ポリペプチドの1つ以上の特性をモジュレートする、特に、その効能または特異性を増加させるように設計することができる。この種類の置換は、好ましくは、保存的である、すなわち、あるアミノ酸は、類似する形状および電荷のもので置き換えられる。保存的置換は当業界で周知であり、例えば、アラニンからセリン;アルギニンからリシン;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸からグルタミン酸;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸からアスパラギン酸;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシンからロイシンまたはバリン;ロイシンからバリンまたはイソロイシン;リシンからアルギニン;メチオニンからロイシンまたはイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニン;セリンからトレオニン;トレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン;およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化が挙げられる。 欠失または置換に加えて、ポリペプチドは、1個以上の残基の挿入を有してもよい。これは、1個以上のアミノ酸残基の付加を含んでもよい。
【0042】
アミノ酸置換は、一般的には、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。様々な前記特徴を考慮に入れた例示的置換は、当業者には周知であり、アルギニンとリシン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとトレオニン;グルタミン酸とアスパラギン酸;およびバリンと、ロイシンと、イソロイシンとが挙げられる。
【0043】
フィラグリン
いくつかの実施形態においては、本開示は、フィラグリンポリペプチドアミノ酸配列を含む治療タンパク質に関する。本発明の好ましい実施形態においては、治療タンパク質は、ヒトフィラグリンを含む。ヒトフィラグリンは、フィラグリン(FLG)をコードするヒト遺伝子によって発現される。フィラグリンは、分化しているケラチノサイトによって産生されるタンパク質であり、ケラチンフィラメントを、他の成分と共に、角化細胞エンベロープを含む細胞骨格に凝集させるように機能する。FLGは、タンパク質分解されて、機能的なフィラグリンモノマーを遊離する不溶性ポリタンパク質であるプロフィラグリンを産生する、染色体lq21上に位置する大きい遺伝子である(Armengot-Carboら、2014)。本発明の治療タンパク質(およびすなわち、タンパク質が発現される遺伝子)は、任意の哺乳動物に由来してもよい。非限定例としては、限定されるものではないが、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、イヌ、霊長類、またはヒト遺伝子配列が挙げられる。
【0044】
本発明のポリペプチド、組成物、および方法における含有について企図されるフィラグリンアミノ酸配列を、任意の供給源から取得することができる。例えば、フィラグリンアミノ酸を、天然の供給源から取得するか、または化学的に合成することができる。フィラグリンアミノ酸配列は、任意の種に由来してもよい。例えば、それは、哺乳動物フィラグリンアミノ酸配列であってもよい。非限定例としては、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、霊長類、またはヒトアミノ酸配列が挙げられる。好ましい実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、ヒトアミノ酸配列である。フィラグリンタンパク質の非限定例を、以下の表1に記載する。
【0045】
【0046】
いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、表1に記載されたアミノ酸配列のいずれかを含む。特定の実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、GenBank受託番号NP_002007.1(配列番号1)を含む。
【0047】
いくつかの実施形態においては、細胞透過性ペプチドおよび/または移行もしくは分泌シグナルにコンジュゲートした場合に、フィラグリンアミノ酸配列が、同じ細胞透過性ペプチドおよび/または移行もしくは分泌シグナルにコンジュゲートした天然フィラグリンアミノ酸配列の機能の少なくとも一部を保持する限り、フィラグリンアミノ酸配列は、表1に記載されたアミノ酸配列のいずれかの20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、130、150、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340個またはそれ以上の連続するアミノ酸を含む。
【0048】
いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、天然フィラグリンアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性、またはそこから誘導される任意の範囲の配列同一性パーセントを有する。一実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、表1から選択されるアミノ酸配列である。いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、配列番号1と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0049】
いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、配列番号2と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0050】
いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、配列番号3と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0051】
いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、配列番号4と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0052】
いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、配列番号5と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0053】
いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、配列番号6と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0054】
いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、配列番号7と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0055】
いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、配列番号8と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0056】
いくつかの実施形態においては、ヒトフィラグリンコンセンサス配列は、配列番号9として示されるコンセンサス配列であり、hFLG[3-4]、hFLG[5-6]、hFLG[7-8]、hFLG[9-10]、hFLG[11-12]、hFLG[13-14]、hFLG[15-16]、hFLG[17-18]、hFLG[19-20]、hFLG[21-22]中に最も頻繁に存在するアミノ酸から形成される配列を指す。
配列番号9
【0057】
いくつかの実施形態においては、フィラグリンアミノ酸配列は、配列番号9と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0058】
「配列同一性」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、配列同一性の部分として任意の保存的置換を考慮せずに、最大の配列同一性パーセントを達成した後の、天然ポリペプチド配列中の対応する位置のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。配列同一性%値を、Altschulら (1997)によって定義されたNCBI BLAST2.0ソフトウェアによって生成することができる。パラメータは、-1に設定されるミスマッチのペナルティを除いて、デフォルト値に設定する。
【0059】
本発明の好ましい実施形態においては、治療タンパク質は、細胞透過性タンパク質(CPP)に機能し得る形で連結されたフィラグリンを含む組換え融合タンパク質を含む。本発明の他の実施形態においては、治療タンパク質は、組換えフィラグリンを微生物(例えば、細菌)の外部へ輸送することができる、移行または分泌シグナルに機能し得る形で連結されたフィラグリンを含む組換え融合タンパク質を含む。別の実施形態においては、治療タンパク質は、細胞透過性タンパク質(CPP)および移行または分泌シグナルに機能し得る形で連結されたフィラグリンを含む組換え融合タンパク質を含む。
【0060】
さらに、本明細書に記載のポリペプチドは、フィラグリンアミノ酸配列および細胞透過性タンパク質(CPP)および/または移行もしくは分泌シグナルを含むアミノ酸配列のN末端またはC末端のいずれかに任意数の追加のアミノ酸残基の配列を含んでもよい。例えば、フィラグリンアミノ酸配列および細胞透過性ペプチドおよび/または移行もしくは分泌シグナルを含むアミノ酸配列のN末端、C末端、またはN末端とC末端の両方のいずれかに約3~約10,000個以上のアミノ酸残基のアミノ酸配列が存在してもよい。
【0061】
分泌シグナル
分泌シグナルまたは移行シグナルは、分泌経路を介するタンパク質の輸送を容易にするタンパク質上のペプチド配列であり、最終的に、細胞からのタンパク質の分泌をもたらす。本発明においては、微生物(例えば、細菌細胞)から外部への、フィラグリンを含むタンパク質などのタンパク質の輸送を容易にする任意の分泌シグナルが、分泌シグナルとして企図される。
【0062】
細胞透過性ペプチド
細胞透過性ペプチドは、受容体を使用することなく、また、有意な膜損傷を引き起こすことなく、in vivoで生体分子(例えば、タンパク質)の送達を容易にする、または媒介するペプチド配列である。皮膚ケラチノサイトへの進入を容易にする細胞透過性ペプチドは、本発明の細胞透過性ペプチドとして企図される。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、フィラグリンポリペプチドアミノ酸配列を含むポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、前記ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、配列番号1と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、前記ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、前記ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、配列番号3と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、前記ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、配列番号4と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、前記ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、配列番号5と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、前記ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、配列番号6と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、前記ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、配列番号7と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、前記ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、配列番号8と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、前記ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、配列番号9と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、前記ポリペプチドを発現することができる遺伝子を含む第1のコード配列と、細胞透過性ペプチドを発現することができる遺伝子を含む第2のコード配列とを含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、配列番号3と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、配列番号4と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、配列番号5と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、配列番号6と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、配列番号7と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、ポリペプチドを分泌することができる組換え微生物であって、配列番号8と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む発現ベクターを含む、組換え微生物を提供する。
【0080】
核酸
本発明は、本発明の組換えポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸を含む。本発明のいくつかの実施形態は、上記のポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸を含む。さらなる実施形態は、フィラグリンアミノ酸配列をコードする核酸を含む。フィラグリンアミノ酸配列は、本明細書に記載の任意のフィラグリンアミノ酸配列である。いくつかの実施形態においては、核酸は、発現ベクター中に含まれる。用語「核酸」は、当業界で周知である。本明細書で使用される「核酸」は、一般的には、核酸塩基を含む、DNA、RNAまたはその誘導体もしくはアナログの分子(すなわち、鎖)を指すであろう。核酸塩基は、例えば、DNA(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」もしくはシトシン「C」)またはRNA(例えば、A、G、ウラシル「U」もしくはC)中に見出される天然に存在するプリンまたはピリミジン塩基を含む。用語「核酸」は、それぞれ、用語「核酸」の亜属として、用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」を包含する。用語「オリゴヌクレオチド」とは、長さ3~約100個の核酸塩基の分子を指す。用語「ポリヌクレオチド」とは、長さ約100個より長い核酸塩基の少なくとも1個の分子を指す。
【0081】
これらの定義は、一本鎖または二本鎖核酸分子を指す。二本鎖核酸は、完全に相補的な結合によって形成されるが、いくつかの実施形態においては、二本鎖核酸は、部分的な、または実質的な相補的結合によって形成されてもよい。かくして、核酸は、典型的には、分子を含む、特定の配列の1つ以上の相補鎖または「相補体」を含む二本鎖分子を包含してもよい。本明細書で使用される場合、一本鎖核酸を、接頭語「ss」で示し、二本鎖核酸を、接頭語「ds」で示してもよい。
【0082】
遺伝子構築物
本発明は、標準的な分子生物学技術、例えば、(Sambrookら、2001)に記載されたものを用いる。本発明に用いられる遺伝子構築物の例は、機能を改善するためにプラスミド上にさらなる設計特徴をさらに含む、対立遺伝子交換大腸菌-ブドウ球菌シャトルベクターである、pJB38に基づくpAZTである(Bose, J.L., et al. Applied and environmental microbiology. 2013;79(7):2218-2224)。プラスミドは、標準的な分子生物学技術を用いて、治療タンパク質をコードする遺伝子のcDNAを制限部位に挿入することによって構築される(
図2)。挿入物は、プロモーターによって駆動されるコード配列をさらに含む。そのようなプロモーターは、構成的または誘導可能であってもよい。誘導可能プロモーターの例としては、アルコール、糖、金属、もしくはテトラサイクリンなどの化合物によって、または光もしくは高温などの物理的因子によって活性化されるものが挙げられる。
【0083】
ヒトFLGのmRNA配列は、Genebank受託番号NM_002016を有する。FLG cDNAの部分をpJB38の制限部位に挿入することにより、プラスミドpAZTを構築した。挿入物は、プロモーターによって駆動される核酸コード配列を含有する。構築物は、分泌シグナルおよび細胞透過性ペプチドをコードする核酸配列をさらに含み、かくして、組換えフィラグリン融合タンパク質が得られる。
【0084】
組換え細菌株の使用
処置されるべき皮膚疾患は、皮膚と関連する任意の疾患または障害であってもよいことが理解される。好ましい実施形態においては、障害は、アトピー性皮膚炎、乾癬、にきび、アレルギー性接触皮膚炎、表皮剥離性角質増殖症、脂漏性皮膚炎、湿疹、乾燥肌、アレルギー、発疹、UV刺激性皮膚、洗剤刺激性皮膚(酵素および洗浄用洗剤において使用される化合物およびラウリル硫酸ナトリウムによって引き起こされる刺激を含む)、皮膚菲薄化(例えば、高齢者および小児に由来する皮膚)、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、膿痂疹、白斑、脱毛症、および多毛症からなる群から選択される。本発明に従って投与することができるタンパク質の例は、好ましくは、真核タンパク質である。これらのタンパク質としては、限定されるものではないが、単一のアミノ酸、小さいペプチド、および大きいタンパク質が挙げられる。より具体的には、組換え治療タンパク質として本発明において有用であるタンパク質をコードする遺伝子としては、限定されるものではないが、以下のもの:限定されるものではないが、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14およびIL-15を含む、インターロイキンファミリーの遺伝子のメンバー、ならびにその受容体アンタゴニストをコードする遺伝子が挙げられる。限定されるものではないが、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、幹細胞因子、白血病阻害因子およびトロンボポエチンを含む造血性増殖因子をコードする遺伝子も、本発明において企図される。限定されるものではないが、神経成長因子、脳由来神経栄養因子および毛様体神経栄養因子を含む、神経栄養因子をコードする遺伝子も企図される。さらに、限定されるものではないが、IFN-アルファ、IFN-ベータおよびIFN-ガンマを含むインターフェロンをコードする遺伝子が含まれる。本発明においてさらに企図されるのは、C-CファミリーおよびC-X-Cファミリーのサイトカインなどのケモカシンをコードする遺伝子、プロインスリンおよび成長ホルモン(増殖ホルモン)などのホルモンをコードする遺伝子、ならびに組織プラスミノゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼまたはトリプシン阻害因子などの他の酵素を含む、血栓溶解酵素をコードする遺伝子である。本発明は、限定されるものではないが、オンコスタチンM、血小板由来増殖因子、線維芽細胞増殖因子、表皮増殖因子、肝細胞増殖因子、骨形態形成タンパク質、インスリン様増殖因子、カルシトニンならびにトランスフォーミング増殖因子アルファおよびベータを含む、組織修復因子、増殖および調節因子をコードする遺伝子をさらに含む。さらに企図される遺伝子としては、フィラグリン、アクチン、コラーゲン、フィブリリン、エラスチン、または硬タンパク質を含む構造タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
【0085】
製剤
本発明による使用のための製剤が、治療有効量の所望のポリペプチドを産生する製薬上有効量の遺伝子操作された微生物、例えば、細菌、例えば、少なくとも約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、約10.0重量%、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約16.0重量%、約17.0重量%、約18.0重量%、約19.0重量%、約20.0重量%、約25.0重量%、約30.0重量%、約35.0重量%、約40.0重量%、約45.0重量%、約50.0重量%以上の遺伝子操作された微生物、例えば、細菌を含んでもよく、その上限が、約90.0重量%の遺伝子操作された微生物、例えば、細菌であることがさらに明らかであろう。
【0086】
代替的な実施形態においては、本発明による使用のための製剤は、例えば、少なくとも約0.01重量%~約30重量%、約0.01重量%~約20重量%、約0.01重量%~約5重量%、約0.1重量%~約30重量%、約0.1重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.2重量%~約5重量%、約0.3重量%~約5重量%、約0.4重量%~約5重量%、約0.5重量%~約5重量%、約1重量%~約5重量%以上の遺伝子操作された微生物、例えば、細菌を含んでもよい。
【0087】
本発明における使用のための局所製剤は、クリーム、ローション、スプレー、溶液、ゲル、軟膏、ペースト、膏薬、塗料、生体接着剤、懸濁液、エマルジョンなどの、体表面への適用にとって好適な任意の形態にあってもよく、ならびに/またはリポソーム、ミセル、および/もしくはミクロスフェアを含有するように調製することができる。そのような製剤を、体表面から蒸発する水分が、体表面への適用時およびその後も製剤中で維持されるような、閉鎖した被覆層と組み合わせて使用することができる。製剤は、生きている生物治療組成物を含んでもよく、組換えポリペプチドを産生する、少なくとも1種の遺伝子操作された微生物、例えば、操作された細菌株を含んでもよい。この操作された生きている生物治療組成物は、異常な皮膚状態、および/または皮膚疾患(例えば、炎症性皮膚疾患)を処置または防止するために、ポリペプチドを皮膚に直接送達することができる。
【0088】
局所製剤は、任意の他の活性成分が当業界で公知の皮膚科学的ビヒクル、例えば、水性または非水性ゲル、軟膏、油中水または水中油エマルジョン中に溶解または分散されたものを含む。そのようなビヒクルの構成物質は、水、水性バッファー溶液、非水性溶媒(エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノラウレート、グリコフロールまたはグリセロールなど)、油(例えば、液体パラフィンなどの鉱油、MIGLYOLなどの天然もしくは合成トリグリセリド、またはジメチコンなどのシリコーン油)を含んでもよい。製剤の性質ならびにその意図される使用および適用部位に応じて、用いられる皮膚科学的ビヒクルは、以下のもの:可溶化剤または溶媒(例えば、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンなどのβ-シクロデキストリン、またはエタノール、プロピレングリコールもしくはグリセロールなどのアルコールもしくはポリオール);増粘剤(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボマー);ゲル化剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー);保存剤(例えば、ベンジルアルコール、塩化ベンズアルコニウム、クロルヘキシジン、クロルブトール、安息香酸塩、ソルビン酸カリウムまたはEDTAもしくはその塩);ならびにpH緩衝剤(リン酸二水素とリン酸水素塩との混合物、またはクエン酸とリン酸水素塩との混合物など)から選択される1つ以上の成分(例えば、製剤が水性ゲルである場合、水に加えた成分)を含有してもよい。
【0089】
製薬上許容し得る担体を本発明の製剤中に含有させてもよく、それは当業界で従来使用されている任意の担体であってもよい。その例としては、水、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、単糖類、二糖類、多糖類、炭化水素油、脂肪および油、ワックス、脂肪酸、シリコーン油、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ならびにそのような担体の水ベースの混合物およびエマルジョンベースの混合物が挙げられる。本明細書で使用される用語「製薬上許容し得る」または「製薬上許容し得る担体」は、望ましくない生物学的効果または製剤の他の成分との望ましくない相互作用を引き起こすことなく、医薬製剤中に含有させることができる化合物または組成物を指し、本明細書で使用される「担体」または「ビヒクル」とは、局所適用される組成物中への組込みにとって好適な担体材料を指す。本明細書において有用な担体およびビヒクルは、非毒性的であり、有害な様式でそれが含有される製剤の他の成分と相互作用しない、当業界で公知の任意のそのような材料を含む。用語「水性」とは、水を含有するか、または皮膚もしくは粘膜組織への適用後に水を含有するようになる製剤を指す。
【0090】
クリーム基剤は、水で洗浄可能であり、油相、乳化剤、および水性相を含有する。「内部」相とも呼ばれる油相は、一般的には、ワセリンおよびセチルまたはステアリルアルコールなどの脂肪アルコールを含む。水性相は通常、必須ではないが、体積において油相を上回り、一般的には、保湿剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は、一般的には、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性または両性界面活性剤である。
【0091】
ローションは、摩擦なしに皮膚表面に適用される調製物であり、典型的には、活性薬剤を含む粒子が水またはアルコール基剤中に存在する液体または半液体の調製物である。ローションは通常、固体の懸濁液であり、好ましくは、水中油型の液体油性エマルジョンを含む。ローションは、より多くの液体組成物を適用することが容易なため、大きい体面積を処置するための本明細書における好ましい製剤である。ローション中の不溶性物質が微細に分割されることが一般に必要である。ローションは、典型的には、より良好な分散をもたらすための懸濁化剤ならびに活性薬剤を皮膚と接触するように局在化させ、保持するのに有用な化合物、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウムなどを含有することとなる。溶液は、溶解された物質の分子が溶媒の分子の間に分散されるように、1つ以上の化学物質(溶質)を液体中に溶解することによって調製される均一な混合物である。溶液は、溶質を緩衝化する、安定化する、または保持するための他の製薬上または化粧上許容し得る化学物質を含有してもよい。溶液を調製する際に使用される溶媒の一般的な例は、エタノール、水、プロピレングリコールまたは任意の他の許容し得るビヒクルである。勿論周知の通り、ゲルは半固体の懸濁液型系である。単相ゲルは、典型的には、水性であるが、好ましくは、アルコール、および必要に応じて、油も含有する、担体液体を通じて実質的に均一に分布した有機高分子を含有する。好ましい有機高分子、すなわち、ゲル化剤は、「カルボマー」ファミリーのポリマー、例えば、Carbopolの商標の下で商業的に入手できるカルボキシポリアルキレンなどの架橋アクリル酸ポリマーである。また、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーおよびポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー;ヒドロキシ-プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロースフタレート、およびメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー;トラガカントおよびキサンタンゴムなどのゴム;アルギン酸ナトリウム;ならびにゼラチンも好ましい。均一なゲルを調製するために、アルコールもしくはグリセリンなどの分散剤を添加するか、またはゲル化剤を、磨砕、機械的混合もしくは撹拌、またはその組合せによって分散させることができる。軟膏は、これも当業界で周知の通り、典型的には、ワセリンまたは他の石油誘導体に基づく半固体調製物である。使用される特定の軟膏基剤は、当業者には理解されるように、いくつかの望ましい特徴、例えば、皮膚軟化性などを提供するものである。他の担体またはビヒクルと同様、軟膏基剤は、不活性であり、安定であり、非刺激性であり、非感作性であるべきである。Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版 (Easton, PA: Mack Publishing Co., 1995)、pages 1399-1404に説明されたように、軟膏基剤を、4つのクラス:脂肪性基剤;乳化性基剤;エマルジョン基剤;および水溶性基剤に分類することができる。脂肪性軟膏基剤としては、例えば、植物油、動物から得られる脂肪、および石油から得られる半固体炭化水素が挙げられる。
【0092】
吸収性軟膏基剤としても知られる、乳化性軟膏基剤は、水をほとんど含有しないか、または全く含有せず、例えば、硫酸ヒドロキシステアリン、無水ラノリン、および親水性ワセリンを含む。
【0093】
エマルジョン軟膏基剤は、油中水(W/O)エマルジョンまたは水中油(O/W)エマルジョンであり、例えば、アセチルアルコール、モノステアリン酸ステアリル、ラノリン、およびステアリン酸を含む。好ましい水溶性軟膏基剤は、変化する分子量のポリエチレングリコールから調製される;さらなる情報については、Remington: The Science and Practice of Pharmacyを参照されたい。
【0094】
ペーストは、活性薬剤が好適な基剤中に懸濁された半固体剤形である。基剤の性質に応じて、ペーストは、脂肪ペーストまたは単相水性ゲルから作られたものの間に分割される。脂肪ペースト中の基剤は、一般的には、ワセリンまたは親水性ワセリンなどである。単相水性ゲルから作られたペーストは、一般的には、基剤としてカルボキシメチルセルロースなどを含む。
【0095】
促進剤は、典型的には、「可塑化」促進剤と呼ばれる親油性共促進剤、すなわち、約150~1000の範囲の分子量、約1wt%未満、好ましくは、約0.5wt%未満、最も好ましくは、約0.2wt%未満の水性溶解度を有する促進剤である。可塑性促進剤のヒルデブラント溶解パラメータδは、約2.5~約10の範囲、好ましくは、約5~約10の範囲にある。好ましい親油性促進剤は、脂肪エステル、脂肪アルコール、および脂肪エーテルである。特定の最も好ましい脂肪酸エステルの例としては、ラウリン酸メチル、オレイン酸エチル、モノラウリン酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール、イソプロピルn-デカノエート、およびミリスチン酸オクチルドデシルが挙げられる。脂肪アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールが挙げられるが、脂肪エーテルとしては、ジオールまたはトリオール、好ましくは、C2~C4アルカンジオールまたはトリオールが1個または2個の脂肪エーテル置換基で置換された化合物が挙げられる。さらなる浸透促進剤は、局所薬物送達の当業者には公知である、ならびに/または関連のある教科書および文献に記載されている。例えば、Percutaneous Penetration Enhancers、Smithら(編) (CRC Press, 1995)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0096】
上記で同定されたものに加えて、様々な他の添加剤を、本発明の組成物中に含有させることができる。これらのものとしては、限定されるものではないが、酸化防止剤、収斂剤、香料、保存剤、皮膚軟化剤、色素、染料、保湿剤、推進剤、および日焼け防止剤、ならびに存在が製薬上望ましいか、または別途望ましいものであってよい他のクラスの材料が挙げられる。本発明の製剤中への含有のための必要に応じた添加剤の典型例は、以下の通りである:ソルベートなどの保存剤;イソプロパノールおよびプロピレングリコールなどの溶媒;メントールおよびエタノールなどの収斂剤;ポリアルキレンメチルグルコシドなどの皮膚軟化剤;グリセリンなどの保湿剤;ステアリン酸グリセロール、PEG-100ステアリン酸、ポリグリセリル-3-ヒドロキシラウリルエーテル、およびポリソルベート60などの乳化剤;ソルビトールおよびポリエチレングリコールなどの他のポリヒドロキシアルコール;桂皮酸オクチルメトキシル(Parsol MCXとして商業的に入手可能)およびブチルメトキシベンゾイルメタン(Parsol 1789の商標の下で入手可能)などの日焼け防止剤;アスコルビン酸(ビタミンC)、a-トコフェロール(ビタミンE)、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、ε-トコフェロール、ζι-トコフェロール、ΖΛ-トコフェロール、η-トコフェロール、およびレチノール(ビタミンA)などの酸化防止剤;エッセンシャルオイル、セラミド、必須脂肪酸、鉱油、植物油(例えば、大豆油、ヤシ油、シアバターの液体画分、ヒマワリ油)、動物油(例えば、ペルヒドロスクアレン)、合成油、シリコーン油またはワックス(例えば、シクロメチコンおよびジメチコン)、フッ素化油(一般的には、ペルフルオロポリエーテル)、脂肪アルコール(例えば、セチルアルコール)、およびワックス(例えば、蜜蝋、カルナバ蝋、およびパラフィン蝋);皮膚感触改変剤;ならびに膨潤粘土およびCarbopolの商標の下で商業的に得ることができる架橋カルボキシポリアルキレンなどの増粘剤およびストラクチュラント(構造化剤)。他の添加剤としては、皮膚(特に、角質層における皮膚の上層)の調子を整え、その水分含量の低下を遅延させることによってそれを柔らかく維持する、および/または皮膚を保護する材料などの有益な薬剤を含む。そのようなコンディショナーおよび保湿剤としては、例えば、ピロリジンカルボン酸およびアミノ酸;2,4,4’-トリクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)および安息香酸などの有機抗微生物剤;アセチルサリチル酸およびグリシルレチン酸などの抗炎症剤;レチノイン酸などの抗脂漏剤;ニコチン酸などの血管拡張剤;コウジ酸などのメラニン形成のインヒビター;ならびにそれらの混合物が挙げられる。さらなる追加の活性薬剤としては、例えば、アルファヒドロキシ酸、アルファケト酸、ポリマー性ヒドロキシ酸、保湿剤、コラーゲン、海洋抽出物、ならびにアスコルビン酸(ビタミンC)、a-トコフェロール(ビタミンE)、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、ε-トコフェロール、ζι-トコフェロール、ζ2-トコフェロール、η-トコフェロール、およびレチノール(ビタミンA)などの酸化防止剤、ならびに/または製薬上許容し得るその塩、エステル、アミド、もしくは他の誘導体が挙げられる。好ましいトコフェロール化合物は、α-トコフェロールである。追加の薬剤としては、例えば、両方ともLancaster Group AGに割り当てられた、GrossらのWO94/00098およびGrossらのWO94/00109(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載された、皮膚組織への酸素供給を改善することができるものが挙げられる。日焼け防止剤およびUV吸収化合物を含有させることもできる。そのような日焼け防止剤およびUV吸収化合物の非限定例としては、アミノ安息香酸(PABA)、アボベンゾン、シノキサート、ジオキシベンゾン、ホモサレート、メンチルアントラニレート、オクトクリレン、メトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、オキシベンゾン、パディメートO、フェニルベンズイミダゾール硫酸、スリソベンゾン、二酸化チタン、サリチル酸トロラミン、酸化亜鉛、エンスリゾール、メラジレート、オクチノキサート、オクチサレート、およびオクトクリレンが挙げられる。その全体が本明細書に組み込まれる、Title 21. Chapter 1. Subchapter D. Part 352. 「Sunscreen drug products for over-the-counter human use」を参照されたい。他の実
施形態は、本発明の製剤を用いた処置を容易にする、様々な非発癌性、非刺激性の治癒材料を含んでもよい。そのような治癒材料は、栄養素、ミネラル、ビタミン、電解質、酵素、ハーブ、植物エキス、腺エキスもしくは動物エキス、または皮膚障害の治癒を容易にするために製剤に添加することができる安全な治療剤を含んでもよい。
【0097】
本発明は、化粧品の分野で従来使用されているものと等価であり、例えば、局所製剤の総重量の約0.01%~約20%の範囲である、これらの様々な添加剤の量を企図する。
【0098】
本発明の製剤はまた、乳白剤、香料、着色料、安定剤、界面活性剤などの従来の添加剤を含んでもよい。ある特定の実施形態では、保存時の腐敗を防ぐため、すなわち、酵母およびカビなどの微生物の増殖を阻害するために、抗微生物剤などの他の薬剤を添加することもできる。
【0099】
本発明のための好適な抗微生物剤としては、限定されるものではないが、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルおよびプロピルエステル(すなわち、メチルおよびプロピルパラベン)、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、イミド尿素、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるものが挙げられる。他の実施形態では、リプレッサーおよびインデューサー、すなわち、目的のポリペプチドの産生を阻害する(すなわち、グリコース)または誘導する(すなわち、キシロース)ための他の薬剤を添加することもできる。そのような添加剤が製剤の機能と適合し、それを阻害しないという条件で、それらを使用することができる。
【0100】
製剤はまた、投与される化学物質、または組成物の他の成分からもたらされる皮膚刺激または皮膚損傷の可能性を最小化するか、または除去するための刺激緩和性添加剤を含有してもよい。
【0101】
好適な刺激緩和性添加剤としては、例えば、a-トコフェロール;モノアミンオキシダーゼインヒビター、特に、2-フェニル-1-エタノールなどのフェニルアルコール類;グリセリン;サリチル酸塩;アスコルビン酸塩;モネンシンなどのイオノフォア;両染性アミン;塩化アンモニウム;N-アセチルシステイン;カプサイシン;およびクロロキンが挙げられる。刺激緩和性添加剤は、存在する場合、刺激または皮膚損傷を緩和するのに有効な濃度で組成物中に含有させることができ、典型的には、製剤の約20wt%以下、より典型的には、約5wt%以下を占める。ある特定の実施形態において本製剤中に含有させ、かくして、活性薬剤と共に局所的に適用することができるさらなる好適な薬理活性物質としては、限定されるものではないが、以下のもの:有色素性または非有色素性の年齢によるシミ、角質繊維、およびシワを改善または根絶する薬剤;抗微生物剤;抗細菌剤;かゆみ止め剤および乾燥防止剤;抗炎症剤;局部麻酔剤および鎮痛剤;コルチコステロイド;レチノイド;ビタミン;ホルモン;ならびに代謝拮抗剤が挙げられる。局所薬理活性物質のいくつかの例としては、アシクロビル、アンホテリシン、クロルヘキシジン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、エコナゾール、ミコナゾール、メトロニダゾール、ミノサイクリン、ナイスタチン、ネオマイシン、カナマイシン、フェニトイン、パラアミノ安息香酸エステル、メトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、オキシベンゾン、ジオキシベンゾン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、セレンスルフィド、亜鉛ピリチオン、ジフェニルヒドラミン、プラモキシン、リドカイン、プロカイン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、クリンダマイシン、クロタミトン、ヒドロキノンならびにそのモノメチルおよびベンジルエーテル、ナプロキセン、イブプロフェン、クロモリン、レチノール、パルミチン酸レチニル、酢酸レチニル、コールタール、グリセオフルビン、エストラジオール、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン21-酢酸、ヒドロコルチゾン17-吉草酸、ヒドロコルチゾン17-酪酸、プロゲステロン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノニド、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ミノキシジル、ジピリダモール、ジフェニルヒダントイン、過酸化ベンゾイル、および5-フルオロウラシルが挙げられる。クリーム、ローション、ゲル、軟膏、ペーストなどを、罹患した表面上に広げ、優しく塗り込むことができる。溶液剤を同じように適用することができるが、より典型的には、スポイト、スワブなどを用いて適用し、罹患した領域に注意深く適用する。
【0102】
適用レジメンは、状態の重症度および初期処置に対するその応答性などの、容易に決定することができるいくつかの因子に依存するが、通常は、1日あたり2回以上の適用を含まないであろう。当業者であれば、投与される製剤の最適量、投与方法および反復速度を容易に決定することができる。一般に、本発明の製剤を、週に1回または2回から最大で1日1回の範囲で適用することが企図される。
【0103】
III.本発明の方法およびキット
処置方法
本発明は、皮膚疾患を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に、本発明の組換え治療融合タンパク質を発現することができる遺伝子操作された微生物、例えば、遺伝子操作された細菌を投与することによって、対象を処置することを含む、方法を提供する。好ましい実施形態においては、疾患は、アトピー性皮膚炎である。さらに別の好ましい実施形態においては、組換え治療融合タンパク質は、フィラグリンを含む。他の実施形態においては、組換え治療融合タンパク質は、細胞透過性ペプチドに機能し得る形で連結されたフィラグリンを含む。さらなる実施形態においては、組換え治療融合タンパク質は、移行シグナルに機能し得る形で連結されている。
【0104】
キット
本発明は、キットも提供する。一態様においては、本発明のキットは、(a)本発明の組成物および(b)その使用のための指示書を含む。別の態様においては、本発明のキットは、(a)本発明の生きた生物治療組成物のいずれか、および(b)その使用のための指示書を含む。指示書は、組成物を適用する、投与する、使用する、および維持する方法の説明を含んでもよい。本発明の組成物は、上記のものである。いくつかの実施形態においては、本発明の組成物は、上記のような、治療的に関連する組換え融合ポリペプチドを発現することができる、操作された微生物である。好ましい実施形態においては、組成物は、フィラグリンを含む組換え融合ポリペプチドを発現することができる、操作された細菌(例えば、表皮ブドウ球菌)を含む。
【0105】
一部の実施形態においては、キットは、密封容器を含んでもよい。容器の非限定例としては、ボトル、金属チューブ、ラミネートチューブ、プラスチックチューブ、ディスペンサー、加圧容器、バリア容器、パッケージ、コンパートメント、リップスティック容器、コンパクト容器、化粧品組成物を保持することができる化粧品皿、または分散物もしくは組成物または所望のボトル、ディスペンサー、もしくはパッケージが保持される注射容器もしくはブロー成形プラスチック容器などの他の型の容器が挙げられる。容器の他の例としては、ガラスまたはプラスチック製のバイアルまたはボトルが挙げられる。キットおよび/または容器は、その表面上に証印を含んでもよい。証印は、例えば、単語、語句、省略形、写真、または記号であってもよい。
【0106】
本発明を、さらなる限定と解釈されるべきではない、以下の実施例によってさらに例示する。本出願を通して引用される全ての図面ならびに全ての参考文献、特許および公開された特許出願の内容、ならびに図面は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
(実施例)
【0107】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態をさらに説明および実証する。実施例は、単に例示のために与えられるものであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、その多くの変更が可能であるため、本発明の限定と解釈されるべきではない。
【実施例0108】
表皮ブドウ球菌細胞から外部へ輸送された後、ヒトケラチノサイト中に輸入され得るタンパク質をコードすることができる核酸構築物の開発
本発明は、一実施形態においては、異種タンパク質を分泌し、したがって、表皮ブドウ球菌の遺伝子改変の取り扱いにくさを克服することができる組換え表皮ブドウ球菌株の生成を記載する。一般的な皮膚定着菌である黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌の機能的遺伝子分析は、これらの細菌の実質的に全ての株におけるI型およびIV型制限系の存在のため、以前は限られていた。これらの制限系は、DH10B大腸菌などの標準的なクローン拡大系に由来するDNA中のメチル化シトシン塩基を認識する。しかしながら、メチル化欠損大腸菌株を使用して、表皮ブドウ球菌関連カテーテル血流感染に関与するicaオペロンを欠く、片利共生的な、非病原性単離物である、表皮ブドウ球菌株ATCC12228
5中でいくつかの構築物を創出した。したがって、本発明は、表皮ブドウ球菌中での初めての公知の報告された異種タンパク質発現を記載する。本発明はかくして、一実施形態において、表皮ブドウ球菌細胞から外部へ輸送された後、ヒトケラチノサイト中に輸入されるタンパク質をコードすることができる核酸プラスミドを提供する。このプラスミド、pAZTは、機能を改善する特徴を有するように特異的に再操作された、対立遺伝子交換大腸菌-ブドウ球菌シャトルベクターであるpJB38(Bose, J. L.ら、Applied and environmental microbiology. 2013;79(7):2218-2224)に基づく。本発明は、一実施形態においては、再構成された表皮に有効に定着することができ、約10
9CFU/mLの、1mLあたり50μgのタンパク質を産生することができる操作された表皮ブドウ球菌を提供する(
図2)。
【0109】
細胞透過性ペプチド(CPP)
表皮の手ごわいバリア特性にも拘わらず、角質層を通るタンパク質送達は、形質導入ペプチドまたは細胞透過性ペプチド(CPP)を用いることによって証明されてきた。この課題は、疎水性表面および角質層を含む連結された角質細胞層からの拡散障害のため生じる。しかしながら、CPP配列を、目的のタンパク質のN末端に結合することにより、標的タンパク質の細胞内局在化およびエンドソーム/リソソーム脱出の容易化に加えて、より深い表皮への融合タンパク質の送達の成功が可能である。本発明は、一実施形態においては、そのような手法を用いる構築物を提供し、転写由来細胞透過ペプチド(RMR)タンパク質モチーフのHIVトランス活性化因子を含む(
図2)。この手法は、より高い治療効果のために皮膚のより深い層にタンパク質を送達する基礎となる。
【0110】
安全性および「キルスイッチ」
臨床的使用のためのほぼ全ての組換え微生物の重要な要件は、他の個体または環境への望ましくない導入を防止する能力である。操作された株の安全性を確保するために、本発明は、一実施形態においては、生存のために重要なアミノ酸(D-ala)またはある特定の代謝遺伝子(AlaR)の補給を必要とし、選択のための抗生物質耐性株の必要性を同時に置き換える、栄養要求株を使用するが、後者は商業的に実現可能ではない。別の実施形態においては、本発明は、二重キシロース-リボスイッチプロモーターの誘導時にCRISPR/Cas9自己切断に基づく、「キルスイッチ」を組み込む。さらに別の実施形態においては、本発明は、規定の分裂回数後にAZT遺伝子座から組み換わる細胞計数器を提供するが、この方法は、ビヒクルの再適用を必要とする。本発明の操作された表皮ブドウ球菌の安全性を確保するために、キシロース誘導性であり、テオフィリンリボスイッチを用いて二重調節される、CRISPR/Cas9に基づくキルスイッチを開発した。この手法の基礎は、Cas9が標的化ガイドを与えられた染色体切断において極端に効率的であるということ、およびブドウ球菌が標準的な非相同末端結合修復経路を欠くため、ゲノム切断が、相同組換え鋳型の非存在下では細胞死をもたらすということである。CRISPRに基づく系の使用はまた、比較ゲノミクスを用いて、構築物が水平遺伝子導入によって他の微生物に拡散する場合に不活性となるような、本発明の操作された表皮ブドウ球菌株にとってユニークなガイドを設計することができるため、高い特異性を与える。最後に、一実施形態においては、本発明は、複数のゲノム領域を同時に標的化して、確実に切断し、復帰による生存を最小化するために複数のCRISPRスペーサーを発現するように設計された構築物を提供する。