(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098224
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】加熱調理システム
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20240716BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20240716BHJP
F24C 7/04 20210101ALI20240716BHJP
【FI】
F24C3/12 G
H05B6/12 335
F24C7/04 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001546
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕康
(72)【発明者】
【氏名】水野 達彦
(72)【発明者】
【氏名】土橋 洋樹
【テーマコード(参考)】
3K151
3L087
【Fターム(参考)】
3K151AA01
3K151CA13
3K151CA24
3L087AA03
3L087BB05
3L087BB18
3L087DA24
(57)【要約】
【課題】使用者にとって使い勝手を悪化させることなく、調理中の被加熱物における蓋の有無の状態変化の判断を正確に行うことができる加熱調理システムを提供する。
【解決手段】蓋11を装着可能な被加熱物10を載置する載置部9と、載置部9の被加熱物10を加熱する加熱装置1と、被加熱物10の温度を下方から検出する下方温度検出装置2と、加熱装置1の加熱運転を制御する制御部21と、載置部9に載置された被加熱物10の温度を上方から検出する上方温度検出装置3と、下方温度検出装置2による下方検出温度と上方温度検出装置3による上方検出温度との差の変化に基づいて、被加熱物10上での蓋11の有無の変化が生じたことを判断する蓋有無変化判断部22とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被調理物を収容し上部に蓋を装着可能な被加熱物を載置する載置部と、該載置部に載置された被加熱物を加熱する加熱装置と、前記被加熱物の温度を下方から検出する下方温度検出装置と、前記加熱装置の加熱運転を制御する制御部とを備える加熱調理システムにおいて、
前記載置部に載置された前記被加熱物の温度を上方から検出する上方温度検出装置と、
前記下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差の変化に基づいて、前記載置部に載置された前記被加熱物上での蓋の有無の変化が生じたことを判断する蓋有無変化判断部とを備えることを特徴とする加熱調理システム。
【請求項2】
請求項1記載の加熱調理システムにおいて、
前記載置部に載置された前記被加熱物を臨む位置に設けられて該被加熱物を含む検出領域への人体の少なくとも一部の侵入を検出する人体検出装置を備え、
前記蓋有無変化判断部は、前記下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差の変化、及び当該変化の直前又は直後における前記人体検出装置による人体の一部の侵入検出に基づいて、前記被加熱物上での蓋の有無の変化が生じたことを判断することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加熱調理システムにおいて、
前記蓋有無変化判断部は、前記下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差が、予め設定された閾値以下から当該閾値以上に変化したとき、前記被加熱物上が蓋無し状態から蓋有り状態へ変化したことを判断することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項4】
請求項1又は2記載の加熱調理システムにおいて、
前記蓋有無変化判断部は、前記下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差が、予め設定された閾値以上から当該閾値以下に変化したとき、前記被加熱物上が蓋有り状態から蓋無し状態へ変化したことを判断することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項5】
請求項1又は2記載の加熱調理システムにおいて、
前記加熱手段は、燃料ガスを燃焼させることにより前記被加熱物を加熱するガスバーナであり、
前記下方温度検出装置は、前記被加熱物の底面の温度を検出する温度センサであることを特徴とする加熱調理システム。
【請求項6】
請求項1又は2記載の加熱調理システムにおいて、
前記被加熱物を用いた調理を自動で実行する自動調理モードを前記制御部に対して設定するための自動調理モード設定部と、
前記制御部が前記自動調理モードを実行しているとき、前記被加熱物における蓋の装着作業や除去作業に関する調理作業指示を報知する報知部とを備え、
前記蓋有無変化判断部は、前記報知部が前記調理作業指示を報知した以降に、前記判断を実行することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項7】
請求項2記載の加熱調理システムにおいて、
本体と、前記本体の上部を覆う天板とを備える加熱調理器を備え、
前記載置部は、前記天板に設けられ、
前記加熱装置、前記下方温度検出装置、前記制御部及び前記蓋有無変化判断部は、前記本体に設けられ、
前記上方温度検出装置及び人体検出装置は、前記加熱調理器の外部に設けられていることを特徴とする加熱調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理器の天板上に載置された調理容器(被加熱物)の蓋の有無を検出するシステムとして、加熱調理器の上方に設置された撮像手段によって異なるタイミングで撮像された複数の画像に基づいて、調理容器の蓋の有無の状態変化(即ち、調理容器に対し、蓋が装着された状態から蓋が除去された状態に変化したことや、蓋が装着されていない状態から蓋が装着された状態に変化したこと)を判断するものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
加熱調理中に、調理容器の蓋の状態の変化を把握することにより、例えば、加熱調理中に調理容器から蓋が外されたとき、自動で火力調整等を行って被調理物の温度低下を防止するといった自動調理が正確に行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の加熱調理システムは、複数の画像を比較するために、調理容器の蓋が装着されるはずの位置の画像の変化に基づいて、蓋の有無の状態変化を判断している。
【0006】
このため、例えば、大きく着色される調味料(例えば、カレーのルー)や、色の濃い食材(例えば、ほうれん草)などのように、投入前後で画像が大きく変わってしまう場合には、蓋の有無の状態変化を画像で判断することが難しく、誤判断が生じるおそれがある。
【0007】
また、調理容器に蓋を装着した状態の画像を、加熱調理器が備える制御装置等に予め記憶させておくことで判断の制度を向上させることも考えられるが、調理容器に蓋を装着した状態の画像を加熱調理器の制御装置等に記憶させる作業を使用者に強いることとなるため、使用者にとって煩わしく、使い勝手が悪い。
【0008】
上記の点に鑑み、本発明は、使用者にとって使い勝手を悪化させることなく、調理中の被加熱物における蓋の有無の状態変化の判断を正確に行うことができる加熱調理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、第1発明は、内部に被調理物を収容し上部に蓋を装着可能な被加熱物を載置する載置部と、該載置部に載置された被加熱物を加熱する加熱装置と、前記被加熱物の温度を下方から検出する下方温度検出装置と、前記加熱装置の加熱運転を制御する制御部とを備える加熱調理システムにおいて、前記載置部に載置された前記被加熱物の温度を上方から検出する上方温度検出装置と、前記下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差の変化に基づいて、前記載置部に載置された前記被加熱物上での蓋の有無の変化が生じたことを判断する蓋有無変化判断部とを備えることを特徴とする。
【0010】
なお、本明細書においては、特に説明がない限り、被調理物は例えば食材や湯煎物等を示し、被加熱物は調理容器等であって例えば各種の鍋やフライパンを示し、加熱装置は例えばガスバーナや誘導加熱コイル(IH)、或いはシーズヒータ等を示すものとする。
【0011】
第1発明においては、蓋有無変化判断部が、下方温度検出装置による下方検出温度と上方温度検出装置による上方検出温度との差の変化に基づいて、被加熱物上での蓋の有無が変化したことを判断する。
【0012】
被加熱物が加熱装置によって加熱されているとき、被加熱物上に蓋が装着された場合には、被加熱物の内部の被調理物から上昇する熱気が蓋によって遮られる。そして、このとき、被加熱物においては、載置部に載置されて加熱装置からの加熱を受けている下側の温度と、蓋によって熱気が遮られている蓋の上側又は被加熱物の上部の温度とで、その差が大きくなる。
【0013】
それとは逆に、被加熱物上から蓋がなくなると、被加熱物の内部の被調理物から熱気が上昇する。よって、被加熱物においては、載置部に載置されて加熱装置からの加熱を受けている下側の温度と、蓋がないことによって熱気が上昇する被調理物の上側又は被加熱物の内側上部の温度とで、その差が小さくなる。
【0014】
このことから、蓋有無変化判断部は、被加熱物上での蓋の有無に変化が生じたことを、下方温度検出装置による下方検出温度と上方温度検出装置による上方検出温度との差の変化に基づいて判断するので、誤判断を防止して正確な判断を行うことができる。しかも、蓋有無変化判断部による上記判断には、それに関する使用者による作業を必要としないので、使い勝手もよい。
【0015】
また、第2発明は、上記第1発明の加熱調理システムにおいて、前記載置部に載置された前記被加熱物を臨む位置に設けられて該被加熱物を含む検出領域への人体の一部の侵入を検出する人体検出装置を備え、前記蓋有無変化判断部は、前記下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差の変化、及び当該変化の直前又は直後における前記人体検出装置による人体の一部の侵入検出に基づいて、前記被加熱物上での蓋の有無の変化が生じたことを判断することを特徴とする。
【0016】
被加熱物上に蓋を装着するとき、或いは、被加熱物上から蓋を除去するときには、必ず使用者が被加熱物上に手を伸ばす。第2発明においては、人体検出装置を備えることにより、被加熱物上に延ばされた使用者の手を検出することができる。
【0017】
そして、蓋有無変化判断部が、下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差の変化だけでなく、人体検出装置による人体の一部の侵入検出を加えて、被加熱物上での蓋の有無の変化が生じたことを判断するので、誤判断を一層確実に防止することができ、確実に正確な判断を行うことができる。
【0018】
また、第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明の加熱調理システムにおいて、前記蓋有無変化判断部は、前記下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差が、予め設定された閾値以下から当該閾値以上に変化したとき、前記被加熱物上が蓋無し状態から蓋有り状態へ変化したことを判断することを特徴とする。
【0019】
前記下方検出温度に対して前記上方検出温度が低い方向に乖離するように変化したときには、被加熱物上から取り外されていた蓋が、被加熱物上に装着されたことを示す。このとき、閾値を予め設定しておくことで、前記下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差の広がりを、閾値を指標として正確に把握することができる。
【0020】
従って、第3発明においては、前記下方検出温度と前記上方検出温度との差の閾値以下から閾値以上への変化により、蓋有無変化判断部は、被加熱物上が蓋無し状態から蓋有り状態へ変化したことを容易に且つ正確に判断することができる。
【0021】
なお、前記閾値は、適宜の値に予め設定されるが、調理の種類に応じて変更してもよく、これによって、蓋有無変化判断部による判断の精度を向上させることができる。
【0022】
また、第4発明は、上記第1発明又は上記第2発明の加熱調理システムにおいて、前記蓋有無変化判断部は、前記下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差が、予め設定された閾値以上から当該閾値以下に変化したとき、前記被加熱物上が蓋有り状態から蓋無し状態へ変化したことを判断することを特徴とする。なお、第4発明は、上記第3発明の加熱調理システムにも適用することができる。
【0023】
前記上方検出温度が上昇すると、前記下方検出温度との差が小さくなる。このように変化したときには、被加熱物上に装着されていた蓋が、被加熱物から取り外されたことを示す。このとき、閾値を予め設定しておくことで、前記下方温度検出装置による下方検出温度と前記上方温度検出装置による上方検出温度との差の縮まりを、閾値を指標として正確に把握することができる。
【0024】
従って、第4発明においては、前記下方検出温度と前記上方検出温度との差の閾値以上から閾値以下への変化により、蓋有無変化判断部は、被加熱物上が蓋有り状態から蓋無し状態へ変化したことを容易に且つ正確に判断することができる。
【0025】
なお、前記閾値は、適宜の値に予め設定されるが、調理の種類に応じて変更してもよく、これによって、蓋有無変化判断部による判断の精度を向上させることができる。また、第4発明において使用する閾値は、第3発明において採用したものと同じ値であってもよい。
【0026】
また、第5発明は、上記第1発明又は上記第2発明の加熱調理システムにおいて、前記加熱手段は、燃料ガスを燃焼させることにより前記被加熱物を加熱するガスバーナであり、前記下方温度検出装置は、前記被加熱物の底面の温度を検出する温度センサであることを特徴とする。なお、第5発明は、上記第3発明或いは上記第4発明の加熱調理システムにも適用することができる。
【0027】
ガスコンロは、一般的に、被加熱物の温度を別部材を介することなく検出することができる。よって、前記加熱手段としてガスバーナを採用し、下方温度検出装置として、被加熱物の底面の温度を検出する温度センサを採用することで、正確な下方検出温度を得ることができ、蓋有無の状態変化の判断の正確性を向上させることができる。
【0028】
また、第6発明は、上記第1発明又は上記第2発明の加熱調理システムにおいて、前記被加熱物を用いた調理を自動で実行する自動調理モードを前記制御部に対して設定するための自動調理モード設定部と、前記制御部が前記自動調理モードを実行しているとき、前記被加熱物における蓋の装着作業や除去作業に関する調理作業指示を報知する報知部とを備え、前記蓋有無変化判断部は、前記報知部が前記調理作業指示を報知した以降に、前記判断を実行することを特徴とする。なお、第6発明は、上記第3発明、上記第4発明、及び上記第5発明のうちの何れの加熱調理システムにも適用することができる。
【0029】
第6発明によれば、自動調理モードによる調理中に、報知部による蓋の装着作業や除去作業に関する調理作業指示が報知されたとき、使用者が調理作業指示通りに蓋の装着作業や除去作業を行ったか否かを監視することが可能となる。これにより、自動調理における調理の失敗を防止して、調理を良好に仕上げることができる。
【0030】
また、第7発明は、上記第2発明の加熱調理システムの具体的な態様の一例を示すものであって、本体と、前記本体の上部を覆う天板とを備える加熱調理器を備え、前記載置部は、前記天板に設けられ、前記加熱装置、前記下方温度検出装置、前記制御部及び前記蓋有無変化判断部は、前記本体に設けられ、前記上方温度検出装置及び人体検出装置は、前記加熱調理器の外部に設けられていることが挙げられる。なお、第7発明は、上記第3発明、上記第4発明、上記第5発明及び上記第6発明のうちの何れの加熱調理システムにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態の加熱調理システムの構成を模式的に示す図。
【
図2】コントローラによる制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の加熱調理システムは、
図1に示すように、ガスバーナ1と、下方温度センサ2と、上方温度センサ3と、人検出カメラ4と、コントローラ5とで構成されている。
【0033】
ガスバーナ1は、コンロ6に設けられており、
図1において仮想線で一部を示すコンロ本体7に収容されている。コンロ6は、本発明における加熱調理器に相当する。ガスバーナ1は、本発明における加熱装置に相当する。本実施形態においては加熱装置としてガスバーナ1を採用したが、これ以外に、誘導加熱コイル(IH)、或いはシーズヒータ等であってもよい。
【0034】
コンロ本体7の上面は、天板8により閉塞されている。天板8には五徳9が設けられている。五徳9には、調理容器10(
図1においては鍋)が載置される。ガスバーナ1は、五徳9に載置された調理容器10を加熱する。調理容器10は、蓋11が装着可能となっている。
【0035】
五徳9は本発明の載置部に相当する。調理容器10は本発明の被加熱物に相当する。なお、本発明の載置部は五徳9に限るものではなく、例えば、図示しないが、加熱装置として誘導加熱コイル(IH)を採用した場合には天板上に表示された載置マーク等が載置部となる。また、本発明において被加熱物としている調理容器10は、鍋以外に、フライパンのように蓋の装着が可能な調理容器であればよい。
【0036】
コントローラ5には、操作パネル12が接続されている。操作パネル12は、使用者が操作することによりコントローラ5に対して所望の指示や各種設定を行う。また、操作パネル12には、使用者が自動調理モードを設定するための自動調理モード設定部13が設けられている。
【0037】
ガスバーナ1には、ガス供給管14を介して燃料ガスが供給される。ガス供給管14には、ガス供給管14を開閉する元電磁弁15と、ガス供給管14を流通する燃料ガスの流量を調節する流量調節弁16とが設けられている。元電磁弁15は、コントローラ5の制御による通電により開弁し、通電停止により閉弁する。流量調節弁16はモータ17により開閉駆動され、コントローラ5からの指示によりモータ17が作動して流量調節弁16の開度を調節する。
【0038】
ガスバーナ1の近傍のコンロ本体7内部には、放電によってガスバーナ1に点火する点火プラグ18と、点火プラグ18の放電を駆動するイグナイタ19とが設けられている。
【0039】
下方温度センサ2は、所謂鍋底温度センサであり、ガスバーナ1の中心部から上方に突出して、五徳9に載置された調理容器10の底部に当接する。これにより、下方温度センサ2は、ガスバーナ1により加熱された調理容器10の温度を下方から検出し、当該下方検出温度を示す信号をコントローラ5に出力する。下方温度センサ2は、本発明の下方温度検出装置に相当する。本実施形態においては、下方温度検出装置として接触式の下方温度センサ2を設けた例を示したが、これに限らず、例えば赤外線温度センサ等の非接触式の温度センサを採用してもよい。
【0040】
上方温度センサ3は、赤外線温度センサであり、
図1において仮想線で一部を示すレンジフード20に取り付けられている。上方温度センサ3は、五徳9に載置された調理容器10又は調理容器10の内部の温度を非接触で上方から検出し、当該上方検出温度を示す信号をコントローラ5に出力する。上方温度センサ3は、本発明の上方温度検出装置に相当する。
【0041】
なお、本実施形態においては、上方温度センサ3として非接触式の赤外線センサを採用したが、これに限らず、例えば、赤外線カメラや熱画像カメラ等を採用することもできる。また、本実施形態においては、上方温度センサ3をレンジフード20に設けた例を示したが、これに限らず、例えば、天井や壁面などに設けてもよく、複数の上方温度センサ3を複数個所に設けてもよい。
【0042】
人検出カメラ4は、レンジフード20に取り付けられていることにより五徳9に載置された調理容器10とその周囲を検出領域として上方から臨む。人検出カメラ4は、検出領域に侵入した人体の少なくとも一部(主に手及び腕)を検出し、その動きを含む情報をコントローラ5に出力する。人検出カメラ4は、本発明の人体検出装置に相当する。
【0043】
なお、本実施形態においては、人検出装置として人検出カメラ4を採用したが、これに限らず、例えば、赤外線カメラ、熱画像カメラ、赤外線人感センサ等を採用してもよい。また、本実施形態においては、人検出カメラ4をレンジフード20に設けた例を示したが、これに限らず、例えば、天井や壁面などに設けてもよく、複数の人検出カメラ4(人検出装置)を複数個所に設けてもよい。また、双方の相関を維持でき検知精度が安定させるため、人検出カメラと上方温度センサとを1個のユニットとして構成させてもよい。
【0044】
コントローラ5は、ガスバーナ1の燃焼運転を制御する燃焼制御部21を備えている。燃焼制御部21は本発明の制御部に相当する。また、コントローラ5は、蓋有無変化判断部22を備えている。蓋有無変化判断部22は、五徳9に載置された調理容器10に、蓋11の有無の変化が生じたことを判断する。即ち、蓋有無変化判断部22は、調理容器10に装着されていた蓋11が調理容器10から取り外されたことや、蓋11が取り外されていた調理容器10に蓋11が装着されたことを判断する。
【0045】
蓋有無変化判断部22は、下方温度センサ2による調理容器10の下方検出温度と、上方温度センサ3による調理容器10の上方検出温度との差の変化によって、蓋11の有無の変化を判断する。
【0046】
これは、発明者の知見に基づくものであり、蓋11がされていない調理容器10に蓋11が装着される(無しから有りに変化する)と、下方検出温度は殆ど変わらないのに対して、調理容器10内の被調理物から立ち上る熱気が蓋11により遮られるから、上方検出温度は低下し、下方検出温度と上方検出温度との差が大きくなる。これを検出して蓋11無しから有りに変化した、と判断することができる。
【0047】
逆に、蓋11が装着されている調理容器10から蓋11が取り外される(有りから無しに変化する)と、調理容器10又は調理容器10内の被調理物から立ち上る熱気が上方検出温度として検出されるから、下方検出温度と上方検出温度との差が小さくなる。これにより蓋11有りから無しに変化した、と判断することができる。
【0048】
更に、蓋有無変化判断部22は、人検出カメラ4が調理容器10の上方(検出領域)への使用者の手や腕の侵入を検出することで、使用者が蓋11をつかんで動かした、と判断する。使用者は、調理容器10に蓋11を装着するときも、調理容器10から蓋11を取り外すときも、必ず、蓋11をつかむために調理容器10の上方へ手を伸ばすからである。
【0049】
また、コントローラ5は、報知制御部23を備えており、報知制御部23はスピーカ等の報知装置24を介して各種の報知が行えるようになっている。なお、報知制御部23と報知装置24とは本発明の報知部に相当する。
【0050】
次に、
図2及び
図3を参照して本実施形態における本発明の要旨に係る動作を説明する。
図2及び
図3に示すフローチャートは、自動調理モードを実行した場合のコントローラ5(制御部)による制御を示している。当該自動調理モードにおいては、調理の途中で使用者が調理容器10への蓋11の付け外し作業を行うものとなっている。
【0051】
図2に示すように、電源が投入されるとSTEP1で下方温度センサ2、上方温度センサ3、及び人検出カメラ4が作動を開始し、STEP2へ進む。STEP2で、使用者が操作パネル12の自動調理モード設定部13を操作することにより所望の調理が選択されると調理モードが設定され、STEP3へ進む。
【0052】
STEP3で、五徳9(載置部)上に調理容器10(被加熱物)が載置されると、STEP4へ進んで、燃焼制御部21が、イグナイタ19により点火プラグ18を駆動して、ガスバーナ1への点火が行われる。STEP3の段階では、調理容器10には蓋11が装着されておらず、使用者によって調理容器10の内部へ食材(被調理物)の投入等が行われることが想定されている。
【0053】
コントローラ5は、自動調理モードによる運転を実行し、STEP5へ進んで、燃焼制御部21により調理に合致した火力によるガスバーナ1の燃焼制御を行い、STEP6へ進む。
【0054】
STEP6へ進むと、コントローラ5は、報知制御部23により報知装置24を作動させて、調理容器10への蓋11の装着作業を促す内容の音声案内が行われる。この時の音声案内は、本発明における蓋の装着作業に関する指示の報知に相当する。
【0055】
続いて、STEP7では、蓋有無変化判断部22が人検出カメラ4の画像に基づいて調理容器10の上方(検出領域)への手の侵入があったか否かを判断する。更に、STEP8では、蓋有無変化判断部22が、下方温度センサ2の下方検出温度と、上方温度センサ3の下方検出温度との差が閾値以上となった(閾値以下から閾値以上に変化した)か否かを判断する。STEP8で用いる閾値は、本実施形態において具体的には30℃とした。なお、STEP8で用いる閾値は30℃に限るものではない。当該閾値については後述する。
【0056】
STEP7で、調理容器10の上方(検出領域)への手の侵入が無い場合はSTEP9へ進み、STEP8で、下方検出温度と下方検出温度との差が閾値以上とならない場合にもSTEP9へ進む。
【0057】
STEP9へ進むと、蓋有無変化判断部22は、使用者が調理容器10に蓋11を装着していないと判断し、コントローラ5は燃焼制御部21を介して火力を所定段低下させ、STEP6へ戻る。これにより、使用者がSTEP6における指示の報知に気付かない場合を考慮して、調理の過剰な進行を抑えることができる。本実施形態においては火力調整範囲が最大火力から最小火力まで5段階であるため、火力を1段階低下させている。
【0058】
STEP7で、調理容器10の上方(検出領域)への手の侵入があり、且つ、STEP8で、下方検出温度と下方検出温度との差が閾値以上となった場合には、STEP10へ進み、蓋有無変化判断部22は、STEP6の指示通りに使用者が調理容器10に蓋11を装着したと判断して、STEP11(
図3参照)へ進む。
【0059】
なお、上述の通り、コントローラ5の蓋有無変化判断部22は、STEP7及びSTEP8を経ることで、STEP6の指示通りに使用者が調理容器10に蓋11を装着したか否かを判断することができるが、少なくともSTEP8を設けたことで比較的高精度に判断できるため、STEP7を省略してSTEP6からSTEP8へ進むように構成してもよい。
【0060】
このようにSTEP7は省略可能であるが、蓋有無変化判断部22による判断においてSTEP7を設けることが好ましい。本実施形態では、STEP7を設けることにより、一層高精度な判断が実現でき、誤判断を確実に防止できるものとなっている。
【0061】
続いて、
図3に示すように、STEP11へ進むと、コントローラ5は燃焼制御部21により、調理に合致した火力によるガスバーナ1の燃焼制御を行い、STEP12へ進む。
【0062】
STEP12へ進むと、コントローラ5はその内部に機能として備えるタイマによる計時を行う。この時のタイマ時間は、実行中の調理モードに対して予め設定されている、調理容器10に蓋11が装着された状態での加熱時間であり、調理容器10に装着した蓋11を取り外すタイミングを計るためのものである。
【0063】
STEP12におけるタイマの計時が終了すると、コントローラ5は、STEP13へ進んで報知制御部23により報知装置24を作動させ、調理容器10からの蓋11の取り外し作業を促す内容の音声案内を行う。この時の音声案内は、本発明における蓋の除去作業に関する指示の報知に相当する。
【0064】
続いて、STEP14では、蓋有無変化判断部22が人検出カメラ4の画像に基づいて調理容器10の上方(検出領域)への手の侵入があったか否かを判断する。更に、STEP15では、蓋有無変化判断部22が、下方温度センサ2の下方検出温度と、上方温度センサ3の下方検出温度との差が閾値以下となった(閾値以上から閾値以下に変化した)か否かを判断する。STEP15で用いる閾値は、本実施形態において具体的には30℃であり、STEP8と同一の閾値を使用した。
【0065】
なお、STEP15で用いる閾値は、30℃に限るものではない。STEP8やSTEP15において用いる閾値は、蓋有無変化判断部22が調理容器10の蓋11の有無に変化したことを判断するために、調理の種類ごとに設定されたものを用いてもよい。或いは、自動調理モードの実行中に下方温度センサ2の下方検出温度に基づいて、STEP8やSTEP15において用いる閾値を算出してもよい。
【0066】
また、STEP8においては点火初期であるため、調理容器10やその内部の被調理物の温度が比較的低い状態にある。一方、STEP15においては、調理容器10やその内部の被調理物の温度が十分に上昇していて比較的安定した状態にある。そこで、STEP8とSTEP15とで異なる閾値を用いることも有効である。
【0067】
以上のようにして閾値を決定することで、調理容器10の蓋11の有無の変化について、調理に合った判断が行えるので、調理の完成度を向上させることができる。
【0068】
STEP14で、調理容器10の上方(検出領域)への手の侵入が無い場合はSTEP16へ進み、STEP15で、下方検出温度と下方検出温度との差が閾値以下とならない場合にもSTEP16へ進む。
【0069】
STEP16へ進むと、蓋有無変化判断部22は、使用者が調理容器10から蓋11を取り外していないと判断し、コントローラ5は燃焼制御部21を介して火力を所定段(本実施形態においては1段)低下させる。これにより、使用者がSTEP13における指示の報知に気付かない場合を考慮して、調理の過剰な進行を抑えて焦げ付き等を防止することができる。
【0070】
STEP14で、調理容器10の上方(検出領域)への手の侵入があり、且つ、STEP15で、下方検出温度と下方検出温度との差が閾値以下となった場合には、STEP17へ進み、蓋有無変化判断部22は、STEP13の指示通りに使用者が調理容器10から蓋11を取り外したと判断して、STEP18へ進む。
【0071】
なお、STEP14を省略してSTEP13からSTEP15へ進むように構成してもよいことは、前述したSTEP7及びSTEP8の場合と同様であり、蓋有無変化判断部22による判断において、高精度な判断が実現し、誤判断を確実に防止するために、STEP14を設けることが好ましいことも、STEP7の場合と同様である。
【0072】
STEP18へ進むと、コントローラ5は、実行中の自動調理モードにおける蓋11が取り外された後の調理容器10での調理に合致した火力で調理容器10の加熱を行い、STEP19へ進む。STEP19では、タイマによる計時を行い、その間、蓋11が取り外された調理容器10の加熱が継続される。
【0073】
その後、STEP19でタイマの計時が終了すると、コントローラ5は、STEP20へ進んで、燃焼制御部21を介してガスバーナ1を消火させ、自動調理モードにおける調理容器10の加熱を終了させる。
【0074】
以上説明した通り、本実施形態の加熱調理システムによれば、調理中の被加熱物における蓋の有無の状態変化の判断を正確に行うことができる。そして、自動調理モードにおいても、使用者に蓋の装着作業や除去作業を的確に案内しながら調理を進めることができ、調理失敗の発生を防止して完成度の高い調理を行うことができる。
【0075】
以上、各実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0076】
1…ガスバーナ(加熱装置)、2…下方温度センサ(下方温度検出装置、温度センサ)、3…上方温度センサ(上方温度検出装置)、4…人検出カメラ(人体検出装置)、6…コンロ、7…コンロ本体(本体)、8…天板、9…五徳(載置部)、10…調理容器(被加熱物)、11…蓋、13…自動調理モード設定部、21…燃焼制御部(制御部)、22…蓋有無変化判断部、23…報知制御部(報知部)、24…報知装置(報知部)。