(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098227
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】積層体の製造方法および光電変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20240716BHJP
H10K 30/30 20230101ALN20240716BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001552
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 桂也
(72)【発明者】
【氏名】奥山 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】松尾 啓介
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151CB14
5F151CB30
5F151DA07
5F151FA02
5F151FA03
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
5F151GA06
5F251AA11
5F251CB14
5F251CB30
5F251DA07
5F251FA02
5F251FA03
5F251FA04
5F251FA06
5F251GA03
5F251GA06
(57)【要約】
【課題】ミストを用いて撥液性の表面の塗布性を改善する方法を提供する。
【解決手段】光電変換素子11に用いられる、基材31と膜とを含む積層体SBを製造する方法であって、第1の液体のミストを前記基材31の第1面に接触させる工程と、前記第1の液体のミストが接触されている前記基材31の第1面に、成膜材料を含む第2の液体を接触させる工程とを含み、前記第1の液体の表面自由エネルギーは、前記基材31の第1面の表面自由エネルギーより大きく、前記第2の液体の表面自由エネルギー以下である、積層体の製造方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子に用いられる、基材と膜とを含む積層体を製造する方法であって、
第1の液体のミストを前記基材の第1面に接触させる工程と、
前記第1の液体のミストが接触されている前記基材の第1面に、成膜材料を含む第2の液体を接触させる工程と
を備え、
前記第1の液体の表面自由エネルギーは、前記基材の第1面の表面自由エネルギーより大きく、前記第2の液体の表面自由エネルギー以下である、
積層体の製造方法。
【請求項2】
前記基材と、前記第2の液体の溶剤との接触角が80°以上である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の液体は前記第2の液体とは異なる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の液体中の溶媒または分散媒体の濃度は99質量%以上である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の液体は成膜材料を含まない、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の液体の溶剤は、前記第2の液体の溶剤と同一の溶剤である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第1の液体の表面自由エネルギーと前記第2の液体の表面自由エネルギーとの差は、55mN/m以下である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記第1の液体のミストを介して前記第2の液体が接触された前記基材を加熱することにより前記成膜材料を含む膜を形成する工程をさらに備え、
前記成膜材料を含む膜を形成する工程では、前記第1の液体のミストに基づく膜は形成されない、あるいは、
前記成膜材料を含む膜を形成する工程において前記第1の液体のミストに基づく膜が形成される場合、前記第2の液体の成膜材料を含む膜の厚みに対する、前記第1の液体のミストに基づく膜の厚みの比は、1以下である、
請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記第1の液体に超音波を印加することにより前記第1の液体のミストを発生させる工程をさらに備える、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記基材が有機半導体を含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記基材の第1面の表面自由エネルギーが20~25mN/mの範囲にあり、
前記第2の液体の表面自由エネルギーは、前記基材の第1面の表面自由エネルギー以上であり、
前記第1の液体および第2の液体の表面自由エネルギーが各々、20~73mN/mの範囲にある、
請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記第1の液体が水またはアルコールを含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記基材の第1面は、活性層として機能する層の表面である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
前記成膜材料がホール輸送層の材料である、請求項13に記載の積層体の製造方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の積層体の製造方法を用いて光電変換素子を製造する、光電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法および光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池が、特にマイクロクリスタリン、シリコン、カドテル、および有機等の薄膜太陽電池が、次世代のエネルギー問題を解決する手段の1つとして期待されている。薄膜太陽電池は材料を薄膜化することにより製造され、この製造方法として幾つかの手法が公知である。
【0003】
薄膜化は、太陽電池を構成する各層の薄膜塗布により実現される。例えば有機薄膜太陽電池については、活性層、電子輸送層、およびホール輸送層等(以下、これらを機能層とも総称する。)の製造方法として、スピンコート法、インクジェット法、およびグラビアコート等の湿式塗布法を用いた方法が知られている(例えば、特許文献1および2を参照)。これらの方法は、他の光電変換素子を構成する機能層の製造にも用いられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-051805号公報
【特許文献2】特開2013-089807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来、光電変換素子の機能層の製造方法が様々知られているが、成膜材料を含む液体を基材に塗布する際に、基材と当該液体との濡れ性が悪い場合、その結果製造される光電変換素子の外観および/または光電変換効率が悪化してしまう。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、成膜材料を含む液体と当該液体が塗布される基材との濡れ性が悪い場合にも、製造される光電変換素子の外観および光電変換効率を悪化させない積層体の製造方法および光電変換素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次に記載の態様を含み得る。
[1] 光電変換素子に用いられる、基材と膜とを含む積層体を製造する方法であって、
第1の液体のミストを前記基材の第1面に接触させる工程と、
前記第1の液体のミストが接触されている前記基材の第1面に、成膜材料を含む第2の液体を接触させる工程と
を含み、
前記第1の液体の表面自由エネルギーは、前記基材の第1面の表面自由エネルギーより大きく、前記第2の液体の表面自由エネルギー以下である、
積層体の製造方法。
[2] 前記基材と、前記第2の液体の溶剤との接触角が80°以上である、[1]に記載の積層体の製造方法。
[3] 前記第1の液体は前記第2の液体とは異なる、[1]または[2]に記載の積層体の製造方法。
[4] 前記第1の液体中の溶媒または分散媒体の濃度は99質量%以上である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[5] 前記第1の液体は成膜材料を含まない、[1]から[4]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[6] 前記第1の液体の溶剤は、前記第2の液体の溶剤と同一の溶剤である、[1]から[5]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[7] 前記第1の液体の表面自由エネルギーと前記第2の液体の表面自由エネルギーとの差は、55mN/m以下である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[8] 前記第1の液体のミストを介して前記第2の液体が接触された前記基材を加熱することにより前記成膜材料を含む膜を形成する工程をさらに含み、
前記成膜材料を含む膜を形成する工程では、前記第1の液体のミストに基づく膜は形成されない、あるいは、
前記成膜材料を含む膜を形成する工程において前記第1の液体のミストに基づく膜が形成される場合、前記第2の液体の成膜材料を含む膜の厚みに対する、前記第1の液体のミストに基づく膜の厚みの比は、1以下である、
[1]から[7]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[9] 前記第1の液体に超音波を印加することにより前記第1の液体のミストを発生させる工程をさらに含む、[1]から[8]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[10] 前記基材が有機半導体を含む、[1]から[9]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[11] 前記基材の第1面の表面自由エネルギーが20~25mN/mの範囲にあり、
前記第2の液体の表面自由エネルギーは、前記基材の第1面の表面自由エネルギー以上であり、
前記第1の液体および第2の液体の表面自由エネルギーが各々、20~73mN/mの範囲にある、
[1]から[10]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[12] 前記第1の液体が水またはアルコールを含む、[1]から[11]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[13] 前記基材の第1面は、活性層として機能する層の表面である、[1]から[12]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[14] 前記成膜材料がホール輸送層の材料である、[13]に記載の積層体の製造方法。
[15] [1]から[14]のいずれか一項に記載の積層体の製造方法を用いて光電変換素子を製造する、光電変換素子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、成膜材料を含む第2の液体を基材に塗布する際に、基材の成膜面の表面自由エネルギーより大きく第2の液体の表面自由エネルギー以下の表面自由エネルギーの第1の液体のミストを基材の成膜面に予め接触させ、第1の液体のミストが接触されている当該成膜面に第2の液体を接触させる。これにより、例え基材と第2の液体との濡れ性が悪い場合であっても、第2の液体に由来する、均一で平滑な膜を形成することが可能となる。当該膜の基材側の面には液はじき等による欠陥が少なく、製造される光電変換素子では、例え基材と第2の液体との濡れ性が悪い場合であっても、電気キャリアの輸送性が悪化されず、ゆえに光電変換効率が悪化しない。
【0009】
光電変換素子では、活性層は、例えばドナーとアクセプターの有機物が混合された構造を有する。ドナーとしては、さまざまな化合物が用いられ得るが、一般的に、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)に代表されるような、チオフェン環および/またはベンゼン環といった構造を有する化合物が用いられる。アクセプターとしては、フラーレン系の化合物が最も一般的である一方、非フラーレン系の化合物も用いられ得る。当該非フラーレン系の化合物としては、アントラビスチアジアゾール系ポリマーに代表されるような、チオフェン環および/またはベンゼン環といった構造を有する化合物が用いられる。このような材料を用いて成膜される活性層は表面自由エネルギーが低く、高表面自由エネルギーの液体との濡れ性が悪い、言い換えれば、当該液体には湿潤しにくい。このような濡れ性および湿潤のしやすさを評価する指標としての湿潤化能がある。湿潤化能は、液体が固体表面との接触を維持する能力を表し、2つの材料間での分子間相互作用に関連する。上述したように、固体の表面自由エネルギーと比較して液体の表面自由エネルギーが高いほど、湿潤化能は低くなり、通常、2つの相間の接触は少なくなる。その結果、低表面自由エネルギーの固体である、光電変化素子の活性層として一般的な上述したP3HTとフラーレン系アクセプターから形成された層は、水溶液または水を主成分として含有する液体等の高表面自由エネルギーの液体(高表面張力液体とも称される。)によってあまり湿潤化されない。このため、例えば活性層の上に、ホール輸送層または電子輸送層(以下、バッファー層と総称する。)として機能する層を塗布する際には、光電変換素子の外観および光電変換効率を悪化させないという観点で、当該塗布に用いる溶剤の制約があった。このような場合にも、上述したようにミストを活性層上に予め接触させることにより、塗布に用いる溶剤を従来より幅広く選択しつつ光電変換素子の外観および光電変換効率を悪化させないことが可能となる。
【0010】
成膜材料を含む第2の液体を基材に塗布する際に、第2の液体が高表面張力液体であって基材と第2の液体との濡れ性が悪い場合への対処として、従来、界面活性剤、および、液体の表面張力を低下させることができる他の化合物、等の添加剤を当該高表面張力液体に導入することも可能である。しかしながら、このような添加剤を用いることには、次のような欠点がある。添加剤は、例えば、当該液体中の成膜材料の安定性および/または当該液体の電気的な性質等の他の特性を変えることがある。添加剤は、当該液体への成膜材料の溶解性または分散性を低下させることにより、当該液体中で成膜材料の凝集および析出を発生させることがある。例えば、バッファー層形成のために基材に塗布する液体内でこのような現象が起きた場合、製造される光電変換素子では、活性層内で生じる励起子が失活されてしまい、光電変換効率が低下されてしまう。さらに、添加剤の存在は、例えば、当該液体のゲル化を引き起こして当該液体の粘度を増加させ、成膜処理を複雑化させることがある。さらに、添加剤は、当該液体の溶剤が除去された後に、成膜材料とともに基材上に残ることもある。これに対して、上述したようにミストを基材上に予め接触させることにより、上述したような添加剤を用いることなく、第2の液体に由来する均一で平滑な膜を形成させることが可能となる。このため、添加剤に起因する上述したような欠点を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る光電変換素子の構成の一例を示す図。
【
図2】第1実施形態に係る光電変換素子の製造に用いられる成膜装置の構成の一例を示す図。
【
図3】第1実施形態に係る光電変換素子を構成する積層体の製造方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、基材上での膜の形成方法に関するものであり、特に光電変換素子の機能層の製造方法に関するものである。光電変換素子は、光のエネルギーと電気エネルギーとを変換する素子である。光電変換素子には、電子と正孔の再結合により形成される励起子(エキシトン)の作用により発光する有機ELデバイス、光を電力に変換する有機薄膜太陽電池、電流量や電圧量を制御する有機薄膜トランジスタ等が含まれる。
【0013】
参照を容易にするため、図面において一例を示し、本明細書において上および下の表記を用いて説明を行うことがあるが、本実施形態は必ずしもそれに限定されるわけではない。例えば、上下逆転する等向きを変えても本明細書に開示される思想により実現し得る物及び方法は、本実施形態の開示の範囲とされる。本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。本明細書において、「Aおよび/またはB」とは、「AとBとの一方」または「AとBとの両方」を意味し、具体的には、「A」、「B」、または「AおよびB」を意味する。
【0014】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲について、或る段階の数値範囲の上限値または下限値は、別の段階の数値範囲の上限値または下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲について、その数値範囲の上限値または下限値は、実施例に示されている値または実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。本明細書において、「~」で結ばれた数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0015】
<光電変換素子の構成例>
図1は、第1実施形態に係る光電変換素子11の構成の一例を示す。光電変換素子11は、例えば、カソード12、電子輸送層13、活性層14、ホール輸送層15、およびアノード16を含む。光電変換素子11は基板17を含んでもよい。光電変換素子11は、例えば、基材17上に、カソード12、電子輸送層13、活性層14、ホール輸送層15、およびアノード16がこの順に積層された構造を有する。すなわち、基材17上にカソード12が設けられ、カソード12上に電子輸送層13が設けられ、電子輸送層13上に活性層14が設けられ、活性層14上にホール輸送層15が設けられ、ホール輸送層15上にアノード16が設けられる。光電変換素子11では、これらの層のうちいくつかが省略されていてもよい。
【0016】
活性層14は、上述したようにカソード12とアノード16との間に設けられる。光電変換素子11では、上述したように電子輸送層13とホール輸送層15とが設けられていることが好ましい。電子輸送層13はカソード12と活性層14の間に設けられ、ホール輸送層15はアノード16と活性層14の間に設けられる。本明細書では、光電変換素子11を構成する層のうち、活性層14、電子輸送層13およびホール輸送層15を機能層と称し得る。
図1に示した光電変換素子11の構成は一例に過ぎない。
図1に示した構造は逆型構造とも称され得るものだが、光電変換素子11は、順型構造とも称され得るような、例えば、基板17上にアノード16が設けられ、アノード16上にホール輸送層15が設けられ、ホール輸送層15上に活性層14が設けられ、活性層14上に電子輸送層13が設けられ、電子輸送層13上にカソード12が設けられるような構造を有していてもよい。この場合も、上述したのと同様に、これらの層のうちいくつかが省略されていてもよい。
【0017】
活性層14は光電変換が行われる層であり、p型半導体化合物とn型半導体化合物を含有する。光電変換素子が光を受けると、光が活性層14に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で電気が発生し、発生した電気がカソード12とアノード16から取り出される。
【0018】
p型半導体化合物およびn型半導体化合物としては各々、公知の化合物を用いることができる。p型半導体化合物としては、例えば、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリアニリン等の共役コポリマー半導体化合物;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等のコポリマー半導体化合物等が挙げられる。p型半導体化合物として、2種以上のモノマー単位を共重合させたコポリマー半導体化合物を用いてもよい。このように、活性層14は有機半導体を含み得る。
【0019】
n型半導体化合物としては、例えば、フラーレンやその誘導体、オクタアザポルフィリン、ならびに、p型半導体化合物の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(例えば、パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン)等が挙げられる。n型半導体化合物として、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物および/またはそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を用いることもできる。このように、活性層14は有機半導体を含み得る。
【0020】
活性層14の層構造の例としては、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが積層された薄膜積層構造、ならびに、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層を有するバルクヘテロ接合構造等が挙げられる。バルクヘテロ接合構造は、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合された層(i層)を有する。i層はp型半導体化合物とn型半導体化合物とが相分離した構造を有し、相界面でキャリア分離が起こり、生じたキャリア(正孔および電子)が電極まで輸送される。i層中でのp型半導体化合物とn型半導体化合物との質量比(p型半導体化合物/n型半導体化合物)は、良好な相分離構造を得ることにより光電変換効率を向上させる観点から、0.5以上が好ましく、より好ましくは1以上であり、また、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。
【0021】
活性層14は、p型半導体化合物とn型半導体化合物とに加え、添加剤を含有してもよい。活性層14の層構造がバルクヘテロ接合構造である場合、活性層14におけるp型半導体化合物とn型半導体化合物との相分離構造は、光吸収、励起子の生成・拡散、励起子の乖離(キャリア分離)、キャリア輸送等に影響を及ぼす。相分離構造を最適化することにより、良好な光電変換効率を実現することが期待される。活性層14に、p型半導体化合物および/またはn型半導体化合物と親和性の高い添加剤が含まれることにより、活性層14は、光電変換効率の面で好ましい相分離構造を有するようになり得る。
【0022】
添加剤としては、炭素数8~20の脂肪族炭化水素化合物および炭素数8~20の芳香族化合物が挙げられる。これらの脂肪族炭化水素化合物および芳香族化合物は置換基を有していてもよい。脂肪族炭化水素化合物が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボニルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、芳香族基等が挙げられる。芳香族化合物が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、アミド基、カルボニルオキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、シリル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族基等が挙げられる。添加剤の好ましい具体例としては、置換基を有していてもよいベンゼン、置換基を有していてもよいナフタレン、置換基を有していてもよいオクタン等が挙げられる。置換基としては、ハロゲン原子が特に好ましい。
【0023】
活性層14の厚さは、70nm以上が好ましく、90nm以上がより好ましく、100nm以上がさらに好ましく、一方、1000nm以下が好ましく、750nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。
【0024】
電子輸送層13は、活性層14からカソード12への電子の取り出しを行う機能を有する。電子輸送層13の構成材料は、電子取り出しの効率を向上させる電子輸送性の材料であることが好ましく、有機化合物でも無機化合物でもよいが、無機化合物であることが好ましい。
【0025】
電子輸送層13を構成する無機化合物としては、金属化合物が好ましく、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属の塩、ならびに、金属酸化物等が挙げられる。当該アルカリ金属の塩としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウムのようなフッ化物塩が好ましく、当該金属酸化物としては、酸化チタン(TiOx)および酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体特性を有する金属酸化物が好ましい。電子輸送層13を構成する有機化合物としては、導電性有機化合物が挙げられ、例えばポリエチレンイミンエトキシレート等が挙げられる。
【0026】
電子輸送層13の厚さは、0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましく、1.0nm以上がさらに好ましく、一方、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、60nm以下がさらに好ましい。
【0027】
ホール輸送層15は、活性層14からアノード16へ正孔の取り出しを行う機能を有する。ホール輸送層15の構成材料は、正孔取り出しの効率を向上させることが可能な正孔輸送性の材料であれば特に限定されず、当該材料としては、導電性有機化合物および金属化合物が挙げられる。
【0028】
ホール輸送層15を構成する導電性有機化合物としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン、ポリアニリン等に、スルホン酸および/またはヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基として有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等が挙げられる。ホール輸送層15を構成する金属化合物としては、三酸化モリブデン、五酸化バナジウム、酸化ニッケル等のp型半導体特性を有する金属酸化物、ならびに、金、インジウム、銀、パラジウム等の金属が挙げられる。ホール輸送層15は、p型半導体化合物から形成されるものであってもよい。これらの中でも、ホール輸送層15の構成材料としては、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーが好ましく、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)がより好ましく、酸化モリブデンおよび酸化バナジウム等の金属酸化物が好ましい。
【0029】
ホール輸送層15の厚さは、0.2nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましく、1.0nm以上がさらに好ましく、一方、400nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、70nm以下がさらにより好ましい。
【0030】
カソード12とアノード16は各々、導電性材料から構成される。カソード12とアノード16のうち少なくとも一方は透光性であることが好ましく、すなわち透明電極であることが好ましい。これにより、光が透明電極を透過して活性層14まで到達することができる。
【0031】
カソード12は、アノード16よりも小さい仕事関数を有する導電性材料から構成されることが好ましい。カソード12は、活性層14で発生した電子を取り出す機能を有する。カソード12の構成材料としては、例えば、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム-ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム、コバルト等の金属およびその合金等が挙げられる。カソード12が透明電極である場合、カソード12の構成材料として、ITO、酸化亜鉛または酸化スズ等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOを用いることが好ましい。
【0032】
アノード16は、カソード12よりも大きい仕事関数を有する導電性材料から構成されることが好ましい。アノード16は、活性層14で発生した正孔を取り出す機能を有する。アノード16の構成材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム等の金属およびその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化セシウム等の金属酸化物が挙げられる。ホール輸送層15の構成材料として酸化亜鉛のようなn型半導体化合物で導電性を有するものを用いる場合、ITOのように小さい仕事関数を有する材料をアノード16の材料として用いてもよい。
【0033】
カソード12とアノード16の厚さは各々、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましく、一方、10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。
【0034】
基板17の構成材料は特に限定されず、光電変換素子の用途に応じて適宜設定される。基板17の構成材料としては、例えば、石英、ガラス、サファイア、チタニア等の無機材料;ポリエチレン(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂、塩化ビニル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン、エポキシ樹脂等の有機材料;紙材料;ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属に樹脂をコートした複合材料等が挙げられる。
【0035】
基板17の形状としては、例えば、板状、フィルム状、シート状等が挙げられる。基板17の厚さは、5μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、一方、20mm以下が好ましくは、10mm以下がより好ましい。
【0036】
<成膜装置の構成例>
図2は、第1実施形態に係る光電変換素子11の製造に用いられる成膜装置21の構成の一例を示す。成膜装置21は、例えば、ミスト化部22および塗布チャンバー23を含む。ミスト化部22において液体Lから液体LのミストMが発生され、塗布チャンバー23において、例えば静置された基材BにミストMが吹き付けられる。これにより、例えば、液体Lが成膜材料を含む場合、基材B上への成膜が実現される。
図2は、成膜装置21の構成の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されない。
【0037】
ミスト化部22は、例えば貯留槽24を含む。貯留槽24に液体Lが溜められるようにする。貯留槽24は空間を有し、当該空間に液体LのミストMが発生される。貯留槽24は、入口と出口を有し、入口からキャリアガスCGを導入し出口からキャリアガスCGを排出することができるように構成されている。このような構成によりキャリアガスの流れを制御することが可能となり、ミストMをキャリアガスCGとともに貯留槽24の外に搬送することが可能となる。キャリアガスCGは例えば不活性ガスである。
図2の例では、キャリアガスCGを貯留槽24の入口まで導入する経路中にフローメーター25が設けられている。フローメーター25は、例えば、貯留槽24に導入するキャリアガスCGの流量を制御可能である。
【0038】
液体Lをミスト化する方法としては、液体Lに超音波を印加する方法が挙げられる。超音波によりミストMを発生させる場合、例えば、貯留槽24に貯められた液体Lに超音波を印加することにより、液体LからミストMを発生させる。このような目的で、貯留槽24の内面(壁面や底面)のうち液体Lに接する箇所に超音波振動子が設置されるようにしてもよく、または、貯留槽24の内面ではなく液体L中に超音波振動子が設置されるようにしてもよい。あるいは、貯留槽24よりも大きな槽(以下、媒体保持槽とも称する。)27を準備し、水等の超音波を伝播する媒体CMを媒体保持槽27に貯め、媒体保持槽27の内面(壁面や底面)または媒体CM中に超音波振動子が設置されるようにし、媒体保持槽27内で媒体CMに接するように貯留槽24を配置するようにしてもよい。
図2は、このような場合の例を示しており、超音波振動子に符号26を付している。
【0039】
基材BとミストMの接触方法としては、発生させたミストMをキャリアガスCGで基材Bに吹き付ける、ミストMが充満した塗布チャンバー23内に基材Bを静置する、あるいは、ミストMが充満した塗布チャンバー23内を基材Bがくぐるようにする、等の方法が挙げられる。
図2の例では、塗布チャンバー23に排気口28が設けられている。排気口28は、塗布チャンバー23内のガスを排出するために用いられる。
【0040】
図2では、超音波振動子を用いて液体Lをミスト化する成膜装置の構成の一例を示したが、本実施形態はこれに限定されない。超音波を印加することにより液体Lをミスト化するのに、
図2に示したのとは異なる構成の成膜装置を用いてもよい。さらに、液体Lをミスト化する方法としては、超音波の印加により液体Lをミスト化する方法の代わりに、液体Lをノズルから噴霧することにより液体Lをミスト化する方法、液体Lをバブリングすることにより液体Lをミスト化する方法等が挙げられる。ここに記載した以外の他のミスト化方法が採用されてもよい。
【0041】
<積層体の製造方法例>
以下、
図2に示したような成膜装置を用いて光電変換素子11を構成する積層体SBを製造する方法を説明する。以下では、主に、逆型構造の光電変換素子11を製造する際に、活性層14上にホール輸送層15を形成することにより、例えば基板17、電子輸送層13、活性層14、およびホール輸送層15を含む積層体SBを製造する場合の例を説明するが、本実施形態はこれに限定されない。他の層の形成の際に、以下に説明するのと同様の方法を用いてもよい。順型構造の光電変換素子の製造の際の層形成に、以下に説明するのと同様の方法を用いてもよい。より具体的には、例えば活性層上に電子輸送層を形成する際に、以下に説明するのと同様の方法を用いてもよい。
【0042】
図3は、第1実施形態に係る光電変換素子11を構成する積層体SBの製造方法の一例を示す。当該製造方法では、第1の液体を利用することにより、例えば基板17、電子輸送層13、および活性層14を含む基材31に、第2の液体に由来する層(膜とも称され得る。)の形成を行う。この場合、基材31の成膜面(第1面とも称され得る。)は、活性層14として機能する層の表面である。第1の液体は、例えば第2の液体とは異なる。以下では、第1の液体として或る液体LFを用い、第2の液体として或る液体LSを用いる場合の例を説明する。
図3では、参照を容易にするため、液体LFに由来するミストおよび膜にも参照符号LFを付し、液体LSに由来する膜にも参照符号LSを付している。
【0043】
基材31は、例えば、第2の液体との関係で撥液性の基材(以下、撥液基材31とも称され得る。)である。本明細書では、或る基材と、当該基材への成膜に用いる液体の溶剤との接触角が80°以上の場合、当該基材が撥液性であると言う。撥液基材31は、例えば、第2の液体に含まれる溶剤との接触角が80°以上の基材である。第2の液体に含まれる溶剤とは、第2の液体の、例えば70質量%以上を占める溶剤を指す。第2の液体が複数の溶剤を含む場合、第2の液体に含まれる溶剤とは、当該複数の溶剤のうち、第2の液体中で最も含有される割合が多いものを指す。ここでの溶剤は、下記で説明する溶媒および分散媒体を含む概念として用いるものである。第1の液体に関連して溶剤という用語を用いるときも同様である。本明細書では、主に、撥液基材31に第2の液体に由来する膜の形成を行うものとして説明するが、基材31が第2の液体との関係で撥液性でない場合にも、以下で説明する方法を採用することが可能である。
【0044】
撥液基材31は、ポリテトラフルオロエチレンに代表されるような撥液性の基材であってもよく、あるいは、ガラスまたはフィルム等の基材上に、撥液処理が行われたもの、または、撥液材料の膜が形成されたものであってもよい。さらに、撥液基材31は、基材と撥液表面の間に親水性の層を有していてもよい。
【0045】
第2の液体は、例えば、溶媒に成膜材料が溶解したものである。当該溶媒は、撥液基材31を溶解させたり、膨潤させたりしないものであることが好ましい。成膜材料としては、具体的には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン、ポリアニリン等に、スルホン酸および/またはヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基として有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等のホール輸送性を有する材料(ホール輸送層の材料)が挙げられる。
【0046】
第2の液体は、分散媒体に成膜材料が分散したものであってもよい。当該成膜材料としては、例えば三酸化モリブデン、五酸化バナジウム、酸化ニッケル等のp型半導体特性を有する金属酸化物、金、インジウム、銀、パラジウム等の金属のナノ粒子、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマー、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)等のホール輸送性を有する材料(ホール輸送層の材料)が挙げられる。
【0047】
逆型構造と称される構造を有する光電変換素子は、一般的に、下方から上方に向かって、ガラスまたはフィルム等の基板/電子輸送層/活性層/ホール輸送層/AgまたはAu等の電極、の順の積層構造を有する。例えば、活性層がP3HTとフラーレン系アクセプターとから形成されるものである場合、ホール輸送層として水分散系のPEDOT:PSSを活性層上に塗布する際に、活性層と水との接触角は90°以上であり、上述したように、基板/電子輸送層/活性層の積層体を、撥液基材31と見なすことができる。
【0048】
以下、積層体SBの製造方法を、
図3を参照しながら順次説明する。
図3(a)に示されるように、撥液基材31を用意する。例えば
図2の例では、成膜装置21の塗布チャンバー23内に、基材Bとして撥液基材31が設けられるようにする。
【0049】
図3(b)に示されるように、微小液滴(ミスト)化された第1の液体(第1の液体のミストとも称され得る。)を撥液基材31の成膜面(第1面とも称され得る。)に接触させる。これにより、撥液基材31上に第1の液体の膜を形成する。第1の液体のミストを発生させる方法としては、第1の液体に超音波を印加することが好ましい。当該印加される超音波の周波数は特に限定されない。印加される周波数が大きいほど、発生されるミストの粒径が小さくなる。例えば、10μm以上の平均粒径のミストを発生させる場合は、超音波の周波数を10kHz以上0.7MHz未満とすることが好ましい。10μm未満の平均粒径のミストを発生させる場合は、超音波の周波数を0.7MHz以上5MHz以下とすることが好ましく、1.5MHz以上3.5MHz以下とすることがより好ましい。ミストの粒径を制御することにより、撥液基材1の成膜面の表面自由エネルギー(単に、撥液基材1の表面自由エネルギーとも称され得る。)と第1の液体の表面自由エネルギーとの差にかかわらず、撥液基材31の第1の液体による被覆率を調整することができ、膜質の制御が可能である。
【0050】
第1の液体の表面自由エネルギーは、例えば、撥液基材31の表面自由エネルギーより大きく、第2の液体の表面自由エネルギー以下である。第1の液体の表面自由エネルギーと第2の液体の表面自由エネルギーとの差は、好ましくは55mN/m以下であり、より好ましくは40mN/m以下であり、さらに好ましくは20mN/m以下であり、さらに好ましくは2mN/m以下である。第1の液体の表面自由エネルギーと第2の液体の表面自由エネルギーは同一であってもよい。後述するように、ミストにより形成される第1の液体の膜に第2の液体を塗布する際には、液体同士の関係であることから、固体に液体を塗布する場合と比較して、第1の液体の表面自由エネルギーと第2の液体の表面自由エネルギーとの差がある程度大きくても第2の液体の塗布時の濡れ性が悪くなりにくい。第1の液体は、撥液基材31を溶解させないものであることが好ましく、撥液基材31の表面を膨潤させないものであることが好ましい。
【0051】
基材31の表面自由エネルギーは例えば20~25mN/mの範囲にあり、第2の液体の表面自由エネルギーは、例えば撥液基材31の表面自由エネルギー以上である。この場合、第1の液体の表面自由エネルギーが基材31の表面自由エネルギーより大きく第2の液体の表面自由エネルギー以下であり、さらに、第1の液体および第2の液体の表面自由エネルギーが各々、20~73mN/mの範囲にあれば、第2の液体の塗布時の濡れ性が悪くなりにくいという効果が奏され得る。
【0052】
ここで、ある液体の表面自由エネルギーは、当該液体が複数の溶剤を含む場合、当該液体の成分中で最も大きな割合を占める溶剤の表面自由エネルギーと同一の値である。これは、第1の液体と第2の液体のいずれにも成り立つ。
【0053】
第1の液体は、第2の液体の溶剤(溶媒または分散媒体)と同一のカテゴリーの溶剤であることが好ましい。例えば、第1の液体と第2の液体は、ともにアルコール類であることが好ましく、または、ともに芳香族炭化水素類であることが好ましい。より好ましくは、第1の液体は、第2の液体の溶剤(溶媒または分散媒体)と同一のものである。このような関係により、第1の液体の表面自由エネルギーと第2の液体の表面自由エネルギーの差を小さくして第1の液体の膜に対する第2の液体の塗布時の濡れ性を向上させることが可能となり得る。
【0054】
第1の液体は水またはアルコールであることが好ましい。例えば、基材31として最上層に活性層が形成された基材を用い、当該活性層上に水分散体のPEDOT:PSSを塗布する場合、水またはアルコールを第1の液体として用いることで均一な膜を得ることができる。
【0055】
第1の液体の溶媒もしくは分散媒体は、複数の溶剤の混合液体であってもよい。
【0056】
図3(c)に示されるように、撥液基材31に第1の液体のミストを接触させて撥液基材31上に第1の液体の膜を形成させた後、当該膜の上に第2の液体の塗布を行う。すなわち、第1の液体のミストが接触されている基材31の成膜面上に第2の液体を接触させる。撥液基材31の表面自由エネルギーと比較して、第1の液体の表面自由エネルギーは第2の液体の表面自由エネルギーに近いため、第1の液体による、撥液基材31と第2の液体との間での濡れ性の向上の効果が効率的に発揮される。第1の液体と撥液基材31との接触方法においてミスト化した第1の液体を使用することで、第2の液体の塗布までを連続的に処理しやすい。例えば、第2の液体の塗布工程の直前にミストを撥液基材31表面に不活性ガス等を用いて送ってやればよいため、加工がしやすい。第2の液体の塗布後の撥液基材31を加熱(以下、アニールとも称する。)することにより、撥液基材31上に、成膜材料を含む層(膜)が形成される。これにより、上述したように、撥液基材31が、基板17、電子輸送層13、および活性層14を含む積層体である場合、ホール輸送層15として機能する層が形成される。第1の液体が成膜材料を含まない場合、当該層の形成の際に第1の液体のミストに基づく膜は形成されない。
【0057】
第2の液体の塗布方法としては特に限定されず、スピンコート法、インクジェット法、グラビアコート等の公知の方法を用いることができる。第2の液体の塗布方法として、第2の液体をミスト化して、ミスト化された第2の液体を対象物に接触させる方法を用いてもよい。
【0058】
以上、積層体SBの製造方法を説明したが、当該製造方法で用いられる第1の液体についてさらに説明する。
第1の液体中の溶剤(溶媒または分散媒体)の濃度は、95質量%濃度以上が好ましく、より好ましくは97質量%以上であり、さらに好ましくは99質量%以上である。第1の液体中の溶剤の濃度がこの範囲であると、第1の液体が成膜材料を含有したとしても、第1の液体によって基材上に形成される膜は十分に薄く、当該膜は、第2の液体の塗布性を向上させつつも、撥液基材31への影響、および、第2の液体により形成される膜への影響が小さい。例えば、光電変換素子の場合、第1の液体により形成され得る膜は、活性層で生じる電気キャリアの輸送を阻害しにくい。
【0059】
第1の液体は、成膜材料を含有しないことが好ましい。具体的には、第1の液体中の成膜材料の濃度は、例えば、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下がさらに好ましく、0.01質量%以下がさらにより好ましい。第1の液体が溶剤のみからなる場合、ミスト化の制御がより簡便である。第1の液体が溶剤のみからなる場合、最終的に得られる撥液基材31と第2の液体による膜との積層体SBに第1の液体が残存しない。このため、第1の液体が残存することに由来する光電変換効率の悪化はなく、一方、第2の液体の塗布性向上により、外観の悪化が防止され、さらに光電変換効率が向上するという効果が奏され得る。
【0060】
第1の液体は成膜材料を含んでいてもよい。成膜材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン、ポリアニリン等に、スルホン酸および/またはヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基として有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等のホール輸送性を有する材料(ホール輸送層の材料)が挙げられる。第2の液体により形成される膜とより欠陥の少ない界面を形成するという観点から、第1の液体は分散体より溶液であることが好ましい。第1の液体が成膜材料を含む場合、第2の液体の塗布後の撥液基材31を加熱することにより、撥液基材31上に、第1の液体のミストに基づき第1の液体の成膜材料を含む膜(層)が形成され、当該層上に、第2の液体の成膜材料を含む膜(層)が形成される。これにより、上述したように、撥液基材31が、基板17、電子輸送層13、および活性層14を含む積層体である場合、第1の液体の成膜材料を含む膜(層)と、第2の液体の成膜材料を含む膜(層)とが、ホール輸送層15として機能する層として形成される。第2の液体の成膜材料を含む膜(層)の厚みに対する、第1の液体の成膜材料を含む膜(層)の厚みの比は、例えば、1以下である。当該比は、0.5以下であってもよく、0.2以下であってもよく、0.1以下であってもよい。これは、例えば、第1の液体のミストを撥液基材31に接触させる際に、第1の液体に由来する膜の厚みにより第1の液体のミストの濡れ性が悪くなることを防ぐことを目的とする。このように、第2の液体により形成される膜と同様の機能を有する膜が第1の液体により形成される場合、第1の液体により形成される膜に由来して光電変換効率が悪化されないようにすることが可能である。第1の液体が、成膜材料を含む一方、第2の液体により形成される膜と同様の機能を有する膜を形成するための成膜材料を含まない場合、第1の液体により形成される膜は、ミストにより形成されるために薄膜化が可能であり、ゆえに、光電変換効率が悪化されないようにすることが可能である。
【0061】
第1の液体が成膜材料を含む場合、上述したのと同様に、第1の液体の溶剤は、第2の液体の溶剤(溶媒または分散媒体)と同一のカテゴリーの溶剤であることが好ましく、第2の液体の溶剤(溶媒または分散媒体)と同一の溶剤であることがより好ましい。このような関係により、上述したのと同様に、第1の液体の表面自由エネルギーと第2の液体の表面自由エネルギーの差を小さくして第1の液体の膜に対する第2の液体の塗布時の濡れ性を向上させることが可能となり得る。第1の液体は、例えば水またはアルコールを含む。ここで、本明細書で「第1の液体の溶剤」と言及する場合、第1の液体が成膜材料を含むものと限定されるわけではない。
【実施例0062】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下では、参照を容易とする目的で、
図1から
図3を参照して説明した各構成要件の名称を用いることがあるが、
図1から
図3を参照して説明した参照符号については省略して説明を行うことがある。
【0063】
<表面自由エネルギーの測定>
撥液基材の成膜面の表面自由エネルギーは、撥液基材の当該面と水・グリセリンそれぞれとの接触角により求めた。23℃50%RHの環境で測定を実施し、液滴サイズは直径2mm以下とした。1つのサンプル、溶剤につきn=5の測定を行い、平均値を計算に用いた。接触角の測定には共和界面科学製のDM―501を用いた。表面自由エネルギーの値はOwens-Wendt式より算出した。結果を表1に示す。
【0064】
<外観評価>
下記の各実施例で得られた、第2の液体による成膜後の積層体について、第2の液体により形成された膜の外観を目視で確認して評価した。
〇:目視で均一膜であり、厚みムラや脱濡れ(はじき)がない
△:目視でムラはあるが、表面は被覆できている
×:ムラがあり、所々脱濡れがある
【0065】
<光電変換効率の評価>
下記の各実施例から得られた太陽電池について分光計器株式会社製OTENTO-SUN IIIを用いて測定を実施した。測定前にS-500BK Si系フォトダイオード検知器を用いて校正を実施した。得られた太陽電池の発電エリアのうち2mm×2mmの面積の領域を除いた部分にマスクし、発電エリアの2mm×2mmの面積の当該領域に光を照射することにより、セル変換効率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0066】
<撥液基材準備0:透明電極付ガラス基板>
パターン化透明電極(ITO)が成膜されたガラス基板を、イソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄し、クリーンドライエアーで乾燥させた後、UV/O3処理を実施した。
【0067】
<撥液基材準備1:電子輸送層の成膜>
ITO付ガラス基板のITO面にZnOナノ粒子分散液(Avantama N-10)を滴下し、1500rpm45sの条件で塗布を行った。この基板を140℃のホットプレートで10min加熱した。このようにして得たZnO成膜後の基板を、次に説明するいずれかの方法での活性層の成膜に用いた。
【0068】
<撥液基材準備2a:活性層A1の成膜>
Poly(3―hexylthiophene)((ポリ(3-ヘルシルチオフェン))(略称P3HT))、フラーレン誘導体(フロンティアカーボン製E100H)、およびクロロベンゼンを16mg:16mg:1mLの比率で混合した溶液を作製した。この溶液を、上記で得られたZnO成膜後の基板に滴下し、1000rpm45sの条件で塗布した。当該塗布後の基板を140℃のホットプレートで10min加熱した。
【0069】
<撥液基材準備2b:活性層A2の成膜>
P3HT、フラーレン誘導体(フロンティアカーボン製E112)、およびクロロベンゼンを16mg:16mg:1mLの比率で混合した溶液を作製した。この溶液を、上記で得られたZnO成膜後の基板に滴下し、1000rpm45sの条件で塗布した。当該塗布後の基板を140℃のホットプレートで10min加熱した。
【0070】
<撥液基材準備2c:活性層A3の成膜>
Poly{2,6―(4,8-bis(2-ethylhexyl-3-fluoro)thiophen-2-yl)-benzo{1,2-b:4,5-b‘}dethiophene})-alt―(5,5―(1’,3‘-di-2-thienyl-5’-7‘-bis(2-ethlyhexyl)benzo{1’,2'-c:4‘,5’-c‘}dithiophene-4,8-dione))(略称PM6)、(2,2‘―((2Z,2’Z)―((12,13-bis(2-ethylhexyl)-3,9-diundecyl-12,13-dihydro-{1,2,5}thiadiazolo{3,4-e}thieno{2,“3‘’:4‘,5’}thieno{2‘,3’:4,5}(略称Y6)、およびクロロベンゼンを8.4mg:8.4mg:1mLの比率で混合した溶液を作製した。この溶液を上記で得られたZnO成膜後の基板に滴下し、800rpm45sの条件で塗布した。当該塗布後の基板を100℃のホットプレートで10min加熱した。
【0071】
このようにして得られたZnO付基板に活性層A1~A3のいずれかを成膜させた基材を撥液基材とした。
【0072】
<液体LF1~LF3の準備>
第1の液体として用いられる液体LF1~LF3として、次のものを準備した。
LF1:水
LF2:エタノール
LF3:イソプロプルアルコール
【0073】
<液体LS1~LS4の準備>
第2の液体として用いられる液体LS1~LS4として、次の市販のものを準備した。
LS1:Ossilaより購入 PEDOT:PSS(AI4083)
LS2:Ossilaより購入 PEDOT:PSS(HC solar)
LS3:Ossilaより購入 PEDOT:PSS(HTL solar)
LS4:Sigma-Aldrichより購入 チタニアナノ粒子 エタノール分散液
用いる基材(撥液基材)が第2の液体との関係で撥液性の基材であることを示すため、当該基材と第2の液体との接触角を、共和界面科学製のDM―501を用いて測定した。結果を表1に示す。表1に示される通り、用いる基材は液体LS1~LS4との関係で撥液基材である。
【0074】
<液体LS5の準備>
第2の液体として用いられる液体LS5を次のように準備した。
無水メタノール1500μLに蒸留水0.6μLを加えた。ここにチタン酸テトライソプロピル5μLを加え、超音波によって攪拌した。これにより、第2の液体として用いられる液体LS5を生成した。液体LS1~LS4について説明したのと同様に、用いる基材と液体LS5との接触角を測定した。表1に示される通り、用いる基材は液体LS5との関係で撥液基材である。
【0075】
<液体LS6の準備>
第2の液体として用いられる液体LS6を次のように準備した。
Sigma-Aldrichより購入したチタニアナノ粒子エタノール分散液10μLにイソプロプルアルコール50μLを加え、超音波によって攪拌した。これにより、第2の液体として用いられる液体LS6を生成した。液体LS1~LS4について説明したのと同様に、用いる基材と液体LS6との接触角を測定した。表1に示される通り、用いる基材は液体LS6との関係で撥液基材である。
【0076】
<実施例1>
活性層A1が成膜された撥液基材を、
図2の成膜装置の塗布チャンバー内にセットした。第1の液体としての液体LF1に超音波を印加し、ミスト化した。超音波振動子としては星光技研のIM1-24を使用した。キャリアガスとして窒素ガスを1L/minの流速で用いて撥液基材がセットされた塗布チャンバー内に液体LF1のミストを2min間送った。その後、取り出した撥液基材を直ちにスピンコーターにセットし、第2の液体としての液体LS1をスピンコートした。その後、100℃で10min間アニールし、外観を目視で確認した。得られた基板は、運搬時以外はグローブボックス内でハンドリングした。この基板を真空蒸着装置にセットし、Ag電極の蒸着を行った。このようにして得られた積層体から有機薄膜太陽電池を生成した。
【0077】
<実施例2、3>
実施例2および3では、実施例1と同様に第1の液体として液体LF1を用いた実施例である。実施例2では、第2の液体として液体LS2を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。実施例3では、第2の液体として液体LS3を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0078】
<実施例4、5、6>
実施例4、5、および6は、第1の液体として、実施例1とは異なる液体を用いるようにした実施例である。第1の液体として、実施例4では液体LF3を用い、実施例5および6では液体LF2を用いた。これ以外の実施例1と相違する処理について説明する。
実施例4では、第2の液体として液体LS4を用い、アニール温度を140℃とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。実施例5では、第2の液体として液体LS5を用い、アニール温度を140℃とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。実施例6では、上述したように第1の液体として液体LF2を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0079】
<実施例7>
実施例7では、実施例1において、第2の液体の塗布をミストにより行うようにした実施例である。より具体的には、次の通りである。
活性層A1が成膜された撥液基材を、
図2の成膜装置の塗布チャンバー内にセットした。第1の液体としての液体LF1に超音波を印加し、ミスト化した。超音波振動子としては星光技研のIM1-24を使用した。キャリアガスとして窒素ガスを1L/minの流速で用いて撥液基材がセットされた塗布チャンバー内に液体LF1のミストを2min間送った。その後、液体LF1が入っていた貯留槽に、代わりに第2の液体としての液体LS1を入れ、同条件で5min間、液体LS1のミストを塗布チャンバーに送った。その後、100℃で10min間アニールし、外観を目視で確認した。得られた基板は、運搬時以外はグローブボックス内でハンドリングした。この基板を真空蒸着装置にセットし、Ag電極の蒸着を行った。このようにして得られた積層体から有機薄膜太陽電池を生成した。
【0080】
<実施例8、9>
実施例8および9は、実施例7と同様に第2の液体の塗布をミストにより行うようにし、さらに、第1の液体として、成膜材料を含む液体を用いるようにした実施例である。より具体的には、次の通りである。
実施例8では、第1の液体として液体LS3を用い、貯留槽内の液体を液体LS3から変更することなく第2の液体として液体LS3を用いた以外は、実施例7と同様の処理を行った。
実施例9では、第1の液体として液体LS3を用い、第2の液体として液体LS1を用いた以外は、実施例7と同様の処理を行った。
【0081】
<実施例10>
実施例10は、実施例1において、第2の液体の塗布をアプリケーターにより行うようにした実施例である。
第2の液体の塗布をアプリケーターで実施した以外は、実施例1と同様の処理を行った。アプリケーターは塗布ギャップが5μmのものを用いた。
【0082】
<実施例11、12>
実施例11および12は、撥液基材として、実施例1とは別の撥液基材を用いるようにした実施例である。
実施例11では、活性層A2が成膜された撥液基材を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。実施例12では、活性層A3が成膜された撥液基材を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0083】
<比較例1>
第2の液体の塗布の前の第1の液体を用いた処理を行わない以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0084】
<比較例2>
第1の液体として液体LF2を用い、第2の液体として液体LS6を用い、アニール温度を140℃とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0085】
<比較例3>
第2の液体の塗布の前の第1の液体を用いた処理を行わない以外は、実施例12と同様の処理を行った。
【0086】
<比較例4>
第2の液体として液体LS5を用い、アニール温度を140℃とした以外は、実施例12と同様の処理を行った。
【0087】
【0088】
表1に示されるように、いずれの実施例も、外観に問題がなく、さらに、高い光電変換効率となった。一方、比較例では次の結果となった。比較例1では、同様に活性層A1が成膜された撥液基材を用いた実施例1と比較して、外観が悪化し、光電変換効率も悪化した。これは、第1の液体を用いた処理を行わないため、基材と第2の液体との濡れ性が悪かったためと考えられる。比較例2では、実施例と比較すると外観も光電変換効率も悪化した。これは、用いた第1の液体の表面自由エネルギーが第2の表面自由エネルギーよりも高いためと考えられる。比較例3では、同様に活性層A3が成膜された撥液基材を用いた実施例12と比較して、外観が悪化し、光電変換効率も悪化した。これは、第1の液体を用いた処理を行わないため、基材と第2の液体との濡れ性が悪かったためと考えられる。比較例4では、同様に活性層A3が成膜された撥液基材を用いた実施例12と比較して、外観が悪化し、光電変換効率も悪化した。これは、用いた第1の液体の表面自由エネルギーが第2の表面自由エネルギーよりも高いためと考えられる。