(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098228
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】介護支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20240716BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001555
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 高久
(72)【発明者】
【氏名】福田 優子
(72)【発明者】
【氏名】湊崎 真行
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】 被介護者にとって好適な環境を維持することを含む、被介護者の介護を支援することができる介護支援システムを提供する。
【解決手段】 介護支援システムは、サーバ装置とクライアント装置とを含む。サーバ装置は、クライアント装置から受信した被介護者の身体情報および環境情報を、時刻情報と関連づけて記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されている身体情報に基づき、被介護者の身体状態が良好か否かを判定する身体状態判定手段と、身体状態判定手段による被介護者の身体状態の判定結果と、記憶手段に記憶されている身体情報および環境情報とに基づき、被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する環境適正判定手段と、環境適正判定手段による被介護者が居る場所の環境状態の判定結果を含む環境適正情報を生成する環境適正情報生成手段と、環境適正情報生成手段によって生成された環境適正情報をクライアント装置に送信する環境適正情報送信手段と、を具備する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ装置とクライアント装置とがネットワークを介して接続される介護支援システムであって、
前記クライアント装置は、
被介護者の身体状態を検知する身体状態センサによって取得される前記被介護者の身体情報と、前記被介護者が居る場所の環境状態を検知する環境センサによって取得される前記被介護者の環境情報とを前記サーバ装置に送信する被介護者情報送信手段と、
前記被介護者が居る場所の環境状態の適否に関する環境適正情報を前記サーバ装置から受信する環境適正情報受信手段と、を具備し、
前記サーバ装置は、
前記クライアント装置から受信した前記身体情報および前記環境情報を、時刻情報と関連づけて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記身体情報に基づき、前記被介護者の身体状態が良好か否かを判定する身体状態判定手段と、
前記身体状態判定手段による前記被介護者の身体状態の判定結果と、前記記憶手段に記憶されている前記身体情報および前記環境情報とに基づき、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する環境適正判定手段と、
前記環境適正判定手段による前記被介護者が居る場所の環境状態の判定結果を含む前記環境適正情報を生成する環境適正情報生成手段と、
前記環境適正情報生成手段によって生成された前記環境適正情報を前記クライアント装置に送信する環境適正情報送信手段と、を具備する
介護支援システム。
【請求項2】
前記環境情報は、温度、湿度、音量、照度、またはガス濃度の少なくとも1つを含む請求項1に記載の介護支援システム。
【請求項3】
前記身体情報は、少なくとも排泄有無を含む請求項1または2に記載の介護支援システム。
【請求項4】
前記身体情報は、体動または姿勢の少なくとも1つを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の介護支援システム。
【請求項5】
前記身体情報は、心拍数、呼吸数、体温、血圧、酸素飽和度、または発汗の少なくとも1つを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の介護支援システム。
【請求項6】
前記環境適正情報は、前記被介護者が居る場所の環境状態の適正でない環境に関する情報、または前記被介護者が居る場所の環境状態を適正にするための情報の少なくとも1つを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の介護支援システム。
【請求項7】
前記サーバ装置は、前記身体状態判定手段による前記被介護者の身体状態の判定結果と、前記記憶手段に記憶されている前記身体情報とに基づき、前記被介護者の体調変化を検知する体調変化判定手段を具備する請求項1~6のいずれか1項に記載の介護支援システム。
【請求項8】
前記サーバ装置は、前記身体状態判定手段による前記被介護者の身体状態の判定結果に基づき、前記被介護者の要介護の程度の変化を検知する要介護程度変化検知手段を具備する請求項1~7のいずれか1項に記載の介護支援システム。
【請求項9】
前記クライアント装置は、前記サーバ装置から受信した前記環境適正情報を用いて、前記被介護者が居る場所の環境状態が前記被介護者にとって快適な状態か否かを通知する通知手段を具備する請求項1~8のいずれか1項に記載の介護支援システム。
【請求項10】
前記サーバ装置は、前記記憶手段に記憶されている前記身体情報および前記環境情報を用いた学習により、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する判定モデルを生成する学習手段を具備し、
前記環境適正判定手段は、前記判定モデルを用いて、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の介護支援システム。
【請求項11】
被介護者の身体状態を検知する身体状態センサによって取得される前記被介護者の身体情報と、前記被介護者が居る場所の環境状態を検知する環境センサによって取得される前記被介護者の環境情報とを、時刻情報と関連づけて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記身体情報に基づき、前記被介護者の身体状態が良好か否かを判定する身体状態判定手段と、
前記身体状態判定手段による前記被介護者の身体状態の判定結果と、前記記憶手段に記憶されている前記身体情報および前記環境情報とに基づき、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する環境適正判定手段と、
前記環境適正判定手段による前記被介護者が居る場所の環境状態の判定結果を含む環境適正情報を生成する環境適正情報生成手段と、
を具備する情報処理装置。
【請求項12】
被介護者の身体状態を検知する身体状態センサによって取得される前記被介護者の身体情報と、前記被介護者が居る場所の環境状態を検知する環境センサによって取得される前記被介護者の環境情報とを、時刻情報と関連づけて記憶することと、
前記記憶した前記身体情報に基づき、前記被介護者の身体状態が良好か否かを判定することと、
前記被介護者の身体状態の判定結果と、前記記憶した前記身体情報および前記環境情報とに基づき、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定することと、
前記被介護者が居る場所の環境状態の判定結果を含む環境適正情報を生成することと、を含む
介護支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温度や湿度などに対する感度が低下している高齢者の介護においては、被介護者にとって好適な環境を維持することが困難な場合が少なくない。たとえば室内の温度が被介護者にとって好適な水準から逸脱していたとしても、その状況が被介護者に認識されず、介護者への申し出がなされない場合があり、被介護者の環境を介護者が適応的に改善することを難しくしている。
【0003】
一方、近年、言語による意思伝達能力を未習得の乳幼児の育児をサポートする様々なシステムが普及している。たとえば特許文献1には、乳幼児の泣き声に基づき、おむつが濡れたことを原因として乳幼児が泣いていると判定された場合、おむつが濡れたことを原因として乳幼児が泣いていることを表す画面を表示部に表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乳幼児と比較して、高齢者などの被介護者の個人差は大きく、前述のような乳幼児の育児をサポートする既存のシステムを、被介護者の介護をサポートするシステムに転用することは現実的ではない。このようなことから、被介護者にとって好適な環境を維持することを含む、被介護者の介護をサポートするシステムが求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決することができる介護支援システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サーバ装置とクライアント装置とがネットワークを介して接続される介護支援システムであって、クライアント装置は、被介護者の身体状態を検知する身体状態センサによって取得される被介護者の身体情報と、被介護者が居る場所の環境状態を検知する環境センサによって取得される被介護者の環境情報とをサーバ装置に送信する被介護者情報送信手段と、被介護者が居る場所の環境状態の適否に関する環境適正情報をサーバ装置から受信する環境適正情報受信手段と、を具備し、サーバ装置は、クライアント装置から受信した身体情報および環境情報を、時刻情報と関連づけて記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されている身体情報に基づき、被介護者の身体状態が良好か否かを判定する身体状態判定手段と、身体状態判定手段による被介護者の身体状態の判定結果と、記憶手段に記憶されている身体情報および環境情報とに基づき、被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する環境適正判定手段と、環境適正判定手段による被介護者が居る場所の環境状態の判定結果を含む環境適正情報を生成する環境適正情報生成手段と、環境適正情報生成手段によって生成された環境適正情報をクライアント装置に送信する環境適正情報送信手段と、を具備する介護支援システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記課題を解決することができる介護支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る介護支援システムの構成例を示す概念図である。
【
図2】
図2は、同実施形態の介護支援システム内のサーバ装置のシステム構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、同実施形態の介護支援システム内のクライアント装置のシステム構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、同実施形態の介護支援システムにおいて用いられる個人データベースの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、同実施形態の介護支援システムにおいて用いられる個人特性テーブルの構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、同実施形態の介護支援システムにおいて用いられる学習モデルを示す概念図である。
【
図7】
図7は、
図3のクライアント装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、
図2のサーバ装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、同実施形態の介護支援システムにおける対象被介護者の体調変化の注意通知または環境の改善提案通知の第1例を示す図である。
【
図10】
図10は、同実施形態の介護支援システムにおける対象被介護者の体調変化の注意通知または環境の改善提案通知の第2例を示す図である。
【
図11】
図11は、同実施形態の介護支援システムにおける対象被介護者の体調変化の注意通知または環境の改善提案通知の第3例を示す図である。
【
図12】
図12は、同実施形態の介護支援システムにおける通知例をさらに説明するための図である。
【
図13】
図13は、
図2のサーバ装置において実行されるモデル生成処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、
図2のサーバ装置において実行される通知処理の手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る介護支援システム1の構成を説明する。介護支援システム1は、被介護者61の介護を担う介護者62を支援するためのシステムである。
【0012】
被介護者61は、たとえば排泄に関する支援が必要な高齢者である。なお、排泄に関する支援は一例であって、介護支援システム1は、被介護者61について、排泄に関する支援が必要であることを前提とはしていない。つまり、被介護者61は、吸収性物品を装着している場合もあるし、吸収性物品を装着していない場合もある。吸収性物品は、たとえば紙おむつや布おむつである。
【0013】
介護者62は、被介護者61の介護に関して、介護支援システム1を利用するユーザである。介護者62は、たとえば、被介護者61の家族、被介護者61が入居する介護施設で介護に従事する者である。
【0014】
介護支援システム1は、たとえば、サーバ装置2、クライアント装置3、および複数のセンサ5を含む。
【0015】
サーバ装置2は、被介護者61に関するデータを解析して、介護を支援するための情報を提供する情報処理装置である。サーバ装置2は、たとえばサーバコンピュータとして実現され得る。介護を支援するための情報は、たとえば被介護者61による排泄に関する情報である。介護を支援するための情報の詳細については後述する。
【0016】
クライアント装置3は、介護者62によって使用される情報処理装置である。クライアント装置3は、たとえば、携帯情報端末、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ、または各種電子機器に内蔵される組み込みシステムとして実現され得る。携帯情報端末は、たとえば、携帯電話機、Personal Digital Assistant(PDA)、スマートフォンである。
【0017】
クライアント装置3は、ネットワーク4を介して、サーバ装置2と相互に通信可能である。ネットワーク4を介した通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。ネットワーク4は、たとえば、有線ローカルエリアネットワーク(有線LAN)、無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)を含む。また、WANは、たとえば、携帯電話網、固定電話網、衛星通信網、専用回線、Asynchronous Transfer Mode(ATM)、Internet Protocol-Virtual Private Network(IP-VPN)を含む。
【0018】
複数のセンサ5は、被介護者61の身体状態、および被介護者が居る場所の環境状態を検知するセンサである。複数のセンサ5は、検知結果を含む信号を外部に送信するための通信部を備える。より詳しくは、複数のセンサ5は、検知結果を含む信号を、たとえばクライアント装置3に送信する。複数のセンサ5は、外部に信号を送信するための通信方式として、たとえば、Bluetooth(登録商標)や無線LANを用いる。複数のセンサ5は、たとえば、身体状態センサ51、および環境センサ52を含む。
【0019】
身体状態センサ51は、被介護者61の体動、姿勢、体調(心拍数、体温、酸素飽和度など)を測定するセンサである。被介護者61が排泄に関する支援を必要とする場合、身体状態センサ51は、さらに、被介護者61による排泄を検知する。つまり、身体状態センサ51は、たとえば、体動・姿勢センサ、体調センサ、排泄センサを適宜組み合わせることによって構成されている。
【0020】
体動・姿勢センサは、たとえば、被介護者61が着用している衣類に取り付けられるものであってもよいし、いわゆるウェアラブルデバイスとして被介護者61自身に取り付けられるものであってもよい。体動・姿勢センサは、たとえば、加速度センサとジャイロセンサとが一体化された慣性センサとして実現され得る。あるいは、体動・姿勢センサは、たとえば被介護者61の近傍に設置されたカメラによって撮像される、被介護者61を含む画像を解析するものであってもよい。体動・姿勢センサは、被介護者61の体の動きと向きとを検知し、立ち上がっている状態、座っている状態、歩行している状態、寝ている状態など、被介護者61の身体の動作、姿勢を計測する。
【0021】
体調センサも、体動・姿勢センサと同様、被介護者61が着用している衣類に取り付けられるものであってもよいし、いわゆるウェアラブルデバイスとして被介護者61自身に取り付けられるものであってもよい。体調センサは、被介護者61の心拍数、体温、酸素飽和度などを測定する。
【0022】
また、排泄センサは、たとえば、被介護者61が装着している吸収性物品に取り付けられる。あるいは、排泄センサは、被介護者61が装着している吸収性物品に内蔵されていてもよい。排泄センサは、たとえば、導電率、温度、湿度、におい等の変化を検知することで、被介護者61による排泄を検知する。排泄センサは、排泄を検知してからの経過時間を計測する機能や、排泄(排尿)を複数回検知する機能を有している。
【0023】
身体状態センサ51は、体動・姿勢センサ、体調センサ、排泄センサの検知結果を示す信号をクライアント装置3に送信する。この信号は、各事象が検知された時刻の情報を含んでいてもよい。
【0024】
環境センサ52は、被介護者61が居る場所の環境状態(計測値等)を検出するセンサである。被介護者61が居る場所とは、典型的には、被介護者61が多くの時間居る部屋又はベッド等であるが、室内に限られない。たとえば、介護施設の庭を被介護者61が散歩している状況なども考えられるため、環境センサ52によって環境状態が検出されるべき、被介護者61が居る場所には、屋外も含まれ得る。環境センサ52も、体動・姿勢センサや体調センサと同様、被介護者61が着用している衣類に取り付けられるものであってもよいし、いわゆるウェアラブルデバイスとして被介護者61自身に取り付けられるものであってもよい。
【0025】
環境センサ52は、温度、湿度、音量、照度、またはガス濃度などを検出する。ガス濃度の検出対象のガスの種類は、酸素、二酸化炭素、または窒素等の通常の大気中にある成分のガスでもよいし、揮発性有機化合物(VOC、volatileorganic compounds)または窒素酸化物等の有害とされているガスでもよい。また、環境センサ52の検出方式は、どのような方式を採用してもよい。
【0026】
環境センサ52は、被介護者61の環境を示す信号を時系列でクライアント装置3に送信する。環境センサ52は、たとえば、単位期間毎に、1つの単位期間内の時系列の複数の環境を示す信号をクライアント装置3に送信する。あるいは、環境センサ52は、環境を示す信号をリアルタイムでクライアント装置3に送信してもよい。この信号は、その環境が検知された時刻の情報を含んでいてもよい。
【0027】
1台のクライアント装置3は、たとえば1人の被介護者61に関連づけられる。以下では、関連づけられた1人の被介護者61を、対象被介護者61とも称する。対象被介護者61は、その1台のクライアント装置3を使用する介護者62による介護の対象となる被介護者である。
【0028】
クライアント装置3は、複数のセンサ5と連携して、対象被介護者61の身体状態および環境に関するデータをサーバ装置2に送信する。
【0029】
たとえば、クライアント装置3は、身体状態センサ51と連携して、対象被介護者61の身体状態データをサーバ装置2に送信する。身体状態データは、対象被介護者61の時系列の体動、姿勢、体調(心拍数、体温、酸素飽和度など)を示す。身体状態データは、身体状態が検知された時刻を含んでいてもよい。
【0030】
また、クライアント装置3は、環境センサ52と連携して、対象被介護者61の環境データをサーバ装置2に送信する。環境データは、対象被介護者61が居る場所の時系列の環境を示す。環境データは、環境状態が検出された時刻を含んでいてもよい。
【0031】
クライアント装置3は、さらに、介護者62によって入力された情報に基づいて、対象被介護者61の状態に関するデータをサーバ装置2に送信してもよい。クライアント装置3は、たとえば、食事量、または食事時間等の食事に関する食事データを入力できるような機能を有してもよい。クライアント装置3には、対象被介護者61の体調に関連する任意の情報(たとえば、排泄に関連する情報)が入力されてもよい。たとえば、カメラで撮影された画像の解析またはシーツに設置された水分センサ等により、発汗量が入力されてもよい。
【0032】
また、クライアント装置3は、対象被介護者61の介護を支援するための情報をサーバ装置2から受け取る。クライアント装置3は、受け取った情報を介護者62に通知する。
【0033】
クライアント装置3は、さらに、通知された情報に対するフィードバックデータをサーバ装置2に送信してもよい。フィードバックデータは、通知された情報に関する評価を示す。より具体的には、フィードバックのデータは、たとえば、通知された情報が適切であったか否かを介護者62が判断した結果を示す。
【0034】
なお、1台のクライアント装置3は、複数の被介護者61に関連づけられていてもよい。その場合、クライアント装置3は、複数の被介護者61それぞれに対して設けられる複数のセンサ5と連携して、複数の被介護者61それぞれの状態および環境に関するデータをサーバ装置2に送信する。また、クライアント装置3は、複数の被介護者61それぞれの介護を支援するための情報をサーバ装置2から受け取って、その情報を介護者62に通知する。クライアント装置3は、複数の被介護者61のいずれに関する情報であるかを介護者62が認識可能である形態で、情報を通知し得る。クライアント装置3は、情報を、たとえば、対応する被介護者61の名前とともに通知する。
【0035】
また、複数のクライアント装置3が1人の被介護者61に関連づけられていてもよい。複数のクライアント装置3は、たとえば、複数の介護者62がそれぞれ使用する。あるいは、1人の介護者62が、複数のクライアント装置3を使用してもよい。複数のクライアント装置3の内の少なくとも1つのクライアント装置3は、被介護者61に対して設けられる複数のセンサ5と連携して、被介護者61の状態および環境に関するデータをサーバ装置2に送信する。この少なくとも1つのクライアント装置3は、たとえば、センサ5との近距離無線通信が可能な範囲内に位置する。残りのクライアント装置3は、センサ5との近距離通信ができない遠隔に位置していてもよい。また、複数のクライアント装置3それぞれは、被介護者61の育児を支援するための情報をサーバ装置2から受け取って、その情報を介護者62に通知する。これにより、1人の被介護者61の育児を支援するための情報を、複数の介護者62に通知できる。
【0036】
以下では、説明を分かりやすくするために、1台のクライアント装置3が1人の被介護者61に関連づけられている場合について主に例示する。
【0037】
図2は、サーバ装置2のシステム構成例を示すブロック図である。サーバ装置2は、たとえば、セントラルプロセッシングユニット(CPU)21、ランダムアクセスメモリ(RAM)22、記憶装置23、および通信部24を備える。
【0038】
CPU21は、サーバ装置2内の様々なコンポーネントの動作を制御するプロセッサである。
【0039】
RAM22は、揮発性メモリである。RAM22は、たとえばダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)である。RAM22の記憶領域は、たとえば、オペレーティングシステム(OS)221、アプリケーションプログラム(たとえば、介護支援サーバプログラム222)、およびCPU21による処理に用いるデータの格納領域として割り当てられる。
【0040】
記憶装置23は、不揮発性メモリを備えるストレージである。記憶装置23は、たとえば、ソリッドステートドライブ(SSD)またはハードディスクドライブ(HDD)である。記憶装置23は、サーバ装置2の動作を制御するためのプログラムおよびデータを記憶する。記憶装置23は、たとえば、複数の個人データベース231、個人特性テーブル232、介護データベース233、およびグループ情報234を記憶する。
【0041】
複数の個人データベース231は、複数の被介護者61にそれぞれ対応する。複数の個人データベース231の各々は、対応する1人の被介護者61に関するデータ(すなわちパーソナルデータ)を管理するためのデータベースである。1つの個人データベース231は、たとえば、対応する1人の被介護者61の身体状態データ、および環境データを含む。これら以外に、個人データベース231には、介護者62から入力された任意の情報等が含まれてもよい。たとえば、個人データベース231には、サーバ装置2から受信した情報が適切であったか否かを介護者62が判断した結果を示すフィードバックデータが含まれてもよい。
【0042】
個人特性テーブル232は、複数の被介護者61それぞれの属性に関する情報を管理するためのテーブルである。
【0043】
介護データベース233は、複数の被介護者61に関するデータ(すなわちビッグデータ)を管理するためのデータベースである。介護データベース233は、たとえば、複数の個人データベース231を用いた解析結果や、調査や研究により得られた被介護者知見情報を含む。
【0044】
グループ情報234は、被介護者61が分類され得る複数のグループを管理するための情報である。複数のグループは、複数の被介護者61を少なくとも1つの属性を用いて分類することで得られる。分類では、少なくとも1つの属性に基づき、複数の被介護者61がそれぞれ属するグループが決定される。分類には、たとえば、k平均法のようなクラスタリング手法が用いられる。複数のグループの各々には、少なくとも1人の被介護者61が属する。複数の被介護者61の各々は、複数のグループの1つに属する。1つのグループに属する複数の被介護者61は、たとえば、年齢、性別、出生地、居住地、体重、および身長の少なくとも1つが共通する。
【0045】
通信部24は、サーバ装置2と外部との有線通信または無線通信を実行するように構成されたデバイスである。通信部24は、たとえば、クライアント装置3との通信を実行する。通信部24は送信部と受信部とを含む。送信部は信号を送信する。受信部は信号を受信する。
【0046】
次いで、CPU21が実行するプログラムについて説明する。
【0047】
CPU21は、記憶装置23からRAM22にロードされる様々なプログラムを実行する。CPU21が実行するプログラムには、OS221および介護支援サーバプログラム222が含まれる。
【0048】
OS221は、サーバ装置2内の様々なコンポーネントの基本的な動作を制御するためのプログラムである。OS221を実行しているCPU21は、たとえば、入出力、ファイル管理、メモリ管理、および通信を制御する。
【0049】
介護支援サーバプログラム222は、少なくとも1人の被介護者61に対する介護を支援するためのサーバプログラムである。介護支援サーバプログラム222は、たとえば、被介護者61の体調変化に関する通知をするための機能、被介護者61の適正な環境を支援するための機能、被介護者61が排泄した状態であることを通知するための機能、および被介護者61による次の排泄を予告するための機能を有し得る。介護支援サーバプログラム222の機能構成例については、
図8を参照して後述する。以下では、介護支援サーバプログラム222を、単に、サーバプログラム222とも称する。
【0050】
図3は、クライアント装置3のシステム構成例を示すブロック図である。クライアント装置3は、たとえば、CPU31、RAM32、記憶装置33、タッチスクリーンディスプレイ34、第1通信部35、第2通信部36、振動部37、およびスピーカ38を備える。
【0051】
CPU31は、クライアント装置3内の様々なコンポーネントの動作を制御するプロセッサである。
【0052】
RAM32は揮発性メモリである。RAM32は、たとえばDRAMである。RAM32の記憶領域は、たとえば、OS321、アプリケーションプログラム(たとえば、介護支援クライアントプログラム322)、およびCPU31による処理に用いるデータのキャッシュ領域として割り当てられる。
【0053】
記憶装置33は、不揮発性メモリを備えるストレージである。記憶装置33は、たとえば、SSDまたはHDDである。記憶装置33は、クライアント装置3の動作を制御するためのプログラムおよびデータを記憶する。
【0054】
タッチスクリーンディスプレイ34は入出力デバイスである。タッチスクリーンディスプレイ34は、たとえば、液晶ディスプレイ(LCD)とタッチパネルとを備える。タッチスクリーンディスプレイ34は、たとえば、CPU31によって生成された表示信号に基づく画像を、LCDの画面に表示する。
【0055】
タッチパネルは、LCDの上面に配置される。タッチパネルは、LCDの画面上で入力を行うための静電容量式のポインティングデバイスである。タッチパネルは、指が接触する画面上の接触位置および接触位置の動きを検出する。タッチパネルは、検出された接触位置および接触位置の動きを示す信号を、クライアント装置3内の各部(たとえばCPU31)に送出し得る。
【0056】
第1通信部35は、クライアント装置3と外部との有線通信または無線通信を実行するように構成されたデバイスである。第1通信部35は、たとえば、サーバ装置2との通信を実行する。第1通信部35は送信部と受信部とを含む。
【0057】
第2通信部36は、クライアント装置3と外部との有線通信または無線通信を実行するように構成されたデバイスである。第2通信部36は、たとえば、身体状態センサ51および環境センサ52それぞれとの通信を実行する。第2通信部36は送信部と受信部とを含む。
【0058】
振動部37は、振動機構を有する出力デバイスである。振動機構は、たとえば、回転軸に偏心おもりが取り付けられたモータとして実現される。振動部37は、たとえば、CPU31によって生成された信号に基づき、クライアント装置3を振動させる。CPU31によって生成された信号は、振動の大きさ、振動時間、および振動パターンの少なくともいずれかが指定された信号であり得る。
【0059】
スピーカ38は、出力デバイスである。スピーカ38は、たとえば、CPU31によって生成された音声信号に基づく音声を出力する。
【0060】
次いで、CPU31が実行するプログラムについて説明する。
【0061】
CPU31は、記憶装置33からRAM32にロードされる様々なプログラムを実行する。CPU31が実行するプログラムには、OS321および介護支援クライアントプログラム322が含まれる。
【0062】
OS321は、クライアント装置3内の様々なコンポーネントの基本的な動作を制御するためのプログラムである。OS321を実行しているCPU31は、たとえば、入出力、ファイル管理、メモリ管理、通信を制御する。
【0063】
介護支援クライアントプログラム322は、少なくとも1人の被介護者61に対する介護を支援するためのクライアントプログラムである。より詳しくは、介護支援クライアントプログラム322は、センサ5と連携して、被介護者61の身体状態および環境に関するデータをサーバ装置2に送信するための機能と、サーバ装置2から提供された、被介護者61の介護を支援するための情報を介護者62に通知するための機能とを有し得る。また、介護支援クライアントプログラム322は、フィードバックデータをサーバ装置2に送信するための機能を有していてもよい。介護支援クライアントプログラム322の機能構成例については、
図7を参照して後述する。以下では、介護支援クライアントプログラム322を、単に、クライアントプログラム322とも称する。
【0064】
次いで、介護支援システム1において用いられるデータベースおよびテーブルの構成例を説明する。
【0065】
(個人データベース)
図4は個人データベース231の構成例を示す。個人データベース231は、被介護者61の身体状態データおよび環境データを管理するためのデータベースである。個人データベース231は、複数の時刻にそれぞれ対応する複数のエントリを含み得る。複数のエントリの各々は、時刻フィールド、温度フィールド、湿度フィールド、照度フィールド、音量フィールド、ガス濃度フィールド、心拍数フィールド、体温フィールド、酸素飽和度フィールド、排泄フィールド、体動強度フィールド、および体の向きフィールドを含む。
【0066】
ある時刻に対応するエントリにおいて、時刻フィールドは、その時刻を示す。時刻は、たとえば日時で表される。
【0067】
温度フィールドは、対応する時刻に検出された被介護者61の居る場所の温度を示す。温度は、たとえば摂氏で表される。
【0068】
湿度フィールドは、対応する時刻に検出された被介護者61の居る場所の湿度を示す。湿度は、相対湿度でもよいし、絶対湿度でもよい。湿度は、たとえば相対湿度を百分率で表される。
【0069】
照度フィールドは、対応する時刻に検出された被介護者61の居る場所の照度を示す。照度は、たとえばルクス(lx)で表される。
【0070】
音量フィールドは、対応する時刻に検出された被介護者61の居る場所の音量を示す。音量は、たとえばデシベルで表される。
【0071】
ガス濃度フィールドは、対応する時刻に検出された被介護者61の居る場所の、たとえば揮発性有機化合物(VOC)といったガス濃度を示す。ガス濃度は、たとえば百万分率で表される。
【0072】
心拍数フィールドは、対応する時刻に検出された被介護者61の心拍数を示す。心拍数は、たとえば1分間の拍動の数で表される。
【0073】
体温フィールドは、対応する時刻に検出された被介護者61の体温を示す。体温は、たとえば摂氏で表される。
【0074】
酸素飽和度フィールドは、対応する時刻に検出された被介護者61の動脈血の酸素飽和度を示す。酸素飽和度は、たとえば百分率(ヘモグロビンと結合し得る最大の酸素量に対する、実際にヘモグロビンと結合していた酸素量の比)で表される。
【0075】
排泄フィールドは、対応する時刻に検知された被介護者61による排泄を示し得る。対応する時刻に被介護者61による排泄が検知された場合、排泄フィールドには、たとえば「あり」が設定される。対応する時刻に被介護者61による排泄が検知されなかった場合には、排泄フィールドには、たとえば「なし」が設定される。
【0076】
体動強度フィールドは、対応する時刻に検出された被介護者の体動強度を示す。体動強度は、たとえば加速度の大きさが1~3の3段階で表される。
【0077】
体の向きフィールドは、対応する時刻に検出された被介護者の体の向きを示す。対応する時刻に被介護者61が仰向けの状態であることが検知された場合、体の向きフィールドには、たとえば「仰向け」が設定される。対応する時刻に被介護者61が(寝ている状態であって)横向きの状態であることが検知された場合には、体の向きフィールドには、たとえば「横向き」が設定される。対応する時刻に被介護者61が座っている状態であることが検知された場合、体の向きフィールドには、たとえば「座り」が設定される。単位時間内に複数の状態が検知された場合、体の向きフィールドには、当該複数の状態が設定され得る。
【0078】
図4に示す例では、時刻“2021/03/01 08:00”に対して、温度“23℃”、湿度“60%”、照度“100[lx]”、音量“20dB”、ガス濃度“0.05ppm”、心拍数“60”、体温“36.1℃”、酸素飽和度“98%”、排泄“なし”、体動強度“1”、および体の向き“仰向け”が関連づけられている。また、時刻“2021/03/01 09:00”に対しては、温度“25℃”、湿度“70%”、照度“150[lx]”、音量“20dB”、ガス濃度“0.38ppm”、心拍数“60”、体温“36.2℃”、酸素飽和度“98%”、排泄“あり”、体動強度“3”、および体の向き“横向き”が関連づけられている。
【0079】
以下の個人データベース231に関する説明では、時刻フィールドに示される値を、単に、時刻とも称する。個人データベース231の他の各フィールドに示される値、および他のデータベースおよびテーブルの各フィールドに示される値についても同様である。
【0080】
(個人特性テーブル)
図5は個人特性テーブル232の構成例を示す。個人特性テーブル232は、複数の被介護者61それぞれの属性や性質に関する情報を管理するためのテーブルである。個人特性テーブル232は、複数の被介護者61のそれぞれ対応する複数のエントリを含み得る。複数のエントリの各々は、たとえば、被介護者IDフィールド、生年月日フィールド、性別フィールド、要介護程度フィールド、身長フィールド、体重フィールド、およびグループIDフィールドを含む。
【0081】
ある被介護者61に対応するエントリにおいて、被介護者IDフィールドは、その被介護者61に付与された識別情報(被介護者ID)を示す。1つの被介護者IDにより、対応する1人の被介護者61が特定可能である。
【0082】
生年月日フィールドは、対応する被介護者61の生年月日を示す。
【0083】
性別フィールドは、対応する被介護者61の性別を示す。
【0084】
要介護程度フィールドは、対応する被介護者61の要介護程度を示す。
【0085】
身長フィールドは、対応する被介護者61の身長を示す。
【0086】
体重フィールドは、対応する被介護者61の体重を示す。
【0087】
グループIDフィールドは、対応する被介護者61が属するグループに付与された識別情報(グループID)を示す。1つのグループIDにより、対応する1つのグループが特定可能である。
【0088】
(介護データベース)
介護データベース233は、複数の被介護者61に関するデータを管理するためのデータベースである。より詳しくは、介護データベース233では、たとえば、複数の個人データベース231を被介護者61が属するグループ毎に解析して得られた統計値が管理される。また、介護データベース233では、調査や研究により得られた介護知見に基づくデータが管理されてもよい。
【0089】
(学習モデル)
次いで、対象被介護者61の日々の活動パターンを学習し、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をすべきか否かを判定する学習モデル(日常生活パターンモデル)について説明する。
【0090】
図6は、介護支援システム1において用いられる学習モデル75を示す概念図である。サーバ装置2は、対象被介護者61と同一のグループに属する他の1人以上の被介護者61の個人データベース231Aと、対象被介護者61の個人データベース231Bとの少なくとも一方を用いた学習71により、学習モデル75を生成する。学習71は、たとえば、ニューラルネットワークによるモデル化である。学習モデル75は、たとえば、数理モデルまたは物理モデルである。
【0091】
生成される学習モデル75は、対象被介護者61に対応する学習モデルである。サーバ装置2は、複数の被介護者61にそれぞれ対応する複数の学習モデルを生成し得る。
【0092】
サーバ装置2は、対象被介護者61の直近の身体状態データおよび環境データを入力として、学習モデル75を用いることにより、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をすべきか否かを決定する。対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知が、前述の、介護を支援するための情報に相当する。対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をすべき場合とは、たとえば、対象被介護者61の日々の活動パターンと比較して、直近の対象被介護者61の活動パターンが閾値を超えて逸脱している場合である。学習モデル75は、対象被介護者61の体調変化が認められる場合において、その要因が環境にあると推測される場合、環境の改善提案通知をすべきと判定する。
【0093】
さらに、サーバ装置2は、学習モデル75を用いて、次の排泄の予告をしてもよい。たとえば、次の排泄が予測される時間を算出し、排泄の予告に含めてもよい。対象被介護者61による次の排泄が予測される時間を、排泄予測時間とも称する。排泄予測時間は、予想される時刻でもよいし、現在の時刻から、対象被介護者61による排泄が予測される時刻までの時間(たとえば、n分)でもよい。
【0094】
たとえば、サーバ装置2は、たとえば、対象被介護者61と同一のグループに属する他の1人以上の被介護者61の個人データベース231Aを事前の学習データとして用いた学習71により、標準の学習モデル75を生成する。サーバ装置2は、対象被介護者61の直近の身体状態データおよび環境データを入力として、標準の学習モデル75を用いることにより、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をすべきか否かを決定する。なお、サーバ装置2は、対象被介護者61の身体状態データおよび環境データを、対象被介護者61の個人データベース231Bに逐次格納する。
【0095】
次いで、サーバ装置2は、対象被介護者61の個人データベース231Bを更新用の学習データとしてさらに用いた学習71(すなわち再訓練)により、修正された学習モデル75を生成する。サーバ装置2は、対象被介護者61の直近の身体状態データおよび環境データを入力として、修正された学習モデル75を用いることにより、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をすべきか否かを決定する。
【0096】
サーバ装置2は、たとえば、対象被介護者61の個人データベース231Bに、身体状態データまたは環境データが追加されたことに応じて、修正された学習モデル75を生成する。つまり、サーバ装置2は、対象被介護者61の個人データベース231Bを更新用の学習データとして用いた学習71を繰り返し行う。これにより、サーバ装置2は、学習モデル75を、対象被介護者61の特性に、より適したモデルに改良できる。また、学習モデル75は、対象被介護者61の個人データベース231Bに追加されたフィードバックデータに基づいて、修正されてもよい。よって、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をすべきか否かに関する予測精度を向上できる。また、対象被介護者61の排泄予告に関する予測精度を向上できる。なお、標準の学習モデル75を生成する前に、対象被介護者61の身体状態データおよび環境データが、対象被介護者61の個人データベース231Bに格納されている場合、サーバ装置2は、対象被介護者61の個人データベース231Bを事前の学習データとしてさらに用いてもよい。
【0097】
(クライアント装置3の機能構成)
次いで、クライアント装置3の構成を説明する。
【0098】
図7は、クライアント装置3の機能構成例を示すブロック図である。クライアント装置3は、たとえば、第1受信処理部501、送信処理部502、第2受信処理部503、および通知処理部504を備える。第1受信処理部501、送信処理部502、第2受信処理部503、および通知処理部504は、たとえば、クライアントプログラム322を実行することによってCPU31に備わる機能構成である。
【0099】
第1受信処理部501および送信処理部502は、センサ5から受信した信号を用いて、対象被介護者61の状態および環境に関するデータをサーバ装置2に送信するための構成(以下、センサデータ送信のための構成と称する)である。また、第2受信処理部503および通知処理部504は、サーバ装置2から受信した情報を介護者62に通知するための構成(以下、情報通知のための構成と称する)である。センサデータ送信のための構成と、情報通知のための構成とについて、以下にそれぞれ説明する。
【0100】
(センサデータ送信のための構成)
第1受信処理部501は、第2通信部36を介して、身体状態センサ51、および環境センサ52のそれぞれから信号を受信する。第1受信処理部501は、受信した信号を用いて、対象被介護者61の排泄および環境に関するデータを生成する。そして、第1受信処理部501は、生成されたデータを送信処理部502に送出する。
【0101】
より詳しくは、第1受信処理部501は、身体状態センサ51から受信した信号を用いて、身体状態データを生成する。身体状態センサ51から受信した信号に、身体状態が検知された時刻の情報が含まれていない場合、第1受信処理部501は、身体状態が検知された時刻を含む身体状態データを生成してもよい。
【0102】
第1受信処理部501は、環境センサ52から受信した信号を用いて、環境データを生成する。環境センサ52から受信した信号に、検出値(温度等)が検出された時刻の情報が含まれていない場合、第1受信処理部501は、検出値と、その検出値が検出された時刻とを含む環境データを生成してもよい。
【0103】
そして、第1受信処理部501は、身体状態データ、または環境データを送信処理部502に送出する。第1受信処理部501は、身体状態データ、および環境データの組み合わせを、送信処理部502に送出してもよい。
【0104】
送信処理部502は、第1受信処理部501から受け取ったデータを、第1通信部35を介してサーバ装置2に送信する。また、送信処理部502は、タッチパネル等の入力機器を介して、介護者62によって入力された情報(フィードバックデータ等)をサーバ装置2に送信してもよい。
【0105】
(情報通知のための構成)
第2受信処理部503は、第1通信部35を介して、サーバ装置2から介護者62に対する通知に用いられる情報を受信する。介護者62に対する通知に用いられる情報は、たとえば、被介護者61の体調変化に関する通知をするための情報、被介護者61の適正な環境を支援するための情報、被介護者61による次の排泄を予告するための情報である。第2受信処理部503は、受信した情報を通知処理部504に送出する。以下では、被介護者61の体調変化に関する通知をするための情報を、体調変化情報とも称する。被介護者61の適正な環境を支援するための情報を、適正環境支援情報とも称する。被介護者61による次の排泄を予告するための情報を、予告情報とも称する。
【0106】
通知処理部504は、第2受信処理部503から受け取った情報を用いて、介護者62に対する情報の提供を行う。情報の提供には、たとえば、タッチスクリーンディスプレイ34、振動部37、およびスピーカ38の少なくともいずれかが用いられる。
【0107】
たとえば、通知処理部504は、第2受信処理部503から受け取った体調変化情報や適正環境支援情報を用いて、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知を介護者62に対して行う。より詳しくは、通知処理部504は、体調変化情報や適正環境支援情報に基づき、たとえば、体調変化の注意を通知する画像(以下、注意通知画像と称する)や環境の改善提案を通知する画像(以下、提案通知画像と称する)を表示するための表示信号を生成する。通知処理部504は、生成された表示信号を、タッチスクリーンディスプレイ34に送出する。タッチスクリーンディスプレイ34は、受け取った表示信号に基づき、注意通知画像や提案通知画像を画面に表示する。介護者62は、表示された注意通知画像や提案通知画像を見ることで、対象被介護者61の体調変化の注意や環境の改善提案が通知されたことを認識できる。
【0108】
また、通知処理部504は、注意通知情報や適正環境支援情報に基づき、振動を要求する信号を振動部37に送出してもよい。振動部37は、受け取った信号に基づき、クライアント装置3を振動させる。クライアント装置3を振動させることにより、画面に表示された注意通知画像や提案通知画像の確認を介護者62に促すことができる。この振動は、特定の振動パターンを有していてもよい。介護者62は、クライアント装置3が特定の振動パターンで振動したことにより、対象被介護者61の体調変化の注意や環境の改善提案が通知されたことを認識できる。
【0109】
さらに、通知処理部504は、注意通知情報や適正環境支援情報に基づき、体調変化の注意や環境の改善提案を通知するための音声信号をスピーカ38に送出してもよい。スピーカ38は、受け取った音声信号に基づく音声を出力する。この音声は、特定のメッセージが発声された音であってもよいし、アラート音であってもよい。介護者62は、音声により、対象被介護者61の体調変化の注意や環境の改善提案が通知されたことを認識できる。あるいは、音声により、画面に表示された注意通知画像や提案通知画像の確認を介護者62に促すことができる。
【0110】
また、通知処理部504は、予告情報を受け取った場合においても、注意通知情報や適正環境支援情報を受け取った場合と同様、対象被介護者61による次の排泄を介護者62に予告する。
【0111】
以上の構成により、クライアント装置3は、センサ5から受信した信号を用いて、対象被介護者61の身体状態および環境に関するデータをサーバ装置2に送信できる。クライアント装置3は、サーバ装置2から受信した情報を介護者62に通知できる。また、クライアント装置3は、通知された情報に対するフィードバックデータをサーバ装置2に送信できる。
【0112】
(サーバ装置2の機能構成)
次いで、サーバ装置2の機能構成を説明する。
【0113】
図8は、サーバ装置2の機能構成例を示すブロック図である。サーバ装置2は、たとえば、格納処理部401、グループ決定部402、学習部403、判定部404、生成部405、および送信処理部406を備える。格納処理部401、グループ決定部402、学習部403、判定部404、生成部405、および送信処理部406は、たとえば、サーバプログラム222を実行することによってCPU21に備わる機能構成である。
【0114】
格納処理部401は、通信部24を介して、被介護者61の身体状態および環境に関するデータ(センサデータ)をクライアント装置3から受信する。受信されたデータは、身体状態データ、および環境データの少なくともいずれか含む。格納処理部401は、受信されたデータを用いて、被介護者61に対応する個人データベース231を更新する。
【0115】
より詳しくは、格納処理部401は、たとえば、ある被介護者61に関連づけられたクライアント装置3から、ある時刻に対応する身体状態データ、および環境データを受信した場合、その時刻と、身体状態データに示される身体状態と、環境データに示される環境を含むエントリを生成する。そして、格納処理部401は、生成されたエントリを、その被介護者61に対応する個人データベース231に追加する。
【0116】
グループ決定部402は、グループ情報234と個人特性テーブル232とを用いて、対象被介護者61が属するグループを決定する。より詳しくは、グループ決定部402は、個人特性テーブル232において、対象被介護者61に対応するエントリを特定する。そして、グループ決定部402は、特定されたエントリに示される少なくとも1つの属性と、グループ情報234とを用いて、対象被介護者61が属する1つのグループを決定する。グループ決定部402は、決定されたグループを示すグループIDを、学習部403および生成部405に送出する。
【0117】
学習部403は、対象被介護者61の日々の活動パターンを学習し、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をすべきか否かを判定する学習モデル(日常生活パターンモデル)75を生成する。学習部403は、グループ決定部402から受け取ったグループIDを用いて、そのグループIDで特定されるグループに属する他の1人以上の被介護者61の個人データベース231Aと、対象被介護者61の個人データベース231Bの少なくとも一方を用いて、学習モデル75を生成する。個人データベース231A,231Bの各々は、身体状態データ、および環境データの少なくともいずれかを含んでいる。
【0118】
判定部404は、学習部403によって送出された学習モデル75を用いて、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をするか否かを判定する。判定部404は、たとえば、対象被介護者61の現在の身体状態を示す身体状態データおよび環境を示す環境データを入力として、学習モデル75を用いることにより、対象被介護者61の体調や環境を判定し、注意通知や提案通知をすべきか否かを判定する。判定部404は対象被介護者61による次の排泄が予測される時間(排泄予測時間)を算出して、排泄予告をしてもよい。
【0119】
判定部404は、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をすべきであるという判定をした場合、生成部405に判定結果を送出する。また、判定部404は、排泄予測時間を含む排泄予告を生成部405に送出してもよい。
【0120】
生成部405は、介護者62に提供される情報を生成する。より詳しくは、生成部405は、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をすべきであるという判定部404による判定結果に基づき、対象被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知をするための注意通知情報または改善提案情報を生成する。また、生成部405は、排泄予告をするための予告情報を生成する。そして、生成部405は、生成された注意通知情報、改善提案情報または予告情報を送信処理部406に送出する。
【0121】
次いで、
図9~
図12を参照して、介護支援システム1における対象被介護者61の体調変化の注意通知または環境の改善提案通知の例について説明する。
【0122】
(第1例)
図9は、介護支援システム1における対象被介護者61の体調変化の注意通知または環境の改善提案通知の第1例を示す図である。
【0123】
図9に示す第1例では、時刻“2021/07/03 09:00”において、排泄“あり”が検知された結果、「おむつ交換」との通知が行われている。一方、時刻“2021/07/03 11:00”においては、排泄“なし”が検知されているが、被介護者61の日々の活動パターンからは、時刻“2021/07/03 11:00”での排泄が予測されるものとする。また、学習モデル75は、この予測に反して、排泄“なし”が検知されている原因を、被介護者61の日々の活動パターンから、(普段よりも高い)温度“28℃”、湿度“80%”にあると判定したものとする。その結果、「温湿度を下げる」との通知が行われている。
【0124】
これにより、介護者62は、たとえばエア・コンディショナーを操作して温湿度を下げるべきであることに気づくことができる。
【0125】
(第2例)
図10は、介護支援システム1における対象被介護者61の体調変化の注意通知または環境の改善提案通知の第2例を示す図である。
【0126】
図10に示す第2例では、時刻“2021/08/05 11:00”において、被介護者61の日々の活動パターンから、学習モデル75により、温度“28℃”、湿度“80%”が(普段よりも高い)不適切な値であると判定されている。その結果、「温湿度を下げる」との通知が行われている。前述の第1例では、排泄が予測される時刻において排泄がないことから、その原因として温湿度の異常が通知されるに至っているが、環境の改善提案通知は、この第2例のように、必ずしも被介護者61の体調変化に伴って行われるものでなくともよい。
【0127】
また、第2例では、時刻“2021/08/05 20:00”において、被介護者61の日々の活動パターンから、学習モデル75により、就寝時間帯だが体動強度“3”と高い値が検知されており、その原因が、(普段よりも高い)照度“150[lx]”にあると判定されている。その結果、「照度暗く」との通知が行われている。
【0128】
このように、介護支援システム1は、被介護者61にとって就寝に適した照度を介護者62へ提案することができる。
【0129】
(第3例)
図11は、介護支援システム1における対象被介護者61の体調変化の注意通知または環境の改善提案通知の第3例を示す図である。
【0130】
図11に示す第3例では、時刻“2021/11/17 09:00”において、排泄“あり”が検出され、かつ、体の向き“横向き”が検出された結果、「おむつ交換」との通知が行われている。前述の第1例では、排泄“あり”が検出されたことで、「おむつ交換」との通知が行われていたが、吸収性物品(おむつ)の中には、複数回の排泄に対応できるものも存在する。複数回の排泄に対応できる吸収性物品を装着しており、許容回数以内の排泄であるならば、「おむつ交換」が不要である場合も考えられる。
【0131】
その一方で、複数回の排泄に対応できる吸収性物品を装着しており、許容回数以内の排泄であったとしても、排泄物のもれが起きやすい姿勢が取られた場合においては、吸収性物品を交換することが好ましい。そこで、この第3例では、学習モデル75は、排泄“あり”が検出され、かつ、体の向き“横向き”が検出された場合、排泄物のもれが起きる可能性が高いと判定し、「おむつ交換」との通知を行うことを決定している。
【0132】
また、第3例では、時刻“2021/11/17 11:00”において、安静状態を示す体動強度“1”が検出されているにも関わらず、心拍数“80”と高い値が検出されている。この状況に対して、学習モデル75は、温度“28℃”、湿度“80%”が(普段よりも高い)不適切な値であると判定し、「温湿度を下げる」との通知を行うことを決定している。
【0133】
なお、時刻“2021/11/17 20:00”における、体動強度“3”、照度“150[lx]”の検出に伴う、「寝返り多い 照度暗く」との通知は、第2例で説明した通りである。
【0134】
続いて、
図12を参照して、介護支援システム1による通知例をさらに説明する。
【0135】
たとえば、“日中”の時間帯において、温度“高い”、湿度“高い”、排泄“少ない”との状況が検知された場合、被介護者61の要介護程度が“低い”ならば、介護支援システム1は、「部屋の温湿度が高い」と判定し、「脱水に注意 部屋の温度を下げ水分補給を」といった通知を行う。
【0136】
なお、ここで、たとえば温度の“高い”、“低い”は、被介護者61の日々の活動パターンを学習する学習モデル75による判定結果であり、被介護者61が異なれば、同じ温度であっても、異なる結果が導き出される可能性は十分にあり得る。
【0137】
また、たとえば、“日中”の時間帯において、温度“高い”、湿度“高い”、心拍数“高い”との状況が検知された場合、介護支援システム1は、「部屋の温湿度が高い」と判定し、「体に負担がかかっています 部屋の温湿度を下げて」といった通知を行う。
【0138】
また、たとえば、“日中”の時間帯において、温度“低い”、湿度“低い”、心拍数“高い”、体動強度“高い”との状況が検知された場合、被介護者61の要介護程度が“低い”ならば、介護支援システム1は、「運動中」と判定し、「通知なし」を決定する。なお、「通知なし」とは、必ずしも通知を行わないことであるとは限らない。たとえば、異常がないことを通知することも含まれ得る。異常がないことを通知することで、介護者62に安心感を与えたり、介護支援システム1が稼働していることを認識させたりすることができる。
【0139】
また、たとえば、“夜間”の時間帯において、温度“高い”、湿度“高い”、排泄“正常”、体動強度“高い”との状況が検知された場合、介護支援システム1は、「部屋の温湿度が高い」と判定し、「寝苦しくなっています 部屋の温湿度を下げて」といった通知を行う。
【0140】
また、たとえば、“夜間”の時間帯において、照度“高い”、体動強度“高い”との状況が検知された場合、介護支援システム1は、「部屋の照度が高い」と判定し、「睡眠中の部屋があかるく中途覚醒 部屋の照明を下げて」といった通知を行う。
【0141】
また、たとえば、“夜間”の時間帯において、温度“低い”、排泄“多い”、体動強度“高い”との状況が検知された場合、介護支援システム1は、「部屋の温度が低い」と判定し、「寒い 部屋の温度を上げて」といった通知を行う。
【0142】
また、たとえば、“夜間”の時間帯において、温度“低い”、湿度“低い”、排泄“多い”、体動強度“高い”との状況が検知された場合、介護支援システム1は、「乾燥して風邪をひきやすい 湿度を上げて」といった通知を行う。
【0143】
また、たとえば、“前回の体位交換時刻から一定時間(α)が経過”している時刻において、温度“高い”、湿度“高い”、心拍数“高い”、排泄“少ない”との状況が検知された場合、被介護者61の要介護程度が“高い”ならば、介護支援システム1は、「室温が高く汗をかきやすい 体位交換を」といった通知を行う。なお、体位交換時刻は、たとえば介護者62からのフィードバックによって取得され得る。
【0144】
次いで、
図13および
図14を参照して、サーバ装置2において実行される処理の手順について説明する。
【0145】
(モデル生成処理)
図13は、サーバ装置2のCPU21によって実行されるモデル生成処理の手順の例を示すフローチャートである。モデル生成処理は、対象被介護者61の学習モデル(日常生活パターンモデル)75を生成するための処理である。CPU21は、たとえば、対象被介護者61に対応するエントリが個人特性テーブル232に追加された場合に、モデル生成処理を実行する。あるいは、CPU21は、対象被介護者61に対応する個人データベース231に、特定の期間分の身体状態データ、および環境データが格納(蓄積)された場合に、モデル生成処理の実行を開始してもよい。
【0146】
まず、CPU21は、個人特性テーブル232において、対象被介護者61に対応するエントリを特定する(ステップS101)。特定されたエントリは、対象被介護者61に関する少なくとも1つの属性を示す情報を含む。CPU21は、特定されたエントリとグループ情報234とを用いて、対象被介護者61が属するグループを決定する(ステップS102)。より詳しくは、CPU21は、グループ情報234によって示される複数のグループのいずれに、対象被介護者61が属するかを決定する。そして、CPU21は、決定されたグループに属する他の被介護者61の個人データベース231を用いた学習により、対象被介護者61の日々の活動パターンを表す日常生活パターンモデルを生成する(ステップS103)。生成される日常生活パターンモデルは、対象被介護者61が属するグループに対応する標準の日常生活パターンモデルである。なお、CPU21は、グループ毎の標準の日常生活パターンモデルを、たとえば、対象被介護者61がサーバ装置2に登録されるよりも前に予め生成していてもよい。また、CPU21は、日常生活パターンモデルを生成するための学習に、対象被介護者61の個人データベース231をさらに用いてもよい。あるいは、CPU21は、対象被介護者61の個人データベース231のみを用いた学習により、日常生活パターンモデルを生成してもよい。
【0147】
次いで、CPU21は、現在の日常生活パターンモデルが生成されてから単位時間が経過したか否かを判定する(ステップS104)。単位時間は、たとえば、1日、数日、1週間、1か月等である。現在の日常生活パターンモデルが生成されてから単位時間が経過した場合(ステップS104のYES)、CPU21は、対象被介護者61の個人データベース231から、その単位時間分の身体状態データ、および環境データを取得する(ステップS105)。そして、CPU21は、取得された単位時間分の身体状態データ、および環境データを用いて、修正された日常生活パターンモデルを生成する(ステップS106)。つまり、CPU21は、対象被介護者61の単位時間分の身体状態データ、および環境データを用いて、現在の日常生活パターンモデルを修正する。
【0148】
現在の日常生活パターンモデルが生成されてから単位時間が経過していない場合(ステップS104のNO)、CPU21による処理はステップS104の手順に戻る。つまり、CPU21は、現在の日常生活パターンモデルを修正するための十分なデータが対象被介護者61の個人データベース231にまだ格納されていないので、ステップS104の手順に戻る。
【0149】
以上のモデル生成処理により、CPU21は、対象被介護者61の日常生活パターンモデルを生成できる。また、CPU21は、対象被介護者61の身体状態データ、および環境データがさらに得られた場合、生成された日常生活パターンモデルを修正できる。修正された日常生活パターンモデルは、対象被介護者61の特性に、より適したモデルになる。
【0150】
(通知処理)
図14は、サーバ装置2のCPU21によって実行される通知処理の手順の例を示すフローチャートである。通知処理は、対象被介護者61の体調変化や環境の改善提案を介護者62に通知するための処理である。
【0151】
CPU21は、時間情報を取得する(ステップS201)。また、CPU21は、被介護者61の身体状態データおよび環境データを入力する(ステップS202)。
【0152】
CPU21は、身体状態データに基づき、排泄に関して通知すべき事象があるか否かを判定する(ステップS203)。排泄に関して通知すべき事象には、排泄が行われたことのほか、あるべき排泄が行われていないことも含まれる。排泄に関して通知すべき事象があった場合(ステップS203のYES)、CPU21は、排泄に関する警告を通知する(ステップS204)。
【0153】
また、CPU21は、身体状態データに基づき、体動・姿勢に関して通知すべき事象があるか否かを判定する(ステップS205)。体動・姿勢に関して通知すべき事象としては、たとえば寝返りが多いといったことが挙げられる。体動・姿勢に関して通知すべき事象があった場合(ステップS205のYES)、CPU21は、体動・姿勢に関する警告を通知する(ステップS206)。
【0154】
また、CPU21は、身体状態データに基づき、生体情報に関して通知すべき事象があるか否かを判定する(ステップS207)。生体情報に関して通知すべき事象としては、体温が高い、心拍数が高い、などが挙げられる。生体情報に関して通知すべき事象があった場合(ステップS207のYES)、CPU21は、生体情報に関する警告を通知する(ステップS208)。
【0155】
CPU21は、排泄、体動・姿勢、および生体情報について、通知すべき事象が検出されたか否かを判定する(ステップS209)。検出されない場合(ステップS209のNO)、CPU21は、異常がないことを通知する(ステップS210)。
【0156】
一方、通知すべき事象が検出された場合には(ステップS209のYES)、CPU21は、環境データに基づき、環境が適正か否かを判定する(ステップS211)。CPU21は、ステップS211の判定結果に基づき、環境に関するアドバイスを通知する(ステップS212)。
【0157】
なお、ステップS203、S205、S207の判定は、モデル生成処理で生成される学習モデル(日常生活パターンモデル)75を用いて行われる処理であり、これらは順番を入れ替えて行われてもよいし、並列に行われてもよい。
【0158】
また、排泄、体動・姿勢、および生体情報について、通知すべき事象が検出されない場合(ステップS209のNOの場合)においても、CPU21は、環境データに基づき、環境が適正か否かを判定し、環境に関するアドバイスを通知してもよい。つまり、前述したように、環境に関するアドバイスの通知は、必ずしも被介護者61の体調変化に伴って行われるものでなくともよい。
【0159】
以上のように、本実施形態の介護支援システム1においては、被介護者61の日々の活動パターンを学習することで、被介護者61の体調変化の注意通知や環境の改善提案通知を介護者62に対して適時かつ適切に行うことができる。また、日々の活動パターンの学習を継続的に行うことで、被介護者61の経時的変化にも追従することができる。
【0160】
さらに、本実施形態の介護支援システム1は、被介護者61の日々の活動パターンの学習を継続的に行っていく上で、その日々の活動パターンの推移を解析して、たとえば被介護者61の要介護程度の変化を判定するようにしてもよい。
【0161】
本発明を実施するに当たり、上記の実施形態は一例であり、具体的な態様を種々に変更して実施できる。たとえば、介護支援システム1は、サーバ装置2とクライアント装置3とを含む構成に限定されず、被介護者61の状態に関するデータを解析して、介護を支援するための情報を介護者62に提供できる構成であれば、いずれの構成であってもよい。たとえば、介護支援システム1は、1台の情報処理装置(たとえば、スタンドアロンのコンピュータ、スマートフォン)で実現されてもよい。つまり、1台の情報処理装置が、前述したサーバ装置2およびクライアント装置3に相当する機能を有していてもよい。この場合、情報処理装置(たとえば、クライアント装置3)による各種の処理結果を示す情報は、別の情報処理装置(たとえば、サーバ装置2)に送信されてもよい。その別の情報処理装置は、送信された情報を、たとえば、他の被介護者61に対する介護支援システム1に利用できる。あるいは、たとえば、サーバ装置2の機能の一部を、クライアント装置3が有するようにしてもよい。
【0162】
上記の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
<1>
サーバ装置とクライアント装置とがネットワークを介して接続される介護支援システムであって、
前記クライアント装置は、
被介護者の身体状態を検知する身体状態センサによって取得される前記被介護者の身体情報と、前記被介護者が居る場所の環境状態を検知する環境センサによって取得される前記被介護者の環境情報とを前記サーバ装置に送信する被介護者情報送信手段と、
前記被介護者が居る場所の環境状態の適否に関する環境適正情報を前記サーバ装置から受信する環境適正情報受信手段と、を具備し、
前記サーバ装置は、
前記クライアント装置から受信した前記身体情報および前記環境情報を、時刻情報と関連づけて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記身体情報に基づき、前記被介護者の身体状態が良好か否かを判定する身体状態判定手段と、
前記身体状態判定手段による前記被介護者の身体状態の判定結果と、前記記憶手段に記憶されている前記身体情報および前記環境情報とに基づき、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する環境適正判定手段と、
前記環境適正判定手段による前記被介護者が居る場所の環境状態の判定結果を含む前記環境適正情報を生成する環境適正情報生成手段と、
前記環境適正情報生成手段によって生成された前記環境適正情報を前記クライアント装置に送信する環境適正情報送信手段と、を具備する
介護支援システム。
<2>
前記環境情報は、温度、湿度、音量、照度、またはガス濃度の少なくとも1つを含む<1>に記載の介護支援システム。
<3>
前記身体情報は、少なくとも排泄有無を含む<1>または<2>に記載の介護支援システム。
<4>
前記身体情報は、体動または姿勢の少なくとも1つを含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の介護支援システム。
<5>
前記身体情報は、心拍数、呼吸数、体温、血圧、酸素飽和度、または発汗の少なくとも1つを含む請求項<1>~<4>のいずれか1つに記載の介護支援システム。
<6>
前記環境適正情報は、前記被介護者が居る場所の環境状態の中の適正ではない環境に関する情報、または前記被介護者が居る場所の環境状態を適正にするための情報の少なくとも1つを含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の介護支援システム。
<7>
前記サーバ装置は、前記身体状態判定手段による前記被介護者の身体状態の判定結果と、前記記憶手段に記憶されている前記身体情報とに基づき、前記被介護者の体調変化を検知する体調変化判定手段を具備する請求項<1>~<6>のいずれか1つに記載の介護支援システム。
<8>
前記サーバ装置は、前記身体状態判定手段による前記被介護者の身体状態の判定結果に基づき、前記被介護者の要介護の程度の変化を検知する要介護程度変化検知手段を具備する請求項<1>~<7>のいずれか1つに記載の介護支援システム。
<9>
前記クライアント装置は、前記サーバ装置から受信した前記環境適正情報を用いて、前記被介護者が居る場所の環境状態が前記被介護者にとって快適な状態か否かを通知する通知手段を具備する請求項<1>~<8>のいずれか1つに記載の介護支援システム。
<10>
前記サーバ装置は、前記記憶手段に記憶されている前記身体情報および前記環境情報を用いた学習により、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する判定モデルを生成する学習手段を具備し、
前記環境適正判定手段は、前記判定モデルを用いて、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する、
<1>~<9>のいずれか1つに記載の介護支援システム。
<11>
前記学習手段は、前記被介護者の排泄周期を学習し、前記被介護者の排泄が適切なタイミングで行われているか否かを判定する前記判定モデルを生成し、
前記身体状態判定手段は、前記判定モデルを用いて、前記被介護者の身体状態が良好か否かの判定の一環として、前記被介護者の排泄が適切なタイミングで行われているか否かを判定する、
<10>に記載の介護支援システム。
<12>
被介護者の身体状態を検知する身体状態センサによって取得される前記被介護者の身体情報と、前記被介護者が居る場所の環境状態を検知する環境センサによって取得される前記被介護者の環境情報とを、時刻情報と関連づけて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記身体情報に基づき、前記被介護者の身体状態が良好か否かを判定する身体状態判定手段と、
前記身体状態判定手段による前記被介護者の身体状態の判定結果と、前記記憶手段に記憶されている前記身体情報および前記環境情報とに基づき、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する環境適正判定手段と、
前記環境適正判定手段による前記被介護者が居る場所の環境状態の判定結果を含む環境適正情報を生成する環境適正情報生成手段と、
を具備する情報処理装置。
<13>
前記環境情報は、温度、湿度、音量、照度、またはガス濃度の少なくとも1つを含む<12>に記載の情報処理装置。
<14>
前記身体情報は、少なくとも排泄有無を含む<12>または<13>に記載の情報処理装置。
<15>
前記身体情報は、体動または姿勢の少なくとも1つを含む請求項<12>~<14>のいずれか1つに記載の情報処理装置。
<16>
前記身体情報は、心拍数、呼吸数、体温、血圧、酸素飽和度、または発汗の少なくとも1つを含む<12>~<15>のいずれか1つに記載の情報処理装置。
<17>
前記環境適正情報は、前記被介護者が居る場所の環境状態の中の適正ではない環境に関する情報、または前記被介護者が居る場所の環境状態を適正にするための情報の少なくとも1つを含む<12>~<16>のいずれか1つに記載の情報処理装置。
<18>
前記身体状態判定手段は、前記記憶手段に記憶されている前記身体情報に基づき、前記被介護者の体調変化を検知する請求項<12>~<17>のいずれか1つに記載の情報処理装置。
<19>
前記身体状態判定手段による前記被介護者の身体状態の判定結果に基づき、前記被介護者の要介護の程度の変化を検知する要介護程度変化検知手段を具備する<12>~<18>のいずれか1つに記載の情報処理装置。
<20>
前記環境適正情報を用いて、前記被介護者が居る場所の環境状態が前記被介護者にとって快適な状態か否かを通知する通知手段を具備する<12>~<19>のいずれか1つに記載の情報処理装置。
<21>
前記記憶されている前記身体情報および前記環境情報を用いた学習により、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する判定モデルを生成する学習手段を具備し、
前記環境適正判定手段は、前記判定モデルを用いて、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する、
<12>~<20>のいずれか1つに記載の情報処理装置。
<22>
前記学習手段は、前記被介護者の排泄周期を学習し、前記被介護者の排泄が適切なタイミングで行われているか否かを判定する前記判定モデルを生成し、
前記身体状態判定手段は、前記判定モデルを用いて、前記被介護者の身体状態が良好か否かの判定の一環として、前記被介護者の排泄が適切なタイミングで行われているか否かを判定する、
<21>に記載の情報処理装置。
<23>
被介護者の身体状態を検知する身体状態センサによって取得される前記被介護者の身体情報と、前記被介護者が居る場所の環境状態を検知する環境センサによって取得される前記被介護者の環境情報とを、時刻情報と関連づけて記憶することと、
前記記憶した前記身体情報に基づき、前記被介護者の身体状態が良好か否かを判定することと、
前記被介護者の身体状態の判定結果と、前記記憶した前記身体情報および前記環境情報とに基づき、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定することと、
前記被介護者が居る場所の環境状態の判定結果を含む環境適正情報を生成することと、を含む
介護支援方法。
<24>
前記環境情報は、温度、湿度、音量、照度、またはガス濃度の少なくとも1つを含む<23>に記載の介護支援方法。
<25>
前記身体情報は、少なくとも排泄有無を含む<23>または<24>に記載の介護支援方法。
<26>
前記身体情報は、体動または姿勢の少なくとも1つを含む<23>~<25>のいずれか1つに記載の介護支援方法。
<27>
前記身体情報は、心拍数、呼吸数、体温、血圧、酸素飽和度、または発汗の少なくとも1つを含む<22>~<25>のいずれか1つに記載の介護支援方法。
<28>
前記環境適正情報は、前記被介護者が居る場所の環境状態の中の適正ではない環境に関する情報、または前記被介護者が居る場所の環境状態を適正にするための情報の少なくとも1つを含む<22>~<27>のいずれか1つに記載の介護支援方法。
<29>
前記記憶されている前記身体情報に基づき、前記被介護者の体調変化を検知する<22>~<27>のいずれか1つに記載の介護支援方法。
<30>
前記被介護者の身体状態の判定結果に基づき、前記被介護者の要介護の程度の変化を検知することを具備する<22>~<28>のいずれか1つに記載の介護支援方法。
<31>
前記環境適正情報を用いて、前記被介護者が居る場所の環境状態が前記被介護者にとって快適な状態か否かを通知することを具備する<22>~<30>のいずれか1つに記載の介護支援方法。
<32>
前記身体情報および前記環境情報を用いた学習により、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定する判定モデルを生成することと、
前記判定モデルを用いて、前記被介護者が居る場所の環境状態が適正か否かを判定することと、
を具備する<22>~<31>のいずれか1つに記載の介護支援方法。
<33>
前記被介護者の排泄周期を学習し、前記被介護者の排泄が適切なタイミングで行われているか否かを判定する前記判定モデルを生成すること、
前記判定モデルを用いて、前記被介護者の身体状態が良好か否かの判定の一環として、前記被介護者の排泄が適切なタイミングで行われているか否かを判定することと、
を具備する<32>に記載の介護支援方法。
【符号の説明】
【0163】
1 介護支援システム
2 サーバ装置
21 CPU
22 RAM
221 OS
222 介護支援サーバプログラム
23 記憶装置
231 個人データベース
231A 同一グループに属する他の被介護者の個人データベース
231B 対象被介護者の個人データベース、
232 個人特性テーブル
233 介護データベース
234 グループ情報
24 通信部
3 クライアント装置
31 CPU
32 RAM
321 OS
322 介護支援クライアントプログラム
33 記憶装置
34 タッチスクリーンディスプレイ
35 第1通信部
36 第2通信部
37 振動部
38 スピーカ
4 ネットワーク
5 センサ
51 身体状態センサ
52 環境センサ
61 被介護者
62 介護者
62 育児者
71学習
75 学習モデル
401 格納処理部
402 グループ決定部
403 学習部
404 判定部
405 生成部
406 送信処理部
501 第1受信処理部
502 送信処理部
503 第2受信処理部
504 通知処理部