(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098250
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】形成支援システム、形成支援方法及び形成支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B28B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001638
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大川 悠奈
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】北村 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】石関 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】山下 力蔵
(72)【発明者】
【氏名】宍倉 知広
(72)【発明者】
【氏名】三城 健一
【テーマコード(参考)】
4G052
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】効率的に構造物を形成するための形成支援システム、形成支援方法及び形成支援プログラムを提供する。
【解決手段】作成支援サーバ40は、ノズルを移動させながらノズルから吐出される造形材で形成される層を積み上げることにより、ノード間を結ぶリンクからなるレイヤを積層させた構造物を形成する吐出経路を生成する制御部を備える。制御部41は、先行リンクにおいて、下位階層を形成する第1吐出経路を生成し、先行リンクにおいて、下位階層の上側の上位階層を形成する第2吐出経路を生成する。制御部41は、先行リンクに繋がる後続リンクにおいて、第2吐出経路に繋がる下位階層を形成する第3吐出経路を生成し、第1吐出経路、第2吐出経路及び第3吐出経路を組み合わせて一巡の吐出経路を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出される造形材で形成される層を積み上げることにより、ノード間を結ぶリンクからなるレイヤを積層させた構造物を形成する吐出経路を生成する制御部を備えたシステムであって、
前記制御部が、
先行リンクにおいて、下位階層を形成する第1吐出経路を生成し、
前記先行リンクにおいて、前記下位階層の上側の上位階層を形成する第2吐出経路を生成し、
前記先行リンクに繋がる後続リンクにおいて、前記第2吐出経路に繋がる前記下位階層を形成する第3吐出経路を生成し、
前記第1吐出経路、前記第2吐出経路及び前記第3吐出経路を組み合わせて一巡の吐出経路を生成することを特徴とする形成支援システム。
【請求項2】
前記制御部が、複数のリンクが接続された分岐ノードにおいて、下位階層の吐出経路が生成されていないリンクにおいて、前記第3吐出経路を生成することを特徴とする請求項1に記載の形成支援システム。
【請求項3】
ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出される造形材で形成される層を積み上げることにより、ノード間を結ぶリンクからなるレイヤを積層させた構造物を形成する吐出経路を生成する制御部を備えたシステムを用いて、構造物の形成を支援する方法であって、
前記制御部が、
先行リンクにおいて、下位階層を形成する第1吐出経路を生成し、
前記先行リンクにおいて、前記下位階層の上側の上位階層を形成する第2吐出経路を生成し、
前記先行リンクに繋がる後続リンクにおいて、前記第2吐出経路に繋がる前記下位階層を形成する第3吐出経路を生成し、
前記第1吐出経路、前記第2吐出経路及び前記第3吐出経路を組み合わせて一巡の吐出経路を生成することを特徴とする形成支援方法。
【請求項4】
ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出される造形材で形成される層を積み上げることにより、ノード間を結ぶリンクからなるレイヤを積層させた構造物を形成する吐出経路を生成する制御部を備えたシステムを用いて、構造物の形成を支援するプログラムであって、
前記制御部を、
先行リンクにおいて、下位階層を形成する第1吐出経路を生成し、
前記先行リンクにおいて、前記下位階層の上側の上位階層を形成する第2吐出経路を生成し、
前記先行リンクに繋がる後続リンクにおいて、前記第2吐出経路に繋がる前記下位階層を形成する第3吐出経路を生成し、
前記第1吐出経路、前記第2吐出経路及び前記第3吐出経路を組み合わせて一巡の吐出経路を生成する手段として機能させることを特徴とする形成支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動するノズルから吐出される造形材を積層させて形成する構造物の形成支援システム、形成支援方法及び形成支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の立体の構造物を形成する場合、3次元(3D)プリンタを利用することがある。この3Dプリンタにおいては、ノズルから材料を吐出させながらノズルを移動させて各レイヤを形成する。そして、各レイヤを積み重ねることにより立体形状を有する構造物を形成する。このような3Dプリンタを用いて製造する構造物を効率的に設計するための技術が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の設計システムの制御部は、取得した分割位置に応じて新規ノードを特定する。そして、新規ノードを結ぶ線によって図形を分割することにより閉図形を生成して図形情報を生成する。これにより、一筆書きの経路を有する構造物を設計する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この3Dプリンタを用いて、構造物をレイヤ毎に形成して積層する場合、各レイヤの経路が一筆書きできることが条件となる。一筆書きができるためには、以下の条件を満たす必要がある。
【0005】
条件(1)すべての頂点が、辺の本数が偶数になる偶点であること。
条件(2)すべての頂点の中で、辺の本数が奇数になる奇点は2つだけであること。それ以外はすべて偶点であること。
上記2つの条件を満たさない場合、各レイヤを1本の巡回経路(一筆書き)により構造物を形成することができない。例えば、平面視でH形状の場合、同じレイヤで、縦と横とを分けて形成する必要がある。この場合、モルタルの吐出の中断等が必要になる。ここで、モルタルの吐出量を変更するためのポンプの制御は困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する形成支援システムは、ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出される造形材で形成される層を積み上げることにより積層させた構造物を形成する吐出経路を生成する制御部を備える。そして、前記制御部は、先行リンクにおいて、下位階層を形成する第1吐出経路を生成し、前記先行リンクにおいて、前記下位階層の上側の上位階層を形成する第2吐出経路を生成し、前記先行リンクに繋がる後続リンクにおいて、前記第2吐出経路に繋がる前記下位階層を形成する第3吐出経路を生成し、前記第1吐出経路、前記第2吐出経路及び前記第3吐出経路を組み合わせて一巡の吐出経路を生成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効率的に構造物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における形成支援システムの構造の説明図である。
【
図3】実施形態におけるハードウェア構成の説明図である。
【
図5】実施形態における吐出経路生成処理の説明図であって、(a)は吐出経路R11、(b)は吐出経路R21、(c)は吐出経路R12の生成の説明図である。
【
図6】実施形態における吐出経路生成処理の説明図であって、(a)は吐出経路R22、(b)は吐出経路R13,R14,R24、(c)は吐出経路R15,R25,R23の生成の説明図である。
【
図7】実施形態における積層処理の説明図であって、(a)はモルタルM11、(b)はモルタルM21、(c)はモルタルM12、(d)はモルタルM22、(e)はモルタルM13、(f)はモルタルM14、(g)はモルタルM24、(h)はモルタルM15、(i)はモルタルM25、(j)はモルタルM23の積層の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図7を用いて、形成支援システム、形成支援方法及び形成支援プログラムを具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態の形成支援方法には、3Dプリンタ20、制御装置30及び作成支援サーバ40を用いる。
【0010】
図2に示すように、本実施形態では、各レイヤL1において、ノードN0~N5が、リンクLK1~LK5で接続されているH形状を積層することにより構造物C1を形成する。この場合、ノードN0~N5は6個の奇点となるため、平面(2次元)での一筆書きはできない。
このため、本実施形態では、下位階層を形成する第1吐出経路を生成し、下位階層の上側の上位階層を形成する第2吐出経路を生成する。そして、複数のリンクが接続された分岐ノードにおいて、第2吐出経路に繋がる下位階層を形成する第3吐出経路を生成する。そして、第1吐出経路、第2吐出経路及び第3吐出経路を組み合わせて一巡の吐出経路を生成する。
すなわち、レイヤL1は、複数のリンクが接続された分岐ノードを有し、分岐ノードにおいて、下位階層が吐出経路を生成されていないリンクの吐出経路を優先的に生成することにより、一巡の吐出経路を生成する。
【0011】
(ハードウェア構成例)
図3は、制御装置30及び作成支援サーバ40等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
【0012】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0013】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0014】
入力装置H12は、利用者等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
【0015】
記憶装置H14は、制御装置30及び作成支援サーバ40の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶部である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0016】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、ユーザ端末(図示せず)、制御装置30及び作成支援サーバ40における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、制御装置30及び作成支援サーバ40のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0017】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0018】
(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは
(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0019】
(3Dプリンタ20の構成)
図1に示すように、3Dプリンタ20は、吐出部としてのノズル21、ロボットアーム25及び制御装置30を備える。
【0020】
ノズル21は、その先端部が開口した吐出口21aを有している。本実施形態では、吐出口21aは、下方を向いている。ノズル21の吐出口21aと反対側の端部には、ホース22の端部が接続されている。ホース22は、圧送ポンプ27に接続されている。この圧送ポンプ27の圧力により、ホース22を介してノズル21に供給されたモルタルは、吐出口21aから下方に吐出される。
【0021】
ノズル21には、取付部24を介してロボットアーム25が取り付けられる。ノズル21は、このロボットアーム25に支持され、このロボットアーム25の動きに従って水平方向や上下方向に移動する。ロボットアーム25は、制御装置30の制御部31からの指示によって移動が制御される。本実施形態の制御部31は、移動時においてもノズル21からのモルタルの吐出方向が常に下方になるように、ロボットアーム25を制御する。
【0022】
(制御装置30の構成)
制御装置30は、構造物形成処理を実行する制御部31を備える。そのため、記憶部に格納された構造物形成プログラムを実行することにより、制御部31は、積層管理部311、移動制御部312及び吐出量制御部313として機能する。
【0023】
積層管理部311は、構造物C1を形成するために、積層させるモルタルの経路及び高さを管理する処理を実行する。積層管理部311は、積み上げたレイヤL1の数をカウントし、現在のモルタルの積層数を記憶し、構造物の最終的な積層数になった場合にノズル21の移動を停止する。
【0024】
移動制御部312は、経路に応じてノズル21を移動させるロボットアーム25の動きを制御する処理を実行する。
吐出量制御部313は、モルタルの圧送ポンプ27を制御して、ノズル21から吐出されるモルタルの吐出量を制御する処理を実行する。
【0025】
(作成支援サーバ40の構成)
作成支援サーバ40は、ノズル21の移動経路やノズル21からのモルタルの吐出量を決定するコンピュータ装置である。この作成支援サーバ40は、制御部41及び吐出経路記憶部42を備える。作成支援サーバ40は、3Dプリンタ20の制御装置30に接続され、作成が完了した吐出経路データを制御装置30に送信する。
【0026】
制御部41は、記憶部に格納された形成支援プログラムを実行することにより、取得部411及び設定部412として機能する。
取得部411は、形成する構造物C1の形状及び設計によって決められた幅を取得する。
設定部412は、吐出経路を生成する。
【0027】
吐出経路記憶部42には、構造物を形成するノズル21の吐出経路データが記録される。この吐出経路データは、設定部412により経路及び経路吐出幅を決定した場合に記録される。吐出経路データには、構造物識別子、巡回回数毎の吐出経路、経路吐出幅に関するデータが含まれる。
【0028】
構造物識別子データ領域には、各構造物を特定するための識別子に関するデータが記録される。
巡回回数データ領域には、各巡回(一筆書き)で始点から終点までの各巡回経路の巡回回数に関するデータが記録される。
【0029】
吐出経路データ領域には、この巡回経路における3次元座標が記録される。
経路吐出幅データ領域には、一方向に移動するノズル21から吐出されるモルタルにより形成される経路部の幅に関するデータが記録される。
【0030】
(経路作成処理)
次に、
図2、
図4~
図6を用いて、経路作成処理について説明する。
図2に示す構造物C1を形成する場合、各レイヤL1には6個の奇点となるノードN0~N5があるため、平面での一筆書きができない。そこで、2階層のレイヤを用いて、始点から終点までの巡回経路を生成する。2階層のレイヤを用いることにより、各部分が2重となるため、2階層で閉じた経路(一筆書き経路)を生成することができる。
【0031】
まず、作成支援サーバ40の制御部41は、構造物形状の取得処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部41の取得部411は、形成する構造物C1の設計図面を取得する。次に、積層する各レイヤの形状及び各部分の設計幅を取得する。次に、構造物C1の高さを、モルタルの階層高さで除算して、各レイヤの形状(ノード、リンク)を生成し、積層数を算出する。そして、設定部412は、任意のノードを始点として決定し、この始点から各リンクを経由して全ノードを巡回するルートを生成する。このルートにおいては、同じリンクを異なるレイヤで2回通過することを許容する。この場合、分岐ノードにおいて、吐出経路が設定されていない第(i)階層、第(i+1)階層が存在する場合には、下位階層である第(i)階層に進む吐出経路を生成する。なお、本実施形態では、2階層で吐出経路が一巡するため、積層数が偶数になるように、構造物C1の高さ、或いはモルタルの階層高さを調節する。
【0032】
次に、作成支援サーバ40の制御部41は、第(i)階層の生成処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部41の設定部412は、始点から次のノードまでのリンクにおいて、第(i)階層の吐出経路(第1吐出経路)を生成する。そして、設定部412は、生成した吐出経路を吐出経路記憶部42に記録する。
図5に示すように、始点であるノードN0~ノードN1までのリンクLK1(先行リンク)において、吐出経路R11を設定する。
【0033】
次に、作成支援サーバ40の制御部41は、次のノードまで第(i)階層を生成済かどうかについての判定処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部41の設定部412は、次のノードまでのすべてのリンクにおいて、第(i)階層の吐出経路を生成しているかどうかを判定する。
図5(a)に示すように、ノードN1においては、ノードN0に戻るリンクLK1のみなので、第(i)階層の吐出経路R11は設定済みと判定する。
【0034】
次のノードまで第(i)階層を生成済と判定した場合(ステップS13において「YES」の場合)、作成支援サーバ40の制御部41は、第(i+1)階層の生成処理を実行する(ステップS14)。具体的には、制御部41の設定部412は、生成済みの第(i)階層の吐出経路に対して、第(i+1)階層の吐出経路(第2吐出経路)を生成する。この場合には、ノズル21の高さを1階層分、高くした位置で吐出経路を生成する。そして、設定部412は、生成した吐出経路を吐出経路記憶部42に記録する。
図5(b)に示すように、リンクLK1において、第(i)階層の吐出経路R11が設定済みの場合には、第(i+1)階層の吐出経路R21を生成する。
【0035】
一方、次のノードまで第(i)階層を生成済でないと判定した場合(ステップS13において「NO」の場合)、作成支援サーバ40の制御部41は、第(i)階層の生成処理を実行する(ステップS15)。具体的には、制御部41の設定部412は、第(i)階層の高さ位置で吐出経路(第3吐出経路)を生成する。そして、設定部412は、生成した吐出経路を吐出経路記憶部42に記録する。
【0036】
図5(b)に示すように、ノードN0において、ノードN1までのリンクLK1は吐出経路が設定済みである。一方、ノードN2までのリンクLK2、ノードN3までのリンクLK3は、いずれも吐出経路が設定されていない。このため、リンクLK2,LK3のいずれのリンクも選択可能である。
ここでは、
図5(c)に示すように、リンクLK2(後続リンク)において、第(i)階層の吐出経路R12を生成する。
【0037】
次に、作成支援サーバ40の制御部41は、一巡かどうかについての判定処理を実行する(ステップS16)。具体的には、制御部41の設定部412は、すべてのリンクについて、2階層の吐出経路を設定して、始点に戻った場合には、一巡と判定する。
【0038】
一巡していないと判定した場合(ステップS16において「NO」の場合)、作成支援サーバ40の制御部41は、次のノードまで第(i)階層を生成済かどうかについての判定処理(ステップS13)以降を繰り返す。
【0039】
図6(a)に示すように、ノードN2~ノードN0までのリンクLK2において、第(i+1)階層の吐出経路R22を生成する。
図6(b)に示すように、ノードN0において、ノードN1までのリンクLK2(先行リンク)は吐出経路R11,R21を設定済みである。このため、吐出経路を設定していないノードN3までのリンクLK3(後続リンク)において、第(i)階層の吐出経路R13(第3吐出経路)を生成する。この場合には、ノードN0において、ノズル21の高さを1階層分、低くした位置で吐出経路を生成する。
更に、ノードN3において、ノードN4までのリンクLK4、ノードN5までのリンクLK5は、いずれも吐出経路が設定されていない。このため、いずれのリンクも選択可能であるため、ここでは、ノードN4までのリンクLK4において、第(i)階層の吐出経路R14(第1吐出経路)を生成する。
更に、ノードN4~N3までのリンクLK4において、第(i+1)階層の吐出経路R24(第2吐出経路)を生成する。
【0040】
そして、ノードN3において、ノードN0までのリンクLK3において第(i+1)階層の吐出経路、ノードN5までのリンクLK5において第(i)階層の吐出経路が設定されていない。
この場合には、
図6(c)に示すように、リンクLK4(先行リンク)に対して、下位階層であるリンクLK5(後続リンク)を優先して、第(i)階層の吐出経路R15(第3吐出経路)を生成する。そして、ノードN5~ノードN3、ノードN3~N0までのリンクLK5,LK3において、第(i+1)階層の吐出経路R25,R23(第2吐出経路)を生成する。
このように、第(i+1)階層のリンクにおいて吐出経路を作成後に、第(i)階層のリンクにおける吐出経路を生成することにより、すべてのリンクを一巡する。
【0041】
そして、すべてのリンクにおいて、第(i)階層、第(i+1)階層の吐出経路を生成した場合には、一巡と判定する。
一巡と判定した場合(ステップS16において「YES」の場合)、作成支援サーバ40の制御部41は、積層終了かどうかについての判定処理を実行する(ステップS17)。具体的には、制御部41の設定部412は、構造物C1の高さに応じた積層数に到達した場合には、積層終了と判定する。
【0042】
積層終了と判定した場合(ステップS17において「YES」の場合)、作成支援サーバ40の制御部41は、経路作成処理を終了する。
一方、積層終了でないと判定した場合(ステップS17において「NO」の場合)、作成支援サーバ40の制御部41は、「i」をインクリメントして、第(i)階層の生成処理(ステップS12)以降を繰り返す。
【0043】
(積層処理)
次に、
図7を用いて、積層処理について説明する。具体的には、制御部31の積層管理部311は、吐出経路記憶部42に記録された吐出経路データを用いて、移動制御部312及び吐出量制御部313を制御する。
【0044】
ここでは、移動制御部312は、ノズル21からモルタルを吐出させながらロボットアーム25を移動させる。この場合、移動制御部312は、吐出経路記憶部42に記録された吐出経路に沿ってノズル21を移動させて、モルタルの積層を行なう。
【0045】
まず、
図7(a)に示すように、モルタルM11を形成する。そして、
図7(b)に示すように、ノズル21を一階層、上げてモルタルM21を形成する。
次に、
図7(c)に示すように、ノズル21を一階層、下げてモルタルM21を形成する。次に、
図7(d)に示すように、ノズル21を一階層、上げてモルタルM22を形成する。
【0046】
次に、
図7(e)、(f)に示すように、ノズル21を一階層、下げてモルタルM13,M14を形成する。次に、
図7(g)に示すように、ノズル21を一階層、上げてモルタルM24を形成する。
【0047】
次に、
図7(h)に示すように、ノズル21を一階層、下げてモルタルM15を形成する。そして、
図7(i)、(j)に示すように、ノズル21を一階層、上げてモルタルM25,M23を形成する。これにより、上下2階層を用いて、すべてのリンクを一巡する。
【0048】
(作用)
本実施形態では、上下2階層を用いて吐出経路を生成することにより、平面で一筆書きできない形状においても、3次元で吐出経路が一巡する。
【0049】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、作成支援サーバ40の制御部41は、次のノードまで第(i)階層を生成済かどうかについての判定処理を実行する(ステップS13)。これにより、次のノードまでのリンクにおける積層状況を判定することができる。
【0050】
(2)本実施形態では、次のノードまで第(i)階層を生成済と判定した場合(ステップS13において「YES」の場合)、作成支援サーバ40の制御部41は、第(i+1)階層の生成処理を実行する(ステップS14)。これにより、第(i+1)階層を含めて、一巡の吐出経路を生成することができる。
【0051】
(3)本実施形態では、次のノードまで第(i)階層を生成済でないと判定した場合(ステップS13において「NO」の場合)、作成支援サーバ40の制御部41は、第(i)階層の生成処理を実行する(ステップS15)。これにより、第(i)階層を含めて、一巡の吐出経路を生成することができる。ここで、分岐ノードにおいて、吐出経路が設定されていない第(i)階層、第(i+1)階層が存在する場合には、下位階層である第(i)階層に進む吐出経路を生成する。これにより、下位階層を優先して生成することができる。
【0052】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、作成支援サーバ40の制御部41は、下位階層及び上位階層を用いて吐出経路を生成する。ここで、作成支援サーバ40の制御部41は、各階層を平面内で一筆書きが可能かどうかを判定するようにしてもよい。そして、作成支援サーバ40の制御部41は、平面内で一筆書きできないと判定した場合に、下位階層及び上位階層を用いて吐出経路を生成する。
【0053】
・上記実施形態では、吐出経路R11、R21、…の順番で、一巡の経路を生成するが、吐出経路の順番は、これに限定されるものではない。
・上記実施形態では、作成支援サーバ40が吐出経路を生成する。これに代えて、人手で吐出経路を生成してもよい。この場合には、制御装置30は、吐出経路記憶部42に記録された吐出経路に基づいて、第1、第2、第3吐出経路を生成する。
【0054】
・上記実施形態では、分岐ノードであるノードN0を始点とするが、始点はノードN0に限定されるものではない。
・上記実施形態では、複数のリンクが接続された分岐ノードを有し、分岐ノードにおいて、下位階層が吐出経路を生成されていないリンクの吐出経路を優先的に生成する。分岐ノードを有しないレイヤにおいて、上下階層を用いた積層を適用してもよい。例えば、1本のリンクにおいて、途中にノードを設け、このノードを始点とする。この場合、一端部ノードまでの第1吐出経路(下位階層)、端部ノードで折り返して第2吐出経路(上位階層)を生成する。次に、始点で、第2吐出経路に繋がる下位階層を形成する第3吐出経路を生成する。そして、第3吐出経路の上方に、始点に戻る上位階層を形成する第4吐出経路を生成する。これにより、例えば、ノードをリンクの中央部に配置することにより、下位階層の形成タイミングと上位階層の形成タイミングとの時間差を短くすることができる。この結果、モルタルが硬化した状態での積層(コールドジョイント)を抑制して、下位階層と上位階層の結合を強固にすることができる。
【0055】
・上記実施形態では、ノードN0、ノードN3で、ノズル21の高さ位置を変更して、第(i)階層、第(i+1)階層の吐出経路を生成する。ここで、吐出経路の交差領域である分岐ノードにおいて、モルタルの重なりを低減するように、積層条件を変更するようにしてもよい。例えば、ノズル21の移動速度を上げることにより、積層厚を小さくすることにより、モルタルの重なりを低減する。
また、分岐ノードにおいて、相互のリンクの接続位置を離すようにしてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、形成する材料としてモルタルを用いた。構造物の積層に用いる造形材は、モルタルに限らず、ノズル21から吐出可能な流動性と積層可能な固さとを有する材料であれば、例えば、合成樹脂等、他の材料であってもよい。
【0057】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記制御部が、前記第2吐出経路と前記第3吐出経路との交差領域において、積層条件を変更することを特徴とする請求項1に記載の形成支援システム。
(b)前記制御部が、前記一巡の吐出経路による積層高さが所定高さになった場合に、前記吐出経路の生成を終了することを特徴とする請求項1、前記(a)に記載の形成支援システム。
【0058】
(c)前記制御部が、各階層を平面内の一筆書きできないと判定した場合に、前記下位階層及び前記上位階層を用いて吐出経路を生成することを特徴とする請求項1、前記(a)又は前記(b)に記載の形成支援システム。
【0059】
(d)ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出される造形材で形成される層を積み上げることにより、ノード間を結ぶリンクからなるレイヤを積層させた構造物を形成する吐出経路を生成する制御部を備えたシステムであって、
前記レイヤは、複数のリンクが接続された分岐ノードを有し、
前記制御部が、前記分岐ノードにおいて、下位階層が吐出経路を生成されていないリンクの吐出経路を優先的に生成することにより、一巡の吐出経路を生成することを特徴とする形成支援システム。
(e)前記分岐ノードにおいて、積層条件を変更することを特徴とする前記(d)に記載の形成支援システム。
【符号の説明】
【0060】
C1…構造物、LK1~LK5…リンク、M11~M25…モルタル、N0~N5…ノード、R11~R25…吐出経路、20…3Dプリンタ、21…ノズル、21a…吐出口、22…ホース、24…取付部、25…ロボットアーム、30…制御装置、31,41…制御部、40…作成支援サーバ、42…吐出経路記憶部、311…積層管理部、312…移動制御部、313…吐出量制御部、411…取得部、412…設定部。