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  • 特開-インクジェット記録方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098260
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】インクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   D06P 5/30 20060101AFI20240716BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240716BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240716BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20240716BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20240716BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240716BHJP
【FI】
D06P5/30
B41M5/00 100
B41M5/00 114
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B41J2/01 501
B41J2/01 123
B41J2/01 213
D06P5/00 105
C09D11/54
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001650
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】青木 一途
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC08
2C056EC14
2C056EC29
2C056EC37
2C056EC69
2C056EC74
2C056EE18
2C056FA10
2C056FB03
2C056FC02
2C056HA42
2C056HA46
2H186AB03
2H186AB12
2H186AB27
2H186AB54
2H186AB57
2H186AB58
2H186BA08
2H186DA17
2H186FA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB56
4H157AA02
4H157BA15
4H157BA27
4H157CA12
4H157CA29
4H157CB08
4H157CB13
4H157CB14
4H157CB25
4H157CC01
4H157DA01
4H157DA24
4H157DA34
4H157GA06
4J039BE01
4J039EA18
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】布帛の圧着固定を行わないで、毛羽立ちを良好に抑制し、かつ良好な画質(白色度)が得られる、インクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、反応液を布帛に付着させる反応液付着工程と、白色インク組成物を前記反応液が付着した布帛に付着させるインク付着工程と、を備え、前記反応液は、凝集剤として、多価金属塩、カチオンポリマー、有機酸から選択される1種以上を含有し、前記白色インク組成物は、白色顔料及び樹脂粒子の少なくともいずれかを含有し、前記反応液付着工程及び、前記インク付着工程は、インクジェット法により行われ、前記インクジェット法は、インクジェットヘッドを布帛の搬送方向と垂直方向に移動させて記録を行う主走査を複数回行うものであり、前記反応液と前記白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着させ、前記同一の走査領域に対して、前記同一の主走査を複数回行うものであり、前記同一の走査領域に対する1回目の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(1パス目付着量)と、n回目(nは2以上の整数)の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(nパス目付着量)との関係が以下である。
(1パス目付着量)>(nパス目付着量)
(1パス目付着量)+(nパス目付着量)≧20mg/inch
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応液を布帛に付着させる反応液付着工程と、
白色インク組成物を前記反応液が付着した布帛に付着させるインク付着工程と、を備え、
前記反応液は、凝集剤として、多価金属塩、カチオンポリマー、有機酸から選択される1種以上を含有し、
前記白色インク組成物は、白色顔料及び樹脂粒子の少なくともいずれかを含有し、
前記反応液付着工程及び、前記インク付着工程は、インクジェット法により行われ、
前記インクジェット法は、インクジェットヘッドを布帛の搬送方向と垂直方向に移動させて記録を行う主走査を複数回行うものであり、
前記反応液と前記白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着させ、
前記同一の走査領域に対して、前記同一の主走査を複数回行うものであり、
前記同一の走査領域に対する1回目の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(1パス目付着量)と、n回目(nは2以上の整数)の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(nパス目付着量)との関係が以下である、インクジェット記録方法。
(1パス目付着量)>(nパス目付着量)
(1パス目付着量)+(nパス目付着量)≧20mg/inch
【請求項2】
前記1パス目付着量は、10mg/inch以上である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記同一の走査領域に対する、前記同一の主走査で付着される前記反応液と前記白色インク組成物の着弾時間差が、3.0秒以内である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記反応液及び前記白色インク組成物の粘度が、5.0mPa・s以上である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記反応液及び前記白色インク組成物の等量混合物の粘度が、90mPa・s以上である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記反応液は、さらにHLB値10以上の界面活性剤を含有する、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記界面活性剤は、シリコン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤である、請求項6に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記白色インク組成物は、さらに標準沸点280℃以上の有機溶剤をインク組成物の総量に対し5.0質量%以上含有する、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記布帛は、L70以下の有色布帛である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記布帛は、綿布帛または綿を含む混紡布帛である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記布帛は、前記布帛を構成する繊維束から繊維が飛出した毛羽を有し、前記繊維束表
面と前記毛羽の頂点との垂直方向における長さが、50μm以上である毛羽を含む、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録方法を用いて、布帛を染色(捺染)することが行われており、インクの成分を凝集又は増粘させる反応液を用いて、布帛に前処理を施す技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、布帛に処理液組成物を塗布した後、ヒートプレスによる圧着固定を行い、該圧着固定を行った布帛に白色インク組成物をインクジェット法により付着させる、捺染方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-186455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧着固定を行うことで、布帛の毛羽立ちを抑制できる場合があるが、工程が煩雑になる問題がある。しかしながら、圧着固定を行わないで、毛羽立ちを良好に抑制することはできなかった。また、毛羽立ちによる画質(白色度)の悪化も発生した。したがって、毛羽立ちを良好に抑制でき、かつ、良好な画質(白色度)を得ることが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
反応液を布帛に付着させる反応液付着工程と、
白色インク組成物を前記反応液が付着した布帛に付着させるインク付着工程と、を備え、
前記反応液は、凝集剤として、多価金属塩、カチオンポリマー、有機酸から選択される1種以上を含有し、
前記白色インク組成物は、白色顔料及び樹脂粒子の少なくともいずれかを含有し、
前記反応液付着工程及び、前記インク付着工程は、インクジェット法により行われ、
前記インクジェット法は、インクジェットヘッドを布帛の搬送方向と垂直方向に移動させて記録を行う主走査を複数回行うものであり、
前記反応液と前記白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着させ、
前記同一の走査領域に対して、前記同一の主走査を複数回行うものであり、
前記同一の走査領域に対する1回目の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(1パス目付着量)と、n回目(nは2以上の整数)の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(nパス目付着量)との関係が以下である。
(1パス目付着量)>(nパス目付着量)
(1パス目付着量)+(nパス目付着量)≧20mg/inch
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】インクジェット記録装置の一例の概略図。
図2】インクジェット記録装置の一例のキャリッジ周辺の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0009】
1.インクジェット記録方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、反応液を布帛に付着させる反応液付着工程と、白色インク組成物を前記反応液が付着した布帛に付着させるインク付着工程と、を備え、前記反応液は、凝集剤として、多価金属塩、カチオンポリマー、有機酸から選択される1種以上を含有し、前記白色インク組成物は、白色顔料及び樹脂粒子の少なくともいずれかを含有し、前記反応液付着工程及び、前記インク付着工程は、インクジェット法により行われ、前記インクジェット法は、インクジェットヘッドを布帛の搬送方向と垂直方向に移動させて記録を行う主走査を複数回行うものであり、前記反応液と前記白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着させ、前記同一の走査領域に対して、前記同一の主走査を複数回行うものであり、前記同一の走査領域に対する1回目の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(1パス目付着量)と、n回目(nは2以上の整数)の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(nパス目付着量)との関係が以下である。
(1パス目付着量)>(nパス目付着量)
(1パス目付着量)+(nパス目付着量)≧20mg/inch
【0010】
圧着固定を行うことで、布帛の毛羽立ちを抑制できる場合があるが、工程が煩雑になる問題がある。しかしながら、圧着固定を行わないで、毛羽立ちを良好に抑制することはできなかった。また、毛羽は、インクや反応液によって濡れた瞬間から、吸水による膨潤や収縮等により動いてしまう。毛羽が動くことで、インクの着弾位置がずれたり、布帛自体の色の隠蔽が不十分になったりし、画質(白色度)の悪化も発生した。
【0011】
これに対して、本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、反応液と白色インク組成物が同一の主走査で付着され、布帛に液体が付着した直後に両者の反応が起こること、併せて、1パス目の付着量が多いことにより、反応後粘性が高まった液体を十分な量で、毛羽が大きく動いてしまう前に付着させることができる。これにより、毛羽立ちを良好に抑制でき、かつ、良好な画質(白色度)を得ることができる。
【0012】
以下、本実施形態に係るインクジェット記録方法が備える各工程について説明する。
【0013】
1.1 反応液付着工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、反応液を布帛に付着させる反応液付着工程を備える。
【0014】
1.1.1 付着態様
〈インクジェット法〉
本実施形態に係るインクジェット記録方法において、反応液付着工程及び、後述のインク付着工程は、インクジェット法により行われ、インクジェット法は、インクジェットヘッドを布帛の搬送方向と垂直方向に移動させて記録を行う主走査を複数回行うものであり、反応液と白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着させ、同一の走査領域に対して、同一の主走査を複数回行うものである。
【0015】
「インクジェット法」とは、インクジェット記録装置などが備えるインクジェットヘッドのノズルから、インクなどの液滴を吐出して、記録媒体に付与する記録方法である。
【0016】
「インクジェットヘッドを布帛の搬送方向と垂直方向に移動させて記録を行う主走査を複数回行う」とは、例えば、図1及び図2に示すようなインクジェット記録装置(後述する)においては、インクジェットヘッド2を有するキャリッジ9が布帛Mの搬送方向(副走査方向SS)と垂直方向(主走査方向MS)に移動しながら記録を行う走査を複数回行うことである。
【0017】
「反応液と白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着」させることで、反応液の液滴と白インクの液滴をほぼ乾燥しない状態で布帛上で直ちに接触させることができる。これにより、布帛に液体が付着した直後に両者の反応を起こし得、反応後粘性が高まった液体を、毛羽が大きく動いてしまう前に付着できる。このような態様での付着は、例えば、インクジェットヘッド2のノズル面(図示せず)に、ノズルが副走査方向SSに複数配列されるノズル列を主走査方向MSに沿って複数有し、複数のノズル列は主走査方向MSに沿って投影したとき少なくとも一部が重なるように配置され、ノズル列毎に、反応液、白色インク組成物を吐出できるようにすることが好ましい。こうすることで、反応液、白色インク組成物を、同一の主走査で布帛の副走査方向の同じ位置(同一の走査領域)に吐出して付着させることができる。
【0018】
「同一の走査領域に対して、同一の主走査を複数回行う」場合には、布帛の同一の領域の上を、反応液及び白色インク組成物を付着させる主走査が複数回通過することになる。走査の回数が多いほど、所望の領域に、複数回(複数パス)で分けて反応液やインクを付着させることができ、得られる記録物の画質がより向上する傾向にある。
【0019】
なお、任意の領域を記録するに際し、その領域上をインクジェットヘッドが通過した回数を「パス」ともいう。例えば、同一の領域の上を、白インク組成物及び反応液を付着させる主走査を4回行う場合、そのパス数を4パスなどという。例えば、副走査方向SSの1回の副走査の長さが、ノズル列の副走査方向SSの長さの4分の1の長さであった場合には、副走査方向SSに1回の副走査の長さでかつ主走査方向MSに延びる長方形の走査領域に対して、4回の走査が行われることになる。このように見たときの走査の回数を、走査数、またはパス数などという。走査の回数は、2以上であり、4以上が好ましく、8以上がより好ましい。また、走査の回数は、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、13以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。
【0020】
〈付着量関係〉
本実施形態に係るインクジェット記録方法においては、同一の走査領域に対する1回目の主走査で布帛に付着される反応液と白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(1パス目付着量)と、n回目(nは2以上の整数)の主走査で布帛に付着される反応液と白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(nパス目付着量)との関係が以下である。
(1パス目付着量)>(nパス目付着量) ・・・(1)
(1パス目付着量)+(nパス目付着量)≧20mg/inch ・・・(2)
【0021】
上記(1)及び(2)の関係式を満たす場合、毛羽がインクや反応液によって濡れる直後において、反応後粘性が高まった液体を十分な量で、布帛に付着させることができる。これにより、毛羽立ちを良好に抑制でき、かつ、良好な画質(白色度)を得ることができる。
【0022】
上記(1)の関係式において、1パス目付着量は、nパス目付着量の1.2倍以上であ
ることが好ましく、1.4倍以上であることがより好ましく、1.6倍以上であることがさらに好ましく、1.8倍以上であることが特に好ましく、2.0倍以上であることがより特に好ましい。これにより、毛羽立ちをより良好に抑制でき、かつ、より良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。上限は、特に限定されないが、1パス目付着量は、nパス目付着量の10倍以下であってよく、8倍以下であってよく、6倍以下であってよく、4倍以下であってよく、3倍以下であってよい。
【0023】
上記(2)の関係式において、1パス目付着量とnパス目付着量の合計量は、22mg/inch以上であることが好ましく、24mg/inch以上であることがより好ましく、26mg/inch以上であることがさらに好ましく、28mg/inch以上であることが特に好ましく、30mg/inch以上であることがより特に好ましい。これにより、毛羽立ちをより良好に抑制でき、かつ、より良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。上限は、特に制限されないが、50mg/inch以下であってよく、40mg/inch以下であってよく、35mg/inch以下であってよい。
【0024】
1パス目付着量は、10mg/inch以上であることが好ましく、10mg/inch超であることがより好ましく、12mg/inch以上であることがさらに好ましく、14mg/inch以上であることがよりさらに好ましく、16mg/inch以上であることが特に好ましく、18mg/inch以上であることがより特に好ましく、20mg/inch以上であることが殊更に好ましい。1パス目付着量が上記範囲内であると、毛羽立ちをより良好に抑制でき、かつ、より良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。1パス目付着量の上限は、特に限定されず、50mg/inch以下であってよく、40mg/inch以下であってよく、30mg/inch以下であってよく、25mg/inch以下であってよい。
【0025】
また、nパス目付着量は、20mg/inch未満であることが好ましく、18mg/inch未満であることがより好ましく、16mg/inch未満であることがさらに好ましく、14mg/inch未満であることがよりさらに好ましく、12mg/inch未満であることが特に好ましく、10mg/inch以下であることがより特に好ましい。nパス目付着量が上記範囲内であると、毛羽立ちをより良好に抑制でき、かつ、より良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。nパス目付着量の下限は、特に制限されず、2mg/inch以上であってよく、4mg/inch以上であってよく、6mg/inch以上であってよく、8mg/inch以上であってよい。
【0026】
なお、1パス目付着量及びnパス目付着量において、反応液の単位面積あたりの付着量に対する白色インク組成物の単位面積あたりの付着量の比は、0.5~1.5であることが好ましく、0.7~1.3であることがより好ましく、0.9~1.1であることがより好ましい。
【0027】
同一の走査領域に対する1回目からn回目(nは2以上の整数)までの主走査で布帛に付着される反応液と白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(総打込量)は、80mg/inch以上であることが好ましく、90mg/inch以上であることがより好ましく、100mg/inch以上であることがさらに好ましい。総打込量の上限は、特に制限されず、150mg/inch以下であってよく、130mg/inch以下であってよく、110mg/inch以下であってよい。
【0028】
〈液滴着弾時間差〉
本実施形態に係るインクジェット記録方法において、同一の走査領域に対する、同一の
主走査で付着される反応液と白色インク組成物の着弾時間差は、3.0秒以内であることが好ましく、2.0秒以内であることがより好ましく、1.0秒以内であることがさらに好ましく、0.5秒以内であることが特に好ましく、0.3秒以内であることがより特に好ましい。該着弾時間差が上記範囲内であると、布帛がインクや反応液によって濡れてからより即座に、反応後粘性が高まった液体を、毛羽が大きく動いてしまう前に付着させることができる。これにより、毛羽立ちをより良好に抑制でき、かつ、より良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。
【0029】
なお、「同一の走査領域に対する、同一の主走査で付着される反応液と白色インク組成物の着弾時間差」とは、反応液と白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着させる際の、反応液が布帛の所定領域に付着してから白色インク組成物が該所定領域に付着するまでの時間差をいう。
【0030】
1.1.2 反応液
反応液は、凝集剤として、多価金属塩、カチオンポリマー、有機酸から選択される1種以上を含有する。
【0031】
以下、反応液に含有する各成分について説明する。
【0032】
〈凝集剤〉
反応液は、凝集剤として、多価金属塩、カチオンポリマー、有機酸から選択される1種以上を含有する。凝集剤は、白色インク組成物に含まれ得る白色顔料や樹脂粒子などの成分の分散性に作用することで、これらの成分の少なくとも1つを凝集させる機能を有する。凝集剤による分散体の凝集の程度は、凝集剤と対象のそれぞれの種類によって異なり、調節することができる。このような凝集作用により、例えば、画像の発色性や、画像の定着性を高めることができる。
【0033】
多価金属塩とは、2価以上の金属イオンとアニオンから構成される化合物である。2価以上の金属イオンとしては、例えば、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄等のイオンが挙げられる。これらの多価金属塩を構成する金属イオンの中でも、インクの成分の凝集性に優れているという点から、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。
【0034】
多価金属塩を構成するアニオンとしては、無機イオン又は有機イオンである。すなわち、本発明における多価金属塩とは、無機イオン又は有機イオンと多価金属とからなるものである。このような無機イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ギ酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられる。有機イオンとしては有機酸イオンが挙げられ、例えばカルボン酸イオンが挙げられる。
【0035】
上記の多価金属塩の具体例としては、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムといった炭酸カルシウム、ギ酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、塩化バリウム、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、硝酸銅、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸アルミニウム、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸アルミニウム等が挙げられる。これらの多価金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、水への十分な溶解性を得られる点で、硫酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、硝酸カルシウム、乳酸アルミニウム、プロピオン酸カルシウムのうち少なくともいずれかが好ましい。なお、これら
の金属塩は、原料形態において水和水を有していてもよい。
【0036】
カチオンポリマー(カチオン性樹脂)としては、例えば、カチオン性のウレタン系樹脂、カチオン性のオレフィン系樹脂、カチオン性のアミン系樹脂、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
カチオン性のウレタン系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP-7010、CP-7020、CP-7030、CP-7040、CP-7050、CP-7060、CP-7610(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR-2120C、WBR-2122C(商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
【0038】
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶媒等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
【0039】
カチオン性のアミン系樹脂としては、構造中にアミノ基を有するものであればよく、公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ポリアミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂などが挙げられる。ポリアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアミノ基を有する樹脂である。ポリアミド樹脂は樹脂の主骨格中にアミド基を有する樹脂である。ポリアリルアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアリル基に由来する構造を有する樹脂である。
【0040】
また、カチオン性のポリアミン系樹脂としては、センカ株式会社製のユニセンスKHE103L(ヘキサメチレンジアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約5.0、粘度20~50(mPa・s)、固形分濃度50質量%の水溶液)、ユニセンスKHE104L(ジメチルアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約7.0、粘度1~10(mPa・s)、固形分濃度20質量%の水溶液)などを挙げることができる。さらにカチオン性のポリアミン系樹脂の市販品の具体例としては、FL-14(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、DK-6810、6853、6885;WS-4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、パピオゲンP-105(センカ社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX-1(田岡化学工業社製)、カチオマスター(登録商標)PD-1、7、30、A、PDT-2、PE-10、PE-30、DT-EH、EPA-SK01、TMHMDA-E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)が挙げられる。
【0041】
ポリアリルアミン樹脂は、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコ
ポリマー等を挙げることができる。
【0042】
有機酸としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、有機酸の塩で金属塩であるものは上記の金属塩に含める。
【0043】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを表し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを表す。
【0044】
凝集剤は、1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
凝集剤の含有量の下限は、例えば、反応液の総質量に対して1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、4質量%以上が特に好ましく、5質量%以上がより特に好ましい。また、凝集剤の含有量の上限は、例えば、反応液の総質量に対して15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、7質量%以下が特に好ましく、6質量%以下がより特に好ましい。
【0046】
〈界面活性剤〉
反応液は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、反応液の表面張力を低下させ、例えば布帛への浸透性を調整、向上させるために用いることができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。また、界面活性剤の中でも、アセチレン系界面活性剤(アセチレングリコール系界面活性剤)、シリコン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤をより好ましく用いることができ、シリコン系界面活性剤及びアセチレン系界面活性剤をさらに好ましく用いることができる。
【0047】
アセチレン系界面活性剤(アセチレングリコール系界面活性剤)としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(商品名、Air Products and Chemicals Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、PD-005、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、EXP.4123、EXP.4200、EXP.4300、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0048】
シリコン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(商品名、BYK社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-
6020、X-22-4515、KF-6004、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0049】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-340(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0050】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
本実施形態に係るインクジェット記録方法において、反応液は、さらにHLB値10以上の界面活性剤を含有することが好ましい。上記界面活性剤の中でも、HLB値10以上の界面活性剤である場合には、反応液の布帛への浸透性を好ましく調整でき、反応液を布帛表面近傍により留めやすい傾向にある。これにより、インクとの反応性がより向上するため、毛羽立ちをより良好に抑制でき、かつ、より良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。
【0052】
本明細書において、「HLB」(value of hydrophile and liophile balance)とは、化合物の親水性・疎水性バランスを数値的に示したものである。ここで、HLB値は、グリフィン法より算出された値とし、以下の式(3)により求めることができる。
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量 ・・・(3)
【0053】
以下に、グリフィン法によるHLB値10以上の界面活性剤の具体例を挙げる。
【0054】
HLB値10以上のアセチレン系界面活性剤(アセチレングリコール系界面活性剤)としては、例えば、オルフィン E1010(HLB値12)、E1020(HLB値15~16)、EXP.4200(HLB値10~13)、EXP.4123(HLB値10~13)[商品名、日信化学工業社製]等が挙げられる。
【0055】
HLB値10以上のシリコン系界面活性剤としては、例えば、BYK-348(HLB値11)[商品名、BYK社製]、KF-6011(HLB値14.5)、KF-6013(HLB値10)、KF-6043(HLB値14.5)、KF-643(HLB値14)、KF-640(HLB値14)、KF-351A(HLB値12)、KF-354L(HLB値16)[商品名、信越シリコーン株式会社製]、FZ-2105(HLB値11)、L-7604(HLB値13)、FZ-2104(HLB値14)[商品名、東レ・ダウコーニング社製]、SILWET L-7604(HLB値13)、SILWET L-7607N(HLB値17)、SILWET FZ-2104(HLB値14)、又はSILWET FZ-2161(HLB値20)[商品名、日本ユニカー株式会社製]等が挙げられる。
【0056】
HLB値10以上の界面活性剤は、シリコン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤であることがより好ましく、シリコン系界面活性剤であることがさらに好ましい。このような界面活性剤を含有する場合には、反応液の布帛への浸透性をさらに好ましく調整でき、反応液を布帛表面近傍にさらに留めやすい傾向にある。これにより、インクとの反応性がさらに向上するため、毛羽立ちをさらに良好に抑制でき、かつ、さらに良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。
【0057】
界面活性剤の含有量の下限は、反応液の総質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が特に好ましい。また、界面活性剤の含有量の上限は、反応液の総質量に対して、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、
0.8質量%以下が特に好ましく、0.6質量%以下がより特に好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であると、反応液の布帛への浸透性を好ましく調整しやすい傾向にある。
【0058】
〈有機溶剤〉
反応液は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、アミド類、アルコール類、多価アルコール類等を挙げることができる。
【0059】
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、等のグリコールジエステル類が挙げられる。
【0060】
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0061】
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、β-ヘキサノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-ヘキサノラクトン、β-ヘプタノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-ヘプタノラクトン、ε-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-オクタノラクトン、ε-オクタノラクトン、δ-ノナラクトン、ε-ノナラクトン、ε-デカノラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1~4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
【0062】
アミド類としては、環状アミド類、非環状アミド類などを挙げることができる。非環状アミド類としてはアルコキシアルキルアミド類などが挙げられる。
【0063】
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられる。ラクタム類としては、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。
【0064】
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-iso-プロポキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド等を例示することができる。
【0065】
アルコール類としては、例えば、アルカンが有する1つの水素原子がヒドロキシル基によって置換された化合物が挙げられる。該アルカンとしては、炭素数10以下のものが好ましく、6以下のものがより好ましく、3以下のものが更に好ましい。アルカンの炭素数は1以上であり、2以上であることが好ましい。アルカンは、直鎖型であってもよく、分枝型であってもよい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、及びtert-ペンタノール、2-フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、フェノキシプロパノールなどがあげられる。
【0066】
多価アルコール類は、分子中に2個以上の水酸基を有するものである。多価アルコール類は、例えば、アルカンジオール類とポリオール類とに分けることができる。
【0067】
アルカンジオール類とは、例えば、アルカンが2個の水酸基で置換された化合物が挙げられる。アルカンジオール類としては、例えば、アルカンの1位及び2位に水酸基が置換した化合物の総称である1,2-アルカンジオール、1,2-アルカンジオール以外のその他のアルカンジオールが挙げられる。
【0068】
1,2-アルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパン-1,2
-ジオール(プロピレングリコール)、1,2-ブタンジオール(1,2BD)、1,2-ペンタンジオール(1,2PD)、1,2-ヘキサンジオール(1,2HD)、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール、3,4-ジメチル-1,2-ペンタンジオール、3-エチル-1,2-ペンタンジオール、4-エチル-1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,2-ヘキサンジオール、4-メチル-1,2-ヘキサンジオール、5-メチル-1,2-ヘキサンジオール、3,4-ジメチル-1,2-ヘキサンジオール、3,5-ジメチル-1,2-ヘキサンジオール、4,5-ジメチル-1,2-ヘキサンジオール、3-エチル-1,2-ヘキサンジオール、4-エチル-1,2-ヘキサンジオール、3-エチル-4-メチル-1,2-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0069】
その他のアルカンジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール(別名:1,3-ブタンジオール)、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができる。
【0070】
ポリオール類としては、例えば、アルカンジオール類の2分子以上が水酸基同士で分子間縮合した縮合物、水酸基を3個以上有する化合物などが挙げられる。
【0071】
アルカンジオール類の2分子以上が水酸基同士で分子間縮合した縮合物としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジアルキレングリコールや、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のトリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0072】
水酸基を3個以上有する化合物は、アルカンやポリエーテル構造を骨格とする、3個以上の水酸基を有する化合物である。水酸基を3個以上有する化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ポリオキシプロピレントリオールなどが挙げられる。
【0073】
有機溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
反応液は、標準沸点280℃以上の有機溶剤を反応液の総量に対し1.0質量%以上含有することが好ましく、3.0質量%以上含有することがより好ましく、5.0質量%以上含有することがさらに好ましい。標準沸点280℃以上の有機溶剤を上記範囲で含有する場合には、インクジェットヘッドのノズルが保湿され、吐出信頼性を良好にできる。このような態様は、反応液と白色インク組成物が同一の主走査で付着され、ノズルにおいて凝集物が生じやすい本実施形態に係るインクジェット記録方法において有用である。
【0075】
なお、標準沸点280℃以上の有機溶剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。なお、標準沸点280℃以上の有機溶剤を保湿剤ともいう。
【0076】
反応液は、粘度と表面張力を好ましく調整しやすい観点から、有機溶剤として、アルカ
ンジオール類、ポリオール類、及びアルキレングリコールエーテル類から選ばれる1種以上を含有することが好ましく、アルカンジオール類、アルカンジオール類の2分子以上が水酸基同士で分子間縮合した縮合物、及びアルキレングリコールモノアルキルエーテル類を含有することがより好ましい。
【0077】
有機溶剤の含有量は、反応液の総量に対し、5~30質量%が好ましく、8~25質量%がより好ましく、10~23質量%がさらに好ましく、12~20質量%が特に好ましい。
【0078】
〈水〉
反応液は、水を含有してもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を低減したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、反応液を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を抑制することができる。
【0079】
水の含有量は、反応液の総質量に対して40質量%以上が好ましく、45質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。水の含有量の上限は、特に制限されないが、例えば、反応液の総質量に対して好ましくは90質量%以下であり、さらには85質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
【0080】
〈その他の成分〉
反応液は、必要に応じて、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。このような添加剤を含有させる場合の含有量は、反応液の総量に対して0.1~5質量%が好ましく、0.1~3質量がより好ましく、0.1~1質量%がさらに好ましい。
【0081】
また、反応液は、顔料等の色材を含有してもよいが、反応液の総質量に対して0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましく、下限は0質量%である。反応液は色材を含有しないことが好ましい。
【0082】
〈製造方法〉
反応液は、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
【0083】
〈物性〉
反応液は、記録品質とインクジェット記録用の反応液としての信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が10mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましい。表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP-Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0084】
反応液及び後述の白色インク組成物の粘度(例えば、20℃における)は、4.0mPa・s以上であることが好ましく、4.5mPa・s以上であることがより好ましく、5.0mPa・s以上であることがさらに好ましい。このように、反応前の粘度においても
比較的高いものにすることで、毛羽立ちをより良好に抑制でき、かつ、より良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。なお、記録品質とインクジェット記録用の反応液としての信頼性とのバランスの観点から、該粘度の上限は、15mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることがより好ましく、8mPa・s以下であることがさらに好ましい。粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR-300(商品名、Pysica社製)を用いて20℃の環境下での粘度を測定することができる。
【0085】
また、反応液及び後述の白色インク組成物の等量混合物の粘度(例えば、20℃における)は、50mPa・s以上であることが好ましく、70mPa・s以上であることがより好ましく、90mPa・s以上であることがさらに好ましい。該混合物の粘度が上記範囲である場合には、毛羽をより良好に固定できるため、毛羽立ちをより良好に抑制でき、かつ、より良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。
【0086】
1.1.3 布帛
本実施形態に係るインクジェット記録方法に用いられる布帛の形態としては、例えば、布地、衣類やその他の服飾品などが挙げられる。布地には、織物、編物、不織布などが含まれる。衣類やその他の服飾品には、縫製後のTシャツ、ハンカチ、スカーフ、タオル、手提げ袋、布製のバッグ、カーテン、シーツ、ベッドカバー、壁紙などのファーニチャー類の他、縫製前の部品としての裁断前後の布地なども含まれる。これらの形態としては、ロール状に巻かれた長尺のもの、所定の大きさに切断されたもの、製品形状のものなどが挙げられる。
【0087】
布帛を構成する素材としては、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。
【0088】
これらの素材の中でも、布帛は、綿布帛または綿を含む混紡布帛であることが好ましい。このような布帛は、吸水性に優れ、かつ、毛羽が発生しやすいため、毛羽立ちや画質(白色度)の課題がより生じやすい。これに対して、本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、このような布帛を用いる場合であっても、毛羽立ちを良好に抑制でき、かつ、良好な画質(白色度)を得ることができる。
【0089】
布帛の目付は、特に限定されないが、1.0oz(オンス)以上10.0oz以下であってよく、好ましくは2.0oz以上9.0oz以下であり、より好ましくは3.0oz以上8.0oz以下であり、さらにより好ましくは4.0oz以上7.0oz以下である。
【0090】
また、布帛は、布帛を構成する繊維束から繊維が飛出した毛羽を有し、繊維束表面と毛羽の頂点との垂直方向における長さが、50μm以上である毛羽を含むものであることが好ましい。このような布帛は、毛羽立ちや画質(白色度)の課題がより生じやすい。これに対して、本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、このような布帛を用いる場合であっても、毛羽立ちを良好に抑制でき、かつ、良好な画質(白色度)を得ることができる。
【0091】
上記長さの測定は、公知の手段、例えば、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE、VHX-5000)を用いて行うことができ、複数の毛羽(例えば10点)の平均値(算術平均)を上記長さとして求めることが好ましい。
【0092】
なお、「繊維束」とは、複数の繊維が束ねられたものをいい、略円形形状の断面を有する。また、「毛羽」とは、繊維束表面から立毛した短繊維の端部をいい、繊維束内部に存
在する短繊維の端部は毛羽とはいわない。
【0093】
また、布帛は、L70以下の有色布帛であってよい。予め染料などで着色された有色布帛において、有色部のL値が70以下である場合には、白色インク組成物の付着部に布帛自体の色が透けて見えてしまうことがあり、画質(白色度)の課題がより生じやすい。これに対して、本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、このような布帛を用いる場合であっても、毛羽立ちを良好に抑制でき、かつ、良好な画質(白色度)を得ることができる。
【0094】
なお、Lとは、L色空間における明度を表す。L値は、公知の測色機を用いて測定可能であるが、例えば、Spectrolino(グレタグ社)を用いて、測定することができる。L値は、60以下であってもよく、50以下であってもよい。
【0095】
布帛が予め着色される染料としては、例えば、酸性染料、塩基性染料などの水溶性染料、分散剤(界面活性剤)を併用する分散染料、反応性染料などが挙げられる。布帛が染料によって着色される方法としては、布帛の形成材料や形態などに応じて、公知の方法を採用できる。
【0096】
1.2 インク付着工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、白色インク組成物を上述の反応液が付着した布帛に付着させるインク付着工程を備える。
【0097】
1.2.1 付着態様
本実施形態に係るインクジェット記録方法において、前述の反応液付着工程及び、インク付着工程は、インクジェット法により行われ、インクジェット法は、インクジェットヘッドを布帛の搬送方向と垂直方向に移動させて記録を行う主走査を複数回行うものであり、反応液と白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着させ、同一の走査領域に対して、同一の主走査を複数回行うものである。
【0098】
また、本実施形態に係るインクジェット記録方法においては、同一の走査領域に対する1回目の主走査で布帛に付着される反応液と白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(1パス目付着量)と、n回目(nは2以上の整数)の主走査で布帛に付着される反応液と白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(nパス目付着量)との関係が以下である。
(1パス目付着量)>(nパス目付着量) ・・・(1)
(1パス目付着量)+(nパス目付着量)≧20mg/inch ・・・(2)
【0099】
インク付着工程における付着態様については、前述の反応液付着工程と同様であるから説明を省略する。
【0100】
1.2.2 白色インク組成物
白色インク組成物は、白色顔料及び樹脂粒子の少なくともいずれかを含有する。
【0101】
以下、白色インク組成物に含有する各成分について説明する。
【0102】
〈白色顔料及び樹脂粒子〉
白色インク組成物は、白色顔料及び樹脂粒子の少なくともいずれかを含有する。これらの成分は、前述の反応液と接触すると凝集する作用を有するものであることが好ましい。
【0103】
なお、本明細書において、白色インク組成物、白色顔料等という際の「白色」という語
句は、完全な白のみを指すものではなく、白と視認できる範囲であれば、有彩色や無彩色に若干着色した色や光沢を帯びた色も含む。例えば、CIELABにおいて、Lが80以上であり、a及びbがそれぞれ±10以下の色が好ましい。さらに、Lが90以上、a及びbがそれぞれ±50以下の色が好ましい。
【0104】
(白色顔料)
白色顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛であるC.I.ピグメントホワイト1、酸化亜鉛からなるC.I.ピグメントホワイト4、硫化亜鉛と硫酸バリウムとの混合物からなるC.I.ピグメントホワイト5、二酸化チタンからなるC.I.ピグメントホワイト6、他の金属酸化物を含有する二酸化チタンからなるC.I.ピグメントホワイト6:1、硫化亜鉛からなるC.I.ピグメントホワイト7、炭酸カルシウムからなるC.I.ピグメントホワイト18、クレーからなるC.I.ピグメントホワイト19、雲母チタンからなるC.I.ピグメントホワイト20、硫酸バリウムからなるC.I.ピグメントホワイト21、石膏からなるC.I.ピグメントホワイト22、酸化マグネシウム・二酸化ケイ素からなるC.I.ピグメントホワイト26、二酸化ケイ素からなるC.I.ピグメントホワイト27、無水ケイ酸カルシウムからなるC.I.ピグメントホワイト28等が挙げられる。これらの中でも、発色性、隠蔽性などに優れるC.I.ピグメントホワイト6を用いることが好ましい。
【0105】
白色顔料の平均粒子径は、100nm以上500nm以下であることが好ましく、50nm以上450nm以下であることがより好ましく、200nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。白色顔料の平均粒子径をこの範囲とすることにより、インクジェットヘッドからの吐出安定性を確保できる傾向にある。また、隠蔽性を向上できる傾向にある。なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、特にことわりのない限り、累積分布50vol%の時の粒子径である体積基準粒度分布を指すものとする。平均粒子径の測定は、JIS Z8825に記載の動的光散乱法やレーザー回折光法で測定される。具体的には、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)が採用可能である。
【0106】
白色顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
白色顔料を含有する場合の含有量は、白色インク組成物の総量に対して、1~30質量%が好ましく、2~25質量%がより好ましく、4~20質量%がさらに好ましく、6~15質量%が特に好ましく、8~12質量%がより特に好ましい。白色顔料の含有量が上記範囲内であると、毛羽立ちをより良好に抑制でき、かつ、より良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。
【0108】
白色顔料は、顔料分散剤を用い分散させて用いてもよい。また白色顔料は、オゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して自己分散顔料とし分散させて用いてもよい。
【0109】
顔料分散剤は、顔料をインク中で分散させる機能を有している。顔料分散剤は、水溶性のものでもよいが、完全な水溶性を有さないものが好ましく、一部又は全部が顔料に結合又は吸着して、顔料の表面の親水性を高めることにより、顔料を分散させると考えられる。顔料分散剤の種類は、特に限定されない。
【0110】
顔料分散剤は高分子化合物であり、その例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-
(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、等のアクリル系樹脂及びその塩が挙げられる。
【0111】
また、顔料分散剤としては、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体等のマレイン酸系樹脂及びその塩;架橋構造の有無を問わないウレタン系樹脂及びその塩;ポリビニルアルコール類;酢酸ビニル-クロトン酸共重合体及びその塩等の樹脂を挙げることができる。
【0112】
なお、アクリル系樹脂は、上記したようなアクリル系モノマー(アクリル系単量体)の重合体の他に、アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体でもよい。例えば、他のモノマーとしてビニル系モノマーとの共重合体としたアクリルビニル樹脂でもアクリル系樹脂と称する。また例えば、上記のスチレン系樹脂のうち、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体であるものもアクリル系樹脂に含める。さらに、アクリル系樹脂というときは、その塩やそのエステル化物も含める。
【0113】
顔料分散剤の市販品としては、例えば、X-200、X-1、X-205、X-220、X-228(星光PMC社製)、ノプコスパース(登録商標)6100、6110(サンノプコ株式会社製)、ジョンクリル67、586、611、678、680、682、819(BASF社製)、DISPERBYK-190(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、N-EA137、N-EA157、N-EA167、N-EA177、N-EA197D、N-EA207D、E-EN10(第一工業製薬製)等が挙げられる。
【0114】
アクリル系顔料分散剤の市販品としては、BYK-187、BYK-190、BYK-191、BYK-194N、BYK-199(ビックケミー株式会社製)、アロンA-210、A6114、AS-1100、AS-1800、A-30SL、A-7250、CL-2東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
【0115】
ウレタン系顔料分散剤の市販品としては、BYK-182、BYK-183、BYK-184、BYK-185(ビックケミー株式会社製)、TEGO Disperse710(Evonic Tego Chemi社製)、Borchi(登録商標)Gen1350(OMG Borschers社製)等が挙げられる。
【0116】
顔料分散剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。顔料分散剤の合計の含有量は、白色インク組成物100質量%に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上25質量%以下がより好ましく、1質量%以上20質量%以下がさらに好ましく、1.5質量%以上15質量%以下が特に好ましい。顔料分散剤の含有量が0.1質量%以上であることにより、白色顔料の分散安定性を確保することができる傾向にある。また、顔料分散剤の含有量が30質量%以下であれば、白色インク組成物の粘度を小さく抑えることができる傾向にある。
【0117】
また、顔料分散剤の重量平均分子量は、500以上であることがさらに好ましい。このような顔料分散剤を用いることにより、臭気が少なく、白色顔料の分散安定性をさらに良好にすることができる傾向にある。
【0118】
白色顔料を顔料分散剤により分散させる場合には、白色顔料と顔料分散剤との比率は10:1~1:10が好ましく、4:1~1:3がより好ましい。
【0119】
(樹脂粒子)
樹脂粒子は、布帛に付着させたインクの密着性を向上させる、いわゆる定着用樹脂としての機能を有する。樹脂粒子は、エマルジョン形態で取り扱われることが多いが、粉体の性状であってもよい。
【0120】
樹脂粒子としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂(スチレン-アクリル系樹脂を含む)、フルオレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂等からなる樹脂粒子が挙げられる。中でも、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、オフレフィン系樹脂、エステル系樹脂が好ましい。また、樹脂粒子は1種単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0121】
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂には、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。また、ウレタン系樹脂として、市販品を用いてもよく、例えば、スーパーフレックス 460、460s、840、E-4000(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D-1060、D-2020、D-4080、D-4200、D-6300、D-6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS-5100、WS-6021、W-512-A-6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA-150(商品名、三洋化成工業社製)などが挙げられる。
【0122】
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル-ビニル系樹脂などが挙げられる。また例えば、ビニル系単量体としては、スチレンなどが挙げられる。
【0123】
アクリル系単量体としてはアクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK-854(商品名、中央理科工業社製)、モビニール952B、718A(商品名、日本合成化学工業社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0124】
スチレン-アクリル系樹脂は、スチレン単量体と(メタ)アクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。スチレン-アクリル系樹脂には、市販品を用いても良く、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、日本合成化学工業社製)、ビニブラン2586(日信化学工業社製)等を用いてもよい。
【0125】
オレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有する重合体であり、公知のものを適宜選択して用いることができる。オレフィン樹脂とし
ては、市販品を用いることができ、例えばアローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等を用いてもよい。
【0126】
樹脂粒子は、ウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂から選択されることがより好ましく、ウレタン系樹脂であることがさらに好ましい。このようにすると、白色インク組成物で形成された画像の生地追従性が良好となりやすい。
【0127】
樹脂粒子を含有する場合の含有量(固形分)は、白色インク組成物の総量に対して、1~30質量%が好ましく、2~25質量%がより好ましく、4~20質量%がさらに好ましく、6~15質量%が特に好ましく、8~12質量%がより特に好ましい。樹脂粒子の含有量が上記範囲内であると、毛羽立ちをより良好に抑制でき、かつ、より良好な画質(白色度)を得ることができる傾向にある。
【0128】
〈界面活性剤〉
白色インク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。白色インク組成物における界面活性剤の種類や含有量等については、前述の反応液と同様であるから説明を省略する。
【0129】
〈有機溶剤〉
白色インク組成物は、有機溶剤を含有してもよい。白色インク組成物における有機溶剤の種類や含有量等については、前述の反応液と同様であるから説明を省略する。
【0130】
特に、白色インク組成物は、さらに標準沸点280℃以上の有機溶剤をインク組成物の総量に対し1.0質量%以上含有することが好ましく、3.0質量%以上含有することがより好ましく、5.0質量%以上含有することがさらに好ましい。標準沸点280℃以上の有機溶剤を上記範囲で含有する場合には、インクジェットヘッドのノズルが保湿され、吐出信頼性を良好にできる。このような態様は、反応液と白色インク組成物が同一の主走査で付着され、ノズルにおいて凝集物が生じやすい本実施形態に係るインクジェット記録方法において有用である。
【0131】
〈水〉
白色インク組成物は、水を含有してもよい。白色インク組成物における水の種類や含有量等については、前述の反応液と同様であるから説明を省略する。
【0132】
〈その他の成分〉
白色インク組成物は、必要に応じて、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。このような添加剤を含有させる場合の含有量は、白色インク組成物の総量に対して0.1~5質量%が好ましく、0.1~3質量がより好ましく、0.1~1質量%がさらに好ましい。
【0133】
〈製造方法及び物性〉
白色インク組成物における製造方法及び物性は、前述の反応液と同様であるから説明を省略する。
【0134】
1.3 加熱乾燥工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、前述の反応液付着工程及びインク付着工程の後に、布帛に付着されたインク等を加熱乾燥する工程(加熱乾燥工程)を備えていてもよい。
【0135】
加熱乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、ベルトコンベアオーブン、常圧スチーム法、高圧スチーム法、サーモフィックス法などが挙げられる。加熱乾燥の際の熱
源は、特に限定されないが、例えば、赤外線ランプなどを用いることができる。
【0136】
加熱乾燥温度は、インクに含み得る樹脂粒子が融着され、かつ水分等の媒体が揮発する温度であることが好ましい。加熱乾燥温度は、例えば、100℃以上250℃以下であることが好ましく、120℃以上230℃以下であることがより好ましく、140℃以上210℃以下であることがさらに好ましく、160℃以上200℃以下であることが特に好ましい。ここで、加熱乾燥工程における加熱乾燥温度とは、布帛に形成された画像等の表面温度を指す。加熱乾燥を施す時間は、特に限定されないが、例えば、30秒以上20分以下であることが好ましく、2分以上5分以下であることがより好ましい。
【0137】
1.4 その他の工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、記録を行った布帛を水洗する工程、再度加熱乾燥を行う工程などを備えていてもよい。水洗においては、必要に応じ、ソーピング処理として、布帛に定着されなかったインク等の成分を、熱石けん液等を用いて洗い流してもよい。
【0138】
また、本実施形態に係るインクジェット記録方法は、非白色インク組成物を布帛に付着させる工程を備えていてもよい。
【0139】
非白色インク組成物は、白色顔料以外の色材を含有することが好ましい。色材は、顔料であっても染料であってもよい。色材以外の成分は、前述の白色インク組成物と同様とできる。
【0140】
顔料としては、カーボンブラック等の無機顔料、有機顔料等を用いることができる。有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料等を例示できる。
【0141】
1.5 インクジェット記録装置
本実施形態に係るインクジェット記録方法を行うことができるインクジェット記録装置の一例について説明する。
【0142】
図1は、インクジェット記録装置を模式的に示す概略断面図である。図2は、図1のインクジェット記録装置1のキャリッジ周辺の構成の一例を示す斜視図である。図1、2に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2と、IRヒーター3と、プラテンヒーター4と、加熱ヒーター5と、冷却ファン6と、プレヒーター7と、通気ファン8と、キャリッジ9と、プラテン11と、キャリッジ移動機構13と、搬送手段14と、制御部CONTを備える。インクジェット記録装置1は、図2に示す制御部CONTにより、インクジェット記録装置1全体の動作が制御される。
【0143】
インクジェットヘッド2は、白色インク組成物及び反応液(以下、「インク等」ともいう。)をインクジェットヘッド2のノズルから吐出して付着させることにより布帛Mに記録を行う構成である。図1及び図2に示す、インクジェットヘッド2は、シリアル式のインクジェットヘッドであり、布帛Mに対して相対的に主走査方向に複数回走査してインク等を布帛Mに付着させるものである。インクジェットヘッド2は図2に示すキャリッジ9に搭載される。インクジェットヘッド2は、キャリッジ9を布帛Mの媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構13の動作により、布帛Mに対して相対的に主走査方向に複数回
走査される。媒体幅方向とは、インクジェットヘッド2の主走査方向である。主走査方向への走査を主走査ともいう。
【0144】
またここで、主走査方向は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9の移動する方向である。図1においては、矢印SSで示す布帛Mの搬送方向である副走査方向に交差する方向である。図2においては、布帛Mの幅方向、つまりS1-S2で表される方向が主走査方向MSであり、T1→T2で表される方向が副走査方向SSである。なお、1回の走査で主走査方向、すなわち、矢印S1又は矢印S2の何れか一方の方向に走査が行われる。そして、インクジェットヘッド2の主走査と、布帛Mの搬送である副走査を複数回繰り返し行うことで、布帛Mに対して記録する。
【0145】
インクジェットヘッド2にインク等を供給するカートリッジ12は、独立した複数のカートリッジを含む。カートリッジ12は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9に対して着脱可能に装着される。複数のカートリッジのそれぞれには異なる種類のインク等を充填させることができ、カートリッジ12から各ノズルにインク等が供給される。なお、カートリッジ12には、白色インク組成物及び反応液以外の、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、オレンジ等の色を呈する非白色インク組成物が個別に収納されていてもよく、任意に組み合わせて用いることが可能である。また、図1及び図2では、カートリッジ12はキャリッジ9に装着される例を示しているが、これに限定されず、キャリッジ9以外の場所に設けられ、図示しない供給管によって各ノズルに供給される形態でもよい。
【0146】
インクジェットヘッド2の吐出には従来公知の方式を使用することができる。ここでは、圧電素子の振動を利用して液滴を吐出する方式、すなわち、電歪素子の機械的変形によりインク滴等を形成する吐出方式を使用する。
【0147】
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2からインク等を吐出して布帛に付着させる際に布帛Mを加熱する一次加熱機構を備えることができる。一次加熱機構は、伝導式、送風式、放射式などを用いることができる。伝導式は布帛Mに接触する部材から熱を記録媒体に伝導する。例えばプラテンヒーターなどがあげられる。送風式は常温風又は温風を記録媒体に送りインク等を乾燥させる。例えば送風ファンがあげられる。放射式は熱を発生する放射線を布帛に放射して記録媒体を加熱する。例えばIR放射があげられる。また、図示しないがプラテンヒーター4よりもSS方向のすぐ下流側にプラテンヒーターと同様のヒーターが設けられていてもよい。これら一次加熱機構は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。例えば、一次加熱機構として、IRヒーター3及びプラテンヒーター4を備える。なお、一次加熱機構は、布帛Mを乾燥・加熱できる位置に設けられていれば、その設置位置は特に限定されず、インクジェット記録装置1とは独立して設置してもよい。
【0148】
なお、IRヒーター3を用いると、インクジェットヘッド2側から赤外線の輻射により放射式で布帛Mを加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4等の布帛Mの裏面から加熱される場合と比べて、布帛Mの厚さの影響を受けずに昇温することができる。なお、温風又は環境と同じ温度の風を布帛Mにあてて布帛M上のインク等を乾燥させる各種のファン(例えば通気ファン8)を備えてもよい。
【0149】
プラテンヒーター4は、インクジェットヘッド2に対向する位置において布帛Mを、プラテン11を介して加熱することができる。プラテンヒーター4は、布帛Mを伝導式で加熱可能なものであり、インクジェット記録方法では、必要に応じて用いられる。
【0150】
また、インクジェット記録装置1は、布帛Mに対してインク等が付着される前に、布帛Mを予め加熱するプレヒーター7を備えていてもよい。
【0151】
インク付着工程及び反応液付着工程後に、布帛Mを加熱して、インク等を乾燥させ、定着させる後加熱機構を備えてもよい。なお、後加熱機構は、布帛Mを乾燥・加熱できる位置に設けられていれば、その設置位置は特に限定されず、インクジェット記録装置1とは独立して設置してもよい。
【0152】
後加熱機構に用いる加熱ヒーター5は、布帛Mに付着されたインク等を乾燥及び固化させるものである。加熱ヒーター5が、画像が記録された布帛Mを加熱することにより、インク等に含まれる水分等がより速やかに蒸発飛散して、インク中に含まれ得る樹脂粒子によってインク膜が形成される。このようにして、布帛M上においてインク膜が強固に定着又は接着して造膜性が優れたものとなり、優れた高画質な画像が短時間で得られる。
【0153】
インクジェット記録装置1は、冷却ファン6を有していてもよい。布帛Mに記録されたインク等を乾燥後、冷却ファン6により布帛M上のインクを冷却することにより、布帛M上に密着性よくインク塗膜を形成することができる。
【0154】
キャリッジ9の下方には、布帛Mを支持するプラテン11と、キャリッジ9を布帛Mに対して相対的に移動させるキャリッジ移動機構13と、布帛Mを副走査方向に搬送するローラーである搬送手段14を備える。キャリッジ移動機構13と搬送手段14の動作は、制御部CONTにより制御される。
【0155】
2.実施例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。
【0156】
2.1 反応液の調製
表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、組成1~6に係る反応液を得た。なお、イオン交換水は、組成物の全質量が100質量%となるように添加した。
【0157】
【表1】
【0158】
2.2 白色インク組成物の調製
表2の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、組成A~Cに係る白色インク組成物を得た。なお、酸化チタン分散体及びウレタン樹脂の表中の数値は固形分量を表す。なお、イオン交換水は、組成物の全質量が100質量%となるように添加した。また、白色顔料は、事前に以下の手順によって調製した顔料分散液を用いた。
【0159】
顔料としてC.I.ピグメントホワイト6(比重:4.2g/mL)を使用し、顔料分散剤としてアニオン性樹脂分散剤を用いた。具体的には、スチレン55質量%、アクリル酸20質量%、メチルメタクリレート30質量%を用いて合成したスチレン-アクリル樹脂を用いた。顔料3質量部に対し、分散剤1質量部とイオン交換水10質量部を用いて混合し、得られた混合物をプレミックスした後、ビーズミル分散機(寿工業(株)製、UAM-015)を用い、直径0.03mmのジルコニアビーズで周速10m/s、液温30℃で15分間分散させ、遠心分離機(久保山商事(株)製、Model-3600)で粗大粒子を遠心分離して酸化チタンの分散体を得た。
【0160】
【表2】
【0161】
表1及び表2の記載事項について、説明を補足する。
【0162】
・タケラックWS-6021(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)
・BYK-348(商品名、BYK社製)
・KF-6004(商品名、信越化学工業社製)
・オルフィンE1010(商品名、日信化学工業社製)
【0163】
粘度は、粘弾性試験機MCR-300(商品名、Pysica社製)を用いて20℃の環境下で測定を行った。また、表面張力は、自動表面張力計CBVP-Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを反応液又は白色インク組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定を行った。
【0164】
2.3 記録条件
上記の調製により得られた反応液及び白色インク組成物を用いて、下記条件ならびに表3及び表4に記載の条件にて記録を行い、各実施例及び各比較例に係る捺染物を得た。
【0165】
・印刷機:SC-F2000(セイコーエプソン社製)改造機。
・乾燥:ベルトコンベアオーブン(M&R社製,Fusion R 36-6-4)を
用いて、180℃、3分の条件で、反応液及び白色インク組成物を付着させた布帛を乾燥させた。
・布帛:綿100%、黒Tシャツ(Printstar)、有色部のL値 12 [-]。
・反応液及び白色インク組成物付着条件:解像度1440×720dpi、360ノズル/列×4列、打込量30ng/ドット、反応液と白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着させた。
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
表3及び表4の記載事項について、説明を補足する。
【0169】
・「総打込量(1パス目)」とは、同一の走査領域に対する1回目の主走査で布帛に付着される反応液と白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量である。
・「総打込量(2パス目)」とは、同一の走査領域に対する2回目の主走査で布帛に付着される反応液と白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量である。
・「印刷面の総打込量」とは、同一の走査領域に対する1回目からn回目(nは各例における印刷面の総キャリッジパス数)までの主走査で布帛に付着される反応液と白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量である。
なお、打込量は、印刷前後の布帛重量を測定し、その差分を打込重量として算出した。
【0170】
・「反応液とインクの等量混合液の粘度」は、レオメーター(Anton paar,MCR302e)の円盤状の非回転プレート及び円盤状の回転プレートからなる測定部において、非回転プレートの中心に関して対称となるように反応液と白色インク組成物を非回転プレート上に等量滴下し、せん断速度50[s-1]、プレート回転開始から10秒後の液粘度を測定して求めた。
【0171】
2.4 評価方法
2.4.1 画質(白色度)
上記で得られた捺染物において、蛍光分光濃度計(コニカミノルタ株式会社、FD-7)を用いてL値(白色度)を測定し、以下の基準により画質(白色度)を判定した。C以上であれば良好であると判断した。
(判定基準)
A:L 86[-]以上
B:L 80-85[-]
C:L 75-79[-]
D:L 70-74[-]
E:L 69「-]以下
【0172】
2.4.2 毛羽立ち
上記で得られた捺染物において、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE,VHX-5000)の3D観察機能を用いて、布帛表面から飛出した繊維(毛羽)の高さを測定し、以下の基準により毛羽立ちを判定した。C以上であれば良好であると判断した。なお、毛羽10点の平均値を『毛羽高さ』とした。また、印捺前の布帛の毛羽高さも同様にして測定し、表3及び表4に記載した。
(判定基準)
A:毛羽高さ 200μm未満
B:毛羽高さ 200μm-299μm
C:毛羽高さ 300μm-399μm
D:毛羽高さ 400μm-499μm
E:毛羽高さ 500μm以上
【0173】
2.4.3 放置信頼性
SC-F2000(セイコーエプソン)改造機に上記の調製により得られた反応液及び白色インク組成物を充填し、プリンターヘッドを放置キャップでシールした状態で、放置温度40℃、湿度20%の条件下で2日間放置した。放置後にノズルチェックパターンを実施し、ノズル抜け本数をカウントし、以下の基準により放置信頼性を判定した。
(判定基準)
A:中クリーニング3回後の抜けノズル本数なし
B:中クリーニング3回後の抜けノズル本数1-5本
C:中クリーニング3回後の抜けノズル本数6-10本
D:中クリーニング3回後の抜けノズル本数11-15本
E:中クリーニング3回後の抜けノズル本数16本以上
【0174】
2.5 評価結果
評価結果を、表3~4に示した。反応液を布帛に付着させる反応液付着工程と、白色インク組成物を前記反応液が付着した布帛に付着させるインク付着工程と、を備え、前記反応液は、凝集剤として、多価金属塩、カチオンポリマー、有機酸から選択される1種以上を含有し、前記白色インク組成物は、白色顔料及び樹脂粒子の少なくともいずれかを含有し、前記反応液付着工程及び、前記インク付着工程は、インクジェット法により行われ、前記インクジェット法は、インクジェットヘッドを布帛の搬送方向と垂直方向に移動させて記録を行う主走査を複数回行うものであり、前記反応液と前記白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着させ、前記同一の走査領域に対して、前記同一の主走査を複数回行うものであり、前記同一の走査領域に対する1回目の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(1パス目付着量)と、n回目(nは2以上の整数)の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(nパス目付着量)との関係が以下である、インクジェット記録方法に係る各実施例は、何れも毛羽立ちを良好に抑制でき、かつ良好な画質(白色度)が得られた。
(1パス目付着量)>(nパス目付着量)
(1パス目付着量)+(nパス目付着量)≧20mg/inch
【0175】
これに対して、そうではない各比較例では、何れも毛羽立ちの抑制及び画質(白色度)の少なくとも一方が劣った。
【0176】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0177】
インクジェット記録方法の一態様は、
反応液を布帛に付着させる反応液付着工程と、
白色インク組成物を前記反応液が付着した布帛に付着させるインク付着工程と、を備え、
前記反応液は、凝集剤として、多価金属塩、カチオンポリマー、有機酸から選択される1種以上を含有し、
前記白色インク組成物は、白色顔料及び樹脂粒子の少なくともいずれかを含有し、
前記反応液付着工程及び、前記インク付着工程は、インクジェット法により行われ、
前記インクジェット法は、インクジェットヘッドを布帛の搬送方向と垂直方向に移動させて記録を行う主走査を複数回行うものであり、
前記反応液と前記白色インク組成物とを同一の主走査により布帛の同一の走査領域に対して付着させ、
前記同一の走査領域に対して、前記同一の主走査を複数回行うものであり、
前記同一の走査領域に対する1回目の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(1パス目付着量)と、n回目(nは2以上の整数)の主走査で布帛に付着される前記反応液と前記白色インク組成物の単位面積あたりの合計付着量(nパス目付着量)との関係が以下である。
(1パス目付着量)>(nパス目付着量)
(1パス目付着量)+(nパス目付着量)≧20mg/inch
【0178】
上記インクジェット記録方法の一態様において、
前記1パス目付着量は、10mg/inch以上であってもよい。
【0179】
上記インクジェット記録方法のいずれかの態様において、
前記同一の走査領域に対する、前記同一の主走査で付着される前記反応液と前記白色インク組成物の着弾時間差が、3.0秒以内であってもよい。
【0180】
上記インクジェット記録方法のいずれかの態様において、
前記反応液及び前記白色インク組成物の粘度が、5.0mPa・s以上であってもよい。
【0181】
上記インクジェット記録方法のいずれかの態様において、
前記反応液及び前記白色インク組成物の等量混合物の粘度が、90mPa・s以上であってもよい。
【0182】
上記インクジェット記録方法のいずれかの態様において、
前記反応液は、さらにHLB値10以上の界面活性剤を含有してもよい。
【0183】
上記インクジェット記録方法のいずれかの態様において、
前記界面活性剤は、シリコン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤であってもよい。
【0184】
上記インクジェット記録方法のいずれかの態様において、
前記白色インク組成物は、さらに標準沸点280℃以上の有機溶剤をインク組成物の総量に対し5.0質量%以上含有してもよい。
【0185】
上記インクジェット記録方法のいずれかの態様において、
前記布帛は、L70以下の有色布帛であってもよい。
【0186】
上記インクジェット記録方法のいずれかの態様において、
前記布帛は、綿布帛または綿を含む混紡布帛であってもよい。
【0187】
上記インクジェット記録方法のいずれかの態様において、
前記布帛は、前記布帛を構成する繊維束から繊維が飛出した毛羽を有し、前記繊維束表面と前記毛羽の頂点との垂直方向における長さが、50μm以上である毛羽を含んでいてもよい。
【0188】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成、を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0189】
1…インクジェット記録装置、2…インクジェットヘッド、3…IRヒーター、4…プラテンヒーター、5…加熱ヒーター、6…冷却ファン、7…プレヒーター、8…通気ファン、9…キャリッジ、11…プラテン、12…カートリッジ、13…キャリッジ移動機構、14…搬送手段、CONT…制御部、MS…主走査方向、SS…副走査方向、M…布帛
図1
図2