(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098261
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】トノカバー装置
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B60R5/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001651
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】下平 敦司
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA03
3D022BB03
3D022BB04
3D022BC06
(57)【要約】
【課題】ボードが大きく回転することを抑えられるようにすることを目的とする。
【解決手段】トノカバー装置20は、トノカバー22と、車両後方を向く面に前記トノカバー22を引出収納可能な開口38が形成されているケース36と、前記トノカバー22の他端部に結合しているステイ62と、前記ケース36における前記開口38の上縁部39及び下縁部40に係合可能な係合部71を有する係止部材66と、前記係合部71が前記上縁部39及び前記下縁部40に係合した状態では前記ケース36より車両後方に支持されるボード74と、を備える。前記下縁部40が前記上縁部39より車両後方に位置し、前記開口38より上方であって前記上縁部39より車両後方の位置に延長部41が設けられている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室を覆うトノカバーと、
前記トノカバーの一端部が取り付けられている巻取シャフトと、
前記巻取シャフトを回転可能に支持すると共に前記トノカバーを巻き取る方向に付勢した状態で収容しており、車両後方を向く面に前記トノカバーを引出収納可能な開口が形成されているケースと、
前記トノカバーの他端部に結合しているステイと、
前記ケースにおける前記開口の上縁部及び下縁部に係合可能な係合部を有し、前記ステイの両端それぞれに取り付けられている係止部材と、
前記ステイに取り付けられていると共に前記ステイより車両後方に突出しており、前記係合部が前記上縁部及び前記下縁部に係合した状態では前記ケースより車両後方に支持されるボードと、
を備え、
前記下縁部が前記上縁部より車両後方に位置し、
前記開口より上方であって前記上縁部より車両後方の位置に延長部が設けられている、トノカバー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトノカバー装置であって、
前記延長部の下端は、前記上縁部の下端と同じ高さに設けられている、トノカバー装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のトノカバー装置であって、
前記延長部の後端は、前記下縁部の上方に位置している、トノカバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、トノカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両後部の荷室を遮蔽するトノカバーシートと、該トノカバーシートをスリット状開口を介して巻取り収納可能となるように、巻取り方向に回転付勢手段を設けた巻取り軸を内蔵したケースとをもってなる車両用トノカバー装置を開示している。前記トノカバーシートの先端には、把持ボードが結合されている。前記トノカバーシートを展開時に前記荷室側部に設けた係止装置に係止可能な係止フックが前記把持ボードの両端に取り付けられる。前記係止フックは前記ケースへの係合手段を有する。前記係合手段はケースに設けたスリット状開口と係合する上下の緩衝係合部材からなる。前記トノカバーシートの巻取り収納時に、前記スリット状開口におけるケース上縁厚肉部と前記係合手段の上緩衝係合部材が係合し、かつケース下縁厚肉部と前記係合手段の下緩衝係合部材とが係合して、前記把持ボードを水平に支持する第1の把持ボード支持状態をとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のトノカバー装置が第1の把持ボード支持状態にあるとき、ケース上縁厚肉部と上緩衝係合部材との係合を解除するため、把持ボードは、スリット状開口から遠くに位置する端部が上方に向かうように回転することが許容されている。
【0005】
ここで、把持ボードは、解除操作以外のときにも、車両からの振動などに起因する力を受けて、端部が上方へ向かうように回転し得る。この場合、把持ボードにかかる力が解消されると、把持ボードは回転姿勢から水平姿勢に戻る。このとき、把持ボードがバタついて異音が発生したり、上緩衝係合部材とケース上縁厚肉部との係合が意図せずに解除されたりする恐れがある。把持ボードの回転量が大きくなると、その分、大きな異音が生じたり、上緩衝係合部材とケース上縁厚肉部との係合が意図せず解除される恐れが高まったりし得る。
【0006】
そこで、本開示は、ボードが大きく回転することを抑えられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、トノカバー装置は、車両の荷室を覆うトノカバーと、前記トノカバーの一端部が取り付けられている巻取シャフトと、前記巻取シャフトを回転可能に支持すると共に前記トノカバーを巻き取る方向に付勢した状態で収容しており、車両後方を向く面に前記トノカバーを引出収納可能な開口が形成されているケースと、前記トノカバーの他端部に結合しているステイと、前記ケースにおける前記開口の上縁部及び下縁部に係合可能な係合部を有し、前記ステイの両端それぞれに取り付けられている係止部材と、前記ステイに取り付けられていると共に前記ステイより車両後方に突出しており、前記係合部が前記上縁部及び前記下縁部に係合した状態では前記ケースより車両後方に支持されるボードと、を備え、前記下縁部が前記上縁部より車両後方に位置し、前記開口より上方であって前記上縁部より車両後方の位置に延長部が設けられている、トノカバー装置である。
【発明の効果】
【0008】
このトノカバー装置によると、ボードが大きく回転することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】トノカバー装置が車両に組込まれた状態を示す説明図である。
【
図4】トノカバー装置を示す部分拡大斜視図である。
【
図8】車両の振動を受けたときの動作を示す説明図である。
【
図9】第1参考例にかかるトノカバー装置を示す説明図である。
【
図10】第2参考例にかかるトノカバー装置の解除操作時の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るトノカバー装置について説明する。
図1はトノカバー装置20が車両10に組込まれた状態を示す説明図である。なお、本開示の各図におけるFRONT、REARは車両10の前及び後ろに対応し、UP、LOWは車両10の上及び下に対応し、LEFT、RIGHTは車両10の左及び右に対応する。
【0011】
トノカバー装置20は、後方に荷室11が設けられた車両10に設けられる。荷室11は、シート(seat)16の背もたれ部分17の後方に広がっている。シート16は、例えば、前から2列目又は3列目のリアシートである。荷室11は、フロア12上における背もたれ部分17の後方で、両側壁13間に位置する。側壁13には、ウインドウ13wが設けられる。荷室11の上方にはルーフ14が設けられている。荷室11の後方は開口しており、当該開口はバックドア15によって開閉される。
【0012】
図1に示す例では、両側壁13のそれぞれが、受凹部18と引出側受凹部19とを備える。従って、受凹部18及び引出側受凹部19のそれぞれは、車幅方向に沿って互いに離れた位置に一対設けられる。受凹部18は、背もたれ部分17の上部後方位置に設けられる。引出側受凹部19は、受凹部18に対して後方に離れた位置に設けられる。受凹部18と引出側受凹部19とは、上方及び車幅方向中央側が開口する凹形状に形成されている。
【0013】
トノカバー装置20は、上記のような荷室11に組込まれる。トノカバー装置20は、荷室11のフロア12上に載置された物品を上方から覆う位置に配置される。例えば、トノカバー装置20は、フロア12の上方に離れた位置であって、ウインドウ13wよりも下方位置において、水平方向に延在するように配置される。トノカバー装置20は、トノカバー22と、巻取支持装置30と、引出機構60とを備える。トノカバー22は荷室11を覆う。巻取支持装置30は、トノカバー22を引出し可能に巻取る装置である。トノカバー22は、巻取支持装置30から引き出された引出状態と、巻取支持装置30に巻き取られた巻取状態との間で状態変更可能である。
図1では、トノカバー22が引出状態にあるトノカバー装置20が示されている。引出機構60はトノカバー22の先端部に設けられる。トノカバー22の巻取状態において、引出機構60は巻取支持装置30の外部に位置する部分を含む。操作者は、引出機構60を把持することで巻取状態のトノカバー22を引出しやすい。
【0014】
巻取支持装置30が車幅方向に沿って延在した状態で、巻取支持装置30の両端部のそれぞれが一対の受凹部18に保持される。巻取支持装置30からトノカバー22が引出され、引出機構60のうち車両前方部分が一対の引出側受凹部19に保持される。これにより、トノカバー22が巻取支持装置30から後方に引出され、荷室11を覆った引出状態に保たれる。引出機構60のうち車両後方部分が、荷室のうち引出側受凹部19よりも車両後方部分を覆う。巻取支持装置30は、引出状態のトノカバー22を巻取って巻取状態とすることができる。トノカバー22が巻取状態となることで、荷室11内に上下に連続して広がる収納空間が形成される。
【0015】
トノカバー装置20の各部の構成について、より具体的に説明する。
図2はトノカバー装置20を示す分解斜視図である。
図3はトノカバー装置20を示す平面図である。
図4はトノカバー装置20を示す部分拡大斜視図である。
図5は
図3のV-V線断面図である。
図5において、サイドカバー44及びホルダ54などの一部の部材の記載が省略されている。
【0016】
トノカバー22は、平面状に展開可能でかつ巻取りのための変形が可能である。トノカバー22は、樹脂シート又は糸を編んだ布等によって形成された柔軟シートである。トノカバー22の基端部が巻取支持装置30の巻取シャフト32に取付けられている。トノカバー22の先端部が引出機構60と連結されている。
【0017】
巻取支持装置30は、巻取シャフト32と、ケース36とを備える。
【0018】
巻取シャフト32は、車幅方向に沿って長尺な部材であり、トノカバー22の基端部がその長手方向に沿って取付けられている。巻取シャフト32が回転すると、トノカバー22が巻取シャフト32に巻取られる。巻取シャフト32は、例えば、金属等で形成された筒状の部材である。
【0019】
ケース36は、巻取シャフト32を回転可能に支持する。ケース36は、巻取シャフト32をトノカバー22の巻取方向に付勢した状態で収容している。ケース36のうち車両後方を向く面にトノカバー22を引出収納可能な開口38が形成されている。ここでは、ケース36は、ケース本体37と、一対のサイドカバー44と、巻取付勢部材48とを備える。
【0020】
ケース本体37は、巻取シャフト32及び当該巻取シャフト32に巻取られたトノカバー22を収容可能な筒状に形成されている。本実施形態では、ケース本体37は、4角筒の角を丸めた筒状に形成されている。ケース本体37は、円筒状、楕円筒状、3角筒状又は5角筒状であってもよい。ケース本体37のうち後方を向く面に、開口38が形成されている。開口38は、ケース本体37の長手方向に沿って形成されている。ケース本体37のうち後方を向く面が開口38によって上下方向に分断されることによって、ケース本体37は開口38の縁部として上縁部39及び下縁部40を有している。巻取状態において、上縁部39及び下縁部40に引出機構60が係合している。ケース本体37は上縁部39よりも車両後方に位置する延長部41を有する。上縁部39、下縁部40及び延長部41について、詳しくは後述する。ケース本体37は、例えば、アルミニウム等の金属、又は、樹脂によって形成される。例えば、ケース本体37は、
図5に示す断面形状と同一の断面形状が長手方向に連続する押出成形品であってもよい。
【0021】
サイドカバー44は、ケース本体37の長手方向に沿った端部開口を塞ぎ、かつ、巻取シャフト32を回転可能に支持する部材である。本実施形態では、サイドカバー44は、カバー本体45と、回転支持凸部46とを備える。サイドカバー44は、例えば、樹脂による金型成形部品である。サイドカバー44は、例えば、ネジSなどによって、ケース本体37に螺合締結されている。
【0022】
カバー本体45は、ケース本体37の長手方向に沿った端部開口に嵌め込まれるようにして、当該ケース本体37の端部の一定位置に取付けられる。回転支持凸部46は、カバー本体45のうちケース本体37の長手方向中央を向く面に突設される。回転支持凸部46は、ケース本体37の長手方向に沿って当該ケース本体37の長手方向中央に向って突出する円柱状に形成されている。
【0023】
ケース本体37の両端に設けられた一対のサイドカバー44の回転支持凸部46が、巻取シャフト32の長手方向に沿った両端の開口に挿入されることで、巻取シャフト32がケース本体37内で回転可能に支持される。本実施形態では、巻取シャフト32の両端部に、端部材34が回転止された状態で挿入されている。端部材34は、樹脂等で形成された筒状の部材である。回転支持凸部46は、端部材34内に回転可能に挿入されている。つまり、回転支持凸部46と巻取シャフト32の端部開口との間に、端部材34が介在している。回転支持凸部46に対して端部材34が回転することによって、巻取シャフト32がサイドカバー44に対して回転することができる。
【0024】
巻取付勢部材48は、巻取シャフト32をサイドカバー44に対して、トノカバー22を巻取る方向に付勢する。本実施形態では、巻取付勢部材48は、コイルバネである。巻取付勢部材48は、巻取シャフト32内に当該巻取シャフト32の長手方向に沿って配設される。巻取付勢部材48の一端部が一方の回転支持凸部46に回転止状態で固定されている。巻取付勢部材48の他端部が、シャフト内固定部50を介して巻取シャフト32の内周部に回転止状態で固定されている。なお、巻取付勢部材48にはゴムチューブ52が外装されている。ゴムチューブ52が巻取付勢部材48と巻取シャフト32との間に介在することで、巻取シャフト32と巻取付勢部材48との接触によるがたつき音の発生が抑制される。なお、巻取付勢部材48がコイルバネであることは必須ではなく、渦巻バネ等であってもよい。
【0025】
巻取状態において、引出機構60が開口38の周りでケース本体37に接触するまでトノカバー22が巻取シャフト32に巻取られている。この状態で、巻取シャフト32と一方のサイドカバー44との間で巻取付勢部材48が捩られており、当該捩りを解消しようとする復元力によって、巻取付勢部材48は、巻取シャフト32をトノカバー22の巻取方向に付勢する。
【0026】
上記巻取状態からトノカバー22が引出されると、巻取付勢部材48がさらに捩られ、巻取付勢部材48に巻取シャフト32を巻取方向に付勢する力が蓄えられる。引出機構60が引出側受凹部19に保持された状態では、巻取支持装置30と引出機構60との間で、トノカバー22が引っ張られた状態に保持される。
【0027】
引出側受凹部19による引出機構60の保持力が解除されると、巻取付勢部材48の付勢力によって巻取シャフト32が巻取方向に回転し、巻取シャフト32にトノカバー22が巻取られる。
【0028】
なお、本実施形態では、トノカバー装置20は、ホルダ54と、ホルダ付勢部材56とを備える。ここではホルダ54及びホルダ付勢部材56は、ケース36の両端に設けられている。ホルダ54及びホルダ付勢部材56は、ケース36の一方の端部のみに設けられてもよいし、省略されてもよい。
【0029】
ホルダ54は、樹脂等で形成された部材であり、ケース36の端部に外装可能に構成されている。より具体的には、ホルダ54は、一端が開口すると共に他端が閉塞された筒状の部材である。ホルダ54は、ケース36の端部の外周面を覆った状態で、当該ケース36の端部に当該ケース36の長手方向に沿って移動可能に取付けられている。
【0030】
ケース36の外向き端面であるサイドカバー44とホルダ54内の奥側の閉鎖端との間にホルダ付勢部材56が配置される。ホルダ付勢部材56は、例えば、コイルバネである。ホルダ付勢部材56が圧縮状態から元の形状に戻ろうとする弾性力によって、ホルダ54がケース36の長手方向外側に向けて付勢される。
【0031】
巻取支持装置30の両端のホルダ54が一対の受凹部18に支持された状態では、ホルダ付勢部材56が圧縮されている。この場合、ホルダ付勢部材56の弾性力によってホルダ54の外向き面が受凹部18を押付ける。これにより、受凹部18内における巻取支持装置30のがたつきが抑制される。
【0032】
引出機構60は、ステイ62と、一対の係止部材66と、ボード74とを含む。
【0033】
ステイ62は、トノカバー22の先端部に結合している。ステイ62は、車幅方向に沿って延びる。ここではステイ62は車幅方向中間部に位置する第1保持部63と車幅方向両端部に位置する第2保持部64とを有する。第1保持部63は、両端及び側面が開口する筒状に形成される。
図5に示す例では、第1保持部63の車幅方向両端部はU字状に形成されている。第1保持部63はボード74の前方部分を挟んで保持する。第1保持部63の車幅方向中間部には上下方向それぞれに突出する凸部が設けられている。第2保持部64は、第1保持部63のうちの車幅方向両端部から突出する。ここでは第1保持部63のうちU字の両端に相当する部分から第2保持部64が突出する。第2保持部64は、ステイ62の一端部及び他端部のそれぞれにおいて、上下方向に互いに離れた一対の板状部分によって構成される。第2保持部64は、トノカバー22及びボード74よりも車幅方向外側にはみ出す。第1保持部63の端部及び第2保持部64に係止部材66が取り付けられる。ステイ62は、例えば、金属板の曲げ加工などによって形成される。
【0034】
係止部材66は、ステイ62の両端それぞれに取り付けられている。係止部材66は、本体部67と、係止部70と、係合部71とを有する。係止部材66は、例えば、樹脂による金型成形部品である。
【0035】
本体部67は収容空間68を有する筒状に形成されている。本体部67のうち車幅方向中央を向く面と、車両前後方向両端とが開口している。本体部67のうち車幅方向中央を向く面の開口と、車両前後方向両端の開口とが連通してスリット状をなしている。収容空間68にトノカバー22の一部、ステイ62の一部及びボード74の一部が収容される。収容空間68のうち車両前方部分には、トノカバー22が収容され、ステイ62及びボード74は収容されない。収容空間68のうち車両後方部分には、トノカバー22及びボード74が収容され、ステイ62は収容されない。収容空間68のうち車両前方部分と車両後方部分との間の中間部分には、トノカバー22、ステイ62及びボード74が収容される。トノカバー22は本体部67のうち車幅方向中央を向く面の開口と、車両前後方向両端の開口とから延び出ている。ステイ62は本体部67のうち車幅方向中央を向く面の開口から延び出ており、車両前後方向両端の開口からは延び出ていない。ボード74は本体部67のうち車幅方向中央を向く面の開口と車両前後方向後端の開口とから延び出ており、車両前後方向前端の開口38からは延び出ていない。
【0036】
本体部67には固定孔69が形成されている。固定孔69は本体部67を上下方向に貫通する。固定孔69は、収容空間68のうち車両前後方向中間部分に連通する位置に形成されている。ステイ62のうち収容空間68に収容される部分であって、固定孔69に対応する部分にも固定孔が形成される。ステイ62の固定孔及び本体部67の固定孔69にネジ又はリベットなどの締結部材が締結されることにより、係止部材66とステイ62とが固定される。ここではトノカバー22のうち収容空間68に収容される部分であって、固定孔69に対応する部分にも固定孔が形成され、締結部材によってトノカバー22も一緒に締結される。
【0037】
係止部70は本体部67のうち車両前後方向中間部の外面から車両幅方向外側に突出する。係止部70が上記引出側受凹部19に嵌め込まれて保持される。係止部70の内部は空洞となっている。係止部70の内部の空洞は、本体部67の内部の収容空間68と連通する。係止部70の内部の空洞に第2保持部64が挿し込まれている。
【0038】
係合部71は本体部67の前方に設けられる。係合部71は、巻取状態において、ケース36における開口38の上縁部39及び下縁部40に係合可能である。巻取状態において、引出機構60にはトノカバー22を介して巻取付勢力がかかっている。係合部71は、巻取付勢力によって引出機構60が開口38を通じてケース本体37の内部に入り込みすぎることを抑制する。また、巻取状態において、引出機構60の重心は開口38よりも後方に位置しており、引出機構60には自重によって車幅方向に延びる軸回りのトルクがかかっている。係合部71は、引出機構60が当該トルクによって車幅方向に延びる軸回りに回転することを抑制している。具体的には、係合部71は上縁係合部72と下縁係合部73とを有する。
【0039】
上縁係合部72は本体部67の前端から上方に突出する。上縁係合部72は上縁部39にケース本体37の内側から係合する。下縁係合部73は下縁部40にケース本体37の外側から係合する。下縁係合部73は本体部67のうち上縁係合部72が設けられる位置よりも後方の位置(ここでは係止部70がある位置)から下方に突出する。上縁係合部72及び下縁係合部73は、係止部材66が車幅方向に延びる軸に対して一方回り(
図5では時計回り)に回転する際に上縁部39及び下縁部40に係合し、他方回り(
図5では反時計回り)に回転する際に上縁部39及び下縁部40に係合しない。
【0040】
ボード74は、ステイ62に取り付けられている。ボード74はステイ62より車両後方に突出している。係合部71が上縁部39及び下縁部40に係合した状態ではケース36より車両後方に支持される。ボード74は水平方向に広がる板状に形成される。ボード74のうち車両前方部分は、第1保持部63に保持される。ここではボード74のうち車両前方部分であって車幅方向両端部に締結部材を避ける凹部が形成されている。ボード74のうち車両前方部分が第1保持部63に挟まれた状態で、ステイ62及び係止部材66が締結部材によって締結されることによって、ボード74がステイ62に取付けられた状態となる。ボード74も一緒に締結部材に締結されていてもよい。ボード74のうち車両後方部分はステイ62よりも車両後方に広がる。ボード74は、トノカバー22よりも剛性が高い。ボード74は、例えば、樹脂板、金属板又は木製板である。係止部材66が引出側受凹部19に嵌った状態で、ステイ62及びボード74の剛性によりボード74が水平姿勢に保たれて、荷室のうち引出側受凹部19よりも後方の部分を覆う。
【0041】
ここではトノカバー22の先端部はステイ62を越えてボード74の一面(ここでは上面)を覆う。ここではボード74の上面にはトノカバー22の先端部が貼られる。ボード74は、トノカバー22と共に、荷室のうち引出側受凹部19よりも車両後方部分を覆う。トノカバー22がステイ62を越えずにボード74がトノカバー22に代えて、荷室のうち引出側受凹部19よりも車両後方部分を覆ってもよい。
【0042】
ここでは引出機構60は、カバーシート76を含む。カバーシート76は、ボード74のうちトノカバー22に覆われる面とは反対側の面(ここでは下面)を覆う。カバーシート76の前端は、ステイ62よりも前方まで延び、トノカバー22と結合している。カバーシート76の後端は、ボード74の下面に貼り付けられている。トノカバー22、ボード74及びカバーシート76によって囲まれる空間にステイ62が収容される。当該空間は車幅方向両端が開口する筒状であり、当該空間の両端開口が係止部材66によって塞がれる。ステイ62及びボード74は、トノカバー22、係止部材66及びカバーシート76によって、外部への露出が抑制されている。
【0043】
一対の係止部材66が一対の引出側受凹部19に保持された状態では、トノカバー22は、巻取支持装置30と引出機構60との間で巻取付勢部材48の巻取付勢力により前方向に引っ張られることによって、水平状態に展開した状態に保たれる。ボード74は、自身の剛性によって、ステイ62から車両10の後方に向けて水平状態に延在する状態に保たれる。トノカバー22の引出しは操作者が引出機構60を手で掴むことによってなされる。
【0044】
<ケース本体と係止部材との係合について>
ケース本体37と係止部材66との係合について説明する。
図6は基準係合状態を示す説明図である。
【0045】
係止部材66がケース本体37の開口38の縁部に係合している状態であって、係止部材66に巻取付勢力以外の外力がかかっておらず、係止部材66が静止している状態を基準係合状態とする。基準係合状態において、ボード74は、水平姿勢をとる。当該水平姿勢とは、数学的に完全に水平な姿勢のほか、
図6に示すように、数学的に完全に水平な姿勢からわずかに傾いた姿勢(実質的に水平な姿勢)を含む。
【0046】
ケース本体37において、下縁部40が上縁部39より車両後方に位置する。開口38より上方であって上縁部39より車両後方の位置に延長部41が設けられている。ここでは延長部41はケース本体37に一体形成されている。延長部41は、ケース本体37とは別部材であってもよい。またここでは延長部41はケース本体37に対して車幅方向全長にわたって設けられている。延長部41は、ケース本体37に対して車幅方向の一部にのみ設けられていてもよい。
【0047】
ここでは開口38の上方において上縁部39及び延長部41が一体となるようにケース本体37が押出成形されており、ケース本体37には上縁部39及び延長部41を仕切る部分はない。この場合、上縁部39及び延長部41は、例えば、以下のように認識されてもよい。上縁部39及び延長部41が一体となった部分のうち、
図6の仮想線で示されるように下縁部40と同程度の肉厚の部分を上縁部39とし、それよりも後方の部分を延長部41としてもよい。なお、
図6の上縁部39を示す仮想線は、実際のケース本体37には現れない線である。
【0048】
図6に示すように、上縁部39は前端39Aと下端39Cとを有する。例えば、下端39Cは上縁部39のうち最も下方に位置する部分であり、前端39Aは上縁部39のうち下端39Cよりも前方に位置する部分である。基準係合状態において、上縁係合部72は前端39Aに係合している。ここでは下端39Cから前端39Aにかけて円柱の側面のような湾曲面とされている。また、
図6の仮想線で示される上縁部39の後端を上縁部39の仮想後端39Bとする。
【0049】
下縁部40は前端40Aと後端40Bと上端40Cとを有する。例えば、上端40Cは下縁部40のうち最も上方に位置する部分であり、前端40Aは下縁部40のうち上端40Cよりも前方に位置する部分であり、後端40Bは下縁部40のうち上端40Cよりも後方に位置する部分である。基準係合状態において、下縁係合部73は後端40Bに係合している。ここでは前端40Aから上端40Cを介して後端40Bにかけて円柱の側面のような湾曲面とされている。
【0050】
延長部41は、後端41Bと下端41Cとを有する。例えば、後端41Bは延長部41のうち最も後方に位置する部分であり、下端41Cは延長部41のうち最も下方に位置する部分である。
【0051】
上縁部39と下縁部40との前後方向における距離は適宜設定可能である。ここでは、上縁部39の仮想後端39Bが、下縁部40の前端40Aよりも前方に位置している。ここでは上縁部39の仮想後端39Bが、下縁部40の前端40Aよりも下縁部40の肉厚(下縁部40の前端40Aと後端40Bとの間隔)の1つから3つ分程度離れている。上縁部39の仮想後端39Bが、下縁部40の前端40Aと同じかそれよりも後方に位置していてもよい。またここでは、上縁部39の仮想後端39Bが、トノカバー22のうち巻取シャフト32に巻かれている部分の後端よりも後方に位置している。上縁部39の仮想後端39Bが、トノカバー22のうち巻取シャフト32に巻かれている部分の後端と同じかそれよりも前方に位置していてもよい。
【0052】
延長部41が設けられることによって、ケース本体37のうち上縁部39を含む部分が前後方向に厚肉とされている。これにより、ケース本体37のうち上縁部39を含む部分の剛性が高まり、上縁部39が上縁係合部72に押されても、その係合が解除されにくい。
【0053】
上縁部39に対して延長部41をどの程度設けるかは適宜設定可能である。ここでは延長部41の後端41Bは、下縁部40の上方に位置している。延長部41の後端41Bが、下縁部40の上方に位置するとは、下縁部40の前端40Aから上に延びる仮想線L1上、下縁部40の後端40Bから上に延びる仮想線L2上、又は、仮想線L1と仮想線L2との間に延長部41の後端41Bが位置していることを言う。もっとも、延長部41の後端41Bは、下縁部40の前端40Aよりも前方に位置してもよいし、下縁部40の後端40Bよりも後方に位置してもよい。ここでは上縁部39の仮想後端39Bと延長部41の後端41Bの間隔が、下縁部40の肉厚よりも大きい。上縁部39の仮想後端39Bと延長部41の後端41Bの間隔が、下縁部40の肉厚と同じかそれよりも小さくてもよい。
【0054】
ここでは延長部41の下端41Cは、上縁部39の下端39Cと同じ高さに設けられている。もっとも、延長部41の下端41Cは、上縁部39の下端39Cよりも上方に位置してもよいし、下方に位置してもよい。
【0055】
またここでは延長部41の下端41Cは、上縁部39の下端39Cと同じ高さで水平方向に連続している。従ってここでは、延長部41の下端41Cは、前後方向に沿って延長部41の後端41Bから上縁部39の下端39Cまで、かつ、車幅方向に沿ってケース本体37の全体にわたって水平面状に広がる平面部とされている。ここでは車両前後方向における平面部の寸法は、下縁部40の肉厚よりも大きい。もっとも、延長部41の下端41Cは平面部とされていなくてもよい。車両前後方向における平面部の寸法は、下縁部40の肉厚と同じかそれよりも小さくてもよい。
【0056】
またここではケース本体37は上縁部39及び延長部41から上側に延長された部分を有しており、ケース本体37のうち上縁部39を含む部分が前後方向に加えて上下方向にも厚肉とされている。これにより、ケース本体37のうち上縁部39を含む部分の剛性がより高まり、上縁部39が上縁係合部72に押されても、その係合がより解除されにくい。
【0057】
<操作者による係止部材の解除操作について>
操作者による係止部材66の解除操作について説明する。
図7は解除操作時の動作を示す説明図である。
図7において、二点鎖線(仮想線)で示される引出機構60が基準係合状態にあり、実線で示される引出機構60が操作者によって回転された状態にあり、一点鎖線で示される引出機構60が操作者によって車両後方に引き出された状態にある。
【0058】
操作者は、ボード74を介して基準係合状態にある引出機構60の車両後方部分を持ち上げて、矢符A1の向きに引出機構60を回転させる。これにより、引出機構60の車両前方部分が下がり、上縁係合部72と上縁部39との係合状態が解除される。そして、このまま引出機構60が回転すると、上縁係合部72の上端の位置が上縁部39の下端39Cの位置以下となる。この際、通常、操作者が引出機構60の車両後方部分を持ち上がる力が、引出機構60の自重よりも小さいと引出機構60は下縁部40を回転中心として回転し、引出機構60の自重以上だと引出機構60は上縁部39を回転中心として回転する。
図7では、引出機構60が下縁部40を回転中心として回転する様子が示されている。
【0059】
この状態で操作者は、引出機構60の車両後方部分を車両後方に(矢符A2の向きに)移動させる。これにより、引出機構60が車両後方に引き出される。このまま引出機構60が車両後方に引き出されると、上縁係合部72が開口38を通過する。操作者は、このまま引出機構60を車両後方に移動させて、係止部材66の係止部70を引出側受凹部19に嵌めることで、トノカバー22が展開状態となる。
【0060】
<車両の振動を受けたときの動作について>
図8はトノカバー装置20が車両の振動を受けたときの動作を示す説明図である。
図8において、二点鎖線(仮想線)で示される引出機構60が基準係合状態にあり、実線で示される引出機構60が車両の振動を受けて回転した状態にある。
【0061】
ケース本体37の開口38は、上縁部39と下縁部40と延長部41とからなっている。車両からの振動等でボード74を含む引出機構60は、係止部材66の上縁係合部72が係合する上縁部39を回転中心として、矢符A3の向きに上方へ回転しようとする。このとき、
図8の実線で示すように、係止部材66の本体部67のうち上縁係合部72の係合位置より車両後方側が延長部41に当接するので、ボード74を含む引出機構60はその回転が規制されている。これにより、延長部41はボード74の回転する角度を小さくしている。
【0062】
仮に、
図7の実線で示すように引出機構60の回転中心が下縁部40となった場合でも、
図7の実線で示す引出機構60よりも回転が大きくなることで、係止部材66の上面が延長部41に当接するのでボード74は回転規制される。
【0063】
図8において、第1仮想面S1は、延長部41の後端と下縁部40とを結んでなる仮想の面である。また、第2仮想面S2は、上縁部39と下縁部40とを結んでなる仮想の面である。
図8に示すように、第1仮想面S1が第2仮想面S2に比べて傾斜が上下方向に沿って垂直近くなるため、ボード74の回転する角度をより抑えることができる。
【0064】
<参考例について>
図9は第1参考例にかかるトノカバー装置120が車両の振動を受けたときの動作を示す説明図である。
【0065】
図9に示すトノカバー装置120のケース本体137の形状は、延長部41が設けられていない点で、上記トノカバー装置20のケース本体37の形状とは異なる。ケース本体137における上縁部139の位置はケース本体37の上縁部39の位置と同じであり、ケース本体137はケース本体37から延長部41と、上縁部39及び延長部41の厚肉部分とが省略されたものに相当する。
【0066】
図9に示すトノカバー装置120では、上縁部139の位置がケース本体37の上縁部39の位置と同じであるものの延長部41が省略されているため、トノカバー装置120が車両の振動を受けて引出機構60が回転したとき、延長部41による係止部材66の回転抑制効果が得られない。このため、
図9に示すように、係止部材66が大きく回転し得る。
【0067】
図10は第2参考例にかかるトノカバー装置220の解除操作時の動作を示す説明図である。
【0068】
図10に示すトノカバー装置220のケース本体237の形状は、延長部41が設けられていない点で、上記トノカバー装置20のケース本体37の形状とは異なる。さらに、ケース本体237の形状は、ケース本体237における上縁部239の位置がケース本体37、137の上縁部39、139の位置よりも後方である点で、上記トノカバー装置20、120のケース本体37、137の形状とは異なる。ケース本体237の上縁部239の後端の位置が、ケース本体37の延長部41の後端41Bの位置に対応している。上縁部239が上縁部39よりも車両後方に設けられているため、
図10に示すように、係止部材266の上縁係合部272も、係止部材66の上縁係合部72よりも車両後方に設けられている。
【0069】
図10に示すトノカバー装置220では、上縁部239の位置がケース本体37の上縁部39の位置よりも車両後方にあるため、係止部材266の解除操作時の回転量を係止部材66の解除操作時の回転量よりも大きくする必要がある。このため、操作者は、係止部材266の解除操作する方が、係止部材66を解除操作するよりも手間がかかる。
【0070】
ここで、係止部材66が下縁部40を回転中心として解除操作と同じ向きに回転したときに係止部材66を開口38から引き出すには、係止部材66を回転させる力のほか、巻取付勢力に抗して係止部材66を引き出す力が必要となり、そのような2つの力が係止部材66に同時に自然にかかる事態が生じにくい。これに対して、係止部材66が下縁部40を回転中心として解除操作とは反対回りに回転したときには、係止部材66を回転させる力だけで、巻取付勢力に抗して係止部材66を引き出す力がなくとも、係止部材66を開口38から引き出し得る。
【0071】
この際、係止部材266が下縁部40を回転中心として解除操作とは反対回り(
図10の時計回り)に回転したときに係止部材266の上縁係合部272が最も上方の位置に達するまでの回転量が、係止部材66が同様の向きに回転したときに係止部材66の上縁係合部72が最も上方の位置に達するまでの回転量よりも小さくなる。係止部材66の上縁係合部72が最も上方の位置に達するまでの回転量とは、上縁係合部72のうち回転中心から最も離れた部分が、回転中心に対して鉛直上方に位置するまでの回転量である。
【0072】
係止部材66が下縁部40を回転中心として解除操作とは反対回りに回転したときに係止部材66の上縁係合部72が最も上方の位置に達するまでの回転量が大きいと、その分、ケース本体37及び係止部材66の係合範囲が公差範囲内において小さい場合などでも、係合範囲を大きくできる余地があるため、上縁係合部72の意図しない解除が生じにくい。従って、係止部材266では、係止部材66よりも上縁係合部272の意図しない解除が生じやすいと言える。
【0073】
例えば、係止部材266では、上縁係合部272が最も上方の位置に達するまでの回転量は約15度である。係止部材66では、上縁係合部72が最も上方の位置に達するまでの回転量は約27度である。このように、上縁係合部72が最も上方の位置に達するまでの回転量が、延長部41の位置にある上縁部239に係合する上縁係合部272と比べて、5度から20度大きくなるように、上縁部39が車両前方に設けられてもよい。
【0074】
<効果等>
以上のように構成されたトノカバー装置20によると、係合部71が上縁部39及び下縁部40に係合した状態でボード74の車両後方側端部が上方に向かうようにボード74が回転した際、延長部41が係止部材66に当たることによって係止部材66を押えることができる。これにより、係止部材66及びステイ62を介して係止部材66に連結されたボード74の回転が抑制され、ボード74が大きく回転することを抑えることができる。これにより、ボード74が大きくバタつくことが抑制され、大きな異音が生じにくくなる。
【0075】
また、ボード74の車両後方側端部が上方へ回転した姿勢から基準係合状態の係合姿勢に戻ったときに、ボード74にはボード74の車両後方側端部を基準係合状態の係合姿勢よりも下方に向かわせるようにボード74を回転させる回転速度が生じている。ボード74が大きく回転することを抑えられることによって、当該回転速度も大きくなることが抑制される。これにより、当該回転速度を伴ってボード74が回転して上縁部39と上縁係合部72とが衝突したときの衝撃が大きくなることが抑制され、上縁部39と上縁係合部72との係合が意図せずに解除されることを抑えることができる。さらに、上縁部39が下縁部40の上方にある場合と比べて、上縁係合部72が最高点に達するまで回転可能な角度の余地が大きくなる。これによっても、当該回転速度がかかることによって、上縁係合部72が上方へ多少回転しても、上縁部39との係合が解除されにくい。
【0076】
上縁係合部72と上縁部39との係合が解除されにくいことによって、引出機構60の支持状態が意図せずに変更することを抑制できる。上縁係合部72の係合が外れて、引出機構60が垂れ下がるように支持されることを抑制できる。
【0077】
また、延長部41の下端41Cは、上縁部39の下端39Cと同じ高さに設けられている。これにより、延長部41の下端41Cが上縁部39の下端39Cよりも上方に位置する場合と比べて、ボード74の回転する角度をより抑えることができる。また、延長部41の下端41Cが上縁部39の下端39Cより下方に位置する場合と比べて、係止部材66を開口38に差し込む際に差し込みやすい。特にここでは延長部41の下端41Cが、延長部41の後端41Bの下部から上縁部39の下端39Cまで平面部として連続している。これにより、操作者は上縁係合部72を平面部に沿って摺動させることで上縁係合部72を開口38に対して出し入れすることができ、上縁係合部72の出し入れが容易となる。
【0078】
また、延長部41の後端41Bは、下縁部40の上方に位置している。これにより、延長部41の後端41Bが下縁部40よりも車両前方に位置する場合と比べて、ボード74の回転する角度をより抑えることができる。また、延長部41の後端41Bが下縁部40の上方に位置していることによって、ケース本体37の美観が向上する。また、開口38を通じて上縁係合部72をケース本体37の内部に差し込む操作、操作者が開口38を視認しやすい。特にここでは開口38のうち係止部材66が係止する部分よりも車幅方向両端部が露出する(
図4参照)。この場合に、開口38の上側部分と下側部分とが揃っていることで、ケース本体37の美観が向上すると共に操作者が開口38の位置及び外側の形状を目視により把握しやすい。
【0079】
<付記>
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0080】
本明細書及び図面は、下記の各態様を開示する。
【0081】
第1の態様は、車両の荷室を覆うトノカバーと、前記トノカバーの一端部が取り付けられている巻取シャフトと、前記巻取シャフトを回転可能に支持すると共に前記トノカバーを巻き取る方向に付勢した状態で収容しており、車両後方を向く面に前記トノカバーを引出収納可能な開口が形成されているケースと、前記トノカバーの他端部に結合しているステイと、前記ケースにおける前記開口の上縁部及び下縁部に係合可能な係合部を有し、前記ステイの両端それぞれに取り付けられている係止部材と、前記ステイに取り付けられていると共に前記ステイより車両後方に突出しており、前記係合部が前記上縁部及び前記下縁部に係合した状態では前記ケースより車両後方に支持されるボードと、を備え、前記下縁部が前記上縁部より車両後方に位置し、前記開口より上方であって前記上縁部より車両後方の位置に延長部が設けられている、トノカバー装置である。
【0082】
このトノカバー装置によると、係合部が上縁部及び下縁部に係合した状態でボードの車両後方側端部が上方に向かうようにボードが回転した際、延長部が係止部材に当たることによって係止部材を押えることができる。これにより、係止部材及びステイを介して係止部材に連結されたボードの回転が抑制され、ボードが大きく回転することを抑えることができる。
【0083】
第2の態様は、第1の態様に係るトノカバー装置であって、前記延長部の下端は、前記上縁部の下端と同じ高さに設けられている、トノカバー装置である。これにより、延長部の下端が上縁部の下端よりも上方に位置する場合と比べて、ボードの回転する角度をより抑えることができる。
【0084】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るトノカバー装置であって、前記延長部の後端は、前記下縁部の上方に位置している、トノカバー装置である。これにより、延長部の後端が下縁部よりも車両前方に位置する場合と比べて、ボードの回転する角度をより抑えることができる。
【0085】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0086】
10 車両
20 トノカバー装置
22 トノカバー
32 巻取シャフト
36 ケース
37 ケース本体
38 開口
39 上縁部
39C 下端
40 下縁部
41 延長部
41B 後端
41C 下端
62 ステイ
66 係止部材
71 係合部
72 上縁係合部
73 下縁係合部
74 ボード