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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098265
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】判定方法及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/00 20060101AFI20240716BHJP
   G06T 7/00 20170101ALN20240716BHJP
【FI】
E04G23/00 ESW
G06T7/00 610C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001659
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】東 智明
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓久
(72)【発明者】
【氏名】矢田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山下 仁崇
(72)【発明者】
【氏名】大澤 淳司
(72)【発明者】
【氏名】黒田 訓行
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 匠
(72)【発明者】
【氏名】安江 俊彦
【テーマコード(参考)】
2E176
5L096
【Fターム(参考)】
2E176AA02
2E176BB38
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096GA41
(57)【要約】
【課題】建物を維持及び管理するための点検を簡便な方法で実施できる判定方法及び建物を提供する。
【解決手段】建物の壁内部の状態を判定する判定方法であって、壁内部の物質と反応して状態が変化する表面を有する検査体が、壁に形成されて壁内部に達する孔に差し込まれた状態で保持された後に、孔から抜き出された検査体の表面の画像を取得する取得工程と、取得工程で取得された検査体の画像が示す表面に基づいて、壁内部の状態を判定する判定工程とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁内部の状態を判定する判定方法であって、
前記壁内部の物質と反応して状態が変化する表面を有する検査体が、前記壁に形成されて前記壁内部に達する孔に差し込まれた状態で保持された後に、前記孔から抜き出された前記検査体の前記表面の画像を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前記検査体の前記画像が示す前記表面に基づいて、前記壁内部の状態を判定する判定工程とを有する、判定方法。
【請求項2】
前記検査体は、前記壁内部の物質と反応して前記検査体の前記表面の色が変化する、請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記検査体は、前記壁内部の水分、又は前記壁内部の含有成分に応じて前記検査体の前記表面の色が変化する、請求項1に記載の判定方法。
【請求項4】
前記判定工程は、標準時の前記検査体の前記表面の標準画像と、前記取得工程で取得された前記画像との差異に基づいて、前記壁内部の状態が正常状態であるか、又は異常状態であるかが判定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項5】
前記壁に形成された前記孔から前記検査体を引き抜いた後、
前記壁内部の物質と反応して状態が変化する表面を有する第2の検査体を、前記壁に形成されて前記壁内部に達する孔に差し込んで孔内に保持した後に、前記孔から抜き出された前記第2の検査体の前記表面の画像を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前記第2の検査体の前記画像が示す前記表面に基づいて、前記壁内部の状態を判定する判定工程とを実施する、請求項1~3のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項6】
前記壁に形成された前記孔は、コンセントプレート又は前記コンセントプレートの周囲に設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項7】
壁と、前記壁に形成されて前記壁内部に達する孔と、前記孔に差し込まれた検査体とを有し、
前記検査体は、前記壁の壁内部の物質と反応して状態が変化する表面を有し、
前記壁内部に達する孔に差し込まれた状態が保持された後に、前記孔から抜き出された前記検査体の前記表面の画像が示す前記表面に基づいて、前記壁内部の状態が判定される、建物。
【請求項8】
前記検査体は、前記壁内部の物質と反応して前記検査体の前記表面の色が変化する、請求項7に記載の建物。
【請求項9】
前記検査体は、前記壁内部の水分、又は前記壁内部の含有成分に応じて前記検査体の前記表面の色が変化する、請求項7に記載の建物。
【請求項10】
標準時の前記検査体の前記表面の標準画像と、前記画像との差異に基づいて、前記壁内部の状態が正常状態であるか、又は異常状態であるかが判定される、請求項7~9のいずれか1項に記載の建物。
【請求項11】
前記壁に形成された前記孔は、コンセントプレート又は前記コンセントプレートの周囲に設けられている、請求項7~9のいずれか1項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁内部の状態を判定する判定方法、及び判定対象の建物に係り、特に、建物の壁内部の湿度、温度又は化学物質を検出して建物の壁内部の状態を判定する判定方法及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物は、完成後、建物を維持及び管理するために、床下空間等の様々な場所について点検を実施している。床下空間では、例えば、大引き部材、束部材の腐朽、シロアリ被害、又は漏水等が点検される。
【0003】
例えば、特許文献1には、住宅を建築する際、予め一階室内の床面から床下まで貫通する床下点検のための穴を穿設して開閉栓で閉栓しておき、点検を行う際、適宜、当該開閉栓を外して床下点検穴を開口させ、この床下点検穴からファイバスコープ等の撮影装置と床下環境検知センサを挿入し、撮影装置から得られた点検箇所とその位置の映像、床下環境検知センサによる測定値をモニタに表示させて床下の点検及び測定を行う住宅の床下点検方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-349074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1のように、住宅の床下の点検方法が提案されている。しかしながら、特許文献1の点検方法では、ファイバスコープ等の撮影装置と床下環境検知センサを挿入する必要があり、点検作業が大掛かりになる。また、ファイバスコープ等の撮影装置と床下環境検知センサの設置には、専門の点検員が点検対象の住宅迄行く必要があり、点検には専門的な技能を有する人員が必要となる。
このようなことから、建物を維持及び管理するための点検を、特に建物の壁内部の状態を含め、簡便な方法で実施することが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建物を維持及び管理するための点検を簡便な方法で実施できる判定方法、及び、その方法により点検可能な建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明の判定方法によれば、建物の壁内部の状態を判定する判定方法であって、壁内部の物質と反応して状態が変化する表面を有する検査体が、壁に形成されて壁内部に達する孔に差し込まれた状態で保持された後に、孔から抜き出された検査体の表面の画像を取得する取得工程と、取得工程で取得された検査体の画像が示す表面に基づいて、壁内部の状態を判定する判定工程とを有する、ことにより解決される。
上記のように構成された本発明の判定方法では、建物を維持及び管理するための点検を、特に建物の壁内部の状態を含め、簡便な方法で実施できる。
【0008】
また、上記の判定方法において、検査体は、壁内部の物質と反応して検査体の表面の色が変化すると、好適である。
上記の構成によれば、検査体の表面の色が変化するので、壁内部の状態の判定を容易に実施できる。
また、上記の判定方法において、壁内部の水分、又は壁内部の含有成分に応じて検査体の表面の色が変化すると、より好適である。
上記の構成によれば、壁内部の水分、又は壁内部の含有成分に応じて検査体の表面の色が変化するので、壁内部の状態の判定を容易に実施できる。
また、上記の判定方法において、判定工程は、標準時の検査体の表面の標準画像と、取得工程で取得された画像との差異に基づいて、壁内部の状態が正常状態であるか、又は異常状態であるかが判定されると、さらに好適である。
上記の構成によれば、標準時の検査体の表面の標準画像を用いることにより、壁内部の状態の判定精度を高くできる。
【0009】
また、上記の判定方法において、壁に形成された孔から検査体を引き抜いた後、壁内部の物質と反応して状態が変化する表面を有する第2の検査体を、壁に形成されて壁内部に達する孔に差し込んで孔内に保持した後に、孔から抜き出された第2の検査体の表面の画像を取得する取得工程と、取得工程で取得された第2の検査体の画像が示す表面に基づいて、壁内部の状態を判定する判定工程とを実施すると、なお一層好適である。
上記の構成によれば、壁内部の複数の物質に対して、建物を維持及び管理するための点検を、特に建物の壁内部の状態を含め、簡便な方法で実施できる。
また、上記の判定方法において、壁に形成された孔は、コンセントプレート又はコンセントプレートの周囲に設けられていると、より一段と好適である。
上記の構成によれば、壁に孔を設けたことによる意匠的な違和感が軽減される。
【0010】
本発明の建物によれば、壁と、壁に形成されて壁内部に達する孔と、孔に差し込まれた検査体とを有し、検査体は、壁の壁内部の物質と反応して状態が変化する表面を有し、壁内部に達する孔に差し込まれた状態が保持された後に、孔から抜き出された検査体の表面の画像が示す表面に基づいて、壁内部の状態が判定される、ことにより解決される。
上記のように構成された本発明の建物では、建物を維持及び管理するための点検を、特に建物の壁内部の状態を含め、簡便な方法で実施できる。
【0011】
また、上記の建物において、検査体は、壁内部の物質と反応して検査体の表面の色が変化すると、好適である。
上記の構成によれば、検査体の表面の色が変化するので、壁内部の状態の判定を容易に実施できる。
また、上記の建物において、壁内部の水分、又は壁内部の含有成分に応じて検査体の表面の色が変化すると、より好適である。
上記の構成によれば、壁内部の水分、又は壁内部の含有成分に応じて検査体の表面の色が変化するので、壁内部の状態の判定を容易に実施できる。
【0012】
また、上記の建物において、標準時の検査体の表面の標準画像と、画像との差異に基づいて、壁内部の状態が正常状態であるか、又は異常状態であるかが判定されると、なお一層好適である。
上記の構成によれば、標準時の検査体の表面の標準画像を用いることにより、壁内部の状態の判定精度を高くできる。
また、上記の建物において、壁に形成された孔は、コンセントプレート又はコンセントプレートの周囲に設けられていると、より一段と好適である。
上記の構成によれば、壁に孔を設けたことによる意匠的な違和感が軽減される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の判定方法及び建物によれば、建物を維持及び管理するための点検を、特に建物の壁内部の状態を含め、簡便な方法で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)本発明の一実施形態の建物の一例を示す模式図であり、(b)は本発明の一実施形態の建物の壁の構造の一例を示す模式的断面である。
図2】(a)は本発明の一実施形態の判定方法に用いられる検査体の一例を示す模式的側面図であり、(b)は本発明の一実施形態の判定方法に用いられる検査体の一例を示す模式的正面図であり、(c)は本発明の一実施形態の判定方法に用いられる検査体の他の例を示す模式的な側面の断面図である。
図3】本発明の一実施形態の判定方法に用いられる判定装置の一例を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態の判定方法に用いられる検査体の状態を示す模式図であり、(a)は標準時の状態を、(b)は所定の時間t1が経過した後の状態を、(c)は所定の時間t2(>t1)が経過した後の状態を、それぞれ示す。
図5】本発明の一実施形態の建物の壁の構造の他の例を示す模式的断面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<本発明の一つの実施形態に係る判定方法及び建物について>>
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、図面では、説明を分かり易くするために幾分簡略化及び模式化して図示している。また、図中に示すサイズ(寸法)等についても、実際のものとは異なっている。
【0016】
図1(a)本発明の一実施形態の建物の一例を示す模式図であり、(b)は本発明の一実施形態の建物の壁の構造の一例を示す模式的断面である。
図1(a)に建物10の一例を示す。図1(b)に建物10の壁12と床14とを示す。
壁12は、建物10の外郭を構成するものである。壁12は、例えば、外側壁15と、内側壁16とを有する。外側壁15と内側壁16とで挟まれた壁内部17に断熱部材18が配置されている。外側壁15は建物10の屋外側に配置されるものであり、建物10の外側に面しており、外気に晒される。内側壁16は建物10の屋内側に配置されるものであり、室内に面している。壁12では、内側壁16に、壁内部17に達する孔19が設けられている。孔19には、後述の検査体20が差し込まれている。
断熱部材18は、特に限定されるものではないが、例えば、グラスウールが用いられる。建物10は壁内部17の状態が判定される判定対象である。
【0017】
ここで、図2(a)は本発明の一実施形態の判定方法に用いられる検査体の一例を示す模式的側面図であり、(b)は本発明の一実施形態の判定方法に用いられる検査体の一例を示す模式的正面図であり、(c)は本発明の一実施形態の判定方法に用いられる検査体の他の例を示す模式的な側面の断面図である。
図2(a)に示すように検査体20は、フランジ22と軸部24とを有する。例えば、図2(b)に示すようにフランジ22は円板である。軸部24は円柱である。このため、検査体20が差し込まれる孔19は、内径が円形である。
フランジ22は、円板に限定されるものではなく、四角板でもよい。軸部24は孔19への差し込みの容易性から円柱であることが好ましい。
軸部24は壁内部17(図1(b)参照)の物質と反応して状態が変化する表面24aを有する。物質と反応して状態が変化することにおいて、物質とは、水、及び化学物質以外に、温度(厳密には、伝熱媒体)も含まれる。検査体20は、温度の違いにより、状態が変化する表面24aを有する構成とすることもできる。
【0018】
検査体20は、壁内部17の物質、例えば、壁内部17の水分、又は壁内部17の含有成分に応じて検査体20の表面24aの色が変化する。このため、検査体20により、例えば、壁内部の水分、壁内部の温度、及び壁内部の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の有無を点検できる。これ以外に、カビに対して検査体20の表面24aの色が変化する場合、カビの有無を点検できる。このように壁内部17の物質に応じて検査体20の表面24aの色が変化することで、壁内部17の状態の判定を容易に実施できる。
検査体20の材質について、壁内部17の水分、壁内部17の含有成分、壁内部17の温度、又はカビ等に応じて検査体20の表面24aの色が変化する物質としては、公知のものが適宜利用可能である。
例えば、染料と顕色剤と溶剤とを有する可逆的熱変色性色変化系を含むものが用いられる。事前に選択された温度閾値に曝露されると、染料と顕色剤の会合又は解離により、可視的な色変化が生じる。これにより、壁内部の温度を特定できる。
【0019】
また、検査体20として、例えば、ガスと色変化を伴う反応性のある、非揮発性化合物又は指示薬を担持して乾燥させた担体を用いることもできる。ガスによる色変化は、非揮発性化合物又は指示薬の特性により決定されるものであり、単色又は二段階に色変化するものがある。
非揮発性化合物は、例えば、ガスがアンモニアを含む塩基性ガスである場合には酸性化合物が用いられ、ガスが有機酸である場合には塩基性化合物が用いられ、ガスが硫黄化合物である場合には鉛化合物が用いられる。
担体には、例えば、セルロース製フィルター、石英繊維製フィルター、ガラス繊維製フィルター、アクリレート系繊維製フィルター、不織布、合成皮革、及び紙のシート状材料を用いることができる。
上述のガスと色変化を伴う反応性のある、非揮発性化合物又は指示薬を担持して乾燥させた担体で構成された検査体の具体例としては、セルロース製ろ紙に、酸(リン酸、ホウ酸等)と、pH指示薬(フェノールブルー、チモールブルー、アリザリンレッド等)とを、グリセリンを接着剤として染みこませてから乾燥させたものが挙げられる。この検査体の構成では、例えば、アンモニアのような塩基性ガスが到達すると、酸塩基反応で塩基性ガスを固定し、pHが変化し、指示薬の色が変化する。すなわち、検査体の色が変化する。これにより、壁内部に存在するガスを特定できる。
なお、例えば、第1ガスに反応する第1担体、第2ガスに反応する第2担体、及び第3ガスに反応する第3担体のような、異なるガスに反応する担体を、1つの検査体20に設けることにより、1つの検査体20で複数のガスを測定できる。また、検査体20としては、同じガスに対して感度が異なる担体を複数設けて、色変化が段階的に進むようにしてもよい。
検査体20の表面24aの色の変化する範囲が反応した物質の量に応じて変わる場合には、色が変化した範囲の面積等により、物質の量を特定できる。
【0020】
検査体20は、その識別情報を有するものであることが好ましい。これにより、検査体20を特定でき、検査体20が反応する物質も特定できるため、好ましい。また、検査体20には、識別情報とともに、検査体20を孔19に差し込んだ時期を記録できることが好ましい。これにより、検査体20の使用状況、具体的には、孔19に差し込まれた検査体20が孔19内で保持されている状況を時系列で追跡できる。
識別情報の形態としては、特に限定されるものではないが、識別情報と関連付けた識別記号を検査体20に刻印等で記録する。
また、識別情報を記録した2次元バーコードを検査体20にフランジ22に設けてもよい。
【0021】
本実施形態の判定方法では、検査体20の軸部24の表面24aが、壁内部17の物質と反応して状態が変化することを利用する。
検査体20は、軸部24全体が壁内部17の物質と反応して状態が変化するもの構成してもよいが、これに限定されるものではない。図2(c)に示す検査体20のように、軸部24の表面24a全体を覆う被覆層25を設ける構成でもよい。この被覆層25を壁内部17の物質と反応して状態が変化するもの構成する。この場合、被覆層25の表面25aが壁内部17の物質と反応して状態が変化する。
建物10は、壁12に孔19を設け、検査体20が壁内部17に達する孔19に差し込まれた状態が保持された後に、孔19から抜き出された検査体20の表面24aの画像が示す表面24aに基づいて、壁内部17の状態が判定される。検査体20及び壁内部17の状態の判定については後に説明する。
【0022】
(判定装置)
図3は本発明の一実施形態の判定方法に用いられる判定装置の一例を示す模式図である。判定方法に用いられる判定装置は、図3に示す判定装置30に限定されるものではない。
図3に示すように判定装置30は、例えば、撮影部32、判定部34、及び通信部36を有する。また、判定装置30は、メモリ38、制御部40、表示制御部42及び表示部44を有する。
判定装置30の撮影部32、判定部34、通信部36、メモリ38及び表示制御部42は、制御部40によって制御される。
表示制御部42は表示部44に接続されており、表示部44の画面(図示せず)に画像を表示させる。
【0023】
表示部44は、例えば、判定装置30の機能によって得られた各種の画像を表示するものであり、公知の各種のディスプレイが用いられる。
また、判定装置30は、スマートフォン(図示せず)又はタブレット端末(図示せず)の情報端末の画面に、判定装置30の機構によって得られた画像を表示させることもできる。この場合、情報端末が判定装置30を兼ねる。
【0024】
メモリ38は、撮影部32、及び判定部34での各種の情報を記憶するものである。メモリ38は、特に限定されるものではなく、公知の各種の記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)を利用できる。
表示制御部42は、撮影部32、及び判定部34によって得られた各種の情報を、表示部44の画面に表示させる。
判定装置30において、判定部34、制御部40及び表示制御部42は、例えば、ROM(Read Only Memory)等に記憶されたプログラム(コンピュータソフトウェア)が実行されるコンピュータによって構成されてもよいし、専用回路で構成された専用装置であってもよく、上述のようにプログラムがクラウド上で実行されるようにサーバーで構成してもよい。
【0025】
撮影部32は、検査体20の表面24aの画像を取得し、デジタルデータとして画像データを得るものである。
撮影部32は、検査体20の表面24aの画像を取得することができれば、その構成は特に限定されるものではない。撮影部32は、例えば、従来公知の撮像素子を有する。撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサー又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーを用いることができる。
撮影部32で取得した画像の画像データは、メモリ38に記憶させることができる。
【0026】
判定部34は、検査体20の画像が示す表面に基づいて、壁内部17の状態を判定するものである。
判定部34は、壁内部17の物質と反応して状態が変化する検査体20の表面24aに基づいて、壁内部17の状態を判定する。
例えば、検査体20が、壁内部17の物質と反応して検査体20の表面24aの色が変化する場合、検査体20の画像が示す表面の色の情報に基づいて、壁内部17の状態を判定する。
より具体的には、標準時の検査体20の表面24aの標準画像を予め記録しておく。撮影部32により取得された検査体20の表面24aの画像と、上述の標準画像との差異を特定する。検査体20では表面24aに反応する物質がわかっているので、特定された画像の差異に基づいて、壁内部17の状態を判定できる。この場合、検査体20については、表面24aと反応する物質が検査体20の識別情報等の情報から特定されていると、上述の標準画像を特定しやすくなるため好ましい。
なお、標準時の検査体とは、製造直後の検査体であり、反応する物質に接触されていない状態、すなわち、表面が未反応である状態の検査体である。
検査体20の表面24aが反応する物質により、例えば、壁内部17に、水分があるか否か、又は、人体に有害な物質が存在するか否かを判定できる。
上述のように検査体20の表面24aの色の変化する範囲が物質の量に応じて変わる場合には、色が変化した範囲の面積等により、物質の量を特定できる。この場合、例えば、壁内部17に、水分が多く含まれているか否か、又は、人体に有害な物質が多く含まれているか否か等を判定できる。
【0027】
標準時の検査体20の表面24aの標準画像は、検査体20の表面24aが反応する物質毎に、予めメモリ38に記憶しておいてもよく、外部のデータベースに記憶しておいてもよい。
標準画像を外部のデータベースに記憶しておく場合、検査体20の表面24aが反応する物質の標準画像を、通信部36を介して読み出す。そして、判定部34が、読み出された標準画像と、取得された検査体20の表面24aの画像とを比較して、壁内部17が正常状態であるか、又は異常状態であるかが判定される。
なお、検出された物質の種類、又は検出された物質の量等に基づいて、どの物質が検出された場合に異常状態であると判定することを予め決定しておく。また、検出された物質の量に対して、予め閾値を設定しておき、閾値以下の場合、正常状態であると判定し、閾値を超えた場合、異常状態であると判定する。
【0028】
また、検査体20においては、どの標準時の検査体20の表面24aの標準画像と比較するかを、識別情報に記録しておくことにより、標準画像を速やかに読み出すことができ、判定を速やかにできる。さらには、適切な標準画像を読み出すことができるため、壁内部17の状態の判定精度も高くなるため好ましい。
判定部34は、判定装置30の内部にあることに限定されるものではなく、判定装置30の外部にあってもよい。この場合、外部の判定部34には、取得した検査体20の表面24aの画像の画像データを送信して、上記の内容を判定させるとよい。
【0029】
判定部34は、上述の標準画像以外に、検査体20の表面24aが反応する物質に晒されてから所定の時間が経過した後の検査体20の表面24aの画像を予め保持してもよい。上述の所定の時間が経過した後の画像は、例えば、メモリ38に記憶しておく。これ以外に、通信部36を介して所定の時間が経過した後の画像の画像データを取得してもよい。
なお、所定の時間が経過した後の検査体20の表面24aの画像について、どれくらいの所定の時間が経過した後の検査体20の表面24aの画像と比較するかを、検査体20の識別情報に記録しておくことが好ましい。これにより、標準画像の場合と同様に、所定の時間が経過した後の検査体20の表面24aの画像を速やかに読み出すことができ、判定を速やかにできる。さらには、適切な画像を読み出すことができるため、壁内部17の状態の判定精度も高くなるため好ましい。
【0030】
ここで、図4本発明の一実施形態の判定方法に用いられる検査体の状態を示す模式図であり、(a)は標準時の状態を、(b)は所定の時間t1が経過した後の状態を、(c)は所定の時間t2(>t1)が経過した後の状態を、それぞれ示す。
図4(a)は標準時の検査体20の表面24aを示しており、この標準時の表面24aの画像が標準画像である。検査体20の表面24aが反応する物質に晒されて所定の時間t1が経過した後の検査体20の表面24aを図4(b)に示す。図4(b)に示すように検査体20の表面24aは先端側の色が濃くなっている。図4(b)の状態から、さらに所定の時間t2(>t1)が経過した検査体20の表面24aを図4(c)に示す。図4(c)に示すように検査体20の表面24aは全体の色が濃くなっている。このように検査体20の表面24aが反応する物質に晒された経過時間に応じて、検査体20の表面24aの色が濃くなることを判定に利用できる。なお、検査体20の表面24aの色が濃くなることは、反応した物質の量を示す指標にもなる。
【0031】
ここで、建物の躯体腐食は目地シールの劣化等による漏水が原因で生じるが、躯体は壁で覆われているため、腐食状態を目視により検査できない。鉄骨の場合、壁内部17からの錆汁により腐食していることがわかるが、その時点では内部の鉄骨の腐食は進行した状態にある。これに対して、壁内部の水分を検出することで、内部の鉄骨腐食が進行する前に、壁内部17の状態を早期に把握し、鉄骨の腐食の早期発見に繋げることができる。
また、壁内部の揮発性有機化合物(VOC)及びカビ等についても、目視では検査できない。しかしながら、上述の検査体20によって壁内部の揮発性有機化合物(VOC)及びカビを検出することで壁内部17の状態を早期に把握できる。
【0032】
図3に示す通信部36は、取得した検査体20の表面24aの画像の画像データを外部に送信するものである。また、判定結果を送信するものである。
上述のように標準画像を外部のデータベースに記憶しておく場合、検査体20の表面24aが反応する物質の標準画像の標準画像データを、通信部36が受信する。受信した標準画像データは、例えば、メモリ38に記憶される。
判定部34が判定装置30の外部にある場合、通信部36は、取得した検査体20の表面24aの画像の画像データを外部に送信するものである。この場合、判定装置30の外部で判定されて得られた判定結果を通信部36が受信する。受信した判定結果は、例えば、メモリ38に記憶される。
通信部36は、上述の送受信ができれば、その構成は特に限定されるものではなく、公知の通信モジュールを用いることができる。
判定装置30を、例えば、スマートフォン又はタブレット端末を用いた場合、スマートフォン又はタブレット端末の通信モジュールを上述の通信部36として利用できる。
【0033】
(判定方法)
次に、判定方法について説明する。
判定方法は、建物10(図1(a)参照)の壁内部17(図1(b)参照)の状態を判定する判定方法である。
壁内部17の物質と反応して状態が変化する表面24aを有する検査体20が、壁12に形成されて壁内部17に達する孔19に差し込まれた状態で保持された後に、孔19から抜き出された検査体20の表面24aの画像を取得する取得工程を実施する。この場合、例えば、図3に示す判定装置30を用いて、孔19から抜き出された検査体20の表面24aを撮影して、検査体20の表面24aの画像(画像データ)を取得する。
次に、取得工程で取得された検査体20の画像が示す表面に基づいて、壁内部17の状態を判定する判定工程を実施する。この場合、例えば、判定装置30において、検査体20の標準画像を読み出す。そして、判定部34で、標準画像と、取得工程で取得された検査体20の画像とを比較して、標準画像と、取得工程で取得した画像との差異に基づいて、壁内部17の状態が正常状態であるか、又は異常状態であるかが判定される。
例えば、検査体20の表面24aが、壁内部17の物質と反応して検査体の表面の色が変化する場合、色の差異に基づいて判定する。
色の差異は、色味の違いである。このため、例えば、標準画像の標準画像データのRGBの比率と、取得工程で取得した画像の表面の画像データのRGBの比率とを求める。標準画像データのRGBの比率と、表面の画像データのRGBの比率との差に対して、予め閾値を設定しておき、閾値に基づいて、標準画像データのRGBの比率と、表面の画像データのRGBの比率との一致、又は不一致を判定する。これにより、壁内部17に検査体20の表面24aと反応する物質の存在がわかる。この際、どの物質が検出された場合に異常状態であると判定するのかを予め決定しておくことにより、壁内部17の状態が正常状態であるか、又は異常状態であるかを判定できる。
壁内部17の状態の判定結果は、例えば、表示部44の画面(図示せず)に表示させる。
また、取得工程で取得した検査体20の表面24aの画像を表示部44の画面に表示させることもできる。
【0034】
また、壁内部17の物質と反応して状態が変化する表面24aは、色が変化するもの以外に、明るさ(明度)が変化するものもある。この場合、例えば、標準画像の標準画像データのRGBから明度を求める。取得工程で取得した画像の表面の画像データのRGBから明度を求める。標準画像データの明度と、表面の画像データの明度との差に対して、予め閾値を設定しておき、閾値に基づいて、標準画像データの明度と、表面の画像データの明度との一致、又は不一致を判定する。これにより、壁内部17に検査体20の表面24aと反応する物質の存在がわかる。この際、どの物質が検出された場合に異常状態であると判定するのかを予め決定しておくことにより、壁内部17の状態が正常状態であるか、又は異常状態であるかを判定できる。
判定方法において、検査体20に識別情報が付与されていると、検査体20の特定が容易であり、かつ標準画像の読み出しも正確、かつ速やかにできるため、より好ましい。
【0035】
検査体20の表面24aは、1つの物質と反応して状態が変化する。このため、壁内部17の複数の物質に対して調べる場合、反応する物質が異なる検査体20を用いる必要がある。このため、例えば、壁12に形成された孔19から検査体20を引き抜いた後、壁内部17の物質と反応して状態が変化する表面を有する第2の検査体(図示せず)を、壁12に形成されて壁内部17に達する孔19に差し込む。そして、第2の検査体を孔19内に差し込んだ状態が一定期間保持された後に、第2の検査体を孔19から抜き出す。抜き出した第2の検査体の表面の画像を取得する取得工程を実施する。取得工程は、上述の通りである。
次に、取得工程で取得された第2の検査体の画像が示す表面に基づいて、壁内部17の状態を判定する判定工程を実施する。判定工程は、上述の通りである。
以上のように第2の検査体をさらに用いることにより、壁内部17の複数の物質に対して、建物を維持及び管理するための点検を、特に建物の壁内部の状態を含め、簡便な方法で実施できる。
【0036】
判定方法において、壁内部17の複数の物質を調べる場合では、複数の検査体を用いるため、検査体、それぞれに識別情報が付与されていると、検査体の特定が容易であり、かつ標準画像の読み出しも正確、かつ速やかにできるため、より好ましい。
壁内部17の複数の物質を調べて、総合的に壁12の劣化の程度を判定することもできる。
また、複数の検査体を用いる場合、各検査体の識別情報に、反応する物質の種類が記憶されていることが好ましい。これにより、反応する物質の種類の特定が容易となる。
【0037】
判定方法では、検査体20を引き抜き、検査体20の表面24aを撮影することにより、壁内部17の状態を判定できる。このため、点検作業は大掛かり装置が不要であり、専門的な技能を有する点検員も不要であり、簡便に点検作業を実施できる。また、人ではなく判定装置30によって判定が行われるので、個人の力量に左右されないため、判定のバラツキが小さく、壁内部の状態を精度よく判定することができる。
このように、判定方法では、建物を維持及び管理するための点検を、特に建物の壁内部の状態を含め、簡便な方法で実施できる。
本実施形態の判定方法では、専門的な技能を有する点検員が不要であることから、例えば、建物の住居者又は管理者が、上記の判定を実施することができる。この場合、検査体20を引き抜き、スマートフォンを用いて検査体20の表面24aを撮影して、撮影した検査体20の表面24aの画像を、例えば、特定のサイトに送信し、撮影した検査体20の表面24aの画像に基づいて判定を実施する。判定結果を、建物の住居又は管理者のスマートフォンに送信するか、又は撮影した検査体20の表面24aの画像を送信したサイトに掲載させる。これにより、建物の住居者又は管理者が、判定結果を知ることができる。判定結果については、建物の住居者及び管理者と、建物の施工会社及び管理会社とで共有することもできる。
なお、上述した判定方法を用いた点検は、定期的に行うことが好ましい。このため、例えば、1年に1回、点検を実施するように、建物の住居者又は管理者にスマートフォン等を介して通知することもできる。
【0038】
<<その他の実施形態について>>
図5は本発明の一実施形態の建物の壁の構造の他の例を示す模式的断面である。
図5に示す建物の壁12は、図1(b)に示す壁12とは、コンセントボックス50とコンセントプレート52がある点、及び孔19の位置が相違する。より詳しく説明すると、図5に示す壁12の壁内部17には、床14の上方にコンセントボックス50が設けられている。コンセントボックス50の内側壁16側にコンセントプレート52が設けられている。
コンセントプレート52の周囲に、例えば、コンセントプレート52の上側に孔19が設けられている。コンセントプレート52の周囲に孔19を設けることにより、壁12に孔19を設けたことによる意匠的な違和感が軽減される。また、孔19を形成する際に、コンセントボックス50の設置作業と合わせて孔19を施工(形成)することができるため、好ましい。
また、図示はしないが、コンセントプレート52の周囲ではなく、孔19をコンセントプレート52に設けてもよい。このような構成の場合でも、コンセントプレート52の周囲に孔19を設けた場合と同様に意匠的な違和感が軽減される。
なお、建物において、孔19、すなわち、検査体20を設ける数は、特に限定されるものではなく、1つでも複数でもよい。
また、建物において、孔19、すなわち、検査体20を設ける位置は、特に限定されるものではない。例えば、浴室等の水回り、又は居間に孔19を形成してもよい。
建物が多層階であれば、1階の床の近く、2階の床の近く、及び小屋裏の近くのそれぞれに孔19を形成してもよい。これにより、壁内部17の物質の上から下への移動を把握できる。
【0039】
以上までに、本発明の判定方法及び建物に関する一つ実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
10 建物
12 壁
14 床
15 外側壁
16 内側壁
17 壁内部
18 断熱部材
19 孔
20 検査体
22 フランジ
24 軸部
24a、25a 表面
25 被覆層
30 判定装置
32 撮影部
34 判定部
36 通信部
38 メモリ
40 制御部
42 表示制御部
44 表示部
50 コンセントボックス
52 コンセントプレート
図1
図2
図3
図4
図5