(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098271
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】複合紐状体、複合紐状体製造装置、および複合紐状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
D02G 3/38 20060101AFI20240716BHJP
D02G 3/06 20060101ALI20240716BHJP
D02G 3/26 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
D02G3/38
D02G3/06
D02G3/26
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001669
(22)【出願日】2023-01-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】501066532
【氏名又は名称】大竹 幸衛
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】大竹 幸衛
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA04
4L036MA34
4L036MA39
4L036PA21
4L036PA49
4L036RA25
4L036UA01
4L036UA07
(57)【要約】
【課題】 作業性が高く、高い引張強度、引張破断力を有する紐状体を提供する。
【解決手段】 芯部2と、芯部2に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸3とを備える複合紐状体1であって、前記芯部2は、合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、無撚りの集合体であり、前記巻付糸3は、合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントである、複合紐状体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部と、前記芯部に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸とを備える複合紐状体であって、
前記芯部は、
合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、無撚りの集合体であり、
前記巻付糸は、
合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントである、
複合紐状体。
【請求項2】
芯部と、前記芯部に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸とを備える複合紐状体であって、
前記芯部は、
合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、撚り数が1~500T/mで撚り合わされた集合体であり、
前記巻付糸は、
合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントである、
複合紐状体。
【請求項3】
農業用、漁業用のシートまたはトラックの幌シートの外周の補強材として用いられる、請求項1または請求項2に記載の複合紐状体。
【請求項4】
請求項1の複合紐状体を製造する製造装置であって、
中央孔に前記芯部が通過する中空スピンドルと、
前記中空スピンドルと一体回転する巻付糸集合体を取付ける取付部と、
該中空スピンドルを通過した前記芯部と、前記巻付糸集合体から引き出されて前記芯部に螺旋状に巻き付く前記巻付糸とを引き取る引取装置とを備え、
前記中空スピンドルの出口には前記芯部に巻き付く前記巻付糸にテンションをかける、第1テンション付与部が設けられることを特徴とする、複合紐状体製造装置。
【請求項5】
前記巻付糸集合体には、前記第1テンション付与部と前記巻付糸集合体との間の巻付糸にテンションをかける第2テンション付与部が設けられることを特徴とする、
請求項4に記載の複合紐状体製造装置。
【請求項6】
請求項2の複合紐状体を製造する製造装置であって、
中央孔に前記芯部が通過する中空スピンドルと、
前記中空スピンドルと一体回転する巻付糸集合体を取付ける取付部と、
該中空スピンドルを通過した前記芯部と、前記巻付糸集合体から引き出されて前記芯部に螺旋状に巻き付く前記巻付糸とを引き取る引取装置とを備え、
前記芯部の走行方向における前記中空スピンドルよりも上流側に前記芯部の回転を部分的に抑制する回転抑制手段が設けられる一方で、その下流側において、前記芯部は巻付糸の巻付力により回転可能とし、撚り数が1~500T/mで撚り合わされた芯部にすることを特徴とする、
複合紐状体製造装置。
【請求項7】
前記回転抑制部は、複数の紐状芯材のそれぞれが通過する複数の孔を有することを特徴とする、請求項6に記載の複合紐状体製造装置。
【請求項8】
請求項1の複合紐状体を製造する製造方法であって、
合成樹脂製のフィルムから形成される複数の紐状芯材を撚り合わせずに引き揃えて芯部とし、
巻付糸集合体が装着されかつ該巻付糸集合体と一体的に回転する中空スピンドルの中央孔を前記芯部が通過するように前記芯部を引き取り、
前記中空スピンドルを回転させ、該巻付糸集合体から前記巻付糸をテンションのかかった状態で前記芯部に螺旋状に巻き付ける、
複合紐状体の製造方法。
【請求項9】
請求項2の複合紐状体を製造する製造方法であって、
合成樹脂製のフィルムから形成される複数の紐状芯材または該複数の紐状芯材から成る芯部を回転抑制手段に通過させ、
巻付糸集合体が装着されかつ該巻付糸集合体と一体的に回転する中空スピンドルの中央孔を前記芯部が通過するように前記芯部を引き取り、
前記中空スピンドルを回転させ、前記巻付糸集合体から前記巻付糸をテンションのかかった状態で前記芯部に螺旋状に巻き付けられる一方で、記芯部は巻付糸の巻付力により回転され、撚り数が1~500T/mで撚り合わされる、
複合紐状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシートの縁辺の補強材等に用いられる、紐状体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単糸、ヤーン等を各段階で撚り合わせて製造される紐が知られている。単糸等は、長さ方向に平行に並べることによって最も引っ張り強度が高くなるが、撚り合わせると、長さ方向に角度がつき、その結果、特に引張強度が低下するという問題があった。
【0003】
特許文献1では、定長もしくは不定長の繊維よりなる無撚りのスライバーの周囲に、紡績糸もしくは連続糸をスパイラル状に巻き付けて得られた原糸を開示し、それを複数本合撚して形成されるロープを開示している。特許文献2では、無撚りのヤーンを縦糸、加撚りヤーンを横糸として織られた紐が開示されている。これらは、無撚りのため、長さ方向の引っ張り強度が高いという利点を有する。
【0004】
ところで、トラックの幌や、農業や漁業用のシートの縁辺には補強用の紐状体を備える場合がある。このような紐状体は、製造時や使用時の作業性の向上が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭52-123139号公報
【特許文献2】特許第7055310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1または特許文献2の紐状体または糸は、引っ張り強度の向上や、製造コストを低くし、軽くする効果が得られたが、使用場面によってはボリューム感に欠け、作業性の向上が求められる。
【0007】
本発明では、作業性が高く、高い引張強度、引張破断力を有する紐状体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、芯部と、前記芯部に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸とを備える複合紐状体であって、前記芯部は、合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、無撚りの集合体であり、前記巻付糸は、合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントである、複合紐状体である。
【0009】
ここで、「撚り合わせていない」とは、フィルムを互いに平行に引き揃えたものを意味し、撚り数が実質的に0のものを示す。
【0010】
また、本発明は、芯部と、前記芯部に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸とを備える複合紐状体であって、前記芯部は、合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、撚り数が1~500T/mで撚り合わされた集合体であり、前記巻付糸は、合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントである、複合紐状体である。
【0011】
ここで、「撚り数が1~500T/m」とは、通常よりも単位長さあたりの撚り回数が少ない、いわゆる「甘撚り」を意味する。
【0012】
前記複合紐状体は、農業用、漁業用のシートまたはトラックの幌シートの外周の補強材として用いられることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記複合紐状体を製造する製造装置であって、中央孔に前記芯部が通過する中空スピンドルと、前記中空スピンドルと一体回転する巻付糸集合体を取付ける取付部と、該中空スピンドルを通過した前記芯部と、前記巻付糸集合体から引き出されて前記芯部に螺旋状に巻き付く前記巻付糸とを引き取る引取装置とを備え、前記中空スピンドルの出口には前記芯部に巻き付く前記巻付糸にテンションをかける、第1テンション付与部が設けられることを特徴とする、複合紐状体製造装置である。
【0014】
前前巻付糸集合体には、前記第1テンション付与部と前記巻付糸集合体との間の巻付糸にテンションをかける第2テンション付与部が設けられることが好ましい。
【0015】
前記複合紐状体を製造する製造装置であって、中央孔に前記芯部が通過する中空スピンドルと、前記中空スピンドルと一体回転する巻付糸集合体を取付ける取付部と、該中空スピンドルを通過した前記芯部と、前記巻付糸集合体から引き出されて前記芯部に螺旋状に巻き付く前記巻付糸とを引き取る引取装置とを備え、前記芯部の走行方向における前記中空スピンドルよりも上流側に前記芯部の回転を部分的に抑制する回転抑制手段が設けられる一方で、その下流側において、前記芯部は巻付糸の巻付力により回転可能とし、撚り数が1~500T/mで撚り合わされた芯部にすることを特徴とする、複合紐状体製造装置である。
【0016】
前記回転抑制部は、複数の紐状芯材のそれぞれが通過する複数の孔を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記複合紐状体を製造する製造方法であって、合成樹脂製のフィルムから形成される複数の紐状芯材を撚り合わせずに引き揃えて芯部とし、巻付糸集合体が装着されかつ該巻付糸集合体と一体的に回転する中空スピンドルの中央孔を前記芯部が通過するように前記芯部を引き取り、前記中空スピンドルを回転させ、該巻付糸集合体から前記巻付糸をテンションのかかった状態で前記芯部に螺旋状に巻き付ける、複合紐状体の製造方法である。
【0018】
また、本発明は、前記複合紐状体を製造する製造方法であって、合成樹脂製のフィルムから形成される複数の紐状芯材または該複数の紐状芯材から成る芯部を回転抑制手段に通過させ、巻付糸集合体が装着されかつ該巻付糸集合体と一体的に回転する中空スピンドルの中央孔を前記芯部が通過するように前記芯部を引き取り、前記中空スピンドルを回転させ、前記巻付糸集合体から前記巻付糸をテンションのかかった状態で前記芯部に螺旋状に巻き付けられる一方で、記芯部は巻付糸の巻付力により回転され、撚り数が1~500T/mで撚り合わされる、複合紐状体の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、芯部にフィルムを用い、複数のフィルムを巻付糸で一体化したことにより、全体的にボリューム感があり、作業性に優れる紐が提供できる。フィルムが撚り数が0か、または少ないことにより、引張強度、引張破断力強度が高くなり、軽量で強度の高い紐状体が得られる。また、他の工程で発生した規格外のフィルムを利用できるため、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る複合紐状体の部分正面図である。
【
図2】複合紐状体を周縁部に有する、シートを示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る複合紐状体の写真である。
【
図4】第1実施形態に係る複合紐状体を製造する製造装置の斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る複合紐状体を製造する製造装置の別方向からの斜視図である。
【
図6】第2実施形態に係る複合紐状体を製造する製造装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1実施形態について説明する。
図1、
図3に示されるように、複合紐状体1は、芯部2と、芯部2に螺旋状に間隔Lを開けて巻き付く巻付糸3とを備える。芯部2は、フィルムから形成される紐状芯材21が複数本集まって形成される、無撚りの(撚り合わせていない)集合体である。
【0022】
紐状芯材21を形成するフィルムは、ポリプロピレンやポリエチレンなどの合成樹脂から成る。巻付糸3は、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントであり、ポリエチレンなどの合成樹脂から成る。巻付糸3の幅または直径は、0.5~2mmが例として挙げられる。
【0023】
紐状芯材21は、加熱および一軸延伸された合成樹脂製フィルムが幅方向に絞られるか折畳まれて紐状になったものであり、要求される強度、ボリュームにもよるが、例えば幅30~80mm、厚み20~200μmのフィルムから成る。複数の紐状芯材21が撚り合わせられずに互いに平行に引きそろえられている。紐状芯材21に用いられるフィルムは、収縮差の特性を生かした皺のあるものでもよい。芯部2の直径は、3~10mmが例として挙げられる。
【0024】
芯部2には、巻付糸3が間隔Lを開けて螺旋状に巻き付けられ、芯部2を緊締し、結束する。巻付糸3により、芯部2はフィルム特有のボリューム感を保ちながら、ばらばらになることがなくまとまっており、規則正しい凹凸感と相まって、作業性の高い複合紐状体1が得られる。芯部2は撚り合わされずに形成されているため、高い引っ張り強度を有する。
【0025】
螺旋状の巻付糸3同士の間隔Lは、要求により適宜選択されるが、例えば、10~50mmである。
【0026】
図3は、本発明の一例となる複合紐状体1の写真である。ポリプロピレン樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材21の集合体である芯部2の周りに、巻付糸3が螺旋状に巻き付いている。芯部2の断面直径は約5mmであり、巻付糸3には、400デニールのポリエステル糸状を幅方向に並べて溶着した五連糸(幅1.2mm)を採用している。巻付糸3の間隔Lは22mmである。
【0027】
本発明の複合紐状体1は、例えば、農業用、漁業用の防水シートや、トラックの幌の補強材等として用いられる。
図2に示されるように、シート8の外周に補強材として複合紐状体1を通すことが例として挙げられる。
図2において、複合紐状体1は実線で表すが、実際はシート内に挿入され見えない状態である。芯部2として複数のフィルムから形成される集合体を採用しているため、ボリューム感があり、作業性が高い。
【0028】
次に、
図4、
図5を参照し、本発明の複合紐状体1の製造装置および製造方法について説明する。製造装置10は、中空スピンドル11と、中空スピンドル11を回転させるためのモーター14と、中空スピンドル11を通過した芯部2および巻付糸3を所定速度で引き取る引取ローラーなどの引取装置(図示略)を備える。モーター14側のプーリー19aと従動側(スピンドル側)のプーリー19bは、連繋されたベルトにより動力伝達され、中空スピンドル11が回転される。
【0029】
芯部2は、フィルムから成る複数の紐状芯材21の集合体であり、1つまたは複数のチーズ(図示略)から供給ローラ(図示略)などを介して、所定の速度で引き出される。
図4に示される通り、引き出された芯部2は、プーリー19bの軸心に形成された芯部供給口13および中空スピンドル11の軸心となる中央孔を通過し、中空スピンドル出口12から引き出される。芯部2は、中空スピンドル11中央穴の内面や、供給口13および出口12の内面に接触しないため、それらの回転の影響は受けない。
【0030】
他方、巻付糸3の集合体であるチーズ15(巻付糸集合体)は中空スピンドル11の取付部に取付けられ、中空スピンドル11と一体的に回転駆動される。巻付糸3は、引取装置(図示略)によって軸方向に引き出されると共に回転しながら芯部2に巻き付き、
図4、5に示される通り、芯部2に螺旋状に巻き付く。
【0031】
その結果、中空スピンドル11の軸心である中央孔を通過する芯部2は無撚のままの状態で、引き出され、その外側に巻付糸3が螺旋状となって巻き付けられ、複合紐状体1が得られる。得られた複合紐状体1は、トルクモータ等により、チーズ(図示略)に巻き上げられる。
【0032】
中空スピンドル11の回転速度と、引取装置(図示略)の引き取り速度は、目的とする巻き糸の螺旋の間隔Lに応じて適宜変更可能である。例えば、中空スピンドル11の回転速度を変更せずに、引取装置の引き取り速度を高くすると、螺旋の間隔Lが広くなる。一方、例えば、引き取り装置の引き取り速度を変更せずに中空スピンドル11の回転速度を高くすると、螺旋の間隔Lが狭くなる。中空スピンドル11の回転速度は、モーター14の回転速度や、プーリー19a、19bの大きさにより変更される。
【0033】
中空スピンドル出口12側の接続管18はテーパー状に徐々に縮径するものであり、チーズ巻きの芯となる紙管が接続管18に嵌められ、チーズ15を中空スピンドル11と一体化している。
図5に示す通り、中空スピンドル出口12の管の一部には、ナイロンバンド16が巻かれており、チーズ15から解除された巻付糸3は、ナイロンバンド16の内面と中空スピンドル出口12の管の外面との間を通過した後に、芯部2に巻き付く。そのため、巻付糸3がナイロンバンド16を通過する際に抵抗がかかり、ナイロンバンド16の下流側で芯部2に接するまでの巻付糸3には、常にテンションがかかり、その結果、巻付糸3は芯部2をその中心へ締めるように巻き付く。すなわち、ナイロンバンド16は巻付糸3の第1テンション付与部として作用する。これにより、本発明のような、ボリューム感のある芯部2を用いても、巻付糸3がしっかりと複数の芯材21を結束できる。
【0034】
また、チーズ15の外周面の一部には、ゴムバンド17が巻かれており、チーズ15からの巻付糸3の解除を制御している。これにより、チーズ15とナイロンバンド16の間の巻付糸3にも常にテンションがかかり、巻付糸3が芯部2にきつく巻き付くことに寄与する。ゴムバンド17は、第2テンション付与部として作用する。
【0035】
巻付糸3の集合体はチーズ15に限定されない。芯部2の径が大きい場合は、巻付糸3も太くする必要があり、その場合は、ボビン巻きが適している。
【0036】
本発明においては、芯部として複数のフィルムの集合体を採用しているため、ボリュームがあり、作業性が高い。また、フィルムとして、別工程で規格外となったものも使用でき、低コストで製造でき、経済的である。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態の複合紐状体101について説明する。
第1実施形態では、芯部2は紐状芯材21が撚り合わせずに形成されているのに対して、本実施形態の複合紐状体101では芯部102は、紐状芯材121が甘撚り(通常より撚り数が少ない)されていることが相違する。複合紐状体101では、芯部102が甘撚りされて形成されることによって、引張強度を高く保持したまま、紐状芯材21同士がよりまとまった状態になる。
【0038】
複合紐状体101の製造装置100および製造法方法について、
図6を参照して説明する。基本的には、第1実施形態の製造装置10と同様の構成を備えるので、共通する説明は第1実施形態の図示および記載を援用するとともに、主に相違点を説明する。
【0039】
製造装置100は、芯部供給口113の手前(芯部の走行方向における中空スピンドル111よりも上流側)に、芯部102の回転を抑制する回転抑制部材120を備える。回転抑制部材120は、中空スピンドル111の回転の影響は受けないよう固定され、回転しないものである。
図6に示す回転抑制部材120は、複数の孔を有し、各孔に、紐状芯材121が各チーズ(図示略)から引き出されて通過する。通過した複数の紐状芯材121は中空スピンドル111の軸心の中央孔を通過後に、巻付糸103が巻き付けられるが、引取装置(図示略)は巻付糸103の巻付力により紐状芯材121から成る芯部102の回転を可能とし、その結果、芯部102は緩く(撚り数が1~500T/mで)撚り合わせられる。
【0040】
回転抑制部材120は、上述のものに限定されず、例えば、紐状芯材121が集まった集合体を受け入れ、回転方向に抵抗を与える細径穴を有する部材でもよい。
【0041】
本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることができるものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれ、該技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることは無論である。
【符号の説明】
【0042】
1、101 :複合紐状体
2、102 :芯部
3 :巻付糸
10、100 :製造装置
8 :シート
11、111 :中空スピンドル
12 :中空スピンドル出口
13、113 :芯部供給口
14 :モーター
15 :チーズ(巻付糸集合体)
16 :ナイロンバンド(第1テンション付与部)
17 :ゴムバンド(第2テンション付与部)
18 :接続管
19a、19b :プーリー
21、121 :紐状芯材
120 :回転抑制部材
L :巻付糸の螺旋の間隔
【手続補正書】
【提出日】2023-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部と、前記芯部に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸とを備え、農業用、漁業用のシートまたはトラックの幌シートの外周の補強材として用いられる複合紐状体であって、
前記芯部は、
合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、無撚りの集合体であり、
前記巻付糸は、
合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントである、
複合紐状体。
【請求項2】
芯部と、前記芯部に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸とを備え、農業用、漁業用のシートまたはトラックの幌シートの外周の補強材として用いられる複合紐状体であって、
前記芯部は、
合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、撚り数が1~500T/mで撚り合わされた集合体であり、
前記巻付糸は、
合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントである、
複合紐状体。
【請求項3】
芯部と、前記芯部に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸とを備える複合紐状体を製造する製造装置であって、
前記芯部は、
合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、無撚りの集合体であり、
前記巻付糸は、
合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントであり、
前記製造装置は、
中央孔に前記芯部が通過する中空スピンドルと、
前記中空スピンドルと一体回転する巻付糸集合体を取付ける取付部と、
該中空スピンドルを通過した前記芯部と、前記巻付糸集合体から引き出されて前記芯部に螺旋状に巻き付く前記巻付糸とを引き取る引取装置とを備え、
前記中空スピンドルの出口には前記芯部に巻き付く前記巻付糸にテンションをかける、第1テンション付与部が設けられることを特徴とする、複合紐状体製造装置。
【請求項4】
前記巻付糸集合体には、前記第1テンション付与部と前記巻付糸集合体との間の巻付糸にテンションをかける第2テンション付与部が設けられることを特徴とする、
請求項3に記載の複合紐状体製造装置。
【請求項5】
芯部と、前記芯部に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸とを備える複合紐状体を製造する製造装置であって、
前記芯部は、
合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、撚り数が1~500T/mで撚り合わされた集合体であり、
前記巻付糸は、
合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントであり、
前記製造装置は、
中央孔に前記芯部が通過する中空スピンドルと、
前記中空スピンドルと一体回転する巻付糸集合体を取付ける取付部と、
該中空スピンドルを通過した前記芯部と、前記巻付糸集合体から引き出されて前記芯部に螺旋状に巻き付く前記巻付糸とを引き取る引取装置とを備え、
前記芯部の走行方向における前記中空スピンドルよりも上流側に前記芯部の回転を部分的に抑制する回転抑制手段が設けられる一方で、その下流側において、前記芯部は巻付糸の巻付力により回転可能とし、撚り数が1~500T/mで撚り合わされた芯部にすることを特徴とする、
複合紐状体製造装置。
【請求項6】
前記回転抑制部は、複数の紐状芯材のそれぞれが通過する複数の孔を有することを特徴とする、請求項5に記載の複合紐状体製造装置。
【請求項7】
芯部と、前記芯部に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸とを備える複合紐状体を製造する製造方法であって、
前記芯部は、
合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、無撚りの集合体であり、
前記巻付糸は、
合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントであり、
前記製造方法は、
合成樹脂製のフィルムから形成される複数の紐状芯材を撚り合わせずに引き揃えて芯部とし、
巻付糸集合体が装着されかつ該巻付糸集合体と一体的に回転する中空スピンドルの中央孔を前記芯部が通過するように前記芯部を引き取り、
前記中空スピンドルを回転させ、該巻付糸集合体から前記巻付糸をテンションのかかった状態で前記芯部に螺旋状に巻き付ける、
複合紐状体の製造方法。
【請求項8】
芯部と、前記芯部に間隔をあけて螺旋状に巻き付く巻付糸とを備える複合紐状体を製造する製造方法であって、
前記芯部は、
合成樹脂製のフィルムから形成される紐状芯材を複数本有する、撚り数が1~500T/mで撚り合わされた集合体であり、
前記巻付糸は、
合成樹脂製の、複数のモノフィラメントが互いに溶着され横方向に一体的になった連糸、またはマルチフィラメントであり、
前記製造方法は、
合成樹脂製のフィルムから形成される複数の紐状芯材または該複数の紐状芯材から成る芯部を回転抑制手段に通過させ、
巻付糸集合体が装着されかつ該巻付糸集合体と一体的に回転する中空スピンドルの中央孔を前記芯部が通過するように前記芯部を引き取り、
前記中空スピンドルを回転させ、前記巻付糸集合体から前記巻付糸をテンションのかかった状態で前記芯部に螺旋状に巻き付けられる一方で、記芯部は巻付糸の巻付力により回転され、撚り数が1~500T/mで撚り合わされる、
複合紐状体の製造方法。