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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098273
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】プランマブロック
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/06 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
F16C35/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001671
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 毅
【テーマコード(参考)】
3J117
【Fターム(参考)】
3J117AA03
3J117CA04
3J117DA01
3J117DB02
(57)【要約】
【課題】プランマブロックの上箱と下箱との締結構造において、緩み止め機能を有効に発揮するプランマブロックを提供する。
【解決手段】
転がり軸受と、転がり軸受を収納する軸受箱とを備え、軸受箱は、上箱と下箱とを有し、上箱と下箱とがボルト部材とナット部材を有するボルト・ナット結合構造にて締結されてなるプランマブロックである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受と、前記転がり軸受を収納する軸受箱とを備え、前記軸受箱は、上箱と下箱とを有し、上箱と下箱とが締結されてなるプランマブロックであって、
ボルト部材とナット部材とのボルト・ナット結合構造によって、前記上箱と前記下箱とを締結したことを特徴とするプランマブロック。
【請求項2】
前記下箱の底部に前記ボルト部材の頭部を備え、前記上箱にナット部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のプランマブロック。
【請求項3】
前記下箱の底部に前記ボルト部材の回り止め機構を設けたことを特徴とする請求項2に記載のプランマブロック。
【請求項4】
前記回り止め機構は、前記下箱の底部に設けられて前記ボルト部材の頭部が嵌合する底部ぬすみ部で構成したことを特徴とする請求項3に記載のプランマブロック。
【請求項5】
前記ボルト部材の軸部の長さは、プランマブロック中心高さの1.3倍以上であることを特徴とする請求項1に記載のプランマブロック。
【請求項6】
前記ボルト部材の軸部の反頭部側である先端部が上箱から突出し、その先端部にナット部材が螺合され、前記ボルト部材の頭部の裏面に対面するボルト座面およぶ前記ナット部材の裏面に対面するナット座面を機械加工面としたことを特徴とする請求項2に記載のプランマブロック。
【請求項7】
前記ボルト部材の軸部の反頭部側である先端部が、前記上箱から突出し、その先端部に一対のナット部材が螺合されることを特徴とする請求項2に記載のプランマブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受および軸受を支持する軸受箱を備えるプランマブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
プランマブロックとしては、従来には、特許文献1に記載のものがあるが、プランマブロックは、一般的に、図10に示すように、シャフト1を回転自在に支持する転がり軸受2と、この転がり軸受2を収納する軸受箱3とを備えたものである。
【0003】
軸受箱3は、図8および図10に示すように、上方の上箱3Aと、下方の下箱3Bとを有する。上下の上箱3Aと下箱3Bが組み合されて軸受箱3とされる。なお、上箱3Aと下箱3Bとはボルト部材4を介して連結一体化されている。ボルト部材4は、頭部5と、雄ねじ部を有する軸部6とからなる。
【0004】
そして、上箱3Aは軸受2の上半分が嵌合される半円筒形状の上箱本体部3A1と、上箱本体部3A1の側端部に設けられる連結用凸部3A2,3A2とを備えたものであり、連結用凸部3A2,3A2には、ボルト部材4の軸部6が嵌入される貫通孔7、7が形成されている。また、図10に示すように、上箱本体部3A1の軸方向端部には、半円弧形状の内鍔部3A1a、3A1bが形成されている。
【0005】
また、下箱3Bは、軸受2の下半分が嵌合される半円筒形状の下箱本体部3B1と、下箱本体部3B1を受けるベース部材3B2とを備えたものである。ベース部材3B2には、上箱3Aと下箱3Bとを重ね合された際に、上箱3Aの連結用凸部3A2,3A2の下面8aが当接する受面9a、9aを有する連結用凸部9, 9が設けられている。この場合、各連結用凸部9, 9は、ベース部材3B2の径方向突出鍔10,10から立設されている。そして、この連結用凸部9, 9には、上箱3Aと下箱3Bとを重ね合された際に、連結用凸部3A2,3A2の下面8aが連結用凸部9, 9の受面9a、9aに当接した状態で、連結用凸部3A2,3A2の貫通孔7、7に対応するねじ孔11,11が設けられている。なお、下箱本体部3B1の軸方向端部には、半円弧形状の内鍔部3B1a、3B1bが形成されている。
【0006】
このため、図8に示すように、ボルト部材4の軸部6を連結用凸部3A2,3A2の貫通孔7、7に上方から挿入して、連結用凸部9,9のねじ孔11,11にボルト部材4の軸部6の雄ねじ部を螺合させることによって、上箱3Aと下箱3Bが連結される。
【0007】
このように、上箱3Aと下箱3Bが連結されて、軸受箱3が構成された状態では、上箱3Aの内鍔部3A1a、3A1bと、下箱3Bの内鍔部3B1a、3B1bとで、リング形状に内鍔部12,12が構成される。そして、この内鍔部12,12の内径面に凹周溝12a、12aが設けられ、各凹周溝12a、12aにシール部材13、13が嵌合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-128701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図8図10に示すような従来のプランマブロックでは、上箱3Aの貫通孔7にボルト部材4の軸部6を挿入して、下箱3Bのねじ孔11に軸部6の雄ねじ部を螺合させるものである。このため、ボルト部材4の軸力は、上箱3Aの連結用凸部3A2,3A2の高さ分だけしか作用せず、振動が多い部位(場所)等で使用した場合、その振動によってボルト部材が緩むおそれがあった。ここで、軸力とは、ボルト部材の締付けにより引っ張られることで、元に戻ろうとする力である。このため、この軸力により、被締結部材を固定することができる。なお、この場合のボルト部材4の軸部6の長さは、プランマブロック中心高さのHの0.7~1.1程度とされている。
【0010】
なお、ボルト部材4の緩み止めとして、緩みと止め用の座金を用いたり、緩みと止め用の接着剤を用いたりすることも考えられる。しかしながら、緩みと止め用の座金を用いる場合、部品点数の増加を招くとともに、作業工程も増加し、緩みと止め用の接着剤を用いる場合、取り扱い性が悪く作業性に劣ることになる。また、緩みと止め用の座金を用いる場合であっても、緩みと止め用の接着剤を用いる場合であっても、緩み止め機能を十分に発揮できないおそれもあった。
【0011】
そこで、本願では、プランマブロックの上箱と下箱との締結構造において、緩み止め機能を有効に発揮するプランマブロックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のプランマブロックは、転がり軸受と、前記転がり軸受を収納する軸受箱とを備え、前記軸受箱は、上箱と下箱とを有し、上箱と下箱とが締結されてなるプランマブロックであって、ボルト部材とナット部材とのボルト・ナット結合構造によって、前記上箱と前記下箱とを締結したものである。
【0013】
本発明のプランマブロックでは、ボルト・ナット結合構造における、ボルト部材の軸部長さを長くとることができる。このため、従来品よりも大きな弾性変形量で締結可能となる。すなわち、ボルトの軸力は材料力学の応力・ひずみの関係に従い、ボルトの弾性変形量が大きいほどゆるみに対する軸力の低下量が少ない。このことは応力がひずみの比率で規定される事に対し(ボルトが長くなるほどひずみ=弾性変形量も大きい)、ボルトの緩みはネジの呼びに対応するネジピッチの絶対量で規定される事に起因する(ボルトがいくら長くなってもネジピッチは変わらない)。即ち、ボルトが長くなるほどボルトの弾性変形量に対するネジピッチの長さの比率が低下していくため、それに伴いネジの緩みに対する軸力の変化量も低下する。このため、ボルトが長いと、ネジの緩みに対する軸力の減少量が少なくて済み、結果高い軸力を維持したまま緩み止め力を発揮できる。
【0014】
前記下箱の底部に前記ボルト部材の頭部を備え、前記上箱にナット部材を備えたものが好ましく、さらには、前記下箱の底部に前記ボルト部材の回り止め機構を設けるのが好ましい。下箱の底部に前記ボルト部材の回り止め機構を設ければ、ボルト部材の締結作業が安定するとともに、緩み止め機能も発揮される。
【0015】
前記回り止め機構は、前記下箱の底部に設けられて前記ボルト部材の頭部が嵌合する底部ぬすみ部で構成することができ、この機構として簡単な構造で構成でき、しかも、安定した廻り止め機能を発揮できる。
【0016】
前記ボルト部材の軸部の長さは、プランマブロック中心高さの1.3倍以上であるのが好ましい。このような長さに設定することにより、安定した緩み止め機能を発揮する。
【0017】
前記ボルト部材の軸部の反頭部側である先端部が上箱から突出し、その先端部にナット部材が螺合され、前記ボルト部材の頭部の裏面に対面するボルト座面および前記ナット部材の裏面に対面するナット座面を機械加工面とすることができる。ここで、機械加工面とは、研削および/または切削が施された面であり、微細な凹凸を有する面である。
【0018】
ボルト座面やナット座面が機械加工面とされていることにより、ボルト部材の緩み止め機能の向上を図ることができる。
【0019】
前記ボルト部材の軸部の反頭部側である先端部が、前記上箱から突出し、その突出部に一対のナット部材が螺合されるものであってもよい。すなわち、ダブルナットとすることにより、緩み止めとして効果を発揮させている。この場合、ナットとナットの間で引張の力が生じ、この力によってねじ山で摩擦力が発生し、緩みを防止する。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、ボルト部材は、緩み止めに対して高い効果を発揮し、しかも、軸力による緩み止め効果(機能)の経時変化がなく、長期にわたって安定して緩み止め機能を発揮する。また、この軸力による緩み止め効果(機能)に加え、他の種々の緩み止め対策(例えば、下箱の底部に前記ボルト部材の回り止め機構、ダブルナット、ボルト座面やナット座面を機械加工面とする対策)が可能であり、これらと併用することにより、一層緩み止め効果(機能)を発揮することができ、長期にわたって製品としてその機能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るプランマブロックの正面図である。
図2図1に示すプランマブロックの平面図である。
図3図1に示すプランマブロックの底面図である。
図4図1に示すプランマブロックの断面図である。
図5図4のA部拡大図である。
図6図1に示すプランマブロックの下方から見た斜視図である。
図7図1のB-B線拡大断面図である。
図8】従来のプランマブロックの正面図である。
図9図8に示すプランマブロックの平面図である。
図10図8に示すプランマブロックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施形態を図1図7に基づいて説明する。本発明に係るプランマブロックは、図4に示すように、シャフト21を回転自在に支持する転がり軸受22と、この転がり軸受22を収納する軸受箱23とを備えたものである。
【0023】
軸受箱23は、図1および図4に示すように、上方の上箱23Aと、下方の下箱23Bとを有する。このため、上下の上箱23Aと下箱23Bが組み合されて軸受箱23とされる。なお、上箱23Aと下箱23Bとはボルト部材24を有するボルト・ナット機構Sを介して連結一体化されている。ボルト部材24は、頭部25と、雄ねじ部26aを有する軸部26とからなり、この実施形態では、頭部25が6角のいわゆる六角ボルトを使用している。
【0024】
上箱23Aは、軸受22の上半分が嵌合される半円筒形状の上箱本体部23A1と、上箱本体部23A1の側端部に設けられる連結用凸部23A2,23A2とを備えたものであり、連結用凸部23A2,23A2には、ボルト部材24の軸部26が嵌入される貫通孔27、27が形成されている。また、図4に示すように、上箱本体部23A1の軸方向端部には、半円弧形状の内鍔部23A1a、23A1bが形成されている。
【0025】
下箱23Bは、軸受22の下半分が嵌合される半円筒形状の下箱本体部23B1と、下箱本体部23B1を受けるベース部材23B2とを備えたものである。ベース部材23B2には、上箱23Aと下箱23Bとが重ね合された際に、上箱23Aの連結用凸部23A2,23A2の下面28aが当接する受面29a、29aを有する連結用凸部29,29が設けられている。この場合、各連結用凸部29,29は、ベース部材23B2の径方向突出鍔30,30から立設されている。そして、この連結用凸部29,29には、上箱23Aと下箱23Bとが重ね合された際に、連結用凸部23A2,23A2の下面28aが連結用凸部29,29の受面29a、29aに当接した状態で、連結用凸部23A、23A2の貫通孔27、27に対応する貫通孔31,31が設けられている。また、図4に示すように、下箱本体部23B1の軸方向端部には、半円弧形状の内鍔部23B1a、23B1bが形成されている。
【0026】
この場合、ベース部材23B2の裏面の中央部に、矩形状の凹窪部32が設けられ、この凹窪部32の短辺側に貫通孔31が開口する底部盗み部33,33が設けられている。この盗み部33は、反凹窪部側が円弧形状とされた矩形形状であり、図1に示すように、その深さ寸法Tがボルト部材24の頭部25の肉厚tよりも深くされ、かつ、その幅寸法W(図3参照)が、六角形の頭部25の対向面間の寸法W1(図6参照)と略同一に設定される。この略同一とは、同一寸法乃至寸法公差内に収まる範囲を含むものであり、ボルト部材24の頭部25が盗み部33に嵌合でき、嵌合状態では、頭部25が、この盗み部33内で回転できない程度のものである。このため、下箱23Bの下部の盗み部33をもってボルト部材24の廻り止め機構Mを構成できる。
【0027】
このため、下箱23Bの連結用凸部29,29の下面28aで、上箱23Aの連結用凸部23A2,23A2の受面29a、29aにて受けている状態とし、上箱23Aの貫通孔27、27と、下箱23Bの貫通孔31との軸心を合わせ、この状態で、下方からボルト部材24の軸部26を、貫通孔31、27に嵌入することになる。
【0028】
そのため、上箱23Aと下箱23Bとを組み合わせする際には、上箱23Aと下箱23Bの位置合わせを行う必要があるので、この軸受箱23には、図7に示すように、位置決め機構Pが設けられている。この位置決め機構Pは、下箱23Bの合わせ面、つまり下箱本体部23B1の合わせ面35に設けられる凸部37と、上箱23Aの合わせ面、つまり上箱本体部23A1の合わせ面36に設けられる凹部38とで構成される。この場合、ノックボール式の位置決め機構を採用している。凸部37は、上方の合わせ面36に形成された凹部38に嵌合される球状体40の一部で構成される。すなわち、球状体40の一部が合わせ面35により突出し、合わせ面36に設けられた凹部38に、球状体40の一部が嵌合するものである。このように、凹部38に凸部37が嵌合することにより、位置決めがなされる。
【0029】
このように位置決めされた状態で、ボルト部材24の軸部26を、下方から貫通孔31、27に嵌入して、その頭部25を、盗み部33に嵌合させる。この状態では、ボルト部材24の軸部26の先端部26a1が、図1に示すように、上箱23Aの連結用凸部23A2の上面よりも上方に突出する。そして、突出部した先端部26aに一対のナット部材41,41を螺合する。これによって、上箱23Aと下箱23Bとがボルト部材24とナット部材41、41とを有するボルト・ナット結合構造Sを介して一体連結される。
【0030】
このように、上箱23Aと下箱23Bとが組み合わされた状態では、図4に示すように、上箱23Aの内鍔部23A1aと、下箱23Bの内鍔部23B1aとで、軸方向一端側のリング形状の内鍔部42が形成され、上箱23Aの内鍔部23A1bと、下箱23Bの内鍔部23B1bとで、軸方向他端側のリング形状の内鍔部43が形成される。
【0031】
そして、各内鍔部42、43の内径面には、周方向凹溝44,44が形成され、この周方向凹溝44,44には、図示省略のシール部材が嵌合される、このシール部材がシャフト21の外径面に摺接する。なお、周方向凹溝44は、図5に示すように、両側面が内径側に向かってその間隔が拡大する傾斜面44a、44aを有する断面台形状とされている。
【0032】
ところで、図1に示すように、ボルト部材24の軸部26の長さLを、プランマブロック中心高さHの1.3倍以上であるように設定している、また、ボルト部材24の頭部25の裏面に対面するボルト座面50およびナット部材41の裏面に対面するナット座面51を機械加工面としている。ここで、機械加工面とは、研削および/または切削が施された面であり、微細な凹凸を有する面である。
【0033】
本発明のプランマブロックでは、ボルト部材24は、頭部25が下箱23Bの底部に配置されるとともに軸部26の反頭部側が上箱23Aの上部に達するものであり、上箱23Aと下箱23Bとを連結一体化するボルト部材24の軸部長さを長くとることができ、従来品よりも大きな弾性変形量で締結可能となる。すなわち、ボルトの軸力は材料力学の応力・ひずみの関係に従い、ボルトの弾性変形量が大きいほどゆるみに対する軸力の低下量が少ない。このことは応力がひずみの比率で規定される事に対し(ボルトが長くなるほどひずみ=弾性変形量も大きい)、ボルトの緩みはネジの呼びに対応するネジピッチの絶対量で規定される事に起因する(ボルトがいくら長くなってもネジピッチは変わらない)。即ち、ボルトが長くなるほどボルトの弾性変形量に対するネジピッチの長さの比率が低下していくため、それに伴いネジの緩みに対する軸力の変化量も低下する。このため、ボルトが長いと、ネジの緩みに対する軸力の減少量が少なくて済み、結果高い軸力を維持したまま緩み止め力を発揮できる。しかも、下箱23Bの底部にボルト部24材の回り止め機構Mを設けているので、ボルト部材24の締結作業が安定するとともに、緩み止め機能も発揮される。
【0034】
本発明では、ボルト部材24は、緩み止めに対して高い効果を発揮し、しかも、軸力による緩み止め効果(機能)の経時変化がなく、長期にわたって安定して緩み止め機能を発揮する。ここで、軸力とは、ボルト部材の締付けにより引っ張られることで、元に戻ろうとする力である。このため、この軸力により上箱23Aと下箱23Bとを安定した締結力で一体化できる。
【0035】
回り止め機構Mは、下箱23Bの底部に設けられてボルト部材24の頭部25が嵌合する底部ぬすみ部33で構成することができ、この機構として簡単な構造で構成でき、しかも、安定した廻り止め機能を発揮できる。
【0036】
ボルト部材24の軸部26の長さは、プランマブロック中心O高さの1.3倍以上であるのが好ましい。このような長さに設定することにより、安定した緩み止め機能を発揮する。
【0037】
ボルト部材24の軸部26の反頭部側である先端部26a1が上箱23Aから突出し、その先端部26a1にナット部材41が螺合され、ボルト部材24の頭部25の裏面に対面するボルト座面50およびナット部材41の裏面に対面するナット座面51を機械加工面とすることができる。ここで、機械加工面とは、研削および/または切削が施された面であり、微細な凹凸を有する面である。
【0038】
ボルト座面50やナット座面51が機械加工面とされていることにより、ボルト部材24の緩み止め機能の向上を図ることができる。
【0039】
また、実施形態のように、ボルト部材24の頭部25の反頭部側である先端部26a1が、上箱23Aから突出し、その先端部26a1に一対のナット部材41,41を螺合させるのが好ましい。このように、ダブルナットとすることにより、ゆるみ止めとして効果を発揮させている。すなわち、ナット41とナット41の間で引張の力が生じ、この力によってねじ山で摩擦力が発生し、ゆるみを防止する。
【0040】
このように、本発明では、軸力による緩み止め効果(機能)に加え、他の種々の緩み止め対策(例えば、下箱23Bの底部にボルト部材24の回り止め機構M、ダブルナット、ボルト座面50やナット座面51を機械加工面とする対策)が可能であり、これらと併用することにより、一層緩み止め効果(機能)を発揮することができ、長期にわたって製品としてその機能を発揮できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、シール部材として既存の種々のタイプのものを使用することができる。また、シール部材が嵌合する周方向溝としても、断面台形状のものに限らず、矩形状のものであってもよく、転がり軸受22として、自動調心ころ又は自動調心玉軸受用の軸受等を用いることができる。また、軸受箱23の一方の開口部をエンドプレートで塞いだものであってもよい。
【0042】
緩み止め用座金や緩み止め用接着剤を使用してもよく、また、ダブルナット構造とせずに、一つのナット部材41で締結するものであってもよい。さらには、ボルト部材として、六角ボルトに限るものではなく、頭部が四角や八角形状のものであってもよい。位置決め機構Pとして、図例では、いわゆるノックボール式を用いたが、ノックピン方式を用いてもよい。
【0043】
また、回り止め機構Mとして、前記実施形態では、下箱23Bのベース部材23B2の底面に設けられ、径方向に延びる底部盗み部33にて構成していたが、使用するボルト部材24の頭部25の形状に対応した形状、例えば、実施形態のように頭部25が六角形の場合には、これに対応して六角形状の凹部にて構成できる。
【符号の説明】
【0044】
22 軸受
23 軸受箱
23A 上箱
23B 下箱
24 ボルト部材
25 頭部
26 軸部
33 盗み部
41 ナット部材
50 ボルト座面
51 ナット座面
P 位置決め機構
M 回り止め機構
S ボルト・ナット結合構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10