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特開2024-98276変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物及び成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098276
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20240716BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240716BHJP
   C08K 5/5425 20060101ALI20240716BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240716BHJP
   C08K 5/15 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L23/26
C08K5/5425
C08K5/14
C08K5/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001678
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 美穂
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB05W
4J002BB202
4J002EK007
4J002EX016
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD147
4J002FD150
4J002FD156
4J002GC00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】圧縮永久歪、生産性、表面外観に優れる低光沢のエラストマー組成物を提供する。
【解決手段】下記成分(A),(B)及び(C)を含み、且つ下記成分(D)によりグラフトされてなる変性エラストマー組成物。
成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(B):オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー
成分(C):不飽和シラン化合物
成分(D):過酸化物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、
少なくとも前記成分(A)が下記成分(D)によりグラフトされた、変性エラストマー組成物。
成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(B):オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー
成分(C):不飽和シラン化合物
成分(D):過酸化物
【請求項2】
前記成分(B)が、JIS K6262:2013年の規格に準拠し、70℃、22時間、A法により測定される圧縮永久歪が30%以下である、請求項1に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記成分(B)の含有率が、前記成分(A)と前記成分(B)との合計量に対して、5~45質量%である、請求項1に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記成分(C)の含有量が、前記成分(A)と前記成分(B)との合計の含有量100質量部に対して0.1~5質量部である、請求項1に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項5】
前記成分(D)の使用量が、前記成分(A)と前記成分(B)との合計の含有量100質量部に対して0.01~3質量部である、請求項1に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項6】
前記成分(A)の密度が、0.880g/cm以下である、請求項1に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項7】
前記成分(A)の示差走査熱量計で測定される融解の終了点が115℃以上である、請求項1に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項8】
前記成分(C)が下記式(1)で表される化合物である、請求項1に記載の変性エラストマー組成物。
RSi(R’) …(1)
(式(1)において、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、前記R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基である。)
【請求項9】
前記成分(B)は、α-オレフィンの重合体、及び、エチレンと炭素原子数が3以上のアルケンとの共重合体とが架橋されたオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項10】
フェノール樹脂の架橋剤により前記架橋がされた、請求項9に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の変性エラストマー組成物が、成分(E):シラノール縮合触媒により架橋された、架橋エラストマー組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の変性エラストマー組成物から成形された成形体。
【請求項13】
請求項11に記載の架橋エラストマー組成物から成形された成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーとは、加熱により軟化して流動性を有し、冷却するとゴム弾性を有するエラストマーをいう。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有すると共に、ゴム弾性を有し、また、リサイクルが可能であることから、自動車部品、土木・建材部品、医療用部品、電線被覆材、雑貨等の用途に幅広く用いられている。
【0003】
シール性が求められる用途に使われる材料には、良好なゴム弾性、ないしは圧縮永久歪特性、良好な成形性を有することが重要であり、そのために多くの研究がなされている。ここで、熱可塑性エラストマーは熱可塑性を確保するためにポリオレフィンのような熱可塑性樹脂を含有するため、熱硬化性ゴムと比較すると圧縮永久歪特性が不十分で、使用できる用途に制限があった。一方、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)のような熱硬化性ゴムは優れた圧縮永久歪特性を有するが、長い架橋工程が必要であり、また耐久性に劣るという欠点があった。
【0004】
例えば、特許文献1~3には圧縮永久歪を改善したシラン変性によるエラストマー組成物が開示されており、特許文献4にも、同じくシラン変性によるエラストマー組成物が開示されている。また、特許文献5にはフェノール樹脂等の架橋剤を用いた動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/140251号
【特許文献2】国際公開第2016/140252号
【特許文献3】国際公開第2016/140253号
【特許文献4】特開2019-131796号公報
【特許文献5】特表2005-516098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3に開示されたエラストマー組成物は、圧縮永久歪特性を改善するためには、多量の不飽和シラン化合物を添加する必要があり、経済性、生産性の向上が望まれる。また、材料光沢が高いためにシール材には不向きであり、かつペレット化時やペレット化後にブロッキングしやすく、生産性に劣る。特許文献4に開示されたエラストマー組成物では、表面外観についての言及がなく、改善が望まれる。また、特許文献5に開示されたエラストマー組成物は、前述した通り、成分中に非架橋の熱可塑性樹脂を含有するために、圧縮永久歪特性は不十分であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされてものであり、架橋された際に従来の熱硬化性ゴムと同等の圧縮永久歪特性を示し、かつ熱可塑性エラストマー組成物と同等の生産性を持ちながら、表面外観にも優れる、低光沢の変性エラストマー組成物を提供することを目的とする。また、かかる変性エラストマーが架橋された架橋エラストマー組成物、及び、それら組成物から成形された成形体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、エチレン・α-オレフィン共重合体及び不飽和シラン化合物を含む組成物に対し、さらにオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーを含有させて、少なくともエチレン・α-オレフィン共重合体を過酸化物によりグラフト(変性)させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0009】
本発明の態様1は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、
少なくとも前記成分(A)が下記成分(D)によりグラフトされた、変性エラストマー組成物である。
成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(B):オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー
成分(C):不飽和シラン化合物
成分(D):過酸化物
【0010】
本発明の態様2は、態様1の変性エラストマー組成物において、前記成分(B)が、JIS K6262:2013年の規格に準拠し、70℃、22時間、A法により測定される圧縮永久歪が30%以下である。
【0011】
本発明の態様3は、態様1又は態様2の変性エラストマー組成物において、前記成分(B)の含有率が、前記成分(A)と前記成分(B)との合計量に対して5~45質量%である。
【0012】
本発明の態様4は、態様1~態様3のいずれか1つの変性エラストマー組成物において、前記成分(C)の含有量が、前記成分(A)と前記成分(B)との合計の含有量100質量部に対して0.1~5質量部である。
【0013】
本発明の態様5は、態様1~態様4のいずれか1つの変性エラストマー組成物において、前記成分(D)の使用量が、前記成分(A)と前記成分(B)との合計の含有量100質量部に対して0.01~3質量部である。
【0014】
本発明の態様6は、態様1~態様5のいずれか1つの変性エラストマー組成物において、前記成分(A)の密度が、0.880g/cm以下である。
【0015】
本発明の態様7は、態様1~態様6のいずれか1つの変性エラストマー組成物において、前記成分(A)の示差走査熱量計で測定される融解の終了点が115℃以上である。
【0016】
本発明の態様8は、態様1~態様7のいずれか1つの変性エラストマー組成物において、前記成分(C)が下記式(1)で表される化合物である。
RSi(R’) …(1)
(式(1)において、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、前記R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基である。)
【0017】
本発明の態様9は、態様1~態様8のいずれか1つの変性エラストマー組成物において、前記成分(B)が、α-オレフィンの重合体、及び、エチレンと炭素原子数が3以上のアルケンとの共重合体とが架橋されたオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーである。
【0018】
本発明の態様10は、態様9の変性エラストマー組成物において、フェノール樹脂の架橋剤により前記架橋がされたものである。
【0019】
本発明の態様11は、態様1~態様10のいずれか1つの変性エラストマー組成物が、成分(E):シラノール縮合触媒により架橋された、架橋エラストマー組成物である。
【0020】
本発明の態様12は、態様1~態様10のいずれか1つの変性エラストマー組成物、又は、態様11の架橋エラストマーから成形された成形体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る変性エラストマー組成物は、熱硬化性ゴムと同等の優れた圧縮永久歪特性と、熱可塑性エラストマー組成物と同等の良好な生産性を有しながら、表面外観も良好な、低光沢の組成物である。そのため、上記変性エラストマー組成物や、これが架橋された架橋エラストマー組成物から成形された成形体は、従来熱硬化性ゴムが使用されている良好なゴム弾性が要求される用途や、さらに厳しい使用環境に曝される種々の用途への展開が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0023】
〈変性エラストマー組成物〉
本実施形態に係る変性エラストマー組成物は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、且つ、少なくとも成分(A)が下記成分(D)によりグラフトされる。
成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(B):オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー
成分(C):不飽和シラン化合物
成分(D):過酸化物
【0024】
本実施形態に係る変性エラストマー組成物が、生産性、表面外観のいずれにも優れ、かつ低光沢となり、また、これが架橋された架橋エラストマー組成物の圧縮永久歪特性も良好となる理由は定かではないが、以下のように考えている。
【0025】
成分(A)は、成分(C)や成分(D)により架橋度が格段に上がり、高いゴム弾性が得られるようになる。ここで、変性エラストマー組成物中に成分(B)が存在すると、成分(A)と成分(B)との溶融・混練が均一に進行し、成分(B)が成分(A)中に微分散するものと考えられる。
上記微分散により、成分(A)の架橋反応が、従来よりもより均一に進行し、その結果、可視欠点の少ない良好な表面外観が得られるものと推測される。また、微分散状態であることにより光が乱反射され、低光沢が実現されるものと考えている。
【0026】
また、成分(A)中に微分散された成分(B)は、得られる変性エラストマー組成物に弾性を付与するため、カッティング時のストランドの変形に伴うカッティング不良を防止し、生産性を向上できるものと推測される。
【0027】
また、成分(B)が微分散していることにより、得られる変性エラストマー組成物に圧力がかかった際に成分(B)にかかる応力が下がり、その結果、成分(B)中の熱可塑性樹脂の変形が抑制され、架橋された架橋エラストマー組成物における良好な圧縮永久歪特性が実現される。
【0028】
《成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体》
本実施形態における成分(A)であるエチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレン単位とα-オレフィン単位を含む共重合体である。成分(A)は上記単位を含めば特に限定されず、公知のエチレン・α-オレフィン共重合体を使用できる。
【0029】
本実施形態における成分(A)の具体例としては、例えば、エチレンと、炭素数3~10のα-オレフィンの1種又は2種以上と、の共重合体が挙げられる。
成分(A)は、より具体的には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等が挙げられる。
【0030】
エチレン・α-オレフィン共重合体は製造しても、市販のものを用いてもよい。製造する際に用いられる触媒の種類は特に制限されないが、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられる。これらの中でも、メタロセン触媒により製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体が、架橋された際の圧縮永久歪みの点から好ましい。
【0031】
市販のものを用いる場合、例えば、ダウ・ケミカル社製エンゲージ(登録商標)シリーズ、日本ポリエチレン社製カーネル(登録商標)シリーズ、ダウ・ケミカル社製インフューズ(商標登録)シリーズ、三井化学社製タフマー(登録商標)シリーズ、プライムポリマー社製エボリュー(商標登録)シリーズ等から該当品を選択して用いることができる。
【0032】
本実施形態におけるエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0033】
本実施形態におけるエチレン・α-オレフィン共重合体は、より高温の場合でも、結晶により形状を保持可能となることから、示差走査熱量計(DSC)で測定される融解の終了点(以下「融解終了点」と称す。)は100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、115℃以上がさらに好ましい。
一方、エチレン・α-オレフィン共重合体の融解終了点が過度に高いと、成形昇温時の未溶融物や成形冷却時の早期結晶化により外観不良となる恐れがある。そのため、エチレン・α-オレフィン共重合体の融解終了点は通常145℃以下である。
なお、本明細書におけるエチレン・α-オレフィン共重合体の融解終了点は、後述の実施例の項に記載の方法で測定される値である。
【0034】
本実施形態におけるエチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、0.850~0.910g/cmが好ましい。ここで、柔軟で密封性能に優れるといった観点から、上記密度は0.910g/cm以下が好ましく、0.900g/cm以下がより好ましく、0.880g/cm以下がさらに好ましい。また、室温で形状を維持でき、ヒステリシスロスも少ないことからヘタリに優れるといった観点から、上記密度は0.850g/cm以上が好ましい。なお、本明細書における密度は、JIS K6922-1,2:1997に準拠して測定される値である。
【0035】
本実施形態におけるエチレン・α-オレフィン共重合体のエチレン単位の含有量は、機械的強度やゴム弾性に優れるエラストマー組成物が得られ易いといった観点から、60~99質量%が好ましく、60~85質量%がより好ましい。
【0036】
本実施形態におけるエチレン・α-オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.01~30g/10分が好ましい。圧縮永久歪が大きくなり過ぎて密封性が低下するのを抑制する観点から、上記MFRは30g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましい。また、変性押出時のモーター負荷が大きくなり、樹脂圧力が上昇して生産性が悪化するのを抑制する観点、及び、成形後の表面荒れを抑制する観点から、上記MFRは0.01g/10分以上が好ましく、0.1g/10分以上がより好ましい。なお、本明細書における成分(A)のメルトフローレート(MFR)とは、JIS K7210(1999)に準拠して温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定される値である。
【0037】
《成分(B):オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー》
本実施形態における成分(B)であるオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーは、オレフィン系熱可塑性樹脂及びオレフィン系共重合体ゴムを含む混合物を、架橋剤の存在下で動的熱処理を行うことにより得られる組成物である。
【0038】
成分(B)のオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーの存在により、成分(A)の架橋反応がより均一に進行し、得られる変性エラストマー組成物において、可視欠点の少ない良好な表面外観と低光沢を実現できる。上記に加え、変性エラストマーを架橋した際に良好な圧縮永久歪特性が得られる。また、成分(B)のオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーの存在により、当該変性エラストマー組成物に対して弾性を付与してカッティング性を良好にし、生産性を向上させることができる。
【0039】
上記生産性の観点から、成分(B)であるオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーは、圧縮永久歪特性が良好であるものが好ましい。具体的には、本実施形態における成分(B)のオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーの圧縮永久歪は50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。なお、上記成分(B)の圧縮永久歪は、JIS K6262:2013年の規格に準拠し、70℃、22時間、A法により測定される値である。
【0040】
本実施形態におけるオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーを構成するオレフィン系熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等のα-オレフィン重合体が好ましく、当該重合体は単独重合体でも、2種以上のα-オレフィンの共重合体でもよい。これらの中でも、プロピレン系重合体、エチレン系重合体が、耐熱性や生産性等の観点から好ましい。
【0041】
本実施形態におけるオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーを構成するオレフィン系共重合体ゴムとしては、エチレンと炭素原子数が3以上のアルケンとの共重合体、好ましくはエチレンと炭素原子数が3~10のアルケンとの共重合体が挙げられる。すなわち、本実施形態におけるオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーは、α-オレフィンの重合体、及び、エチレンと炭素原子数が3以上のアルケンとの共重合体とが架橋されたものがより好ましい。
【0042】
エチレンと炭素原子数が3以上のアルケンとの共重合体として、より具体的には、例えば、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン-ブテン共重合体ゴム(EBM)、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等が挙げられる。
これら共重合体ゴムや共重合体に対し、さらに第3成分として例えば、5-エチリデンノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエンやブテン等を併用したものでもよい。具体的には、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)やエチレン-プロピレン-ブテン共重合体ゴム等が挙げられる。
【0043】
上記オレフィン系共重合体ゴムの125℃におけるムーニー粘度(ML1+4(125℃))は特に限定されないが、例えば、30~100が好ましい。ここで、圧縮永久歪特性を良好にする観点から、上記ムーニー粘度は30以上が好ましく、45以上がより好ましい。また、成形品外観の観点から、上記ムーニー粘度は100以下が好ましい。
【0044】
上記オレフィン系共重合体ゴムの製造方法や形態は、特に限定されるものではなく、製造しても、市販のものを用いてもよい。またオレフィン系共重合体ゴムを有機過酸化物の存在下で加熱処理し、主としてラジカルによって架橋したものを用いてもよい。
【0045】
オレフィン系共重合体ゴムの市販品の例としては、株式会社ENEOSマテリアル社製「EP」や、三井化学株式会社製「MITSUI EPT」や「タフマー(登録商標)」、住友化学株式会社製「ESPRENE」、ダウ・ケミカル日本株式会社製「ENGAGE」等が挙げられる。
【0046】
本実施形態におけるオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーを得る際に使用される架橋剤としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、これら以外の他の架橋剤等が挙げられる。他の架橋剤には、架橋助剤も含む。架橋剤は1種のみで用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、圧縮永久歪特性をより良好にする観点から、架橋剤はフェノール樹脂が特に好ましい。例えば、本実施形態におけるオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーが、α-オレフィンの重合体、及び、エチレンと炭素原子数が3以上のアルケンとの共重合体とが架橋されたものである場合、上記架橋は、フェノール樹脂の架橋剤によりされていることがさらに好ましい。
【0047】
上記有機過酸化物として、芳香族系有機過酸化物及び脂肪族系有機過酸化物のいずれも、架橋剤として使用できる。このような有機過酸化物として、例えば、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類;t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3等のパーオキシエステル類;アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p-クロロベンゾイルパーオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類等が挙げられる。これらの中でも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。これらの有機過酸化物は1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
上記フェノール樹脂として、アルキルフェノールホルムアルデヒド、臭化アルキルフェノールノールホルムアルデヒド等が架橋剤として使用できる。これらのフェノール樹脂は1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
また、架橋剤としてフェノール樹脂を用いる場合には、通常、活性化剤と共に使用される。活性化剤としては、例えば、塩化第一スズ、塩化第二鉄、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン等のハロゲン供与体、及び酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、二酸化珪素、酸化亜鉛のような受酸剤が挙げられる。フェノール樹脂がハロゲン化されている場合には、上記ハロゲン供与体は用いなくてもよい。
【0050】
上記架橋助剤としては、例えば、硫黄、p-キノンジオキシム、p-ジニトロソベンゼン、1,3-ジフェニルグアニジン等の過酸化物用助剤;塩化第一錫・無水物、塩化第一錫・二水和物、塩化第二鉄等のフェノール樹脂用架橋助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。架橋助剤は1種のみで用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本実施形態における成分(B)のオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーの市販品の例としては、三菱ケミカル株式会社製「Trexprene」、Celanese社製「Santoprene」、三井化学株式会社製「MILASTOMER(登録商標)」、株式会社ENEOSマテリアル製「EXCELINK(登録商標)」、住友化学株式会社製「ESPOLEX TPEシリーズ」等が挙げられる。
【0052】
《成分(C):不飽和シラン化合物》
本実施形態における成分(C)の不飽和シラン化合物は、従来の変性エラストマー組成物に用いられるものを使用できる。不飽和シラン化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
成分(C)の不飽和シラン化合物は特に限定されないが、例えば、下記式(1)で表される不飽和シラン化合物が好ましい。
RSi(R’) ・・・(1)
【0054】
上記式(1)において、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基である。
【0055】
上記式(1)において、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であるが、炭素数2~10のエチレン性不飽和炭化水素基が好ましく、炭素数2~6のエチレン性不飽和炭化水素基がより好ましい。具体的には、Rとして、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0056】
上記式(1)において、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であるが、炭素数1~6の炭化水素基又は炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~4の炭化水素基又は炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましい。また、R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基であるが、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましい。
【0057】
R’が炭素数1~10の炭化水素基である場合の炭化水素基は脂肪族基、脂環族基、芳香族基のいずれでもよいが、脂肪族基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-ブチル基、i-ブチル基、シクロヘキシル基等に代表されるアルキル基、又はフェニル基等に代表されるアリール基等が挙げられる。
【0058】
R’が炭素数1~10のアルコキシ基である場合のアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状が好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、β-メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0059】
本実施形態における不飽和シラン化合物が上記式(1)で表される場合、3つのR’のうち少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基であるが、3つのR’のうち2以上のR’が炭素数1~10のアルコキシ基であることが好ましく、全てのR’がアルコキシ基であることがより好ましい。
【0060】
本実施形態における不飽和シラン化合物としては、上記式(1)で表されるものの中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン等に代表されるビニルトリアルコキシシランがより好ましい。
これは、ビニルトリアルコキシシランのビニル基によって、成分(B)であるオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーの、成分(A)であるエチレン・α-オレフィン共重合体への変性を可能とし、同アルコキシ基によって、後述の架橋反応が好適に進行することを理由とする。
即ち、不飽和シラン化合物により成分(A)であるエチレン・α-オレフィン共重合体にグラフト変性されて導入されたアルコキシ基が、シラノール縮合触媒の存在下、水と反応して加水分解してシラノール基を生成させる。そして、生成したシラノール基同士が脱水縮合することにより、成分(A)であるエチレン・α-オレフィン共重合体同士が結合して好適に架橋反応が進行する。
【0061】
《成分(D):過酸化物》
本実施形態における成分(D)の過酸化物は、ラジカルを発生させることにより、成分(A)をグラフトする。また、成分(A)に加え、成分(B)の少なくとも一部もグラフトしてもよい。
【0062】
本実施形態における成分(D)の過酸化物としては、従来公知のものを使用できる。例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル及びケトンパーオキサイド群に含まれる有機過酸化物が挙げられる。
【0063】
より具体的には、有機過酸化物として、以下のようなものが挙げられる。
ハイドロパーオキサイド群にはキュメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等が含まれる。
ジアルキルパーオキサイド群にはジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン-3、ジ(2-ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が含まれる。
ジアシルパーオキサイド群にはラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が含まれる。
パーオキシエステル群にはターシャリーパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエイト、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が含まれる。
ケトンパーオキサイド群にはシクロヘキサノンパーオキサイド等が含まれる。
これらの有機過酸化物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
《配合割合》
本実施形態に係る変性エラストマー組成物を構成する成分(A)~成分(D)の配合割合は、本発明の効果が奏されれば特に限定されない。
例えば、成分(A)と成分(B)との合計量に対して、成分(A)の含有率は55~95質量%、すなわち、成分(B)の含有率は5~45質量%が好ましい。
【0065】
より良好な生産性及び表面外観を得る観点から、上記成分(A)の含有率は95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。同様に、成分(B)の含有率は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
一方、成分(A)が好適に架橋され、より良好な圧縮永久歪特性を得る観点から、上記成分(A)の含有率は55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。同様に、成分(B)の含有率は45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0066】
成分(C)の含有量は、架橋反応を十分に促進させる観点から、成分(A)と成分(B)との合計の含有量100質量部に対して0.1~5質量部が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、また、4質量部以下がより好ましい。
【0067】
成分(D)の使用量は、十分な架橋反応を得ると共に平滑な表面外観を保つ観点から、成分(A)と成分(B)との合計の含有量100質量部に対して0.01~3質量部が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.03質量部以上がさらに好ましく、また、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0.5質量部以下がよりさらに好ましい。
【0068】
上記成分(A)~成分(D)の配合割合の組み合わせとして、例えば、成分(A)と成分(B)との合計量に対して、成分(A)の含有率が55~95質量部及び成分(B)の含有率が5~45質量部、並びに、成分(A)と成分(B)との合計の含有量100質量部に対して、成分(C)の含有量が0.1~5質量部及び成分(D)の使用量が0.01~3質量部、が挙げられるが、上記組み合わせに限定されるものではない。
【0069】
《その他の成分》
本実施形態に係る変性エラストマー組成物には、上記成分の他に、その他の成分として軟化剤や架橋助剤、各種の添加剤や充填剤、成分(A)、成分(B)以外の樹脂やエラストマー等を本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0070】
軟化剤としては、例えば、鉱物油系ゴム用軟化剤、合成樹脂系ゴム用軟化剤等を挙げることができる。これらの中でも、他の成分との親和性等の観点から、鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。軟化剤を添加する場合、本実施形態に係る変性エラストマー組成物における含有率が1~30質量%となるように含有させることが好ましい。
【0071】
架橋助剤としては、例えば、メトロハイドロジェンシリコン等の水素化ケイ素化合物、硫黄、p-キノンジオキシム、p-ジニトロソベンゼン、1,3-ジフェニルグアニジン等の過酸化物用助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物;アルキルフェノールホルムアルデヒド、臭化アルキルフェノールノールホルムアルデヒド等のフェノール樹脂;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-トルイレンビスマレイミド等のビスマレイミド構造を有する化合物;トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、塩化錫(SnCl)等が挙げられる。これらの中では、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物や多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。架橋助剤を添加する場合、本実施形態に係る変性エラストマー組成物における含有率が0.001~5質量%となるように含有させることが好ましい。
【0072】
添加剤としては、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、防錆剤、粘度調整剤、発泡剤、滑剤及び顔料等を挙げることができる。これらのうち、酸化防止剤、特にフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤又はリン系の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤を添加する場合、本実施形態に係る変性エラストマー組成物における含有率が0.1~1質量%となるように含有させることが好ましい。
【0073】
成分(A)、成分(B)以外のその他の樹脂やエラストマーとしては、例えば、成分(A)以外のポリオレフィン樹脂、オレフィン系共重合体ゴム、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ロジンとその誘導体、テルペン樹脂や石油樹脂とその誘導体、アルキッド樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、合成テルペン樹脂、アルキレン樹脂、成分(B)以外のオレフィン系エラストマー、ポリアミド・ポリオール共重合体等のポリアミド系エラストマー;ポリ塩化ビニル系エラストマー及びポリブタジエン系エラストマー、スチレン系エラストマー、これらの水添物や、酸無水物等により変性して極性官能基を導入させたもの、更に他の単量体をグラフト、ランダム及び/又はブロック共重合させたもの等が挙げられる。その他の樹脂やエラストマーを添加する場合、本実施形態に係る変性エラストマー組成物における含有率が5~45質量%となるように含有させることが好ましい。
【0074】
〈架橋エラストマー組成物〉
本発明は、架橋エラストマー組成物にも関する。
本実施形態に係る架橋エラストマー組成物は、変性エラストマー組成物が架橋されたものである。
変性エラストマー組成物は、上記〈変性エラストマー組成物〉に記載のものを使用でき、好ましい対応も同様である。
【0075】
《成分(E):シラノール縮合触媒》
本実施形態に係る架橋エラストマー組成物は、上記変性エラストマー組成物が、成分(E)であるシラノール縮合触媒により架橋されたものであることが好ましい。本明細書において、シラノール縮合触媒とは、シラノール基同士の脱水縮合を促進する触媒を意味する。
本実施形態における成分(E)であるシラノール縮合触媒を変性エラストマー組成物に配合することにより、当該変性エラストマー組成物を分子間で架橋反応させることができる。
なお、成分(E)は、上述の変性エラストマー組成物に含まれていてもよく、成分(E)を含む変性エラストマー組成物も、脱水縮合に伴う架橋がなされる前の状態であれば、上記〈変性エラストマー組成物〉に記載の変性エラストマー組成物に含まれる。
【0076】
具体的には、変性エラストマー組成物が水と反応して加水分解することによりシラノール基が生成する。そして、生成したシラノール基同士が、成分(E)であるシラノール縮合触媒の存在下で脱水縮合することにより、架橋反応が進行し、変性エラストマー組成物同士が結合することで、耐熱性に優れた架橋エラストマー組成物が得られる。
【0077】
本実施形態における成分(E)であるシラノール縮合触媒は、従来公知のものを使用でき、特に限定されない。シラノール縮合触媒は、例えば、金属有機酸塩、チタネート、ホウ酸塩、有機アミン、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、無機酸、有機酸、無機酸エステル等が挙げられる。シラノール縮合触媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
金属有機酸塩としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ナフテン酸コバルト、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸鉄、オクチル酸鉄、ステアリン酸鉄等が挙げられる。
チタネートとしては、例えば、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジ-イソプロピルチタネート等が挙げられる。
有機アミンとしては、例えば、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルソーヤアミン、テトラメチルグアニジン、ピリジン等が挙げられる。
アンモニウム塩としては、例えば、炭酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
ホスホニウム塩としては、例えば、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
無機酸、有機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸、トルエンスルホン酸、アルキルナフチルスルホン酸などのスルホン酸等が挙げられる。
無機酸エステルとしては、例えば、エチルヘキシルリン酸エステルなどのリン酸エステル等が挙げられる。
【0079】
これらの中で、金属有機酸塩、スルホン酸、リン酸エステルが好ましく、金属有機酸塩としては、錫の金属カルボン酸塩がより好ましく、例えばジオクチル錫ジラウレートがさらに好ましい。また、アルキルナフチルスルホン酸、エチルヘキシルリン酸エステルもより好ましい。
【0080】
本実施形態における成分(E)であるシラノール縮合触媒は、ポリオレフィンとシラノール縮合触媒とを配合したマスターバッチとして用いることが好ましい。上記マスターバッチに用いることができるポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン・α-オレフィン共重合体等が挙げられる。ポリオレフィンは、1種のみを用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0081】
ポリオレフィンとしては、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等の(分岐状又は直鎖状)エチレン単独重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂等が挙げられる。
【0082】
これらの中でも、耐熱性と強度のバランスに優れるといった観点から、上記ポリオレフィンは、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体としては、より好ましくはエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体であり、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体がさらに好ましい。
エチレン・α-オレフィン共重合体は、1種又は2種以上のα-オレフィン2~60質量%と、エチレン40~98質量%とを共重合させたものであることがより好ましい。
【0083】
本実施形態における成分(E)であるシラノール縮合触媒を、ポリオレフィンとシラノール縮合触媒とを配合したマスターバッチとして用いる場合、マスターバッチ中のシラノール縮合触媒の含有量には特に制限は無いが、通常0.1~5.0質量%程度とすることが好ましい。
【0084】
シラノール縮合触媒含有マスターバッチは、製造しても、市販品を用いてもよい。市販品を用いる場合には、例えば、三菱ケミカル株式会社製「LZ082」、「LZ033」等を用いることができる。
【0085】
上記変性エラストマー組成物に成分(E)であるシラノール縮合触媒を添加して架橋反応させる場合、シラノール縮合触媒の添加量は特に限定されない。例えば、上記変性エラストマー組成物100質量部に対し、成分(E)の添加量は0.001~0.5質量部が好ましい。ここで、架橋反応が十分に進行し、耐熱性が良好となるとの観点から、上記成分(E)の添加量は0.001質量部以上が好ましい。また、押出機内で早期架橋が起こりにくく、ストランド表面や製品外観の荒れが発生しにくくなるとの観点から、上記成分(E)の添加量は0.5質量部以下が好ましく、0.1質量部以下がより好ましい。なお、上記シラノール縮合触媒がマスターバッチ(MB)として用いる場合には、ポリオレフィンの含有量は除き、触媒そのものの含有量が上記範囲となることが好ましい。
【0086】
〈特性〉
《生産性》
本実施形態に係る変性エラストマー組成物は、溶融混練を行い、ストランドをカットする際に、ストランド同士が付着して塊となることなく、カッティングできることが好ましい。また、ストランドをカットすることでペレット化する際に、ペレット同士のブロッキングが発生しないことがより好ましい。
【0087】
《表面外観》
本実施形態に係る変性エラストマー組成物はシリンダー設定温度160℃~200℃にて、厚さ1mm×幅25mmのシートとした際のシート表面における凸状の外観不良が30個/m未満が好ましく、20個/m未満がより好ましく、10個/m未満がさらに好ましい。
【0088】
《圧縮永久歪》
本実施形態に係る架橋された架橋エラストマー組成物の圧縮永久歪は、35%以下が好ましく、33%以下が好ましく、31%以下がより好ましい。なお、本明細書における架橋エラストマー組成物の圧縮永久歪はJIS K6262:2013年の規格に準拠し、70℃、22時間、25%圧縮、B法(23℃で2時間保持した後に開放)によって測定される値である。圧縮永久歪が上記範囲内にあることで、シール特性が良好であると言える。
【0089】
《光沢》
本実施形態に係る変性エラストマー組成物は、シリンダー設定温度160℃~200℃にて、厚さ1mm×幅25mmのシートとした際のJIS Z8741:1997年の規格に準拠した光沢が4以下であることが好ましく、3以下がより好ましい。
【0090】
〈変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物の製造方法〉
本実施形態に係る変性エラストマー組成物は、成分(A)のエチレン・α-オレフィン共重合体と、成分(B)のオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーと、成分(C)の不飽和シラン化合物及び成分(D)の過酸化物、並びに、必要に応じてその他成分を、公知の方法で機械的に混合した後、公知の方法で機械的に溶融混練することにより製造することができる。
【0091】
上記その他の成分とは、上述したように、軟化剤や架橋助剤、各種の添加剤や充填剤、成分(A)、成分(B)以外の樹脂やエラストマー等が挙げられる。
【0092】
上記機械的に混合する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、タンブラーブレンダー等が挙げられる。
【0093】
上記機械的に溶融混練する方法としては、例えば、バンバリーミキサー、各種ニーダー、単軸又は二軸押出機等の一般的な溶融混練機を用いることができる。
後掲の実施例に示すように、本実施形態に係る変性エラストマー組成物を単軸又は二軸押出機等で混練して製造する場合には、通常120~240℃、好ましくは120~220℃に加熱した状態で溶融混練を行うことができる。
【0094】
本実施形態に係る変性エラストマー組成物において、前述の成分(E)であるシラノール縮合触媒を配合し、成形した後、水雰囲気中に曝すことにより、シラノール基間の架橋反応を進行させ、架橋されたエラストマー組成物とすることができる。
成形方法は、従来公知の方法を採用でき、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形等が挙げられる。
【0095】
上記水雰囲気中に曝す方法は、各種の条件を採用することができる。例えば、水分を含む空気中に放置する方法、水蒸気を含む空気を送風する方法、水浴中に浸漬する方法、温水を霧状に散水する方法等が挙げられる。
【0096】
成分(A)のエチレン・α-オレフィン共重合体や成分(B)のオレフィン系架橋熱可塑性エラストマーのグラフト変性に用いた成分(C)である不飽和シラン化合物由来の加水分解可能なアルコキシ基は、成分(E)のシラノール縮合触媒の存在下、水と反応して加水分解する。これによりシラノール基が生成し、更にシラノール基同士が脱水縮合することにより、架橋反応が進行することで、変性エラストマー組成物同士が結合して架橋した、架橋エラストマー組成物が得られる。
【0097】
架橋反応の進行速度は、成分(E)を配合した変性エラストマー組成物を水雰囲気中に曝す条件によって決まるが、通常0~130℃の温度範囲、かつ5分~1週間の範囲で曝せばよい。特に好ましい条件は、温度範囲については40~90℃であり、反応時間については30分~24時間である。
水雰囲気中に曝す方法として、水分を含む空気を使用する場合には、当該空気の相対湿度は1~100%の範囲から選択される。
【0098】
上記により得られる架橋エラストマー組成物の架橋度は、成分(E)のシラノール縮合触媒の種類と配合量、架橋させる際の条件(温度、時間)等を変えることにより、調整することができる。
【0099】
〈成形体〉
本発明は、変性エラストマー組成物から成形された成形体、及び、架橋エラストマー組成物から成形された成形体にも関する。
ここで、変性エラストマー組成物とは、上記〈変性エラストマー組成物〉に記載されたものと同様のものを使用でき、好ましい態様も同様である。また、架橋エラストマー組成物も、上記〈架橋エラストマー組成物〉に記載されたものと同様のものを使用でき、好ましい態様も同様である。
【0100】
〈用途〉
本実施形態に係る変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物の用途は特に限定されない。例えば、グラスランチャンネル、ウェザーストリップ、ホース、ワイパーブレード、グロメット等の自動車部品、パッキン、ガスケット、クッション、防振ゴム、チューブ等の土木・建材部品、工業用部品、スポーツ用品、雑貨用品、医療用機器部品、食品用部品、家電用部品、電線被覆材として好適に用いることができる。
本実施形態に係る変性エラストマー組成物又は架橋エラストマー組成物から成形された成形体の用途も、上記用途と同様のものが挙げられる。
【実施例0101】
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0102】
以下の実施例及び比較例において、エラストマー組成物の調製に用いた原料及び得られたエラストマー組成物の評価方法は次の通りである。
【0103】
[原材料]
以下の実施例・比較例で使用した原材料は以下の通りである。
【0104】
〈成分(A):エチレン・α-オレフィン共重合体〉
・エチレン・α-オレフィン共重合体
エンゲージ(登録商標) XLT8677(ダウ・ケミカル日本株式会社製)
α-オレフィン:1-オクテン
MFR:0.5g/10分(温度190℃、荷重21.2N)
密度:0.87g/cm
融解終了点:123℃
(なお、成分(A)の融解終了点の測定方法は後述の通りである。)
【0105】
〈成分(B):オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー〉
・オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー-1
Trexprene(登録商標) 3555B(三菱ケミカル株式会社製)
MFR:1g/10分(温度230℃、荷重49N)
デュロ硬度A(15秒後):52
圧縮永久歪(70℃、22hr、A法):35%
【0106】
・オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー-2
Trexprene(登録商標) 3755B(三菱ケミカル株式会社製)
MFR:3g/10分(温度230℃、荷重49N)
デュロ硬度A(15秒後):73
圧縮永久歪(70℃、22hr、A法):46%
【0107】
・オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー-3
Trexprene(登録商標) A35BWJ(三菱ケミカル株式会社製)
デュロ硬度A(15秒後):39
圧縮永久歪(70℃、22hr、A法):20%
圧縮永久歪(120℃、22hr、A法):30%
【0108】
・オレフィン系架橋熱可塑性エラストマー-4
Trexprene(登録商標) A64BWJ(三菱ケミカル株式会社製)
デュロ硬度A(15秒後):66
圧縮永久歪(70℃、22hr、A法):24%
圧縮永久歪(120℃、22hr、A法):32%
【0109】
〈成分(C):不飽和シラン化合物〉
ビニルトリメトキシシラン:KBM-1003(信越化学株式会社製)
【0110】
〈成分(D):過酸化物〉
有機過酸化物:カヤヘキサAD40C(化薬アクゾ株式会社製、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と有機フィラー60質量%との混合物)
【0111】
〈その他成分-1〉
・オレフィン系熱可塑性樹脂:Adflex(登録商標) Q300F(LyondellBasell社製)
非架橋プロピレン・エチレン共重合体
MFR:0.7g/10分(温度230℃、荷重21.2N)
プロピレン単位含有量:65質量%
【0112】
〈その他成分-2〉
・エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM):EP(登録商標)EP501EC(ENEOSマテリアル株式会社製)
油展EPDM(油展量:40質量部)
非共役ジエン:5-エチリデン-2-ノルボルネン
ジエン含有量:5.5質量%
エチレン単位含有量:66質量%
ムーニー粘度(ML1+4(125℃)):54
【0113】
〈架橋助剤〉
・ジビニルベンゼン(DVBZ):ジビニルベンゼン55質量%とエチルビニルベンゼン45質量%との混合物(和光純薬工業株式会社製)
【0114】
〈フィラー〉
・タルク:FH105(富士タルク工業株式会社製)
【0115】
〈成分(E):シラノール縮合触媒〉
・シラノール縮合触媒マスターバッチ(MB):LZ033(三菱ケミカル株式会社製、1.2%錫触媒(ジオクチル錫ジラウレート)含有線状低密度ポリエチレン
低密度ポリエチレンのMFR:2g/10分(温度190℃、荷重21.2N)
低密度ポリエチレンの密度:0.92g/cm
【0116】
[測定方法;成分(A)であるエチレン・α-オレフィン共重合体の融解終了点]
示差走査熱量計((株)日立ハイテクサイエンス社、DSC6220)を用いて、JIS K7121:2012年に準じて熱測定を行った。
試料は約5mgとし、加熱速度100℃/分で20℃から200℃まで昇温し、200℃で3分間保持した後、冷却速度10℃/分で-10℃まで降温し、その後、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから補外ピーク終了点(℃)を算出し、融解終了点とした。
【0117】
[評価方法]
実施例及び比較例における変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物の各種評価方法を以下に示す。結果は表1及び表2に示した。
【0118】
(1)生産性
変性エラストマー組成物を得るに際し、溶融混練を行い、ストランドをカットすることでペレット化する際の、ストランドのカット及びペレット同士のブロッキングの様子により、生産性の評価を行った。評価基準は下記のとおりとした。
◎(非常に良好):ストランドをカッティングでき、かつペレット同士のブロッキングが発生しなかった。
○(良好):ストランドをカッティングできたが、一部ペレット同士のブロッキングが発生した。
×(不良):ストランド同士が付着して塊となり、ペレット化できなかった。
【0119】
(2)表面硬度
架橋エラストマー組成物のシートについて、JIS K6253(Duro-A):2012年の規格に準拠し、デュロ硬度A(15秒後)を測定した。
【0120】
(3)圧縮永久歪
架橋エラストマー組成物のシートについて、JIS K6262:2013年の規格に準拠し、70℃、22時間、25%圧縮、B法(23℃で2時間保持した後に開放)によって測定した。
【0121】
(4)光沢
架橋エラストマー組成物から後述の方法により得られた評価用のシートについて、JIS Z8741:1997年の規格に準拠し、光沢を測定した。
【0122】
(5)表面外観
変性エラストマー組成物から後述の方法により得られた評価用の押出成形シートについて、目視にてシート表面の可視欠点の有無を観察した。評価基準は下記のとおりとした。
◎(非常に良好):押出成形シートの表面における凸状の外観不良が10個/m未満
○(良好):押出成形シートの表面における凸状の外観不良が10個/m以上20個/m未満
×(不良):押出成形シートの表面における凸状の外観不良が20個/m以上
【0123】
[実施例1-1]
表1に記載の原料配合で各原料を配合し、ヘンシェルミキサーにて1分間混合した。次いで、同方向二軸押出機(日本製鋼所社製、商品番号:TEX30、L/D=46、シリンダーブロック数:12)の上流の供給口に、得られた混合物を質量式フィーダーにて投入した。そして、合計25kg/hの吐出量にて、上流部から下流部を120~200℃の範囲で昇温させて溶融混練を行い、ストランドをカットすることでペレット化して変性エラストマー組成物を作製した。
上記で得られた変性エラストマー組成物100質量部に対して、成分(E)であるシラノール縮合触媒MBを4質量部(錫触媒として0.048質量部)をドライブレンドし、口径20mmの単軸押出機、フルフライトスクリューを用い、シリンダー設定温度160℃~200℃にて、厚さ1mm×幅25mmのシートを成形し、これを表面外観、及び光沢評価のための評価用のシートとした。
【0124】
なお、表1及び表2中、成分(D)については、実際の成分(D)全体の配合量ではなく、成分(D)のうちの2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンのみの配合量(実配合量の40%)で示している。成分(E)については、シラノール縮合触媒MB全体の配合量ではなく、そのうちの錫触媒としての配合量(実配合量の1.2%)で示している。
また、表2中の架橋助剤についても、実際の架橋助剤全体の配合量ではなく、ジビニルベンゼンのみの配合量(実配合量55%)で示している。
【0125】
[実施例2-1]
実施例1-1で得られた変性エラストマー組成物100質量部に対して、成分(E)であるシラノール縮合触媒MBを4質量部(錫触媒として0.048質量部)ドライブレンドした。そして、インラインスクリュータイプの射出成形機(東芝機械社製、商品番号:IS130)を用い、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃の条件下にて、射出成形し、厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシートを成形することで、触媒MBを含有する変性エラストマー組成物を得た。さらに85℃、85%RHの条件で恒温恒湿機に24時間曝して架橋された架橋エラストマー組成物を作製し、表面硬度及び圧縮永久歪の価のためのシートとした。
なお、表1及び表2中、成分(E)については、シラノール縮合触媒MB全体の配合量ではなく、そのうちの錫触媒としての配合量(実配合量の1.2%)で示している。
【0126】
[実施例1-2~1-9及び比較例1-1~1-5]
表1又は表2に記載の原料配合に変更する以外は、実施例1-1と同様に処理して、実施例1-2~1-9及び比較例1-1~1-5の変性エラストマー組成物のペレットを得た。そして、各ペレットから、実施例1-1と同様にして、各評価用シートを成形し、評価を行った。
【0127】
[実施例2-2~2-9及び比較例2-1~2-5]
実施例2-1と同様にして、実施例1-2~1-9及び比較例1-1~1-5のそれぞれから、実施例2-2~2-9及び比較例2-1~2-5となる架橋エラストマー組成物のシートを作製し、各評価を行った。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
[評価結果]
表1及び表2に示すとおり、本実施形態に係る変性エラストマー組成物に該当する実施例1-1~実施例1-9と、それを用いた架橋エラストマー組成物である実施例2-1~実施例2-9は、いずれも生産性、圧縮永久歪特性、表面外観に優れ、低光沢であることが分かる。
これらの結果から、本実施形態に係る変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物は良好な圧縮永久歪、表面外観、生産性を有することが判明した。
【0131】
これに対し、比較例1-1は、ストランドに弾性がなく、カッティング時に変形しカッター刃に付着してカッティングができず生産性に劣り、また、比較例2-1は架橋が不均一に進行したことにより可視欠点が多数発生し表面外観に劣る結果となった。
比較例1-2及び比較例1-3は、成分(B)に代わり配合したEPDMの分散が均一でなく、可視欠点が多数発生し表面外観に劣った。これら比較例1-1~比較例1-3の押出成形シートの表面における凸状の外観不良は、いずれも30個/m以上であり、不良の中でも、多いに不良との結果であった。
また、比較例1-4及び比較例1-5を架橋した比較例2-4及び比較例2-5は、成分(B)に代わり配合した非架橋の熱可塑性樹脂を含有するため、圧縮永久歪特性に劣った。
このように、比較例1-1~比較例1~5及びそれらを架橋した比較例2-1~比較例2-5は、生産性、圧縮永久歪特性、低光沢のいずれかが不十分であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本実施形態に係る変性エラストマー組成物は生産性、表面外観に優れ、かつ、それを架橋した架橋エラストマー組成物は、圧縮永久歪特性にも優れる。そのため、これらが要求される各種用途、例えばグラスランチャンネル、ウェザーストリップなどの自動車部品、パッキン、ガスケットなどの土木・建材部品、スポーツ用品、工業用部品、家電用部品、医療用部品、食品用部品、医療用機器部品、電線被覆材、雑貨用品等において、広く且つ有効に利用可能である。