(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098278
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001682
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】飯島 愛璃
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA16
2C056EB12
2C056EB35
2C056EC12
2C056EC28
2C056EC38
(57)【要約】
【課題】画像処理によらずに非定常な濃度ムラの抑制を図る。
【解決手段】用紙Pに対してインクを吐出して画像を形成するヘッドユニット30と、用紙Pをヘッドユニット30のある用紙搬送方向Xの下流側に所定の搬送速度で搬送する搬送ベルト20と、ヘッドユニット30の用紙搬送方向Xの上流側に設けられ、ヘッドユニット30と搬送ベルト20との間のヘッドギャップ40に向けて、気流制御用の空気を送る気流流入部51と、気流流入部51の開口部での流速を搬送速度と同程度になるように制御する風量制御部52と、ヘッドギャップ40の広さに応じて気流流入部51からヘッドギャップ40への気流の流入方向を制御する風向制御部53とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に対して液体を吐出して画像を形成するインク吐出部と、
前記印刷媒体を前記インク吐出部のある搬送方向の下流側に所定の搬送速度で搬送する搬送部と、
前記インク吐出部の前記搬送方向の上流側に設けられ、前記インク吐出部と前記搬送部との間の空間に向けて、気流制御用の空気を送る気流流入部と、
前記気流流入部の開口部での流速を前記搬送速度と同程度になるように制御する風量制御部と、
前記空間の広さに応じて前記気流流入部から前記空間への気流の流入方向を制御する風向制御部と、
を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライン型のインクジェット印刷装置は、搬送ベルトにより搬送される用紙に対して、用紙の搬送方向と直交する方向に複数配置されたインクジェットヘッドによりインク液滴を連続吐出することにより印刷を行う。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドのノズルからインクが連続吐出されると、そのインク液滴は自己気流を伴い吐出される。そして印刷媒体の搬送により発生した気流が、自己気流の壁にぶつかり、複雑に気流が乱れることがある。この乱気流により吐出されたインクの着弾位置が所望の位置からずれてしまうと、木目ムラあるいは風紋ムラと呼ばれる非定常な濃度ムラが印刷画像に生じ、画像の品質を低下させることがあった。
【0004】
特許文献1では、インクを吐出するノズルの間引きまたは印刷データの画像処理により印刷画像の濃度ムラの発生を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
気流の影響で印刷画像に生じる濃度ムラは、木目あるいは風紋のような非定常なムラであるため、画像処理によって濃度ムラの抑制を図るのには限界がある。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、画像処理によらずに非定常な濃度ムラの抑制を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様によるインクジェット印刷装置は、
印刷媒体に対して液体を吐出して画像を形成するインク吐出部と、
前記印刷媒体を前記インク吐出部のある搬送方向の下流側に所定の搬送速度で搬送する搬送部と、
前記インク吐出部の前記搬送方向の上流側に設けられ、前記インク吐出部と前記搬送部との間の空間に向けて、気流制御用の空気を送る気流流入部と、
前記気流流入部の開口部での流速を前記搬送速度と同程度になるように制御する風量制御部と、
前記空間の広さに応じて前記気流流入部から前記空間への気流の流入方向を制御する風向制御部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像処理によらずに非定常な濃度ムラの抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置のヘッドギャップ周りの概略構成図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1のヘッドギャップに発生するクエット流れによる搬送気流の流速分布を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、
図1のヘッドギャップに発生するインク液滴の自己気流の方向分布を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1のヘッドギャップに気流制御用の空気を送る気流流入部と、気流流入部が送る空気の風量及び方向をそれぞれ制御する風量制御部及び風向制御部との概略構成を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1のヘッドギャップにおける、ヘッドブロックのノズル面からの距離に対する搬送気流の速度分布を、
図3の気流流入部によるヘッドギャップの気流制御の実施前と実施後とについて示すグラフである。
【
図5A】
図5Aは、
図3の気流流入部によるヘッドギャップの気流制御を実施する前の、ノズルブロックのノズル面に沿った平面における気流の流速分布を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、
図3の気流流入部によるヘッドギャップの気流制御を実施した後の、ノズルブロックのノズル面に沿った平面における気流の流速分布を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、
図3の気流流入部によるヘッドギャップの気流制御を実施する前の、ノズル面と直交し用紙搬送方向に沿った平面における気流の流速分布を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、
図3の気流流入部によるヘッドギャップの気流制御を実施した後の、ノズル面と直交し用紙搬送方向に沿った平面における気流の流速分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1に示す実施形態のインクジェット印刷装置10は、搬送ベルト20により用紙Pを用紙搬送方向Xに搬送する搬送経路上で、搬送ベルト20の上方に配置したヘッドユニット30のノズルから吐出されたインクの液滴により、用紙Pに画像を印刷する。用紙Pは印刷媒体に当たり、ヘッドユニット30は、印刷媒体に対して液体を吐出して画像を形成するインク吐出部に当たる。搬送ベルト20は、印刷媒体をインク吐出部のある搬送方向の下流側に所定の搬送速度で搬送する搬送部に当たる。搬送ベルト20上の用紙Pとヘッドユニット30とのヘッドギャップ40では、搬送気流と自己気流とが発生する。ヘッドギャップ40は、インク吐出部と搬送部との間の空間に当たる。
【0014】
図2Aは、
図1のヘッドギャップ40に発生するクエット流れによる搬送気流の流速分布を示す図である。クエット流れとは、平行な一対の平板のうち一方が他方と平行に移動することで、一対の平板間の流体に生じる流れ場のことである。インクジェット印刷装置10では、ヘッドユニット30の不図示のノズルが開口する固定のノズル面31に対して、搬送ベルト20上の用紙Pがノズル面31と平行に移動することで、クエット流れによる用紙搬送方向Xの搬送気流がヘッドギャップ40に生じる。
【0015】
図2Aに示すように、ヘッドギャップ40の搬送気流の流速は、ヘッドユニット30に近いほど低く、搬送ベルト20に近いほど高い。
図2Aでは、搬送ベルト20が0.7m/sの速度で用紙Pを搬送したときの、ヘッドギャップ40に発生する用紙搬送方向Xの気流の流速分布を示している。
図2Aに示す分布では、流速の異なる搬送気流がヘッドユニット30のノズル面31と平行な層状に分布している。層状に分布した搬送気流の流速は、ヘッドユニット30のノズル面31から搬送ベルト20側に遠ざかる(用紙Pからノズル面31への距離が増える)のに比例して増加している。
【0016】
図2Aの矢印Yは、搬送ベルト20上の用紙Pからノズル面31への距離方向を示す。Zは、ノズル面31に複数配置される不図示のノズルの間隔方向を示す。
【0017】
図2Bは、
図1のヘッドギャップ40に発生するインク液滴の自己気流の方向分布を示す図である。
図2Bに示すように、ヘッドギャップ40の自己気流は、ヘッドユニット30のノズルから吐出されたインクの液滴によって発生する。ヘッドユニット30から搬送ベルト20に鉛直に向かう気流はインクの液滴が自身で起こす気流であり、その周りには、インクの液滴が起こした気流に空気が引き寄せられた周りの空気による気流が発生する。
【0018】
図2Bでは、搬送ベルト20による用紙Pの用紙搬送方向Xへの搬送を行っていない場合の自己気流の方向分布を示している。用紙Pの搬送を行っていない場合、ノズルから吐出されたインクの液滴によって発生した気流は、用紙Pの着弾位置の紙面で反射しヘッドギャップの着弾位置の周辺の空間に散乱して、紙面から舞い上がるような気流を誘発させる。
【0019】
搬送ベルト20により用紙Pを搬送しながら画像を印刷する際には、搬送気流と自己気流との相互作用によって、ヘッドギャップ40に複雑な向きの気流が生じ、ノズルから吐出されたインクの液滴が本来の位置からずれた位置に着弾する原因となる。インクの液滴の着弾位置がずれると、印刷画像に非定常な濃度ムラが生じ、印刷画像の品質が低下する。印刷画像に生じる非定常な濃度ムラは、特に印字率の高いベタ部で顕著に現れ、木目あるいは風紋のような態様であることから、木目ムラ、風紋ムラとも呼ばれる。印刷画像の非定常な濃度ムラは、ヘッドギャップ40が広がるほど顕著に現れると言われている。また、自己気流により舞い上がったインクのミストが搬送気流に乗って飛散すると、飛散したミストが周辺の機体に付着して機内汚れが発生する。
【0020】
従来技術において説明した画像処理の他、インクの液滴を吐出させるノズルを間引き処理することで濃度ムラの抑制を図る方法も、従来から提案されている。しかし、これらの方法では、印刷画像の印字解像度の低下、あるいは、画像処理に伴うタクトタイムの長時間化による生産性の低下が新たな課題として発生する。
【0021】
本実施形態のインクジェット印刷装置10では、用紙搬送方向Xの上流側からヘッドギャップ40に空気を送り込む気流流入部を設け、
図2A、
図2Bに示すヘッドギャップ40の気流を制御する。ヘッドギャップ40の気流を制御することで、濃度ムラの原因となる気流をヘッドギャップ40に発生しにくくする。
【0022】
図3は、
図1のヘッドギャップ40に気流制御用の空気を送る気流流入部51と、気流流入部51が送風する空気の風量及び方向をそれぞれ制御する風量制御部52及び風向制御部53との概略構成を示す図である。
【0023】
気流流入部51は、ヘッドユニット30の用紙搬送方向Xにおける上流側の端部に設けられている。気流流入部51は、送風ファンによる風量制御部52で発生させた気流を、用紙搬送方向Xの上流側からヘッドギャップ40に導くダクトを有している。気流流入部51は、インク吐出部の搬送方向の上流側に設けられ、インク吐出部と搬送部との間の空間に向けて、気流制御用の空気を送る気流流入部に当たる。
【0024】
風量制御部52は、送風ファンの回転数の変更により気流の強弱を調整することができる。気流流入部51が用紙搬送方向Xの上流側からヘッドギャップ40に導く風量制御部52の気流は、非定常な濃度ムラの原因の1つとされているヘッドギャップ40内の気流の速度勾配を変化させて、濃度ムラを抑制する。
【0025】
風量制御部52の送風ファンから気流流入部51により強制的に空気を送ることで、気流流入部51の開口部において、搬送ベルト20による用紙Pの搬送速度と同程度の速度の気流を、用紙搬送方向Xに発生させることを可能にする。風量制御部52は、気流流入部の開口部での流速を搬送部による印刷媒体の搬送速度と同程度になるように制御する風量制御部に当たる。
【0026】
なお、ヘッドギャップ40の気流の速度を測定する測定位置は、ヘッドユニット30のノズル面31からヘッドギャップ40の半値(y/2)だけ搬送ベルト20側にずれた位置とする。搬送ベルト20による用紙Pの用紙搬送方向Xへの搬送速度をv1(m/s)としたとき、ヘッドギャップ40の気流速度の測定位置における気流の速度vが、v>v1/2になるように、気流流入部51の気流の風量及び風向を制御する。ヘッドギャップ40が狭い場合(例えば、1mm以下)は、ヘッドギャップ40に制御を必要とするほどの気流が生じないので、用紙搬送方向Xにおける上流側の端部からヘッドギャップ40への気流流入部51による強制的な空気の送り込みは不要である。
【0027】
風向制御部53は、気流流入部51の出口付近に配置されたルーバを有している。風向制御部53は、ルーバの向きの調整により、気流流入部51が用紙搬送方向Xの上流側から導く気流のヘッドギャップ40に対する流入角度を、ヘッドユニット30側の向きから搬送ベルト20側の向きまで上下に調整することができる。ヘッドギャップ40に導く気流の向きの調節機能を、風向制御部53として備えることで、ヘッドギャップ40の中間部~紙面の位置に当たるような気流を発生させて、幅広い寸法のヘッドギャップに対応可能とすることができる。風向制御部53は、インク吐出部と搬送部との間の空間の広さに応じて気流流入部からインク吐出部と搬送部との間の空間への気流の流入方向を制御する風向制御部に当たる。
【0028】
図4は、
図1のヘッドギャップ40における、ヘッドユニット30のノズル面31からの距離に対する搬送気流の速度分布を、
図3の気流流入部51によるヘッドギャップ40の気流制御の実施前(●)と実施後(■)とについて示すグラフである。
図4では、ヘッドギャップ40が2.0mm、搬送ベルト20による用紙Pの搬送速度がv1(m/s)である場合の搬送気流速度の数値をプロットしている。
【0029】
ヘッドギャップ40の気流制御の実施前(●)は、ヘッドギャップ40における用紙搬送方向Xの気流は、ヘッドユニット30のノズル面31から搬送ベルト20側に遠ざかるのに比例して、用紙搬送方向Xの気流速度が直線的に増加するクエット流れであった。ヘッドギャップ40の気流制御の実施後(■)は、気流流入部51がヘッドギャップ40に上流側から空気を送り込んだことにより、特に、ヘッドギャップ40の中間域において、用紙搬送方向Xの気流の速度が気流制御の実施前(●)よりも増加している。気流制御の実施前(●)に対して気流制御の実施後(■)は、ヘッドギャップ40における用紙搬送方向Xの気流の速度分布が変化したことが確認できる。
【0030】
図5Aは、気流流入部51によるヘッドギャップ40の気流制御を実施する前の、ノズルユニット30のノズル面31に沿った平面における気流の流速分布を示す図である。
図5Aでは、ヘッドギャップ40が2.0mmである場合の速度分布を示している。
【0031】
図5Aに示すように、ヘッドギャップ40の気流制御の実施前は、ノズル面31のノズル配置エリアNの用紙搬送方向Xにおける上流側に、ノズル配置エリアNに複数配置される不図示のノズルの間隔方向Zにおいて気流ムラが発生している。間隔方向Zの気流ムラは、詳しくは、ノズルの間隔方向Zにおいて、気流の流速が低い(-0.30~0.00m/s)部分と高い(0.00~0.30m/s)部分とが交互に分布するというものである。
【0032】
間隔方向Zの気流の流速が低い部分では、図中の左から右に向かう向きの気流が発生する。間隔方向Zの気流の流速が高い部分では、図中の右から左に向かう向きの気流が発生する。間隔方向Zの気流は、気流の流速が低い部分と高い部分との間で、密または疎となる。ノズルから吐出されたインクの液滴の着弾位置は、この気流の影響を受けて本来の位置からずれるため、特にベタ印字時には濃度ムラ(木目ムラ、風紋ムラ)が発生すると考えられる。
【0033】
図5Bは、気流流入部51によるヘッドギャップ40の気流制御を実施した後の、ノズルユニット30のノズル面31に沿った平面における気流の流速分布を示す図である。ヘッドギャップ40の気流制御の実施後は、ノズル配置エリアNの用紙搬送方向Xの上流側における、ノズルの間隔方向Zの気流ムラは、抑制されている。ノズルから吐出されたインクの液滴の着弾位置は、抑制された気流の影響を受けずに本来の位置付近となると考えられる。
【0034】
図6Aは、気流流入部51によるヘッドギャップ40の気流制御を実施する前の、ノズル面31と直交し用紙搬送方向Xに沿った平面における気流の流速分布を示す図である。ヘッドギャップ40の気流制御の実施前は、ノズルから吐出したインクによる自己気流は、用紙Pの紙面で跳ね返り、図中の矢印で示すように、ノズル面31側に舞い上がっている。さらに、インクの自己気流と紙面で跳ね返った気流とが相互作用してインクの液滴の飛翔方向が変化し、インクの着弾位置がずれることで濃度ムラが発生する。また、紙面で跳ね返って舞い上がったインクのミストが搬送気流に乗って飛散し、飛散したミストが周辺の機体に付着して機内汚れが発生する。
【0035】
図6Bは、気流流入部51によるヘッドギャップ40の気流制御を実施した後の、ノズル面31と直交し用紙搬送方向Xに沿った平面における気流の流速分布を示す図である。ヘッドギャップ40の気流制御の実施後は、ヘッドギャップ40内の気流の速度勾配が変化したことで、紙面で跳ね返って舞い上がる気流を抑制することが可能である。
【0036】
本実施形態のインクジェット印刷装置10では、気流流入部51によりヘッドギャップ40に用紙搬送方向Xの上流側から空気を送り込むことで、ヘッドギャップ40内の気流を制御し、インクの吐出による自己気流の舞い上がりを抑制する。このため、インクを吐出するノズルを間引きすることで印字率を落としたり、画像処理の時間を確保するために用紙Pの搬送速度vを落とすことなく、印刷画像の濃度ムラ(木目ムラ、風紋ムラ)を低減できる。
【0037】
なお、以上に説明した実施形態は、以下の態様の発明を開示している。
【0038】
開示される第1の態様の発明は、
入力された評価対象画像の画像情報に基づき画像ムラの評価を行う画像評価装置であり、
前記評価対象画像を複数の領域に分割するための画像分割部と、
前記評価対象画像の画像情報から画素の偏差を求める画像偏差算出部と、
前記偏差をもとにムラを検出し数値化するかの判断を行う評価是非判定部と、
前記評価対象画像の画像情報をフーリエ変換して周波数特性を算出するフーリエ変換部と、
複数の特定方向のムラを抽出する帯域フィルタを用いて前記変換部によって算出された空間周波数特性を限定するフィルタ部と、
前記フィルタ部より制限された前記空間周波数特性の情報に基づき、前記評価対象画像の画像ムラの数値を算出する定量化部を備え、
前記フィルタ部は、うねり成分として斜め方向の低周波数領域に限定することと濃淡差としてu方向(水平方向)の低周波数領域に限定することとバンディングとしてv方向(垂直方向)の周波数領域に限定することの3つのフィルタを最低限もつことと、
前記定量化部は、濃淡差として数値を算出した後、バンディングとして算出された数値をもとに補正処理を行うこと、
を特徴とする、画像評価装置である。
【0039】
開示される第2の態様の発明は、上記した第1の態様の発明において、前記フィルタ部は、さらに視覚特性関数を前記対象画像にかけることを特徴とする画像評価装置である。ここでいう視覚特性関数は、濃淡差数値補正部が行う補正値とすることができる。
【0040】
開示される第3の態様の発明は、上記した第1又は第2の態様の発明において、前記画像分割部は、主走査方向を各ヘッドごとに画像を分割することを特徴とする画像評価装置である。
【0041】
開示される第3の態様の発明は、上記した第1~第3のいずれか1つの態様の発明において、前記評価装置は、さらに定量化部で求めた数値をもとに風紋ムラの原因を判断する原因判断部を備えた画像評価装置である。ここでいう原因判断部は、風紋ムラが濃淡差、うねりのいずれによるものか、あるいは、バンディングによるものかを、風紋ムラの評価結果として出力する場合の、評価数値出力部で構成することができる。
【0042】
そして、本発明は上記の実施形態のままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
[付記]
【0043】
以上に説明した実施形態によって、以下に示す態様の発明が開示される。
印刷媒体に対して液体を吐出して画像を形成するインク吐出部と、
前記印刷媒体を前記インク吐出部のある搬送方向の下流側に所定の搬送速度で搬送する搬送部と、
前記インク吐出部の前記搬送方向の上流側に設けられ、前記インク吐出部と前記搬送部との間の空間に向けて、気流制御用の空気を送る気流流入部と、
前記気流流入部の開口部での流速を前記搬送速度と同程度になるように制御する風量制御部と、
前記空間の広さに応じて前記気流流入部から前記空間への気流の流入方向を制御する風向制御部と、
を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置が開示される。
【0044】
そして、上記態様による発明によれば、画像処理によらずに非定常な濃度ムラの抑制を図ることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 インクジェット印刷装置
20 搬送ベルト(搬送部)
30 ヘッドユニット(インク吐出部)
40 ヘッドギャップ(インク吐出部と搬送部との間の空間)
51 気流流入部
52 風量制御部
53 風向制御部
P 用紙(印刷媒体)
X 用紙搬送方向(搬送方向)