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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098290
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】工作機械及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 5/36 20060101AFI20240716BHJP
   B23B 1/00 20060101ALI20240716BHJP
   B23Q 5/50 20060101ALI20240716BHJP
   B23B 29/12 20060101ALN20240716BHJP
【FI】
B23B5/36
B23B1/00 A
B23Q5/50 G
B23B29/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001701
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千田 国秀
(72)【発明者】
【氏名】御園 春彦
(72)【発明者】
【氏名】三宮 一彦
【テーマコード(参考)】
3C045
3C046
【Fターム(参考)】
3C045AA01
3C045BA01
3C045BA17
3C045DA20
3C046MM01
3C046MM08
3C046MM09
(57)【要約】
【課題】旋削加工によって効率よく多角形形状を加工する。
【解決手段】工作機械は、切削対象物21が取り付けられる主軸と、主軸を回転させる回転機構と、工具を保持する工具保持部と、主軸と工具保持部を主軸の回転軸方向に相対的に移動させる移動機構と、主軸と工具保持部を振動方向に相対的に振動させる振動機構と、回転機構と振動機構を制御する制御部とを備え、回転機構によって主軸を回転させながら、移動機構と振動機構によって切削対象物21と工具を相対的に振動させつつ移動させることで、切削対象物21を切削する工作機械であって、制御部は、主軸の一定の回転周期ごとに工具が振動方向において同一位置に位置するように回転機構と振動機構を駆動し、回転軸方向から見たときに切削対象物21の外周面又は内周面が略正多角形に加工されるよう回転機構と振動機構を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削対象物が取り付けられる主軸と、
前記主軸を回転させる回転機構と、
前記切削対象物を切削する工具を保持する工具保持部と、
前記主軸と前記工具保持部を前記主軸の回転軸方向に相対的に移動させる移動機構と、
前記主軸と前記工具保持部を前記回転軸方向と直交する振動方向に相対的に振動させる振動機構と、
前記回転機構と前記振動機構を制御する制御部と
を備え、前記回転機構によって前記主軸を回転させながら、前記移動機構と前記振動機構によって前記切削対象物と前記工具を相対的に振動させつつ移動させることで、前記切削対象物を切削する工作機械であって、
前記制御部は、前記主軸の一定の回転周期ごとに前記工具が前記振動方向において同一位置に位置するように前記回転機構と前記振動機構を駆動し、前記回転軸方向から見たときに前記切削対象物の外周面又は内周面が略正多角形に加工されるよう前記回転機構と前記振動機構を制御することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記制御部は、前記正多角形の角数に基づいて前記主軸の一回転当たりの前記振動機構の振動数を設定することを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記一定の回転周期をm回転、前記正多角形の前記角数をn角としたとき、
mは1以上の自然数であり、nは3以上の自然数であり、mとnは互いに素であり、
前記制御部は、前記振動機構の前記振動数をn/mと設定することを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記工具が前記振動機構による前記工具の振動波形の振幅上限に位置するとき、前記工具が前記振動波形の振幅下限に位置するときと比較して、前記工具の前記切削対象物に対する切込み量が大きくなり、
前記制御部は、前記切削対象物の前記外周面の切削時、前記工具が前記振動波形の前記振幅上限に位置するときに、前記正多角形の辺の中心が加工されるよう前記移動機構と前記振動機構を同期して制御することを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記工具が前記振動機構による前記工具の振動波形の振幅上限に位置するとき、前記工具が前記振動波形の振幅下限に位置するときと比較して、前記工具の前記切削対象物に対する切込み量が大きくなり、
前記制御部は、前記切削対象物の前記内周面の切削時、前記工具が前記振動波形の前記振幅上限に位置するときに、前記正多角形の頂点が加工されるよう前記移動機構と前記振動機構を同期して制御することを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項6】
前記移動機構は、前記主軸と前記工具保持部を前記振動方向と平行な方向に相対的に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項7】
前記制御部は、前記移動機構の動作を制御可能であり、
前記回転軸方向から見たときに略正多角形の加工面を得る第1の加工と、前記回転軸方向から見たときに前記加工面を前記加工面と相似形状に加工する第2の加工と、を行う場合に、前記制御部は、前記第2の加工における前記主軸の回転に対する前記振動機構による前記工具の振動波形の位相が前記第1の加工と一致するように前記回転機構、前記移動機構及び前記振動機構を制御することを特徴とする請求項6に記載の工作機械。
【請求項8】
切削対象物が取り付けられる主軸と、
前記主軸を回転させる回転機構と、
前記切削対象物を切削する工具を保持する工具保持部と、
前記主軸と前記工具保持部を前記主軸の回転軸方向に相対的に移動させる移動機構と、
前記主軸と前記工具保持部を前記回転軸方向と直交する振動方向に相対的に振動させる振動機構と、
を備え、前記回転機構によって前記主軸を回転させながら、前記移動機構と前記振動機構によって前記切削対象物と前記工具を相対的に振動させつつ移動させることで、前記回転軸方向から見たときに前記切削対象物の外周面又は内周面を略正多角形に加工する工作機械を制御する制御装置であって、
前記主軸の一定の回転周期ごとに前記工具が前記振動方向において同一位置に位置するように前記回転機構と前記振動機構を駆動することを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、及び工作機械を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる旋削加工においては、工作機械でワーク(切削対象物)を回転させながら切削するため、ワークの仕上がり形状には制限がある。旋削加工は専ら、円筒形状や円柱形状、又はこれらの組合せ形状を得るために行われる。
【0003】
従来、旋削加工において、工具の動きとワークの回転を連動して制御することで、ワークを円筒や円柱以外の形状に加工する方法が提案されている。特許文献1には、工具を送り方向に移動させながら、ワークの回転位相に同期して切込み量を変動させるように工具とワークを制御することで、旋削加工で螺旋溝形状を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-36004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の技術はワークに螺旋状の溝形状を加工するためのものであり、例えば、上述の技術を利用してワークの外周面や内周面に平面を加工することはできない。
【0006】
本発明の目的は、旋削加工によって効率よく切削対象物を略正多角形に加工することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(態様1)
上記課題を解決するため、本発明の態様1に係る工作機械は、切削対象物が取り付けられる主軸と、前記主軸を回転させる回転機構と、前記切削対象物を切削する工具を保持する工具保持部と、前記主軸と前記工具保持部を前記主軸の回転軸方向に相対的に移動させる移動機構と、前記主軸と前記工具保持部を前記回転軸方向と直交する振動方向に相対的に振動させる振動機構と、前記回転機構と前記振動機構を制御する制御部とを備え、前記回転機構によって前記主軸を回転させながら、前記移動機構と前記振動機構によって前記切削対象物と前記工具を相対的に振動させつつ移動させることで、前記切削対象物を切削する工作機械であって、前記制御部は、前記主軸の一定の回転周期ごとに前記工具が前記振動方向において同一位置に位置するように前記回転機構と前記振動機構を駆動し、前記回転軸方向から見たときに前記切削対象物の外周面又は内周面が略正多角形に加工されるよう前記回転機構と前記振動機構を制御する。
【0008】
(態様2)
上記態様1において、前記制御部は、前記正多角形の角数に基づいて前記主軸の一回転当たりの前記振動機構の振動数を設定しても良い。
【0009】
(態様3)
上記態様2において前記一定の回転周期をm回転、前記正多角形の前記角数をn角としたとき、mは1以上の自然数であり、nは3以上の自然数であり、mとnは互いに素であり、前記制御部は、前記振動機構の前記振動数をn/mと設定しても良い。
【0010】
(態様4)
上記態様1~3のいずれか一の態様において、前記工具が前記振動機構による前記工具の振動波形の振幅上限に位置するとき、前記工具が前記振動波形の振幅下限に位置するときと比較して、前記工具の前記切削対象物に対する切込み量が大きくなり、前記制御部は、前記切削対象物の前記外周面の切削時、前記工具が前記振動波形の前記振幅上限に位置するときに、前記正多角形の辺の中心が加工されるよう前記移動機構と前記振動機構を同期して制御しても良い。
【0011】
(態様5)
上記態様1~4のいずれか一の態様において、前記工具が前記振動機構による前記工具の振動波形の振幅上限に位置するとき、前記工具が前記振動波形の振幅下限に位置するときと比較して、前記工具の前記切削対象物に対する切込み量が大きくなり、前記制御部は、前記切削対象物の前記内周面の切削時、前記工具が前記振動波形の前記振幅上限に位置するときに、前記正多角形の頂点が加工されるよう前記移動機構と前記振動機構を同期して制御しても良い。
【0012】
(態様6)
上記態様1~5のいずれか一の態様において、前記移動機構は、前記主軸と前記工具保持部を前記振動方向と平行な方向に相対的に移動可能に構成されていても良い。
【0013】
(態様7)
上記態様6において、前記制御部は、前記移動機構の動作を制御可能であり、前記回転軸方向から見たときに略正多角形の加工面を得る第1の加工と、前記回転軸方向から見たときに前記加工面を前記加工面と相似形状に加工する第2の加工と、を行う場合に、前記制御部は、前記第2の加工における前記主軸の回転に対する前記振動機構による前記工具の振動波形の位相が前記第1の加工と一致するように前記回転機構、前記移動機構及び前記振動機構を制御しても良い。
【0014】
(態様8)
上記課題を解決するため、本発明の態様8に係る工作機械は、切削対象物が取り付けられる主軸と、前記主軸を回転させる回転機構と、前記切削対象物を切削する工具を保持する工具保持部と、前記主軸と前記工具保持部を前記主軸の回転軸方向に相対的に移動させる移動機構と、前記主軸と前記工具保持部を前記回転軸方向と直交する振動方向に相対的に振動させる振動機構と、を備え、前記回転機構によって前記主軸を回転させながら、前記移動機構と前記振動機構によって前記切削対象物と前記工具を相対的に振動させつつ移動させることで、前記回転軸方向から見たときに前記切削対象物の外周面又は内周面を略正多角形に加工する工作機械を制御する制御装置であって、前記主軸の一定の回転周期ごとに前記工具が前記振動方向において同一位置に位置するように前記回転機構と前記振動機構を駆動する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、旋削加工によって切削対象物を効率よく略正多角形に加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る工作機械の概略構成図である。
図2】外径加工により多角形に加工されたワークを示す図である。
図3】実施形態に係る外径加工の様子を示す正面図である。
図4】実施形態に係る外径加工の様子を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る外径加工の様子を示す上面図及び側面図である。
図6】実施形態に係る外径加工の各パスの加工軌跡を示す図である。
図7】実施形態に係るワーク回転位相と工具位置の関係を示す図である。
図8】内径加工により多角形に加工されたワークを示す図である。
図9】実施形態に係る内径加工の様子を示す正面図である。
図10】実施形態に係る内径加工の様子を示す斜視図である。
図11】実施形態に係る内径加工の様子を示す図である。
図12】実施形態に係る内径加工の各パスの加工軌跡を示す図である。
図13】実施形態に係るワークを多角形に加工するその他例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施形態に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨のものではない。
【0018】
本発明は、切削対象物を回転させながら、工具で切削対象物を多角形に加工する工作機械に好適である。本発明はまた、当該工作機械を制御する制御装置として捉えられる。
【0019】
<実施形態>
(工作機械10)
まず、本発明の実施形態に係る工作機械10の概略構成について説明する。図1は、実施形態に係る工作機械10の概略構成を示す模式図である。工作機械10は、切削対象物としてワーク21を回転可能に保持するワーク保持部11と、ワーク21を切削するための工具を保持する工具保持部13と、ワーク保持部11及び工具保持部13の動作を制御する制御部15と、を備える。なお、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸が必要に応じて図面に示される。X軸は及びZ軸は水平方向を向き、Y軸は鉛直方向を向く。また、本実施形態において、工具保持部13に保持されるワーク21の回転軸方向S1はZ軸方向である。
【0020】
ワーク保持部11は、ワーク21を回転方向R1に回転可能、且つワーク21の回転軸方向S1に移動可能に保持する。工具保持部13は、工具を回転軸方向S1と平行な第1方向S2と、第1方向S2と直交する第2方向S3に移動可能に保持する。回転軸方向S1及び第1方向S2はZ軸方向と平行であり、第2方向S3はX軸方向と平行である。また、工具保持部13は工具を複数保持可能に構成されており、図1には工具保持部13が外径加工用の工具31と、内径加工用の工具33を保持する様子が示されている。
【0021】
工作機械10は、ワーク保持部11によりワーク21を回転させる回転機構と、ワーク保持部11及び工具保持部13によりワーク21と工具を相対的に平行移動させる移動機構と、を備える。回転機構には各種モータなどの公知技術を採用でき、移動機構にはリニアサーボモータやボールネジ機構、ラックアンドピニオン機構などの公知技術を採用し得る。
【0022】
更に、工作機械10は、移動機構の移動方向と平行な方向に対して、ワーク21と工具を相対的に振動させる振動機構を備える。本実施形態においては、工具保持部13はX軸方向と平行な振動方向V1に工具を振動可能に保持する。振動機構には、振動対象物を往復振動させることが可能な各種公知技術を採用し得る。
【0023】
制御部15は、上述の回転機構や移動機構、振動機構の動作を制御可能に構成されている制御装置である。制御部15は、各種機構を連動して制御可能であり、例えばワーク2
1の回転位相に工具の送り方向や切込み方向の移動を同期して旋削加工が実施されるようにワーク保持部11と工具保持部13を制御できる。
【0024】
なお、本実施形態においては、ワーク21が1方向に移動可能に保持され、工具が2方向に移動可能、且つ1方向に振動可能に保持される構成について示した。しかし、本発明の適用にあたっては、工作機械10は、工具の代わりにワーク21を2方向に移動可能、且つ1方向に振動可能に保持するように構成されても良い。又は、工作機械10は、工具のみを移動可能に保持するように構成されても良い。より具体的には、工作機械10は、ワーク21と工具が相対的にZ軸方向及びX軸方向に移動可能、且つ相対的にX軸方向に振動可能に構成されていれば良い。このように構成されることで、工作機械10は、回転機構と振動機構を連動して制御して、ワーク21の回転軸方向から見たときに、ワーク21の外周面及び内周面を略正多角形に加工することが可能である。以下、ワーク21の回転位相に同期して工具31を振動させながら切削し、ワーク21を略正多角形に加工する方法について、複数の加工例に基づいて説明する。
【0025】
(加工例1)
まず、工作機械10によって、ワーク21の回転位相に同期して工具31を振動させながら切削することで、ワーク21の外周面を略正五角形に加工する場合を加工例1として説明する。図2(a)はZ軸方向から見たときにワーク21の外周面が正五角形に加工される様子を示す図であり、外径加工用の工具31がワーク21の外周面に当接している様子を示す。図2(b)はZ軸方向から見たときに外周面に加工されたワーク21の斜視図である。ワーク21は、ワーク保持部11の主軸を構成する爪部17によって保持され、主軸と一体的に回転する。
【0026】
ワーク21の1回転当たりの工具31の振動数を2.5回に設定して、ワーク21の外周面を正五角形に加工する方法について説明する。以下の説明において、工具の振動数とは、ワーク21の一回転当たりの振動数を指す。すなわち、振動数が2.5回のとき、ワーク21が2回転すると工具31は5回振動する。
【0027】
図3(a)~(c)、図4図5(a)、(b)を用いて、振動数2.5回で外径加工される様子について説明する。加工例1においては、工作機械10は、ワーク21を回転させながら、工具31をZ軸方向(送り方向)に移動させつつX軸方向(切込み方向)に振動させて切削を行う。また、加工例1においては、工具31は振動機構により正弦波で振動され、ワーク21は図2(a)において反時計回り方向に回転される。
【0028】
図3(a)~(c)は、工作機械10による外径加工の様子を示す正面図であり、加工軌跡Toが実線で図示されている。加工軌跡Toは、工具31の切込み方向の先端がワーク21に当接する位置を示し、ワーク21の外周面は加工軌跡Toに倣って加工される。そして、図3(a)~(c)には、工具31の振幅上限AU、振幅中間AM、振幅下限ALのそれぞれが二点鎖線で示されている。工具31のワーク21に対するX軸方向の切込み量は、工具31が振幅上限AUに位置するときに最も大きく、工具31が振幅下限ALに位置するときに最も小さくなる。工具31は、ワーク21の外周面に当接するため、振幅下限ALを示す円の径が最も大きく、振幅上限AUを示す円の径が最も小さくなる。なお、図3(a)~(c)のように加工軌跡を示す各図面は、工具の振動の様子を明確に示すため、加工軌跡が工具の振動方向V1や送り方向等に拡大して示されている。
【0029】
図3(a)は、Z軸方向から見たワーク21の1回転目の加工軌跡Toを示す正面図である。上述したように、ワーク21の1回転中に工具31は2.5回振動する。図3(a)には、工具31の1振動目の始点が点Po1として、工具31の1振動目の終点であって工具31の2振動目の始点が点Po2として、工具31の2振動目の終点であって工具
31の3振動目の始点が点Po3として示されている。更に、図3(a)には、工具31の3振動目の中間点であって、工具31が2.5回振動したときの位置が点Po3.5として示されている。
【0030】
本加工においては、振幅下限ALは、ワーク21の加工前の外周面と一致するよう設定されており、工具31は点Po1に位置し、振幅下限ALでワーク21に当接し始める。そして、ワーク21が2/5回転すると工具31は1振動して点Po2に移動し、再び振幅下限ALでワーク21に当接する。そこからワーク21が2/5回転すると工具31は更に1振動して点Po3に移動し、振幅下限ALでワーク21に当接する。そこからワーク21が1/5回転すると工具は1/2回振動して点Po3.5に移動し、振幅上限AUでワーク21に当接する。図3(a)においては、ワーク21の2回転目に加工される領域Qo1が斜線で塗りつぶされている。
【0031】
図3(b)は、Z軸方向から見たワーク21の2回転目の加工軌跡Toを示す正面図である。図3(b)には、工具31の3振動目の終点であって4振動目の始点が点Po4として、工具31の4振動目の終点であって工具31の5振動目の始点が点Po5として、工具31の5振動目の終点であって工具31の6振動目の始点が点Po6として示されている。更に、図3(b)には、工具31の3振動目の中間点であって、ワーク21の2回転目開始時の工具31の位置が点Po3.5として示されている。
【0032】
上述の通り、ワーク21の2回転目開始時は、工具31は点Po3.5に位置し、そこからワーク21が1/5回転することで工具31は点Po4に移動し、振幅下限ALでワーク21に当接する。そして、ワーク21が2/5回転すると工具31は1振動して点Po5に移動し、再び振幅下限ALでワーク21に当接する。そこからワーク21が2/5回転すると工具31は更に1振動して点Po6に移動し、振幅下限ALでワーク21に当接する。図3(b)においては、ワーク21の2回転目に加工される領域Qo2が点描で塗りつぶされている。
【0033】
ワーク21の3回点目以降は、上述の加工が順に繰り返し行われる。すなわち、ワーク21の奇数回転目は図3(a)に示される加工軌跡Toで加工が行われ、ワーク21の偶数回転目は図3(b)に示される加工軌跡Toで加工が行われる。また、ワーク21を保持するワーク保持部11の主軸の一定の回転周期ごとに工具31は振動方向V1において同一位置に位置するように、制御部15は回転機構と振動機構を駆動している。より具体的には、ワーク21がs(s:0、1、2、…)×144°回転したとき工具31は振幅下限ALに位置し、ワーク21がt(t:0、1、2、…)×144+72°回転したとき工具31は振幅上限AUに位置する。このような加工がワーク21の回転軸方向S1(Z軸方向)に連続して行われることで、ワーク21の回転軸方向S1から見たときにワーク21の外周面は略正五角形に加工される。
【0034】
図3(c)は、ワーク21の1回転目と2回転目の加工軌跡Toを重ね合わせた様子を示す図である。図3(c)には、ワーク21の1回転目の加工軌跡Toと、ワーク21の2回転目の加工軌跡Toとを重ね合わせたもののうち、工具31のワーク21に対する切込み量が大きい部分のみが示されている。図3(c)に示されるように、重ね合わせた加工軌跡Toは略正五角形に形成され、上述の加工によりワーク21が略正五角形に加工されることが分かる。上述の通り、図3(a)~(c)は一部が工具31の振動方向V1に拡大して示された図であり、実際の加工においては、図3(c)に示される形状より正五角形に近い形にワーク21は加工される。
【0035】
図3(c)に示されるように、加工例1においては、ワーク21の正五角形の各頂点は工具31が振幅中間AMに位置するときに加工され、ワーク21の正五角形の各辺の中心
は工具31が振幅上限AUに位置するときに加工される。すなわち、工具31の振幅上限AUを示す円は、ワーク21の正五角形に内接する。このような位置関係でワーク21が工具31に切削されるように、制御部15は回転機構と移動機構を制御する。
【0036】
図4は、ワーク21が2回転したときの加工軌跡Toと点Po1~Po6を示す斜視図である。加工中、工具31は常にZ軸方向に1回転当たりの送り量Fで移動する。すなわち、点Po1と点Po6のZ軸方向距離は2Fとなる。
【0037】
図5(a)は、図4の状態から更に加工が継続されて、工具31が送り方向(Z軸方向)に移動したときの加工軌跡Toを示すY軸方向から見た上面図である。図5(b)は、図5(a)をX軸方向から見た側面図である。加工例1においては、振動数が2.5であるため、ワーク21の2回転ごとに工具31は振動方向V1において同一位置に位置する。すなわち、ワーク21の1回転目の点Po1とワーク21の3回転目の点Po1において、工具31は振動方向V1において同一位置に位置する。
【0038】
上述の通り、図4や、図5(a)、(b)においては、加工軌跡ToはZ軸方向に拡大して示されている。実際の加工においては、ワーク21の奇数回転目で加工される部分とワーク21の偶数回転目で加工される部分とが、Z軸方向において一部が重なるように送り量Fが設定されて加工される。そして、ワーク21の外周面は略正五角形に加工される。
【0039】
工作機械10は、上述のワーク21の加工を、切込み方向に複数の加工パスに分けて行うことが可能である。図6は、3パスでワーク21が加工されるときの加工軌跡を示す図である。図6には、加工前のワーク21の外周面21aが点線で、1パス目(第1の加工)の加工軌跡To1が一点鎖線で、2パス目(第2の加工)の加工軌跡To2が二点鎖線で、3パス目(第3の加工)の加工軌跡To3が実線でそれぞれ示されている。加工例1においては、加工軌跡To1はワーク21の外周面21aに接するように描かれる。更に、図6には、1パス目で加工される領域Qp1が斜線で、2パス目で加工される領域Qp2が横線で、3パス目で加工される領域Qp3が縦線でそれぞれ塗りつぶされている。
【0040】
制御部15が、ワーク21の回転位相に同期して工具31を移動させることで、複数の加工パスにおいて、工具31がワーク21に当接し始めるときのワーク21の回転位相を互いに一致させることができる。そして、同一の振動数や送り量でワーク21が切削されることで、複数の加工パスにおいて、工具31の振動波形の位相が互いに一致し、ワーク21の回転位相に対する正五角形の頂点の位置が互いに一致する。
【0041】
図6に示されるように、加工軌跡To1、加工軌跡To2、加工軌跡To3はすべて略正五角形であり、互いに相似形状である。すなわち、ワーク21をZ軸方向から見たときに、各パスにおいて、略正五角形状の加工面が得られる。つまり、本実施形態によれば、複数の加工パスに分けてワーク21を略正多角形に加工できるため、ワーク21の取り代を過度に小さくする必要がなく簡易的に、且つ前加工なしで効率よく加工を行うことができる。
【0042】
図7は、ワーク21の回転位相と工具31の切込み方向位置の関係を示すグラフである。図7のグラフは、縦軸が工具31の切込み方向の位置であり、横軸がワーク21の回転位相であり、1パス目から3パス目までのワーク21の奇数回転目と偶数回転目の工具31の切込み方向位置が示されている。図7には、1、2、3パス目のワーク奇数回転目の工具31の切込み方向位置を示す振動波形L11、L12、L13が点線で示されている。同様に、図7には、1、2、3パス目のワーク偶数回転目の工具31の切込み方向位置を示す振動波形L21、L22、L23が一点鎖線で示されている。
【0043】
図7に示されるように、複数の加工パスにおいて、工具31の振動波形の位相が一致するように、制御部15は回転機構、振動機構、移動機構を連動して駆動する。加工例1においては、ワーク21の回転位相に対する振動波形L11、L12、L13のそれぞれの位相は互いに一致し、ワーク21の回転位相に対する振動波形L21、L22、L23のそれぞれの位相は互いに一致する。このように各機構が制御されることで、複数パスに分けてワーク21が略正多角形に加工される。
【0044】
また、加工例1においては、X軸方向における工具31のワーク21に対する切込み量Xsと工具31の振動振幅Xt(振幅上限AUと振幅下限ALの差)が同値で設定されている。なお、これらの値は互いに異なった値で設定されても良い。
【0045】
上述の通り、本実施形態の工作機械10によれば、回転機構と振動機構を連動して制御することで、旋削加工でワークの外周面が略正多角形となるように加工できる。また、ワークを多角形に加工する方法としては、工具とワークを互いに平行な回転軸を中心に回転させて加工するポリゴン加工が挙げられるが、本実施形態の加工方法は当該ポリゴン加工と比較して、より高効率に加工ができる。更に、当該ポリゴン加工は断続切削だが、本実施形態の加工方法は連続切削によりワークを略正多角形に加工できるため、安定して切削可能である。
【0046】
(加工例2)
次に、工作機械10によって、ワーク21の回転位相に同期して工具33を振動させながら切削することで、ワーク21の内周面を略正五角形に加工する場合を加工例2として説明する。図8(a)はZ軸方向から見たときにワーク21の内周面が正五角形に加工される様子を示す図であり、内周加工用の工具33がワーク21の内周面に当接している様子を示す。図8(b)はZ軸方向から見たときに内周面に加工されたワーク21の斜視図である。ワーク21は、爪部17によって保持され、ワーク保持部11の主軸と一体的に回転する。
【0047】
ワーク21の内周面を正多角形に加工する際、事前にワーク21に下穴21bが形成された状態で行われる。下穴21bの径は、最終形状に対する取り代や使用する内径加工用の工具33に応じて変更可能である。
【0048】
図9(a)~(c)、図10図11(a)、(b)を用いて、ワーク21の1回転当たりの工具31の振動数を2.5回に設定して、ワーク21の内周面を正五角形に加工する方法について説明する。加工例2においても、工作機械10は、ワーク21を回転させながら、工具31をZ軸方向(送り方向)に移動させつつX軸方向(切込み方向)に振動させて切削を行う。また、加工例2においても、工具33は振動機構により正弦波で振動され、ワーク21は図8(a)において反時計回り方向に回転される。
【0049】
図9(a)~(c)は、工作機械10による内径加工の様子を示す正面図であり、加工軌跡Tiが実線で図示されている。加工軌跡Tiは、工具33の切込み方向の先端がワーク21に当接する位置を示し、ワーク21の内周面は加工軌跡Tiに倣って加工される。そして、図9(a)~(c)には、工具33の振幅上限AU、振幅中間AM、振幅下限ALのそれぞれが二点鎖線で示されている。工具33は、ワーク21の内周面に当接するため、振幅上限AUを示す円の径が最も大きく、振幅下限ALを示す円の径が最も小さくなる。
【0050】
図9(a)は、Z軸方向から見たワーク21の1回転目の加工軌跡Tiを示す正面図である。上述したように、ワーク21の1回転中に工具33は2.5回振動する。図9(a
)には、工具31の1振動目の始点が点Pi1として、工具31の1振動目の終点であって工具33の2振動目の始点が点Pi2として、工具33の2振動目の終点であって工具33の3振動目の始点が点Pi3として示されている。更に、図9(a)には、工具33の3振動目の中間点であって、工具33が2.5回振動したときの位置が点Pi3.5として示されている。
【0051】
本加工においては、振幅下限ALは、ワーク21の加工前の内周面(下穴21b)と一致するよう設定されており、工具33は点Pi1に位置し、振幅下限ALでワーク21に当接し始める。そして、ワーク21が2/5回転すると工具33は1振動して点Pi2に移動し、再び振幅下限ALでワーク21に当接する。そこからワーク21が2/5回転すると工具33は更に1振動して点Pi3に移動し、振幅下限ALでワーク21に当接する。そこからワーク21が1/5回転すると工具は1/2回振動して点Pi3.5に移動し、振幅上限AUでワーク21に当接する。図9(a)においては、ワーク21の2回転目に加工される領域Qi1が斜線で塗りつぶされている。
【0052】
図9(b)は、Z軸方向から見たワーク21の2回転目の加工軌跡Tiを示す正面図である。図9(b)には、工具33の3振動目の終点であって4振動目の始点が点Pi4として、工具33の4振動目の終点であって工具33の5振動目の始点が点Pi5として、工具33の5振動目の終点であって工具33の6振動目の始点が点Pi6として示されている。更に、図9(b)には、工具33の3振動目の中間点であって、ワーク21の2回転目開始時の工具33の位置が点Pi3.5として示されている。
【0053】
上述の通り、ワーク21の2回転目開始時は、工具33は点Pi3.5に位置し、そこからワーク21が1/5回転することで工具33は点Pi4に移動し、振幅下限ALでワーク21に当接する。そして、ワーク21が2/5回転すると工具33は1振動して点Pi5に移動し、再び振幅下限ALでワーク21に当接する。そこからワーク21が2/5回転すると工具33は更に1振動して点Pi6に移動し、振幅下限ALでワーク21に当接する。図9(b)においては、ワーク21の2回転目に加工される領域Qi2が点描で塗りつぶされている。
【0054】
ワーク21の3回点目以降は、上述の加工が順に繰り返し行われる。すなわち、ワーク21の奇数回転目は図9(a)に示される加工軌跡Tiで加工が行われ、ワーク21の偶数回転目は図9(b)に示される加工軌跡Tiで加工が行われる。また、ワーク21を保持するワーク保持部11の主軸の一定の回転周期ごとに工具33は振動方向V1において同一位置に位置するように、制御部15は回転機構と振動機構を駆動している。より具体的には、ワーク21がu(u:0、1、2、…)×144°回転したとき工具33は振幅下限ALに位置し、ワーク21がv(v:0、1、2、…)×144+72°回転したとき工具33は振幅上限AUに位置する。このような加工がワーク21の回転軸方向S1(Z軸方向)に連続して行われることで、ワーク21の回転軸方向S1から見たときにワーク21の内周面は略正五角形に加工される。
【0055】
図9(c)は、ワーク21の1回転目と2回転目の加工軌跡Tiを重ね合わせた様子を示す図である。図9(c)には、ワーク21の1回転目の加工軌跡Tiと、ワーク21の2回転目の加工軌跡Tiとを重ね合わせたもののうち、工具33のワーク21に対する切込み量が大きい部分のみが示されている。図9(c)に示されるように、重ね合わせた加工軌跡は略正五角形に形成され、上述の加工によりワーク21が略正五角形に加工されることが分かる。上述の通り、図9(a)~(c)は一部が工具33の振動方向V1に拡大して示された図であり、実際の加工においては、図9(c)に示される形状より正五角形に近い形にワーク21は加工される。
【0056】
図9(c)に示されるように、加工例2においては、ワーク21の正五角形の各頂点は工具31が振幅上限AUに位置するときに加工され、ワーク21の正五角形の各辺の中心は工具31が振幅中間AMに位置するときに加工される。すなわち、工具31の振幅中間AMを示す円は、ワーク21の正五角形に内接する。このような位置関係でワーク21が工具33に切削されるように、制御部15は回転機構と移動機構を制御する。
【0057】
図10は、ワーク21が2回転したときの加工軌跡Tiと点Pi1~Pi6を示す斜視図である。加工中、工具33は常にZ軸方向に1回転当たりの送り量Fで移動する。すなわち、点Pi1と点Pi6のZ軸方向距離は2Fとなる。
【0058】
図11(a)は、図10の状態から更に加工が継続されて、工具33が送り方向(Z軸方向)に移動したときの加工軌跡Tiを示すY軸方向から見た上面図である。図11(b)は、図11(a)をX軸方向から見た側面図である。加工例2においては、振動数が2.5であるため、ワーク21の2回転ごとに工具33は振動方向V1において同一位置に位置する。すなわち、ワーク21の1回転目の点Pi1とワーク21の3回転目の点Pi1において、工具33は振動方向V1において同一位置に位置する。
【0059】
上述の通り、図10や、図11(a)、(b)においては、加工軌跡TiはZ軸方向に拡大して示されている。実際の加工においては、ワーク21の奇数回転目で加工される部分とワーク21の偶数回転目で加工される部分とが、Z軸方向において一部が重なるように送り量Fが設定されて加工される。そして、ワーク21の内周面は略正五角形に加工される。
【0060】
工作機械10は、上述のワーク21の加工を、切込み方向に複数の加工パスに分けて行うことが可能である。図12は、3パスでワーク21が加工されるときの加工軌跡を示す図である。図12には、1パス目(第1の加工)の加工軌跡Ti1が一点鎖線で、2パス目(第2の加工)の加工軌跡Ti2が二点鎖線で、3パス目(第3の加工)の加工軌跡Ti3が実線でそれぞれ示されている。加工例2においては、加工軌跡Ti1はワーク21の内周面である下穴21bに接するように描かれる。更に、図6には、1パス目で加工される領域Qp1が斜線で、2パス目で加工される領域Qp2が横線で、3パス目で加工される領域Qp3が縦線でそれぞれ塗りつぶされている。
【0061】
加工例2においても、制御部15により、ワーク21の回転位相に同期して工具33が移動し、複数の加工パスにおいて、工具33がワーク21に当接し始めるときのワーク21の回転位相が互いに一致する。そして、同一の振動数や送り量でワーク21が切削されることで、複数の加工パスにおいて、工具33の振動波形の位相が互いに一致し、ワーク21の回転位相に対する正五角形の頂点の位置が互いに一致する。
【0062】
図12に示されるように、加工軌跡Ti1、加工軌跡Ti2、加工軌跡Ti3はすべて略正五角形であり、互いに相似形状である。すなわち、ワーク21をZ軸方向から見たときに、各パスにおいて、略正五角形状の加工面が得られる。つまり、本実施形態によれば、複数の加工パスに分けてワーク21を略正多角形に加工できるため、ワーク21の取り代を過度に小さくする必要がなく、簡易的に正多角形の加工を行うことができる。
【0063】
上述の通り、本実施形態の工作機械10によれば、回転機構と振動機構を連動して制御することで、旋削加工でワークの内周面が略正多角形となるように加工できる。また、本実施形態の加工方法によれば、振動振幅や切込み量が適切に設定されることで、連続切削によりワークを略正多角に加工できるため、安定して切削可能である。
【0064】
以上より、本実施形態によれば、旋削加工によりワークの外周面や内周面を略正多角形
に効率よく加工できる。また、上述の加工例においては、切削条件を振動数2.5としてワークを略正五角形に加工していたが、本発明は振動数を異なる値に設定してその他の正多角形に加工可能である。以下、上述の加工例に対して振動数が変更されて、実施形態1の構成によって、ワーク21がその他の正多角形に加工される加工例について説明する。
【0065】
(その他加工例)
次に、図13(a)~(f)を用いて、本実施形態に係るその他加工例について説明する。以下、説明されるその他加工例においても、工作機械10は、ワーク21を回転させながら、工具をZ軸方向(送り方向)に移動させつつX軸方向(切込み方向)に振動させて切削を行い、ワーク21を略正多角形に加工する。図13(a)~(f)には、工具の振幅上限AU、振幅中間AM、振幅下限ALのそれぞれが二点鎖線で示されている。
【0066】
外径加工による加工例が示される図13(a)、(c)、(e)には、工具のq振動目の始点が点Poqとして示され、加工軌跡Toが実線で示される。また、図13(a)、(c)、(e)には、ワーク21の1回転目の加工軌跡Toによって加工される領域Qo1が斜線で塗りつぶされて、ワーク21の2回転目の加工軌跡Toによって加工される領域Qo2が点描で塗りつぶされて示される。
【0067】
内径加工による加工例が示される図13(b)、(d)、(f)には、工具のq振動目の始点が点Piqとして示され、加工軌跡Tiが実線で示される。また、図13(b)、(d)、(f)には、ワーク21の1回転目の加工軌跡Tiによって加工される領域Qi1が斜線で塗りつぶされて、ワーク21の2回転目の加工軌跡Tiによって加工される領域Qi2が点描で塗りつぶされて示される。
【0068】
図13(a)は、加工例3として、振動数3の外径加工によりワーク21が略正三角形に加工される様子を示す図である。加工例3においては、ワーク21の1回転ごとに工具が3回振動して外周面が略正三角形に加工される。このとき、Z軸方向から見たときに、ワーク21の加工軌跡Toは、回転回数に関わらず常に同じ軌跡であるため、図13(a)には、領域Qo1のみが示される。
【0069】
図13(b)は、加工例4として、振動数3の内径加工によりワーク21が略正三角形に加工される様子を示す図である。加工例4においては、ワーク21の1回転ごとに工具が3回振動して内周面が略正三角形に加工される。このとき、Z軸方向から見たときに、ワーク21の加工軌跡Tiは、回転回数に関わらず常に同じ軌跡であるため、図13(b)には、領域Qi1のみが示される。
【0070】
図13(c)は、加工例5として、振動数1.5の外径加工によりワーク21が略正三角形に加工される様子を示す図である。加工例5においては、ワーク21の2回転ごとに工具が3回振動して外周面が略正三角形に加工される。図13(c)に示される加工軌跡Toは、ワーク21の1回転目の加工軌跡Toと、ワーク21の2回転目の加工軌跡Toとを重ね合わせて、工具のワーク21に対する切込み量が大きい部分のみを抜粋したものである。また、加工例5においては、図13(c)に示されるように、Z軸方向から見たときに、領域Qo1と領域Qo2とが混在する。
【0071】
図13(d)は、加工例6として、振動数1.5の内径加工によりワーク21が略正三角形に加工される様子を示す図である。加工例6においては、ワーク21の2回転ごとに工具が3回振動して内周面が略正三角形に加工される。図13(d)に示される加工軌跡Toは、ワーク21の1回転目の加工軌跡Toと、ワーク21の2回転目の加工軌跡Toとを重ね合わせて、工具のワーク21に対する切込み量が大きい部分のみを抜粋したものである。また、加工例6においては、図13(d)に示されるように、Z軸方向から見た
ときに、領域Qi1と領域Qi2とが混在する。
【0072】
図13(e)は、加工例7として、振動数4の外径加工によりワーク21が略正四角形に加工される様子を示す図である。加工例7においては、ワーク21の1回転ごとに工具が4回振動して外周面が略正四角形に加工される。このとき、Z軸方向から見たときに、ワーク21の加工軌跡Toは、回転回数に関わらず常に同じ軌跡であるため、図13(e)には、領域Qo1のみが示される。
【0073】
図13(f)は、加工例8として、振動数4の内径加工によりワーク21が略正四角形に加工される様子を示す図である。加工例8においては、ワーク21の1回転ごとに工具が4回振動して内周面が略正四角形に加工される。このとき、Z軸方向から見たときに、ワーク21の加工軌跡Tiは、回転回数に関わらず常に同じ軌跡であるため、図13(f)には、領域Qi1のみが示される。
【0074】
以上より、本実施形態によれば、ワークの回転軸方向から見たときに、旋削加工でワークの外周面及び内周面を略正多角形に効率よく加工できる。本実施形態においては、ワークを正n角形に加工する場合、ワークの一定の回転周期をm回転としたとき、工具が振動数n/mで振動するように回転機構と振動機構が連動して制御される。このとき、mは1以上の自然数であり、nは3以上の自然数であり、nとmは互いに素の関係である。したがって、本実施形態によれば、例えば、振動数を1.2として5回転ごとにワークを略正六角形に加工したり、振動数を1.75として4回転ごとにワークを略正七角形に加工したりできる。
【0075】
上述の通り、振動数がn/mとなるように回転機構と振動機構が駆動されることで、ワークの一定の回転周期mごとに工具が振動方向V1において同一位置に位置し、ワークのm回転ごとにワークが略正n角形に加工される。また、回転機構と振動機構に加えて、工具の移動機構が連動して駆動されることで、複数パスに分けてワークを略正多角形に加工できる。
【0076】
本実施形態に係る外径加工においては、ワークの正多角形の各辺の中心は、工具が振幅上限AUに位置するときに加工される。また、本実施形態に係る内径加工においては、ワークの正多角形の各頂点は、工具が振幅上限AUに位置するときに加工される。このような位置関係でワークが工具に切削されるように、制御部15が回転機構と移動機構を制御することで、ワークは略正多角形に加工される。
【0077】
更に、本実施形態によれば、角数が同一の正多角形に対して複数の振動数を設定可能である。例えば、ワークの外周面を正三角形に加工する際には、振動数3(図13(a)参照)としても良いし、振動数1.5(図13(c)参照)としても良い。振動機構による振動速度には限界があるため、振動数n/mが小さくなるように回転周期mを増やすことで、ワークの回転数(周速)を上げて加工時間を減らし、生産性を向上できる。
【0078】
<その他の実施形態>
上述の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。例えば、上述の実施形態においては円筒状のワークを回転させながら加工していたが、ワークは円筒状に限られない。
【0079】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によ
って実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【符号の説明】
【0080】
10…工作機械、15…制御部、21…ワーク(切削対象物)、31…工具、S1…回転軸方向、V1…振動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13