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特開2024-98298蓄光シート、照明器具、及び、蓄光シートの取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098298
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】蓄光シート、照明器具、及び、蓄光シートの取付方法
(51)【国際特許分類】
   F21V 3/12 20180101AFI20240716BHJP
   F21S 8/04 20060101ALI20240716BHJP
   F21V 3/02 20060101ALI20240716BHJP
   F21V 3/10 20180101ALI20240716BHJP
   F21V 17/00 20060101ALI20240716BHJP
   F21V 17/10 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
F21V3/12
F21S8/04 130
F21S8/04 210
F21V3/02 600
F21V3/02 500
F21V3/10 370
F21V17/00 155
F21V17/10 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001714
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】522216400
【氏名又は名称】笹野 周作
(71)【出願人】
【識別番号】520027419
【氏名又は名称】▲鶴▼巻 京彦
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼巻 京彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 菜月
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 佳乃
【テーマコード(参考)】
3K011
【Fターム(参考)】
3K011EL03
3K011FA07
3K011GA02
(57)【要約】
【課題】蓄光シートを照明器具に取り付けて用いる場合に、照明器具からの光の低減を抑制するための技術を提供する。
【解決手段】蓄光シートは、照明器具に取り付けて用いられる。蓄光シートは、基材と、蓄光部と、を備える。基材は、シート状である。蓄光部は、蓄光材料を含む。蓄光部は、基材の少なくとも一部に形成されている。基材における蓄光部が形成された領域である蓄光領域には、開口部が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明器具に取り付けて用いられる蓄光シートであって、
シート状の基材と、
蓄光材料を含む蓄光部であって、前記基材の少なくとも一部に形成された前記蓄光部と、
を備え、
前記基材における前記蓄光部が形成された領域である蓄光領域には、開口部が形成されている、蓄光シート。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄光シートであって、
前記基材には、前記蓄光領域内に、切れ目と、前記切れ目に隣接する折り目と、が形成され、
前記開口部は、前記基材が前記折り目で折り曲げられることにより形成されている、蓄光シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄光シートであって、
前記蓄光領域に占める前記開口部の開口面積の割合は、1%以上70%以下である、蓄光シート。
【請求項4】
光を出射するように構成された光源を備える照明器具であって、
前記光源からの光を遮る位置には、シート状の基材と、蓄光材料を含む蓄光部であって、前記基材の少なくとも一部に形成された前記蓄光部と、を有する蓄光シートが取り付けられ、
前記基材における前記蓄光部が形成された領域には、開口部が形成されている、照明器具。
【請求項5】
照明器具への蓄光シートの取付方法であって、
シート状の基材と、蓄光材料を含む蓄光部であって、前記基材の少なくとも一部に形成された前記蓄光部と、を有する前記蓄光シートを、前記照明器具における光源からの光を遮る位置に取り付けることを備え、
前記基材における前記蓄光部が形成された領域には、開口部が形成されている、蓄光シートの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明器具に取り付けて用いられる蓄光シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、蓄光材料を含む蓄光シートが記載されている。蓄光シートは、蓄光材料が明るい環境下で光を吸収することにより、暗い環境下で光を発することができる。このため、蓄光シートは、例えば停電時における視認性の向上に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-151069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、このような蓄光シートの新たな用途として、蓄光シートを照明器具に取り付けて用いることを検討した。本発明者らは、蓄光シートを照明器具に取り付けることにより、蓄光材料が照明器具からの光を吸収しやすくなり、停電時などにおける蓄光シートの発光強度を確保しやすくなると考えた。しかしながら、蓄光シートを照明器具に取り付けた場合、照明器具からの光が蓄光材料により低減されてしまうことが判明した。
【0005】
本開示の一局面は、蓄光シートを照明器具に取り付けて用いる場合に、照明器具からの光の低減を抑制するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、照明器具に取り付けて用いられる蓄光シートである。蓄光シートは、基材と、蓄光部と、を備える。基材は、シート状である。蓄光部は、蓄光材料を含む。蓄光部は、基材の少なくとも一部に形成されている。基材における蓄光部が形成された領域である蓄光領域には、開口部が形成されている。
【0007】
このような構成によれば、蓄光シートを照明器具に取り付けて用いる場合に、照明器具からの光の低減を抑制することができる。
【0008】
本開示の一態様では、基材には、蓄光領域内に、切れ目と、切れ目に隣接する折り目と、が形成されていてもよい。開口部は、基材が折り目で折り曲げられることにより形成されていてもよい。
【0009】
このような構成によれば、蓄光領域に占める開口部の開口面積の割合を調整しやすくすることができる。
【0010】
本開示の一態様では、蓄光領域に占める開口部の開口面積の割合は、1%以上70%以下であってもよい。
【0011】
このような構成によれば、蓄光シートを照明器具に取り付けて用いる場合に、照明器具からの光の低減を抑制しつつ、停電時などにおける蓄光シートの発光強度を確保しやすくすることができる。
【0012】
本開示の一態様は、光を出射するように構成された光源を備える照明器具である。光源からの光を遮る位置には、蓄光シートが取り付けられている。蓄光シートは、基材と、蓄光部と、を有する。基材は、シート状である。蓄光部は、蓄光材料を含む。蓄光部は、基材の少なくとも一部に形成されている。基材における蓄光部が形成された領域には、開口部が形成されている。
【0013】
このような構成によれば、蓄光シートを照明器具に取り付けることによる照明器具からの光の低減を抑制することができる。
【0014】
本開示の一態様は、照明器具への蓄光シートの取付方法である。蓄光シートの取付方法は、蓄光シートを、照明器具における光源からの光を遮る位置に取り付けることを備える。蓄光シートは、基材と、蓄光部と、を有する。基材は、シート状である。蓄光部は、蓄光材料を含む。蓄光部は、基材の少なくとも一部に形成されている。基材における蓄光部が形成された領域には、開口部が形成されている。
【0015】
このような構成によれば、蓄光シートを照明器具に取り付けることによる照明器具からの光の低減を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】蓄光シートが取り付けられた照明器具を斜め下方から見た模式図である。
図2】蓄光シートの模式的な断面図である。
図3図3Aは、切れ目及び折り目の一例を説明するための蓄光シートの模式的な平面図である。図3Bは、図3Aに示される蓄光シートが折り目で折り曲げられた状態を示す模式的な平面図である。
図4図4Aは、切れ目及び折り目の別の一例を説明するための蓄光シートの模式的な平面図である。図4Bは、図4Aに示される蓄光シートが折り目で折り曲げられた状態を示す模式的な平面図である。
図5】開口部の変形例を示すための蓄光シートの模式的な断面図である。
図6図6Aは、配置工程を説明するための照明器具の模式的な側面図である。図6Bは、取付工程を説明するための照明器具の模式的な側面図である。図6Cは、蓄光シートが取り付けられた照明器具の模式的な側面図である。
図7】蓄光シートが重ねられた状態で取り付けられた照明器具の模式的な側面図である。
図8】蓄光シートの取り付け方の変形例を示す模式図である。
図9】照明器具の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1に示す照明器具1は、天井面や壁面などの設置面に直接的に設置されるベースライトである。照明器具1は、支持部材11と、光源12と、を備える。
【0018】
支持部材11は、光源12を支持する部材である。支持部材11は、照明器具1の設置面に固定される。本実施形態の支持部材11は、長尺な部材である。本実施形態の支持部材11は、平面視にて長方形状である。支持部材11は、例えば金属製である。
【0019】
光源12は、外部から電力が供給されることにより光を出射するように構成されている。光源12としては、例えば、LED、蛍光灯、白熱灯、水銀灯などが挙げられる。LEDは、Light Emitting Diodeの略である。
【0020】
本実施形態では、光源12は、直管型のLEDである。光源12は、支持部材11に沿って延びる向きで、支持部材11に支持される。光源12は、中心軸周りの全周に光を出射するように構成されている。光源12が支持部材11に支持された状態において、光源12から出射された光は、直接又は支持部材11に反射されて、支持部材11側と反対側へ向かう。
【0021】
照明器具1には、蓄光シート2が取り付けられている。つまり、蓄光シート2は、照明器具1に取り付けて用いられる。図2に示すように、蓄光シート2は、基材21と、蓄光部22と、を有する。
【0022】
基材21は、シート状の部材である。基材21の材質としては、例えば、紙、樹脂などが挙げられる。
【0023】
蓄光部22は、蓄光材料と、保持材料と、を含む。蓄光材料は、可視光や紫外光などの光を蓄え、発光する性質を有する材料である。蓄光材料としては、例えば、アルミン酸ストロンチウムを主体とし、セリウム、ユーロピウム、ネオジム、ディスプロシウムといった発光状態等を変化させるための物質が添加された材料が挙げられる。保持材料は、蓄光材料を保持する材料であって、光透過性を有する材料である。保持材料としては、例えば、光沢ワニス、艶消しワニス、耐摩ワニス、静電防止ワニス、ブロッキング防止ワニス、乾性油、塗料、接着剤などが挙げられる。
【0024】
蓄光部22は、基材21の少なくとも一部に形成されている。蓄光部22は、例えば印刷により基材21に形成される。その際の印刷方法には、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、デジタル印刷、シルクスクリーン印刷、パッド印刷などが用いられる。
【0025】
本実施形態では、蓄光部22は、基材21の両面である第1面及び第2面のうちの一方の全域に形成されている。したがって、本実施形態では、図3Aに示すように、後述する開口部24が形成されていない状態における基材21では、基材21の全域が蓄光領域23に該当する。蓄光領域23とは、基材21における蓄光部22が形成された領域を指す。より詳細には、蓄光領域23とは、蓄光シート2の平面視において、基材21における蓄光部22が形成された領域を指す。図3A図4Bでは、蓄光領域23は、ドット模様が入れられた領域として示されている。基材21における、第1面及び第2面の少なくとも一方に蓄光部22が形成された部分が、蓄光領域23を構成する。
【0026】
図1に戻り、蓄光シート2は、照明器具1における光源12からの光を遮る位置に取り付けられる。光源12からの光を遮る位置とは、光源12から光が出射される方向において光源12と対向する位置とも言い換えられる。この場合、照明器具1の点灯中、光源12からの光が蓄光シート2によって吸収される。基材21も光を吸収し得るが、特に蓄光部22によって光が吸収される。このため、蓄光シート2が照明器具1に取り付けられた状態においては、蓄光シート2が照明器具1に取り付けられていない状態と比較して照度が低下し、使用者によってはやや暗いと感じることも想定され得る。そこで、蓄光シート2、具体的には蓄光領域23には、開口部24が形成されている。これにより、蓄光シート2が照明器具1に取り付けられた状態においても、光源12からの光の一部は、開口部24を介して蓄光部22に遮られずに蓄光シート2よりも外側へ届く。したがって、蓄光シート2を取り付けることによる照明器具1の減光が抑制される。
【0027】
開口部24の形成方法は特に限定されないが、本実施形態では、開口部24は、図3Aに示すような切れ目25及び折り目26により蓄光領域23に形成される。切れ目25及び折り目26は、基材21における蓄光領域23内にそれぞれ形成されている。折り目26は、切れ目25に隣接して形成されている。図3Aに示す例では、切れ目25及び折り目26は、正三角形の各辺を構成するように形成されている。具体的には、切れ目25が正三角形の2辺を構成し、折り目26が正三角形の残りの1辺を構成するように形成されている。また、このような正三角形の各辺を構成する切れ目25及び折り目26の組み合わせが複数組、蓄光領域23内に規則的に配置されている。そして、図1図2及び図3Bに示すように、基材21が折り目26で折り曲げられることにより、蓄光領域23に開口部24が形成される。なお、図1及び図2では基材21が全ての折り目26において同じ側へ折り曲げられているが、各折り目26において基材21が折り曲げられる方向は特に限定されない。例えば、基材21は、隣り合う折り目26において互いに反対の方向へ折り曲げられてもよい。
【0028】
また、切れ目25及び折り目26が構成する形状は特に限定されない。例えば、図4Aに示すように、切れ目25及び折り目26は、麻の葉文様を構成するように形成されてもよい。具体的には、図4Aに示す例では、折り目26が正三角形の3辺のうち各頂点を除く部分を構成するように形成され、切れ目25が当該正三角形の内心から各頂点に向けて延びるように形成されている。このような切れ目25及び折り目26の組合せが複数組、各折り目26により形成される正三角形の辺を共有するように連続的且つ規則的に配置されることにより、麻の葉文様が構成される。図4Aに示す例でも、図4Bに示すように基材21が折り目26で折り曲げられることにより、蓄光領域23に開口部24が形成される。
【0029】
また、図5に示すように、開口部24は、例えば、基材21が部分的に打ち抜かれることにより形成されてもよい。また例えば、複数の基材21が隙間を空けて横並びに連結されることにより、基材21同士の間に開口部24が形成されてもよい。また例えば、複数の開口部24が形成される場合には、その一部が切れ目25及び折り目26により形成され、別の一部が基材21の打抜きにより形成されてもよい。
【0030】
蓄光領域23に占める開口部24の開口面積の割合は、例えば1%以上70%以下である。蓄光領域23に占める開口部24の開口面積の割合とは、具体的には、図3Bに示すような蓄光シート2の正面視における、蓄光領域23に占める開口部24の開口面積の割合である。蓄光領域23に占める開口部24の開口面積の割合は、開口部24が形成されていない状態における蓄光領域23の面積に対する、開口部24の開口面積の割合とも言い換えられる。蓄光シート2が照明器具1に取り付けられた場合に照明器具1の減光を抑制する観点からは、上記開口面積の割合は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上である。
【0031】
ただし、開口部24の開口面積が大きくなりすぎると、相対的に蓄光部22の面積が減少するため、停電時や照明器具1の消灯時などに蓄光シート2の発光強度を得ることが難しくなる可能性がある。蓄光シート2が照明器具1に取り付けられた場合に停電時や照明器具1の消灯時などにおける蓄光シート2の発光強度を確保する観点からは、上記開口面積の割合は、70%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、更に好ましくは10%以下である。
【0032】
開口部24が切れ目25及び折り目26により形成される場合、上記開口面積の割合は、例えば、1%以上10%以下である。図3B及び図4Bにそれぞれ示す例では、上記開口面積の割合は約3%である。また、開口部24が基材21の打抜きにより形成される場合、上記開口面積の割合は、例えば、5%以上70%以下である。
【0033】
図6C及び図7は、蓄光シート2が取り付けられた照明器具1の模式的な側面図である。なお、本実施形態の光源12は前述したように直管状であるが、図6C及び図7では、光源12は球状に描かれている。図6A及び図6Bでも同様である。
【0034】
図1及び図6Cに示すように、蓄光シート2は、支持部材11側と反対側から光源12と対向するように、支持部材11に取り付けられている。具体的には、蓄光シート2は、光源12から離れる方向へ弛んだ状態において、両端がそれぞれ取付具3により支持部材11に取り付けられている。取付具3は、蓄光シート2を照明器具1に取り付けるための器具である。本実施形態の取付具3は、磁石である。光源12を挟んで支持部材11と対向する位置から見た場合、光源12は、蓄光シート2により覆われている。
【0035】
蓄光シート2が光源12から離れる方向へ弛むことにより、蓄光シート2が張っている状態(言い換えれば弛んでいない状態)と比較して、蓄光シート2における光源12からの光が当たる面積が広くなる。当該面積の増大は、照明器具1の消灯時における蓄光シート2の発光強度の向上に寄与する。本実施形態のように光源12がLEDである場合、当該面積を増大する観点からは、光源12から蓄光シート2が構成する曲面の底までの最短距離D1は、1mm以上であることが好ましく、より好ましくは10mm以上、更に好ましくは50mm以上である。本実施形態では、上記最短距離D1は、蓄光シート2の弛み方向に沿った、光源12から蓄光シート2までの最長距離と一致する。
【0036】
ただし、蓄光シート2を大きく弛ませすぎると、光源12から蓄光シート2までの距離が長くなる分、照明器具1の蓄光シート2上での照度が低下する。このため、蓄光シート2は、同じだけの発光強度を達成するために、より長時間光を吸収する必要が生じ得る。本実施形態のように光源12がLEDである場合、所定の発光強度を達成するために必要な光の吸収時間の長時間化を抑制する観点からは、上記最短距離D1は、500mm以下であることが好ましく、より好ましくは300mm以下、更に好ましくは200mm以下である。
【0037】
また、蓄光シート2は、例えば、図7に示すように重ねられた状態で照明器具1に取り付けられてもよい。図7に示す例では蓄光シート2が二重に重ねられているが、蓄光シート2は、例えば三重以上に重ねられてもよい。このように蓄光シート2が重ねられた状態で照明器具1に取り付けられる場合、蓄光シート2は、例えば、開口部24同士の位置をずらして重ねられてもよい。この場合、重ねられた蓄光シート2同士の間に間隔が空けられることが好ましい。また、蓄光シート2が重ねられた状態で照明器具1に取り付けられる場合、光源12から、最も光源12側の蓄光シート2が構成する曲面の底までの最短距離D2の好適値は、前述した最短距離D1の好適値と同じである。
【0038】
[2.蓄光シートの取付方法]
次に、照明器具1への蓄光シート2の取付方法について、図6A図6Cを用いて説明する。蓄光シート2の取付方法は、配置工程と、取付工程と、を備える。
【0039】
配置工程では、図6Aに示すように、光源12からの光を遮る位置に蓄光シート2が配置される。具体的には、蓄光シート2は、図6Bに示すように光源12から離れる方向へ弛んだ状態で光源12に対向し、且つ両端が支持部材11に接触するように、光源12を挟んで支持部材11側と反対側から配置される。
【0040】
続く取付工程では、図6Bに示すように、光源12からの光を遮る位置に配置された蓄光シート2が、取付具3により支持部材11に取り付けられる。本実施形態の取付具3は、前述したように磁石である。このため、本実施形態では、蓄光シート2における支持部材11に接触している両端のそれぞれを、支持部材11と共に挟むように、取付具3が配置される。これにより、図6Cに示すような、蓄光シート2が、照明器具1における光源12からの光を遮る位置に取り付けられた状態になる。
【0041】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0042】
(3a)蓄光シート2における蓄光領域23には開口部24が形成されている。このような構成によれば、蓄光シート2が照明器具1に取り付けられた場合に、光源12により蓄光シート2側へ出射された光の一部は、開口部24を介して蓄光部22に遮られずに蓄光シート2よりも外側へ届く。したがって、光源12からの光の低減を抑制することができる。
【0043】
(3b)特に本実施形態のように蓄光シート2が光源12を覆うように取り付けられた場合には、光源12の熱が蓄光シート2よりも内側にこもることが考えられる。しかし、上記のような構成によれば、開口部24を介して光源12の熱を逃がすことができる。
【0044】
(3c)開口部24は、基材21が折り目26で折り曲げられることにより形成されている。このような構成によれば、基材21における折り目26での折り曲げ具合を変更することが可能である。このため、蓄光シート2の平面視における開口部24の開口面積を調整しやすくすることができる。すなわち、蓄光領域23に占める開口部24の開口面積の割合を調整しやすくすることができる。
【0045】
(3d)特に本実施形態では、基材21には、開口部24を形成するための切れ目25及び折り目26の組合せが、複数組形成されている。すなわち、蓄光シート2は、複数の開口部24を形成可能に構成されている。このような構成によれば、複数の折り目26のうちの一部のみにおいて基材21を折り曲げたり、全てにおいて基材21を折り曲げたりすることにより、蓄光シート2に形成する開口部24の数を調整することが可能である。このため、蓄光領域23に占める開口部24の開口面積の割合を一層調整しやすくすることができる。
【0046】
(3e)本実施形態では、蓄光領域23に占める開口部24の開口面積の割合は、1%以上70%以下である。このような構成によれば、蓄光シート2が照明器具1に取り付けられた場合に、照明器具1の点灯中における減光を抑制しつつ、停電時や照明器具1の消灯時などにおける蓄光シート2の発光強度を確保しやすくすることができる。
【0047】
(3f)蓄光シート2は、照明器具1における光源12からの光を遮る位置に取り付けられる。このような構成によれば、蓄光シート2が照明器具1に取り付けられない場合や、照明器具1自体には取り付けられるものの取付位置が光源12からの光を遮る位置ではない場合と比較して、蓄光シート2は、光源12からの距離が近い位置において光源12からの光を吸収することができる。したがって、停電時や照明器具1の消灯時などにおける蓄光シート2の発光強度を向上することができる。加えて、蓄光シート2の発光時間の長時間化も可能になる。
【0048】
(3g)特に本実施形態では、蓄光シート2は、光源12から離れる方向へ弛んだ状態で照明器具1に取り付けられる。このような構成によれば、蓄光シート2が張っている状態で照明器具1に取り付けられる場合と比較して、蓄光シート2における光源12からの光が当たる面積を増大させることができる。したがって、停電時や照明器具1の消灯時などにおける蓄光シート2の発光強度を一層向上することができる。さらに、蓄光シート2を一層長時間にわたって発光させることも可能になる。
【0049】
(3h)蓄光シート2を重ねて取り付けた場合、全体として、蓄光シート2における光源12からの光が当たる面積を増大させることが可能になる。したがって、停電時や照明器具1の消灯時などにおける蓄光シート2の発光強度をより一層向上させたり、蓄光シート2をより一層長時間にわたって発光させたりすることが可能になる。
【0050】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0051】
(4a)上記実施形態では、蓄光シート2は、光源12から離れる方向へ弛んだ状態で照明器具1に取り付けられるが、照明器具1への蓄光シート2の取り付け方は特に限定されない。例えば、蓄光シート2は、張っている状態で照明器具1に取り付けられてもよい。また例えば、図8に示すように、蓄光シート2が所定の大きさのシート片2Aに形成され、当該シート片2Aが複数繋がれた状態で照明器具1に吊り下げられてもよい。つまり、複数のシート片2Aがシャンデリア状に照明器具1に吊り下げられてもよい。この場合、光源12から各シート片2Aまでの直線距離は、例えば10mm以上500mm以下であってもよい。
【0052】
(4b)上記実施形態では、蓄光部22の形成方法として印刷を例示したが、蓄光部22の形成方法は特に限定されない。例えば、蓄光部22は、蓄光材料が分布されたシート状の部材であってもよい。つまり、蓄光材料が分布されたシート状の部材が基材21に貼り合わされることにより、蓄光部22が形成されてもよい。また例えば、基材21の第1面又は第2面の一部のみに蓄光部22が形成される場合、基材21にマスキングを行って蓄光材料が吹き付けられることにより、蓄光部22が形成されてもよい。また例えば、蓄光材料を含む塗装剤が基材21にローラ等で塗り広げられることにより、蓄光部22が形成されてもよい。
【0053】
(4c)上記実施形態では、取付具3として磁石を例示したが、取付具3は特に限定されない。例えば、図9に示すように、取付具3Aは、両面テープであってもよい。また例えば、取付具は、S字等のフック、クリップなどであってもよい。この場合の取付具の材質も特に限定されず、例えば、樹脂や金属などであってもよい。
【0054】
(4d)上記実施形態の蓄光シート2の取付方法では、配置工程が行われた後に取付工程が行われる。このように配置工程及び取付工程は互いに独立した工程として行われてもよいし、配置工程及び取付工程が1つの工程として、つまり同時に行われてもよい。
【0055】
(4e)上記実施形態では、照明器具1はベースライトであるが、照明器具の種類は特に限定されない。例えば、照明器具は、ローゼット等を介して間接的に設置面に設置されるシーリングライト、設置面から吊り下げられるペンダントライト、設置面に埋め込まれるダウンライト、設置面上に置かれるランプなどであってもよい。
【0056】
(4f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【実施例0057】
<実施例及び比較例の用意>
第1測定室の天井面に設置された照明器具1であって、蓄光シート2が取り付けられていない状態の照明器具1を、比較例1とした。この照明器具1は、ベースライトであり、光源12として104lm/WのLEDを備えた。
【0058】
比較例1と同じ照明器具1に、開口部24が形成されていない蓄光シート2を取り付けたものを、比較例2とした。以下の説明及び表1では、開口部24が形成されていない蓄光シート2を、開口部なしの蓄光シート2と表記する。比較例2において、照明器具1には、図1及び図6Cに示すように、蓄光シート2を、光源12側と離れる方向へ弛んだ状態で取り付けた。光源12から蓄光シート2が構成する曲面の底までの最短距離D1は、50mmとした。
【0059】
比較例1と同じ照明器具1に、開口部なしの蓄光シート2を、図7に示すように二重に重ねて取り付けたものを、比較例3とした。具体的には、二重に重ねた蓄光シート2を、光源12側と離れる方向へ弛んだ状態で、照明器具1に取り付けた。光源12から光源12側の蓄光シート2が構成する曲面の底までの最短距離D2は、50mmとした。また、重ねられた蓄光シート2同士の間には間隔を設けた。
【0060】
比較例1と同じ照明器具1に、図3A及び図3Bに示すような三角形の各辺を構成する切れ目25及び折り目26により開口部24が形成された蓄光シート2を取り付けたものを、実施例1とした。以下の説明及び表1では、このような蓄光シート2を、第1開口部ありの蓄光シート2と表記する。実施例1における蓄光シート2の具体的な取り付け方、及び、光源12から蓄光シート2が構成する曲面の底までの最短距離D1は、比較例2と同様とした。
【0061】
比較例1と同じ照明器具1に、図4A及び図4Bに示すような麻の葉文様を構成する切れ目25及び折り目26により開口部24が形成された蓄光シート2を取り付けたものを、実施例2とした。以下の説明及び表1では、このような蓄光シート2を、第2開口部ありの蓄光シート2と表記する。実施例2における蓄光シート2の具体的な取り付け方、及び、光源12から蓄光シート2が構成する曲面の底までの最短距離D1は、比較例2と同様とした。
【0062】
比較例1と同じ照明器具1に、第2開口部ありの蓄光シート2を、図7に示すように二重に重ねて取り付けたものを、実施例3とした。実施例3における蓄光シート2の具体的な取り付け方、及び、光源12から光源12側の蓄光シート2が構成する曲面の底までの最短距離D2は、比較例3と同様とした。ただし、蓄光シート2は、開口部24同士の位置をずらして二重に重ねた。
【0063】
第1測定室とは異なる部屋である第2測定室の天井面に設置された照明器具1であって、蓄光シート2が取り付けられていない状態の照明器具1を、比較例4とした。この照明器具1も、ベースライトであり、光源12として104lm/WのLEDを備えた。
【0064】
比較例4と同じ照明器具1に、比較例2と同様にして開口部なしの蓄光シート2を取り付けたものを、比較例5とした。
【0065】
比較例4と同じ照明器具1に、実施例1と同様にして第1開口部ありの蓄光シート2を取り付けたものを、実施例4とした。
【0066】
比較例4と同じ照明器具1に、実施例2と同様にして第2開口部ありの蓄光シート2を取り付けたものを、実施例5とした。
【0067】
比較例4と同じ照明器具1に、実施例3と同様にして第2開口部ありの蓄光シート2を二重に重ねて取り付けたものを、実施例6とした。
【0068】
<照明器具の照度測定>
比較例1,2,4,5及び実施例1~6について、照明器具1を点灯させた状態で、株式会社佐藤商事製の照度計LX-100を用いて照度を測定した。具体的には、照明器具1を点灯させた状態で、光源12から鉛直方向下方に50mm離れた位置及び1700mm離れた位置のそれぞれにおいて、10秒間、円を描くように照度計を動かしながら照度を測定した。
【0069】
ただし、比較例2,5及び実施例1~6については、光源12から鉛直方向下方に50mm離れた位置が、照明器具1に取り付けられた蓄光シート2と重複した。このため、比較例2,5及び実施例1,2,4,5については、蓄光シート2における弛み方向に沿って光源12から最も離れた部分(つまり蓄光シート2が形成する曲面の底)のすぐ外側の位置での測定結果を、光源12から鉛直方向下方に50mm離れた位置での測定結果として扱った。また、実施例3,6については、二重に重ねられた蓄光シート2のうち光源12から遠い蓄光シート2における、弛み方向に沿って光源12から最も離れた部分のすぐ外側の位置での測定結果を、光源12から鉛直方向下方に50mm離れた位置での測定結果として扱った。なお、蓄光シート2のすぐ外側の位置とは、蓄光シート2に対して光源12側と反対側の位置であって、蓄光シート2とほとんど間隔を空けていない位置であった。
【0070】
<消灯後の蓄光シートの発光強度測定>
比較例2,3及び実施例1~6について、照明器具1を点灯して30分間放置した後、照明器具1を消灯して暗闇になった瞬間(つまり消灯直後)に蓄光シート2が発する光の強度を、蓄光シート2と至近距離で測定した。さらに、比較例2,3及び実施例2,3については、照明器具1を点灯して30分間放置した後、照明器具1を消灯して数秒経過後にも、同様にして蓄光シート2が発する光の強度を測定した。測定には、前述した照明器具1の照度測定と同一の照度計を用いた。また、実施例3,6については、二重に重ねられた蓄光シート2のうち光源12から遠い蓄光シート2の至近距離で測定した。
【0071】
<消灯後の蓄光シートの目視による発光確認>
比較例2,3及び実施例2,3について、照明器具1を点灯して30分間放置した後、照明器具1を消灯したときの蓄光シート2の発光度合いを、目視で確認した。「明るい」、「消え始め」、「ほぼ目視不可」、「目視不可」の4段階で評価を下した。
【0072】
<考察>
以下の表1及び表2に、比較例1~5及び実施例1~6の評価結果を示す。
【0073】
比較例1,2,4,5より、照明器具1に蓄光シート2を取り付けることによって、照明器具1の点灯中の照度が低下することが示された。比較例1,2,4,5及び実施例1,2,4,5より、蓄光シート2に開口部24が形成されていることによって、蓄光シート2を取り付けることによる照明器具1の減光が抑制されることが示された。
【0074】
なお、比較例3については照明器具1の照度測定を省略したが、目視では、実施例3の方が比較例3よりも照明器具1の点灯中に暗く感じなかった。つまり、蓄光シート2が重ねて照明器具1取り付けられた場合でも、蓄光シート2に開口部24が形成されていることにより、蓄光シート2を取り付けることによる照明器具1の減光が抑制されたといえる。
【0075】
比較例2,3,5及び実施例1~6より、蓄光シート2に開口部24が形成された場合、蓄光シート2に開口部24が形成されていない場合と比較すると照明器具1の消灯時の蓄光シート2の発光強度は低下するものの、照明器具1の消灯からしばらくの時間は発光が持続されることが示された。特に、実施例3,6のように蓄光シート2を重ねて取り付けることにより、照明器具1の消灯直後の蓄光シート2の発光強度が向上し、更には、より長時間にわたって発光を維持可能であることが示された。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【符号の説明】
【0078】
1…照明器具、11…支持部材、12…光源、2…蓄光シート、21…基材、22…蓄光部、23…蓄光領域、24…開口部、25…切れ目、26…折り目、3…取付具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9