(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098300
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】車両制御システム、車両製造方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 8/654 20180101AFI20240716BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G06F8/654
B60R16/02 660U
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001716
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 佳史
(72)【発明者】
【氏名】河野 悟司
(72)【発明者】
【氏名】成松 亮
(72)【発明者】
【氏名】塩ノ谷 陽介
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376CA32
5B376CA43
5B376CA61
5B376CA72
5B376FA11
5B376GA08
(57)【要約】
【課題】車両に搭載されるECUのプログラムの書き込みが中断されることを防止し、車両の製造効率の向上を図る。
【解決手段】不揮発性のプログラム記憶部を備え、前記プログラム記憶部に記憶されているプログラムを実行することによって車両に搭載された機能部を制御する車両制御部と、前記車両制御部に対し、前記プログラム記憶部に前記プログラムを書き込む書込処理を実行するマスタ制御部と、を備え、前記マスタ制御部は、前記書込処理を実行する際に、前記書込処理の対象である前記車両制御部に対して第1制御信号を送信することにより、少なくとも前記プログラムの書き込みが完了するまでの間は前記車両制御部が起動している状態を維持させる、車両制御システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性のプログラム記憶部を備え、前記プログラム記憶部に記憶されているプログラムを実行することによって車両に搭載された機能部を制御する車両制御部と、
前記車両制御部に対し、前記プログラム記憶部に前記プログラムを書き込む書込処理を実行するマスタ制御部と、を備え、
前記マスタ制御部は、前記書込処理を実行する際に、前記書込処理の対象である前記車両制御部に対して第1制御信号を送信することにより、少なくとも前記プログラムの書き込みが完了するまでの間は前記車両制御部が起動している状態を維持させる、車両制御システム。
【請求項2】
前記車両制御システムの外部にある外部装置を前記マスタ制御部に接続する接続部を備え、
前記マスタ制御部は、前記外部装置により前記プログラムの書き込みが指示された場合に前記書込処理を開始し、前記書込処理を実行する間に前記第1制御信号を送信する、請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記マスタ制御部は、前記外部装置により前記プログラムの書き込みが指示された後に、前記車両制御部を起動させる、請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記マスタ制御部は、前記書込処理の対象である前記車両制御部を起動している状態にするために前記第1制御信号を必要とするか否かを、前記車両制御部毎に判定することにより、前記第1制御信号を必要とする前記車両制御部を特定する、請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記マスタ制御部は、前記第1制御信号を必要とする前記車両制御部を対象として前記書込処理を実行する場合に前記第1制御信号を送信し、前記第1制御信号を必要とする前記車両制御部に該当しない前記車両制御部に対しては前記第1制御信号を送信しない、請求項4に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記マスタ制御部は、前記書込処理が完了したことを検出した場合、前記書込処理の対象である前記車両制御部に対し、前記車両制御部を省電力状態または停止状態に移行させる第2制御信号を送信する、請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記マスタ制御部は、前記書込処理の対象である前記車両制御部が、前記第1制御信号を必要とする前記車両制御部である場合、前記第2制御信号を送信することによって前記車両制御部が起動している状態を維持する機能を停止させる、請求項6に記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記車両制御部は、前記第1制御信号を受信してからの経過時間を計時する計時機能を有し、前記経過時間が予め設定された長さに達した場合に停止する、請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項9】
前記車両制御部は、不揮発的に情報を記憶する受信状態記憶部を備え、
前記第1制御信号を受信した後に、前記第1制御信号を受信したことを示す受信情報を前記受信状態記憶部に記憶し、
前記受信状態記憶部に前記受信情報が記憶されている場合であって、前記車両制御部が動作を停止したときには、前記受信状態記憶部が記憶する前記受信情報に基づき起動する、請求項1から請求項8のいずれかに記載の車両制御システム。
【請求項10】
不揮発性のプログラム記憶部を備え、前記プログラム記憶部に記憶されているプログラムを実行することによって、車両に搭載された機能部を制御する車両制御部と、マスタ制御部と、を車両に設置する設置工程と、
前記マスタ制御部によって、前記マスタ制御部に接続された前記車両制御部に対し、前記プログラム記憶部に前記プログラムを書き込む書込処理を実行する書込工程と、を含み、
前記書込工程において、前記書込処理の対象である前記車両制御部に対して第1制御信号を送信することにより、少なくとも前記プログラムの書き込みが完了するまでの間は前記車両制御部が起動している状態を維持させる、車両製造方法。
【請求項11】
不揮発性のプログラム記憶部を備え、前記プログラム記憶部に記憶されている制御プログラムを実行することによって車両に搭載された機能部を制御する車両制御部に接続され、前記プログラム記憶部に前記制御プログラムを書き込む書込処理を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
前記コンピュータにより、前記書込処理を実行する際に、前記書込処理の対象である前記車両制御部に対して第1制御信号を送信することにより、少なくとも前記制御プログラムの書き込みが完了するまでの間は前記車両制御部が起動している状態を維持させる機能を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム、車両製造方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の機能の高度化に伴い、車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)の増加、及び、ECUを制御するプログラムの高度化が進んでいる。例えば、エネルギーの効率化に貢献する燃費向上に関する研究開発の成果が車両に適用され、エンジンやモータを制御するECUの高機能化が進んでいる。また、運転支援技術や予防安全技術を担う高度なECUの車両への搭載が進んでいる。これらの技術進化に伴い、ECUが搭載するプログラムの管理が重要な課題となっている。例えば、特許文献1には、車両に搭載されるECUを更新する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ECUに対してプログラムを書き込む間にECUが停止した場合、ECUを再起動させて書き込みを継続する必要がある。プログラムの書き込みが中断しているECUが再起動するまでの間、他のECUへの書き込みが制限されるなどの支障が発生する。例えば、車両の製造工程においてプログラムの書き込みを行う場合、作業者のミスにより、車両の電源をオフにする操作やECUを停止させるような操作がなされることがあった。このようなミスが発生すると、プログラムの書き込みに要する時間が長くなり、車両の製造効率が低下するという課題があった。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、車両に搭載されるECUのプログラムの書き込みが中断されることを防止し、車両の製造効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための一態様は、不揮発性のプログラム記憶部を備え、前記プログラム記憶部に記憶されているプログラムを実行することによって車両に搭載された機能部を制御する車両制御部と、前記車両制御部に対し、前記プログラム記憶部に前記プログラムを書き込む書込処理を実行するマスタ制御部と、を備え、前記マスタ制御部は、前記書込処理を実行する際に、前記書込処理の対象である前記車両制御部に対して第1制御信号を送信することにより、少なくとも前記プログラムの書き込みが完了するまでの間は前記車両制御部が起動している状態を維持させる、車両制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
上記方法によれば、プログラムの書込処理の実行中に、車両制御部の停止により処理が中断する事態を防止できる。これにより、車両の電源遮断等が書込処理中に発生しても、支障なくプログラムの書き込みを行うことができる。このため、車両の燃費向上、運転支援技術や予防安全技術の車両への搭載に対応して、例えば車両の製造工程の効率向上を図ることができ、車両の製造に関する二酸化炭素の排出量削減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】車両制御システムの要部構成を示すブロック図。
【
図3】車両制御システムの動作を示すシーケンス図。
【
図4】車両制御システムの動作を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1.車両制御システムの構成]
図1は、車両制御システム1を示す図である。
車両制御システム1は、車両に搭載される機能部を制御する複数のECU50により構成される。車両制御システム1は、車両の機能部を制御することにより、車両の走行及び各種の機能を実現する。
【0009】
車両制御システム1を搭載する車両の具体的な態様は限定されない。この車両は、四輪自動車であってもよいし、自動二輪車やその他の移動体であってもよい。この車両は、駆動源として内燃機関を用いる車両であってもよいし、駆動源としてモータを用いる電動車両であってもよく、内燃機関とモータとを用いるハイブリッド車であってもよい。本実施形態では、四輪自動車である車両Vを例として説明する。
【0010】
以下の説明は、車両Vに搭載される各種のECU50、及び、ECU50により制御される機器の一例を示している。本開示の適用対象の車両Vが備えるECU50が
図1に示す通りに接続されることを限定する意図はない。
【0011】
車両制御システム1は、車両Vの全般的な制御および情報処理を行うセントラルECU2を備えている。セントラルECU2は、通信線B1~B5を含む通信ラインに接続される。セントラルECU2は、これらの通信ライン間における通信データの授受を管理するゲートウェイの機能を実現する。また、セントラルECU2は、通信線B1~B5によりセントラルECU2に接続されるECU、及び、これらのECUに対してさらに別の通信線B7~B10により接続されるECUに対して、ECUが実行するプログラムの書き込みを実行する。プログラムの書き込みとは、既にECUに書き込まれているプログラムの更新、及び、新たにECUにプログラムを書き込むことを含む。セントラルECU2は、例えば、OTA(Over The Air)管理を実行する。OTA管理は、例えば、車両Vが備えるECUの更新プログラムを車外のサーバからダウンロードする処理、及び、ダウンロードした更新プログラムを車載装置に適用する処理に関する制御を含む。セントラルECU2は、本開示においてマスタ制御部の一例に対応し、セントラルECU2によってプログラムが書き込まれる各ECUは、車両制御部の一例に対応する。車両制御部は、例えば、ゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13、及び、
図1に示す各ECU50を含む。
【0012】
図1及び後述する
図2には、セントラルECU2、ゾーンA-ECU11、及び、ゾーンB-ECU13に接続される各種のECUを、ECU50として記載する。なお、
図1及び
図2は、車両Vが搭載するECU50の一部を模式化して示しており、セントラルECU2、ゾーンA-ECU11、及びゾーンB-ECU13に接続されるECU50の数や接続関係は車両Vの仕様によって異なる。
【0013】
セントラルECU2には、通信線B1によりゾーンA-ECU11が接続され、通信線B2によりゾーンB-ECU13が接続される。ゾーンA-ECU11及びゾーンB-ECU13には、後述するように、さらに複数のECU50が接続される。ゾーンA-ECU11は、セントラルECU2と、ゾーンA-ECU11に接続されたECU50との間の通信データの授受を管理する。ゾーンB-ECU13は、セントラルECU2と、ゾーンB-ECU13に接続されたECU50との間の通信データの授受を管理する。
【0014】
セントラルECU2には、通信線B3によりDLC(Data Link Connector)19が接続される。DLC19は、車両Vの外部の装置をセントラルECU2に接続するインターフェイス装置である。DLC19は、通信ケーブルCBを接続可能なコネクタを備え、通信ケーブルCBを介して、車両Vの外部の装置に接続される。DLC19は、本開示において接続部の一例に対応する。
【0015】
DLC19に接続される外部装置の一例として、本実施形態の車両制御システム1は診断装置300に接続される。
診断装置300は、車両Vの製造工程で作業者が使用する端末装置である。診断装置300は、DLC19を介して車両制御システム1と各種コマンドやデータを送受信することにより、車両制御システム1に関する情報の取得、及び、車両制御システム1に対する指示の送信を行う。診断装置300は、作業者が操作するキーやスイッチ等の操作部、診断装置300の動作状態や車両制御システム1に関する情報を表示する表示部、通信ケーブルCBを接続するコネクタ等を備える。
【0016】
セントラルECU2には、複数のECU50が接続される。
図1の例では通信線B4及び通信線B5によりECU50が接続される。セントラルECU2に接続されるECU50は、例えば、V2X(Vehicle to Everything)通信装置、TCU(Telematics Control Unit)、IVI(In-Vehicle Infotainment)-ECUである。V2X通信装置は、不図示の通信アンテナや通信回路を備え、無線通信機能を有する通信装置であり、セントラルECU2の制御に従って車々間通信及び又は路車間通信を行う。TCUは、不図示の通信アンテナや通信回路を備え、LTE(Long Term Evolution)、5G(第5世代移動通信方式)等のセルラー通信方式により無線データ通信を実行する無線通信装置である。IVI-ECUには、カーナビゲーションシステム、リアカメラを含む各種のカメラ、オーディオプレイヤー、モニタ、タッチパネル、キーやスイッチ等の操作子、スピーカ、マイクロホン等の車載機器が接続される。IVI-ECUは、車載機器を制御することにより、車両Vの搭乗者へ種々のインフォメーション及びエンターテイメントを提供する。例えば、IVI-ECUは、車載機器の起動や停止の制御、及び、他のECUがセンサによって検出したデータ等を車載機器に出力する制御等を実行する。
【0017】
また、セントラルECU2に接続されるECU50は、車両Vを自動的に駐車位置に駐車させる制御、或いは、運転者が車両Vを駐車させる場合の支援機能を実行する運転支援ECUを含んでもよい。運転支援ECUの制御対象の機能部は、例えば、車両Vが搭載する各種のカメラ、モニタ、タッチパネル、ステアリング装置、ブレーキ機構、アクセル装置を含む。
【0018】
DLC19、及び、セントラルECU2に接続されるECU50は、セントラルECU2によって制御される機能部の一例である。
【0019】
ゾーンA-ECU11には複数のECU50が接続される。
図1には通信線B7、B8によりECU50が接続された例を示す。ゾーンA-ECU11に接続されるECU50は、例えば、FI(Fuel Injection)制御部、モータ制御部、BATT(Battery)制御部、シフト制御部、VSA(Vehicle Stability Asist)制御部等である。通信線B7、B8によりゾーンA-ECU11に接続されたECU50を、ゾーンA-ECU11の制御対象の機能部ということができる。
【0020】
FI制御部は、車両Vが搭載する内燃機関における燃料噴射量および燃料噴射タイミングの制御を行う。FI制御部の制御対象である機能部は、電子制御燃料噴射装置を含み、センサ類を含んでもよい。センサ類とは、O2センサ、ノックセンサ、カム角センサ、クランク角センサ、吸気温度センサ、排気温度センサ等が挙げられる。モータ制御部は、車両Vが搭載するモータの回転数を制御する。モータ制御部の制御対象である機能部は、モータに駆動電流を供給するインバータ回路を含み、各種のセンサを含んでもよい。BATT制御部は、車両Vが搭載する走行用バッテリに対する充電制御、放電制御、及び、充電量の残量管理を行う。BATT制御部の制御対象の機能部としてのバッテリは、車両制御システム1の各部に電力を供給する始動用バッテリとは別に設けられ、モータの駆動電源を供給するために車両Vに搭載されるバッテリである。走行用バッテリは、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、全固体電池、及び、その他の二次電池であり、キャパシタであってもよい。BATT制御部の制御対象である機能部は、車両Vの走行エネルギーにより回生電力を発電する回生機構を含んでもよい。これに対し、車両Vの始動用バッテリは、車両Vの電源がオフになった状態で、車両制御システム1の各部に電力を供給し、車両Vが搭載する発電装置によって車両Vの走行中に充電される二次電池である。例えば、始動用バッテリは、鉛蓄電池、その他の二次電池、或いはキャパシタで構成される。
【0021】
シフト制御部は、車両Vの走行状態および運転者の操作に応じて、車両Vのシフト機構を制御する。シフト制御部の制御対象である機能部は、車両Vのシフト機構を含み、具体的には、ステップAT(Automatic Transmission)、CVT(Continuously Variable Transmission)、DCT(Dual Clutch Transmission)等が挙げられる。シフト制御部の制御対象である機能部は、シフトポジションセンサ、シフトスイッチ、シフトレバー等を備えてもよい。
【0022】
VSA制御部の制御対象の機能部は、例えば、車両Vのブレーキ機構に設けられるアクチュエータである。VSA制御部は、車両Vの姿勢等に応じてブレーキ機構のアクチュエータを動作させることにより、走行中の車両Vの姿勢を安定させ、例えばスリップやスピンを予防する。
【0023】
ゾーンB-ECU13には複数のECU50が接続される。
図1には通信線B9、B10によりECU50が接続された例を示す。ゾーンB-ECU13に接続されるECU50は、例えば、ライト制御部、エントリ制御部を含む。通信線B9、B10によりゾーンB-ECU13に接続されたECU50を、ゾーンB-ECU13の制御対象の機能部ということができる。
【0024】
ライト制御部の制御対象の機能部は、車両Vが搭載する灯体、すなわち灯火装置である。例えば、ライト制御部の制御対象は、車両Vの前照灯、方向指示器、霧灯、制動灯、後退灯を含む。ライト制御部は、制御対象として、車両Vの車室内を照明する灯体を制御してもよい。エントリ制御部の制御対象の機能部は、車両VのFOBキー或いはその他の電子キーと無線通信を行う無線通信装置である。エントリ制御部は、車両Vのキーと通信を実行することにより、車外から車両制御システム1へのユーザアクセスを処理し、いわゆるスマートエントリの動作を実現する。
【0025】
通信線B1~B10は、様々な通信規格に準拠した複数の通信伝送路により構成されている。通信線B1~B10は、それぞれ、異なる通信規格に準拠したデータ伝送路とすることができる。すなわち、通信線B1~B10を構成するケーブルの具体的な構成、伝送帯域、及び、通信規格は任意に選択される。通信線B1~B10に適用可能な通信規格としては、例えば、CAN(Controller Area Network)、Ethernet(登録商標)、USB(Universal Serial Bus)、LIN(Local Interconnect Network)、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)が挙げられるが、他の規格であってもよい。CANの規格としては、CAN FD(CAN Flexible Data rate)を含む高速通信が可能な通信プロトコルを採用してもよいし、低速のCAN通信を採用してもよい。また、
図1において通信線B1~B5をピアツーピア型の通信路として記載し、通信線B7~B10をバス型のネットワークとして記載しているが、これらの具体的な構成に制限はない。
ゾーンA-ECU11及びゾーンB-ECU13は、異なる通信方式におけるプロトコルの変換や調停を行う機能を有する。このため、車両制御システム1において通信方式を混在させて採用できるので、それぞれのECU50が必要とする通信速度等に応じて、適切な通信方式を選択できる。
【0026】
車両Vが備えるSSSW(Start Stop SWitch)の操作、及び、診断装置300から入力されるコマンドに従って、車両制御システム1の電源状態は、オン状態、及び、オフ状態に切り替えられる。
【0027】
車両制御システム1のオン状態とは、車両Vから車両制御システム1に電力が供給されており、車両制御システム1を構成する制御部が機能部を制御可能な状態である。車両Vが、いわゆるイグニッションオンの状態、及び、車両Vのアクセサリ電源(ACC電源)がオンの状態で、車両制御システム1はオン状態となっている。イグニッションオンの状態は、車両Vの駆動源が動作している状態、或いは、車両Vの駆動源が動作を開始可能な状態である。駆動源とは、例えば内燃機関やモータである。車両制御システム1のオン状態において、一部のECU50が、通常動作時よりも消費電力が小さい低消費電力状態になってもよい。
【0028】
車両制御システム1のオフ状態は、車両制御システム1を構成する制御部の少なくとも一部が停止している状態である。停止している制御部、すなわちECU50は機能部を制御できる状態にない。このECU50は、車両制御システム1がオフ状態からオン状態に移行することに伴ってECU50が起動することにより、機能部を制御可能となる。車両Vがイグニッションオフの状態、及び、車両Vのアクセサリ電源がオフの状態で、車両制御システム1はオフ状態となっている。
【0029】
車両制御システム1のセントラルECU2、ゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13、及び、少なくとも一部のECU50には、常時、車両Vのバッテリ等から電源が供給される。車両制御システム1のオフ状態で車両制御システム1が動作を継続すると車両Vのバッテリの消耗等を招く。このため、車両制御システム1のオフ状態では、電力が供給されているECU50のうち、少なくとも一部のECU50が停止する。また、車両制御システム1のオフ状態において、セントラルECU2、ゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13の各部は、通常動作時よりも消費電力が小さい低消費電力状態になってもよい。通常動作時とは、例えば車両制御システム1のオン状態を指す。
【0030】
車両制御システム1がオン状態からオフ状態に移行することを、車両制御システム1の停止と呼ぶ。車両制御システム1がオフ状態からオン状態に移行することを、車両制御システム1の起動と呼ぶ。
【0031】
セントラルECU2は、車両制御システム1のオフ状態においても動作を実行可能である。例えば、セントラルECU2は、後述するようにプログラムの書込処理を実行する場合に、特定動作モードに移行する。特定動作モードは、車両Vを、走行など通常目的で動作させる場合とは異なる動作モードである。特定動作モードを実行中、セントラルECU2は、車両制御システム1がオンであるかオフであるかを問わず、動作可能な状態を維持する。セントラルECU2は、例えば、診断装置300から特定動作モードを指示するコマンドを受信した場合に、特定動作モードに移行する。この場合、セントラルECU2は、診断装置300から特定動作モードの解除を指示するコマンドを受信した場合に、特定動作モードから通常動作に復帰する。
【0032】
ゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13、及び、ECU50は、車両制御システム1のオフ状態においては動作を停止する。これらのECUは、例えば、車両Vのイグニッションがオフに切り替わったこと、或いは、車両Vのイグニッションがオフになったことに連動してアクセサリ電源が遮断されたことをトリガとして、停止する。
【0033】
ゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13、及び、一部のECU50は、起動信号(ウェイクアップ信号)を受信することにより、停止状態から起動する機能を有する。この機能のためには、ECUが、停止中においても通信線B1~B10を介して信号を受信するトランシーバ、及び、受信した信号が起動信号である場合に起動シーケンスを実行するプロセッサを具備する必要がある。車両制御システム1を構成する全てのECU50が、起動信号により起動する機能を有しているとは限らない。例えば、低速のCAN通信を行う通信線で接続されたECU50は、起動信号による起動に対応していないことがある。
【0034】
起動信号による起動に対応しないECU50は、起動継続信号、及び、起動継続解除信号に対応する。起動継続信号は、ECU50に対し、車両制御システム1が停止する場合であっても動作を継続することを指示する信号である。ECU50は、起動継続信号を受信した場合、例えば車両Vのイグニッションをオフにする操作が行われても、停止することなく、動作を継続する。つまり、ECU50は、起動継続信号を受信した場合、車両制御システム1の電源の状態に関わらず、起動している状態を維持する。この状態を起動継続状態と呼ぶ。起動継続状態のECU50は、車両制御システム1のオフ状態においても動作を継続する。また、起動継続状態のECU50は、車両制御システム1がオン状態に移行しても、動作を継続する。例えば、ECU50は、起動継続状態において車両Vのイグニッションがオンになり、或いは、車両Vのアクセサリ電源がオンになっても、そのまま動作を継続する。
【0035】
起動継続解除信号は、起動継続状態となっているECU50を、起動継続信号を受信する前の状態に戻すための信号である。起動継続信号、及び、起動継続解除信号に対応するためのECU50の機能は、例えば、プロセッサ91が実行するプログラムにより実現可能であり、特別なトランシーバやプロセッサを用いずに実装できる。起動信号、及び、起動継続信号は、例えば、セントラルECU2が、ゾーンA-ECU11またはゾーンB-ECU13を経由してECU50に送信する。起動継続信号は、第1制御信号の一例に対応する。
【0036】
起動継続信号を受信したECU50が、何らかの要因によりセントラルECU2、ゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13等と通信できない状態となった場合、このECU50は長時間、停止しない可能性がある。そこで、起動信号に対応しないECU50は、起動継続信号を受信してから所定時間経過後に、自律的に停止する機能を有する。
【0037】
[2.車両の製造工程]
ここで、車両Vの製造工場における製造ラインの工程を簡単に説明する。
第1工程として、プレスや溶接により車体を製造する車体製造工程がある。第2工程として、車体に塗装を行う塗装工程がある。第3工程として、塗装工程で塗装された車体に、外装部品、内装部品、駆動系部品、及び、その他の各種部品が取り付けられる組み立て工程がある。その後、第4工程として、検査工程が車両Vの完成検査が行われる。
【0038】
組み立て工程では、駆動源の搭載、サスペンションの取付、補機類の取付、外装部品の取付、内装部品の取付、ECUの結線、バッテリの搭載、フルード類の注入、及び、ドア等の開閉体の取付が行われる。
【0039】
駆動源を車体に搭載する際に、駆動源に接続されるECU50の一部または全部が車体に搭載される。例えば、FI制御部、モータ制御部、BATT制御部、シフト制御部等のECU50が車体に搭載される。
【0040】
サスペンションや補機類の取付の際に、車両Vのスペンションや補機類に接続されるECU50の一部または全部が車体に搭載される。例えば、VSA制御部等のECU50が車体に搭載される。
また、外装部品の取付、及び、内装部品の取付の際に、外装部品等に接続されるECU50の一部または全部が車体に搭載される。例えば、ライト制御部、エントリ制御部等のECU50が車体に搭載される。
【0041】
ECUを結線する工程では、車両Vの車体にセントラルECU2、ゾーンA-ECU11及びゾーンB-ECU13が搭載される。さらに、この工程では、車両制御システム1を構成するECU50のうち、駆動源の搭載、サスペンションの取付、補機類の取付、外装部品の取付、内装部品の取付等の各工程で搭載されていないECU50が、車体に搭載される。さらに、この工程では、セントラルECU2、ゾーンA-ECU11、及びゾーンB-ECU13に各ECUが接続される。この工程の後、セントラルECU2、ゾーンA-ECU11、及びゾーンB-ECU13が、制御対象である各機器及び各ECU50と相互に接続され、セントラルECU2による制御が可能な状態となる。ECUを結線する工程は、本開示において設置工程の一例に対応する。
【0042】
ECUの結線の後、車体に始動用バッテリが搭載される。この工程で、始動用バッテリが車両制御システム1に結線されることにより、始動用バッテリから少なくともセントラルECU2、ゾーンA-ECU11及びゾーンB-ECU13へ電源供給が可能となる。この後、車両制御システム1は、始動用バッテリが供給する電力によって起動し、車両を制御可能な状態となる。具体的には、DLC19に診断装置300を接続することにより、診断装置300がセントラルECU2と通信を実行可能となる。
【0043】
車両制御システム1にバッテリが接続された後、例えばフルード注入や開閉体の取付と並行して、或いはこれらの工程の後に、ゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13或いはECU50への書込処理を行うプログラム書込工程が実行される。プログラム書込工程は、本開示の書込工程の一例に対応する。
【0044】
プログラム書込工程は、セントラルECU2によって実行される。プログラムの書き込みの対象は、セントラルECU2に接続されたECU50、ゾーンA-ECU11に接続されたECU50、及び、ゾーンB-ECU13に接続されたECU50を含む。また、ゾーンA-ECU11及びゾーンB-ECU13に対する書き込みが行われてもよい。
【0045】
セントラルECU2は、車両制御システム1のゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13及びECU50にプログラムを書き込む機能を有する。以下、プログラム書込工程に関して説明する。
【0046】
[3.セントラルECU及びECUの構成]
図2は、車両制御システム1の要部構成を示すブロック図であり、車両制御システム1の要部の構成を示している。
【0047】
セントラルECU2は、処理部21、及び、通信装置23を有する。通信装置23は、処理部21の制御に従って、通信線B1~B5を介して通信を実行する。
【0048】
処理部21は、プロセッサ210、及び、メモリ220を備える。
プロセッサ210は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、MPU(Micro Processor Unit)により構成される。メモリ220は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置であり、プロセッサ210が実行するプログラム、及び、プロセッサ210により処理されるデータを記憶する。メモリ220は、例えば、フラッシュROM(Read Only Memory)やSSD(Solid State Disk)等の半導体記憶デバイス、或いは、磁気的記憶デバイスで構成される。メモリ220は、プログラム及びデータを一時的に記憶するためのワークエリアを形成するRAM(Random Access Memory)を備えてもよい。処理部21は、プロセッサ210、及びメモリ220を一体に備える集積回路(IC)で構成されてもよい。セントラルECU2は、処理部21と通信装置23とを統合した集積回路であってもよい。セントラルECU2は、通信装置23、プロセッサ210、及びメモリ220を独立したハードウェアとして備える構成であってもよい。
【0049】
メモリ220は、制御プログラム221、制御データ222、書込用データ230、及び、結果データ235を記憶する。
制御プログラム221は、プロセッサ210が実行するプログラムである。制御データ222は、プロセッサ210が制御プログラム221を実行する場合に参照するデータである。プロセッサ210は、制御データ222に基づいて制御プログラム221を実行することにより、車両制御システム1におけるデータの授受の管理と制御、及び、DLC19による通信を実行する。また、プロセッサ210は、制御プログラム221を実行することにより、TCU、メーターパネル等を制御する。また、プロセッサ210は、制御プログラム221を実行することにより、車両制御システム1を構成する各ECU50に対するOTAの制御を行う。メモリ220は、本開示においてマスタ記憶部の一例に対応する。
【0050】
書込対象のECU50の構成を説明する。
図2には、セントラルECU2による書込対象のECU50の例として、ゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13、ECU50C、50D、50E、50Fを図示する。ECU50C~50Fは、ECU50の例であり、例えば、FI制御部、モータ制御部、BATT制御部、シフト制御部、VSA制御部等である。
図2は車両制御システム1の一部の構成を示しているが、セントラルECU2が、車両制御システム1が備えるECU50の全てに対してプログラムを書き込むことが可能な構成であってもよい。
【0051】
ゾーンA-ECU11は、プロセッサ91A、及び、メモリ93Aを備える。ゾーンB-ECU13は、プロセッサ91B、及び、メモリ93Bを備える。同様に、ECU50Cはプロセッサ91C及びメモリ93Cを備え、ECU50Dはプロセッサ91D及びメモリ93Dを備え、ECU50Eはプロセッサ91E及びメモリ93Eを備える。また、ECU50Fはプロセッサ91F及びメモリ93Fを備える。以下、ECU50C~50Fを区別しない場合はECU50と記載し、プロセッサ91A~91Fを区別しない場合はプロセッサ91と記載し、メモリ93A~93Fを区別しない場合はメモリ93と記載する。メモリ93は、本開示においてプログラム記憶部の一例に対応する。
【0052】
プロセッサ91は、例えば、CPU、MCU、MPUにより構成される。メモリ93は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置であり、プロセッサ91が実行するプログラム、及び、プロセッサ91により処理されるデータを記憶する。メモリ93は、例えば、フラッシュROMやSSD等の半導体記憶デバイス、或いは、磁気的記憶デバイスで構成される。メモリ93は、プログ及びデータを一時的に記憶するためのワークエリアを形成するRAMを備えてもよい。各ECU50は、プロセッサ91及びメモリ93を一体に備える集積回路で構成されてもよい。
【0053】
プロセッサ91は、メモリ93が記憶する基本制御プログラムを実行することにより、セントラルECU2との間の通信を実行する。また、プロセッサ91は、メモリ93が記憶する制御プログラムを実行することによって、制御対象の機能部を制御する。
メモリ93は、プログラム書込工程においてセントラルECU2によりプログラムが書き込まれる前は、プロセッサ91が制御対象の機能部を制御するためのプログラムを記憶していない。この状態で、メモリ93は、プロセッサ91が基本的な動作を実行するためのプログラムを記憶する。例えば、メモリ93は、書込処理の前において、プロセッサ91がセントラルECU2と通信を実行し、
図3及び
図4に示す処理を実行するためのプログラムを記憶する。また、例えば、メモリ93は、プログラム書込工程の前において、プロセッサ91が制御対象の機能部を制御するためのプログラムを記憶していてもよい。この場合、プログラム書込工程で、メモリ93が記憶するプログラムの一部が上書き更新される。
【0054】
ゾーンA-ECU11は、プロセッサ91A及びメモリ93Aのほか、通信線B1、B7、B8による通信を実行する通信装置を備えてもよい。ゾーンB-ECU13は、プロセッサ91B及びメモリ93Bのほか、通信線B2、B9、B10による通信を実行する通信装置を備えてもよい。ゾーンA-ECU11及びゾーンB-ECU13以外のECU50は、ゾーンA-ECU11やゾーンB-ECU13との間のデータ通信、及び、制御対象の機能部との信号の送受信を行う不図示の通信装置を備える構成であってもよい。
【0055】
セントラルECU2がメモリ220に記憶する書込用データ230は、プロセッサ210が車両制御システム1の各ECU50にプログラムの書き込みを行うためのデータである。書込用データ230は、書込処理プログラム231、書込設定テーブル232、及び、ECU向けプログラム233を含む。
【0056】
書込処理プログラム231は、プロセッサ210が実行するプログラムである。プロセッサ210は、書込処理プログラム231を実行することによって、車両Vの製造工程におけるECU50へのプログラムの書き込みを実行する。
【0057】
書込設定テーブル232は、セントラルECU2によってプログラムの書き込みが行われる対象のECU50に関する情報を含む。書込設定テーブル232は、セントラルECU2が実行する書込処理の対象であるECU50と、ECU50が有するメモリ93に書き込むECU向けプログラム233とを対応付ける。書込設定テーブル232は、対応データの一例に対応する。
【0058】
例えば、書込設定テーブル232は、書込処理の対象であるECU50に関する情報として、ECU50の型番、ECU50の仕様、ECU50の仕向地、ECU50の製造番号(シリアルナンバー)、ECU50の製造ロット番号の少なくともいずれかを含む。
【0059】
書込用データ230は、書込処理の対象となり得るECU50に対応するECU向けプログラム233を含む。例えば、ECU向けプログラム233Aは、ゾーンA-ECU11に対応するプログラムであり、メモリ93Aに書き込まれる。ECU向けプログラム233Bは、ゾーンB-ECU13に対応するプログラムであり、メモリ93Bに書き込まれる。ECU向けプログラム233Cは、FI制御部に対応するプログラムであり、メモリ93Cに書き込まれる。ECU向けプログラム233A、233B、233Cと、ゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13及びECU50とを対応付ける情報は、書込設定テーブル232に含まれる。
【0060】
書込用データ230に含まれるECU向けプログラム233の数に制限はない。好ましくは、書込用データ230は、セントラルECU2が搭載される車両Vの車両制御システム1の全てのECUに対応するECU向けプログラム233を含む。
【0061】
ECU向けプログラム233は、メモリ93に書き込まれるプログラムと同一であってもよい。また、ECU向けプログラム233は、圧縮された状態でメモリ220に記憶され、プロセッサ210によって展開されてメモリ93に書き込まれてもよい。
【0062】
[4.車両制御システムの動作]
図3及び
図4は、車両制御システム1の動作を示すシーケンス図であり、セントラルECU2、及び、書込処理の対象であるターゲットECUの各々の動作と相互の通信を示す。以下ではターゲットECUがECU50である場合を例に挙げて説明する。ステップSA11~SA19、SA21~SA28は、セントラルECU2のプロセッサ210の動作であり、ステップSB11~SB16、SB21~SB31はECU50の動作である。ステップSA11~SA19、SA21~SA28を実行するプロセッサ210は、書込処理を行うコンピュータの一例に対応する。
【0063】
図3及び
図4に示す動作は、DLC19に診断装置300が接続された状態で実行される。詳細には、作業者が診断装置300を操作することによって、診断装置300が車両制御システム1に対し、書込処理の開始を指示するコマンドを送信する。このコマンドが書込処理の開始のトリガとなる。
【0064】
プロセッサ210は、診断装置300から、プログラム書込処理の開始を指示するコマンドを受信する(ステップSA11)。プロセッサ210は、診断装置300からコマンドを受信することにより、書込処理を開始する。プロセッサ210は、車両制御システム1の各ECUを起動させる(ステップSA12)。ステップSA12で、プロセッサ210は、例えば車両制御システム1の各部に起動信号を送信する。これにより、セントラルECU2に接続されたゾーンA-ECU11、ゾーンB-ECU13、及びECU50が起動する。また、ゾーンA-ECU11に接続されたECU50は、ゾーンA-ECU11の制御により起動し、ゾーンB-ECU13に接続されたECU50は、ゾーンB-ECU13の制御により起動する(ステップSB11)。
ステップSA12で、プロセッサ210は、書込処理の対象であるECUを起動させてもよいし、車両制御システム1の全てのECUを起動させてもよい。
【0065】
プロセッサ210は、セントラルECU2に接続されているECUを検出する(ステップSA13)。ステップSA13で、プロセッサ210は、セントラルECU2に通信線B1~B5により接続されたECUのほか、ゾーンA-ECU11及びゾーンB-ECU13を介して接続されたECUを検出する。
【0066】
プロセッサ210は、書込設定テーブル232に基づいて、書込処理の対象とするECUを特定する(ステップSA14)。ステップSA14では、ステップSA13で検出したECUのうち書込処理の対象となる全てのECUが特定される。
【0067】
プロセッサ210は、ステップSA14で特定した全てのECU、或いは、ステップSA13で検出した全てのECUに対し、問合せを実行する(ステップSA15)。ステップSA15の問合せは、起動信号に対応しているか否かをセントラルECU2が知るための問合せである。各々のECUは、問合せへの応答を行う。例えば、
図3に示すECU50は、セントラルECU2からの問合せを受け付けて(ステップSB12)、応答を送信する(ステップSB13)。プロセッサ210は、ECUからの応答を受信し、受信した応答に基づいて、起動信号に非対応のECUを抽出する(ステップSA16)。
【0068】
ステップSA15で、例えば、プロセッサ210は、起動信号を含む通信プロトコルを用いて問合せを実行する。この場合、ステップSA16で、プロセッサ210は、正常な応答を行わなかったECUを、起動信号に非対応のECUとして抽出する。
【0069】
プロセッサ210は、ステップSA14で特定したECUの中から、ターゲットECUを選択する(ステップSA17)。プロセッサ210は、ターゲットECUが起動信号に非対応のECUであるか否かを判定する(ステップSA18)。
【0070】
ターゲットECUが起動信号に非対応のECUである場合(ステップSA18;YES)、プロセッサ210は、ターゲットECUに起動継続信号を送信し(ステップSA19)、
図4のステップSA21に移行する。また、ターゲットECUが起動信号に非対応のECUでない場合(ステップSA18;NO)、ステップSA19をスキップしてステップSA21に移行する。
【0071】
図3及び
図4は、ECU50が起動信号に非対応である場合の例である。ECU50は、起動継続信号を受信すると(ステップSB14)、メモリ93に起動継続情報を記憶させ(ステップSB15)、起動継続状態に移行する(ステップSB16)。その後、ECU50は
図4のステップSB21に移行する。
起動継続情報は、ECU50が起動継続状態であることを示す情報である。ECU50が起動継続信号を受信して起動継続状態に移行した場合に、ECU50のプロセッサ91が起動継続信号をメモリ93に記憶させる。後述するように起動継続状態が解除された場合、プロセッサ91は起動継続情報を削除する。起動継続情報は、受信情報の一例に対応し、起動継続情報を記憶するメモリ93は、受信状態記憶部の一例に対応する。メモリ93が起動継続情報を記憶することは、メモリ93がフラグを有することと見做すことができる。この場合、メモリ93が起動継続情報を記憶している状態は、メモリ93が有する起動継続フラグがオンである状態に相当し、メモリ93が起動継続情報を記憶していない状態は起動継続フラグがオフである状態に相当する。
【0072】
プロセッサ210は、ターゲットECUが有するメモリ93に対してプログラムを書き込む処理を実行する(ステップSA21)。ECU50は、セントラルECU2の制御に従ってメモリ93へのプログラムの書き込みを行う(ステップSB21)。ステップSA21、SB21で書き込まれるプログラムは、書込設定テーブル232によってターゲットECUに対応付けられたECU向けプログラム233である。
【0073】
プログラムの書き込みの過程で、ECU50を再起動(リブート)させる場合がある。例えば、ECU50の起動(ブート)のシーケンスに関与するプログラムをメモリ93に書き込む際に、ステップSA21、SB21で書き込んだプログラムをプロセッサ91に読み込ませる場合である。この場合、プロセッサ210は、プログラムの書き込みが所定の段階に達したときに、ECU50にリブートを指示するコマンドを送信する(ステップSA22)。
【0074】
ECU50は、セントラルECU2からリブートを指示するコマンドを受信し(ステップSB22)、リブートを実行する(ステップSB23)。起動後、ECU50は、メモリ93が記憶する起動継続情報を参照する(ステップSB24)。
図4の例では、起動継続情報が記憶されているので、ECU50は、起動継続状態に移行する(ステップSB25)。ECU50がリブートした後、プロセッサ210は、メモリ93に対して残りのプログラムの書き込みを行う(ステップSA23)。ECU50は、セントラルECU2の制御に従ってメモリ93へのプログラムの書き込みを行う(ステップSB26)。
【0075】
プログラムの書き込みに関してECU50をリブートさせる必要がない場合、ステップSA22~SA23、SB22~SB26は省略される。
【0076】
ステップSA21、SA23のプログラムの書込処理が完了した後、プロセッサ210は、ECU50に対して起動継続解除信号を送信する(ステップSA24)。ECU50は、セントラルECU2から起動継続解除信号を受信した場合(ステップSB27)、メモリ93が記憶する起動継続情報を削除し(ステップSB28)、起動継続状態を解除する(ステップSB29)。
【0077】
プロセッサ210は、メモリ93に書き込まれたプログラムをチェックする(ステップSA25)。ECU50は、セントラルECU2の制御に従ってプログラムをチェックする(ステップSB30)。ステップSA20、SB30では、例えば、プロセッサ210がECU50にプログラムのチェックを指示し、ECU50においてプロセッサ91がチェックを実行してもよい。また、プロセッサ210が、メモリ93に書き込まれたプログラムを読み出してチェックを実行してもよい。
【0078】
プロセッサ210は、ステップSA14で特定した全てのECUに対する書込処理が完了したか否かを判定する(ステップSA26)。書込処理が完了していないECUがある場合(ステップSA26;NO)、プロセッサ210はステップSA17に戻る。
【0079】
全てのECUの書込処理が完了したと判定した場合(ステップSA26;YES)、プロセッサ210は、車両制御システム1を停止させるための処理を実行する。まず、プロセッサ210は、車両制御システム1において、他のECUを介してセントラルECU2に接続されているECU、すなわち末端ECUに停止信号を送信する(ステップSA27)。続いて、プロセッサ210は、他のECUとセントラルECU2との間に位置する中継ECUに、停止信号を送信する(ステップSA28)。停止信号は、第2制御信号の一例に対応する。
【0080】
中継ECUは、例えば、ゾーンA-ECU11及びゾーンB-ECU13である。末端ECUは、ゾーンA-ECU11に接続されたECU50や、ゾーンB-ECU13に接続されたECU50である。中継ECUが停止した状態では、末端ECUに対してセントラルECU2が停止信号を送信しても、末端ECUに停止信号が到達しない可能性がある。例えば、
図2に示す構成において、ECU50C、50Dは末端ECUであり、ゾーンA-ECU11は中継ECUである。この構成で、ECU50C、50DよりもゾーンA-ECU11が先に停止すると、セントラルECU2とECU50C、50Dとの通信を実行できない可能性がある。このため、プロセッサ210は、ステップSA27で、中継ECUよりも優先して末端ECUに停止信号を送信する。末端ECUであるECU50は、セントラルECU2が送信する停止信号を受信し、停止する(ステップSB31)。
【0081】
ステップSB27でプロセッサ210が送信する停止信号は、ECU50に対して、ECU50の停止を指示する信号であってもよいし、ECU50を消費電力が小さい状態に移行させる信号であってもよい。消費電力が小さい状態とは、いわゆる低消費電力状態や、スリープ状態である。
【0082】
また、中継ECUは、車両制御システム1において比較的高速の通信を行うことが求められるので、中継ECUの多くは起動信号に対応する。これに対し、末端ECUの中には低速の通信を行う通信線で接続されたECUが含まれることがあり、これらは起動信号に非対応であることが多い。従って、ステップSA27~SA28の動作は、起動信号非対応のECUに先に停止信号を送信し、その後に、起動信号に対応するECUに停止信号を送信する動作といえる。
【0083】
図3及び
図4に示す動作において、ターゲットECUが起動信号に非対応のECUでない場合(ステップSA18;YES)、ステップSA19に加え、ステップSA24、SB13~SB16、SB27~SB29が省略される。
【0084】
車両Vの製造ラインでは、作業者が誤ってSSSWを操作してしまい、車両Vがイグニッションオフ或いはアクセサリ電源オフの状態に切り替わることが、起きる可能性がある。また、診断装置300の操作の誤りによって、診断装置300が車両制御システム1に対して停止を指示することも、起きる可能性が否定できない。これらの事態が、セントラルECU2が書込処理を実行中に発生すると、ターゲットECUが書込処理の実行中に停止してしまう。この場合、ターゲットECUを起動させてから書込処理を再開する等の対応が必要となる。また、車両制御システム1が停止した場合、車両制御システム1全体を起動させる手順が必要になる。
【0085】
ここで、ターゲットECUが起動信号に対応している場合は、セントラルECU2がターゲットECUに起動信号を送信することによって、ターゲットECUを速やかに起動させることができ、書込処理を再開できる。一方、ターゲットECUが起動信号に非対応の場合は、ターゲットECUを起動させるための時間がかかると見込まれるが、本実施形態では、ターゲットECUを起動継続状態に移行させる。起動継続状態のECUは、車両制御システム1の停止や車両Vのイグニッションオフ等のトリガが発生しても停止しないので、書込処理を中断させることなく実行できる。そして、書込処理が完了した後で起動継続状態を解除させて、ターゲットECUを通常の動作状態に切り替えるので、例えばターゲットECUが不要な動作を継続して消費電力を増大させるという懸念はない。
【0086】
起動信号に非対応のECUは、起動継続信号を受信した場合に起動継続情報を記憶する。このECUは、起動継続状態において停止とリブートを実行した場合、起動継続情報を参照することにより、起動継続信号を再受信しなくても、起動継続状態に移行する。このため、ECUのリブートを行っても起動継続状態を維持できるので、リブートを伴う書込処理を速やかに実行できる。
【0087】
図5は、ECU50の動作を示すフローチャートであり、起動信号に非対応のECU50の動作を示す。
図5の動作はECU50に限定されず、例えば、ゾーンA-ECU11及びゾーンB-ECU13は、起動信号に非対応である場合には
図5の動作を実行可能である。
【0088】
ECU50のプロセッサ91は、セントラルECU2から起動継続信号を受信するまで待機する(ステップSB41)。起動継続信号を受信した場合(ステップSB41;YES)、プロセッサ91は、計時を開始する(ステップSB42)。その後、プロセッサ91は、計時中の時間が、予め設定された閾値に達したか否かを、例えば所定時間周期で判定する(ステップSB43)。
【0089】
計時中の時間が閾値に達していない場合(ステップSB43;NO)、プロセッサ91は、セントラルECU2から起動継続解除信号を受信したか否かを判定する(ステップSB44)。起動継続解除信号を受信していない場合(ステップSB44;NO)、プロセッサ91はステップSB43に戻る。
【0090】
起動継続解除信号を受信した場合(ステップSB44;YES)、プロセッサ91は、計時を停止し、計時した時間をリセットして(ステップSB45)、ステップSB41に戻る。
【0091】
計時中の時間が閾値に達した場合(ステップSB43;YES)、プロセッサ91は、計時を停止し、計時した時間をリセットし(ステップSB46)、起動継続情報を削除し(ステップSB47)、ECU50を停止させる(ステップSB48)。
【0092】
このように、ECUが、起動継続信号を受信してからの時間が閾値に達した場合に、停止する。このため、起動継続状態となったECUを自律的に停止できるので、例えば、ターゲットECUとセントラルECU2との通信の途絶等により、起動継続状態のECUを停止させることができない状況を回避できる。これにより、ターゲットECUが不要な動作により消費電力を増大させることを防止できる。
【0093】
[5.他の実施形態]
上記実施形態は本発明を適用した一具体例を示すものであり、発明が適用される形態を限定するものではない。
【0094】
例えば、上記実施形態では、セントラルECU2が1つのターゲットECUを選択して書込処理を行う動作を説明したが、これは一例であり、セントラルECU2が複数のターゲットECUに対して並行して書込処理を実行してもよい。
また、上記実施形態で説明した書込処理は、メモリ93にプログラムが書き込まれていない状態で、プログラムを書き込む処理であってもよいし、メモリ93に書き込まれているプログラムを上書きする処理であってもよい。
【0095】
上記実施形態では、メモリ220が書込用データ230を記憶している状態で、書込処理を実行する例を説明したが、これは一例である。例えば、書込処理の実行中に、診断装置300からセントラルECU2に書込用データ230を送信してもよい。
【0096】
また、上記実施形態で示した車両制御システム1の構成は一例であり、車両制御システム1が備えるECUの種類、ECUの数、ECUの制御対象の装置の構成は種々に変更可能である。また、
図3~
図5に示したステップ単位は、車両制御システム1における動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。そのステップの順番は、適宜に入れ替えてもよい。
【0097】
[6.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0098】
(構成1)不揮発性のプログラム記憶部を備え、前記プログラム記憶部に記憶されているプログラムを実行することによって車両に搭載された機能部を制御する車両制御部と、前記車両制御部に対し、前記プログラム記憶部に前記プログラムを書き込む書込処理を実行するマスタ制御部と、を備え、前記マスタ制御部は、前記書込処理を実行する際に、前記書込処理の対象である前記車両制御部に対して第1制御信号を送信することにより、少なくとも前記プログラムの書き込みが完了するまでの間は前記車両制御部が起動している状態を維持させる、車両制御システム。
構成1の車両制御システムによれば、プログラムの書込処理の実行中に、車両制御部の停止により処理が中断する事態を防止できる。これにより、車両の電源遮断等が書込処理中に発生しても、支障なくプログラムの書き込みを行うことができる。このため、車両の燃費向上、運転支援技術や予防安全技術の車両への搭載に対応して、例えば車両の製造工程の効率向上を図ることができ、車両の製造に関する二酸化炭素の排出量削減を実現できる。
【0099】
(構成2)前記車両制御システムの外部にある外部装置を前記マスタ制御部に接続する接続部を備え、前記マスタ制御部は、前記外部装置により前記プログラムの書き込みが指示された場合に前記書込処理を開始し、前記書込処理を実行する間に前記第1制御信号を送信する、構成1に記載の車両制御システム。
構成2の車両制御システムによれば、書込処理を開始するために外部装置による指示を要するため、意図しないプログラムの書き込みを防止できる。このため、不適切なプログラムの書き込みやプログラムに関する不具合を防止できる。
【0100】
(構成3)前記マスタ制御部は、前記外部装置により前記プログラムの書き込みが指示された後に、前記車両制御部を起動させる、構成1または構成2に記載の車両制御システム。
構成3の車両制御システムによれば、書込処理を開始するときに車両制御部を起動させるので、車両制御部の動作を必要としない状態における消費電力を省き、消費電力を抑制できる。
【0101】
(構成4)前記マスタ制御部は、前記書込処理の対象である前記車両制御部を起動している状態にするために前記第1制御信号を必要とするか否かを、前記車両制御部毎に判定することにより、前記第1制御信号を必要とする前記車両制御部を特定する、構成1から構成3のいずれかに記載の車両制御システム。
構成4の車両制御システムによれば、書込処理の対象である車両制御部が、車両制御部が起動している状態を維持させるための信号を要する構成か否かを特定できる。これにより、書込処理中に車両制御部が起動している状態を確実に維持させることが可能なため、プログラムの書き込みの意図しない中断等を防止できる。
【0102】
(構成5)前記マスタ制御部は、前記第1制御信号を必要とする前記車両制御部を対象として前記書込処理を実行する場合に前記第1制御信号を送信し、前記第1制御信号を必要とする前記車両制御部に該当しない前記車両制御部に対しては前記第1制御信号を送信しない、構成4に記載の車両制御システム。
構成5の車両制御システムによれば、第1制御信号を必要とする車両制御部に限って第1制御信号を送信するので、不要な信号の送受信を省き、通信路の負荷や消費電力を抑制し、効率よくプログラムの書き込みを行うことができる。
【0103】
(構成6)前記マスタ制御部は、前記書込処理が完了したことを検出した場合、前記書込処理の対象である前記車両制御部に対し、前記車両制御部を省電力状態または停止状態に移行させる第2制御信号を送信する、構成1から構成5のいずれかに記載の車両制御システム。
構成6の車両制御システムによれば、書込処理が完了した後に車両制御部を省電力状態または停止状態に移行させることによって、消費電力を抑制できる。
【0104】
(構成7)前記マスタ制御部は、前記書込処理の対象である前記車両制御部が、前記第1制御信号を必要とする前記車両制御部である場合、前記第2制御信号を送信することによって前記車両制御部が起動している状態を維持する機能を停止させる、構成6に記載の車両制御システム。
構成7の車両制御システムによれば、車両制御部が起動している状態を維持する機能を、適切に停止させることができる。これにより、車両制御部を停止させることができない状態を回避し、車両制御部の不要な動作を防ぐことにより消費電力を抑制できる。
【0105】
(構成8)前記車両制御部は、前記第1制御信号を受信してからの経過時間を計時する計時機能を有し、前記経過時間が予め設定された長さに達した場合に停止する、構成1から構成7のいずれかに記載の車両制御システム。
構成8の車両制御システムによれば、車両制御部が起動している状態を維持する機能を、車両制御部が計時を行うことにより停止させることができる。これにより、車両制御部が起動している状態が不適切に継続することを防止できる。
【0106】
(構成9)前記車両制御部は、前記第1制御信号の受信状態を不揮発的に記憶する受信状態記憶部を備え、前記第1制御信号を受信した後に、前記受信状態記憶部に前記第1制御信号を受信したことを記憶し、前記受信状態記憶部に前記第1制御信号を受信したことが記憶されている場合であって、前記車両制御部が動作を停止したときには、前記受信状態記憶部が記憶する前記受信状態に基づき起動する、構成1から構成8のいずれかに記載の車両制御システム。
構成9の車両制御システムによれば、書込処理において、車両制御部を停止させてから再起動させた場合に、車両制御部が起動している状態を維持できる。
【0107】
(構成10)不揮発性のプログラム記憶部を備え、前記プログラム記憶部に記憶されているプログラムを実行することによって、車両に搭載された機能部を制御する車両制御部と、マスタ制御部と、を車両に設置する設置工程と、前記マスタ制御部によって、前記マスタ制御部に接続された前記車両制御部に対し、前記プログラム記憶部に前記プログラムを書き込む書込処理を実行する書込工程と、を含み、前記書込工程において、前記書込処理の対象である前記車両制御部に対して第1制御信号を送信することにより、少なくとも前記プログラムの書き込みが完了するまでの間は前記車両制御部が起動している状態を維持させる、車両製造方法。
構成10の車両製造方法によれば、書込工程でプログラムを書き込む間に車両制御部の停止により処理が中断する事態を防止できる。これにより、車両の電源遮断等が書込処理中に発生しても、支障なくプログラムの書き込みを行うことができる。このため、車両の燃費向上、運転支援技術や予防安全技術の車両への搭載に対応して、例えば車両の製造工程の効率向上を図ることができ、車両の製造に関する二酸化炭素の排出量削減を実現できる。
【0108】
(構成11)不揮発性のプログラム記憶部を備え、前記プログラム記憶部に記憶されている制御プログラムを実行することによって車両に搭載された機能部を制御する車両制御部に接続され、前記プログラム記憶部に前記制御プログラムを書き込む書込処理を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、前記コンピュータにより、前記書込処理を実行する際に、前記書込処理の対象である前記車両制御部に対して第1制御信号を送信することにより、少なくとも前記制御プログラムの書き込みが完了するまでの間は前記車両制御部が起動している状態を維持させる機能を実行させる、プログラム。
構成11のプログラムによれば、プログラムの書込処理の実行中に、車両制御部の停止により処理が中断する事態を防止できる。これにより、車両の電源遮断等が書込処理中に発生しても、支障なくプログラムの書き込みを行うことができる。このため、車両の燃費向上、運転支援技術や予防安全技術の車両への搭載に対応して、例えば車両の製造工程の効率向上を図ることができ、車両の製造に関する二酸化炭素の排出量削減を実現できる。
【符号の説明】
【0109】
1…車両制御システム、2…セントラルECU(マスタ制御部)、11…ゾーンA-ECU(車両制御部)、13…ゾーンB-ECU(車両制御部)、19…DLC(接続部)、21…処理部、23…通信装置、50、50A~50F…ECU(車両制御部)、91、91A~91F…プロセッサ、93、93A~93F…メモリ(プログラム記憶部、受信状態記憶部)、210…プロセッサ、220…メモリ、221…制御プログラム、222…制御データ、230…書込用データ、231…書込処理プログラム、232…書込設定テーブル、233、233A~233C…ECU向けプログラム、235…結果データ、300…診断装置(外部装置)、B1~B5、B7~B10…通信線、CB…通信ケーブル、V…車両。