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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098311
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】水門開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/36 20060101AFI20240716BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
E02B7/36
E02B7/20 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001744
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】横山 斉昭
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019AA57
2D019AA59
2D019BA03
2D019BA21
(57)【要約】
【課題】扉体を吊り下げるチェーン又はワイヤからなる索状部材のコストを抑制可能な水門開閉装置を提供する。
【解決手段】一側端部に扉体11が連結された索状部材12、及び、モータの回転力を動力伝達機構経由で与えられて回転駆動し、掛けられた索状部材12を巻き上げて扉体11を上昇させる駆動回転体15を有する水門開閉装置10において、索状部材12は、チェーン及びワイヤのいずれか一方又は双方からなり、索状部材12は、扉体11が最下位置に配された状態で駆動回転体15に接触する部分から一側端部までの範囲を含む第1領域26と、第1領域26に連結され、第1領域26に比べて最大許容張力が小さい第2領域27とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側端部に扉体が連結された索状部材、及び、モータの回転力を動力伝達機構経由で与えられて回転駆動し、掛けられた前記索状部材を巻き上げて前記扉体を上昇させる駆動回転体を有する水門開閉装置において、
前記索状部材は、チェーン及びワイヤのいずれか一方又は双方からなり、該索状部材は、前記扉体が最下位置に配された状態で前記駆動回転体に接触する部分から前記一側端部までの範囲を含む第1領域と、該第1領域に連結され、前記第1領域に比べて最大許容張力が小さい第2領域とを有することを特徴とする水門開閉装置。
【請求項2】
扉体を吊った動滑車が一側に掛けられた索状部材、及び、モータの回転力を動力伝達機構経由で与えられて回転駆動し、掛けられた前記索状部材を巻き上げて前記扉体を上昇させる駆動回転体を有する水門開閉装置において、
前記索状部材は、チェーン及びワイヤのいずれか一方又は双方からなり、該索状部材は、前記扉体が最下位置に配された状態で前記駆動回転体に接触する部分から前記動滑車が掛けられた箇所を超え一側端部までの範囲を含む第1領域と、該第1領域に連結され、前記第1領域に比べて最大許容張力が小さい第2領域とを有することを特徴とする水門開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水門開閉装置において、前記索状部材はチェーンからなり、前記駆動回転体はスプロケットであり、前記第2領域のローラ列の数は、前記第1領域のローラ列の数より少ないことを特徴とする水門開閉装置。
【請求項4】
請求項3記載の水門開閉装置において、前記第2領域のみに噛み合うスプロケットからなる従動回転体を更に備え、
前記第2領域の各ローラは、前記第1領域の各ローラより長く、前記駆動回転体及び前記従動回転体は共に、歯列の数がNであり、前記第1領域では、前記チェーンの幅方向両側端部内に、前記駆動回転体のN個の歯が差し込まれ、前記第2領域では、前記チェーンの幅方向両側端部内に、前記従動回転体のN個の歯が差し込まれることを特徴とする水門開閉装置。
【請求項5】
請求項4記載の水門開閉装置において、前記第1領域及び前記第2領域は、幅が等しいことを特徴とする水門開閉装置。
【請求項6】
請求項3記載の水門開閉装置において、前記第2領域のみに噛み合うスプロケットからなる従動回転体を更に備え、
前記第2領域は、前記第1領域より幅が狭く、前記駆動回転体は歯列の数がM1であり、前記従動回転体は歯列の数がM1より小さいM2であり、前記第1領域では、前記チェーンの幅方向両側端部内に、前記駆動回転体のM1個の歯が差し込まれ、前記第2領域では、前記チェーンの幅方向両側端部内に、前記従動回転体のM2個の歯が差し込まれることを特徴とする水門開閉装置。
【請求項7】
請求項4記載の水門開閉装置において、前記駆動回転体及び前記従動回転体は径が等しいことを特徴とする水門開閉装置。
【請求項8】
請求項1又は2記載の水門開閉装置において、前記第1領域及び前記第2領域はそれぞれチェーン及びワイヤであり、前記駆動回転体はスプロケットであり、前記第2領域を案内する従動回転体は該第2領域が掛けられるシーブであることを特徴とする水門開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水門の扉体を昇降する水門開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水路や河川等の水門には、モータの作動によりスプロケット(以下、「駆動スプロケット」とも言う)を回転させてチェーンを巻き上げ、チェーンに連結された扉体を上昇させる水門開閉装置が設置されている(特許文献1、2参照)。チェーンは、扉体を吊り下げた状態で昇降させる必要があることから、最大許容張力が扉体の重量に応じた大きさのチェーンが選定される。扉体は重量物であり、その重量は、例えば、5t~200tであることから、その重量の扉体に対応する最大許容張力の大きさのチェーンが選定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-129390号公報
【特許文献2】特開2005-188058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最大許容張力が大きいチェーンは最大許容張力が小さいチェーンに比べて単位長さあたりのコストが高く、水門開閉装置のコストアップを招いていた。また、これは扉体を吊り下げるワイヤについても同様である。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、扉体を吊り下げるチェーン又はワイヤからなる索状部材のコストを抑制可能な水門開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る水門開閉装置は、一側端部に扉体が連結された索状部材、及び、モータの回転力を動力伝達機構経由で与えられて回転駆動し、掛けられた前記索状部材を巻き上げて前記扉体を上昇させる駆動回転体を有する水門開閉装置において、前記索状部材は、チェーン及びワイヤのいずれか一方又は双方からなり、該索状部材は、前記扉体が最下位置に配された状態で前記駆動回転体に接触する部分から前記一側端部までの範囲を含む第1領域と、該第1領域に連結され、前記第1領域に比べて最大許容張力が小さい第2領域とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る水門開閉装置は、索状部材が、チェーン及びワイヤのいずれか一方又は双方からなり、索状部材が、扉体が最下位置に配された状態で駆動回転体に接触する部分から一側端部までの範囲を含む第1領域と、第1領域に連結され、第1領域に比べて最大許容張力が小さい第2領域とを有するので、全長に渡って最大許容張力が等しい索状部材を採用する場合に比べて、扉体を吊り下げる索状部材のコストを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第1の実施の形態に係る水門開閉装置の扉体を閉じた様子及び扉体を開いた様子を示す説明図である。
図2】同水門開閉装置の説明図である。
図3】(A)、(B)はそれぞれ、索状部材の説明図である。
図4】変形例に係る索状部材の説明図である。
図5】同変形例に係る索状部材及びそれに対応する従属回転体の説明図である。
図6】(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第2の実施の形態に係る水門開閉装置の扉体を閉じた様子及び扉体を開いた様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る水門開閉装置10は、一側端部に扉体11が連結された索状部材12、及び、モータ13の回転力を動力伝達機構14経由で与えられて回転駆動し、掛けられた索状部材12を巻き上げて扉体11を上昇させる駆動回転体15を有する装置である。以下、詳細に説明する。
【0009】
水門開閉装置10は、図1(A)、(B)、図2に示すように、基礎体16に載置された筺体17を具備している。筺体17には、モータ13が固定され、回転軸18及び手動ハンドル19が回転可能に取り付けられている。回転軸18は水平に配され、駆動回転体15は回転軸18に固定されている。筺体17内には、ギアやシャフト等から構成された動力伝達機構14が設けられ、モータ13の回転力(モータ13から出力される回転力)又は手動ハンドル19の回転力は動力伝達機構14を介して回転軸18に伝えられ、回転軸18及び駆動回転体15が一体となって回転駆動する。
【0010】
なお、図2においては、筺体17の一部の記載を省略している。
駆動回転体15は、図2に示すように、スプロケットであり、軸方向一側の外周に等ピッチで配された複数の歯20及び軸方向他側の外周に等ピッチで配された複数の歯21を備えている。よって、本実施の形態では、駆動回転体15として、歯列の数が2個のスプロケットが採用されている。
【0011】
基礎体16には、図1(A)、(B)に示すように、索状部材12が掛け止められた従動回転体22、23が回転自在に取り付けられている。索状部材12の他側端部は基礎体16の底部に固定具24を用いて固定されている。従動回転体22、23もそれぞれ歯列の数が2個のスプロケットである。従動回転体22は、図3(A)に示すように、軸方向一側の外周に複数の歯22aが等ピッチで配され、軸方向他側の外周に複数の歯22bが等ピッチで配され、従動回転体23は、軸方向一側の外周に複数の歯23aが等ピッチで配され、軸方向他側の外周に複数の歯23bが等ピッチで配されている。
【0012】
モータ13の出力軸は正転及び反転が可能であり、モータ13が正転することによって、駆動回転体15は、時計回りに回転駆動して索状部材12を巻き上げ、扉体11を上昇させる。扉体11が上昇する際、従動回転体22は反時計回りに回転し、従動回転体23は時計回りに回転して、索状部材12を案内する。
モータ13が反転することによって、駆動回転体15は、反時計回りに回転駆動して索状部材12を巻き下げ、扉体11を下降させる。扉体11が下降する際、従動回転体22は時計回りに回転し、従動回転体23は反時計回りに回転して、索状部材12を案内する。
【0013】
扉体11の最下位置及び最上位置はそれぞれ予め定められている。扉体11は、図1(A)に示すように、最下位置に配されて底部が川底に接触し川Rの流れを止める状態となり、図1(B)に示すように、最上位置に配されて底部が川Rの水面より上方に配される状態となる。
【0014】
索状部材12は、チェーンからなり、図1(A)、(B)、図3(A)、(B)に示すように、扉体11が最下位置に配された状態で駆動回転体15に接触する(掛け止められる)部分から索状部材12の一側端部までの範囲を含む第1領域26と、第1領域26に連結された第2領域27を具備している。第1領域26の一側端部は索状部材12の一側端部に該当し、第1領域26の一側端部に扉体11が連結されている。第2領域27の一側端部は第1領域26の他側端部に連結され、第2領域27の他側端部は索状部材12の他側端部に該当し、第2領域27の他側端部が固定具24によって基礎体16の底部に固定されている。
【0015】
扉体11が最下位置及び最上位置の間で昇降するにあたって、駆動回転体15は、図1(A)、(B)に示すように、常に第1領域26を掛け止めた状態であり、従動回転体22は、扉体11の高さ位置により第1領域26を掛け止めた状態又は第2領域27を掛け止めた状態となる。従動回転体23は常に第2領域27を掛け止めた状態である。
ここで、索状部材12において、扉体11が最下位置に配された際に駆動回転体15に掛け止められた部分から一側端部までの範囲には、扉体11の荷重がかかるのに対し、索状部材12のそれ以外の範囲には扉体11の荷重がかからない。
【0016】
そこで、本実施の形態では、第1領域26が第2領域27に比べて最大許容張力が大きくなるように索状部材12を設計している。本実施の形態では、第2領域27の最大許容張力が第1領域26の最大許容張力の10%以上70%以下(好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下)である。一般的に、チェーンは最大許容張力が大きいものが小さいものに比べて、単位長さ当たりのコストが高くなることから、第1領域26及び第2領域27からなる索状部材12は、全てが第1領域26からなる索状部材に比べて入手コストや製造コストを抑えることができる。
【0017】
本実施の形態において、第1領域26は、図3(A)、(B)に示すように、略等ピッチで平行に配された円柱状のピン28、各ピン28に回転自在に取り付けられた円筒状のローラ29、30、及び、各ピン28を連結するリンクプレート31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42を具備している。各ピン28において、ローラ29、30は、それぞれの軸心をピン28の軸心に一致させて、間隔を空けて直列に配置されている。
【0018】
リンクプレート31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42にはそれぞれ2つの貫通孔が形成されている。連続して配された3つのピン28をそれぞれ、第1のピン28、第2のピン28及び第3のピン28とし、ローラ29がローラ30の左側に配されているとして、リンクプレート31、32、33、34はローラ29の左側に位置し、リンクプレート35、36、37、38はローラ29、30の間に位置し、リンクプレート39、40、41、42はローラ30の右側に位置している。
【0019】
リンクプレート31は、2つの貫通孔に第1のピン28の左側端部及び第2のピン28の左側端部がそれぞれ嵌入されて、第1のピン28及び第2のピン28に固定されている。
リンクプレート32はリンクプレート31、33の間に位置し、第2のピン28の左側端部及び第3のピン28の左側端部がリンクプレート32の2つの貫通孔をそれぞれ挿通している。リンクプレート34は、リンクプレート33とローラ29の間に位置し、2つの貫通孔に第2のピン28の左側端部及び第3のピン28の左側端部がそれぞれ挿通されている。
【0020】
リンクプレート36はリンクプレート37の左側に配され、リンクプレート36、37は共に2つの貫通孔に第1のピン28の中央領域及び第2のピン28の中央領域がそれぞれ挿通されている。リンクプレート35はリンクプレート36とローラ29の間に位置し、第2のピン28の中央領域及び第3のピン28の中央領域がリンクプレート35の2つの貫通孔をそれぞれ挿通している。リンクプレート38はリンクプレート37とローラ30の間に位置し、第2のピン28の中央領域及び第3のピン28の中央領域がリンクプレート38の2つの貫通孔をそれぞれ挿通している。
【0021】
リンクプレート42は、2つの貫通孔に第1のピン28の右側端部及び第2のピン28の右側端部がそれぞれ嵌入されて、第1のピン28及び第2のピン28に固定されている。リンクプレート40はリンクプレート42に対して第1のピン28の中央側及び第2のピン28の中央側にリンクプレート42から間隔を空けて配され、第1のピン28の右側端部及び第2のピン28の右側端部がリンクプレート40の2つの貫通孔をそれぞれ挿通している。
【0022】
リンクプレート41はリンクプレート40、42の間に位置し、第2のピン28の右側端部及び第3のピン28の右側端部がリンクプレート41の2つの貫通孔をそれぞれ挿通している。リンクプレート39は、リンクプレート40とローラ30の間に位置し、2つの貫通孔に第2のピン28の右側端部及び第3のピン28の右側端部がそれぞれ挿通されている。
【0023】
第1領域26は、図3(A)に示すように、駆動回転体15の歯20が隣り合って配された2つのローラ29の間に差し込まれ(係止され)、駆動回転体15の歯21が隣り合って配された2つのローラ30の間に差し込まれて、駆動回転体15に掛け止められた状態となり、従動回転体22の歯22aが隣り合って配された2つのローラ29の間に差し込まれ、従動回転体22の歯22bが隣り合って配された2つのローラ30の間に差し込まれて(係止されて)、従動回転体22に掛け止められた状態となる。
【0024】
第2領域27は、図3(A)、(B)に示すように、略等ピッチで平行に配された円柱状のピン44、各ピン44に回転自在に取り付けられた円筒状のローラ45、及び、各ピン44を連結するリンクプレート46、47、48、49を有している。ローラ45は軸心をピン44の軸心に一致させてピン44に取り付けられている。
リンクプレート46、47、48、49にはそれぞれ2つの貫通孔が形成されている。連続して配された3つのピン44をそれぞれ、第1のピン44、第2のピン44及び第3のピン44として、リンクプレート46、47はローラ45の左側に位置し、リンクプレート48、49はローラ45の右側に位置している。
【0025】
リンクプレート46は、2つの貫通孔に第1のピン44の左側端部及び第2のピン44の左側端部がそれぞれ挿通されている。リンクプレート47はリンクプレート46とローラ45の間に位置し、第2のピン44の左側端部及び第3のピン44の左側端部がリンクプレート47の2つの貫通孔をそれぞれ挿通している。リンクプレート49は、2つの貫通孔に第1のピン44の右側端部及び第2のピン44の右側端部がそれぞれ挿通されている。
【0026】
リンクプレート48はリンクプレート49とローラ45の間に位置し、第2のピン44の右側端部及び第3のピン44の右側端部がリンクプレート48の2つの貫通孔をそれぞれ挿通している。本実施の形態では、リンクプレート46、49が第1のピン44及び第2のピン44に固定されていないが、リンクプレート46、49が第1のピン44及び第2のピン44に固定されるように設計することもできる。
【0027】
第2領域27は、従動回転体22の歯22aが、隣り合って配された2つのローラ29の間に差し込まれ(係止され)、従動回転体22の歯22bが隣り合って配された2つのローラ30の間に差し込まれて、従動回転体22に掛け止められた状態となり、従動回転体23の歯23a及び23bが、図3(A)に示すように、隣り合って配された2つのローラ45の間に差し込まれて、従動回転体23に掛け止められた状態となる。
【0028】
第1領域26及び第2領域27の接続部、即ち、ローラ29、30が取り付けられたピン28及びローラ45が取り付けられたピン44が隣り合って配された部分は、ピン28の左側端部及びピン44の左側端部がリンクプレート31の2つの貫通孔にそれぞれ嵌入され、ピン28の右側端部及びピン44の右側端部がリンクプレート42の2つの貫通孔にそれぞれ嵌入されて、ピン28、44がリンクプレート31、42により連結されている。
【0029】
ここまで説明した索状部材12は、ピン28、44の長さが等しく、第1領域26の幅及び第2領域27の幅は等しい。また、第2領域27のローラ45が、第1領域26のローラ29、30のいずれよりも長く、第1領域26のローラ列の数は2で、第2領域27のローラ列の数は1である(即ち、第2領域27のローラ列の数は第1領域26のローラ列の数より少ない)。更に、駆動回転体15及び従動回転体22、23は全て、歯列の数が2であり、駆動回転体15及び従動回転体22、23は全て歯列の数が等しく、駆動回転体15及び従動回転体22、23は全て径が等しいが、これらに限定されない。
【0030】
例えば、駆動回転体の歯列の数及び従動回転体の歯列の数は等しいが、それぞれの歯列数が1であってもよいし、3以上であってもよい。従って、Nを自然数として、駆動回転体及び従動回転体は共に、歯列の数がNであり、第1領域では、索状部材(チェーン)の幅方向両側端部内(幅方向一側端部から他側端部までの間)に、駆動回転体のN個の歯が差し込まれ、第2領域では、索状部材の幅方向両側端部内に、従動回転体のN個の歯が差し込まれるような設計も可能である。
【0031】
駆動回転体の歯列の数が3以上のKである場合、当該駆動回転体が噛み合う索状部材の第1領域としてローラ列の数がKのチェーンを使用することとなる。
なお、駆動回転体の歯列数、従動回転体の歯列数、第1領域のローラ列数及び第2領域のローラ列数が全て1の場合、例えば、第1領域に用いるローラ、ピン及びリンクプレート等の各部材に熱処理がなされたものを採用し、第2領域に用いる各部材に熱処理がなされていないものを採用して、第1領域の最大許容張力が第2領域の最大許容張力より大きくなるようにすることができる。
【0032】
また、図4に示すように、索状部材12の第2領域52に、第1領域26のピン28とは長さが異なるピン51を有し、第1領域26とは幅が異なる第2領域52が接続された索状部材53を採用することもできる。以下、図4を参照して、変形例に係る索状部材53について説明する。なお、索状部材53において、索状部材12と同様の符号については同じ符号を付して詳細の説明は省略する。
【0033】
索状部材53は、図4に示すように、第2領域52にピン28より短いピン51が略等ピッチで配され、各ピン51にはピン51の軸心と軸心を一致させたローラ54が回転自在に装着されている。第2領域52の幅は第1領域26の幅より狭く、第2領域52のローラ54の列及び第1領域26のローラ30の列は、同列に配されるように設けられている。なお、ローラ54はローラ30より長いが、ローラ30と同じ長さのローラを具備するように第2領域を設計してもよい。
【0034】
連続して配された3つのピン51をそれぞれ、第1のピン51、第2のピン51及び第3のピン51として、ローラ54の左側には、第1のピン51の左側端部及び第2のピン51の左側端部がそれぞれ2つの貫通孔に嵌入されたリンクプレート55、並びに、リンクプレート55とローラ54の間に配され、第2のピン51の左側端部及び第3のピン51の左側端部がそれぞれ2つの貫通孔に挿通されたリンクプレート56が設けられている。
【0035】
ローラ54の右側には、第1のピン51の右側端部及び第2のピン51の右側端部がそれぞれ2つの貫通孔に嵌入されたリンクプレート57、並びに、リンクプレート57とローラ54の間に配され、第2のピン51の右側端部及び第3のピン51の右側端部がそれぞれ2つの貫通孔に挿通されたリンクプレート58が設けられている。
【0036】
第1領域26及び第2領域52の接続部、即ち、ローラ29、30が取り付けられたピン28及びローラ54が取り付けられたピン51a(ピン51aはピン28より短くピン51より長い)が隣り合って配された部分は、ピン28の左側端部及びピン51の左側端部が2箇所に略直角の折り曲げ部が形成された(Z曲げ)リンクプレート59の2つの貫通孔にそれぞれ嵌入され、ピン28の右側端部及びピン51の右側端部がリンクプレート42の2つの貫通孔にそれぞれ嵌入されて、ピン28、51がリンクプレート42、59により連結されている。
【0037】
第2領域52は、従動回転体22の歯22bが隣り合って配された2つのローラ54の間に差し込まれて、従動回転体22に掛け止められた状態となり、従動回転体23の歯23bが、図4に示すように、隣り合って配された2つのローラ54の間に差し込まれて、従動回転体23に掛け止められた状態となる(従動回転体22の歯22a及び従動回転体23の歯23aはいずれも、隣り合って配された2つのローラ54の間に差し込まれない)。
【0038】
ここで、M1、M2を自然数とし、M1>M2として、歯列の数がM1の駆動回転体及び歯列がM2の従動回転体を採用し、第1領域では、索状部材(チェーン)の幅方向両側端部内に、駆動回転体のM1個の歯が差し込まれ、第2領域では、索状部材の幅方向両側端部内に、従動回転体のM2個の歯が差し込まれるようにすることもできる。例えば、駆動回転体15の歯列の数が2であるのに対し、第2領域52のみを掛け止める状態にできる従動回転体に歯列の数が1つのものを採用できる。歯列の数が1の従動回転体61は、図5に示すように、歯60が隣り合って配された2つのローラ54の間に差し込まれることによって、第2領域52を掛け止めた状態となる。
【0039】
また、第1領域及び第2領域がそれぞれチェーン及びワイヤであり、駆動回転体がスプロケットであり、第2領域を案内する従動回転体は第2領域が掛けられるシーブにして、第1領域の最大許容張力が第2領域の最大許容張力より大きくなるようにしてもよいし、第1領域がワイヤからなり、第2領域が第1領域のワイヤより細いワイヤからなる索状部材を採用して、第1領域の最大許容張力が第2領域の最大許容張力より大きくなるようにすることもできる。第1領域がワイヤの場合、第1領域が掛けられた(巻き付けられた)ドラムを駆動回転体として採用できる。
【0040】
ここまで説明した水門開閉装置10は、索状部材12又は索状部材53の一側端部に扉体11が連結された装置であったが、これに限定されない。図6(A)、(B)を参照して、扉体11を吊った動滑車81が索状部材82に掛けられた水門開閉装置80について説明する。なお、水門開閉装置80において水門開閉装置10と同様の構成は同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0041】
本発明の第2の実施の形態に係る水門開閉装置80は、図6(A)、(B)に示すように、扉体11を吊った動滑車81が一側に掛けられた索状部材82、及び、モータ13の回転力を動力伝達機構14経由で与えられて回転駆動し、掛けられた索状部材82を巻き上げて扉体11を上昇させる駆動回転体15を有する装置である。索状部材82は、チェーン及びワイヤのいずれか一方又は双方からなり、一端部が固定具85を用いて基礎体16に固定されている。
【0042】
索状部材82は、扉体11が最下位置に配された状態で駆動回転体15に接触する部分から動滑車81が掛けられた箇所を超え一側端部までの範囲を含む第1領域83と、第1領域83に連結され、第1領域83に比べて最大許容張力が小さい第2領域84とを有する。
索状部材82としてチェーンを用いる場合、第2領域84のローラ列を第1領域83のローラ列より少なくすることができ、その際、第2領域84の各ローラを第1領域83の各ローラより長くすることにより、第1領域83の幅及び第2領域84の幅を等しくすることができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、索状部材として、他側端部にカウンターウエイトが連結されたものや、他側端部が索状部材を収容する機構に連結されたものを採用可能である。
【0044】
また、索状部材の第1領域は従動回転体に掛け止められた状態にならなくてもよいし、駆動回転体及び従動回転体の径は等しくなくてもよい。
複数の駆動回転体が設けられていてもよく、その場合、索状部材は、索状部材の長手方向において扉体までの距離が最も短い駆動回転体に接触する部分から一側端部までの範囲を第1領域が含んでいる必要がある。
更に、索状部材は第1領域及び第2領域以外の領域を有していてもよい。例えば、第1領域の他側端部に一側端部が連結された第2領域の他側端部に最大許容張力が第1領域と同じ領域を設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:水門開閉装置、11:扉体、12:索状部材、13:モータ、14:動力伝達機構、15:駆動回転体、16:基礎体、17:筺体、18:回転軸、19:手動ハンドル、20、21:歯、22:従動回転体、22a、22b:歯、23:従動回転体、23a、23b:歯、24:固定具、26:第1領域、27:第2領域、28:ピン、29、30:ローラ、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42:リンクプレート、44:ピン、45:ローラ、46、47、48、49:リンクプレート、51、51a:ピン、52:第2領域、53:索状部材、54:ローラ、55、56、57、58、59:リンクプレート、60:歯、61:従動回転体、80:水門開閉装置、81:動滑車、82:索状部材、83:第1領域、84:第2領域、85:固定具、R:川
図1
図2
図3
図4
図5
図6