(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098314
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】溶接システム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20240716BHJP
B23K 9/028 20060101ALI20240716BHJP
B23K 37/02 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B23K9/12 350A
B23K9/12 331B
B23K9/028 D
B23K37/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001748
(22)【出願日】2023-01-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】302040135
【氏名又は名称】日鉄溶接工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】片山 翼
(72)【発明者】
【氏名】三木 聡史
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】田代 裕一朗
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慎司
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081AA01
4E081BA02
4E081BB04
4E081DA05
4E081EA17
4E081EA24
4E081EA32
4E081FA14
(57)【要約】
【課題】鋼管の溶接部の全長に亘って一定の溶接品質を維持することができる溶接システムを提供する。
【解決手段】溶接ロボット1を制御する溶接システムであって、制御部は、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2と、開始位置Pc2と鋼管8の曲線部8aの終了位置Pc3との中間位置である鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第1トーチ離間速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御し、第1トーチ離間速度は、溶接トーチ13の先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなることを特徴とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管に沿って配置されたレールであって直線部及び曲線部を有するレール上を所定方向に移動しつつ前記鋼管の直線部及び曲線部を溶接する溶接ロボット、を制御する溶接システムであって、
前記溶接ロボットが有する溶接トーチと、
前記溶接トーチの狙い位置を変更する狙い位置変更部と、
前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心が、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲線部の曲率中心及び曲率半径と、前記レールの曲線部の曲率中心及び曲率半径と前記溶接ロボットの溶接速度及び位置と、に応じ、前記狙い位置変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と、前記開始位置と前記鋼管の曲線部の終了位置との中間位置である鋼管中間位置と、の間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管から離れる方向に第1トーチ離間速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、
前記第1トーチ離間速度は、前記溶接トーチの先端が前記鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなる、
ことを特徴とする溶接システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記鋼管の直線部と前記開始位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管から離れる方向に第2トーチ離間速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、
前記第2トーチ離間速度は、前記溶接トーチの先端が前記開始位置に近づくに連れ、大きくなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記鋼管の直線部と前記開始位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管から離れる方向に第1トーチ離間加速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、
前記制御部は、前記開始位置の近傍を前記溶接トーチが移動する際、前記溶接トーチが前記鋼管から離れる方向に第2トーチ離間加速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、
前記第2トーチ離間加速度は、前記第1トーチ離間加速度より大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記溶接ロボットの移動速度を変更する速度変更部、
を更に備え、
前記制御部は、前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心が、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲線部の曲率中心及び曲率半径と、前記レールの曲線部の曲率中心及び曲率半径と前記溶接ロボットの溶接速度及び位置と、に応じ、前記速度変更部を制御し、
前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と、前記鋼管中間位置と、の間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、
前記第1ロボット速度は、前記溶接トーチの先端が前記鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなる、
ことを特徴とする請求項3に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記開始位置と前記鋼管中間位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット減速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、
前記制御部は、前記溶接トーチの先端が前記開始位置に略到達する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット加速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、
前記第1ロボット加速度の絶対値は、前記第1ロボット減速度の絶対値より、大きい、
ことを特徴とする請求項4に記載の溶接システム。
【請求項6】
前記溶接システムは、前記溶接トーチの向きを変更するトーチ向き変更部を更に備え、
前記制御部は、前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心が前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記トーチ向き変更部を制御し、
前記制御部は、前記開始位置と前記鋼管中間位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記所定方向への前記溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて小さくなるよう、前記トーチ向き変更部を制御し、
前記制御部は、前記鋼管中間位置と前記鋼管の曲線部の終了位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記所定方向と反対方向への前記溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて大きくなるよう、前記トーチ向き変更部を制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載の溶接システム。
【請求項7】
鋼管に沿って配置されたレールであって直線部及び曲線部を有するレール上を所定方向に移動しつつ前記鋼管の直線部及び曲線部を溶接する溶接ロボット、を制御する溶接システムであって、
前記溶接ロボットが有する溶接トーチと、
前記溶接トーチの狙い位置を変更する狙い位置変更部と、
前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心が、前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲線部の曲率中心及び曲率半径と、前記レールの曲線部の曲率中心及び曲率半径と前記溶接ロボットの溶接速度及び位置と、に応じ、前記狙い位置変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記レールの曲線部の開始位置と、前記レールの曲線部の開始位置と前記レールの曲線部の終了位置との中間位置であるレール中間位置と、の間を前記溶接ロボットが移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管に近づく方向に第1トーチ接近速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、
前記第1トーチ接近速度は、前記溶接ロボットが前記レール中間位置に近づくに連れ、大きくなる、
ことを特徴とする溶接システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と、前記鋼管の曲線部の開始位置と前記鋼管の曲線部の終了位置との中間位置である鋼管中間位置と、の間を前記溶接トーチの先端が移動し且つ前記溶接ロボットが前記レールの直線部を移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管に近づく方向に第2トーチ接近速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、
前記第2トーチ接近速度は、前記溶接ロボットが前記レールの曲線部の開始位置に近づくに連れ、大きくなる、
ことを特徴とする請求項7に記載の溶接システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と、前記鋼管の曲線部の開始位置と前記鋼管の曲線部の終了位置との中間位置である鋼管中間位置と、の間を前記溶接トーチの先端が移動し且つ前記溶接ロボットが前記レールの直線部を移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管に近づく方向に第1トーチ接近加速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、
前記制御部は、前記レールの曲線部の開始位置の近傍を前記溶接ロボットが移動する際、前記溶接トーチが前記鋼管に近づく方向に第1トーチ接近減速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、
前記第1トーチ接近減速度の絶対値は、前記第1トーチ接近加速度の絶対値よりも大きい、
ことを特徴とする請求項8に記載の溶接システム。
【請求項10】
前記溶接ロボットの移動速度を変更する速度変更部、
を更に備え、
前記制御部は、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心が、前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲線部の曲率中心及び曲率半径と、前記レールの曲線部の曲率中心及び曲率半径と前記溶接ロボットの溶接速度及び位置と、に応じ、前記速度変更部を制御し、
前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と、前記鋼管中間位置と、の間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、
前記第1ロボット速度は、前記溶接トーチの先端が前記鋼管中間位置に近づくに連れ、大きくなる、
ことを特徴とする、
請求項9に記載の溶接システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と前記鋼管中間位置との間を前記溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットが前記レールの曲線部を移動する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット加速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、
前記制御部は、前記溶接ロボットが前記レールの曲線部の開始位置に略到達する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット減速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、
前記第1ロボット減速度の絶対値は、前記第1ロボット加速度の絶対値より、大きい、
ことを特徴とする請求項10に記載の溶接システム。
【請求項12】
前記溶接システムは、前記溶接トーチの向きを変更するトーチ向き変更部を更に備え、
前記制御部は、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心が前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記トーチ向き変更部を制御し、
前記制御部は、前記開始位置と前記鋼管中間位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記所定方向と反対方向への前記溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて小さくなるよう、前記トーチ向き変更部を制御し、
前記制御部は、前記鋼管中間位置と前記鋼管の曲線部の終了位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記所定方向への前記溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて大きくなるよう、前記トーチ向き変更部を制御する、
ことを特徴とする請求項11に記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高層ビルなどの大型建築物には、角形の鋼管を溶接により継ぎ足して形成された鋼管柱が用いられている。特許文献1では、鋼管の溶接を、鋼管に取付けられたガイドレールに沿って走行する溶接ロボットによって行う際、溶接トーチの位置を判定し、判定された溶接トーチの位置における溶接トーチの角度を算出し、算出された溶接トーチの角度に基づき溶接トーチの角度を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接部の全長に亘って一定の溶接品質を維持するためには、溶接部のいずれの部位においても溶接条件を一定とすることが好ましい。角形の鋼管を溶接する際は、特に鋼管の角部にある曲線部において、溶接条件を鋼管の直線部と同じにすることが好ましい。
多くの場合、鋼管の曲線部の曲率中心と、ガイドレールの曲線部の曲率中心とは異なる。この場合、曲線部における、鋼管とガイドレールとの間の距離が周方向に一定とはならない。このため、溶接ロボットによって溶接トーチの位置及び角度を適宜制御することで、鋼管の曲線部の溶接条件を鋼管の直線部と同じにすることが好ましい。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、鋼管の溶接部の全長に亘って一定の溶接品質を維持することができる溶接システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係る溶接システムは、鋼管に沿って配置されたレールであって直線部及び曲線部を有するレール上を所定方向に移動しつつ前記鋼管の直線部及び曲線部を溶接する溶接ロボット、を制御する溶接システムであって、前記溶接ロボットが有する溶接トーチと、前記溶接トーチの狙い位置を変更する狙い位置変更部と、前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心が、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲線部の曲率中心及び曲率半径と、前記レールの曲線部の曲率中心及び曲率半径と前記溶接ロボットの溶接速度及び位置と、に応じ、前記狙い位置変更部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と、前記開始位置と前記鋼管の曲線部の終了位置との中間位置である鋼管中間位置と、の間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管から離れる方向に第1トーチ離間速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、前記第1トーチ離間速度は、前記溶接トーチの先端が前記鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、制御部は、鋼管の曲線部の開始位置と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチの先端が移動する際に、溶接トーチが鋼管から離れる方向に第1トーチ離間速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、レール曲率中心が、鋼管曲率中心よりも鋼管の中心側に位置する場合に、溶接トーチの先端が鋼管に過度に接近することを抑えることができる。
【0008】
ここで、レール曲率中心が、鋼管曲率中心よりも鋼管の中心側に位置する場合、レールと鋼管との距離は、レールの直線部と鋼管の直線部との間において最も遠く、レールの曲線部の中間位置であるレール中間位置と鋼管中間位置との間において最も近くなる。これに対し、第1トーチ離間速度は、溶接トーチの先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなる。これにより、溶接トーチの先端と鋼管との距離の調整を円滑に行うことができる。したがって、溶接トーチによる鋼管の溶接の品質を担保しやすくすることができる。よって、鋼管の溶接部の全長に亘って一定の溶接品質を維持することができる。
【0009】
<2>本発明の態様2に係る溶接システムは、態様1に係る溶接システムにおいて、前記制御部は、前記鋼管の直線部と前記開始位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管から離れる方向に第2トーチ離間速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、前記第2トーチ離間速度は、前記溶接トーチの先端が前記開始位置に近づくに連れ、大きくなることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、制御部は、鋼管の直線部と鋼管の曲線部の開始位置との間を溶接トーチの先端が移動する際に、溶接トーチが鋼管から離れる方向に第2トーチ離間速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、溶接トーチの先端が鋼管に過度に接近することを抑えることができる。
【0011】
ここで、レール曲率中心が、鋼管曲率中心よりも鋼管の中心側に位置する場合、溶接トーチの先端が鋼管の直線部にある状態で、溶接ロボットがレールの曲線部に位置することがある。すると、溶接ロボットが曲線部を移動するに連れて、溶接トーチの先端が鋼管に接近する速度が加速度的に増加する。これに対し、第2トーチ離間速度は、溶接トーチの先端が開始位置に近づくに連れ、大きくなる。これにより、鋼管の直線部と開始位置との間を溶接トーチの先端が移動する際に、溶接トーチの先端と鋼管との距離の調整を円滑に行うことができる。
【0012】
<3>本発明の態様3に係る溶接システムは、態様1又は態様2に係る溶接システムにおいて、前記制御部は、前記鋼管の直線部と前記開始位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管から離れる方向に第1トーチ離間加速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、前記制御部は、前記開始位置の近傍を前記溶接トーチが移動する際、前記溶接トーチが前記鋼管から離れる方向に第2トーチ離間加速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、前記第2トーチ離間加速度は、前記第1トーチ離間加速度より大きいことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、制御部は、鋼管の直線部と鋼管の曲線部の開始位置との間を溶接トーチの先端が移動する際、溶接トーチが鋼管から離れる方向に第1トーチ離間加速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、溶接トーチが鋼管から離れる速度を、溶接トーチの先端が開始位置に近づくに連れて大きくすることができる。よって、溶接トーチの先端と鋼管との距離の調整を円滑に行うことができる。
【0014】
ここで、レール曲率中心が、鋼管曲率中心よりも鋼管の中心側に位置する場合、溶接トーチの先端が鋼管の曲線部に位置した際の溶接トーチの先端が鋼管に近づく速度は、溶接トーチの先端が鋼管の直線部と鋼管の曲線部の開始位置との間に位置した際の溶接トーチの先端が鋼管に近づく速度よりも大きい。これに対し、制御部は、開始位置の近傍を溶接トーチが移動する際、溶接トーチが鋼管から離れる方向に第2トーチ離間加速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御し、第2トーチ離間加速度は、第1トーチ離間加速度より大きい。これにより、溶接トーチの先端が曲線部に位置した際の、溶接トーチの先端が鋼管に近づく速度に対応することができる。
【0015】
<4>本発明の態様4に係る溶接システムは、態様1から態様3のいずれか1つに係る溶接システムにおいて、前記溶接ロボットの移動速度を変更する速度変更部、を更に備え、前記制御部は、前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心が、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲線部の曲率中心及び曲率半径と、前記レールの曲線部の曲率中心及び曲率半径と前記溶接ロボットの溶接速度及び位置と、に応じ、前記速度変更部を制御し、前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と、前記鋼管中間位置と、の間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、前記第1ロボット速度は、前記溶接トーチの先端が前記鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなることを特徴とする。
【0016】
ここで、レールの曲線部の長さは、鋼管の曲線部の長さよりも長い。このため、溶接トーチの先端が鋼管の曲線部を進む速度を、鋼管の直線部を進む速度と同じにするためには、溶接ロボットがレールの曲線部を進む速度を、溶接ロボットがレールの直線部を進む速度よりも速くする必要がある。これに対し、制御部は、鋼管の曲線部の開始位置と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチの先端が移動する際に、溶接ロボットが第1ロボット速度で移動するよう、速度変更部を制御する。これにより、溶接トーチが鋼管の曲線部を進む速度を、鋼管の直線部を進む速度と同じにすることができる。
【0017】
また、鋼管の曲線部を溶接する際、溶接トーチの向きと鋼管の曲線部の法線方向とが一致するように、溶接トーチの向きを変更する場合がある。これに対し、第1ロボット速度は、溶接トーチの先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなる。これにより、レール曲率中心が、鋼管曲率中心よりも鋼管の中心側に位置する場合に、鋼管の曲線部を溶接する際に溶接トーチの向きを変更する場合であっても、溶接トーチの先端の速度を一定にすることができる。よって、鋼管の溶接の品質を担保しやすくすることができる。
【0018】
<5>本発明の態様5に係る溶接システムは、態様4に係る溶接システムにおいて、前記制御部は、前記開始位置と前記鋼管中間位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット減速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、前記制御部は、前記溶接トーチの先端が前記開始位置に略到達する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット加速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、前記第1ロボット加速度の絶対値は、前記第1ロボット減速度の絶対値より、大きいことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、制御部は、鋼管の曲線部の開始位置と鋼管中間位置との間を溶接トーチの先端が移動する際に、溶接ロボットが第1ロボット減速度で移動するよう、速度変更部を制御する。これにより、鋼管の曲線部の開始位置と鋼管中間位置との間を溶接トーチの先端が移動する際に、溶接ロボットがレールを進む速度を、溶接トーチの先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくすることができる。これにより、溶接トーチの先端の速度を一定にすることができる。よって、鋼管の溶接の品質を担保しやすくすることができる。
【0020】
ここで、上述のように、溶接トーチの先端が鋼管の曲線部を進む速度を、鋼管の直線部を進む速度と同じにするためには、溶接ロボットがレールの曲線部を進む速度を、溶接ロボットがレールの直線部を進む速度よりも速くする必要がある。更に、溶接トーチの先端が鋼管の曲線部の開始位置に到達した直後から溶接ロボットを加速する必要がある。これに対し、制御部は、溶接トーチの先端が鋼管の曲線部の開始位置に略到達する際に、溶接ロボットが第1ロボット加速度で移動するよう、速度変更部を制御し、第1ロボット加速度の絶対値は、第1ロボット減速度の絶対値より、大きい。これにより、溶接トーチの先端が曲線部を移動する際の溶接ロボットの移動速度を適当なものにすることができる。
【0021】
<6>本発明の態様6に係る溶接システムは、態様1から態様5のいずれか1つに係る溶接システムにおいて、前記溶接システムは、前記溶接トーチの向きを変更するトーチ向き変更部を更に備え、前記制御部は、前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心が前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記トーチ向き変更部を制御し、前記制御部は、前記開始位置と前記鋼管中間位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記所定方向への前記溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて小さくなるよう、前記トーチ向き変更部を制御し、前記制御部は、前記鋼管中間位置と前記鋼管の曲線部の終了位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記所定方向と反対方向への前記溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて大きくなるよう、前記トーチ向き変更部を制御することを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、制御部は、開始位置と鋼管中間位置との間を溶接トーチの先端が移動する際に、所定方向への溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて小さくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。また、制御部は、鋼管中間位置と鋼管の曲線部の終了位置との間を溶接トーチの先端が移動する際に、所定方向と反対方向への溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて大きくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。これにより、鋼管の曲線部を溶接する際、溶接トーチの向きと鋼管の曲線部の法線方向とが一致するように、溶接トーチの向きを変更することができる。
【0023】
<7>本発明の態様7に係る溶接システムは、鋼管に沿って配置されたレールであって直線部及び曲線部を有するレール上を所定方向に移動しつつ前記鋼管の直線部及び曲線部を溶接する溶接ロボット、を制御する溶接システムであって、前記溶接ロボットが有する溶接トーチと、前記溶接トーチの狙い位置を変更する狙い位置変更部と、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心が、前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲線部の曲率中心及び曲率半径と、前記レールの曲線部の曲率中心及び曲率半径と前記溶接ロボットの溶接速度及び位置と、に応じ、前記狙い位置変更部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記レールの曲線部の開始位置と、前記レールの曲線部の開始位置と前記レールの曲線部の終了位置との中間位置であるレール中間位置と、の間を前記溶接ロボットが移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管に近づく方向に第1トーチ接近速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、前記第1トーチ接近速度は、前記溶接ロボットが前記レール中間位置に近づくに連れ、大きくなることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、制御部は、レールの曲線部の開始位置と、レール中間位置と、の間を溶接ロボットが移動する際に、溶接トーチが鋼管に近づく方向に第1トーチ接近速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、鋼管曲率中心が、レール曲率中心よりも鋼管の中心側に位置する場合に、溶接トーチの先端が鋼管から離れることを抑えることができる。
【0025】
ここで、鋼管曲率中心が、レール曲率中心よりも鋼管の中心側に位置する場合、レールと鋼管との距離は、レールの直線部と鋼管の直線部との間において最も近く、レールの曲線部の中間位置であるレール中間位置と鋼管中間位置との間において最も遠くなる。これに対し、第1トーチ接近速度は、溶接ロボットがレール中間位置に近づくに連れ、大きくなる。これにより、溶接トーチの先端と鋼管との距離の調整を円滑に行うことができる。したがって、溶接トーチによる鋼管の溶接の品質を担保しやすくすることができる。よって、鋼管の溶接部の全長に亘って一定の溶接品質を維持することができる。
【0026】
<8>本発明の態様8に係る溶接システムは、態様7に係る溶接システムにおいて、前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と、前記鋼管の曲線部の開始位置と前記鋼管の曲線部の終了位置との中間位置である鋼管中間位置と、の間を前記溶接トーチの先端が移動し且つ前記溶接ロボットが前記レールの直線部を移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管に近づく方向に第2トーチ接近速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、
前記第2トーチ接近速度は、前記溶接ロボットが前記レールの曲線部の開始位置に近づくに連れ、大きくなることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、制御部は、鋼管の曲線部の開始位置と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの直線部を移動する際に、溶接トーチが鋼管に近づく方向に第2トーチ接近速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、溶接トーチの先端が鋼管から離れることを抑えることができる。
【0028】
ここで、鋼管曲率中心が、レール曲率中心よりも鋼管の中心側に位置する場合、鋼管の曲線部の開始位置と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの直線部を移動する際、溶接ロボットが直線部を移動するに連れて、溶接トーチの先端が鋼管から離れる速度が加速度的に増加する。これに対し、第2トーチ接近速度は、溶接ロボットがレールの曲線部の開始位置に近づくに連れ、大きくなる。これにより、鋼管の曲線部の開始位置と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチの先端が移動する際に、溶接トーチの先端と鋼管との距離の調整を円滑に行うことができる。
【0029】
<9>本発明の態様9に係る溶接システムは、態様7又は態様8のいずれか1つに係る溶接システムにおいて、前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と、前記鋼管の曲線部の開始位置と前記鋼管の曲線部の終了位置との中間位置である鋼管中間位置と、の間を前記溶接トーチの先端が移動し且つ前記溶接ロボットが前記レールの直線部を移動する際に、前記溶接トーチが前記鋼管に近づく方向に第1トーチ接近加速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、前記制御部は、前記レールの曲線部の開始位置の近傍を前記溶接ロボットが移動する際、前記溶接トーチが前記鋼管に近づく方向に第1トーチ接近減速度で移動するよう、前記狙い位置変更部を制御し、前記第1トーチ接近減速度の絶対値は、前記第1トーチ接近加速度の絶対値よりも大きいことを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、制御部は、鋼管の曲線部の開始位置と、鋼管の曲線部の開始位置と鋼管の曲線部の終了位置との中間位置である鋼管中間位置と、の間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの直線部を移動する際に、溶接トーチが鋼管に近づく方向に第1トーチ接近加速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、溶接トーチが鋼管に近づく速度を、溶接ロボットがレールの曲線部の開始位置に近づくに連れて大きくすることができる。よって、溶接トーチの先端と鋼管との距離の調整を円滑に行うことができる。
【0031】
ここで、鋼管曲率中心が、レール曲率中心よりも鋼管の中心側に位置する場合、鋼管の曲線部の開始位置と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの曲線部を移動する際の、溶接トーチの先端が鋼管から離れる速度は、鋼管の曲線部の開始位置と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの直線部を移動する際の、溶接トーチの先端が鋼管から離れる速度よりも小さい。これに対し、制御部は、レールの曲線部の開始位置の近傍を溶接ロボットが移動する際、溶接トーチが鋼管に近づく方向に第1トーチ接近減速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御し、第1トーチ接近減速度の絶対値は、第1トーチ接近加速度の絶対値よりも大きい。これにより、鋼管の曲線部の開始位置と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの曲線部を移動する際の、溶接トーチの先端が鋼管から離れる速度に対応することができる。
【0032】
<10>本発明の態様10に係る溶接システムは、態様8又は態様9のいずれか1つに係る溶接システムにおいて、前記溶接ロボットの移動速度を変更する速度変更部、を更に備え、前記制御部は、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心が、前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記鋼管の曲線部の曲率中心及び曲率半径と、前記レールの曲線部の曲率中心及び曲率半径と前記溶接ロボットの溶接速度及び位置と、に応じ、前記速度変更部を制御し、前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と、前記鋼管中間位置と、の間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、前記第1ロボット速度は、前記溶接トーチの先端が前記鋼管中間位置に近づくに連れ、大きくなることを特徴とする。
【0033】
ここで、レールの曲線部の長さは、鋼管の曲線部の長さよりも長い。このため、溶接トーチが鋼管の曲線部を進む速度を、鋼管の直線部を進む速度と同じにするためには、溶接ロボットがレールの曲線部を進む速度を、溶接ロボットがレールの直線部を進む速度よりも速くする必要がある。これに対し、制御部は、鋼管の曲線部の開始位置と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチの先端が移動する際に、溶接ロボットが第1ロボット速度で移動するよう、速度変更部を制御する。これにより、溶接トーチが鋼管の曲線部を進む速度を、鋼管の直線部を進む速度と同じにするように制御することができる。
【0034】
また、鋼管の曲線部を溶接する際、溶接トーチの向きと鋼管の曲線部の法線方向とが一致するように、溶接トーチの向きを変更する場合がある。これに対し、第1ロボット速度は、溶接トーチの先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、大きくなる。これにより、鋼管曲率中心が、レール曲率中心よりも鋼管の中心側に位置する場合に、鋼管の曲線部を溶接する際に溶接トーチの向きを変更する場合であっても、溶接トーチの先端の速度を一定にすることができる。よって、鋼管の溶接の品質を担保しやすくすることができる。
【0035】
<11>本発明の態様11に係る溶接システムは、態様10に係る溶接システムにおいて、前記制御部は、前記鋼管の曲線部の開始位置と前記鋼管中間位置との間を前記溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットが前記レールの曲線部を移動する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット加速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、前記制御部は、前記溶接ロボットが前記レールの曲線部の開始位置に略到達する際に、前記溶接ロボットが第1ロボット減速度で移動するよう、前記速度変更部を制御し、前記第1ロボット減速度の絶対値は、前記第1ロボット加速度の絶対値より、大きいことを特徴とする。
【0036】
この発明によれば、制御部は、鋼管の曲線部の開始位置と鋼管中間位置との間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの曲線部を移動する際に、溶接ロボットが第1ロボット加速度で移動するよう、速度変更部を制御する。これにより、鋼管の曲線部の開始位置と鋼管中間位置との間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの曲線部を移動する際に、溶接ロボットがレールを進む速度を、溶接トーチの先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、大きくすることができる。これにより、溶接トーチの先端の速度を一定にすることができる。よって、鋼管の溶接の品質を担保しやすくすることができる。
【0037】
ここで、鋼管の曲線部の開始位置と鋼管中間位置との間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの曲線部を移動する際の、溶接ロボットの移動速度は、鋼管の曲線部の開始位置と鋼管中間位置との間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの直線部を移動する際の、溶接ロボットの移動速度よりも遅い。このため、溶接ロボットがレールの曲線部の開始位置に到達した直後から溶接ロボットを減速する必要がある。これに対し、制御部は、溶接ロボットがレールの曲線部の開始位置に略到達する際に、溶接ロボットが第1ロボット減速度で移動するよう、速度変更部を制御し、第1ロボット減速度の絶対値は、第1ロボット加速度の絶対値より、大きい。これにより、鋼管の曲線部の開始位置と鋼管中間位置との間を溶接トーチの先端が移動し且つ溶接ロボットがレールの曲線部を移動する際の溶接ロボットの移動速度を適当なものにすることができる。
【0038】
<12>本発明の態様12に係る溶接システムは、態様8から態様11のいずれか1つに係る溶接システムにおいて、前記溶接システムは、前記溶接トーチの向きを変更するトーチ向き変更部を更に備え、前記制御部は、前記鋼管の曲線部の曲率中心である鋼管曲率中心が前記レールの曲線部の曲率中心であるレール曲率中心よりも前記鋼管の中心側に位置する場合に、前記トーチ向き変更部を制御し、前記制御部は、前記開始位置と前記鋼管中間位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記所定方向と反対方向への前記溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて小さくなるよう、前記トーチ向き変更部を制御し、前記制御部は、前記鋼管中間位置と前記鋼管の曲線部の終了位置との間を前記溶接トーチの先端が移動する際に、前記所定方向への前記溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて大きくなるよう、前記トーチ向き変更部を制御することを特徴とする。
【0039】
この発明によれば、制御部は、開始位置と鋼管中間位置との間を溶接トーチの先端が移動する際に、所定方向と反対方向への溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて小さくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。また、制御部は、鋼管中間位置と鋼管の曲線部の終了位置との間を溶接トーチの先端が移動する際に、所定方向への溶接トーチの傾斜が当該移動するに連れて大きくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。これにより、鋼管の曲線部を溶接する際、溶接トーチの向きと鋼管の曲線部の法線方向とが一致するように、溶接トーチの向きを変更することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、鋼管の溶接部の全長に亘って一定の溶接品質を維持することができる溶接システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】第1実施形態に係る溶接システムを示す全体図である。
【
図2】第1実施形態に係る溶接システムの概要を説明するブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る溶接ロボットを示す図で、(a)は側面図、(b)は(a)のリンク図である。
【
図4】第1実施形態に係る溶接ロボットの背面図である。
【
図5】(a)は、第1実施形態に係る溶接ロボットの第1回動部を示す側面図であり、(b)は、溶接ロボットの第2回動部を示す平面図である。
【
図6】第1実施形態に係る溶接ロボットの側面図である。
【
図7】第1実施形態における鋼管及びガイドレールを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のリンク図である。
【
図8】第1実施形態における曲線部の溶接を説明するための図である。
【
図9】第1実施形態に係るシステム制御装置のシステムブロック図である。
【
図10】第1実施形態に係るシステム制御装置の制御部のシステムブロック図である。
【
図11】第1実施形態におけるシステム制御装置が実行する曲線部の溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】第1実施形態に係るエリア1~4における、溶接ロボットが左右方向に移動する速度の変化を表すグラフである。
【
図13】第1実施形態に係るエリア1~4における、溶接ロボットが前後方向に移動する速度の変化を表すグラフである。
【
図14】第1実施形態に係るエリア1~4における、溶接トーチの第1軸線回り及び第2軸線回りの移動量の変化を表すグラフである。
【
図15】第2実施形態における曲線部の溶接を説明するための図である。
【
図16】第2実施形態におけるシステム制御装置が実行する曲線部の溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図17】第2実施形態に係るエリア5~8における、溶接ロボットが左右方向に移動する速度の変化を表すグラフである。
【
図18】第2実施形態に係るエリア5~8における、溶接ロボットが前後方向に移動する速度の変化を表すグラフである。
【
図19】第2実施形態に係るエリア5~8における、溶接トーチの第1軸線回り及び第2軸線回りの移動量の変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る溶接システム100を説明する。
図1に示されるように、溶接システム100は、鉛直方向に並べて配置された鋼管8の端部同士を溶接するために用いられる。
鋼管8は、角部に配置される4つの円弧状の曲線部8aと、曲線部8a同士をそれぞれ接続する(曲線部8a同士を切れることなく続ける)4つの直線部8bとを有する角形鋼管である。鋼管8の軸線は、鉛直方向に延びる。初期状態では、鋼管8は、建方治具9により仮止めされている。建方治具9は、鋼管8の直線部8bに取り付けられている。
【0043】
〔溶接システムの概要〕
まず、
図1及び
図2を参照して、溶接システム100の概要を説明する。溶接システム100は、溶接ロボット1を制御する。溶接システム100は、溶接ロボット1と、ガイドレール2(レール)と、撮影装置3と、溶接電源4と、ワイヤ送給装置5と、システム制御装置6と、を備える。
【0044】
溶接ロボット1は、ガイドレール2上を所定方向に移動しつつ鋼管8の直線部8b及び曲線部8aを溶接する。溶接ロボット1は、複数のモータ32と、溶接トーチ13と、溶接トーチ13の狙い位置を変更する狙い位置変更部と、溶接トーチ13の向きを変更するトーチ向き変更部と、溶接ロボットの移動速度を変更する速度変更部と、を備える。また、溶接ロボット1は、システム制御装置6と通信可能に接続されている。溶接ロボット1は、システム制御装置6による制御を受け取る不図示の中継盤を備える。
モータ32は、システム制御装置6による制御を受けて、溶接ロボット1を駆動させるモータである。モータ32は、溶接ロボット1をガイドレール2に沿って移動させるサーボモータ(速度変更部、ロボット位置変更部)を含む。
【0045】
溶接トーチ13は、鋼管8の端部同士の溶接に用いられる。溶接トーチ13による溶接は、例えばアーク溶接によって行われる。溶接トーチ13内には、溶接ワイヤが配置されている。
【0046】
ガイドレール2は、鋼管8に沿って配置される。ガイドレール2は、鋼管8の周方向に環状に、鋼管8を囲むように配置される。ガイドレール2は、角部に配置される4つの円弧状の曲線部2aと、曲線部2a同士をそれぞれ接続する4つの直線部2bとを有する。
溶接ロボット1は、ガイドレール2に沿って移動可能である。
【0047】
撮影装置3は、溶接ロボット1に取り付けられる。撮影装置3は、溶接前のセンシング処理において鋼管8の溶接部位を撮影する。また、撮影装置3は、溶接処理において溶接ロボット1による溶接の様子を撮影する。撮影装置3は、例えばカメラである。撮影装置3はシステム制御装置6と通信可能に接続されており、撮影装置3が取得した画像又は動画(以下、撮影結果と言う)はシステム制御装置6に送信される。
【0048】
溶接電源4は、ワイヤ送給装置5へ電力を供給する。ワイヤ送給装置5は、溶接トーチ13へ溶接ワイヤを供給する。溶接トーチ13は、溶接トーチ用ケーブルを介して、ワイヤ送給装置5と接続される。ワイヤ送給装置5は、溶接トーチ13へ電力を供給する。
【0049】
システム制御装置6は、溶接システム100の動作を制御する。システム制御装置6は、具体的には、溶接ロボット1、溶接電源4及びワイヤ送給装置5の動作を制御する。
溶接ロボット1は、制御ケーブルを介して、システム制御装置6と接続される。制御ケーブルは、システム制御装置6が送信した信号であって溶接ロボット1を制御する制御信号を溶接ロボット1に伝送する。
【0050】
〔溶接ロボットの構成〕
次に、
図3~5を参照して、溶接ロボット1の構成を説明する。
図3(a)は、溶接ロボット1の側面図である。
図3(b)は、
図3(a)のリンク図である。
図4は、溶接ロボット1の背面図である。
図5(a)は、溶接ロボット1の後述する第1回動部35を示す側面図である。
図5(b)は、溶接ロボット1の後述する第2回動部36を示す平面図である。
なお、以下、鉛直方向に沿った方向を、溶接ロボット1の上下方向xと称する。溶接ロボット1がガイドレール2に沿って移動する方向を、溶接ロボット1の左右方向yと称する。溶接ロボット1の上下方向x及び左右方向yに直交する方向を、溶接ロボット1の前後方向zと称する。
【0051】
溶接ロボット1は、本体部11と、溶接トーチ13と、支持部14と、を備える。
本体部11は、溶接ロボット1の基台である。本体部11は、モータ32を備える。本体部11は、ガイドレール2に取り付けられる車輪部12を備える。溶接ロボット1は、車輪部12がガイドレール2の上を摺動することで、ガイドレール2に沿って移動する。
【0052】
支持部14は、本体部11と溶接トーチ13との間に設けられ、溶接トーチ13を支持する。支持部14は、ケース21と、第1リンク部材22と、第2リンク部材23と、第3リンク部材24と、を有する。
【0053】
ケース21は、本体部11の外側を覆うように設けられる。ケース21は、本体部11に対して、溶接ロボット1の前後方向zに移動可能とされている。本体部11とケース21とにより、前後移動部33(狙い位置変更部)が構成される。
図3(b)に示されるリンク図においては、前後移動部33は、直動関節として示されている。
【0054】
第1リンク部材22は、鉛直方向の下方へ延びる鉛直アーム22aと、鉛直アーム22aの下端から水平方向に延びる水平アーム22bと、水平アーム22bに接続されて鉛直方向の下方へ延びる接続パネル22cと、を備える。鉛直アーム22aと、水平アーム22bと、接続パネル22cとは、互いに相対移動不能に接続される。
鉛直アーム22aの上端部は、ケース21の内側においてケース21に接続される。鉛直アーム22a(第1リンク部材22)は、ケース21に対して、溶接ロボット1の上下方向xに移動可能とされている。ケース21と第1リンク部材22とにより、上下移動部34(狙い位置変更部)が構成される。
図3(b)に示されるリンク図においては、上下移動部34は、直動関節として示されている。
【0055】
第2リンク部材23は、パネル状である。第2リンク部材23の上端部は、第1リンクピン351を介して、接続パネル22cの下端部に接続される。
図5(a)に示されるように、第2リンク部材23は、接続パネル22cに対して、第1リンクピン351の中心軸線(以下、第1軸線とも称する)回りに回動可能とされている。第1リンクピン351の中心軸線は、溶接ロボット1の左右方向yに平行である。接続パネル22cと第2リンク部材23とにより、第1回動部35(トーチ向き変更部)が構成される。
図3(b)に示されるリンク図においては、第1回動部35は、回転関節として示されている。なお、第1回動部35は、後述する第2回動部36を溶接トーチ13とともに回動させる。
【0056】
第3リンク部材24は、第2リンクピン361を介して、第2リンク部材23の下端部に接続される。第3リンク部材24は、溶接トーチ13が支持されるホルダである。
図5(b)に示されるように、第3リンク部材24は、第2リンク部材23に対して、第2リンクピン361の中心軸線(以下、第2軸線とも称する)回りに回動可能とされている。第2リンク部材23が接続パネル22cに対して回動していない状態において、第2リンクピン361の中心軸線は、溶接ロボット1の上下方向xに平行である。第2リンク部材23と第3リンク部材24とにより、第2回動部36(トーチ向き変更部)が構成される。
図3(b)に示されるリンク図においては、第2回動部36は、回転関節として示されている。
【0057】
なお、これらの前後移動部33、上下移動部34、第1回動部35、及び第2回動部36は、いずれもモータ32の駆動により動作する。
【0058】
〔制御方法〕
上記のような構成を備える溶接システム100における制御方法について説明する。
本実施形態に係る制御方法は、鋼管8の溶接のうち、曲線部8a周辺の溶接(以下、単に、曲線部8aの溶接とも称する)に主となる特徴がある。鋼管8の曲線部8aと、ガイドレール2の曲線部2aとは、周方向の長さが異なる。また、多くの場合、鋼管8の曲線部8aの曲率中心である鋼管曲率中心C1と、ガイドレール2の曲線部2aの曲率中心であるレール曲率中心C2とは異なる。そのため、曲線部8a、2aにおける、鋼管8とガイドレール2との間の距離が周方向に一定とはならない。本実施形態では、このような場合であっても、溶接条件に合わせて溶接ロボット1の移動量を調節することで、鋼管8の位置によらず高品質な溶接を実現する。
【0059】
以下、まず
図7を参照して、制御方法の基本的な考え方について説明する。
図7(a)は、鋼管8及びガイドレール2を示す平面図である。
図7(b)は、
図7(a)のリンク図である。
【0060】
鋼管8とガイドレール2との間の距離は、それぞれの曲線部8a、2aの位置に応じて異なる。そのため、本制御方法では、曲線部8aの溶接を複数のエリアに区画して、そのエリアごとに溶接ロボット1の移動量の求め方を調整する。
曲線部8aの溶接を複数のエリアに区画するにあたり、鋼管8を基準とした鋼管座標系を定義する。この鋼管座標系は、鋼管8の曲線部8aの1つ1つに定義される。
以下、鉛直方向を、鋼管座標系におけるX方向と称する。X方向に直交し、かつ1つの曲線部8aと接続される2つの直線部8bのうち一方の直線部8bに沿った方向を鋼管座標系におけるY方向と称する。X方向及びY方向に直交する方向をZ方向と称する。Z方向は、上記2つの直線部8bのうち他方の直線部8bに沿った方向である。例えば、鋼管座標系の原点位置は、後述する溶接条件を満たすような溶接トーチ13の先端の位置(目標位置)とX方向に一致し、かつ上面視(YZ平面)において、鋼管8の曲線部8aの鋼管曲率中心C1に一致する位置に設定される。
また、X方向のうち、鉛直方向の上方向を+X方向と称し、鉛直方向の下方向を-X方向と称する。Y方向のうち、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として鋼管8の外側に向かう方向を+Y方向とし、鋼管8の内側に向かう方向を-Y方向とする。
Z方向のうち、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として鋼管8の外側に向かう方向を+Z方向とし、鋼管8の内側に向かう方向を-Z方向とする。
【0061】
〔鋼管の曲線部とガイドレールの曲線部〕
鋼管8の曲線部8a及びガイドレール2の曲線部2aについて説明する。
曲線部8aは、上面視(YZ平面)において、鋼管曲率中心C1を中心とし、半径がRcの1/4円の円弧状である。曲線部2aは、上面視において、レール曲率中心C2を中心とし、半径がRgの1/4円の円弧状である。
【0062】
本実施形態において、鋼管曲率中心C1の位置は、レール曲率中心C2の位置と異なる。
レール曲率中心C2は、鋼管曲率中心C1よりも鋼管8の中心側に位置する。
鋼管8の直線部8bとガイドレール2の直線部2bとの距離をlcgとすると、鋼管曲率中心C1と、レール曲率中心C2とのY方向(又はZ方向)の距離eは、以下の式で表される。
e=Rc+lcg-Rg
すなわち、レール曲率中心C2は、鋼管曲率中心C1から、Y方向及びZ方向に-eだけ移動した位置である。
【0063】
図8に示されるように、鋼管8の溶接は、溶接形態に応じて、エリア1と、エリア2と、エリア3と、エリア4とに分けられる。
なお、以下、曲線部2aの開始位置をPg1とし、終了位置をPg2とする。曲線部8aの開始位置をPc2とし、終了位置をPc3とする。レール曲率中心C2と位置Pg1とを結ぶ直線と、鋼管8の直線部8bとの交点を位置Pc1とする。レール曲率中心C2と位置Pg2とを結ぶ直線と、鋼管8の直線部8bとの交点を位置Pc4とする。
【0064】
エリア1は、鋼管8の位置Pc1から位置Pc2までを溶接するエリアである。すなわち、エリア1は、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するエリアである。エリア1においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の曲線部2aを移動しつつ、鋼管8の直線部8bを溶接する。すなわち、エリア1では、ガイドレール2の曲線部2a上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の直線部8bである。
エリア2は、鋼管8の位置Pc2から位置Pc3までを溶接するエリアである。すなわち、エリア2は、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc3まで移動するエリアである。エリア2においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の曲線部2aを移動しつつ、鋼管8の曲線部8aを溶接する。すなわち、エリア2では、ガイドレール2の曲線部2a上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の曲線部8aである。
エリア3は、鋼管8の位置Pc3から位置Pc4までを溶接するエリアである。すなわち、エリア3は、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するエリアである。エリア3においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の曲線部2aを移動しつつ、鋼管8の直線部8bを溶接する。すなわち、エリア3では、ガイドレール2の曲線部2a上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の直線部8bである。
エリア4は、鋼管8のエリア1~3以外のエリアである。エリア4においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の直線部2bを移動しつつ、鋼管8の直線部8bを溶接する。すなわち、エリア4では、ガイドレール2の直線部2b上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の直線部8bである。
本実施形態において、曲線部8aの溶接とは、エリア1~3の溶接を意味する。
【0065】
〔溶接条件〕
溶接の品質を良好なものとするためには、エリアによらず以下の<1>~<4>に示す溶接条件を満たすことが好ましい。
<1>溶接トーチ13の先端が鋼管8の溶接部位に沿って移動する速度(以下、溶接移動速度Vwとも称する)が一定となる。
<2>上面視における溶接トーチ13の向き(以下、溶接トーチ向きとも称する)が、鋼管8の曲線部8aの法線方向と一致する、又は鋼管8の直線部8bと直交する。
<3>溶接トーチ13の狙い角θnが一定となる。なお、溶接トーチ13の狙い角θnは、
図6に示されるように、溶接ロボット1の左右方向yに沿って見て、溶接トーチ13の先端が鋼管8の開先に位置するときの溶接トーチ13の向きである。狙い角θnは、鋼管8の溶接部位の状態(例えば、開先情報)に応じて適切に調整される。
<4>溶接トーチ13の先端と鋼管8の溶接部位との距離(以下、溶接トーチ13の狙い位置とも称する)が一定である。
なお、上記溶接条件を満たすような溶接トーチ13の先端のX方向の位置は一定となり、鋼管座標系の原点位置とX方向に一致する。
図6に示されるように、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の先端のX方向の位置と、ガイドレール2の下端2cとのX方向(溶接ロボット1の上下方向x)の距離をHとする。
【0066】
ここで、エリア4においては、鋼管8(直線部8b)とガイドレール2(直線部2b)との間の距離が一定である。したがって、上記溶接条件を満たすような溶接ロボット1の移動量が一律に定まる。すなわち、上記溶接条件<2>~<4>を満たすように溶接トーチ13の溶接トーチ向き、狙い角、及び狙い位置を設定した状態で、溶接ロボット1を溶接移動速度Vwで移動させることにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。
【0067】
一方で、エリア1~3においては、鋼管8とガイドレール2との間の距離が周方向の位置により異なるため、上記溶接条件を満たすような溶接ロボット1の移動量が一律には定まらない。本実施形態においては、エリア1~3の溶接(曲線部8aの溶接)においては、逆運動学を用い、<A>上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢(以下、目標とする溶接トーチ13の位置及び姿勢とも称する)を算出し、<B>これを実現するための溶接ロボット1の移動量を求める。
【0068】
具体的には、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を表す行列U(上記<A>に対応)を生成する。この行列Uは、時刻tにおける溶接位置における溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を表す行列である。時刻tにおける溶接位置は、溶接条件<1>の溶接移動速度Vwを用いて、Vw・tに基づいて判断される。例えば、時刻0における溶接位置をPc1とした場合、Vw・tの大きさによって、時刻tにおける溶接位置が、エリア1~3のいずれに位置するかを判定することができる。
また、溶接ロボット1が所定の移動量、移動した場合の溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す行列T(上記<B>に対応)を生成する。
行列Uと行列Tとが等しくなるような溶接ロボット1の移動量を求め、当該移動量に応じてモータ32の駆動を制御することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。すなわち、これらの行列U、Tが等しくなることで、所定の時刻t(溶接位置)において目標となる溶接トーチ13の位置及び姿勢を実現するための移動量が求められる。
この移動量を実現するように溶接ロボット1を制御することで、良好な品質の溶接を実現することができる。
【0069】
〔行列Uについて〕
行列Uの生成について、
図8を参照して詳細に説明する。
行列Uは、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として表すための行列である。行列Uは、特定の溶接位置において目標とする溶接トーチ13の位置及び姿勢である。行列Uは、鋼管8の溶接位置ごとに定まる。行列Uは、溶接ロボット1の位置によらず定まる。
本実施形態においては、エリア1及び3においては直線部8bの溶接が行われ、エリア2においては曲線部8aの溶接が行われる。したがって、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢は、エリア1~3で異なる。このため、行列Uは、エリア1~3のそれぞれについて生成される。なお、上述のように、上記溶接条件を満たすような溶接トーチ13の先端のX方向の位置は一定となり、鋼管座標系の原点位置とX方向に一致する位置である。
【0070】
エリア1において、溶接トーチ13の先端は、位置Pc1から位置Pc2へ、溶接移動速度Vwで移動する。エリア1における溶接トーチ13の先端の移動は、Y方向(+Y方向)の溶接移動速度Vwでの移動である。したがって、溶接トーチ13の先端のY方向の位置は、時刻により異なる。溶接トーチ13の先端が位置Pc1に到達した時刻を0とした、時刻tにおける溶接トーチ13の先端のY方向の位置は、位置Pc1からY方向に+Vw・tだけ移動した位置となる。なお、位置Pc1のY方向の位置は、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)からY方向に-eだけ移動した位置である。また、エリア1において、溶接トーチ13の先端のZ方向の位置は、常に、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)からZ方向に+Rcだけ移動した位置である。
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、直線部8bと直交する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と直線部8bとの距離は、常に一定となる。
エリア1における行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
【0071】
エリア2において、溶接トーチ13の先端は、位置Pc2から位置Pc3へ、溶接移動速度Vwで移動する。エリア2においては、溶接トーチ13の先端は曲線部8aに沿って移動する。すなわち、エリア2における上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の先端の移動は、YZ平面上の鋼管曲率中心C1回りの溶接移動速度Vwでの回転移動である。YZ平面において、溶接トーチ13の先端が位置Pc2に到達した時刻を0とした、時刻tにおける溶接トーチ13の先端の位置は、位置Pc2から鋼管曲率中心C1回りに回転量θc(ラジアン)だけ回転した位置である。但し、回転量θcは、曲線部8aの半径Rc及び溶接移動速度Vwを用いて、以下の式にて表される。
θc=(Vw・t÷2πRc)×2π
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、曲線部8aの法線方向と一致する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と曲線部8aとの距離は、常に一定となる。
エリア2における行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
【0072】
エリア3において、溶接トーチ13の先端は、位置Pc3から位置Pc4へ、溶接移動速度Vwで移動する。エリア3における溶接トーチ13の先端の移動は、Z方向(-Z方向)の溶接移動速度Vwでの移動である。したがって、溶接トーチ13の先端のZ方向の位置は、時刻により異なる。溶接トーチ13の先端が位置Pc3に到達した時刻を0とした、時刻tにおける溶接トーチ13の先端のZ方向の位置は、位置Pc3からZ方向に-Vw・tだけ移動した位置となる。なお、位置Pc3のZ方向の位置は、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)とZ方向に等しい位置である。また、エリア3において、溶接トーチ13の先端のY方向の位置は、常に、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)からY方向に+Rcだけ移動した位置である。
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、直線部8bと直交する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と直線部8bとの距離は、常に一定となる。
エリア3における行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
【0073】
〔溶接ロボットの移動量について〕
図3~6を参照して、溶接ロボット1の移動量について説明する。本実施形態において、溶接システム100は、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量Mx、溶接ロボット1の左右方向yの移動量My、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量Mz、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量M
B、及び溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量M
Tを制御対象とする。すなわち、溶接ロボット1の移動量は、移動量Mx、移動量My、移動量Mz、移動量M
B、及び移動量M
Tを含む。
なお、移動量Mx、Mz、M
B、及びM
Tは、溶接トーチ13の基準位置からの移動量を示す。溶接トーチ13の基準位置とは、溶接トーチ13が移動や回動等していない状態における、溶接トーチ13の位置及び姿勢である。
移動量Myは、ガイドレール2の所定の位置を基準とした溶接ロボット1の移動量を示す。前記所定の位置は、例えば、ガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pg1に設定される。
【0074】
図3(a)に示されるように、移動量Mxは、上下移動部34により制御される。すなわち、上下移動部34は、第1リンク部材22をケース21に対して溶接ロボット1の上下方向xへ移動させることで、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の位置を変更する。上下移動部34の動作は、モータ32(サーボモータ)の駆動により制御される。
【0075】
図4に示されるように、移動量Myは、モータ32(サーボモータ)が溶接ロボット1の移動速度を変更することにより制御される。
【0076】
図3(a)に示されるように、移動量Mzは、前後移動部33により制御される。すなわち、前後移動部33は、ケース21を本体部11に対して溶接ロボット1の前後方向zへ移動させることで、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の位置を変更する。前後移動部33の動作は、モータ32(サーボモータ)の駆動により制御される。
【0077】
図5(a)に示されるように、移動量M
Bは、第1回動部35により制御される。すなわち、第1回動部35は、第2リンク部材23を接続パネル22cに対して第1軸線回りに回動させることで、溶接トーチ13を第1軸線回りに回動させる。第1回動部35は、溶接トーチ13の第1軸線回りの向きを変更する。第1回動部35の動作は、モータ32(サーボモータ)の駆動により制御される。
【0078】
図5(b)に示されるように、移動量M
Tは、第2回動部36により制御される。すなわち、第2回動部36は、第3リンク部材24を第2リンク部材23に対して第2軸線回りに回動させることで、溶接トーチ13を第2軸線回りに回動させる。第2回動部36は、溶接トーチ13の第2軸線回りの向きを変更する。第2回動部36の動作は、モータ32(サーボモータ)の駆動により制御される。
【0079】
〔行列Tについて〕
行列Tは、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量がMx、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量がMz、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量がMB、溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量がMTであり、かつ位置Pg1を基準とした溶接ロボット1の移動量がMyである場合の、溶接トーチ13の位置及び姿勢を、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として表すための行列である。本実施形態においては、行列Tは、エリア1~3で共通の行列となる。
なお、エリア1~3において、溶接ロボット1は曲線部2a上を移動する。すなわち、エリア1~3における溶接ロボット1の移動は、YZ平面上のレール曲率中心C2回りの回転移動である。YZ平面において、溶接ロボット1の、位置Pg1からのレール曲率中心C2回りの回転量をθg(ラジアン)とすると、移動量Myは、以下の式のように、回転量θgとして表すことができる。なお、Rgは、曲線部2aの半径である。
θg=(My÷2πRg)×2π
【0080】
行列Tは、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)をレール曲率中心C2の位置まで平行移動させるための行列T1と、溶接ロボット1を位置Pg1からレール曲率中心C2回りに回転量θgだけ回転させた位置(すなわち、溶接ロボット1を位置Pg1から移動量Myだけ移動させた位置)を表すための行列T2と、行列T2による回転後の溶接ロボット1の位置において、溶接ロボット1が移動量Mx、Mz、MB、及びMTだけ移動した場合の溶接トーチ13の先端の位置及び姿勢を表すための行列T3と、の積により求められる。
【0081】
行列T1は、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を、Y方向及びZ方向に-eだけ移動させることにより生成される。
【0082】
行列T2は、位置Pg1を、レール曲率中心C2回りに回転量θgだけ回転させることにより生成される。なお、位置Pg1は、レール曲率中心C2からZ方向に+Rgだけ移動した位置である。
【0083】
行列T3について、
図3(b)を参照して説明する。
図3(b)には、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、溶接ロボット1のリンク構造及び各リンク間の距離が示されている。
図3(b)において、aは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、第1リンクピン351と第2リンクピン361との溶接ロボット1の前後方向zの距離を示す(
図5(a)も併せて参照)。bは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、第1リンクピン351と第2リンクピン361との溶接ロボット1の上下方向xの距離を示す(
図5(a)も併せて参照)。cは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、ガイドレール2の下端2cと第1リンクピン351との溶接ロボット1の上下方向xの距離を示す。dは、溶接トーチ13が基準位置にあるときの、ガイドレール2と第1リンクピン351との溶接ロボット1の前後方向zの距離を示す。Lは、第2リンクピン361から溶接トーチ13の先端までの距離を示す(
図5(b)も併せて参照)。これらパラメータa~d及びLを用いることにより、溶接トーチ13の基準位置における位置及び姿勢が表される。
行列T3は、上述のようにパラメータa~d及びLを用いて表された溶接トーチ13の基準位置における位置及び姿勢を、移動量Mx、Mz、M
B、M
Tだけ移動及び回転させることにより生成される同次変換行列である。
【0084】
〔溶接ロボットの移動量を求める計算式について〕
上記のように生成された行列U及び行列Tについて、行列U=行列Tとすることにより、上記溶接条件を満たす溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式が導出される。この計算式は、移動量Mx、My、Mz、MB、MTのそれぞれについて導出される。この計算式は、エリア1~3のそれぞれについて導出される。
【0085】
〔溶接システムの制御系〕
次に、
図9及び
図10を参照して、溶接システム100の制御系について説明する。
制御系では、前述したように、行列Uと行列Tとが等しくなるような溶接ロボット1の移動量を求め、当該移動量に応じてモータ32の駆動を制御することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。
図9は、実施形態におけるシステム制御装置6のハードウェア構成の一例を示す図である。システム制御装置6は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備え、プログラムを実行する。システム制御装置6は、プログラムの実行によって制御部61、通信部62、入力部63、記憶部64及び出力部65を備える装置として機能する。
【0086】
より具体的には、システム制御装置6は、プロセッサ91が記憶部64に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させたプログラムを実行することによって、システム制御装置6は、制御部61、通信部62、入力部63、記憶部64及び出力部65を備える装置として機能する。
【0087】
制御部61は、システム制御装置6が備える各種機能部の動作を制御する。制御部61は、例えば溶接ロボット1の動作を制御する。制御部61は、例えば溶接ロボット1に溶接を実行させる。制御部61は、例えば溶接ロボット1に曲線部8aの溶接を実行させる。制御部61は、例えば溶接ロボット1の動作の制御に際して、溶接電源4の動作やワイヤ送給装置5の動作を制御することで溶接ロボット1の動作を制御することもある。
【0088】
制御部61は、鋼管8の曲線部8aの曲率半径及び曲率中心(鋼管曲率中心C1)と、ガイドレール2の曲線部2aの曲率半径及び曲率中心(レール曲率中心C2)と、溶接ロボット1の溶接速度及び位置と、に応じ、狙い位置変更部及び速度変更部を制御する。また、制御部61は、トーチ向き変更部を制御する。制御部61の他の機能については後述する。
【0089】
通信部62は、システム制御装置6を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部62は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。外部装置は、例えば溶接ロボット1である。通信部62は、例えば制御ケーブルを介して溶接ロボット1と通信する。通信部62は、例えば溶接ロボット1に制御信号を送信する。外部装置は、例えば撮影装置3である。通信部62は、撮影装置3との通信によって、撮影結果を取得する。外部装置は、例えば溶接電源4である。外部装置は、例えばワイヤ送給装置5である。
通信部62は、例えば制御ケーブルを介して溶接ロボット1の位置に関する情報(以下、溶接ロボット位置情報と言う)を取得する。溶接ロボット位置情報は、例えば溶接ロボット1の移動に関するサーボモータ(モータ32)の制御の目標値(以下、単に目標値とも言う)である。
【0090】
入力部63は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。
入力部63は、これらの入力装置をシステム制御装置6に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部63は、システム制御装置6に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部63には、例えば溶接の開始の指示が入力される。
【0091】
記憶部64は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置を用いて構成される。記憶部64は、システム制御装置6自体を含む溶接システム100に関する各種情報を記憶する。記憶部64は、例えば通信部62又は入力部63を介して入力された情報を記憶する。記憶部64は、例えば制御部61による処理の実行により生じた各種情報を記憶する。記憶部64は、例えば撮影装置3が取得した撮影結果を記憶する。
【0092】
記憶部64は、予め、鋼管8の種類毎に、鋼管8の形状に関する情報(以下、鋼管形状情報とも称する)を記憶する。鋼管形状情報は、曲線部8aの半径Rc、曲線部8aの曲率、曲線部8aの鋼管曲率中心C1の位置、直線部8bの長さ等を含む。記憶部64は、予め、ガイドレール2の種類毎に、ガイドレール2の形状に関する情報(以下、ガイドレール形状情報とも称する)を記憶する。ガイドレール形状情報は、曲線部2aの半径Rg、曲線部2aの曲率、曲線部2aのレール曲率中心C2の位置、直線部2bの長さ等を含む。
記憶部64は、予め、エリア1~3のそれぞれについて導出された、行列Uと行列Tとが等しくなるときの溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を記憶する。
記憶部64は、前記目標値(溶接ロボット位置情報)を記憶する。記憶部64は、溶接トーチ13の基準位置を記憶する。記憶部64は、移動量Myの基準となるガイドレール2の所定の位置を記憶する。
【0093】
出力部65は、各種情報を出力する。出力部65は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部65は、これらの表示装置をシステム制御装置6に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部65は、例えば入力部63に入力された情報を出力する。出力部65は、例えば制御部61による処理の実行の結果を表示してもよい。
【0094】
図10は、本実施形態における制御部61の機能構成の一例を示す図である。制御部61は、データ取得部610、溶接ロボット制御部620、記憶制御部630、入力制御部640及び出力制御部650を備える。
【0095】
データ取得部610は、記憶部64に記憶された溶接ロボット位置情報を取得する。データ取得部610は、記憶部64に予め記憶された溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を取得する。データ取得部610は、記憶部64に記憶された撮影装置3の撮影結果を取得する。
データ取得部610は、記憶部64から、使用される鋼管8の種類に対応する鋼管形状情報を取得する。データ取得部610は、記憶部64から、使用されるガイドレール2の種類に対応するガイドレール形状情報を取得する。なお、使用される鋼管8の種類及びガイドレール2の種類は、例えば、ユーザによって入力部63に入力される。
【0096】
溶接ロボット制御部620は、溶接ロボット1の動作を制御する。溶接ロボット制御部620は、位置情報取得部621、形状情報取得部622(取得部)、曲率中心判定部623(判定部)、パラメータ設定部624、溶接時間カウント部625、エリア判定部626、目標トーチ位置計算部627、移動量設定部628、及び曲線部溶接実行制御部629を備える。なお、パラメータ設定部624、目標トーチ位置計算部627、及び移動量設定部628により、本実施形態における設定部が構成される。
【0097】
位置情報取得部621は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、溶接ロボット位置情報を取得する。
【0098】
形状情報取得部622は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、鋼管形状情報及びガイドレール形状情報を取得する。
【0099】
曲率中心判定部623は、形状情報取得部622により取得された鋼管形状情報及びガイドレール形状情報に基づき、鋼管曲率中心C1の位置とレール曲率中心C2の位置とが一致するか否かを判定する。また、鋼管曲率中心C1の位置とレール曲率中心C2の位置とが一致しない場合には、曲率中心判定部623は、鋼管曲率中心C1とレール曲率中心C2とのいずれが鋼管8の中心側に位置するかを判定する。
【0100】
パラメータ設定部624は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、撮影装置3の撮影結果を取得する。パラメータ設定部624は、撮影装置3の撮影結果と、形状情報取得部622により取得された鋼管形状情報及びガイドレール形状情報とに基づき、溶接部位の形状や状態(例えば、開先情報)を判別する。
パラメータ設定部624は、判別された溶接部位の形状や状態に基づき、溶接条件としての溶接トーチ13の溶接移動速度Vw、溶接トーチ向き、狙い角θn、及び狙い位置の具体的な値を設定する。
【0101】
溶接時間カウント部625は、曲線部8aの溶接の開始(すなわち、溶接ロボット1がエリア1の位置Pg1に到達した時)からの経過時間tをカウントする。
【0102】
エリア判定部626は、パラメータ設定部624により設定された溶接移動速度Vwを取得する。エリア判定部626は、溶接時間カウント部625から経過時間tを取得する。エリア判定部626は、取得された経過時間tにおける溶接トーチ13の先端の目標位置を算出する。具体的には、溶接トーチ13の先端は、鋼管8に沿って溶接移動速度Vwで移動するため、時間tにおける溶接トーチ13の先端の位置は、位置Pc1から鋼管8に沿ってVw・tだけ移動した位置となる。
エリア判定部626は、算出された溶接トーチ13の先端の目標位置が、エリア1~3のうちいずれのエリアに位置するかを判定する。
【0103】
目標トーチ位置計算部627は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を取得する。目標トーチ位置計算部627は、パラメータ設定部624により設定された溶接トーチ13の溶接移動速度Vw、溶接トーチ向き、狙い角θn、及び狙い位置の具体的な値を取得する。目標トーチ位置計算部627は、パラメータ設定部624により設定された溶接トーチ13の溶接移動速度Vw、溶接トーチ向き、狙い角θn、及び狙い位置の具体的な値を、上記計算式に反映させる。
【0104】
移動量設定部628は、目標トーチ位置計算部627が取得した計算式に基づき、所定の時刻tにおける溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求め、これらを溶接ロボット1の移動量として設定する。
すなわち、移動量設定部628は、行列U及び行列Tに基づき、上記溶接条件における溶接トーチ13の溶接移動速度Vw、溶接トーチ向き、狙い角θn、及び狙い位置を満たす溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを設定する。
【0105】
曲線部溶接実行制御部629は、移動量設定部628により設定された移動量Mx、My、Mz、MB、MTに応じて溶接ロボット1の位置と溶接トーチ13の位置及び姿勢とを変更し、溶接ロボット1に曲線部8aの溶接を実行させる。
具体的には、曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して上下移動部34を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量Mxに応じて溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の位置を変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して前後移動部33を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量Mzに応じて溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の位置を変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して第1回動部35を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量MBに応じて第1軸線回りの溶接トーチ13の向きを変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32を駆動して第2回動部36を動作させ、移動量設定部628により設定された移動量MTに応じて第2軸線回りの溶接トーチ13の向きを変更する。曲線部溶接実行制御部629は、モータ32(サーボモータ)を駆動して、移動量設定部628により設定された移動量Myに応じて溶接ロボット1の位置を変更する。
【0106】
記憶制御部630は、各種情報を記憶部64に記録する。記憶制御部630は、例えば制御部61の動作によって生じた各種情報を記憶部64に記録する。制御部61の動作によって生じた情報は、例えば溶接ロボット制御部620による溶接ロボット1の制御の内容を示す情報である。
【0107】
入力制御部640は、入力部63の動作を制御する。出力制御部650は、出力部65の動作を制御する。
【0108】
〔溶接システムが実行する制御例〕
図11を参照して、溶接システム100が実行する制御例について説明する。
図11は、本実施形態におけるシステム制御装置6が実行する曲線部8aの溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0109】
なお、曲線部8aの溶接処理の前に、曲率中心判定部623は、鋼管曲率中心C1の位置とレール曲率中心C2の位置とが一致するか否かを判定する。また、鋼管曲率中心C1の位置とレール曲率中心C2の位置とが一致しない場合には、曲率中心判定部623は、鋼管曲率中心C1とレール曲率中心C2とのいずれが鋼管8の中心側に位置するかを判定する。
以下、本実施形態においては、曲率中心判定部623が、レール曲率中心C2が鋼管曲率中心C1よりも鋼管8の中心側に位置すると判定した場合の曲線部8aの溶接処理の流れを説明する。
【0110】
曲線部8aの溶接処理は、溶接ロボット1が位置Pg1に到達すると開始される。このとき、溶接トーチ13の先端は、エリア1の位置Pc1に位置する。例えば、曲線部8aの溶接処理の開始判定は、位置情報取得部621により取得された溶接ロボット位置情報に基づいて溶接ロボット1の位置を推定し、推定された溶接ロボット1の位置が位置Pg1に到達したか否かを判定することにより実行される。
【0111】
曲線部8aの溶接処理が開始されると、溶接時間カウント部625は、曲線部8aの溶接処理の開始からの経過時間tのカウントを開始する(ステップS101)。
エリア判定部626は、経過時間tにおける溶接トーチ13の先端の目標位置を算出する(ステップS102)。エリア判定部626は、算出された溶接トーチ13の先端の目標位置が、エリア1~3のうちいずれのエリアに位置するかを判定する(ステップS103)。
【0112】
溶接トーチ13の先端がエリア1に位置すると判定される場合(ステップS103:A1)、移動量設定部628は、エリア1に対応する、溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を取得する。移動量設定部628は、上記計算式に基づき、経過時間tにおける、ガイドレール2の曲線部2aにおける溶接ロボット1の位置Pg1からの回転量θgを算出する(ステップS111)。また、移動量設定部628は、上記計算式に基づき、経過時間tにおける溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを算出し、溶接ロボット1の移動量として設定する(ステップS112)。その後、処理はステップS105に進む。
【0113】
溶接トーチ13の先端がエリア2に位置すると判定される場合(ステップS103:A2)、移動量設定部628は、エリア2に対応する、溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を取得する。ここで、エリア2においては、溶接トーチ13の先端の移動が鋼管曲率中心C1回りの回転移動となるため、目標トーチ位置計算部627は、ステップS102で算出された溶接トーチ13の先端の目標位置を、鋼管8の曲線部8aにおける溶接トーチ13の先端の回転量θcとして算出する(ステップS121)。移動量設定部628は、上記計算式に基づき、経過時間tにおける、ガイドレール2の曲線部2aにおける溶接ロボット1の位置Pg1からの回転量θgを算出する(ステップS122)。また、移動量設定部628は、上記計算式に基づき、経過時間tにおける溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを算出し、溶接ロボット1の移動量として設定する(ステップS123)。その後、処理はステップS105に進む。
【0114】
溶接トーチ13の先端がエリア3に位置すると判定される場合(ステップS103:A3)、移動量設定部628は、エリア3に対応する、溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を取得する。移動量設定部628は、上記計算式に基づき、経過時間tにおける、ガイドレール2の曲線部2aにおける溶接ロボット1の位置Pg1からの回転量θgを算出する(ステップS131)。また、移動量設定部628は、上記計算式に基づき、経過時間tにおける溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを算出し、溶接ロボット1の移動量として設定する(ステップS132)。その後、処理はステップS105に進む。
【0115】
曲線部溶接実行制御部629は、各モータ32を駆動して、移動量設定部628により設定された移動量Mx、My、Mz、MB、MTに応じて溶接ロボット1の位置と溶接トーチ13の位置及び姿勢とを変更し、溶接ロボット1に曲線部8aの溶接を実行させる(ステップS105)。
【0116】
その後、エリア判定部626は、溶接トーチ13の先端の位置が、エリア3の終了位置Pc4に到達したか否かを判定する(ステップS106)。
溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc4に到達したと判定される場合(ステップS106:YES)、曲線部溶接実行制御部629は、曲線部8aの溶接処理を終了する(ステップS206)。
一方、溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc4に到達していない場合(ステップS106:NO)、ステップS102の処理に戻る。この場合、曲線部8aの溶接処理は継続される。
【0117】
以下、上記制御を行った場合の、各エリアにおける溶接ロボット1の具体的な制御内容について説明する。なお、以下に示される溶接ロボット1の制御内容は一例であり、本発明はこれに限られない。
【0118】
まず、エリア4(すなわち、曲線部8aの溶接以外の領域)における制御内容について説明する。エリア4においては、
図12に示すように、溶接ロボット1は一定速度(溶接移動速度Vw)で移動する。以下、エリア4における溶接ロボット1の移動速度を、基準速度とも称する。また、上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量Mxは一定(以下、上下方向移動基準値とも称する)である。前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量Mzは一定(以下、前後方向移動基準値とも称する)である。
図13に示すように、エリア4において、前後方向zにおけるロボットの速度は0(ゼロ)である。
図14に示すように、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量M
Bは一定(以下、第1軸線回動基準値とも称する)であり、溶接トーチ13は、第1軸線回りに鉛直方向下向きに回動される。
図14に示すように、溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量M
Tは一定であり、0(ゼロ)である。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13は、溶接ロボット1の進行方向である左右方向y(すなわち、鋼管8の直線部8b)に常に直交する。
なお、以下の説明において、移動量Mxは、溶接トーチ13が下側に移動する場合に増加し、上側に移動する場合に減少するとする。移動量Mzは、溶接トーチ13が後側(すなわち、鋼管8から離れる側)に移動する場合に増加し、前側(すなわち、鋼管8に近づく側)に移動する場合に減少するとする。移動量M
Bは、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が増加する場合に増加するとされる。移動量M
Tは、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13が溶接ロボット1の進行方向に直交する場合を0とし、溶接トーチ13が溶接ロボット1の進行方向側に傾斜する場合に増加し、溶接ロボット1の進行方向と反対側に傾斜する場合に減少するとする。
【0119】
エリア1における制御内容について説明する。エリア1における制御部61の制御は、以下の通りである。
制御部61は、例えば、鋼管8の直線部8bと開始位置Pc2との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第2トーチ離間速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。この時、第2トーチ離間速度は、溶接トーチ13の先端が開始位置Pc2に近づくに連れ、大きくなる。
【0120】
制御部61は、例えば、鋼管8の直線部8bと開始位置Pc2との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第1トーチ離間加速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。
制御部61は、例えば、開始位置Pc2の近傍を溶接トーチ13が移動する際、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第2トーチ離間加速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。本実施形態において、開始位置Pc2の近傍とは、開始位置Pc2を中央とした、鋼管8の周方向に沿って鋼管8の曲線部8aの曲率半径の20%の長さの領域をいう。すなわち、例えば、鋼管8の曲線部8aの曲率半径が40mmである場合、開始位置Pc2の近傍に係る領域の長さは8mmとなる。開始位置Pc2の近傍に係る領域の両端は、開始位置Pc2から、鋼管8の周方向に沿ってそれぞれ両側に4mmずつ移動した部分に位置することとなる。
この時、第2トーチ離間加速度は、第1トーチ離間加速度より大きい。
【0121】
エリア1においては、
図12に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも小さくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア1における移動速度まで瞬間的に減速する。瞬間的というのはエリア4からエリア1に到達したタイミングである。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図13に示すように、エリア1において、前後方向zにおける溶接ロボット1の速度は増加する。つまり、移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、前後方向移動基準値から増加していく。すなわち、溶接トーチ13は、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、鋼管8から離れる方向に移動する。
移動量M
Bは、
図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、第1軸線回動基準値から増加していく。すなわち、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量M
Tは、
図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、0から増加していく。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13の先端が位置Pc1から位置Pc2まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜していく。
【0122】
エリア2における制御内容について説明する。エリア2における制御部61の制御は、以下の通りである。
制御部61は、例えば、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2と、開始位置Pc2と鋼管8の曲線部8aの終了位置Pc3との中間位置である鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第1トーチ離間速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。この時、第1トーチ離間速度は、溶接トーチ13の先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなる。
【0123】
制御部61は、例えば、鋼管中間位置と終了位置Pc3との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第1トーチ接近速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。この時、第1トーチ接近速度は、終了位置Pc3に近づくに連れ、大きくなる。
【0124】
制御部61は、例えば、開始位置Pc2と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接ロボット1が第1ロボット速度で移動するよう、速度変更部を制御する。この時、第1ロボット速度は、溶接トーチ13の先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなる。
【0125】
制御部61は、例えば、開始位置Pc2と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接ロボット1が第1ロボット減速度で移動するよう、速度変更部を制御する。
制御部61は、例えば、溶接トーチ13の先端が開始位置Pc2に略到達する際に、溶接ロボット1が第1ロボット加速度で移動するよう、速度変更部を制御する。ここで、本実施形態において、溶接トーチ13の先端が開始位置Pc2に略到達するとは、溶接トーチ13の先端が開始位置Pc2の近傍に到達することをいう。
この時、第1ロボット加速度の絶対値は、第1ロボット減速度の絶対値より、大きい。
【0126】
制御部61は、例えば、開始位置Pc2と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、所定方向への溶接トーチ13の傾斜が当該移動するに連れて小さくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。
制御部61は、例えば、鋼管中間位置と終了位置Pc3との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、所定方向と反対方向への溶接トーチ13の傾斜が当該移動するに連れて大きくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。
【0127】
制御部61は、例えば、鋼管中間位置と終了位置Pc3との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接ロボット1が第2ロボット速度で移動するよう、速度変更部を制御する。この時、第2ロボット速度は、溶接トーチ13の先端が終了位置Pc3に近づくに連れ、大きくなる。
【0128】
制御部61は、例えば、鋼管中間位置と終了位置Pc3との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接ロボット1が第2ロボット加速度で移動するよう、速度変更部を制御する。
制御部61は、例えば、溶接トーチ13の先端が終了位置Pc3に略到達する際に、溶接ロボット1が第2ロボット減速度で移動するよう、速度変更部を制御する。ここで、本実施形態において、溶接トーチ13の先端が終了位置Pc3に略到達するとは、溶接トーチ13の先端が終了位置Pc3の近傍に到達することをいう。終了位置Pc3の近傍とは、終了位置Pc3を中央とした、鋼管8の周方向に沿って鋼管8の曲線部8aの曲率半径の20%の長さの領域をいう。すなわち、例えば、鋼管8の曲線部8aの曲率半径が40mmである場合、終了位置Pc3の近傍に係る領域の長さは8mmとなる。終了位置Pc3の近傍に係る領域の両端は、終了位置Pc3から、鋼管8の周方向に沿ってそれぞれ両側に4mmずつ移動した部分に位置することとなる。
この時、第2ロボット減速度の絶対値は、第2ロボット加速度の絶対値より、大きい。
エリア2においては、
図12に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア2における移動速度まで瞬間的に加速する。瞬間的というのはエリア1からエリア2に到達したタイミングである。また、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置までの範囲では、溶接ロボット1は、エリア2の開始位置Pc2から上記中間位置まで、所定の負の加速度で減速し続ける
。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きい。その後、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3までの範囲では、溶接ロボット1は、上記中間位置からエリア2の終了位置Pc3まで、所定の正の加速度で加速し続ける。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図13に示すように、エリア2において溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するまでの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は正である。つまり、移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い増加していく。
図13に示すように、エリア2において溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するまでの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は負である。つまり、移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い減少していく。
すなわち、溶接トーチ13は、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置までの範囲では、鋼管8から離れる方向に移動し、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3までの範囲では、鋼管8に近づく方向に移動する。
移動量M
Bは、
図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い減少していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い増加していく。なお、この場合であっても、移動量M
Bが第1軸線回動基準値よりも小さくなることはない。すなわち、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなり、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量M
Tは、
図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc3まで移動するに従い減少していく。また、移動量M
Tは、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置に位置するときに0となる。移動量M
Tの値は、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置と位置Pc3との間にあるときにマイナスとなる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13の先端がエリア1の終端位置である位置Pc3に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜している。溶接トーチ13の先端が位置Pc2から位置Pc2と位置Pc3との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向側への傾斜が小さくなっていき、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。その後、溶接トーチ13の先端が位置Pc2と位置Pc3との中間位置から位置Pc3まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜していく。
【0129】
エリア3における制御内容について説明する。エリア3における制御部61の制御は、以下の通りである。
制御部61は、例えば、鋼管8の曲線部8aの終了位置Pc3と鋼管8の直線部8bとの間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第2トーチ接近速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。この時、第2トーチ接近速度は、直線部8bに近づくに連れ、小さくなる。
【0130】
制御部61は、例えば、終了位置Pc3の近傍を溶接トーチ13の先端が移動する際、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第1トーチ接近減速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。
制御部61は、例えば、終了位置Pc3と直線部8bとの間を溶接トーチ13の先端が移動する際、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第2トーチ接近減速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。
この時、第1トーチ接近減速度は、第2トーチ接近減速度より大きい。
【0131】
エリア3においては、
図12に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも小さくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア3における移動速度まで瞬間的に減速する。瞬間的というのはエリア2からエリア3に到達したタイミングである。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図13に示すように、エリア3において溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するまでの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は、マイナス値から0(ゼロ)に向かって増加する。つまり、移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い減少していく。
図13に示すように、エリア3において溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達した時、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は0(ゼロ)になる。つまり、移動量Mzは、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると前後方向移動基準値と等しくなる。すなわち、溶接トーチ13は、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い、鋼管8に近づく方向に移動する。
移動量M
Bは、
図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い減少していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると第1軸線回動基準値と等しくなる。すなわち、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなる。
移動量M
Tは、
図14に示すように、溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い増加していき、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると0となる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13の先端がエリア2の終端位置である位置Pc3に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜している。溶接トーチ13の先端が位置Pc3から位置Pc4まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向と反対側への傾斜が小さくなっていき、溶接トーチ13の先端が位置Pc4に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。
【0132】
以上説明したように、本実施形態に係る溶接システム100によれば、制御部61は、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第1トーチ離間速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、レール曲率中心C2が、鋼管曲率中心C1よりも鋼管8の中心側に位置する場合に、溶接トーチ13の先端が鋼管8に過度に接近することを抑えることができる。
【0133】
ここで、レール曲率中心C2が、鋼管曲率中心C1よりも鋼管8の中心側に位置する場合、ガイドレール2と鋼管8との距離は、ガイドレール2の直線部2bと鋼管8の直線部8bとの間において最も遠く、ガイドレール2の曲線部2aの中間位置であるガイドレール中間位置と鋼管中間位置との間において最も近くなる。これに対し、第1トーチ離間速度は、溶接トーチ13の先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなる。これにより、溶接トーチ13の先端と鋼管8との距離の調整を円滑に行うことができる。したがって、溶接トーチ13による鋼管8の溶接の品質を担保しやすくすることができる。よって、鋼管8の溶接部の全長に亘って一定の溶接品質を維持することができる。
【0134】
また、制御部61は、鋼管8の直線部8bと鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第2トーチ離間速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、溶接トーチ13の先端が鋼管8に過度に接近することを抑えることができる。
【0135】
ここで、レール曲率中心C2が、鋼管曲率中心C1よりも鋼管8の中心側に位置する場合、溶接トーチ13の先端が鋼管8の直線部8bにある状態で、溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aに位置することがある。すると、溶接ロボット1が曲線部2aを移動するに連れて、溶接トーチ13の先端が鋼管8に接近する速度が加速度的に増加する。これに対し、第2トーチ離間速度は、溶接トーチ13の先端が開始位置Pc2に近づくに連れ、大きくなる。これにより、鋼管8の直線部8bと開始位置Pc2との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接トーチ13の先端と鋼管8との距離の調整を円滑に行うことができる。
【0136】
また、制御部61は、鋼管8の直線部8bと鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2との間を溶接トーチ13の先端が移動する際、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第1トーチ離間加速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、溶接トーチ13が鋼管8から離れる速度を、溶接トーチ13の先端が開始位置Pc2に近づくに連れて大きくすることができる。よって、溶接トーチ13の先端と鋼管8との距離の調整を円滑に行うことができる。
【0137】
ここで、レール曲率中心C2が、鋼管曲率中心C1よりも鋼管8の中心側に位置する場合、溶接トーチ13の先端が鋼管8の曲線部8aに位置した際の溶接トーチ13の先端が鋼管8に近づく速度は、溶接トーチ13の先端が鋼管8の直線部8bと鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2との間に位置した際の溶接トーチ13の先端が鋼管8に近づく速度よりも大きい。これに対し、制御部61は、開始位置Pc2の近傍を溶接トーチ13が移動する際、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第2トーチ離間加速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御し、第2トーチ離間加速度は、第1トーチ離間加速度より大きい。これにより、溶接トーチ13の先端が曲線部8aに位置した際の、溶接トーチ13の先端が鋼管8に近づく速度に対応することができる。
【0138】
ここで、ガイドレール2の曲線部2aの長さは、鋼管8の曲線部8aの長さよりも長い。このため、溶接トーチ13の先端が鋼管8の曲線部8aを進む速度を、鋼管8の直線部8bを進む速度と同じにするためには、溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aを進む速度を、溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを進む速度よりも速くする必要がある。これに対し、制御部61は、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接ロボット1が第1ロボット速度で移動するよう、速度変更部を制御する。これにより、溶接トーチ13が鋼管8の曲線部8aを進む速度を、鋼管8の直線部8bを進む速度と同じにすることができる。
【0139】
また、鋼管8の曲線部8aを溶接する際、溶接トーチ13の向きと鋼管8の曲線部8aの法線方向とが一致するように、溶接トーチ13の向きを変更する場合がある。これに対し、第1ロボット速度は、溶接トーチ13の先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくなる。これにより、レール曲率中心C2が、鋼管曲率中心C1よりも鋼管8の中心側に位置する場合に、鋼管8の曲線部8aを溶接する際に溶接トーチ13の向きを変更する場合であっても、溶接トーチ13の先端の速度を一定にすることができる。よって、鋼管8の溶接の品質を担保しやすくすることができる。
【0140】
また、制御部61は、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接ロボット1が第1ロボット減速度で移動するよう、速度変更部を制御する。これにより、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接ロボット1がガイドレール2を進む速度を、溶接トーチ13の先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、小さくすることができる。これにより、溶接トーチ13の先端の速度を一定にすることができる。よって、鋼管8の溶接の品質を担保しやすくすることができる。
【0141】
ここで、上述のように、溶接トーチ13の先端が鋼管8の曲線部8aを進む速度を、鋼管8の直線部8bを進む速度と同じにするためには、溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aを進む速度を、溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを進む速度よりも速くする必要がある。更に、溶接トーチ13の先端が鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2に到達した直後から溶接ロボット1を加速する必要がある。これに対し、制御部61は、溶接トーチ13の先端が鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc2に略到達する際に、溶接ロボット1が第1ロボット加速度で移動するよう、速度変更部を制御し、第1ロボット加速度の絶対値は、第1ロボット減速度の絶対値より、大きい。これにより、溶接トーチ13の先端が曲線部8aを移動する際の溶接ロボット1の移動速度を適当なものにすることができる。
【0142】
また、制御部61は、開始位置Pc2と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、所定方向への溶接トーチ13の傾斜が当該移動するに連れて小さくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。また、制御部61は、鋼管中間位置と鋼管8の曲線部8aの終了位置Pc3との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、所定方向と反対方向への溶接トーチ13の傾斜が当該移動するに連れて大きくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。これにより、鋼管8の曲線部8aを溶接する際、溶接トーチ13の向きと鋼管8の曲線部8aの法線方向とが一致するように、溶接トーチ13の向きを変更することができる。
【0143】
〔第2実施形態〕
以下、
図15及び16を参照し、本発明の第2実施形態に係る溶接システム100を説明する。
本実施形態においては、鋼管曲率中心C1がレール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する場合の、溶接システム100における制御方法について説明する。本実施形態において用いられる溶接システム100の基本的な構成及び動作は、第1実施形態の溶接システム100と同様である。
【0144】
〔鋼管の曲線部とガイドレールの曲線部〕
図15を参照して、鋼管8の曲線部8a及びガイドレール2の曲線部2aについて説明する。
図15に示されるように、本実施形態において、鋼管曲率中心C1は、レール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する。レール曲率中心C2は、鋼管曲率中心C1から、Y方向及びZ方向にeだけ移動した位置となる。
【0145】
本実施形態においては、鋼管8の溶接は、溶接形態に応じて、エリア5と、エリア6と、エリア7と、エリア8とに分けられる。
なお、以下、曲線部8aの開始位置をPc5とし、終了位置をPc6とする。曲線部2aの開始位置をPg6とし、終了位置をPg7とする。鋼管曲率中心C1と位置Pc5とを結ぶ直線と、ガイドレール2の直線部2bとの交点を位置Pg5とする。鋼管曲率中心C1と位置Pc6とを結ぶ直線と、ガイドレール2の直線部2bとの交点を位置Pg8とする。
【0146】
エリア5は、溶接ロボット1がガイドレール2の位置Pg5から位置Pg6まで移動するエリアである。エリア5においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の直線部2bを移動しつつ、鋼管8の曲線部8aを溶接する。すなわち、エリア5では、ガイドレール2の直線部2bに溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の曲線部8aである。
エリア6は、溶接ロボット1がガイドレール2の位置Pg6から位置Pg7まで移動するエリアである。エリア6においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の曲線部2aを移動しつつ、鋼管8の曲線部8aを溶接する。すなわち、エリア6では、ガイドレール2の曲線部2aに溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の曲線部8aである。
エリア7は、溶接ロボット1がガイドレール2の位置Pg7から位置Pg8まで移動するエリアである。エリア7においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の直線部2bを移動しつつ、鋼管8の曲線部8aを溶接する。すなわち、エリア7では、ガイドレール2の直線部2bに溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の曲線部8aである。
エリア8は、鋼管8のエリア5~7以外のエリアである。エリア8においては、溶接ロボット1は、ガイドレール2の直線部2bを移動しつつ、鋼管8の直線部8bを溶接する。すなわち、エリア8では、ガイドレール2の直線部2b上に溶接ロボット1が位置し、且つ、溶接ロボット1が溶接する部分が鋼管8の直線部8bである。
本実施形態において、曲線部8aの溶接とは、エリア5~7の溶接を意味する。
【0147】
〔溶接条件〕
第1実施形態と同様に、溶接の品質を良好なものとするためには、エリアによらず以下の<1>~<4>に示す溶接条件を満たすことが好ましい。
<1>溶接トーチ13の先端が鋼管8の溶接部位に沿って移動する速度(以下、溶接移動速度Vwとも称する)が一定となる。
<2>上面視における溶接トーチ13の向き(以下、溶接トーチ向きとも称する)が、鋼管8の曲線部8aの法線方向と一致する、又は鋼管8の直線部8bと直交する。
<3>溶接トーチ13の狙い角θnが一定となる。
<4>溶接トーチ13の先端と鋼管8の溶接部位との距離(以下、溶接トーチ13の狙い位置とも称する)が一定である。
【0148】
エリア8においては、鋼管8(直線部8b)とガイドレール2(直線部2b)との間の距離が一定である。したがって、上記溶接条件を満たすような溶接ロボット1の移動量が一律に定まる。
【0149】
一方、エリア5~7においては、鋼管8とガイドレール2との間の距離が周方向の位置により異なるため、上記溶接条件を満たすような溶接ロボット1の移動量が一律には定まらない。したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、エリア5~7の溶接(曲線部8aの溶接)については、逆運動学を用い、<A>上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を算出し、<B>これを実現するための溶接ロボット1の移動量を求める。
具体的には、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を表す行列U(上記<A>に対応)を生成する。また、溶接ロボット1が所定の移動量、移動した場合の溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す行列T(上記<B>に対応)を生成する。行列Uと行列Tとが等しくなるような溶接ロボット1の移動量を求め、当該移動量に応じてモータ32の駆動を制御することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。
【0150】
〔行列Uについて〕
行列Uは、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の目標位置及び目標姿勢を、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として表すための行列である。
本実施形態においては、エリア5~7の全てにおいて、曲線部8aの溶接が行われる。
したがって、エリア5~7に共通の行列Uが生成される。
【0151】
エリア5~7において、溶接トーチ13の先端は曲線部8aに沿って移動する。すなわち、エリア5~7における上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の先端の移動は、YZ平面上の鋼管曲率中心C1回りの溶接移動速度Vwでの回転移動である。YZ平面において、溶接トーチ13の先端が位置Pc5に到達した時刻を0とした、時刻tにおける溶接トーチ13の先端の位置は、位置Pc5から鋼管曲率中心C1回りに回転量θc(ラジアン)だけ回転した位置である。但し、回転量θcは、曲線部8aの半径Rc及び溶接移動速度Vwを用いて、以下の式にて表される。
θc=(Vw・t÷2πRc)×2π
また、時刻tにおける溶接位置において、上記溶接条件を満たす溶接トーチ13の溶接トーチ向きは、曲線部8aの法線方向と一致する方向である。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の狙い角は、常に一定(θn)となる。時刻tにおける溶接位置において、溶接トーチ13の先端と曲線部8aとの距離は、常に一定となる。
行列Uは、上記のような溶接トーチ13の位置及び姿勢を表す同次変換行列として生成される。
【0152】
〔行列Tについて〕
行列Tは、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量がMx、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量がMz、溶接トーチ13の第1軸線回りの移(動量がMB、溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量がMTであり、かつ位置Pg5を基準とした溶接ロボット1の移動量がMyである場合の、溶接トーチ13の位置及び姿勢を、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)を基準として表すための行列である。
なお、本実施形態においては、エリア5及び7においては溶接ロボット1が直線部2bを移動し、エリア6においては溶接ロボット1が曲線部2aを移動する。したがって、行列Tは、エリア5~7のそれぞれについて生成される。
【0153】
エリア5における行列Tの生成について説明する。エリア5における行列Tは、溶接ロボット1を位置Pg5から移動量Myだけ移動させた位置を表すための行列T4と、行列T4による移動後の溶接ロボット1の位置において、溶接ロボット1が移動量Mx、Mz、MB、及びMTだけ移動した場合の溶接トーチ13の先端の位置及び姿勢を表すための行列T3と、の積により求められる。
エリア5において、溶接ロボット1は直線部2b上をY方向(+Y方向)に移動する。
したがって、行列T4は、位置Pg5をY方向に+Myだけ移動させることにより生成される。なお、位置Pg5は、鋼管曲率中心C1からZ方向に+Rgだけ移動した位置である。
なお、行列T3については、第1実施形態の行列T3と同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0154】
エリア6における行列Tの生成について説明する。エリア6における行列Tは、鋼管座標系の原点位置(鋼管曲率中心C1)をレール曲率中心C2の位置まで平行移動させるための行列T1と、溶接ロボット1を位置Pg6からレール曲率中心C2回りに回転量θgだけ回転させた位置(すなわち、溶接ロボット1を位置Pg6から移動量Myだけ移動させた位置)を表すための行列T5と、行列T5による回転後の溶接ロボット1の位置において、溶接ロボット1が移動量Mx、Mz、MB、及びMTだけ移動した場合の溶接トーチ13の先端の位置及び姿勢を表すための行列T3と、の積により求められる。
エリア6において、溶接ロボット1は曲線部2a上を移動する。すなわち、エリア6における溶接ロボット1の移動は、YZ平面上のレール曲率中心C2回りの回転移動である。
YZ平面において、溶接ロボット1の、位置Pg6からのレール曲率中心C2回りの回転量をθg(ラジアン)とすると、移動量Myは、以下の式のように、回転量θgとして表すことができる。なお、Rgは、曲線部2aの半径である。
θg=(My÷2πRg)×2π
行列T2は、位置Pg6を、レール曲率中心C2回りに回転量θgだけ回転させることにより生成される。なお、位置Pg6は、レール曲率中心C2からZ方向に+Rgだけ移動した位置である。
なお、行列T1及びT3については、第1実施形態の行列T1及びT3と同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0155】
エリア7における行列Tの生成について説明する。エリア7における行列Tは、溶接ロボット1を位置Pg7から移動量Myだけ移動させた位置を表すための行列T6と、行列T6による移動後の溶接ロボット1の位置において、溶接ロボット1が移動量Mx、Mz、MB、及びMTだけ移動した場合の溶接トーチ13の先端の位置及び姿勢を表すための行列T3と、の積により求められる。
エリア7において、溶接ロボット1は直線部2b上をZ方向(-Z方向)に移動する。
したがって、行列T6は、位置Pg7をZ方向に-Myだけ移動させることにより生成される。なお、位置Pg7は、鋼管曲率中心C1からY方向に+Rg、Z方向に+eだけ移動した位置である。
なお、行列T3については、第1実施形態の行列T3と同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0156】
〔溶接ロボットの移動量を求める計算式について〕
上記のように生成された行列U及び行列Tについて、行列U=行列Tとすることにより、上記溶接条件を満たす溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式が導出される。この計算式は、移動量Mx、My、Mz、MB、MTのそれぞれについて導出される。この計算式は、エリア5~7のそれぞれについて導出される。
【0157】
〔溶接システムの制御系〕
本実施形態における溶接システム100の制御系の基本的な構造及び動作は、第1実施形態の制御系と同様である。
一方で、本実施形態においては、行列Uは、エリア5~7に共通の行列として生成される。行列Tは、エリア5~7のそれぞれについて生成される。
記憶部64は、予め、エリア5~7のそれぞれについて導出された、行列Uと行列Tとが等しくなるときの溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を記憶する。目標トーチ位置計算部627は、記憶部64及びデータ取得部610を介して、上記計算式を取得する。移動量設定部628は、上記計算式に基づき、所定の時刻tにおける溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求め、これらを溶接ロボット1の移動量として設定する。
なお、上記以外の制御系の構成及び動作については、第1実施形態の制御系と同様であるため、記載を省略する。
【0158】
〔溶接システムが実行する制御例〕
図16を参照して、溶接システム100が実行する制御例について説明する。
図16は、本実施形態におけるシステム制御装置6が実行する曲線部8aの溶接処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0159】
なお、曲線部8aの溶接処理の前に、曲率中心判定部623は、鋼管曲率中心C1の位置とレール曲率中心C2の位置とが一致するか否かを判定する。また、鋼管曲率中心C1の位置とレール曲率中心C2の位置とが一致しない場合には、曲率中心判定部623は、鋼管曲率中心C1とレール曲率中心C2とのいずれが鋼管8の中心側に位置するかを判定する。
以下、本実施形態においては、曲率中心判定部623が、鋼管曲率中心C1がレール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置すると判定した場合の曲線部8aの溶接処理の流れを説明する。
【0160】
曲線部8aの溶接処理は、溶接ロボット1が位置Pg5に到達すると開始される。このとき、溶接トーチ13の先端は、エリア5の位置Pc5に位置する。例えば、曲線部8aの溶接処理の開始判定は、位置情報取得部621により取得された溶接ロボット位置情報に基づいて溶接ロボット1の位置を推定し、推定された溶接ロボット1の位置が位置Pg5に到達したか否かを判定することにより実行される。
【0161】
曲線部8aの溶接処理が開始されると、溶接時間カウント部625は、曲線部8aの溶接処理の開始からの経過時間tのカウントを開始する(ステップS201)。
エリア判定部626は、経過時間tにおける溶接トーチ13の先端の目標位置を算出する(ステップS202)。なお、本実施形態においては、エリア5~7の全てにおいて、溶接トーチ13の先端の移動が鋼管曲率中心C1回りの回転移動となるため、目標トーチ位置計算部627は、ステップS202で算出された溶接トーチ13の先端の目標位置を、鋼管8の曲線部8aにおける溶接トーチ13の先端の回転量θcとして算出する(ステップS203)。
【0162】
エリア判定部626は、算出された溶接トーチ13の先端の目標位置が、エリア5~7のうちいずれのエリアに位置するかを判定する(ステップS204)。
【0163】
溶接トーチ13の先端がエリア5に位置すると判定される場合(ステップS204:A5)、移動量設定部628は、エリア5に対応する、溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を取得する。移動量設定部628は、上記計算式に基づき、経過時間tにおける溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを算出し、溶接ロボット1の移動量として設定する(ステップS211)。その後、処理はステップS205に進む。
【0164】
溶接トーチ13の先端がエリア6に位置すると判定される場合(ステップS204:A6)、移動量設定部628は、エリア6に対応する、溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を取得する。エリア6においては、溶接ロボット1の移動がレール曲率中心C2回りの回転移動となるため、移動量設定部628は、まず、上記計算式に基づき、経過時間tにおける、ガイドレール2の曲線部2aにおける溶接ロボット1の位置Pg6からの回転量θgを算出する(ステップS221)。また、移動量設定部628は、上記計算式に基づき、経過時間tにおける溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを算出し、溶接ロボット1の移動量として設定する(ステップS222)。その後、処理はステップS205に進む。
【0165】
溶接トーチ13の先端がエリア7に位置すると判定される場合(ステップS204:A7)、移動量設定部628は、エリア7に対応する、溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを求める計算式を取得する。移動量設定部628は、上記計算式に基づき、経過時間tにおける溶接ロボット1の移動量Mx、My、Mz、MB、MTを算出し、溶接ロボット1の移動量として設定する(ステップS231)。その後、処理はステップS205に進む。
【0166】
曲線部溶接実行制御部629は、各モータ32を駆動して、移動量設定部628により設定された移動量Mx、My、Mz、MB、MTに応じて溶接ロボット1の位置と溶接トーチ13の位置及び姿勢とを変更し、溶接ロボット1に曲線部8aの溶接を実行させる(ステップS205)。
【0167】
その後、エリア判定部626は、溶接トーチ13の先端の位置が、エリア7の終了位置Pc6に到達したか否かを判定する(ステップS206)。
溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc6に到達したと判定される場合(ステップS206:YES)、曲線部溶接実行制御部629は、曲線部8aの溶接処理を終了する。
一方、溶接トーチ13の先端の位置が位置Pc6に到達していない場合(ステップS206:NO)、ステップS202の処理に戻る。この場合、曲線部8aの溶接処理は継続される。
【0168】
以下、上記制御を行った場合の、各エリアにおける溶接ロボット1の具体的な制御内容について説明する。なお、以下に示される溶接ロボット1の制御内容は一例であり、本発明はこれに限られない。
【0169】
まず、エリア8(すなわち、曲線部8aの溶接以外の領域)における制御内容について説明する。エリア8においては、
図17に示すように、溶接ロボット1は一定速度(溶接移動速度Vw)で移動する。以下、エリア8における溶接ロボット1の移動速度を、基準速度とも称する。また、上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量Mxは一定(以下、上下方向移動基準値とも称する)である。前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量Mzは一定(以下、前後方向移動基準値とも称する)である。
図18に示すように、エリア
8において、前後方向zにおけるロボットの速度は0(ゼロ)である。
図19に示すように、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量M
Bは一定(以下、第1軸線回動基準値とも称する)であり、溶接トーチ13は、第1軸線回りに鉛直方向下向きに回動される。
図19に示すように、溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量M
Tは一定であり、0(ゼロ)である。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接トーチ13は、溶接ロボット1の進行方向である左右方向y(すなわち、鋼管8の直線部8b)に常に直交する。
【0170】
エリア5における制御内容について説明する。エリア5における制御部61の制御は、以下の通りである。
制御部61は、例えば、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と、開始位置Pc5と鋼管8の曲線部8aの終了位置Pc6との中間位置である鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第2トーチ接近速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。この時、第2トーチ接近速度は、溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pg6に近づくに連れ、大きくなる。
【0171】
制御部61は、例えば、開始位置Pc5と、開始位置Pc5と終了位置Pc6との中間位置である鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第1トーチ接近加速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。
制御部61は、例えば、開始位置Pg6の近傍を溶接ロボット1が移動する際、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第1トーチ接近減速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。本実施形態において、開始位置Pg6の近傍とは、開始位置Pg6を中央とした、鋼管8の周方向に沿って鋼管8の曲線部8aの曲率半径の20%の長さの領域をいう。すなわち、例えば、鋼管8の曲線部8aの曲率半径が40mmである場合、開始位置Pg6の近傍に係る領域の長さは8mmとなる。開始位置Pg6の近傍に係る領域の両端は、開始位置Pg6から、鋼管8の周方向に沿ってそれぞれ両側に4mmずつ移動した部分に位置することとなる。
この時、第1トーチ接近減速度の絶対値は、第1トーチ接近加速度の絶対値よりも大きい。
【0172】
エリア5においては、
図17に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア5における移動速度まで瞬間的に加速する。瞬間的というのはエリア8からエリア5に到達したタイミングである。また、その後、溶接ロボット1は、エリア5の開始位置Pg5から終了位置Pg6まで、所定の負の加速度で減速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きい。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図18に示すように、エリア5において、前後方向zにおける溶接ロボット1の速度は減少する。つまり、移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、前後方向移動基準値から減少していく。すなわち、溶接トーチ13は、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、鋼管8に近づく方向に移動する。
移動量M
Bは、
図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、第1軸線回動基準値から増加していく。すなわち、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量M
Tは、
図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、0から減少していく。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接ロボット1が位置Pg5から位置Pg6まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜していく。
【0173】
エリア6における制御内容について説明する。エリア6における制御部61の制御は、以下の通りである。
制御部61は、例えば、開始位置Pc5と、開始位置Pc5と終了位置Pc6との中間位置である鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接ロボット1が第1ロボット速度で移動するよう、速度変更部を制御する。この時、第1ロボット速度は、溶接トーチ13の先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、大きくなる。
【0174】
制御部61は、例えば、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と、開始位置Pc5と終了位置Pc6との中間位置である鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aを移動する際に、溶接ロボット1が第1ロボット加速度で移動するよう、速度変更部を制御する。
制御部61は、例えば、溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pg6に略到達する際に、溶接ロボット1が第1ロボット減速度で移動するよう、速度変更部を制御する。ここで、本実施形態において、溶接ロボット1が開始位置Pg6に略到達するとは、溶接ロボット1が開始位置Pg6の近傍に到達することをいう。
この時、第1ロボット減速度の絶対値は、第1ロボット加速度の絶対値より、大きい。
【0175】
制御部61は、例えば、開始位置Pg6と、開始位置Pg6とガイドレール2の曲線部2aの終了位置Pg7との中間位置であるガイドレール中間位置と、の間を溶接ロボット1が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第1トーチ接近速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。この時、第1トーチ接近速度は、溶接ロボット1がガイドレール中間位置に近づくに連れ、大きくなる。
【0176】
制御部61は、例えば、鋼管中間位置と鋼管8の曲線部8aの終了位置Pc6との間を溶接トーチ13の先端が移動し且つガイドレール2の曲線部2aを溶接ロボット1が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第1トーチ離間速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。この時、第1トーチ離間速度は、終了位置Pc6に近づくに連れ、大きくなる。
【0177】
制御部61は、例えば、鋼管中間位置と終了位置Pc6との間を溶接トーチ13の先端が移動し且つガイドレール2の曲線部2aを溶接ロボット1が移動する際に、溶接ロボット1が第2ロボット速度で移動するよう、速度変更部を制御する。この時、第2ロボット速度は、溶接トーチ13の先端が終了位置Pc6に近づくに連れ、小さくなる。
【0178】
制御部61は、例えば、鋼管中間位置と終了位置Pc6との間を溶接トーチ13の先端が移動し且つガイドレール2の曲線部2aを溶接ロボット1が移動する際に、溶接ロボット1が第2ロボット減速度で移動するよう、速度変更部を制御する。
制御部61は、例えば、溶接トーチ13の先端が終了位置Pc6に略到達する際に、溶接ロボット1が第2加速度で移動するよう、速度変更部を制御する。ここで、本実施形態において、溶接トーチ13の先端が終了位置Pc6に略到達するとは、溶接トーチ13の先端が終了位置Pc6の近傍に到達することをいう。終了位置Pc6の近傍とは、終了位置Pc6を中央とした、鋼管8の周方向に沿って鋼管8の曲線部8aの曲率半径の20%の長さの領域をいう。すなわち、例えば、鋼管8の曲線部8aの曲率半径が40mmである場合、終了位置Pc6の近傍に係る領域の長さは8mmとなる。終了位置Pc6の近傍に係る領域の両端は、終了位置Pc6から、鋼管8の周方向に沿ってそれぞれ両側に4mmずつ移動した部分に位置することとなる。
この時、第2ロボット加速度の絶対値は、第2ロボット減速度の絶対値より、大きい。
【0179】
制御部61は、例えば、開始位置Pc5と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、所定方向と反対方向への溶接トーチ13の傾斜が当該移動するに連れて小さくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。
制御部61は、例えば、鋼管中間位置と終了位置Pc6との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、所定方向への溶接トーチ13の傾斜が当該移動するに連れて大きくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。
【0180】
制御部61は、例えば、終了位置Pc6の近傍を溶接トーチ13の先端が移動し且つガイドレール2の曲線部2aを溶接ロボット1が移動する際、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第1トーチ離間加速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。
制御部61は、例えば、終了位置Pc6と鋼管8の直線部8bとの間を溶接トーチ13の先端が移動し且つガイドレール2の直線部2bを溶接ロボット1が移動する際、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第1トーチ離間減速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。
この時、第1トーチ離間減速度の絶対値は、第1トーチ離間加速度の絶対値より大きい。
エリア6においては、
図17に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きいが、エリア5における移動速度よりも小さくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア6における移動速度まで瞬間的に減速する。瞬間的というのはエリア5からエリア6に到達したタイミングである。また、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置までの範囲では、溶接ロボット1は、エリア6の開始位置Pg6から上記中間位置まで、所定の正の加速度で加速し続ける。その後、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7までの範囲では、溶接ロボット1は、上記中間位置からエリア6の終了位置Pg7まで、所定の負の加速度で減速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きく、エリア5における移動速度よりも小さい。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図18に示すように、エリア6において溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するまでの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は負である。つまり、移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い減少していく。
図18に示すように、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するまでの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は正である。つまり、移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い増加していく。
すなわち、溶接トーチ13は、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置までの範囲では、鋼管8に近づく方向に移動し、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7までの範囲では、鋼管8から離れる方向に移動する。
移動量M
Bは、
図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い増加していく。なお、この場合であっても、移動量M
Bが第1軸線回動基準値よりも小さくなることはない。すなわち、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなり、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が大きくなる。
移動量M
Tは、
図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg7まで移動するに従い増加していく。また、移動量M
Tは、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置に位置するときに0となる。移動量M
Tの値は、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置と位置Pg7との間にあるときにプラスとなる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接ロボット1がエリア5の終端位置である位置Pg6に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向と反対側へ傾斜している。溶接ロボット1が位置Pg6から位置Pg6と位置Pg7との中間位置まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向と反対側への傾斜が小さくなっていき、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。その後、溶接ロボット1が位置Pg6と位置Pg7との中間位置から位置Pg7まで移動するに従い、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜していく。
【0181】
エリア7における制御内容について説明する。エリア7における制御部61の制御は、以下の通りである。
制御部61は、例えば、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と終了位置Pc6との中間位置である鋼管中間位置と、終了位置Pc6と、の間を溶接トーチ13の先端が移動し且つガイドレール2の直線部2bを溶接ロボット1が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8から離れる方向に第1トーチ離間速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。この時、第1トーチ離間速度は、溶接トーチ13の先端が終了位置Pc6に近づくに連れ、小さくなる。
エリア7においては、
図17に示すように、溶接ロボット1の移動速度は基準速度よりも大きく、かつエリア6における移動速度よりも大きくなる。すなわち、溶接ロボット1は、エリア7における移動速度まで瞬間的に加速する。瞬間的というのはエリア6からエリア7に到達したタイミングである。また、その後、溶接ロボット1は、エリア7の開始位置Pg7から終了位置Pg8まで、所定の正の加速度で加速し続ける。なお、この場合であっても、溶接ロボット1の移動速度は基準速度及びエリア6における移動速度よりも大きい。
移動量Mxは、上下方向移動基準値と等しい。
図18に示すように、エリア7において溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8までの、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は、プラス値から0(ゼロ)に向かって減少する。つまり、移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い減少していく。
図18に示すように、エリア7において溶接ロボット1が位置Pg8に到達した時、溶接ロボット1の前後方向zの移動速度は0(ゼロ)になる。つまり、移動量Mzは、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると前後方向移動基準値と等しくなる。すなわち、溶接トーチ13は、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い、鋼管8から離れる方向に移動する。
移動量M
Bは、
図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると第1軸線回動基準値と等しくなる。すなわち、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い、溶接トーチ13の鉛直方向下向きの傾斜が小さくなる。
移動量M
Tは、
図19に示すように、溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い減少していき、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると0となる。すなわち、上下方向xに沿って見て、溶接ロボット1がエリア6の終端位置である位置Pg7に位置するとき、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向側へ傾斜している。溶接ロボット1が位置Pg7から位置Pg8まで移動するに従い、溶接トーチ13の溶接ロボット1の進行方向側への傾斜が小さくなっていき、溶接ロボット1が位置Pg8に到達すると、溶接トーチ13は溶接ロボット1の進行方向に直交する。
【0182】
以上説明したように、第2実施形態に係る溶接システム100によれば、制御部61は、ガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pg6と、ガイドレール中間位置と、の間を溶接ロボット1が移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第1トーチ接近速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、鋼管曲率中心C1が、レール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する場合に、溶接トーチ13の先端が鋼管8から離れることを抑えることができる。
【0183】
ここで、鋼管曲率中心C1が、レール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する場合、ガイドレール2と鋼管8との距離は、ガイドレール2の直線部2bと鋼管8の直線部8bとの間において最も近く、ガイドレール2の曲線部2aの中間位置であるガイドレール中間位置と鋼管中間位置との間において最も遠くなる。これに対し、第1トーチ接近速度は、溶接ロボット1がガイドレール中間位置に近づくに連れ、大きくなる。これにより、溶接トーチ13の先端と鋼管8との距離の調整を円滑に行うことができる。したがって、溶接トーチ13による鋼管8の溶接の品質を担保しやすくすることができる。よって、鋼管8の溶接部の全長に亘って一定の溶接品質を維持することができる。
【0184】
また、制御部61は、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第2トーチ接近速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、溶接トーチ13の先端が鋼管8から離れることを抑えることができる。
【0185】
ここで、鋼管曲率中心C1が、レール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する場合、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを移動する際、溶接ロボット1が直線部2bを移動するに連れて、溶接トーチ13の先端が鋼管8から離れる速度が加速度的に増加する。これに対し、第2トーチ接近速度は、溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pg6に近づくに連れ、大きくなる。これにより、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接トーチ13の先端と鋼管8との距離の調整を円滑に行うことができる。
【0186】
また、制御部61は、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と鋼管8の曲線部8aの終了位置Pc6との中間位置である鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを移動する際に、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第1トーチ接近加速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御する。これにより、溶接トーチ13が鋼管8に近づく速度を、溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pg6に近づくに連れて大きくすることができる。よって、溶接トーチ13の先端と鋼管8との距離の調整を円滑に行うことができる。
【0187】
ここで、鋼管曲率中心C1が、レール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する場合、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aを移動する際の、溶接トーチ13の先端が鋼管8から離れる速度は、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを移動する際の、溶接トーチ13の先端が鋼管8から離れる速度よりも小さい。これに対し、制御部61は、ガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pc5の近傍を溶接ロボット1が移動する際、溶接トーチ13が鋼管8に近づく方向に第1トーチ接近減速度で移動するよう、狙い位置変更部を制御し、第1トーチ接近減速度の絶対値は、第1トーチ接近加速度の絶対値よりも大きい。これにより、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aを移動する際の、溶接トーチ13の先端が鋼管8から離れる速度に対応することができる。
【0188】
ここで、ガイドレール2の曲線部2aの長さは、鋼管8の曲線部8aの長さよりも長い。このため、溶接トーチ13が鋼管8の曲線部8aを進む速度を、鋼管8の直線部8bを進む速度と同じにするためには、溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aを進む速度を、溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを進む速度よりも速くする必要がある。これに対し、制御部61は、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と、鋼管中間位置と、の間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、溶接ロボット1が第1ロボット速度で移動するよう、速度変更部を制御する。これにより、溶接トーチ13が鋼管8の曲線部8aを進む速度を、鋼管8の直線部8bを進む速度と同じにするように制御することができる。
【0189】
また、鋼管8の曲線部8aを溶接する際、溶接トーチ13の向きと鋼管8の曲線部8aの法線方向とが一致するように、溶接トーチ13の向きを変更する場合がある。これに対し、第1ロボット速度は、溶接トーチ13の先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、大きくなる。これにより、鋼管曲率中心C1が、レール曲率中心C2よりも鋼管8の中心側に位置する場合に、鋼管8の曲線部8aを溶接する際に溶接トーチ13の向きを変更する場合であっても、溶接トーチ13の先端の速度を一定にすることができる。よって、鋼管8の溶接の品質を担保しやすくすることができる。
【0190】
また、制御部61は、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aを移動する際に、溶接ロボット1が第1ロボット加速度で移動するよう、速度変更部を制御する。これにより、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aを移動する際に、溶接ロボット1がガイドレール2を進む速度を、溶接トーチ13の先端が鋼管中間位置に近づくに連れ、大きくすることができる。これにより、溶接トーチ13の先端の速度を一定にすることができる。よって、鋼管8の溶接の品質を担保しやすくすることができる。
【0191】
ここで、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aを移動する際の、溶接ロボット1の移動速度は、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の直線部2bを移動する際の、溶接ロボット1の移動速度よりも遅い。このため、溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pg6に到達した直後から溶接ロボット1を減速する必要がある。これに対し、制御部61は、溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aの開始位置Pg6に略到達する際に、溶接ロボット1が第1ロボット減速度で移動するよう、速度変更部を制御し、第1ロボット減速度の絶対値は、第1ロボット加速度の絶対値より、大きい。これにより、鋼管8の曲線部8aの開始位置Pc5と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動し且つ溶接ロボット1がガイドレール2の曲線部2aを移動する際の溶接ロボット1の移動速度を適当なものにすることができる。
【0192】
また、制御部61は、開始位置Pc5と鋼管中間位置との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、所定方向と反対方向への溶接トーチ13の傾斜が当該移動するに連れて小さくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。また、制御部61は、鋼管中間位置と鋼管8の曲線部8aの終了位置Pc6との間を溶接トーチ13の先端が移動する際に、所定方向への溶接トーチ13の傾斜が当該移動するに連れて大きくなるよう、トーチ向き変更部を制御する。これにより、鋼管8の曲線部8aを溶接する際、溶接トーチ13の向きと鋼管8の曲線部8aの法線方向とが一致するように、溶接トーチ13の向きを変更することができる。
【0193】
〔鋼管曲率中心C1とレール曲率中心C2とが一致する場合について〕
以下、鋼管曲率中心C1と、レール曲率中心C2とが一致する場合の、溶接システム100における制御方法について説明する。
この場合、鋼管8(曲線部8a)とガイドレール2(曲線部2a)との間の周方向の距離が一定である。したがって、溶接トーチ13の溶接トーチ向き、狙い角、及び狙い位置を上記溶接条件<2>~<4>を満たすように設定した状態で、溶接トーチ13の先端が溶接移動速度Vwで移動するような溶接ロボット1の移動速度を設定することにより、上記溶接条件を満たす溶接を行うことができる。なお、この場合の溶接ロボット1の移動速度は一定となる。
【0194】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0195】
例えば、上記実施形態においては、溶接条件として、溶接条件<1>~<4>を記載した。しかしながら、溶接条件<1>~<4>のうち少なくとも1つを満たすように、溶接ロボット1の移動量を制御してもよい。
【0196】
上記実施形態においては、溶接システム100の制御対象として、溶接ロボット1の上下方向xにおける溶接トーチ13の移動量Mx、溶接ロボット1の左右方向yの移動量My、溶接ロボット1の前後方向zにおける溶接トーチ13の移動量Mz、溶接トーチ13の第1軸線回りの移動量MB、及び溶接トーチ13の第2軸線回りの移動量MTを記載した。しかしながら、溶接システム100の制御対象は、上記移動量のうち少なくとも1つであってもよい。
【0197】
上記実施形態においては、鋼管8を鉛直方向に並べて配置したが、鋼管8は水平方向に並べて配置されてもよい。
【0198】
また、溶接システム100の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0199】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0200】
100 溶接システム
1 溶接ロボット
2 ガイドレール(レール)
2a 曲線部
6 システム制御装置
8 鋼管
8a 曲線部
13 溶接トーチ
33 前後移動部(狙い位置変更部)
34 上下移動部(狙い位置変更部)
35 第1回動部(トーチ向き変更部)
36 第2回動部(トーチ向き変更部)
620 溶接ロボット制御部
621 位置情報取得部
622 形状情報取得部(取得部)
623 曲率中心判定部(判定部)
624 パラメータ設定部(設定部)
625 溶接時間カウント部
626 エリア判定部
627 目標トーチ位置計算部(設定部)
628 移動量設定部(設定部)