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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098315
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】臓器取出用バッグ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
A61B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001749
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善悦
(72)【発明者】
【氏名】大岸 範史
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 淳一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】切除された臓器等を袋本体内に収容しやすく、また臓器等を含んだ袋本体を体外に取り出しやすくできる臓器取出用バッグを提供する。
【解決手段】臓器取出用バッグ1は、開口2aを介して臓器(切除片10)を収容する収容部2bを有する袋本体2と、袋本体2に収容された切除片10を、袋本体2の収容部2bの一部に偏って配置させるように押し込む押込機構3と、を備える。押込機構3は、流体(例えば空気)が供給又は排出される膨縮部3aを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を介して臓器を収容する収容部を有する袋本体と、
前記袋本体に収容された前記臓器を、前記袋本体の前記収容部の一部に偏って配置させるように押し込む押込機構と、を備えることを特徴とする臓器取出用バッグ。
【請求項2】
前記押込機構は、流体が供給されることで膨張し、前記流体が排出されることで収縮する膨縮部であり、
該膨縮部は、前記流体が供給されることで、前記収容部を狭めるように膨張する請求項1に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項3】
前記膨縮部は、前記袋本体の先端部に設けられている請求項2に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項4】
前記膨縮部に接続されたチューブを備え、
該チューブの少なくとも一部は、前記袋本体の内面に沿って配設されている請求項3に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項5】
前記袋本体には、前記収容部の奥端部と前記開口の側の基端部とに延在し、気体を通すルーメンが設けられている請求項4に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項6】
前記袋本体は、前記開口の近傍において、前記収容部の奥側から前記開口の側に向かうにつれて幅広となるフレアー部を有しており、
前記ルーメンの基端部は、前記フレアー部に沿って延在している請求項5に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項7】
前記ルーメンは、前記収容部の中央を挟んで対向して複数本設けられている請求項6に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項8】
前記袋本体が樹脂フィルムで作成されており、
前記ルーメンは、前記袋本体がライン状にヒートシールされて形成されたものである請求項7に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項9】
前記チューブを介して前記膨縮部に前記流体を供給可能な操作部を備え、
該操作部には、前記流体を取り込みつつ、前記流体が漏れることを防ぐ逆止弁が設けられている請求項8に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項10】
前記袋本体には、前記開口とは逆側の奥端部に、前記収容部と外部とを連通する排出開口が設けられており、
該排出開口は、気体を通過させ液体を不通過とするフィルタで塞がれている請求項1から9のいずれか一項に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項11】
前記開口の縁に設けられた紐体を更に備え、
該紐体は、前記開口が開いた状態となるように形状記憶されている請求項10に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項12】
前記袋本体において、前記押込機構による押込み先の端部に牽引紐が取り付けられている請求項11に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項13】
前記膨縮部は、前記袋本体の前記開口の近傍に設けられている請求項2に記載の臓器取出用バッグ。
【請求項14】
前記膨縮部は、前記流体が供給されて膨張した状態において、前記収容部の奥に向かうにつれて前記流体の充填断面積が小さくなるように形成されている請求項13に記載の臓器取出用バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臓器取出用バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍等の病変部が生じた肺等の臓器の一部を切除し、体外へ取り出す際に、各種器具が用いられている。
例えば、特許文献1には、切除された臓器等を収納、摘出可能な臓器取出用バッグ(同文献には、医療用回収袋と記載。)が開示されている。この臓器取出用バッグは、袋本体(同文献には、袋体と記載。)と、袋本体を収容する外筒管と、袋本体の袋開口部を開閉する第一の手段である弾性ワイヤと、第二の手段である開閉用糸と、弾性ワイヤを袋体から分離可能とする封止用糸と、を備える。
また、患者の負担を考慮し、侵襲性を低く抑えるために、体に小さな穴を開け、この穴にカメラや手術器具を通す鏡視下手術が一般に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-021620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された臓器取出用バッグにおいては、切除された臓器等を袋本体内に収容することが困難であった。特に鏡視下手術においては、小さな穴に手術器具を通し、カメラを介して行う手技であるために術野が狭く、臓器等を袋本体内に収容することが困難であった。また、臓器を収容した状態で袋本体ごと体外に取り出すことが困難である場合があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、切除された臓器等を袋本体内に収容しやすく、また臓器等を含んだ袋本体を体外に取り出しやすくできる臓器取出用バッグを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る臓器取出用バッグは、開口を介して臓器を収容する収容部を有する袋本体と、前記袋本体に収容された前記臓器を、前記袋本体の前記収容部の一部に偏って配置させるように押し込む押込機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る臓器取出用バッグによれば、臓器などを収容部の奥に押し込んでその収容状態を安定させ、逆に開口側に押し込むことで臓器の取り出しのアシストをしたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る臓器取出用バッグを示す模式的な正面図である。
図2】臓器取出用バッグに臓器を収容した状態を示す模式図である。
図3】臓器取出用バッグの一部を体内から取り出した状態を示す模式図である。
図4】膨縮部を膨張させて、臓器を開口から出している状態を示す模式図である。
図5】第2実施形態に係るフィルタ付きの臓器取出用バッグを示す模式的な正面図である。
図6】臓器取出用バッグを体内に配置させた状態を示す模式的な正面図である。
図7】膨縮部を膨張させて、臓器を開口から出している状態を示す模式図である。
図8】膨縮部を収縮させて、体外に取り出し可能な臓器取出用バッグの状態を示す模式図である。
図9】第3実施形態に係る臓器取出用バッグを示す模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る臓器取出用バッグについて、図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0010】
なお、本実施形態で用いる図面は、本発明の臓器取出用バッグの構成、形状、臓器取出用バッグを構成する各部材の配置を例示するものであり、本発明を限定するものではない。また、図面は、臓器取出用バッグの長さ、幅、高さといった寸法比を必ずしも正確に表すものではない。
なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0011】
<概要>
まず、本発明の概要について、第1実施形態に係る臓器取出用バッグ1を例に、図1及び図2を主に参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る臓器取出用バッグ1を示す模式的な正面図、図2は、臓器取出用バッグ1に臓器(切除片10)を収容した状態を示す模式図である。
なお、図2、及び後述する図3から図4において、後述する膨縮部3aは、簡略して示されており、実際には、袋本体2の全内周面(少なくとも一部内周面でも可)に形成されており、収容部2b側に張り出すようにして、浮き輪状に膨らむものである。
また、図2から図4に示されて後述するチューブ3cに関して、チューブ3cの基端側及び基端側に接続されたゴム球3bは、切開創30aとは異なる他の穴から体外に配置されている。
【0012】
第1実施形態に係る図1及び図2に示す臓器取出用バッグ1は、開口2aを介して臓器(切除片10、図2参照)を収容する収容部2bを有する袋本体2と、袋本体2に収容された切除片10を、袋本体2の収容部2bの一部に偏って配置させるように押し込む押込機構3と、を備える。
【0013】
以下においては、「押込機構」として、流体(例えば空気)が供給又は排出される膨縮部3aを含むものを例に説明する。
しかしながら、「押込機構」は、臓器(切除片10)が収容部2bの一部に偏って配置させるように、臓器(切除片10)に荷重をかけることができれば他の構成であってもよい。
例えば、袋本体2内に不図示の紐をテーパ螺旋状に摺動可能に配置して、紐を引っ張り、袋本体2を縛ることで、テーパ螺旋状の先から基端側に臓器を移動させる構成であってもよい。
【0014】
上記構成によれば、押込機構3により、収容部2bの一部に偏って配置させるように(例えば、図1及び図2に示す第1実施形態に係る臓器取出用バッグ1のように、開口2a側に)臓器(切除片10)を押し込むことで、切除片10の開口2aから取り出しをアシストすることができる。
逆に、図5に示して後述する第2実施形態に係る臓器取出用バッグ1Xのように、収容部2bの奥に切除片10を押し込むことで、体外に取り出す切除片10の一部が袋本体2から露出することを抑制して病変部が体内に残ることを抑制することができる。「収容部2bの奥」とは、収容部2bにおける開口2aと反対側にあたる奥側の部位(奥端部2cの側)をいうものとする。
【0015】
特に、押込機構3により、体腔内側から袋本体2における切開創30a側に位置する端部側に、切除片10に対して荷重を加えることができる。
従来の臓器取出用バッグは、押込機構を備えないために、体外側から手で引っ張り出す必要があり、体腔内側から切除片10に荷重を加えることができなかった。
押込機構3を備える臓器取出用バッグ1は、従来の臓器取出用バッグと比較して、切除片10を収容した袋本体を体外に取り出す際に、切開創30aに対する拡径方向に切除片10が体腔内で拡張することを抑制でき、体壁30における切開創30aの縁部分に引っかかることを抑制できる。
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る臓器取出用バッグ1について、図1及び図2に加えて、図3及び図4を主に参照して説明する。
図3は、臓器取出用バッグ1の一部を体内から取り出した状態を示す模式図、図4は、膨縮部3aを膨張させて、臓器(切除片10)を開口から出している状態を示す模式図である。
【0017】
本実施形態に係る臓器取出用バッグ1は、ステープラ等の切除具で切除した臓器としての肺の一部(切除片10)を外部に取り出すものである。
しかしながら、肺に限定されず、心臓、肝臓、腎臓、腸その他の臓器(臓器の一部を含む)の取り出しにも利用可能である。
【0018】
臓器取出用バッグ1は、上記のように、開口2aを有して切除片10を収容する収容部2bを備える袋本体2と、収容部2bの一部に偏って配置させるように切除片10を押し込む押込機構3と、を備える。臓器取出用バッグ1は、開口2aを開閉するための紐体4並びに紐体4及び袋本体2を収容可能な収容筒5と、をさらに備える。
【0019】
(袋本体)
本実施形態に係る袋本体2は、ポリウレタンで形成されており、開口2aが設けられた基端部2d側から奥端部2c側に向かうにつれて先窄まりに形成されている。
その他、袋本体2は、切除片10を収容部2b内に入りやすくするために滑り性が高いものが好ましく、ポリウレタンの他、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル樹脂等で形成されるものあってもよい。袋本体2の開口2aの直径は、80mmから100mm、袋本体2の収容部2bの直径は約35mm、袋本体2の先端部分の直径は30mmであり、袋本体2の全体容量400ccから1200ccである。
【0020】
さらに、袋本体2は、切除片10の滑りを良好にして、収容部2bの奥端部2cまで切除片10を滑らせて切除片10を好適に収容可能なように、例えばフッ素コーティング等のコーティング剤で離型処理が施されていると好適である。
袋本体2は、折り畳まれることにより、収容筒5に収容可能に構成されている。
なお、収容筒5内には袋本体2を必ずしも収容できなくてもよく、収容筒5は紐体4のみを通すものであってもよい。
【0021】
袋本体2の内面には、空間を空けてシート2g(図1参照)が張り付けられている。このシート2gは、当該空間に空気が出し入れされることによって膨縮する膨縮部3a(詳細については後述)を構成することになる。
特に、シート2gは、膨縮部3aとして機能するため、シート2gが張り付けられている袋本体2よりも伸縮性が高いと好ましい。
例えば、シート2gの伸縮性を調整するため、袋本体2の厚さよりもシート2gの厚さを薄くする(例えば1/2の厚さにする)と好適である。しかしながら厚さの調整だけでなく、素材の選択によって、伸縮性を調整してもよい。
【0022】
(押込機構)
図3及び図4に示すように、押込機構3は、流体(本実施形態においては空気)が供給されることで膨張し、流体が排出されることで収縮する膨縮部3aである。膨縮部3aは、流体が供給されることで、収容部2bを狭めるように膨張する。膨縮部3aは、袋本体2の先端部(奥端部2c)に設けられている。膨縮部3aは、可撓性を有する樹脂材料等によって形成されており、流体を充填可能な充填空間を有するものである。
【0023】
「流体」としては、膨縮部3a内に供給及び排出できれば任意のものを適用でき、例えば、本実施形態における空気の他に、水や生理食塩水等であってもよい。
本実施形態における膨縮部3aは、上記のように、袋本体2の奥端部2cの一部がシート2gによって二枚構成になっている。この奥端部2cの二枚のシートの間に、後述するゴム球3b及びチューブ3cによって外部の空気が供給されることで、二枚のシートのうち内面側のシート2gが収容部2bを狭めるように張り出す構成となっている。
【0024】
上記構成によれば、膨縮部3aに流体を供給して膨縮部3aを膨張させることで、収容部2bを狭めて臓器(切除片10)を一部(本実施形態においては、開口2a側)に偏って配置させることができる。このため、開口側(体外)への切除片10の移動を好適にアシストできる。
【0025】
また、膨縮部3aから流体を排出することで、切除片10の収容部2bを広げることができ、本実施形態においては切除片10を収容部2bの奥まで収容することができる。
【0026】
図1に示すように、臓器取出用バッグ1は、流体(気体)を膨縮部3a内に供給するために膨縮部3aに接続されたチューブ3cを備える。チューブ3cの少なくとも一部は、袋本体2の内面に沿って配設されていると好適である。
「袋本体2の内面に沿って」とは、袋本体2の外面に露出していないことを意味し、袋本体2の内面上を沿うもの他、袋本体2の肉厚内部に埋め込まれて、内面に沿う構成をも含むものとする。
【0027】
上記構成によれば、チューブ3cの一部が袋本体2の内面に沿って配設されていることで、術者の手や周囲のものに触れて手技の障害となることを回避できる。また、チューブ3cが体腔壁(胸腔壁)に当たることを防いで侵襲性を低くすることができる。
【0028】
図1に示すように、臓器取出用バッグ1は、チューブ3cを介して膨縮部3aに流体(気体)を供給可能な操作部(ゴム球3b)を備える。
ゴム球3bには、流体を取り込みつつ、流体が漏れることを防ぐ2つの逆止弁3dが拡縮部分を挟んだ位置に設けられている。
膨縮部3aに流体を供給可能な操作部としては、ゴム球3bの他に、シリンジ等であってもよい。
【0029】
逆止弁3dとしては、例えば、ダックビル弁が挙げられるが、流体が外部に漏れ出ることを防止できれば、ダックビル弁に限定されない。また、ゴム球3bには不図示の三方活栓が接続されており、この三方活栓により、膨縮部3aの流体を体外に排出して膨縮部3aを収縮可能に構成されている。
上記構成によれば、操作部(ゴム球3b)を操作することで、膨縮部3aに気体(流体)を容易に供給することができる。
【0030】
また、ゴム球3bが接続されたチューブ3cの先端の開口は、膨縮部3aに対して奥行方向中央部分よりも奥側に向けられている。
このため、チューブ3cから供給される空気(流体)は、膨縮部3aの奥側から供給されることになり、収容部2bに収容された切除片10を開口2a側に押し込むように荷重を加えやすくなる。
【0031】
(紐体及び収容筒)
臓器取出用バッグ1は、袋本体2の開口2aを縛るものとして、図1においては、形状記憶されておらず、弾性復元力もない紐体4を備える例を示している。紐体4は、2本設けられて収容筒5に摺動可能に通され、通された先で袋本体2の開口2aを構成する縁(例えば不図示の折返し部分)に通されている。紐体4を牽引にして、収容筒5から引出し長さを短くすることで、袋本体2の開口2aを縛ることができる。
【0032】
また、臓器取出用バッグ1は、開口2aの縁に設けられた図2に示す紐体24(ワイヤ)を備えるようにしてもよい。紐体24は、開口2aが開いた状態となるように形状記憶されていると好適である。
開口2aが開いた状態となるように紐体24が形状記憶されていることで、収容筒5から紐体24を引き出すのみで、特に操作せずとも開口2aが開き、体腔(胸腔)内において臓器(切除片10)を収容しやすくなる。
【0033】
<第1手技>
次に、臓器取出用バッグ1を用いた切除片10の体外への取出手技について、図2から図4を主に参照して説明する。
術者は、隣接する肋骨間の体壁30を約4cm程度切開して、不図示の開創器で切開創30aを広げた状態で、臓器取出用バッグ1の袋本体2を体腔(胸腔)内に導入する。本実施形態においては、不図示の開創器(切開創ガード20のみを図示)によって、形成される体内につながる開口(切開創30a)は、例えば約2.5cm×約3.0cmの長方形状に形成されている。
【0034】
次に、術者は、不図示のステープラ等で切除した切除片10を、不図示の鉗子を用いて袋本体2の収容部2b内に収容する(図2参照)。
そして、術者は、収容筒5、収容筒5に接続された紐体24及び紐体24に接続された袋本体2の基端部2dを引き上げて、図3に示すように、これらを切開創30aから体外に引き出す。
【0035】
そして、術者は、ゴム球3bを操作することで(潰す操作と潰す力を緩める操作を数回繰り返すことで)、チューブ3cを介して、膨縮部3aに空気を導入し膨張させる。膨縮部3aが膨張することで、収容部2bの奥端部2c側が狭まることとなり、膨張した膨縮部3aにより、図4に示すように、切除片10は開口2a側にスムーズに押し出されることとなる。
【0036】
<第2実施形態>
上記実施形態に係る膨縮部3aは、袋本体2の奥端部2c側に設けられているものとして説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
次に、袋本体2の開口2aの近傍側(基端部2d側)に設けられた膨縮部13aを備える第2実施形態に係る臓器取出用バッグ1Xについて、図5から図8を主に参照して説明する。
【0037】
図5は、第2実施形態に係るフィルタ14付きの臓器取出用バッグ1Xを示す模式的な正面図である。図6は、臓器取出用バッグ1Xを体内に配置させた状態を示す模式的な正面図である。図7は、膨縮部13aを膨張させて、臓器(切除片10)を開口2aから出している状態を示す模式図、図8は、膨縮部13aを収縮させて、体外に取り出し可能な臓器取出用バッグ1Xの状態を示す模式図である。
なお、図6から図8においては、フィルタ14の図示を省略している。
【0038】
図5に示すように、本実施形態に係る臓器取出用バッグ1Xに設けられた膨縮部13aは、第1実施形態に係る膨縮部3aと異なり、袋本体2の開口2aの近傍に設けられている。膨縮部13aは、流体(気体)が供給されることで、収容部2bの開口2aの近傍を狭めるように膨張する。
【0039】
膨縮部13aが設けられている「袋本体2の開口2aの近傍」とは、袋本体2において、少なくとも収容方向の中央よりも開口2a側にあることをいう。膨縮部13aが設けられている「袋本体2の開口2aの近傍」が、収容部2bの奥行方向(収容方向)における開口2a側の1/3の距離の範囲内にあると、収容部2bに収容した切除片10に対し、奥行方向への荷重を加えやすくなるため好適である。
【0040】
上記構成によれば、膨縮部13aに流体を供給することで、収容部2bの開口2aの近傍を狭めて、臓器(切除片10)を収容部2bの奥に押し込むことができる。
また、膨縮部13aから流体を排出することで、袋本体2を収縮可能として袋本体2に収容された切除片10を体外に出しやすくなり、また切除片10とともに臓器取出用バッグ1Xを体外に排出しやすくなる。
【0041】
膨縮部13aは、流体が供給されて膨張した状態において、収容部2bの奥に向かうにつれて流体の充填断面積が小さくなるように形成されている。
「充填断面積」とは、袋本体2の奥行方向に対して直交する方向に膨縮部13aを切断した場合における膨縮部13aの内部空間の断面積である。また、「収容部2bの奥に向かうにつれて流体の充填断面積が小さくなる」とは、少なくとも一部において成立していればよく、特に開口2aの近傍においてこのように形成されているとよい。
【0042】
上記構成によれば、膨縮部13aが、収容部2bの奥に向かうにつれて流体の充填断面積が小さくなるように形成されていることで、膨縮部13aに流体を注入したときに、臓器(切除片10)を収容部2bの奥に押し込むように荷重を加えやすくなる。
換言すると、膨縮部13aが、収容部2bの開口2a側に向かうにつれて流体の充填断面積が大きくなるように形成されていることで、膨縮部13aに流体を注入したときに、開口2a側が奥側よりも大きく膨らむことになる。このため、膨縮部13aは、臓器(切除片10)を収容部2bの奥に押し込むように、荷重を加えやすくなる。
【0043】
図5に示すように、袋本体2は、開口2aの近傍において、収容部2bの奥側(奥端部2c側)から開口2aの側に向かうにつれて幅広となるフレアー部2fを有する。
本実施形態に係る膨縮部13aは、袋本体2のフレアー部2fに形成されている。
特に、膨縮部13aは、収容部2bの開口2a側に向かうにつれて、袋本体2の奥行方向に対して直交する方向に膨縮部13aを切断した場合の膨縮部13aの周回する内部空間の幅が、大きくなるように形成されていると好適である。
【0044】
また、ゴム球3bが接続されたチューブ3cは、膨縮部13aに対して奥行方向中央部分よりも開口2a側に接続されている。
このため、チューブ3cから供給される空気(流体)は、膨縮部13aの開口2a側から供給されることになり、収容部2bに収容された切除片10を収容部2bの奥に押し込むように荷重を加えやすくなる。
【0045】
図5に示すように、袋本体2における開口2aとは逆側の奥端部2cに、収容部2bと外部とを連通する排出開口15が設けられている。排出開口15は、気体を通過させ液体を不通過とするフィルタ14で塞がれている。フィルタ14は疎水性フィルタであると好適である。
「液体を不通過とする」は、膨縮部13aの膨張させる程度の加圧では液体(血液)が漏出しない状態にすることをいうものとする。
【0046】
上記構成によれば、排出開口15が設けられて気体を外部(収容部2b外)に排出できることで、押込機構13により臓器(切除片10)を袋本体2の奥に押し込む際に、収容部2bの内圧が高まることによって切除片10の押込みの妨げとなることを防止できる。
さらに、排出開口15にフィルタ14が設けられていることによって、切除片10の一部や血液等の体液等が、袋本体2から漏れ出ることを防止できる。
【0047】
図5に示すように、袋本体2において、押込機構13による押込み先の端部に牽引紐17が取り付けられている。
牽引紐17の基端部にリング17aが取り付けられている。術者は、このリング17aに指をかけて、袋本体2の奥端部2cを切開創30a側に引っ張り出すことが可能となっている。
【0048】
上記構成によれば、袋本体2における押込機構13による押込み先の端部に牽引紐17が取り付けられていることで、後述するように押し込み先に細い状態で収容された臓器(切除片10)を、図7に示すように、牽引紐17側から体内に出して取り出しやすくなる。
【0049】
<第2手技>
次に、臓器取出用バッグ1Xを用いた切除片10の体外への取出手技について、図6から図8を主に参照して説明する。
術者は、不図示の開創器の切開創ガード20が取り付けられた切開創30aを広げた状態で、臓器取出用バッグ1Xの袋本体2を体腔(胸腔)内に導入する(図6参照)。この時、牽引紐17、ゴム球3b及び収容筒5については体外側にある。
【0050】
次に、術者は、不図示のステープラ等で切除した切除片10を、不図示の鉗子を用いて袋本体2の収容部2b内に収容する(図6参照)。
そして、術者は、ゴム球3bを操作することで、チューブ3cを介して、膨縮部13aに空気を導入し膨張させる。
【0051】
膨縮部13aが膨張することで、収容部2bの基端部2d側が狭まることとなり、膨張した膨縮部13aにより、切除片10は奥端部2c側に押し込まれることとなる。このとき、奥端部2cに排出開口15が形成されていることで、袋本体2に設けられた収容部2bの奥端部2cにある気体を排出開口15から排出できるため、切除片10の奥端部2c側への押込みを阻害しない。
また、排出開口15にフィルタ14が取り付けられていることで、切除片10の一部や血液等の体液等が、袋本体2の排出開口15から漏れ出ることを防止できる。
【0052】
そして、術者は、牽引紐17を牽引し、袋本体2を体内に入れるときの向きとは逆向きにして、図7に示すように、袋本体2の奥端部2cを切開創30aから体外に引き出す。
このように、牽引紐17を引っ張ることで、切除片10及び袋本体2の先端側(奥端部2c側)を引き出すことができる。袋本体2に加え、袋本体2に収容された切除片10も開口2aから離れるにつれて細く形成されているため、開口2a側よりも切開創30aから体外に出しやすくなる。
【0053】
最後に、術者は、図8に示すように、袋本体2越しに切除片10を把持した状態で、ゴム球3bからチューブ3cを介して膨縮部13aの空気を抜いて収縮させて、切除片10ごと臓器取出用バッグ1Xを体外に引き出す。
【0054】
<第3実施形態>
上記実施形態においては、切除片10を収容部2bの奥端部2cに押し込む際に、奥端部2cの空気を排出開口15によって逃がす構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
次に、ルーメン16を備える第3実施形態に係る臓器取出用バッグ1Yについて、図9を主に参照して説明する。
図9は、第3実施形態に係る臓器取出用バッグ1Yを示す模式的な説明図である。
【0055】
図9に示すように、臓器取出用バッグ1Yに係る袋本体2には、収容部2bの奥端部2cと開口2aの側の基端部2dとに延在し、収容部2b内の気体を開口2aに通すルーメン16が設けられている。
ルーメン16は、袋本体2とは別個に設けられて袋本体2に取り付けられる不図示のチューブを含まず、袋本体2自体に、ヒートシールや接着等によって形成されるものをいうものとする。
【0056】
上記構成によれば、押込機構13で切除片10を収容部2bの奥端部2cに押し込む際に、ルーメン16を介して気体を奥端部2cから基端部2dに逃がすことができる。このため、押込機構13の押圧により収容部2bの内圧が高まることによって切除片10の押込みの妨げとなることを防止でき、切除片10の一部及び血液等が、袋本体2から漏れ出ることを防止できる。
【0057】
図9に示すように、袋本体2は、開口2aの近傍において、収容部2bの奥側(奥端部2c側)から開口2aの側に向かうにつれて幅広となるフレアー部2fを有している。ルーメン16の基端部16aは、フレアー部2fに沿って延在していると好適である。
つまり、ルーメン16が、切除片10が収まる収容部2bに形成されている部位よりも、フレアー部2fに形成されている部位が拡径方向に拡がって形成されている。
【0058】
上記構成によれば、切除片10が開口2aの中央に投入されたときに、エアーの逃げ口となるルーメン16の基端部16aがフレアー部2fに沿って延在していることで、切除片10がルーメン16を塞ぎにくくなる。
【0059】
図9に示すように、ルーメン16は、収容部2bの中央を挟んで対向して複数本(本実施形態においては2本)設けられていると好適である。
上記構成によれば、収容部2bにおいて臓器(切除片10)が偏って投入された場合、一方のルーメン16が臓器で塞がれても、他方のルーメン16により気体の基端側への戻りを維持することができる。
【0060】
袋本体2が樹脂フィルム(例えば、上記のようにポリウレタン)で作成されている。ルーメン16は、袋本体2がライン状にヒートシールされて形成されたものであると好適である。なお、上記のように、袋本体2は、ポリウレタンの他、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル樹脂等で形成されるものあってもよい。
上記構成によれば、2枚の樹脂フィルムを重ねてヒートシール(高周波溶着)することによって、ルーメン16を容易に形成することができる。しかしながら、ルーメン16は、ヒートシールによらずに、袋本体2の肉厚内に形成された細穴であってもよい。
【0061】
なお、本発明に係る臓器取出用バッグ(1、1X、1Y)についての各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0062】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)
開口を介して臓器を収容する収容部を有する袋本体と、
前記袋本体に収容された前記臓器を、前記袋本体の前記収容部の一部に偏って配置させるように押し込む押込機構と、を備えることを特徴とする臓器取出用バッグ。
(2)
前記押込機構は、流体が供給されることで膨張し、前記流体が排出されることで収縮する膨縮部であり、
該膨縮部は、前記流体が供給されることで、前記収容部を狭めるように膨張する(1)に記載の臓器取出用バッグ。
(3)
前記膨縮部は、前記袋本体の先端部に設けられている(2)に記載の臓器取出用バッグ。
(4)
前記膨縮部に接続されたチューブを備え、
該チューブの少なくとも一部は、前記袋本体の内面に沿って配設されている(2)又は(3)に記載の臓器取出用バッグ。
(5)
前記袋本体には、前記収容部の奥端部と前記開口の側の基端部とに延在し、気体を通すルーメンが設けられている(1)から(4)のいずれか一項に記載の臓器取出用バッグ。
(6)
前記袋本体は、前記開口の近傍において、前記収容部の奥側から前記開口の側に向かうにつれて幅広となるフレアー部を有しており、
前記ルーメンの基端部は、前記フレアー部に沿って延在している(5)に記載の臓器取出用バッグ。
(7)
前記ルーメンは、前記収容部の中央を挟んで対向して複数本設けられている(5)又は(6)に記載の臓器取出用バッグ。
(8)
前記袋本体が樹脂フィルムで作成されており、
前記ルーメンは、前記袋本体がライン状にヒートシールされて形成されたものである(5)から(7)のいずれか一項に記載の臓器取出用バッグ。
(9)
前記チューブを介して前記膨縮部に前記流体を供給可能な操作部を備え、
該操作部には、前記流体を取り込みつつ、前記流体が漏れることを防ぐ逆止弁が設けられている(2)を引用する(3)から(8)のいずれか一項に記載の臓器取出用バッグ。
(10)
前記袋本体には、前記開口とは逆側の奥端部に、前記収容部と外部とを連通する排出開口が設けられており、
該排出開口は、気体を通過させ液体を不通過とするフィルタで塞がれている(1)から(9)のいずれか一項に記載の臓器取出用バッグ。
(11)
前記開口の縁に設けられた紐体を更に備え、
該紐体は、前記開口が開いた状態となるように形状記憶されている(1)から(10)のいずれか一項に記載の臓器取出用バッグ。
(12)
前記袋本体において、前記押込機構による押込み先の端部に牽引紐が取り付けられている(1)から(11)のいずれか一項に記載の臓器取出用バッグ。
(13)
前記膨縮部は、前記袋本体の前記開口の近傍に設けられている(2)に記載の臓器取出用バッグ。
(14)
前記膨縮部は、前記流体が供給されて膨張した状態において、前記収容部の奥に向かうにつれて前記流体の充填断面積が小さくなるように形成されている(13)に記載の臓器取出用バッグ。
【符号の説明】
【0063】
1、1X、1Y 臓器取出用バッグ
2 袋本体
2a 開口
2b 収容部
2c 奥端部
2d 基端部
2f フレアー部
2g シート
3 押込機構
3a 膨縮部
3b ゴム球(操作部)
3c チューブ
3d 逆止弁
4 紐体
5 収容筒
10 切除片(臓器)
13 押込機構
13a 膨縮部
14 フィルタ
15 排出開口
16 ルーメン
16a 基端部
17 牽引紐
17a リング
20 切開創ガード
24 紐体
30 体壁
30a 切開創
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9