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特開2024-98334静磁場磁石及び磁気共鳴イメージング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098334
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】静磁場磁石及び磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
A61B5/055 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001782
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 良知
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB32
4C096AB47
4C096AB50
4C096AD08
4C096CA02
4C096CA03
4C096CA15
4C096CA17
4C096CA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オープン型の静磁場磁石を用いた撮像において、被検体の頭足方向の撮像領域を広く確保しつつ、撮像中に被検体へ容易にアクセス可能にする。
【解決手段】磁気共鳴撮像装置で用いられる静磁場磁石であって、第1の方向に電流が流される第1ループコイルと、前記第1の方向とは逆方向の第2の方向に電流が流される第2ループコイルと、を有する少なくとも1つのループコイル対を備え、前記第1ループコイルを形成する第1ループで囲まれた平面である第1コイル面と、前記第2ループコイルを形成する第2ループで囲まれた平面である第2コイル面とは、互いに重ならないように、特定の平面の特定の方向に沿って並べて配置され、前記ループコイル対は、前記特定の方向に平行な静磁場を生成し、前記第1、第2ループコイルの夫々は、長軸と短軸を有する形状に形成され、長軸方向に沿う辺が、短軸方向に向かうコイル内側に凹んだ凹部を有するように形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を撮像する磁気共鳴イメージング装置で用いられる静磁場磁石であって、
第1の方向に電流が流される第1のループコイルと、
前記第1の方向とは逆方向の第2の方向に電流が流される第2のループコイルと、
を有する少なくとも1つのループコイル対を備え、
前記第1のループコイルを形成する第1のループで囲まれた平面である第1のコイル面と、前記第2のループコイルを形成する第2のループで囲まれた平面である第2のコイル面とは、互いに重ならないように、特定の平面の特定の方向に沿って並べて配置され、
前記ループコイル対は、前記特定の方向に平行な静磁場を生成し、
前記第1及び第2のループコイルの夫々は、長軸と短軸を有する形状に形成され、長軸方向に沿う辺が、短軸方向に向かう方向であってコイル内側に向かう方向に凹んだ凹部を有するように形成されている、
静磁場磁石。
【請求項2】
前記第1及び第2のループコイルの夫々は、前記第1のループコイルと前記第2のループコイルとの中央に設けられ、前記特定の平面上に設けられる中心線に関して、線対称な形状に形成される、
請求項1に記載の静磁場磁石。
【請求項3】
前記第1及び第2のループコイルの夫々は、対向する2つの長辺と対向する2つの短辺を有する変形長方形の形状に形成され、
前記凹部は、前記対向する2つの長辺の少なくとも一方が、前記変形長方形の内側にむかって凹んだ部位である、
請求項1に記載の静磁場磁石。
【請求項4】
前記対向する2つの長辺は、夫々が内側に凹んだ円弧として形成される、
請求項3に記載の静磁場磁石。
【請求項5】
前記対向する2つの長辺をのうち、一方の円弧の半径と他方の円弧の半径とは、異なるように、前記第1及び第2のループコイルの夫々は形成される、
請求項4に記載の静磁場磁石。
【請求項6】
前記第1のループコイルと前記第2のループコイルは、前記第1のループと前記第2のループの夫々が前記特定の平面内にあって互いに並列となるように配列される、
請求項1に記載の静磁場磁石。
【請求項7】
前記第1のコイル面と前記第2のコイル面とが前記特定の平面内に位置するように、前記第1のループコイルと前記第2のループコイルは配置される、
請求項1に記載の静磁場磁石。
【請求項8】
前記第1のコイル面と前記第2のコイル面とが前記特定の平面に対して所定の傾斜角でチルトするように、前記第1のループコイルと前記第2のループコイルは配置される、
請求項1に記載の静磁場磁石。
【請求項9】
前記第1のコイル面の前記特定の平面に対する前記傾斜角と、前記第2のコイル面の前記特定の平面に対する前記傾斜角は、互いに逆向きの角度である、
請求項8に記載の静磁場磁石。
【請求項10】
前記ループコイル対を複数備え、
前記複数のループコイル対は、前記特定の方向を長軸方向とするとき、前記長軸方向の長さはそれぞれ異なる一方、それぞれの長軸方向の中心位置が合致するように、前記特定の方向に沿って配置される、
請求項1に記載の静磁場磁石。
【請求項11】
前記第1のループコイルと前記第2のループコイルの配置により、前記被検体の撮像領域における前記静磁場の分布は、前記特定の方向、及び、前記特定の平面に平行でかつ前記特定の方向に直交する方向において均一化され、前記特定の平面に直交する方向において単調に変化する、
請求項1に記載の静磁場磁石。
【請求項12】
前記少なくとも1つのループコイル対は、第1のループコイル対と第2のループコイル対とを備えて構成され、
前記第1のループコイル対は、第1の特定の平面に配置され、
前記第2のループコイル対は、第2の特定の平面に配置され、
前記第2の特定の平面は、前記第1の特定の平面に対して平行であり、前記第1の特定の平面と所定の離隔距離を有している、
請求項1に記載の静磁場磁石。
【請求項13】
前記第1のループコイル対と前記第2のループコイル対の配置により、前記被検体の撮像領域における前記静磁場の分布は、前記特定の方向、前記第1または第2の特定の平面に平行でかつ前記特定の方向に直交する方向、及び、前記第1または第2の特定の平面に直交する方向の直交3方向において均一化される、
請求項12に記載の静磁場磁石。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の静磁場磁石を備える磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、静磁場磁石及び磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生する磁気共鳴信号(MR(Magnetic Resonance)信号)を再構成して画像を生成する撮像装置である。
【0003】
多くの磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、ガントリと呼ばれる構成を有しており、ガントリには円筒形の空間(この空間はボアと呼ばれる)が形成されている。天板に横臥した被検体(例えば、患者)は円筒形の空間内に搬入された状態で撮像が行われる。ガントリの内部には、円筒状の静磁場磁石、円筒状の傾斜磁場コイル、及び、円筒状の送受信コイル(即ち、WB(Whole Body)コイル)が収納されている。従来から多くあるこの種の磁気共鳴イメージング装置では、静磁場磁石、傾斜磁場コイル、及び、送受信コイルが円筒形であるため、以下、この種の磁気共鳴イメージング装置を円筒型磁気共鳴イメージング装置と呼ぶものとする。
【0004】
円筒型磁気共鳴イメージング装置では、ボア内の閉鎖空間で撮像されることになるため、例えば、閉所恐怖症などの一部の患者に対しては撮像が困難となる場合がある。
【0005】
これに対して、例えば、2つの円柱形状の静磁場磁石を、それぞれの中心軸が鉛直方向を向くように一方の静磁場磁石を上側に、他方の静磁場磁石を下側に配置し、2つの静磁場磁石によって上下から挟まれた開放空間において、天板に横臥した被検体を撮像するように構成された磁気共鳴イメージング装置が提案、開発されている。この種の磁気共鳴イメージング装置を、オープン型磁気共鳴イメージング装置と呼ぶものとする。オープン型磁気共鳴イメージング装置では、比較的解放された空間で撮像されるため、閉所恐怖症の患者の撮像も可能となる。
【0006】
従来から提案されているオープン型磁気共鳴イメージング装置では、上側と下側の静磁場磁石にそれぞれ内蔵されているコイル(例えば、超電導コイル)は円形のループコイルであり、上側の円形ループコイルと下側の円形ループコイルは、それぞれのコイル面が水平に配置され、かつ、互いに同軸となるように配置されている。上下のループコイルはそれぞれ円形であるため、2つの静磁場磁石によって形成される撮像領域の水平断面の形状は円形となる。
【0007】
このため、横臥した被検体の撮像領域を、被検体の頭足方向に拡大しようとすると、上下の円形ループコイルの径を大きくしなければならず、この結果、上下の静磁場磁石の径も大きくなり、被検体に対して閉所感を与えることになる。
【0008】
また、上下の静磁場磁石の径が大きくなることにより、被検体に経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)等の手技を撮像中に行う際に、被検体へのアクセスが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3808818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、オープン型の静磁場磁石を用いた撮像において、被検体の頭足方向の撮像領域を広く確保しつつ、撮像中に被検体へ容易にアクセスできるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態の静磁場磁石は、被検体を撮像する磁気共鳴イメージング装置で用いられる静磁場磁石であって、第1の方向に電流が流される第1のループコイルと、前記第1の方向とは逆方向の第2の方向に電流が流される第2のループコイルと、を有する少なくとも1つのループコイル対を備え、前記第1のループコイルを形成する第1のループで囲まれた平面である第1のコイル面と、前記第2のループコイルを形成する第2のループで囲まれた平面である第2のコイル面とは、互いに重ならないように、特定の平面の特定の方向に沿って並べて配置され、前記ループコイル対は、前記特定の方向に平行な静磁場を生成し、前記第1及び第2のループコイルの夫々は、長軸と短軸を有する形状に形成され、長軸方向に沿う辺が、短軸方向に向かう方向であってコイル内側に向かう方向に凹んだ凹部を有するように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の磁気共鳴イメージング装置で用いられるオープン型の静磁場磁石の構成概念を示す図。
図2】従来のオープン型の静磁場磁石の構成例を模式的に示す図。
図3】実施形態の静磁場磁石の構成例を模式的に示す図。
図4】(a)は、上側静磁場磁石の内部構成を示す平面図であり、(b)は、上側静磁場磁石と下側静磁場磁石の内部構成例を示す側面図。
図5】静磁場磁石の第1の変形例の構成例を示す図。
図6】(a)は静磁場磁石の第2の変形例の構成例を示す図、(b)は静磁場磁石の第3の変形例の構成例を示す図。
図7】静磁場磁石の第4の変形例の構成例を示す図。
図8】静磁場磁石の第5の変形例の構成例を示す図。
図9】(a)は静磁場磁石の第6の変形例の構成例を示す図、(b)は静磁場磁石の第7の変形例の構成例を示す図。
図10】静磁場磁石10の第8の変形例の構成例を示す図。
図11】静磁場磁石のY-Z面の静磁場分布を示す図。
図12】静磁場磁石のX-Z面の静磁場分布を示す図。
図13】静磁場磁石のX-Y面の静磁場分布を示す図。
図14】第1及び第2のループコイルの形状に応じて、X-Z面における静磁場分布の均一領域が異なることを模式的に示す図。
図15】実施形態及びその各変形例に係る静磁場磁石を具備する磁気共鳴イメージング装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
(静磁場磁石)
図1は、実施形態の磁気共鳴イメージング装置1で用いられるオープン型の静磁場磁石10の構成概念を示す図である。図1に例示するように、静磁場磁石10は、例えば、直方体形状の2つの静磁場磁石10A、10Bを有している。
【0014】
2つの静磁場磁石10A、10Bの間の空間が磁気共鳴イメージング装置1の撮像空間である。例えば、被検体Pが天板80に仰向けに横臥した場合、被検体Pの頭足方向が静磁場磁石10の長手方向になるように、また、被検体Pの左右方向が静磁場磁石10の短手方向になるようにして、被検体Pを撮像することができる。
【0015】
それぞれの静磁場磁石10A、10Bは、第1のループコイル101と第2のループコイル102とで構成されるループコイル対を、少なくとも1つ内蔵している。図1では、1つのループコイル対を内蔵する構成を例示しているが、後述するように、ループコイル対の数は2以上(この場合、ループコイルの数は4以上となる)でもよい。
静磁場磁石10は、超電導磁石として構成されてもよいし、常電導磁石として構成されてもよい。
【0016】
静磁場磁石10が超電導磁石として構成される場合には、第1、第2のループコイル101、102の夫々は、例えば、ニオブチタン(Nb-Ti)等の超電導材料を多数の細いフィラメント状にして銅などの常電動母材に埋め込んだ極細多心線構造として構成することができる。そして、第1、第2のループコイル101、102の夫々は、例えば液体ヘリウムが充填された液体ヘリウム容器(図示せず)に浸漬されている。
【0017】
また、静磁場磁石10が超電導磁石として構成される場合には、励磁モードにおいて静磁場電源(図示せず)から供給される電流を第1、第2のループコイル101、102に印加することで静磁場を発生し、その後、永久電流モードに移行すると、静磁場電源は切り離される。
【0018】
一方、静磁場磁石10が常電導磁石として構成される場合には、第1、第2のループコイル101、102の夫々は、例えば、銅などの常電導線材で構成され、静磁場電源(図示せず)から供給される電流によって静磁場を発生する。
【0019】
図2は、実施形態の静磁場磁石10に対する比較例として、従来のオープン型の静磁場磁石200の構成例を模式的に示す図である。従来のオープン型の静磁場磁石は、上側の静磁場磁石200Aと下側の静磁場磁石200Bを備えて構成されている。そして、上側と下側の静磁場磁石200A、200Bの夫々に、1以上の円形のループコイル、例えば、3つの円形のループコイル201、202、203を備えて構成されている。そして、上側の円形ループコイル201、202、203と下側の円形ループコイル201、202、203は、それぞれのコイル面が水平に配置され、かつ、互いに同軸となるように配置されている。ここで、コイル面とは、ループコイルを形成するループで囲まれた平面のことである。このような構成により、従来のオープン型の静磁場磁石200では、各コイル面に直交する方向に静磁場Bを発生させることができる、
【0020】
ここで、上下のループコイル201、202、203はそれぞれ円形であるため、2つの静磁場磁石200A、200Bによって形成される撮像領域の水平断面の形状も円形となる。このため、横臥した被検体の撮像領域を、被検体の頭足方向に拡大しようとすると、上下の円形ループコイルの径を大きくしなければならない。この結果、上下の静磁場磁石200A、200Bの径は大きくなり、被検体に対して閉所感を与えることになる。
【0021】
また、上下の静磁場磁石200A、200Bの径が大きくなることにより、被検体にPCI等の手技を行う際に、どの方向からも被検体へのアクセスが困難となる。
【0022】
これに対して、図3は、実施形態の静磁場磁石10の構成例を模式的に示す図である。実施形態の静磁場磁石10は、上側の静磁場磁石10Aと下側の静磁場磁石10Bを備えて構成されている。前述したように、静磁場磁石10は、例えば、直方体形状の2つの静磁場磁石10A、10Bを有しており、2つの静磁場磁石10A、10Bの間の空間が磁気共鳴イメージング装置1の撮像領域となる。
【0023】
それぞれの静磁場磁石10A、10Bは、複数のループコイル、例えば、第1のループコイル101と第2のループコイル102とで構成されるループコイル対を内蔵している。そして、これらの複数のループコイルを、直方体形状の静磁場磁石10A、10Bの長手方向に沿って、それぞれのコイル面(ループコイルを形成するループで囲まれた平面)が互いに重なり合わないように配列することによって、静磁場磁石10A、10Bの長手方向に広く、静磁場磁石10A、10Bの短手方向に狭い、非対称な形状の撮像領域を形成することができる。
【0024】
言い換えると、複数のループコイルを、特定の平面の特定の方向に沿って、それぞれのコイル面が互いに重なり合わないように配列することによって、複数のループコイルを収容する静磁場磁石10A、10Bの形状を、前記特定の平面に直交する方向を厚み方向、前記特定の方向を長手方向、前記厚み方向と前記長手方向に直交する方向を短手方向とする、直方体形状とすることが可能となる。
【0025】
この結果、被検体の頭足方向が静磁場磁石10の長手方向になるように横臥させた状態で撮像する場合、静磁場磁石10の短手方向から被検体に容易にアクセスすることが可能となり、PCI等の撮像中の手技が容易となる。
【0026】
また、直方体形状の静磁場磁石10A、10Bの短手方向を、被検体の左右方向(または背腹方向)に対応させることにより、従来の静磁場磁石200に比べると、被検体に対する圧迫感や閉塞感を大幅に軽減することができる。
【0027】
図4は、実施形態の静磁場磁石10の構成をより詳しく示した図であり、図4(a)は、上側静磁場磁石10Aの内部構成を示す平面図であり、図4(b)は、上側静磁場磁石10Aと下側静磁場磁石10Bの内部構成例を示す側面図である。
【0028】
上側静磁場磁石10A及び下側静磁場磁石10Bは、それぞれ、第1のループコイル101と第2のループコイル102とから構成されるループコイル対を有している。
【0029】
図4(a)に示したように、第1のループコイル101を形成する第1のループで囲まれた平面である第1のコイル面401と、第2のループコイル102を形成する第2のループで囲まれた平面である第2のコイル面402とは、互いに重ならないように、特定の平面500の特定の方向に沿って並べて配置される。
【0030】
第1のループコイル101と第2のループコイル102の夫々は、長軸と短軸を有する形状に形成され、長軸方向に沿う辺が、短軸方向に向かう方向であってコイル内側に向かう方向に凹んだ凹部を有するように形成されている。
【0031】
言い換えると、第1のループコイル101と第2のループコイル102の夫々は、縦横比が異なるループ形状に形成されており、第1及び第2のループコイル101、102の夫々は、ループ形状の長手方向に沿う部位がコイルの内側に凹んだ凹部を有するように形成されている。
【0032】
また、第1及び第2のループコイル101、102の夫々は、第1のループコイル101と第2のループコイル102との中央に設けられ、特定の平面500の上に設けられる中心軸300に関して、線対称な形状に形成されている。
【0033】
第1及び第2のループコイル101、102の形状を更に言い換えると、第1のループコイル101、102の夫々は、対向する2つの長辺と対向する2つの短辺を有する変形長方形の形状に形成され、対向する2つの長辺の少なくとも一方が、前記変形長方形の内側にむかって凹んだ部位である凹部として形成されている。
【0034】
例えば、図4(a)に示したように、第1のループコイル101の対向する2つの長辺101a、101bは、内側に凹んだ円弧状の凹部として形成され、同様に、第2のループコイル102の対向する2つの長辺102a、102bも、内側に凹んだ円弧状の凹部として形成されている。
【0035】
図4に示す実施形態では、第1のループコイル101の対向する2つの長辺101a、101bの円弧は同じ半径を有する円弧として形成されており、2つの長辺101a、101bの形状は、長軸301に対して線対称となっている。同様に、第2のループコイル102の対向する2つの長辺102a、102bの円弧も同じ半径を有する円弧として形成されており、2つの長辺102a、102bの形状は、長軸302に対して線対称となっている。
【0036】
第1、第2のループコイル101、102は、夫々の第1、第2のコイル面401、402の略中央に長軸301、302を有している。そして、上述した特定の平面500は、ループコイル対を構成する第1、第2のループコイル101、102の夫々の長軸301、302を含む平面である。また、上述した特定の方向は、特定の平面500内において、2つの長軸301、302の夫々に直交する方向である。なお、上述したように、第1、第2のループコイル101、102で構成されるループコイル対の中心軸300に関して、第1、第2のループコイル101、102は線対称に配置されることになる。また、ループコイル対の長手方向の長さDzは、ループコイル対の外周のZ方向の最大幅に該当し、ループコイル対の短手方向の長さDxは、ループコイル対の外周のX方向の最大幅に該当する。
【0037】
図4では、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸のうち、Z軸方向を上記の特定の方向、X軸方向を長軸301、302に平行な方向、Y軸方向を特定の平面500に直交する方向としている。なお、これらの関係は、後述する図5乃至図15においても同様である。
【0038】
図4(b)に示すように、上側静磁場磁石10Aのループコイル対(第1のループコイル対)は第1の特定の平面500(図4(b)において、上側静磁場磁石10Aに含まれる特定の平面500)に配置され、下側静磁場磁石10Bのループコイル対(第2のループコイル対)は第2の特定の平面500(図4(b)において、下側静磁場磁石10Bに含まれる特定の平面500)に配置される。
【0039】
図4(a)に示すように、上側静磁場磁石10Aの第1のループコイル101には、第1の方向(例えば、図4(a)において時計回り方向)の電流i1が流され、第2のループコイル102には、第1の方向とは逆方向の第2の方向(例えば、図4(a)において反時計回り方向)の電流i2が流される。
【0040】
そして、下側静磁場磁石10Bには、上側静磁場磁石10Aの第1、第2のループコイル101、102とは逆向きの電流が流される。即ち、下側静磁場磁石10Bの第1のループコイル101には、第2の方向の電流i2が流され、第2のループコイル102には、第1の方向の電流i1が流される。
【0041】
上側静磁場磁石10Aと下側静磁場磁石10Bの第1、第2のループコイル101、102に上記のような向きの電流を流すことにより、上側静磁場磁石10Aと下側静磁場磁石10Bとの間の撮像領域において、上記の特定の方向(図4におけるZ方向)に平行な静磁場Bを生成することができる(図3参照)。
【0042】
さらに、上側静磁場磁石10Aと下側静磁場磁石10Bの第1、第2のループコイル101、102に上記のような向きの電流を流すことにより、上側静磁場磁石10Aと下側静磁場磁石10Bとの間の撮像領域において、前記特定の方向(図4におけるZ方向)、前記特定の平面500に直交する方向(図4におけるY方向)、及び、前記特定の平面500に平行でかつ前記特定の方向に直交する方向(図4におけるX方向)の直交3方向において均一化された静磁場分布を生成することが可能となる。
【0043】
(静磁場磁石の変形例)
以下、静磁場磁石10のいくつかの変形例について図5乃至図10を用いて説明する。
図5は、静磁場磁石10の第1の変形例の構成例を示す図である。前述した実施形態の静磁場磁石10では、図4に示したように、上側静磁場磁石10Aと下側の静磁場磁石10Bのいずれにおいても、第1のコイル面401と第2のコイル面402とが前記特定の平面500内に位置するように、第1のループコイル101と第2のループコイル102は配置されている。
【0044】
これに対して、第1の変形例では、第1のコイル面401と第2のコイル面402とが特定の平面500に対して、夫々の長軸301、302の周りに所定の傾斜角θでチルトするように、第1のループコイル101と第2のループコイル102が配置される。ここで、第1のコイル面401の前記特定の平面500に対する傾斜角θと、第2のコイル面402の前記特定の平面500に対する傾斜角θは、互いに逆向きの角度となっている。このように、第1のコイル面401と第2のコイル面402を特定の平面500に対してチルトさせることにより、自由度の高い静磁場分布を形成することが可能となり、より広い均一静磁場領域を得ることができる。
【0045】
図6(a)は、静磁場磁石10の第2の変形例の構成例を示す図である。第2の変形例では、上側静磁場磁石10Aと下側静磁場磁石10Bの構成及び構造は同じであるため、上側静磁場磁石10Aのみを図示している。
【0046】
前述した実施形態の静磁場磁石10では、図4に示したように、第1のループコイル101と第2のループコイル102の形状は、夫々の対向する2つの長辺101a、101b、及び、102a、102bの円弧は同じ半径を有する円弧として形成されており、2つの長辺101a、101b、及び、102a、102bの形状は、夫々の長軸301,302に対して線対称となっている。しかしながら、第1のループコイル101と第2のループコイル102の形状は、これに限定されない。
【0047】
図6(a)に示すように、第1のループコイル101の対向する2つの長辺101aと長辺101bの円弧の半径が異なるように形成されてもよい。例えば、第1のループコイル101の長手方向の外側の長辺101aの円弧の半径が、内側の長辺101bの円弧の半径よりも小さくなるように、第1のループコイル101を形成してもよい。同様に、第2のループコイル102の長手方向の外側の長辺102aの円弧の半径が、内側の長辺102bの円弧の半径よりも小さくなるように、第2のループコイル102を形成してもよい。
【0048】
図6(b)は、静磁場磁石10の第3の変形例の構成例を示す図である。第3の変形例においても、上側静磁場磁石10Aと下側静磁場磁石10Bの構成及び構造は同じであるため、上側静磁場磁石10Aのみを図示している。
【0049】
第3の変形例の第1のループコイル101及び第2のループコイル102では、夫々の長手方向の内側の長辺101b、102bの形状を、所定の半径を有する円弧としつつ、夫々の長手方向の外側の長辺101a、102aの形状を直線としている。
【0050】
上述した第2、第3の変形例では、第1、第2のループコイル101、102は、夫々の長軸301、302に対しては線対称ではないものの、静磁場磁石10の全体としては、中心軸300に対して線対称となっている。
【0051】
図7は、静磁場磁石10の第4の変形例の構成例を示す図である。前述した実施形態の静磁場磁石10では、図4に示したように、第1のループコイル101と第2のループコイル102によって構成される1つのループコイル対を有しているが、ループコイル対の数は、2以上でもよい。
【0052】
図7に示す第4の変形例では、第1のループコイル101と第2のループコイル102によって構成される第1第2ループコイル対と、第3のループコイル103と第4のループコイル104によって構成される第3第4ループコイル対を備えている。
ここで、第1第2ループコイル対と第3第4ループコイル対は、互いの特定の方向(即ち、Z軸方向)の中心位置が中心軸300で一致するように配置される。
【0053】
図7(a)に示すように、第4の変形例においても、第1のループコイル101と第2のループコイル102の、夫々の対向する2つの長辺101a、101b、及び、102a、102bは、夫々のループの内側に向かって凹んだ円弧状の凹部を有するように形成されており、各凹部は同じ半径を有する円弧として形成されている。
【0054】
第3のループコイル103と第4のループコイル104の、夫々の対向する2つの長辺103a、103b、及び、104a、104bも、夫々のループの内側に向かって凹んだ円弧状の凹部を有するように形成されており、各凹部は同じ半径を有する円弧として形成されている。ただし、図7に示す例では、第3のループコイル103と第4のループコイル104の各長辺の円弧の半径と、第1のループコイル101と第2のループコイル102の各長辺の円弧の半径とは異なっている。
【0055】
第1第2ループコイル対が配置される第1第2特定の平面500と、第3第4ループコイル対が配置される第3第4特定の平面501とは、図7(b)に示すように、互いに平行であればよく、両者は必ずしも一致する必要はない。
【0056】
ループコイル対を複数有することにより、ループコイル対が1つの場合に対して、より自由度の高い静磁場分布を形成することが可能となり、より広い均一静磁場領域を得ることができる。
【0057】
図8は、静磁場磁石10の第5の変形例の構成例を示す図である。前述した第4の変形例に係る静磁場磁石10では、図7に示したように、第1のコイル面401と第2のコイル面402とが第1第2特定の平面500に平行で、かつ、第1第2特定の平面500内に位置するように第1のループコイル101と第2のループコイル102が配置され、同様に、第3のコイル面403と第4のコイル面404とが第3第4特定の平面501に平行で、かつ、第3第4特定の平面501内に位置するように第3のループコイル103と第4のループコイル104が配置されている。
【0058】
これに対して、第5の変形例では、第1のコイル面401と第2のコイル面402とが第1第2特定の平面500に対して、夫々の長軸301、302の周りに所定の傾斜角θでチルトするように、第1のループコイル101と第2のループコイル102が配置される。同様に、第3のコイル面403と第4のコイル面404とが第3第4特定の平面501に対して、夫々の長軸303、304の周りに所定の傾斜角θでチルトするように、第3のループコイル103と第4のループコイル104が配置される。ここで、傾斜角θと傾斜角θとは同じであっても異なってもよい。
【0059】
第5の変形例は、各コイル面401~404が、特定の平面500、501に対して傾斜角θ、θを有することにより、第3の変形例に対して、より自由度の高い静磁場分布を形成することが可能となり、より広い均一静磁場領域を得ることができる。
【0060】
図9(a)は、静磁場磁石10の第6の変形例の構成例を示す図である。第6の変形例の静磁場磁石10では、第3の変形例(図3(a))と同様に、例えば、第1のループコイル101の長手方向の外側の長辺101aの円弧の半径が、内側の長辺101bの円弧の半径よりも小さくなるように第1のループコイル101が形成され、第2のループコイル102の長手方向の外側の長辺102aの円弧の半径が、内側の長辺102bの円弧の半径よりも小さくなるように第2のループコイル101が形成されている。
【0061】
同様に、例えば、第3のループコイル103の長手方向の外側の長辺103aの円弧の半径が、内側の長辺103bの円弧の半径よりも小さくなるように第3のループコイル103が形成され、第4のループコイル104の長手方向の外側の長辺104aの円弧の半径が、内側の長辺104bの円弧の半径よりも小さくなるように第4のループコイル104が形成されている。
【0062】
図9(b)は、静磁場磁石10の第7の変形例の構成例を示す図である。第7の変形例の静磁場磁石10では、第4の変形例(図3(b))と同様に、第1のループコイル101及び第2のループコイル102では、夫々の長手方向の内側の長辺101b、102bの形状を、所定の半径を有する円弧としつつ、夫々の長手方向の外側の長辺101a、102aの形状を直線としている。
【0063】
同様に、第3のループコイル103及び第4のループコイル104では、夫々の長手方向の内側の長辺103b、104bの形状を、所定の半径を有する円弧としつつ、夫々の長手方向の外側の長辺103a、104aの形状を直線としている。
【0064】
上述した第6、第7の変形例では、第1、第2、第3、第4のループコイル101、102、103、104は、夫々の長軸301、302、303、304に対しては線対称ではないものの、静磁場磁石10の全体としては、中心軸300に対して線対称となっている。
【0065】
図10は、静磁場磁石10の第8の変形例の構成例を示す図である。前述した実施形態の静磁場磁石10、及び、第1乃至第7の変形例の静磁場磁石10は、上側静磁場磁石10Aと下側静磁場磁石10Bとを備え、上側静磁場磁石10Aと下側静磁場磁石10Bとの間の空間に撮像領域が設けられる構成である。
【0066】
これに対して、図10に示す第8の変形例の静磁場磁石10は、上側静磁場磁石10Aと下側静磁場磁石10Bにうち、いずれか一方の静磁場磁石10を有する構成となっている。例えば、図10に示すように、下側静磁場磁石10Bのみを有する構成となっている。下側静磁場磁石10Bとしては、前述した実施形態、及び、その第1乃至第7の変形例のいずれの下側静磁場磁石10Bを用いてもよい。図10では、第1の変形例(図5)の下側静磁場磁石10Bを、第8の変形例における静磁場磁石10として用いている。
【0067】
第8の変形例に係る静磁場磁石10では、静磁場磁石10の上方に生成される静磁場を用いて被検体Pの撮像が行われる。つまり、静磁場磁石10の上方に撮像領域が設定される。図10(b)では、被検体Pが横臥する天板64、天板64と静磁場磁石10の間に設けられる傾斜磁場コイル60と送受信コイル62も、併せて図示している。
【0068】
第8の変形例で生成される静磁場分布は、特定の方向(2つの長軸301、302の夫々に直交する方向であり、図10(b)におけるZ方向)、及び、特定の平面(2つの長軸301、302を含む平面)に平行でかつ前記特定の方向に直交する方向(図10(a)におけるX方向)において均一化され、前記特定の平面に直交する方向(図10(b)におけるY方向)において単調に変化する。
【0069】
図11乃至図13は、第8の変形例にかかる静磁場磁石10の静磁場分布の計算例を示す図である。図11は、X軸の値をゼロとしたとき、即ち、静磁場磁石10の短手方向の中央の位置におけるY-Z面の静磁場分布を示している。図11の曲線は、静磁場強度を等高線として表したものである。図11の横軸は、正規化したZ方向の位置を示しており、縦軸は、正規化したY方向の位置を示している。
【0070】
図11に示す計算例では、第1のループコイル101の中心位置(z, y)が、(-1.0, -0.3)であり、第2のループコイル102の中心位置(z, y)が、(+1.0, -0.3)である。この計算例では、yが0.6を中心とする所定範囲、zが-0.3から+0.3の領域において、Z方向の磁場強度が均一化されており、この領域を撮像領域としている。なお、撮像領域において、Y方向(即ち、天板64に直交する方向)には、磁場強度が単調に変化する静磁場分布となっている。
【0071】
図12は、y=0.6における、X-Z面の静磁場分布を示している。X-Z面では、xが-0.3から+0.3の領域、zが-0.3から+0.3の、概ね正方形の領域が撮像領域になる。撮像領域のX-Z面では、X方向とZ方向のいずれの方向においても、磁場が均一化される。
【0072】
図13は、z=0における、X-Y面の静磁場分布を示している。X-Y面では、xが0.3から+0.3の領域、yが0.6を中心とする所定範囲が撮像領域になる。撮像領域のX-Y面では、X方向の磁場強度は均一化され、Y方向の磁場強度は単調に変化する静磁場分布となっている。
【0073】
図14は、第1及び第2のループコイル101、102の形状に応じて、X-Z面における静磁場分布の均一領域が異なることを模式的に示す図である。
図14(a)は、実施形態の静磁場磁石10に対する比較例をとして、第1、第2のループコイル101、102の形状が長方形の場合における静磁場分布を示している。比較例の磁石ユニット10では、第1、第2のループコイル101、102の夫々の長辺は直線となっている。従来例の第1、第2のループコイル101、102で得られる静磁場分布の均一領域(図14(a)の中央に示す太い実線で囲まれた領域)は、所定の磁場強度の等高線で囲んだ領域であり、Z方向に長くX方向に短い長方形となっている。
【0074】
一方、図14(b)では、実施形態の第1、第2のループコイル101、102で得られる静磁場分布の均一領域を、図14(b)の中央に示す太い実線で示している。図14(b)に示す均一領域は、比較例の均一領域と同じ磁場強度の等高線で囲んだ領域であり、Z方向とX方向とがほぼ同じ長さの略正方形の形状となっている。
【0075】
図14(a)と図14(b)とを比較すれば明らかなように、ループの各長辺がループの内側に向かって凹んだ凹部を有するように形成された実施形態に係る第1、第2のループコイル101、102で生成される静磁場分布の方が、長辺が直線となるように形成された(即ち、ループ形状が長方形に形成された)比較例に係る第1、第2のループコイル101、102で生成される静磁場分布よりも、広い均一領域を得ることができる。
【0076】
この理由は以下の通りである。比較例の磁場分布では、図14(a)に示すように、中央部近傍の磁場強度のピークの周辺領域において、X方向の磁場強度の変化が大きく、X方向における磁場分布の平坦な領域が狭くなっている。この結果、均一領域の形状が、X方向に短く、Z方向に長い長方形となっている。
【0077】
これに対して、実施形態に係る第1、第2のループコイル101、102では、ループの各長辺がループの内側に向かって凹んだ凹部を有するように形成されているため、X方向の中央部の磁場強度は低減される一方、X方向の両端部の磁場強度は増強される。この結果、実施形態の磁場分布では、図14(b)に示すように、中央部近傍の磁場強度のピークの周辺領域において、X方向の磁場強度の変化を少なくすることができ、X方向における磁場分布の平坦な領域を広げることができる。この結果、均一領域の形状が、X方向とZ方向の両方に長い略正方形の形状にすることができる。したがって、実施形態に係る第1、第2のループコイル101、102を備えた静磁場磁石10では、磁場分布の均一領域を比較例に対して拡大することができる。
【0078】
(磁気共鳴イメージング装置)
図15は、上述した実施形態、及びその各変形例に係る静磁場磁石10を具備する磁気共鳴イメージング装置1の構成を示す図である。この磁気共鳴イメージング装置1における静磁場磁石10は、上述した実施形態及びその各変形例に係る静磁場磁石10のうち、下側静磁場磁石10Bのみを有する第8の変形例の静磁場磁石10に対応している。
【0079】
磁気共鳴イメージング装置1は、静磁場磁石10の他、傾斜磁場コイル60、送受信コイル62、天板64、磁石電源40、撮像条件設定回路50、シーケンスコントローラ51、傾斜磁場電源52、送信回路53、受信回路54、及び、再構成処理回路55を備えている。
【0080】
磁石電源40は、静磁場磁石10の第1、第2のループコイル101、102に電流を印加する電源である。静磁場磁石10が常電導磁石として構成されている場合は、磁石電源40は静磁場磁石10に常に接続される。一方、静磁場磁石10が超電導磁石として構成されている場合は、磁石電源40は、励磁モードにおいては静磁場磁石10に電流を供給するものの、永久電流モードに移行した後は、磁石電源40は静磁場磁石10から切り離される。
【0081】
撮像条件設定回路50は、図示しないユーザインタフェースを介して入力されたパルスシーケンスの種類や各種パラメータの値等の撮像条件をシーケンスコントローラ51に対して設定する。シーケンスコントローラ51は、設定された撮像条件に基づいて、傾斜磁場電源52及び送信回路53をそれぞれ駆動することによって被検体のスキャンを行う。
【0082】
傾斜磁場電源52は、シーケンスコントローラ51からの駆動信号に基づいて、傾斜磁場コイル60に傾斜磁場電流を印加する。送信回路53は、シーケンスコントローラ51からの駆動信号に基づいて、RFパルスを生成し、RFパルスを送受信コイル62に印加する。この印加に応じて被検体Pから発せられるMR信号を、例えば被検体Pの胸部に載置された局部コイルで受信する。局部コイルで受信されたMR信号は、受信回路54にてアナログ信号からデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換されたMR信号は、k空間データとして再構成処理回路55に供給される。再構成処理回路55は、k空間データに対して逆フーリエ変換処理等の再構成処理を施して、磁気共鳴画像を生成する。
【0083】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、オープン型の静磁場磁石を用いた撮像において、被検体の頭足方向の撮像領域を広く確保しつつ、撮像中に被検体へ容易にアクセスできる。
【0084】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 磁気共鳴イメージング装置
10、10A、10B 静磁場磁石
60 傾斜磁場コイル
62 送受信コイル
101、102 第1、第2のループコイル、第1第2ループコイル対
103、104 第3、第4のループコイル、第3第4ループコイル対
301、302 長軸
401、402 コイル面
500 特定の平面、第1第2特定の平面、第1の特定の平面、第2の特定の平面
501 第3第4特定の平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15