(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098338
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】建物の外壁構造、建物の外壁施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20240716BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
E04B1/76 500F
E04B1/94 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001786
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】505208329
【氏名又は名称】GERMAN HOUSE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 浩正
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DE01
2E001FA04
2E001FA32
2E001GA12
2E001HA01
2E001HC11
2E001KA05
(57)【要約】
【課題】断熱性能を向上させた建物の外壁構造を提供する。
【解決手段】本発明の建物の外壁構造は、木質繊維を含有する断熱材により構成され、建物の外壁の厚み方向(以下、外壁厚方向と呼ぶ。)における建物の躯体の外側に配置される第一断熱層と、第一断熱層から独立し且つ木質繊維を含有する断熱材により構成され、外壁厚方向における第一断熱層よりも外側に配置される第二断熱層とを備えるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維を含有する断熱材により構成され、建物の外壁の厚み方向(以下、外壁厚方向と呼ぶ。)における前記建物の躯体の外側に配置される第一断熱層と、
前記第一断熱層から独立し且つ木質繊維を含有する断熱材により構成され、前記外壁厚方向における前記第一断熱層よりも外側に配置される第二断熱層と、
を備えることを特徴とする建物の外壁構造。
【請求項2】
前記第一断熱層と前記第二断熱層の間に配置され、かつ、モルタルを含む材料により構成されるモルタル含有層を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の建物の外壁構造。
【請求項3】
モルタルを含む材料により構成され、前記外壁厚方向における前記第二断熱層に外側に積層されて、前記外壁の最外層を成す第二モルタル含有層を備えることを特徴とする、
請求項2に記載の建物の外壁構造。
【請求項4】
前記第一断熱層よりも内側に内側断熱層を備えることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の建物の外壁構造。
【請求項5】
前記第一断熱層は、第一固定具により、前記躯体に固定され、
前記第二断熱層は、第二固定具により、少なくとも前記第一断熱層を介して前記躯体に固定されることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の建物の外壁構造。
【請求項6】
前記外壁に設けられる窓枠を備え、
前記窓枠の前記外壁厚方向における最外面の位置が、前記外壁厚方向における前記第二断熱層の最内面と同じか、又は、前記最内面よりも前記建物の室内側に位置することを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の建物の外壁構造。
【請求項7】
前記窓枠の下側において、該窓枠に対して独立配置され、少なくとも前記第二断熱層の上側端面を覆う張出し部材を備えることを特徴とする、
請求項6に記載の建物の外壁構造。
【請求項8】
木質繊維を含有する第一外側断熱材により構成され、建物の外壁の厚み方向(以下、外壁厚方向と呼ぶ。)における前記建物の躯体の外側に配置される第一断熱層と、該第一断熱層の外側に積層され且つモルタルを含む材料により構成され、前記外壁の最外層を成す第一モルタル含有層を含む前記外壁の断熱性能を向上させる外壁施工方法であって、
木質繊維を含有する第二外側断熱材を前記第一モルタル含有層の外側に配置し、固定具によって、前記第一モルタル含有層及び前記第一断熱層を介して、前記躯体に固定することで第二断熱層を設ける工程を備えることを特徴とする建物の外壁施工方法。
【請求項9】
モルタルを含む材料を前記第二断熱層の外側に積層させて、第二モルタル含有層を設ける工程を更に備えることを特徴とする、
請求項8に記載の建物の外壁施工方法。
【請求項10】
木質繊維を含有する第一外側断熱材により構成され、建物の外壁の厚み方向(以下、外壁厚方向と呼ぶ。)における前記建物の躯体の外側に配置される第一断熱層と、該第一断熱層の外側に配置される外壁仕上材を含む前記外壁の断熱性能を向上させる外壁施工方法であって、
前記外壁仕上材を取り外す工程と、
木質繊維を含有する第二外側断熱材を前記第一断熱層の外側に配置し、固定具によって、前記第一断熱層を介して、前記躯体に固定することで第二断熱層を設ける工程と、を備えることを特徴とする建物の外壁施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁構造、及び建物の外壁に関する施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物の外壁は、建物の室内側から外部側に向かって順に、難燃性ボード(例えば石膏ボード)、柱や縦材等の躯体(構造材)、難燃性または/および不燃性の表面被覆材、胴縁、外壁仕上材が積層された構造になっている(例えば、特許文献1参照)。そして、柱等の躯体の間のスペースには、内側断熱材が充填される。また、胴縁により表面被覆材と外壁仕上材の間には通気層が形成される。なお、柱等の躯体の外側に、ウレタンや発泡材による外側断熱材が配置され、その外側断熱材の外側に胴縁(通気層)を形成し、その外側にサイディングボード(外壁仕上材)を設置する外断熱構造も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の外壁の断熱性能を高めようとすると、内側断熱材の厚みを大きくするか、外側断熱材の厚みを大きくする等の対応が必要となる。内側断熱材の厚みを増やそうとすると、柱や縦材等の躯体自体を太くする必要が生じるため現実的ではない。躯体の外側に配置される外側断熱材の厚みを大きくすると、高断熱専用の外側断熱材が必要となり、コストが増大する。また、外側断熱材の外側に配置される胴縁と躯体の距離が大きくなり、胴縁の保持強度が低下するという問題もある。
【0005】
また、従来の外壁の断熱性能を事後的(建屋完成後)に増大させようとしても、内側断熱材が充填される躯体の間のスペースの広さは決まっているので、事後的に内側断熱材を追加することはできない。また、外側断熱材を全交換して、断熱性能を高めようとすると、多大なるコストを要する。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、高い断熱性能を有する建物の外壁構造、及び、断熱性能を容易に向上させることができる外壁施工方法等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建物の外壁構造は、木質繊維を含有する断熱材により構成され、建物の外壁の厚み方向(以下、外壁厚方向と呼ぶ。)における前記建物の躯体の外側に配置される第一断熱層と、前記第一断熱層から独立し且つ木質繊維を含有する断熱材により構成され、前記外壁厚方向における前記第一断熱層よりも外側に配置される第二断熱層と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の建物の外壁構造は、更に、前記第一断熱層と前記第二断熱層の間に配置され、かつ、モルタルを含む材料により構成されるモルタル含有層を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の建物の外壁構造は、更に、モルタルを含む材料により構成され、前記外壁厚方向における前記第二断熱層に外側に積層されて、前記外壁の最外層を成す第二モルタル含有層を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の建物の外壁構造は、更に、前記第一断熱層よりも内側に内側断熱層を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の建物の外壁構造における前記第一断熱層は、第一固定具により、前記躯体に固定され、前記第二断熱層は、第二固定具により、少なくとも前記第一断熱層を介して前記躯体に固定されることを特徴とする。
【0012】
本発明の建物の外壁構造は、更に、前記外壁に設けられる窓枠を備え、前記窓枠の前記外壁厚方向における最外面の位置が、前記外壁厚方向における前記第二断熱層の最内面と同じか、又は、前記最内面よりも前記建物の室内側に位置することを特徴とする。
【0013】
本発明の建物の外壁構造は、更に、前記窓枠の下側において、該窓枠に対して独立配置され、少なくとも前記第二断熱層の上側端面を覆う張出し部材を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明は、木質繊維を含有する第一外側断熱材により構成され、建物の外壁の厚み方向(以下、外壁厚方向と呼ぶ。)における前記建物の躯体の外側に配置される第一断熱層と、該第一断熱層の外側に積層され且つモルタルを含む材料により構成され、前記外壁の最外層を成す第一モルタル含有層を含む前記外壁の断熱性能を向上させる外壁施工方法であって、木質繊維を含有する第二外側断熱材を前記第一モルタル含有層の外側に配置し、固定具によって、前記第一モルタル含有層及び前記第一断熱層を介して、前記躯体に固定することで第二断熱層を設ける工程を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の建物の外壁施工方法は、モルタルを含む材料を前記第二断熱層の外側に積層させて、第二モルタル含有層を設ける工程を更に備えることを特徴とする。
【0016】
本発明は、木質繊維を含有する第一外側断熱材により構成され、建物の外壁の厚み方向(以下、外壁厚方向と呼ぶ。)における前記建物の躯体の外側に配置される第一断熱層と、該第一断熱層の外側に配置される外壁仕上材を含む前記外壁の断熱性能を向上させる外壁施工方法であって、前記外壁仕上材を取り外す工程と、木質繊維を含有する第二外側断熱材を前記第一断熱層の外側に配置し、固定具によって、前記第一断熱層を介して、前記躯体に固定することで第二断熱層を設ける工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の施工方法及び建物の外壁構造によれば、建物の外壁の断熱性能を容易に向上させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態における建物の外壁構造の断面概要図である。
【
図2】本発明の実施形態における建物の窓枠を含む外壁構造の正面概要図である。
【
図3】(A)は、
図2のF-F矢視断面概要図である。(B)は、(A)の変形例を示す断面概要図である。
【
図4】(A),(B)は、従来の窓枠を含む外壁の断熱性能を向上させる施工の様子を時系列に並べた断面概要図である。
【
図5】
図4(A),(B)以後の従来の窓枠を含む外壁の断熱性能を向上させる施工の様子を表した断面概要図である。
【
図6】本発明の実施形態の変形例における建物の外壁構造の断面概要図である。
【
図7】(A)は、同変形例における外壁構造の追加施工前の断面概要図であり、(B)は追加施工の途中工程を示す断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。なお、
図1~
図5は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。
【0020】
<全体構成>
図1を参照して、本発明の実施形態における建物の外壁構造について説明する。本実施形態における建物100の外壁1は、建物100の室内101側から建物100の外部102側に向かって順に、第一板状体で構成される第一板状層2と、断熱材30が配置される内側断熱層3と、第二板状体で構成される第二板状層4と、第一外側断熱層5と、第一モルタル含有層6と、第二外側断熱層7と、第二モルタル含有層8と、が積層されて構成される。なお、以下において建物100の外壁1の厚み方向Tを、適宜、外壁厚方向Tと呼ぶこととする。また、外壁厚方向Tにおける建物100の室内101側を内側と定義し、外壁厚方向Tにおける建物100の外部102側を外側と定義する。
【0021】
<第一板状層>
第一板状層2は、
図1に示すように、建物100の外壁1の最も内側部分を構成する板状体(第一板状体)となる。第一板状層2を成す第一板状体は、例えば、透湿性を有する石膏ボード(プラスターボード)で構成されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、その他の材料で構成された板状体で構成されてもよい。その他の材料は、透湿性を有するものが好ましい。なお、第一板状層2における建物100の室内101側の面には、壁紙が貼られることが好ましい。
【0022】
<内側断熱層>
内側断熱層3は、第一板状層2の外側に積層される。内側断熱層3は、建物100の外壁1を構成する複数の柱又は縦材となる構造材(躯体)31の間に形成されるスペースに形成される。つまり、内側断熱層3は、複数の構造材31の間の空間に配置される内側断熱材30となる。内側断熱材30は、例えば、微細な木製繊維を成形して得られる材料であり、透湿性を有する弾性変形可能なスポンジ状となる。木質繊維の内側断熱板30は、石油系と比較して火に強く、火災時にも燃えにくいため、火の進行を遅らせることができる。また、燃える際に有毒ガスを出さない為、人や環境に対する安全性を実現できる。内側断熱板30は、これに限定されるものではなく、その他の材料で構成されたものであってもよい。その他の材料は、透湿性を有するものが好ましい。また、構造材31として、例えば、木製の柱又は縦材等が一例として挙げられるが、これ以外のもの(例えば鉄筋)であってもよい。
【0023】
<第二板状層>
第二板状層4は、内側断熱層3の外側に積層される。この第二板状層4は、枠組壁構造における耐力壁をなす。第二板状層4を成す第二板状体は、透湿性を有する木製の板状体で構成されるが、これに限定されるものではなく、その他の材料で構成されてもよい。その他の材料は、透湿性を有するものが好ましい。第二板状体は、ネジや釘、ステープラー等によって、第二板状層4を介して、構造材31の外側面に固定される。ここではステープラーを採用している(図示省略)。なお、構造材31が軸組工法の場合は、この第二板状層4を省略することもできる。
【0024】
なお、第一板状層2、内側断熱層3、及び第二板状層4をまとめて一つの層と見做し、それを適宜、内側層と呼んでもよい。そして、内側層の構成は、上記の構成に限定されるものではなく、その他の構成で合ってもよい。
【0025】
<第一外側断熱層>
第一外側断熱層5は、内側断熱層3よりも外側(ここでは第二板状層4の外側)に積層される。第一外側断熱層5は、ネジや釘、ステープラー等の第一固定具によって、第二板状層4及び/又は構造材31の外側面に固定される(ここではステープラーS1で固定される)。第一外側断熱層5は、透湿性且つ断熱性を有する第一外側断熱材により構成される。第一外側断熱材は、例えば、微細な木製繊維をプレス成型することで、所望の剛性を有する板材で構成される。木質繊維の第一外側断熱材は、石油系と比較して火に強く、火災時にも燃えにくいため、火の進行を遅らせることができる。また、燃える際に有毒ガスを出さない為、人や環境に対する安全性を実現できる。第一外側断熱材はこれに限定されるものではなく、その他の板材料で構成されたものであってもよい。その他の板材料は、透湿性を有するものが好ましい。
【0026】
また、第一外側断熱層5の板厚は、例えば、20~60mmが好ましく、望ましくは30mm~50mmとする。従って、固定するステープラー(第一固定具)S1の長さは、30mm以上が好ましく、望ましくは40mm以上とする。板厚はこれに限定されるものではなく、その他の厚みであってもよい。
【0027】
第一外側断熱層5は、例えば、第二板状層4を成す第二板状体の全領域を覆うことが好ましい。この場合、第一外側断熱層5は、所謂、外張断熱工法における外断熱層となる。
【0028】
<第一モルタル含有層>
第一モルタル含有層6は、第一外側断熱層5の外側に積層される。第一モルタル含有層6は、モルタルを含むモルタル含有材料により構成される。
【0029】
第一モルタル含有層6は、例えば、次の手順で第一外側断熱層5の外側表面に直接施工させる。まず、第一外側断熱層5の表面にモルタルを塗る。このモルタルの表面は、あえて、凹凸が形成されるように施工する。これにより下地層としての凹凸モルタル層を作る。なお、第一外側断熱層5は木質繊維をプレス成型した板材であるため、外側表面が多孔質状態となっており、凹凸モルタル層との密着性が高められる。凹凸モルタル層の凹凸表面にメッシュシートを配置させて、メッシュシートの上から再度モルタルを塗り込む。これにより、凹凸モルタル層の凹凸表面及びメッシュシートの網目内にモルタルが入り込みつつ、メッシュシートが埋設されたモルタル層が出来上がる。
【0030】
次いで、上記モルタル層の表面に、モルタル劣化防止剤として機能するシーラーを塗る。これをシーラー層と称する。更に、シーラー層の表面に、骨材(砂を混ぜ込んだモルタル)を塗る。これを骨材層と称する。最後に、骨材層の表面に撥水塗料を塗る。これを撥水層と称する。
【0031】
以上の結果、第一モルタル含有層6は、内側から外側に向かって、モルタル層、シーラー層、骨材層、撥水層が積層される。なお、以上の第一モルタル含有層6の構造は一例であって、少なくともモルタルを含んでいれば良く、その他の構造であってもよい。なお、第二外側断熱層を施工する前に、第一モルタル含有層6を完全に乾燥固化させることが好ましい。
【0032】
<第二外側断熱層>
第二外側断熱層7は、第一モルタル含有層6の外側に積層される。結果、第一モルタル含有層6は、第一外側断熱層5と第二外側断熱層7(一対の断熱層)により挟み込まれた態様になる。
【0033】
第二外側断熱層7は、透湿性且つ断熱性を有する第二外側断熱材により構成される。第二外側断熱材は、例えば、微細な木製繊維をプレス成型することで、所望の剛性を有する板材となる。木質繊維の第二外側断熱材は、石油系と比較して火に強く、火災時にも燃えにくいため、火の進行を遅らせることができる。また、燃える際に有毒ガスを出さない為、人や環境に対する安全性を実現できる。第二外側断熱材は、これに限定されるものではなく、その他の板材料で構成されたものであってもよい。その他の板材料は、透湿性を有するものが好ましい。また、第二外側断熱材は、第一外側断熱材と同一板材であってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
また、第二外側断熱層7の板厚は、例えば、20~60mmが好ましく、望ましくは30mm~50mmとする。板厚はこれに限定されるものではなく、その他の厚みであってもよい。
【0035】
また、第二外側断熱層7は、ネジや釘、ステープラー等の第二固定具S2によって、第一モルタル含有層6及び第一外側断熱層5を介して、第二板状層4及び/又は構造材31の外側面に固定される(ここではステープラーで固定される)。従って、固定する第二固定具(ステープラー)S2の長さは、第一固定具S1よりも長く設定され、第二板状層4及び/又は構造材31の外側面に到達する長さを要する。この長さは、例えば60mm以上が好ましく、望ましくは80mm以上とし、更に望ましくは100mm以上とする。固定方法は、これに限定されるものではなく、その他の手段により構造材31に取り付けられてもよい。第二外側断熱層7は、例えば、第一モルタル含有層6の全領域を覆うことが好ましい。この場合、第二外側断熱層7は、所謂、外張断熱工法における外断熱層となる。
【0036】
<第二モルタル含有層>
第二モルタル含有層8は、第二外側断熱層7の外側に積層される。第二モルタル含有層8は、建物100の外壁1の外壁厚方向Tにおける最も外側の層を成す。第二モルタル含有層8は、モルタルを含むモルタル含有材料により構成される。なお、第二モルタル含有層8は、第一モルタル含有層6と同様の構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。第二モルタル含有層8の施工方法は、第一モルタル含有層6と同じであるため、ここでの説明を省略する。
【0037】
なお、本実施形態では、第一外側断熱層5が第一固定具S1によって第二板状層4及び/又は構造材31に固定され、第二外側断熱層7が第二固定具S2によって第二板状層4及び/又は構造材31に固定される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、予め、第一外側断熱層5と第一モルタル含有層6と第二外側断熱層7を、専用治具や接着剤(第一モルタル含有層6のモルタルを含む)によって一体化しておけば、第一固定具S1を省略して、第二固定具S2のみで施工することができる。
【0038】
<外壁構造の作用>
【0039】
本実施形態の外壁1によれば、外張断熱工法として、少なくとも、第一外側断熱層5と第二外側断熱層7をこの順に備える。従って、断熱材が二層構造になることで、断熱性能を高めることができる。第一外側断熱層5と第二外側断熱層7の断熱素材の各々の厚みは、比較的小さくて済むことから、製造コストを低減させることができる。この観点から、第一外側断熱層5と第二外側断熱層7の各断熱素材は同一の材料であることが望ましい。更に、木質繊維で構成される第一外側断熱層5と第二外側断熱層7の間に、空気層が介在しないことから、外壁1の内部に空気流が生じないため、耐火性能を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態の外壁1は、第一外側断熱層5と第二外側断熱層7の間に、第一モルタル含有層6が介在していることから、耐火性能や遮音性能を飛躍的に向上させることができる。また、第一外側断熱層5と第一モルタル含有層6と第二外側断熱層7の全てが透湿性を有するため、外壁1内に湿気が溜まりにくく、長期間に亘って、腐食等による劣化を抑制できる。第一外側断熱層5と第二外側断熱層7の間に、第一モルタル含有層6が介在することで、剛性及び/又は強度が向上するという利点も得られる。強度向上の観点から、第一モルタル含有層6は、メッシュシートを内在することが好ましい。
【0041】
更に本実施形態の外壁1は、外壁構成部材となる第一板状層2と、内側断熱層3と、第二板状層4と、第一外側断熱層5、第一モルタル含有層6、第二外側断熱層7、第二モルタル含有層8の全てが透湿性を有する。結果、外張断熱構造であるにも関わらず、気密フィルム等が不要となるので、室内の湿気を、屋外に放出することができる。更に本実施形態の外壁1は、途中に通気層(空気層)を有していないため、従来の胴縁を省略できる結果、胴縁の腐食によるサイディングの落下等を抑制できる。
【0042】
更に本実施形態では、第一外側断熱層5が第一固定具(ステープラー)S1によって第二板状層4及び/又は構造材31に固定され、第二外側断熱層7が第二固定具(ステープラー)S2によって第二板状層4及び/又は構造材31に固定される。これにより、各ステープラーS1、S2に作用する荷重が分散されるので、第一外側断熱層5及び第二外側断熱層7の脱落が抑制される。特に、内側の第一外側断熱層5に限っては、2つの各ステープラーS1、S2によって二重固定されるので、固定強度を増大させることができる。
【0043】
<外壁の追加施工方法>
【0044】
次に、本実施形態の外壁1の追加施工方法の一例について紹介する。第一板状層2と、内側断熱層3と、第二板状層4と、第一外側断熱層5と、第一モルタル含有層6が順に積層されたものを、ここでは建物100の外壁1Aと定義する。建物100の外壁1Aでは第一モルタル含有層6が最外層となる。建物100の外壁1Aの断熱性能を、追加的に向上させる施工方法としては、例えば、第二外側断熱材を、外壁1Aの第一モルタル含有層6の外側面に設置することで、第二外側断熱層7を追加的に設ける第一工程(第二断熱層形成工程)と、モルタルを含む材料を第二外側断熱層7の外側に施工することで、追加的に第二モルタル含有層8を設ける第二工程(第二モルタル含有層形成工程)を有する。これにより、追加的に外壁1Aの断熱性能を容易に向上させることができ、その結果、断熱性能が向上した建物100の外壁1が完成する。
【0045】
また、本追加施工方法では、第二モルタル含有層8が、新たに外壁1Aの最外層となるが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に、第二モルタル含有層8の外側面に、第三外側断熱層(図示省略)、第三モルタル含有層(図示省略)を順に積層させてもよい。なお、第三外側断熱層は、第三外側断熱材により構成される。そして、第三外側断熱層は、第一外側断熱層5、第二外側断熱層7における説明において、第一外側断熱材を第二外側断熱材に読み替えて、第二外側断熱材を第三外側断熱材と読み替えることにより適用可能である。第三モルタル含有層は、モルタル含有材料により構成されるが、第一モルタル含有層6、又は、第二モルタル含有層8と同様の構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。更に同様に、断熱層とモルタル含有層を順に複数積層させる施工方法や外壁構造も本発明の範囲に含まれる。
【0046】
<窓枠>
次に、
図2及び
図3を参照して、窓枠9を有する外壁1の構造について説明する。窓枠9は、
図3(A)に示すように、建物100の外壁1を外壁厚方向Tに貫通する窓用領域110の内周縁を取り囲むように取り付けられる。この窓枠9の内部には、窓部材10(窓ガラスm2及び窓フレームm1)が取り付けられる。
図2及び
図3に示すように、窓枠9は、外壁1の最も外側の表面(第二モルタル含有層8の最外面80)よりも、建物100の室内101側に引っ込んだ位置に取り付けられる。
【0047】
より詳細には、
図3(B)に示すように、外壁厚方向Tにおける窓枠9の最外端面90は、第二外側断熱層7の最内面71と外壁厚方向Tにおける位置が同じか、又は、同最内面71よりも建物100の室内101側に位置することが好ましい。
図3(B)の場合、最外端面90は、外壁厚方向Tにおける第一モルタル含有層6の最外面60と外壁厚方向Tにおける位置が同じか、又は、同最外面60よりも建物100の室内101側に位置する。より望ましくは、最外端面90が、外壁厚方向Tにおける第一外側断熱層5の最外面50と外壁厚方向Tにおける位置が同じか、又は、同最外面50よりも建物100の室内101側に位置することが好ましい。
【0048】
また、
図3(A)に示すように、外壁厚方向Tにおける窓枠9の最外端面90は、外壁厚方向Tにおける第一外側断熱層5の最内面51(第二板状層4の最外面40)と外壁厚方向Tにおける位置が同じか、又は、同最内面51(第二板状層4の最外面40)よりも建物100の室内101側に位置する態様であってもよい。
【0049】
ここで、比較対象目的として、
図4(A)において、従来の窓枠9Aが取り付けられた外壁1Aを紹介する。従来の窓枠9Aの場合、外壁1Aの最外面(第一モルタル含有層6の最外面60)に、直接的に取り付けられる。この状態の外壁1Aに対して、第二外側断熱層7を追加施工する場合、窓枠9Aが邪魔になるので、一旦、窓枠9Aを取り外す必要がある。
図4(B)に示すように、窓枠9Aを取り外した状態で、上述の第一工程及び第二工程を行うことで、第二外側断熱層7及び第二モルタル含有層8を積層させる。最後に、
図5に示すように、第二モルタル含有層8の外側から、窓用領域110に応じた位置に、再度、窓枠9Aを取り付けて完成する。しかしながら、第二外側断熱層7及び第二モルタル含有層8を追加施工する際に、全ての窓枠9Aを取り外してから、再度取り付けることは煩雑であり、作業効率が低下し、作業コストが増大する。
【0050】
一方、本実施形態における窓枠9では、
図3(A),(B)に示すように、外壁1Aの最外層に相当する第一モルタル含有層6の最外面60を基準として、窓枠9が建物100の室内101側に予め引っ込んだ位置に設けられる。結果、第二外側断熱層7及び第二モルタル含有層8を追加施工する際に、窓枠9が邪魔にならず、窓枠9の取り外し及び再取り付けは不要となる。結果、作業効率が向上し、作業コストを低減することができる。
【0051】
<張出し部材>
次に、
図2及び
図3を参照して、窓枠9の下側に設けられる張出し部材11について説明する。張出し部材11は、窓枠9及び窓部材10から流れてくる水分(雨水)が、第一外側断熱層5及び第二外側断熱層7に浸入しないように、第一外側断熱層5及び第二外側断熱層7を保護するものである。
【0052】
具体的に、張出し部材11は、窓枠9の下側フレームの上面の一部を覆うフレームカバー面12Bと、窓用領域110の底面における窓枠9の外側全体を覆う断熱材カバー面12Aを有する。具体的に張出し部材11の断熱材カバー面12Aは、
図3(A)に示すように、窓用領域110における第一外側断熱層5及び第二外側断熱層7の上側端面領域13を覆う。変形例として、張出し部材11の断熱材カバー面12Aは、
図3(B)に示すように、窓用領域110における第二外側断熱層7の上側端面領域14を覆う場合もある。更に張出し部材11の断熱材カバー面12Aは、少なくとも外壁厚方向Tの第二外側断熱層7(建物100の外壁1の最外層に最近位な断熱層)の最外面70よりも外壁厚方向Tの外側まで張り出しており、更に加えて、第二モルタル含有層8の最外面80(建物100の外壁1の最外層を成すモルタル含有層の最外面)よりも外壁厚方向Tの外側まで達してから、鉛直下方に屈曲している。窓枠9、窓部材10を伝ってくる水分は、フレームカバー面12B及び断熱材カバー面12Aを伝って、外壁1の外に排水される。
【0053】
断熱材カバー面12Aは、
図3(A),(B)に示すように、外壁厚方向Tにおいて窓枠9から外側に向かって、除々に低くなるように傾斜する傾斜面を含むことが好ましい。断熱材カバー面12Aに水分を滞留させずにスムーズに排水させることができる。
【0054】
本実施形態の張出し部材11は、窓枠9から独立した部材となっている。従って、外壁1の追加施工方法において、第二外側断熱層7及び第二モルタル含有層8を追加施工する際、張出し部材11のみを取り外せば良い。また、追加施工完了後は、その第二外側断熱層7及び第二モルタル含有層8によって増加した張り出し量に対応した、長尺の張出し部材11に交換すれば良い。つまり、窓枠9を取り外すことなく、張出し部材11の交換のみで、窓枠9の追加施工を完了させることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、外壁1の最外層が、第二モルタル含有層8となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第二モルタル含有層8に代えて、透湿性を有するサイディング材を施工することができる。この場合、木質性のサイディング材が好ましい。
【0056】
<本実施形態の変形例の紹介>
図6に、本実施形態の変形例にかかる建物100の外壁1001を示す。なお、
図6の外壁1001において、
図1で示した外壁1と同一又は類似する部品・部材については、図中の符号を一致させることで、ここでの説明を省略し、互いの相違点を中心に説明する。
【0057】
外壁1001では、第一モルタル含有層が省略されており、第一外側断熱層5と第二外側断熱層7が密着した状態となる。また、第二外側断熱層7の外側には、帯板状の胴縁1002が配置される。胴縁1002は、鉛直方向に延びる複数の帯板が、水平方向に並列配置されるか、水平方向に延びる複数の帯板が、鉛直方向に並列配置される。これらの胴縁1002は、長尺のねじ等となる第三固定具S3によって、第二外側断熱層7及び第一外側断熱層5を介して、第二板状層4及び/又は構造材31の外側面に固定される。更に、この胴縁1002の外側には、透湿性を有する木製のサイディングボード1003が配置される。このサイディングボード1003は、ねじや釘等の第四固定具S4によって、胴縁1002に固定される。なお、この胴縁1002とサイディングボード1003に代えて、第二モルタル含有層を施工しても良い。
【0058】
本変形例の外壁1001によれば、外張断熱工法として、第一外側断熱層5と第二外側断熱層7の二層構造になることで、断熱性能を高めることができる。第一外側断熱層5と第二外側断熱層7の断熱素材の各々の厚みは、比較的小さくて済むことから、製造コストを低減させることができる。木質繊維で構成される第一外側断熱層5と第二外側断熱層7の間に、空気層が介在しないことから、外壁1の内部に空気流が生じないため、耐火性能を向上させることができる。
【0059】
更に、第一外側断熱層5及び第二外側断熱層7が所定の剛性を有していることから、これらを貫通する長尺の第三固定具S3が、第一外側断熱層5及び第二外側断熱層7に支持されるので、胴縁1002及びこれに固定されるサイディングボード1003の保持姿勢を安定させることができる。
【0060】
<本実施形態の変形例の外壁の追加施工方法>
【0061】
次に、
図6及び
図7を参照して、変形例にかかる外壁1001の追加施工方法の一例について紹介する。
図7(A)には、追加施工前の事前外壁1010が示される。事前外壁1010は、第二外断熱層が省略されており、第一外側断熱層5の外側に、帯板状の事前胴縁1020が配置される。この事前胴縁1020は、ねじ等となる事前第三固定具S3pによって、第一外側断熱層5を介して、第二板状層4及び/又は構造材31の外側面に固定される。更に、この事前胴縁1020の外側には、透湿性を有する木製の事前サイディングボード(外装仕上材)1030が配置される。この事前サイディングボード1030は、ねじや釘等の事前第四固定具S4pによって、事前胴縁1020に固定される。
【0062】
図7(B)に追加施工の途中工程の状態を示す。事前外壁1010において、事前第四固定具S4p及び事前第三固定具S3pを取り外すことで、事前サイディングボード1030及び事前胴縁1020を事前外壁1010から取り外す。結果、事前外壁1010において、第一外側断熱層5が最も外側に位置することになり、その外面50が露出される。
【0063】
その後、
図6に示すように、第一外側断熱層5の外面50に第二外側断熱層7を配置し、第二固定具S2によって、第一外側断熱層5を介して第二板状層4及び/又は構造材31の外側面に固定する。更に、第二外側断熱層7の外面70に胴縁1002を配置し、事前第三固定具S3pよりも長尺となる第三固定具S3によって、第一外側断熱層5を介して、第二板状層4及び/又は構造材31の外側面に固定する。更にまた、胴縁1002の外側に、木製のサイディングボード1003を配置して、ねじや釘等の第四固定具S4によって、胴縁1002に固定する。結果、事前外壁1010と比較して断熱性能が向上した
図6の外壁1001が完成する。
【0064】
尚、本発明の建物の外壁構造及び追加施工方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1,1A 外壁
2 第一板状層
3 内側断熱層
4 第二板状層
5 第一外側断熱層
6 第一モルタル含有層
7 第二外側断熱層
8 第二モルタル含有層
9,9A 窓枠
10 窓部材
11 張出し部材
12A 断熱材カバー面
12B フレームカバー面
30 内側断熱材
31 構造材
40 第二板状層の最外面
60 第一モルタル含有層の最外面
70 第二外側断熱層の最外面
80 第二モルタル含有層の最外面
90 窓枠の最外端面
100 建物
101 室内
102 外部
110 窓枠用領域
T 外壁厚方向