(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098347
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240716BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H01L21/52 A
H01L21/60 321E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001803
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 秀一
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA11
5F047BA01
(57)【要約】
【課題】 半導体モジュールにおいて、表面電極のクラックを抑制する。
【解決手段】 半導体モジュールであって、半導体基板と、前記半導体基板の表面に設けられた表面電極と、金属ブロックと、前記表面電極を前記金属ブロックに接続しているはんだ層と、を有する。前記半導体基板と前記金属ブロックの積層方向に沿って見たときに、前記金属ブロックの前記はんだ層に対する第1接合領域が、前記表面電極の前記はんだ層に対する第2接合領域よりも狭い。前記第1接合領域内に、複数の溝が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュールであって、
半導体基板(12)と、
前記半導体基板の表面に設けられた表面電極(12a)と、
金属ブロック(16)と、
前記表面電極を前記金属ブロックに接続しているはんだ層(14)と、
を有し、
前記半導体基板と前記金属ブロックの積層方向に沿って見たときに、前記金属ブロックの前記はんだ層に対する接合領域である第1接合領域が、前記表面電極の前記はんだ層に対する接合領域である第2接合領域よりも狭く、
前記第1接合領域内に、複数の溝(18)が設けられている、
半導体モジュール。
【請求項2】
前記積層方向に沿って見たときに、前記金属ブロックが長方形であり、
前記複数の溝が、前記長方形の短辺に沿って伸びている、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記第1接合領域内に、前記複数の溝と複数の凸条(20)が交互に配置されており、
前記第1接合領域の中央部に配置された前記凸条の高さが、前記第1接合領域の外周部に配置された前記凸条の高さよりも低い、
請求項1または2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記はんだ層の線膨張係数が、前記金属ブロックの線膨張係数よりも高い、請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記第1接合領域内に、前記複数の溝と複数の凸条が交互に配置されており、
前記第1接合領域の中央部に配置された前記凸条の高さが、前記第1接合領域の外周部に配置された前記凸条の高さよりも高い、
請求項1または2に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記はんだ層の線膨張係数が、前記金属ブロックの線膨張係数よりも低い、請求項5に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体モジュールに関する。
【0002】
特許文献1に開示の半導体モジュールでは、半導体チップと、放熱用の金属ブロックと、
はんだ層を有している。はんだ層は、半導体チップと金属ブロックを接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体モジュールの使用時に、半導体モジュールが繰り返し発熱する。半導体チップと金属ブロックの線膨張係数が互いに異なるので、半導体モジュールが繰り返し発熱すると、はんだ層に繰り返し熱応力が加わる。これにより、はんだ層が塑性変形により流動し、はんだ層に接合されている半導体チップの表面電極(すなわち、半導体基板の表面に設けられた電極)に高い応力が加わる。その結果、表面電極にクラックが生じる場合がある。本明細書では、半導体モジュールにおいて、表面電極のクラックを抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体モジュールは、半導体基板と、前記半導体基板の表面に設けられた電極と、金属ブロックと、前記電極を前記金属ブロックに接続しているはんだ層と、を有する。前記半導体基板と前記金属ブロックの積層方向に沿って見たときに、前記金属ブロックの前記はんだ層に対する接合領域である第1接合領域が、前記電極の前記はんだ層に対する接合領域である第2接合領域よりも狭い。前記第1接合領域内に、複数の溝が設けられている。
【0006】
この半導体モジュールでは、金属ブロックの第1接合領域内に複数の溝が設けられている。溝によってはんだ層の流動が抑制されるので、半導体基板の表面電極に加わる応力が低減される。したがって、この半導体モジュールによれば、表面電極のクラックを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】半導体基板と金属ブロックを上から見た平面図。
【
図3】上部主電極の外周端とその周辺の拡大断面図。
【
図6】第1変形例の半導体モジュールの
図2に対応する平面図。
【
図7】第2変形例の半導体モジュールの
図2に対応する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する一例の半導体モジュールでは、前記積層方向に沿って見たときに、前記金属ブロックが長方形であってもよい。前記複数の溝が、前記長方形の短辺に沿って伸びていてもよい。
【0009】
金属ブロックが長方形の場合、その長手方向の端部(すなわち、長方形の長辺に沿う方向の端部)において表面電極に応力が加わり易い。しかしながら、複数の溝が長方形の短辺に沿って伸びていると、金属ブロックの長手方向の端部で生じる応力を効果的に抑制できる。したがって、当該端部近傍で表面電極のクラックを抑制できる。
【0010】
本明細書が開示する一例の半導体モジュールでは、前記第1接合領域内に、前記複数の溝と複数の凸条が交互に配置されていてもよい。前記第1接合領域の中央部に配置された前記凸条の高さが、前記第1接合領域の外周部に配置された前記凸条の高さよりも低くてもよい。この場合において、前記はんだ層の線膨張係数が、前記金属ブロックの線膨張係数よりも高くてもよい。
【0011】
この構成によれば、はんだ層がその外周側に向かって流動することを抑制できる。
【0012】
本明細書が開示する一例の半導体モジュールでは、前記第1接合領域内に、前記複数の溝と複数の凸条が交互に配置されていてもよい。前記第1接合領域の中央部に配置された前記凸条の高さが、前記第1接合領域の外周部に配置された前記凸条の高さよりも高くてもよい。この場合において、前記はんだ層の線膨張係数が、前記金属ブロックの線膨張係数よりも低くてもよい。
【0013】
この構成によれば、はんだ層がその中心側に向かって流動することを抑制できる。
【実施例0014】
図1に示す実施例1の半導体モジュール10は、半導体基板12を有している。半導体基板12は、Si、SiC等の半導体により構成されている。なお、以下では、半導体基板12の上面に平行な一方向をx方向といい、半導体基板12の上面に平行かつx方向に直交する方向をy方向といい、半導体基板12の厚み方向をz方向という。
図1、2に示すように、半導体基板12の上面には、2つの上部主電極12aと複数の信号電極12bが設けられている。2つの上部主電極12aは、x方向に間隔を空けて配置されている。各信号電極12bは、上部主電極12aに対してy方向に間隔を空けた位置に配置されている。
図1に示すように、半導体基板12の下部に、下部主電極12cが設けられている。半導体基板12の内部には、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)、IGBT(insulated gate bipolar transistor)などのスイッチング素子が形成されている。上部主電極12aと下部主電極12cは、スイッチング素子の主電流が流れる電極である。主電流は、下部主電極12cから半導体基板12を通って各上部主電極12aへ流れる。各信号電極12bは、スイッチング素子を制御するための信号が入力または出力される電極である。
【0015】
図1に示すように、半導体基板12の上部に、金属ブロック16が配置されている。したがって、z方向は、半導体基板12と金属ブロック16の積層方向である。
図2に示すように、z方向に沿って見たときに金属ブロック16は長方形である。金属ブロック16は、長方形の長辺がx方向に沿って伸び、長方形の短辺がy方向に沿って伸びるように配置されている。金属ブロック16は、2つの上部主電極12aの上部に跨るように配置されている。
【0016】
図1に示すように、金属ブロック16と半導体基板12の間に、はんだ層14が配置されている。金属ブロック16は、はんだ層14によって2つの上部主電極12aに接続されている。はんだ層14は、各上部主電極12aの上面に接合されている。すなわち、各上部主電極12aの上面は、はんだ層14に対する接合領域である。はんだ層14は、金属ブロック16の下面に接合されている。すなわち、金属ブロック16の下面は、金属ブロック16のはんだ層14に対する接合領域である。
図2に示すようにz方向に沿って見たときに、金属ブロック16の下面の面積(すなわち、
図2において金属ブロック16の輪郭により画定される領域の面積)は、2つの上部主電極12aの上面の面積の合計値よりも小さい。すなわち、z方向に沿って見たときに、金属ブロック16のはんだ層14に対する接合領域は、上部主電極12aのはんだ層14に対する接合領域よりも狭い。
【0017】
図1に示すように、金属ブロック16の下面に、平行に伸びる複数の溝18が設けられている。金属ブロック16の下面のうちの溝18以外の領域は、溝18の底面よりも下側に突出する突条20となっている。
図2に示すように、各溝18と各突条20は、y方向に沿って伸びている。すなわち、各溝18と各突条20は、金属ブロック16の輪郭である長方形の短辺に沿って伸びている。複数の溝18と複数の突条20が、x方向に沿って交互に繰り返し配置されている。
図1に示すように、はんだ層14は、各溝18の内面と各突条20の表面のほぼ全域に接合されている。
【0018】
金属ブロック16の上部に、リードフレーム24が配置されている。金属ブロック16とリードフレーム24の間に、はんだ層22が配置されている。はんだ層22は、金属ブロック16とリードフレーム24を接続している。金属ブロック16とリードフレーム24は、上部主電極12aに接続された配線として機能するとともに、半導体基板12から放熱する放熱部材として機能する。
【0019】
半導体基板12の下部に、リードフレーム28が配置されている。半導体基板12とリードフレーム28の間に、はんだ層26が配置されている。はんだ層26は、下部主電極12cとリードフレーム28を接続している。リードフレーム28は、下部主電極12cに接続された配線として機能するとともに、半導体基板12から放熱する放熱部材として機能する。
【0020】
リードフレーム24とリードフレーム28の間に、絶縁樹脂30が配置されている。絶縁樹脂30は、はんだ層22、金属ブロック16、はんだ層14、半導体基板12及びはんだ層26のそれぞれの側面を覆っている。
【0021】
図3は、上部主電極12aの外周端とその周辺の拡大断面図である。
図3に示すように、上部主電極12aは、第1電極層31と第2電極層32を有している。また、半導体基板12の上部に、絶縁性のポリイミド層34が設けられている。第1電極層31は、AlSi(すなわち、アルミニウムとシリコンの合金)により構成されている。第1電極層31は、半導体基板12の上面を覆っている。ポリイミド層34は、第1電極層31の周辺において半導体基板12の上面を覆っている。また、ポリイミド層34は、第1電極層31の上面の外周端の近傍の部分を覆っている。第2電極層32は、ニッケルにより構成されている。第2電極層32は、第1電極層31の上面のうちのポリイミド層34に覆われていない部分を覆っている。第2電極層32の上面全体が、はんだ層14に接合されている。
図3に示すように、上部主電極12aの外周端には、第1電極層31と第2電極層32とポリイミド層34とが互いに接触する三重接触部36が形成されている。
【0022】
次に、金属ブロック16に溝18が設けられていない場合に生じる問題について説明する。半導体モジュール10の使用時に、半導体基板12が繰り返し発熱する。半導体モジュール10を構成する各部材は、半導体基板12の発熱時(すなわち、通電時)に熱膨張し、半導体基板12の発熱終了時(すなわち、通電停止時)に熱収縮する。半導体基板12と金属ブロック16の線膨張係数が異なるので、半導体モジュール10の使用時に、はんだ層14に繰り返し熱応力が加わる。溝18が設けられていない場合には、はんだ層14に繰り返し熱応力が加わることで、はんだ層14が塑性変形により流動する。はんだ層14が流動すると、上部主電極12aに応力が加わる。このため、上部主電極12aにクラックが生じる場合がある。特に、上部主電極12aの外周端に存在する三重接触部36では、材質が異なる第1電極層31、第2電極層32及びポリイミド層34が互いに接触しているので、高い応力が生じ易い。したがって、上部主電極12aの外周端において、上部主電極12a(特に、第1電極層31)に、
図3に例示するクラック40が生じ易い。また、
図2に示すように、金属ブロック16の形状は、x方向に長い長方形である。したがって、金属ブロック16の膨張量は、x方向においてy方向よりも大きい。このため、金属ブロック16のx方向の端部周辺(すなわち、金属ブロック16の短辺の周辺)でより高い応力が発生し易い。このため、クラックは、上部主電極12aの外周端のうちの金属ブロック16の短辺の近傍で特に発生し易い。
【0023】
これに対し、金属ブロック16が溝18を有する実施例1の半導体モジュール10では、溝18によってはんだ層14の流動が抑制される。これによって、上部主電極12aに加わる応力が低減され、上部主電極12aでクラックの発生が抑制される。特に、溝18がy方向に沿って伸びているので、はんだ層14のx方向への流動を効果的に抑制できる。このため、金属ブロック16のx方向の端部周辺(すなわち、金属ブロック16の短辺の周辺)において上部主電極12aの外周端に加わる応力を低減できる。このため、金属ブロック16のx方向の端部周辺において、上部主電極12aの外周端でのクラックの発生を特に効果的に抑制できる。
なお、上述した実施例2では、はんだ層14の線膨張係数が金属ブロック16の線膨張係数よりも高かった。しかしながら、はんだ層14の線膨張係数が金属ブロック16の線膨張係数よりも低い場合でも、はんだ層14が中央部から外周部へ流動し易い場合がある。したがって、はんだ層14の線膨張係数が金属ブロック16の線膨張係数よりも低い場合に、接合領域の中央部に配置された突条20の高さが接合領域の外周部に配置された突条20の高さよりも低い構造を採用してもよい。