(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098350
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
G01C21/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001812
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】吉浪 譲
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129CC16
2F129DD15
2F129DD40
2F129DD45
2F129DD49
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE79
2F129EE93
2F129FF02
2F129FF18
2F129FF20
2F129FF59
2F129FF63
2F129HH12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車内空調に使用する消費エネルギーを低減できる駐車場を提示するナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置1は、自車の現在地を検出する位置検出装置3と、検出された現在位置から設定された目的地までの推奨経路を案内する経路案内手段を有する演算装置2と、を備える。そして、演算装置が、目的地周辺の駐車場を検索する駐車場検索手段と、駐車中に車室が受ける受熱量を推定する受熱量推定手段と、を有し、受熱量推定手段が、車室が受ける日射負荷により車室に蓄積されるエネルギーと、駐車場の環境温度と設定された車内温度との温度差による車室に出入りするエネルギーとから、駐車中に車室が受ける受熱量を推定し、駐車場検索手段が検索した各駐車場について、推定した受熱量を出力することとしたため、車内空調に使用する消費エネルギーを低減可能な駐車場を提示するナビゲーション装置を提供できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の現在地を検出する位置検出装置と、
検出された現在位置から設定された目的地までの推奨経路を案内する経路案内手段を有する演算装置と、を備えるナビゲーション装置であって、
上記演算装置が、
上記目的地周辺の駐車場を検索する駐車場検索手段と、駐車中に車室が受ける受熱量を推定する受熱量推定手段と、を有し、
上記受熱量推定手段が、車室が受ける日射負荷により車室に蓄積されるエネルギーと、駐車場の環境温度と設定された車内温度との温度差による車室に出入りするエネルギーとから、駐車中に車室が受ける受熱量を推定し、
上記駐車場検索手段が検索した各駐車場について、上記推定した受熱量を出力することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
上記日射負荷が、各駐車場の日陰領域情報を考慮して推定されたものであることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
上記日射負荷が、駐車場内の代表位置における日射負荷であることを特徴とする請求項2に記載の記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
上記日射負荷が、駐車場全体の平均値であることを特徴とする請求項2に記載の記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
上記受熱量推定手段が、駐車場内における日射負荷が最も大きな駐車マスと、日射負荷が最も小さな駐車マスと、について、それぞれ受熱量を推定し出力することを特徴とする請求項2に記載の記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
上記受熱量推定手段が、検索した駐車場間の上記受熱量の差分を出力することを特徴とする請求項3又は4に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
上記受熱量推定手段が、上記受熱量を、車両の空調機が消費する電力量又は走行可能距離に変換して出力することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
さらに、上記検索した駐車場から推奨する駐車場を絞り込む駐車場絞込手段を有し、
上記駐車場絞込手段が、推定した受熱量と設定された車内温度とから、屋根有り駐車場又は屋根無し駐車場を絞り込み、
上記駐車場絞込手段が絞り込んだ駐車場について、受熱量を出力することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に係り、更に詳細には、車内空調に消費されるエネルギーを考慮して駐車場を提案するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行可能距離は、空調に消費するエネルキーによって低減する。特に電気自動車ではその影響が大きく、ユーザの関心も高い。
【0003】
しかし、どのように空調を使用すると消費するエネルキーが増加するのか、また、消費エネルキーがどの程度増加するのかが分かり難く、消費エネルキーが大きな効率の悪い空調機の使い方をユーザが気づかないまま行っている場合がある。
【0004】
特に、乗車時間が短い傾向がある日本の市場においては、例えば、夏場の炎天下に車両を放置すると、車両が熱を抱えてしまい、この熱を冷ますために空調機が多大なエネルギーを消費して、走行可能距離が減少してしまう。
【0005】
特許文献1には、ユーザが入力した予定駐車時間や天気予報データ、また目標充電量から、太陽電池によって充電可能な太陽光発電量や、検索した各駐車場における充電コストのリストを表示装置の画面に表示するナビゲーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、日射量が多く、駐車中に太陽電池による充電が期待できる駐車場であっても、炎天下に車両を放置することによって上昇した車内温度を下げるために消費するエネルギーが、充電したエネルギーを上回ってしまっては、かえって走行可能距離が減少してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車内空調に使用する消費エネルギーを低減できる駐車場を提示するナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、検索した目的地周辺の駐車場それぞれについて、駐車中に車室が受ける受熱量を推定することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明のナビゲーション装置は、自車の現在地を検出する位置検出装置と、
検出された現在位置から設定された目的地までの推奨経路を案内する経路案内手段を有する演算装置と、を備える。
そして、上記演算装置が、上記目的地周辺の駐車場を検索する駐車場検索手段と、駐車中に車室が受ける受熱量を推定する受熱量推定手段と、を有し、
上記受熱量推定手段が、車室が受ける日射負荷により車室に蓄積されるエネルギーと、駐車場の環境温度と設定された車内温度との温度差による車内に出入りするエネルギーとから、駐車中に車室が受ける受熱量を推定し、上記駐車場検索手段が検索した各駐車場について、上記推定した受熱量を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検索した駐車場それぞれについて、駐車中に車室が受ける受熱量を推定することとしたため、車内空調に使用する消費エネルギーを低減可能な駐車場を提示するナビゲーション装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のナビゲーション装置の構成を示す概略図である。
【
図2】クールダウン時に空調機が消費するエネルギーの関係を示すグラフである。
【
図3】受熱量推定手段の処理の一例を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のナビゲーション装置について詳細に説明する。
本発明のナビゲーション装置1は、
図1に示すように、演算装置2と、位置検出装置3と、無線通信装置4と、記憶装置5と、入出力装置6とを備える。
【0014】
上記位置検出装置は、衛星航法システム(GPS)の人工衛星から送信される電波を受信し、自車の現在位置を現在日時と共に検出するGPS受信装置である。
【0015】
上記演算装置は、上記位置検出手段から得た自車の現在位置と記憶装置に記憶された地図情報とを用いて、経路案内に必要な処理を行うナビゲーションプログラムを実行し、検出された現在位置から設定された目的地までの推奨経路を入出力装置に出力し、経路案内を行う経路案内手段を有する。
【0016】
本発明のナビゲーション装置の演算装置は、上記経路案内手段に加えて、、駐車場検索手段と、受熱量推定手段と、を有し、検索した駐車場のそれぞれにについて、駐車中に車室が受ける受熱量を推定し、画像表示装置などの入出力装置に出力して表示する。
【0017】
これにより、ユーザは、駐車中に車室が受ける受熱量を低減させ、駐車中に上昇した車内温度を設定された温度にするために、空調機が始動時に消費するエネルギーを減少させて、走行可能距離を延ばすことが可能になる。
【0018】
駐車中に車室が受けた受熱量によって、空調機が始動時に消費するエネルギーと、空調機が設定温度を維持するために消費する必要なエネルギーと、の関係を
図2に示す。本発明によれば、上記空調機が始動時に消費するエネルギーを低減することが可能になる。
【0019】
上記駐車場検索手段は、上記記憶装置の地図情報から、ユーザが入力した目的地周辺の駐車場を検索する手段であり、また、受熱量推定手段は、上記駐車場検索手段が検索した駐車場のそれぞれについて、駐車中に車室が受ける受熱量を推定する手段である。
【0020】
駐車中に車室が受ける上記受熱量は、駐車中に車室が受けた日射負荷により車室に蓄積されるエネルギーと、駐車場の環境温度と設定された車内温度との温度差による車室に出入りするエネルギーと、の和から算出することができ、上記受熱量推定手段は、
図3に示す手順により受熱量を推定する。
【0021】
まず、車室に蓄積されるエネルギーについて説明する。
上記蓄積されるエネルギーは、車室が受ける日射負荷に起因するエネルギーであって、車室が直接に太陽から受ける直達日射、及び、大気や雲で散乱されて地表面に入射する太陽面方向を除いた天空の全方向からの間接的な散乱日射を受けることで車室に蓄積されるエネルギーである。
【0022】
上記受熱量推定手段は、無線通信装置を介して取得した駐車場周辺の天気や気温などの気象情報、記憶装置からの地図情報、位置検出装置からの現在日時、及び、ユーザが入力した駐車時間を取得し、(直達日射×直達日射の減衰率+散乱日射)を、駐車時間に応じて時間積分することで上記日射負荷を推定する。
【0023】
上記車室が太陽から直接受ける直達日射は、太陽から地表面に直接入射する直達日射とその減衰率により算出できる。
【0024】
上記直達日射は、太陽定数(1.37kW/m2)、太陽高度(度)、減衰率を用いて、ブーガの式より以下の様に得ることができる。
(直達日射)=0.5×(太陽定数)×(1-減衰率)^cosec(太陽高度)
【0025】
上記直達日射の減衰率は、駐車場と太陽の位置との関係による減衰率と、駐車場近傍の雲による減衰率とから算出する。
【0026】
上記駐車場と太陽の位置との関係による減衰率は、太陽が車両の真上にないことによる減衰率であり、駐車場の緯度経度及び時刻から太陽の仰角を求めて算出することができる。
【0027】
また、雲による減衰は、気象情報から得た曇天率から算出することができる。
なお、上記曇天率は、空の全体が薄い雲に覆われて日射量が全体的に減少する場合と、雲が点在して日射が部分的に遮られる場合との両方を含む。
【0028】
上記直達日射の減衰率は、さらに、駐車場の日陰領域情報を考慮して算出することが好ましい。すなわち、(太陽の仰角による減衰率)×(曇天率による減衰率)×(日陰領域による減衰率)によって直達日射の減衰率を算出する。
【0029】
上記日陰領域情報は、駐車場自体の構造や、駐車場周辺の建築物の高さやその形状などに起因して日陰に入る駐車場の割合、すなわち、駐車場の全面積に対する日陰になる部分の面積の割合である。
【0030】
上記日陰領域情報を考慮して、直達日射の減衰率を算出することで、都市部などのビルに囲まれた駐車場や、立体駐車場などの屋根のついた駐車場であっても、受熱量推定の精度が向上する。
【0031】
上記日陰領域情報は、地図情報から得た駐車場自体の構造や、駐車場周辺の建築物の高さやその形状などの3次元情報と、上記太陽の仰角及び方位角とから駐車場の日陰になる部分を特定して算出する。
なお、駐車場全体が日陰になる屋内駐車場の直達日射の減衰率は100%である。
【0032】
また、複数台数を収容できる大きな駐車場は、駐車マスによって日陰による減衰率が異なることがある。
【0033】
上記受熱量推定手段は、直達日射の減衰率を算出する際、駐車場内の任意の駐車マスを代表位置とし、その代表位置における日陰領域による減衰率を駐車場全体の日陰領域による減衰率とし、日射負荷を算出することができる。
【0034】
また、上記受熱量推定手段は、駐車場内の各駐車マスの日陰領域による減衰率を平均した減衰率を用いて日射負荷を算出してもよい。
【0035】
さらには、日陰領域による減衰率が最も小さな駐車マスの減衰率と日陰領域による減衰率が最も大きな駐車マスの減衰率とを用い、それぞれの駐車マスについて直達日射の減衰率を算出して日射負荷を算出し、受熱量を推定してもよい。
【0036】
上記散乱日射は、太陽定数(1.37kW/m2)、太陽高度(度)、大気透過率を用いて、ベルラーゲの式より以下の様に得ることができる。
(散乱日射量)=0.5×(太陽定数)×sin(太陽高度)×(1-(大気透過率)^cosec
(太陽高度))/(1‐1.4×ln(大気透過率))
大気透過率は前述の曇天率など気象条件により決まる減衰率を1から引いたものとなる。
【0037】
このようにして算出した日射負荷に基づき、受熱量推定手段は、車体の日射負荷に対する日射負荷感度を乗じて車室に蓄積されるエネルギーを算出する。
上記車体の日射負荷感度は、予め記憶装置に記憶されている。
【0038】
また、上記車内に出入りするエネルギーは、駐車場の環境温度と設定された車内温度との温度差に起因して車内に出入りするエネルギーであり、(駐車場の環境温度と設定された車内温度との温度差)×(車体の温度負荷感度)×(駐車時間)によって算出する。
【0039】
上記駐車場の環境温度は、駐車場周辺の気象情報から得ることができる。
駐車場が地下駐車場や立体駐車場などの屋内駐車場である場合の環境温度は、当該駐車場が公開している環境温度を受信して得ることができ、駐車場が環境温度を公開していない場合は、受信した気象情報と、地図情報から得た駐車場自体の構造などから、駐車場の環境温度を、地下駐車場の場合は17℃、屋外屋根付き駐車場の場合は気温として、上記車内に出入りするエネルギーを算出する。
【0040】
また、上記車体の温度負荷感度は、予め記憶装置に記憶されている。
【0041】
上記受熱量推定手段は、上記のようにして算出した、車室に蓄積されるエネルギーと、車内に出入りするエネルギーとを足し合わせ、駐車中に車室が受ける受熱量として出力する。
【0042】
このとき、上記受熱量推定手段は、検索した駐車場間の上記受熱量の差分を出力することが好ましい。これにより、ユーザはが、受熱量の小さな駐車場を把握し易くなる。
【0043】
さらに、上記受熱量推定手段は、記憶手段に記憶された、空調機の電力効率や自車の電費から、推定した受熱量を空調機が消費する電力量や走行可能距離に変換して、入出力装置に出力し表示することが好ましい。これにより、ユーザはが、駐車場選択によるエネルギー削減効果をより実感し易くなる。
【0044】
本発明のナビゲーション装置の演算装置は、上記検索した駐車場から推奨する駐車場を絞り込む駐車場絞込手段を有することができる。
【0045】
車室が受ける受熱量は、日射量によって大きく変わるので、推定した受熱量と設定された車内温度とから、その季節において車内空調に使用する消費エネルギーを低減できる駐車場が、屋根有り駐車場であるか、又は屋根無し駐車場であるかを判断し、適切な駐車場を絞り込み、この絞り込んだ駐車場について、上記受熱量を出力する。
【0046】
これにより、検索された目的地周辺の駐車場のうち、夏季においては屋根有りや日陰の駐車場のみが入出力装置に表示され、冬季においては屋根無し駐車場のみが入出力装置に表示されるようになって、ユーザによる駐車場の選択が容易になる。
【0047】
そして、経路案内手段は、ユーザが選択した駐車場までの推奨経路を入出力装置に出力して経路案内を行う。
【符号の説明】
【0048】
1 ナビゲーション装置
2 演算装置
3 位置検出装置
4 無線通信装置
5 記憶装置
6 入出力装置