(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098353
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】電力融通装置、電力融通システムおよび電力融通方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240716BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240716BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240716BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240716BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H02J1/00 306L
H02J1/00 309D
H02J1/00 309H
H02J1/00 304H
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
H02J7/10 P
H02J7/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001817
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】片元 優太
(72)【発明者】
【氏名】野本 斗生
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165BB02
5G165DA01
5G165EA02
5G165HA01
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA04
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】DCグリッドに接続される装置が自律的に電力融通を行うと共に、装置間の電力融通を効率的に行うことが可能な電力融通装置を提供する。
【解決手段】制御部(13)は、自装置を放電モードに設定した場合、DCバス(2)に対して電流指令値となる電流を出力するように双方向DC/DCコンバータ(11)を制御する放電動作を行い、DCバス(2)の電圧であるグリッド電圧が所定の目標電圧以下であるときに、電流指令値を所定の一定電流値とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
前記蓄電池とDCバスとの間に接続される双方向DC/DCコンバータと、
前記蓄電池の充電率に応じて、自装置を充電モードまたは放電モードに設定して前記双方向DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、自装置を前記放電モードに設定した場合、前記DCバスに対して電流指令値となる電流を出力するように前記双方向DC/DCコンバータを制御する放電動作を行い、
前記DCバスの電圧であるグリッド電圧が所定の目標電圧以下であるときに、前記電流指令値を所定の一定電流値とし、
前記制御部は、自装置を前記充電モードに設定した場合、前記DCバスのグリッド電圧が所定の下限電圧のときに電流値が0であり、前記グリッド電圧が上限電圧のときに最大電流値となるような充電特性に応じて前記双方向DC/DCコンバータを制御して充電動作を行い、
その後、前記充電モードを終了させるべきと判断すると、前記電流値が0になる電圧が徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、充電電流が徐々に小さくなるように前記双方向DC/DCコンバータを制御し、前記充電電流が0になると前記充電動作を終了する、電力融通装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電池の充電率が第1の所定値以上の場合、自装置を前記放電モードに設定する、請求項1に記載の電力融通装置。
【請求項3】
前記制御部は、自装置が前記放電モードにある場合に、前記蓄電池の充電率が第2の所定値まで低下すると、前記電流指令値を徐々に小さくしながら前記双方向DC/DCコンバータを制御して前記放電動作を停止し、前記放電モードを終了する、請求項2に記載の電力融通装置。
【請求項4】
前記制御部は、自装置が前記放電モードにある場合に、前記グリッド電圧が上限電圧となると、前記電流指令値を0まで低下させるように前記双方向DC/DCコンバータを制御して前記放電動作を停止し、前記放電モードを終了する、請求項1に記載の電力融通装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記蓄電池の充電率が第3の所定値以下の場合、自装置を前記充電モードに設定する、請求項1に記載の電力融通装置。
【請求項6】
前記制御部は、自装置が前記充電モードにある場合に、前記蓄電池の充電率が第4の所定値に達すると、前記電流値が0になる電圧が前記目標電圧になるまで徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、前記充電電流が徐々に小さくなるように前記双方向DC/DCコンバータを制御して前記充電モードを終了する、請求項5に記載の電力融通装置。
【請求項7】
第1の電力融通装置と、第2の電力融通装置とがDCバスを介して接続される電力融通システムであって、
前記第1の電力融通装置は、
第1の蓄電池と、
前記第1の蓄電池と前記DCバスとの間に接続される第1の双方向DC/DCコンバータと、
前記DCバスに対して電流指令値となる電流を出力するように前記第1の双方向DC/DCコンバータを制御する放電動作を行い、前記DCバスの電圧であるグリッド電圧が所定の目標電圧以下であるときに、前記電流指令値を所定の一定電流値とする第1の制御部と、を備え、
前記第2の電力融通装置は、
第2の蓄電池と、
前記第2の蓄電池と前記DCバスとの間に接続される第2の双方向DC/DCコンバータと、
前記DCバスのグリッド電圧が所定の下限電圧のときに電流値が0であり、前記グリッド電圧が上限電圧のときに最大電流値となるような充電特性に応じて前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御して充電動作を行い、
その後、充電モードを終了させるべきと判断すると、前記電流値が0になる電圧が徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、充電電流が徐々に小さくなるように前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御し、前記充電電流が0になると前記充電動作を終了する第2の制御部と、を備える、電力融通システム。
【請求項8】
第1の蓄電池および第1の双方向DC/DCコンバータを備えた第1の電力融通装置と、第2の蓄電池および第2の双方向DC/DCコンバータを備えた第2の電力融通装置とがDCバスを介して接続されるシステムの電力融通方法であって、
前記第1の電力融通装置が、前記第1の蓄電池と前記DCバスとの間に接続された前記第1の双方向DC/DCコンバータを制御して、前記DCバスに対して電流指令値となる電流を出力するように前記双方向DC/DCコンバータを制御する放電動作を行い、前記DCバスの電圧であるグリッド電圧が所定の目標電圧以下であるときに、前記電流指令値を所定の一定電流値とする工程と、
前記第2の電力融通装置が、前記第2の蓄電池と前記DCバスとの間に接続された前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御して、前記DCバスのグリッド電圧が所定の下限電圧のときに電流値が0であり、前記グリッド電圧が上限電圧のときに最大電流値となるような充電特性に応じて充電動作を行い、
その後、充電モードを終了させるべきと判断すると、前記電流値が0になる電圧が徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、充電電流が徐々に小さくなるように前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御し、前記充電電流が0になると前記充電動作を終了する工程と、を含む、電力融通方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力融通装置、電力融通システムおよび電力融通方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の蓄電池を備え、蓄電池間で電力を融通するシステムの開発が進められている。これに関連する技術として、下記の特許文献1および特許文献2に開示された発明がある。
【0003】
特許文献1は、直流電力を蓄電する蓄電池とDC接続バスとの間に接続され、DC接続バスに接続された他の蓄電装置との間で電力融通を実行する蓄電装置に関する。蓄電装置は、DC接続バスのグリッド電圧の増加に従い放電電流が低下する放電特性に基づく放電用、またはグリッド電圧の増加に従い充電電流が増加する充電特性に基づく充電用に設定可能な双方向DC/DCコンバータを介してDC接続バスに接続され、放電特性において放電電流がゼロになるグリッド電圧は、充電特性において充電電流がゼロになるグリッド電圧よりも大きい値に設定されている。
【0004】
特許文献2は、直流マイクログリッドシステム及びその制御方法に関し、定格値の異なる垂下特性を有する電圧源と電力源と負荷とを備えた直流マイクログリッドシステムにおいて、電圧源および電力源の定格値とバス電圧との関係を制御する制御部を更に備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-146314号公報(2019年8月29日公開)
【特許文献2】特開2021-197823号公報(2021年12月27日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の蓄電システムでは、双方向DC/DCコンバータの定格出力電流に対し、充放電に利用する電流が小さいため、蓄電装置の能力を十分に発揮することができない。例えば、放電特性の蓄電装置が1台、充電特性の蓄電装置が1台の場合、動作点の電流は定格電流の50%となり、充放電に利用する電流をそれ以上大きくすることができない。
【0007】
また、特許文献2においては、制御部が、各電圧源および電力源に対してドループ特性を設定して電力を融通させるものであるが、DCバスに接続される装置間で通信するための通信手段が必要となる。したがって、DCバスに接続される装置が自律的に電力融通を行うことができない。
【0008】
本発明の一態様は、DCバスに接続される装置が自律的に電力融通を行うと共に、装置間の電力融通を効率的に行うことが可能な電力融通装置、電力融通システムおよび電力融通方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電力融通装置は、蓄電池と、前記蓄電池とDCバスとの間に接続される双方向DC/DCコンバータと、前記蓄電池の充電率に応じて、自装置を充電モードまたは放電モードに設定して前記双方向DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、自装置を前記放電モードに設定した場合、前記DCバスに対して電流指令値となる電流を出力するように前記双方向DC/DCコンバータを制御する放電動作を行い、前記DCバスの電圧であるグリッド電圧が所定の目標電圧以下であるときに、前記電流指令値を所定の一定電流値とし、前記制御部は、自装置を前記充電モードに設定した場合、前記DCバスのグリッド電圧が所定の下限電圧のときに電流値が0であり、前記グリッド電圧が上限電圧のときに最大電流値となるような充電特性に応じて前記双方向DC/DCコンバータを制御して充電動作を行い、その後、前記充電モードを終了させるべきと判断すると、前記電流値が0になる電圧が徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、充電電流が徐々に小さくなるように前記双方向DC/DCコンバータを制御し、前記充電電流が0になると前記充電動作を終了する。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電力融通システムは、第1の電力融通装置と、第2の電力融通装置とがDCバスを介して接続される電力融通システムであって、前記第1の電力融通装置は、第1の蓄電池と、前記第1の蓄電池と前記DCバスとの間に接続される第1の双方向DC/DCコンバータと、前記DCバスに対して電流指令値となる電流を出力するように前記第1の双方向DC/DCコンバータを制御する放電動作を行い、前記DCバスの電圧であるグリッド電圧が所定の目標電圧以下であるときに、前記電流指令値を所定の一定電流値とする第1の制御部と、を備え、前記第2の電力融通装置は、第2の蓄電池と、前記第2の蓄電池と前記DCバスとの間に接続される第2の双方向DC/DCコンバータと、前記DCバスのグリッド電圧が所定の下限電圧のときに電流値が0であり、前記グリッド電圧が上限電圧のときに最大電流値となるような充電特性に応じて前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御して充電動作を行い、その後、前記充電モードを終了させるべきと判断すると、前記電流値が0になる電圧が徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、充電電流が徐々に小さくなるように前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御し、前記充電電流が0になると前記充電動作を終了する第2の制御部と、を備える。
【0011】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電力融通方法は、第1の蓄電池および第1の双方向DC/DCコンバータを備えた第1の電力融通装置と、第2の蓄電池および第2の双方向DC/DCコンバータを備えた第2の電力融通装置とがDCバスを介して接続されるシステムの電力融通方法であって、前記第1の電力融通装置が、前記第1の蓄電池と前記DCバスとの間に接続された前記第1の双方向DC/DCコンバータを制御して、前記DCバスに対して電流指令値となる電流を出力するように前記双方向DC/DCコンバータを制御する放電動作を行い、前記DCバスの電圧であるグリッド電圧が所定の目標電圧以下であるときに、前記電流指令値を所定の一定電流値とする工程と、前記第2の電力融通装置が、前記第2の蓄電池と前記DCバスとの間に接続された前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御して、前記DCバスのグリッド電圧が所定の下限電圧のときに電流値が0であり、前記グリッド電圧が上限電圧のときに最大電流値となるような充電特性に応じて充電動作を行い、その後、前記充電モードを終了させるべきと判断すると、前記電流値が0になる電圧が徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、充電電流が徐々に小さくなるように前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御し、前記充電電流が0になると前記充電動作を終了する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、DCバスに接続される装置が自律的に電力融通を行うと共に、装置間の電力融通を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る複数の電力融通装置を含んだ電力融通システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る電力融通装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】1つの電力融通装置に放電特性が設定され、他の電力融通装置に充電特性が設定された場合を示す図である。
【
図4】放電特性および充電特性を説明するためのグラフである。
【
図5】充電特性をシフトする場合を説明するためのグラフである。
【
図6】本発明の実施形態1に係る電力融通装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態2に係る電力融通装置の機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
<電力融通装置1-1~1-nを含んだ電力融通システムの構成例>
図1は、本発明の実施形態1に係る複数の電力融通装置を含んだ電力融通システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、電力融通システム100は、n台の電力融通装置1-1~1-nがDCバス2を介して接続される構成を有している。なお、nは、2以上の整数である。
【0015】
図2は、本発明の実施形態1に係る電力融通装置1の機能的構成を示すブロック図である。電力融通装置1は、双方向DC/DCコンバータ11と、蓄電装置12と、制御部13と、を備えている。
【0016】
双方向DC/DCコンバータ11は、蓄電装置12とDCバス2との間に接続され、充電時にはDCバス2の直流電圧を所定の直流電圧に変換して蓄電装置12に供給し、放電時には蓄電装置12の直流電圧を所定の直流電圧に変換してDCバス2に供給する。また、双方向DC/DCコンバータ11は、DCバス2の直流電圧値および直流電流値を計測する機能を有している。
【0017】
蓄電装置12は、蓄電池を備え、蓄電池の充電率(SOC(State of Charge))を計測する機能を有している。例えば、蓄電装置12は、蓄電池を充放電が行われていない停止状態にして、停止状態から蓄電池に充放電された電流容量(Ah)によって、蓄電池のSOCを算出することが可能である。
【0018】
制御部13は、蓄電装置12から蓄電池のSOCを取得し、SOCに応じて、自装置を放電モードまたは充電モードに設定する。
【0019】
<電力融通装置1の放電動作>
制御部13は、例えば、蓄電池のSOCが第1の所定値(例えば、70%)以上であれば、自装置を放電モードに設定し、放電特性を設定する。制御部13は、自装置を放電モードに設定した場合、DCバス2に接続される充電特性を有する少なくとも1つの他装置に対して放電電流が一定となるように双方向DC/DCコンバータ11を制御して放電動作を行う。
【0020】
放電動作の開始時において、DCバス2のグリッド電圧が0Vであるため、制御部13は、電流指令値を所定の一定電流値にして双方向DC/DCコンバータ11に対して制御を行うことにより、グリッド電圧を徐々に上昇させる。双方向DC/DCコンバータ11は、制御部13からの電流指令値に応じてDCバス2に電流を供給することによって、DCバス2の電圧が徐々に上昇することになる。
【0021】
制御部13は、双方向DC/DCコンバータ11によって計測されたDCバス2の電圧値を受け、DCバス2のグリッド電圧が目標電圧(例えば、Va)になるようにする。そして、制御部13は、双方向DC/DCコンバータ11によって計測されたDCバス2のグリッド電圧が目標電圧Vaになると、DCバス2のグリッド電圧が目標電圧Vaを維持するように、電流指令値をそのときの値Iaに固定し、電流一定制御を行う。
【0022】
その後、制御部13は、蓄電装置12から蓄電池のSOCを取得し、蓄電池のSOCが第2の所定値(例えば、40%)以下になると、電流指令値を徐々に小さくしながら双方向DC/DCコンバータ11を制御し、電流指令値が0Aとなったときに放電動作を終了する。
【0023】
<電力融通装置1の充電動作>
制御部13は、例えば、蓄電池のSOCが第3の所定値(例えば、30%)以下であれば、自装置を充電モードに設定し、充電特性を設定する。制御部13は、自装置を充電モードに設定した場合、DCバス2のグリッド電圧が下限電圧のときに最小電流値0であり、DCバス2の電圧が上限電圧のときに最大電流値となるような充電特性に応じて双方向DC/DCコンバータ11を制御し、DCバス2から供給される充電電流に応じて蓄電池への充電動作を行う。このとき、制御部13は、双方向DC/DCコンバータ11によって計測されたDCバス2の電流値に比例した電圧指令値を双方向DC/DCコンバータ11に指示することにより、ドループ特性に応じた電圧一定制御を行う。
【0024】
図3は、電力融通装置1-1に放電特性が設定され、電力融通装置1-2に充電特性が設定された場合を示す図である。
図3に示すように、放電特性を有する電力融通装置1-1は、上述のような電流一定制御を行い、充電特性を有する電力融通装置1-2は、上述のような電圧一定制御を行うことになる。
【0025】
図4は、放電特性および充電特性を説明するためのグラフである。
図4に示すように、充電特性は、DCバス2のグリッド電圧が下限電圧V
1のときに最小電流値(0A)であり、DCバス2のグリッド電圧が上限電圧V
2のときに最大電流値(I
1A)となるようなドループ特性を有している。
【0026】
図3に示す電力融通装置1-1は、放電特性を有しており、放電電流がIaとなるように双方向DC/DCコンバータ11を制御する。また、
図3に示す電力融通装置1-2は、充電特性を有しており、DCバスのグリッド電圧がVaの状態で蓄電装置12の充電動作を行う。
【0027】
このように、充電特性を有する電力融通装置1-2は、DCバス2の電圧値がVa(例えば、上限電圧V2の90%)の状態で蓄電装置12の充電動作を行うため、自律的に電力融通を行うと共に、電力融通装置間の電力融通を効率的に行うことが可能となる。
【0028】
図5は、充電特性をシフトする場合を説明するためのグラフである。充電特性を有する電力融通装置1-2の制御部13は、蓄電池の充電率が第4の所定値(例えば、60%)以上となった場合、
図5に示すように、下限電圧V
1が徐々に大きくなるように充電特性をシフトし、下限電圧がV
1’(=Va)となるまでシフトする。これに伴って、電力融通装置1-2の制御部13は、蓄電装置12への充電電流が徐々に小さくなるように双方向DC/DCコンバータ11を制御し、充電電流が0Aになったときに充電動作を終了する。
【0029】
一方、放電特性を有する電力融通装置1-1の制御部13は、電力融通装置1-2の充電電流が徐々に小さくなるに従って、DCバス2の電圧がVaよりも大きくなる。双方向DC/DCコンバータ11には、予めグリッド電圧が上限電圧V2未満となるように電流リミット機能が設定されており、グリッド電圧が上限電圧V2になると、電力融通装置1-1の制御部13は、電流指令値を徐々に小さくすることになる。そして、電力融通装置1-1の制御部13は、電流指令値が0Aとなったときに放電動作を終了する。
【0030】
<電力融通装置1の処理手順>
図6は、本発明の実施形態1に係る電力融通装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、制御部13は、蓄電池のSOCが第1の所定値(例えば、70%)以上であるか否かを判定する(S11)。蓄電池のSOCが第1の所定値以上であれば(S11,Yes)、自装置の蓄電池の充電量に余裕があり、他の装置に電力を融通することが可能であるとして、自装置を放電モードに設定し、放電特性を設定する(S12)。
【0031】
次に、制御部13は、電流指令値を所定の一定電流値(例えば、
図4に示すIa)に設定し、DCバス2のグリッド電圧が所定の目標電圧(例えば、
図4に示すVa)となるように双方向DC/DCコンバータ11に対して制御を行う(S13)。そして、制御部13は、DCバス2のグリッド電圧が所定の目標電圧を維持するように、双方向DC/DCコンバータ11に対して電流一定制御を行わせて、蓄電池の放電動作を行う(S14)。
【0032】
次に、制御部13は、蓄電池のSOCが第2の所定値(例えば、40%)以下であるか否かを判定する(S15)。蓄電池のSOCが第2の所定値以下であれば(S15,Yes)、自装置の蓄電池の充電量に余裕がなくなったとして、制御部13は、電流指令値を徐々に小さくしながら双方向DC/DCコンバータ11を制御して放電動作を終了する(S16)。また、蓄電池のSOCが第2の所定値より大きければ(S15,No)、ステップS14の処理を繰り返す。
【0033】
また、蓄電池のSOCが第1の所定値未満であれば(S11,No)、制御部13は、蓄電池のSOCが第3の所定値(例えば、30%)以下であるか否かを判定する(S17)。蓄電池のSOCが第3の所定値以下であれば(S17,Yes)、自装置の蓄電池の充電量に余裕がなく、他の装置から電力を融通してもらう必要があるとして、自装置を充電モードに設定し、充電特性を設定する(S18)。
【0034】
次に、制御部13は、DCバス2の電流値に比例して電圧指令値を変更しながら、双方向DC/DCコンバータ11に対して電圧一定制御を行わせて、蓄電池への充電動作を行う(S19)。
【0035】
次に、制御部13は、蓄電池のSOCが第4の所定値(例えば、60%)以上であるか否かを判定する(S20)。蓄電池のSOCが第4の所定値以上であれば(S20,Yes)、自装置の蓄電池への充電動作が不要になったとして、充電特性をシフトし、充電電流が0Aになると蓄電池への充電動作を終了する(S21)。また、蓄電池のSOCが第4の所定値未満であれば(S20,No)、ステップS19の処理を繰り返す。
【0036】
また、ステップS17において、蓄電池のSOCが第3の所定値よりも大きければ(S17,No)、制御部13は、蓄電池の放電動作および充電動作が不要であるとして、処理を終了する。
【0037】
<電力融通装置1の効果>
以上説明したように、本実施形態に係る電力融通装置1によれば、制御部13が、蓄電池の充電率に応じて、自装置を充電モードまたは放電モードに設定して双方向DC/DCコンバータ11を制御する。したがって、DCバス2に接続される電力融通装置1-1~1-nが自律的に電力融通を行うことができる。
【0038】
また、制御部13は、自装置を放電モードに設定した場合、DCバス2に接続される充電特性を有する少なくとも1つの他の電力融通装置に対して放電電流が一定となるように双方向DC/DCコンバータ11を制御して放電動作を行う。したがって、電力融通装置1は、定格電流に近い領域で電力融通を行うことができ、電力融通装置間の電力融通を効率的に行うことが可能となる。
【0039】
また、放電特性を有する電力融通装置1の制御部13は、蓄電池のSOCが第2の所定値以下になると、電流指令値を徐々に小さくしながら双方向DC/DCコンバータ11を制御して放電動作を終了する。したがって、放電特性を有する電力融通装置1は、他の電力融通装置に対して、自律的に電力融通を行うことができると共に、必要以上に電力融通を行うことを防止することができる。
【0040】
また、充電特性を有する電力融通装置1の制御部13は、蓄電池の充電率が第4の所定値以上となった場合、充電特性(ドループ特性)をシフトしながら、蓄電池への充電電流が徐々に小さくなるように双方向DC/DCコンバータ11を制御し、充電動作を終了する。したがって、充電特性を有する電力融通装置1は、他の電力融通装置から、自律的に電力融通を受けることができると共に、必要以上に電力融通を受けることを防止することができる。
【0041】
また、充電特性を有する電力融通装置1が2台以上存在する場合でも、充電特性のシフトによって動作点が同じように変化するため、他の充電特性を有する電力融通装置1は電力融通を継続しながら、充電を完了した電力融通装置1のみが安全に充電動作を終了することができる。例えば、充電を完了した電力融通装置1が、電流が流れている状態のまま双方向DC/DCコンバータ11の動作を停止させると、その電流が他の充電特性を有する電力融通装置1へ流れることになる。この場合、他の充電特性を有する電力融通装置1において誤って電流リミット動作が行われる可能性があるため、上述の充電特性のシフトによってそれを防止することができる。
【0042】
[実施形態2]
図7は、本発明の実施形態2に係る電力融通装置1Aの機能的構成を示すブロック図である。
図2に示す実施形態1に係る電力融通装置1と比較して、太陽パネル等の発電装置14と、家電機器等の負荷15とが追加されている点のみが異なる。したがって、重複する構成および機能の詳細な説明は繰り返さない。
【0043】
制御部13は、実施形態1において説明した蓄電装置12の放電動作および充電動作の制御に加えて、発電装置14によって発電された電力を蓄電装置12に充電する制御、蓄電装置12に蓄積される電力を負荷15へ供給する制御、等を行う。
図7に示すように、発電装置14および負荷15が追加されているため、蓄電装置12の蓄電池のSOCが頻繁に変動することになる。このような場合でも、実施形態1において説明したような放電動作および充電動作を行うことにより、DCバス2に接続される電力融通装置1Aが自律的に電力融通を行うと共に、電力融通装置1A間の電力融通を効率的に行うことが可能となる。
【0044】
〔ソフトウェアによる実現例〕
電力融通装置1の制御ブロック(特に制御部13)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0045】
後者の場合、電力融通装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0046】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る電力融通装置は、蓄電池と、前記蓄電池とDCバスとの間に接続される双方向DC/DCコンバータと、前記蓄電池の充電率に応じて、自装置を充電モードまたは放電モードに設定して前記双方向DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、自装置を前記放電モードに設定した場合、前記DCバスに対して電流指令値となる電流を出力するように前記双方向DC/DCコンバータを制御する放電動作を行い、前記DCバスの電圧であるグリッド電圧が所定の目標電圧以下であるときに、前記電流指令値を所定の一定電流値とし、前記制御部は、自装置を前記充電モードに設定した場合、前記DCバスのグリッド電圧が所定の下限電圧のときに電流値が0であり、前記グリッド電圧が上限電圧のときに最大電流値となるような充電特性に応じて前記双方向DC/DCコンバータを制御して充電動作を行い、その後、前記充電モードを終了させるべきと判断すると、前記電流値が0になる電圧が徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、充電電流が徐々に小さくなるように前記双方向DC/DCコンバータを制御し、前記充電電流が0になると前記充電動作を終了する。
【0047】
本発明の態様2に係る電力融通装置は、上記態様1において、前記制御部は、前記蓄電池の充電率が第1の所定値以上の場合、自装置を前記放電モードに設定する。
【0048】
本発明の態様3に係る電力融通装置は、上記態様1または2において、前記制御部は、自装置が前記放電モードにある場合に、前記蓄電池の充電率が第2の所定値まで低下すると、前記電流指令値を徐々に小さくしながら前記双方向DC/DCコンバータを制御して前記放電動作を停止し、前記放電モードを終了する。
【0049】
本発明の態様4に係る電力融通装置は、上記態様1~3のいずれかにおいて、前記制御部は、自装置が前記放電モードにある場合に、前記グリッド電圧が上限電圧となると、前記電流指令値を0まで低下させるように前記双方向DC/DCコンバータを制御して前記放電動作を停止し、前記放電モードを終了する。
【0050】
本発明の態様5に係る電力融通装置は、上記態様1において、前記制御部は、前記蓄電池の充電率が第3の所定値以下の場合、自装置を前記充電モードに設定する。
【0051】
本発明の態様6に係る電力融通装置は、上記態様5において、前記制御部は、自装置が前記充電モードにある場合に、前記蓄電池の充電率が第4の所定値に達すると、前記電流値が0になる電圧が前記目標電圧になるまで徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、前記充電電流が徐々に小さくなるように前記双方向DC/DCコンバータを制御して前記充電モードを終了する。
【0052】
本発明の態様7に係る電力融通システムは、第1の電力融通装置と、第2の電力融通装置とがDCバスを介して接続される電力融通システムであって、前記第1の電力融通装置は、第1の蓄電池と、前記第1の蓄電池と前記DCバスとの間に接続される第1の双方向DC/DCコンバータと、前記DCバスに対して電流指令値となる電流を出力するように前記第1の双方向DC/DCコンバータを制御する放電動作を行い、前記DCバスの電圧であるグリッド電圧が所定の目標電圧以下であるときに、前記電流指令値を所定の一定電流値とする第1の制御部と、を備え、前記第2の電力融通装置は、第2の蓄電池と、前記第2の蓄電池と前記DCバスとの間に接続される第2の双方向DC/DCコンバータと、前記DCバスのグリッド電圧が所定の下限電圧のときに電流値が0であり、前記グリッド電圧が上限電圧のときに最大電流値となるような充電特性に応じて前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御して充電動作を行い、その後、前記充電モードを終了させるべきと判断すると、前記電流値が0になる電圧が徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、充電電流が徐々に小さくなるように前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御し、前記充電電流が0になると前記充電動作を終了する第2の制御部と、を備える。
【0053】
本発明の態様8に係る電力融通方法は、第1の蓄電池および第1の双方向DC/DCコンバータを備えた第1の電力融通装置と、第2の蓄電池および第2の双方向DC/DCコンバータを備えた第2の電力融通装置とがDCバスを介して接続されるシステムの電力融通方法であって、前記第1の電力融通装置が、前記第1の蓄電池と前記DCバスとの間に接続された前記第1の双方向DC/DCコンバータを制御して、前記DCバスに対して電流指令値となる電流を出力するように前記双方向DC/DCコンバータを制御する放電動作を行い、前記DCバスの電圧であるグリッド電圧が所定の目標電圧以下であるときに、前記電流指令値を所定の一定電流値とする工程と、前記第2の電力融通装置が、前記第2の蓄電池と前記DCバスとの間に接続された前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御して、前記DCバスのグリッド電圧が所定の下限電圧のときに電流値が0であり、前記グリッド電圧が上限電圧のときに最大電流値となるような充電特性に応じて充電動作を行い、その後、前記充電モードを終了させるべきと判断すると、前記電流値が0になる電圧が徐々に大きくなるように前記充電特性をシフトすることによって、充電電流が徐々に小さくなるように前記第2の双方向DC/DCコンバータを制御し、前記充電電流が0になると前記充電動作を終了する工程と、を含む。
【0054】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1,1-1~1-n 電力融通装置
2 DCバス
11 双方向DC/DCコンバータ
12 蓄電装置
13 制御部
14 発電装置
15 負荷
100 電力融通システム