(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098357
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】導波管接続構造
(51)【国際特許分類】
H01P 1/04 20060101AFI20240716BHJP
H01P 3/12 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H01P1/04
H01P3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001821
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】笠原 康汰
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 俊也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 瞳子
【テーマコード(参考)】
5J011
5J014
【Fターム(参考)】
5J011DA05
5J014DA08
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、しかも、軽量化、省スペース化が可能な導波管接続構造を提供する。
【解決手段】断面が略四角形の筒状の導波管1と接続体2とを接続する導波管接続構造であって、接続体2が、軸方向に沿った分割面DLで複数の分割接続体3に分割され、分割接続体3の一端部3Aの内面に凸状の突起部31が設けられ、分割接続体3の一端部3Aで導波管1の一端部1Aを覆った状態で、分割接続体3が導波管1側に押圧され固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が略四角形の筒状の導波管と接続体とを接続する導波管接続構造であって、
前記接続体が、軸方向に沿った分割面で複数の分割接続体に分割され、
前記分割接続体の一端側の内面および前記導波管の一端側の外面の少なくとも一方に、凸状の突起部が設けられ、
前記分割接続体の一端側で前記導波管の一端側を覆った状態で、前記分割接続体が前記導波管側に押圧され固定されている、
ことを特徴とする導波管接続構造。
【請求項2】
前記突起部が、前記導波管の軸方向に略直交する方向に延びるように線状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の導波管接続構造。
【請求項3】
前記突起部が、略ピン状で、前記導波管の軸方向に略直交する方向に延びるように複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の導波管接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ装置などに使用される導波管の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
導波管は、電波を伝送するための管であり、導波管を他の接続体と接続する場合には、隙間なく接続して電波の漏洩や伝送ロスを防ぐ必要がある。このため、従来から、平面フランジ(バットフランジ)とチョークフランジを組み合せる導波管接続構造が一般的に採用されていた(例えば、特許文献1等参照。)。また、フランジを使用しないで接続する方法として、チョーク構造を有する接続体に導波管を差し込むような導波管接続構造も採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、チョーク構造を設けると、構造が複雑で、重量化するとともに広いスペースを要し、しかも、導波管の形状や周囲環境・構造によっては、チョーク構造を設けるスペースが確保できない場合が生じ得る。
【0005】
そこで本発明は、簡易な構成で、しかも、軽量化、省スペース化が可能な導波管接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、断面が略四角形の筒状の導波管と接続体とを接続する導波管接続構造であって、前記接続体が、軸方向に沿った分割面で複数の分割接続体に分割され、前記分割接続体の一端側の内面および前記導波管の一端側の外面の少なくとも一方に、凸状の突起部が設けられ、前記分割接続体の一端側で前記導波管の一端側を覆った状態で、前記分割接続体が前記導波管側に押圧され固定されている、ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の導波管接続構造において、前記突起部が、前記導波管の軸方向に略直交する方向に延びるように線状に形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の導波管接続構造において、前記突起部が、略ピン状で、前記導波管の軸方向に略直交する方向に延びるように複数設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、分割接続体の一端側で導波管の一端側を覆った状態で、分割接続体が導波管側に押圧され固定されることで、分割接続体や導波管に設けられた突起部が導波管や分割接続体に当接・接触し、電波の漏洩や伝送ロスを防ぐことが可能となる。そして、分割接続体や導波管に凸状の突起部が設けられているだけであるため、構成が簡易で、しかも、チョーク構造に比べて軽量化、省スペース化することが可能となる。従って、チョーク構造を設けるスペースが確保できない場合であっても、導波管と接続体とを接続することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、導波管の軸方向に略直交する方向に延びるように、つまり、導波管の開口に沿うように、突起部が線状に形成されているため、電波の漏洩や伝送ロスをより効果的に防ぐことが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、導波管の軸方向に略直交する方向に延びるように、つまり、導波管の開口に沿うように、略ピン状の突起部が複数設けられているだけであるため、構成がより簡易化し、また、軽量化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る導波管接続構造を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1の導波管接続構造による接続部の接続前の状態を示す拡大断面図である。
【
図3】
図1の導波管接続構造による接続部の接続後の状態を示す拡大断面図である。
【
図4】
図1の導波管接続構造による接続後の状態を示す斜視図である。
【
図5】この発明の実施の形態1に係る分割接続体の一端側の内面を示す平面図(a)と、その側面断面図(b)である。
【
図6】この発明の実施の形態1に係る接続体の一端側を示す平面図(a)と、その正面(b)である。
【
図9】
図1の導波管接続構造での反射特性を示す図である。
【
図10】
図1の導波管接続構造での通過特性を示す図である。
【
図11】この発明の実施の形態2に係る導波管接続構造による接続後の状態を示す斜視図である。
【
図12】この発明の実施の形態2に係る分割接続体の一端側の内面を示す平面図(a)と、その側面断面図(b)である。
【
図13】この発明の実施の形態2に係る接続体の一端側を示す平面図(a)と、その正面(b)である。
【
図14】
図11の導波管接続構造での反射特性を示す図である。
【
図15】
図11の導波管接続構造での通過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1~
図10は、この実施の形態を示し、
図1は、この実施の形態に係る導波管接続構造を示す分解斜視図であり、
図2および
図3は、この導波管接続構造による接続部の接続前および接続後の状態を示す拡大断面図である。この導波管接続構造は、断面が略四角形の筒状の導波管1と接続体2とを接続するための接続構造である。ここで、導波管1は、従来の導波管と同等の構成・形状で、この実施の形態では、断面形状が横長の略四角形の筒状となっている。また、導波管1と接続される接続体2は、導波管や給電管などどのような部品・機器であってもよい。
【0015】
接続体2は、断面が略四角形の筒状で、その断面形状は、一端部(一端側)2Aを除いて導波管1の断面形状と略同形状に形成されている。すなわち、接続体2の一端部2Aは、
図4に示すように、導波管1の一端部(一端側)1Aを覆いられるように、その断面形状(内形状)が導波管1の一端部1Aの外形状と略同形状に形成され、一端部2A以外の断面形状は、導波管1の断面形状と略同形状に形成されている。
【0016】
このような接続体2は、軸方向に沿った分割面DLで複数の分割接続体3に分割されている。すなわち、この実施の形態では、接続体2の断面の両短辺の中心を通り、軸方向に沿った分割面DLで2つの分割接続体3に分割され、2つの分割接続体3は、略同形状となっている。このため、一方の分割接続体3のみについて、以下に説明する。これに対して、3つ以上の分割接続体に分割したり、異形状に分割したりしてもよい。
【0017】
分割接続体3の一端部(一端側)3Aの広壁の内面(接続体2の一端部2Aの断面の長辺に相当する内面)には、凸状の突起部31が導波管1の軸方向に略直交する方向に延びるように線状に形成されている。すなわち、この実施の形態では、
図5に示すように、分割接続体3の軸方向(導波管1の軸方向と同方向)に略直交する方向に延びる、つまり、分割接続体3の一端部3Aの端縁(導波管2の開口)に沿って延びる線状で、内側(導波管2側)に突出した突起部31が形成されている。
【0018】
この突起部31の幅d1、高さd2および一端部3Aの端縁からの距離d3は、後述するようにして電波の漏洩や伝送ロスを効果的に抑制できるように設定されている。また、一端部3Aの形成端(断面が大きく形成されている端の段差部)32から突起部31までの距離d4は、導波管1で伝送する電波の波長に応じて、電波の漏洩や伝送ロスを効果的に抑制できるように設定されている。
【0019】
また、一端部3Aの突起部31と形成端32との間には、ボルト挿入孔33が突起部31に沿って2つ形成されている。ここで、分割接続体3の一端部3Aの広壁(突起部31と同じ面)にボルト挿入孔33を設けるのは、後述するように、ボルト締めして分割接続体3を導波管1側に押圧し、突起部31を導波管1の外面に当接・接触させるためである。つまり、突起部31が導波管1の外面に当接・接触するように、分割接続体3の押圧方向が設定されボルト挿入孔33が設けられている。
【0020】
このような一端部3Aが導波管収容部となり、2つの一端部3Aを重ねると、
図6に示すように、接続体2の一端部2Aの断面が略四角形で、開口の長手方向に沿って2つの突起部31が対向して設けられる。ここで、一端部2Aの断面の短辺(内側)の長さd5は、導波管1の断面の短辺(外側)の長さよりもやや大きく設定されている。
【0021】
一方、導波管1の一端部1Aには、
図1に示すように、両長辺側の面(広壁)にボルト孔(雌ネジ)11が開口縁に沿って2つ形成されている。
【0022】
そして、
図4に示すように、2つの分割接続体3の一端部3Aで導波管1の一端部1Aを覆うことで、導波管1の一端部1Aを接続体2の一端部2Aに挿入すると、
図7に示すように、各ボルト挿入孔33と各ボルト孔11とが対向して位置する。この状態で、各ボルト挿入孔33にボルトを挿入してボルト孔11に螺合することで、2つの分割接続体3が導波管1側に押圧され導波管1に固定、接続されている。
【0023】
ここで、導波管1の一端部1Aが接続体2の一端部2Aに挿入された状態で、
図8に示すように、導波管1の一端部1Aの端縁と分割接続体3の形成端32との間隔d6は、ゼロであってもよいし、僅かな(0.数mm程度の)隙間が生じていてもよい。また、
図2に示すように、2つの分割接続体3の一端部3Aを導波管1の一端部1Aに位置させて、導波管1の一端部1Aを覆って2つの分割接続体3を導波管1側に押圧すると、
図3に示すように、突起部31が導波管1の外面に当接・接触し、電波の漏洩や伝送ロスが抑制されるものである。
【0024】
このような構成の導波管接続構造によれば、分割接続体3の一端部3Aで導波管1の一端部1Aを覆った状態で、分割接続体3が導波管1側に押圧され固定されることで、分割接続体3に設けられた突起部31が導波管1に当接・接触し、電波の漏洩や伝送ロスを防ぐことが可能となる。そして、分割接続体3に凸状の突起部31が設けられているだけであるため、構成が簡易で、しかも、チョーク構造に比べて軽量化、省スペース化することが可能となる。従って、チョーク構造を設けるスペースが確保できない場合であっても、導波管1と接続体2とを接続することが可能となる。
【0025】
また、導波管1の軸方向に略直交する方向に延びるように、つまり、導波管1の開口に沿うように、突起部31が線状に形成されているため、電波の漏洩や伝送ロスをより効果的に防ぐことが可能となる。例えば、
図9に示すように、反射特性を仕様値である-30dBよりも低くし、
図10に示すように、通過特性を仕様値である-0.075dBよりも高くすることが可能となる。
【0026】
(実施の形態2)
図11~
図15は、この実施の形態を示し、
図11は、この実施の形態に係る導波管接続構造による接続後の状態を示す斜視図である。この実施の形態では、略ピン状の突起部34が導波管1の軸方向に略直交する方向に延びるように複数設けられている点で、実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0027】
すなわち、突起部34は、分割接続体3の一端部3Aの広壁の内面に設けられ、
図12、
図13に示すように、略円柱のピン状で、分割接続体3の軸方向(導波管1の軸方向と同方向)に略直交する方向に、つまり、分割接続体3の一端部3Aの端縁(導波管2の開口)に沿って、複数設けられている。この突起部34の直径、高さd11および一端部3Aの端縁からの距離d12は、電波の漏洩や伝送ロスを効果的に抑制できるように設定されている。
【0028】
また、突起部34の配設数は、一端部3Aの幅の長さ(軸方向に略直交する方向の長さ)などに応じて、電波の漏洩や伝送ロスを効果的に抑制できるように設定されている。さらに、一端部3Aの形成端32から突起部34までの距離d13、突起部34間のピッチ・間隔d14は、導波管1で伝送する電波の波長などに応じて、電波の漏洩や伝送ロスを効果的に抑制できるように設定されている。この実施の形態では、一端部3Aの幅に対して、均等なピッチd14で3つの突起部34が配設されている。また、一端部2Aの断面の短辺(内側)の長さd15は、実施の形態1と同様に、導波管1の断面の短辺(外側)の長さよりもやや大きく設定されている。
【0029】
このような実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、分割接続体3の一端部3Aで導波管1の一端部1Aを覆い、分割接続体3が導波管1側に押圧され固定されることで、分割接続体3の複数の突起部34が導波管1に当接・接触し、電波の漏洩や伝送ロスを防ぐことが可能となる。例えば、
図14に示すように、反射特性を仕様値である-30dBよりも低くし、
図15に示すように、通過特性を仕様値である-0.075dBよりも高くすることが可能となる。
【0030】
しかも、導波管1の軸方向に略直交する方向に延びるように、つまり、導波管1の開口に沿うように、略ピン状の突起部34が複数設けられているだけであるため、構成がより簡易化し、また、軽量化することが可能となる。
【0031】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、突起部31、34を分割接続体3の一端部3Aの内面に設ける場合について説明したが、導波管1の一端部1Aの外面に設けたり、分割接続体3の一端部3Aの内面と導波管1の一端部1Aの外面の双方に設けたりしてもよい。
【0032】
また、実施の形態2において、分割接続体3に突起部34を一体的に形成しないで、略ピン状の突起部34を圧入やネジによって分割接続体3の一端部3Aに取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 導波管
1A 一端部(一端側)
11 ボルト孔
2 接続体
2A 一端部(一端側)
3 分割接続体
3A 一端部(一端側)
31、34 突起部
33 ボルト挿入孔
DL 分割面