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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098358
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240716BHJP
   B60M 3/06 20060101ALI20240716BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240716BHJP
   H02H 7/12 20060101ALI20240716BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H02M3/00 C
B60M3/06 B
B60L9/18 L
H02H7/12 G
H02H7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001822
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】野木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】森 学人
【テーマコード(参考)】
5G053
5H125
5H730
【Fターム(参考)】
5G053AA14
5G053BA01
5G053BA04
5G053EA01
5G053EA09
5G053EC02
5G053FA05
5H125AA05
5H125AC02
5H125AC03
5H125BA04
5H125BB07
5H125CA02
5H125CA04
5H125EE52
5H125EE53
5H125EE57
5H730AA12
5H730AA20
5H730AS01
5H730AS08
5H730AS17
5H730DD03
5H730DD04
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD51
5H730FD61
5H730FF09
5H730FG25
5H730FG26
5H730XX02
5H730XX04
5H730XX12
5H730XX13
5H730XX19
5H730XX21
5H730XX22
5H730XX26
5H730XX32
5H730XX33
5H730XX35
5H730XX38
5H730XX40
5H730XX47
5H730XX50
(57)【要約】

【課題】 小型化および低コスト化を実現するとともに、早期故障を回避する電源システムを提供する。
【解決手段】 実施形態による電源システムは、直流電源1と、直流電源1から出力された電力を所定の電力に変換して負荷へ出力する電力変換器2と、電力変換器2の動作を制御する変換器制御部5と、電力変換器2の温度情報および電力変換器1の制御指令値の少なくともいずれかに基づいて所定期間における電力変換器2の寿命消費量を算出する第1寿命評価部7と、寿命消費量を積算した積算値と予め設定された寿命計画とを用いて電力変換器2の出力を調整するための変換器制御部5への指令値を生成する負荷管理制御部8と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源から出力された電力を所定の電力に変換して負荷へ出力する電力変換器と、
前記電力変換器の動作を制御する変換器制御部と、
前記電力変換器の温度情報および前記電力変換器の制御指令値の少なくともいずれかに基づいて所定期間における前記電力変換器の寿命消費量を算出する第1寿命評価部と、
前記寿命消費量を積算した積算値が予め設定された寿命計画に追従するように前記電力変換器の出力を調整するための前記変換器制御部への指令値を算出する負荷管理制御部と、を備えた電源システム。
【請求項2】
前記電力変換器は複数のパワー半導体素子を備え、
前記電力変換器の温度情報は、前記パワー半導体素子のジャンクション温度の時系列情報、前記パワー半導体素子を含むモジュールのケース温度の時系列情報、および、前記所定期間における前記パワー半導体素子のジャンクション温度の最大値の少なくともいずれかを含む、請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記時系列情報のサンプリング周期は1s以下である、請求項2記載の電源システム。
【請求項4】
前記所定期間は前記電力変換器の負荷サイクルの1周期以上の期間であり、
前記寿命消費量は、前記パワー半導体素子の温度変化による熱疲労解析を行うことにより算出される、請求項3記載の電源システム。
【請求項5】
前記電力変換器は複数のパワー半導体素子を備え、
前記第1寿命評価部は、前記制御指令値に基づく前記パワー半導体素子のオン時間により、前記パワー半導体素子の前記寿命消費量を算出する、請求項1記載の電源システム。
【請求項6】
前記電力変換器は複数のパワー半導体素子を備え、
前記負荷管理制御部は、前記パワー半導体素子のスイッチング周波数の変更する前記指令値を算出する、請求項1記載の電源システム。
【請求項7】
前記直流電源は、架線およびレールもしくは第3軌条およびレールを含むき電回路であり、
前記負荷は、電気車を走行させるための複数の電動機および前記電動機を駆動する複数の第2電力変換器を備え、
前記電気車の荷重情報に応じて複数の前記電動機のトルクを変更する編成制御システムを更に備えたシステムであって、
前記負荷管理制御部は、前記積算値に応じて、前記電気車の最高速度を調整するように前記指令値を算出する、請求項1記載の電源システム。
【請求項8】
前記直流電源は、架線およびレールもしくは第3軌条およびレールを含むき電回路であり、
前記負荷は、電気車を走行させるための複数の電動機および前記電動機を駆動する複数の第2電力変換器を備え、
前記電気車の荷重情報に応じて複数の前記電動機のトルクを変更する編成制御システムを更に備えたシステムであって、
前記負荷管理制御部は、前記積算値に応じて、前記電気車の加速度および減速度を調整するように前記指令値を算出する、請求項1記載の電源システム。
【請求項9】
蓄電池と、
前記蓄電池から出力された電力を所定の電力に変換して負荷へ出力する電力変換器と、
前記電力変換器の動作を制御する変換器制御部と、
前記蓄電池に関する情報に基づいて所定期間における前記蓄電池の寿命消費量を算出する第2寿命評価部と、
前記寿命消費量を積算した積算値が予め設定された寿命計画に追従するように前記電力変換器の出力を調整するための前記変換器制御部への指令値を算出する負荷管理制御部と、を備えた電源システム。
【請求項10】
前記蓄電池に関する情報は、前記蓄電池のエネルギー容量および内部抵抗値の少なくともいずれかを含む、請求項9記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば直流電気鉄道の電力供給システムである直流き電システムは、負荷変動が激しく、き電線電圧変動が大きい特性になっている。また、直流き電システムでは、ダイオード整流器を用いて直流電源を生成することが一般的であるため、交流電源系統への電源回生は、回生インバータを設置しなければ実施することができず、回生車の回生電流を吸収する十分な負荷が回生車周辺に存在しなければ、回生車は回生失効に陥ることになる。
【0003】
上記のような電圧変動や回生失効に対応するため、直流電気鉄道車両に蓄電池を設置することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6786012号公報
【特許文献2】特許第5377538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、架線の電圧に応じて充電と放電とを繰り返す直流き電システムでは、複数の列車の加減速に伴い架線電圧の変動が発生するため、蓄電池の充放電のパターンが一律に定まらない。また、鉄道車両駆動用の電力変換装置では、荷重条件や列車ダイヤ、信号システム等によって負荷パターンが定型化できないこともある。そのため、蓄電池や電力変換器の寿命が設計期待値より短命となり、早期に故障に至るというリスクがあった。早期故障のリスクを回避するために、装置寿命として十分に余裕を持った設計を行うと、装置規模が大型化したり、高コスト化したりする傾向があった。
【0006】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、小型化および低コスト化を実現するとともに、早期故障を回避する電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態による電源システムは、直流電源と、前記直流電源から出力された電力を所定の電力に変換して負荷へ出力する電力変換器と、前記電力変換器の動作を制御する変換器制御部と、前記電力変換器の温度情報および前記電力変換器の制御指令値の少なくともいずれかに基づいて所定期間における前記電力変換器の寿命消費量を算出する第1寿命評価部と、前記寿命消費量を積算した積算値が予め設定された寿命計画に追従するように前記電力変換器の出力を調整するための前記変換器制御部への指令値を算出する負荷管理制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の電力変換装置を含む電力供給システムの一構成例を概略的に示す図である。
図2図2は、電力変換装置のパワー半導体素子の一構成例を概略的に示した図である。
図3図3は、蓄電池および電力変換器の寿命計画の一例を概略的に示す図である。
図4図4は、図1に示す蓄電池の充放電特性の一例を概略的に示した図である。
図5図5は、本実施形態の電源システムにおいて、電力変換器の寿命評価値を用いた電力変換器の制御動作の一例について説明するための図である。
図6図6は、図5に示す変換器制御部の一構成例を概略的に示した図である。
図7図7は、本実施形態の電源システムにおいて、蓄電池の寿命評価値を用いた電力変換器の制御動作の一例について説明するための図である。
図8図8は、図7に示す変換器制御部の一構成例を概略的に示した図である。
図9図9は、本実施形態の電源システムにおいて、蓄電池の寿命評価値を用いた電力変換器の制御動作の他の例について説明するための図である。
図10図10は、第2実施形態の電源システムを含む編成制御システムの一構成例を概略的に示す図である。
図11図11は、第2実施形態の電源システムにより制御される鉄道車両の走行方法の一例を概略的に示す図である。
図12図12は、第2実施形態の電源システムにより制御される鉄道車両の走行方法の他の例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の電源システムについて図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の電源システムの一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電源システム10は、負荷3である電気車(電気車を走行させるための電動機及びそれを駆動する電力変換器)へ電力を供給するとともに負荷3から回生される電力を蓄電池1へ充電するシステムであって、蓄電装置と、電力変換装置と、監視制御装置と、インタフェース部9と、を備えている。
【0010】
なお、負荷3は、架線およびレール若しくは第3軌条およびレールで構成されるき電回路と、複数の電気車と、を含んでいてもよい。その場合には、電源システム10は、き電回路を介して複数の電気車へ電力を供給する。
【0011】
蓄電装置は、直流電源である蓄電池1と、蓄電池監視部4と、を備えている。
蓄電池1は、例えば複数の電池セルを組み合わせて構成されている。なお、蓄電装置は蓄電池1に限らず直流電源を備えていればよく、蓄電池1に代えて、コンデンサやフライホイールのエネルギー蓄積デバイスや、架線およびレールもしくは第3軌条およびレールで構成されるき電回路であってもよい。
【0012】
蓄電池監視部4は、蓄電池1の電圧や温度の値を測定する測定回路と、管理回路(いずれも図示せず)と、を備える。蓄電池監視部4は、蓄電池1の充電電流および放電電流の値を測定する測定器を更に備えていてもよく、この場合には、測定された電流の値も監視する。
【0013】
管理回路は、例えば、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムが記録されたメモリとを備えた演算回路である。管理回路は、例えば、測定値に基づいて電池容量(SOC)や、蓄電池1の健全度(SOH)を演算する。蓄電池1の健全度は、例えば、蓄電池1の容量劣化率、蓄電池1を構成する電池セルの内部抵抗値などである。
【0014】
電力変換装置は、電力変換器2と、スイッチング制御部5と、を備えている。
電力変換器2は、蓄電池1から供給される直流電力を所定の電力に変換して負荷3へ出力する電力変換器2は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やSiC-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などのパワー半導体素子を複数備えている。
【0015】
図2は、図1に示す電力変換装置のパワー半導体素子の一構成例を概略的に示した図である。
電力変換器2は、複数のパワー半導体素子SWが形成されるモジュールベースMBを備えている。モジュールベースMBは、例えば銅や、AlSiCにより形成されている。
【0016】
パワー半導体素子SWの各々は、モジュールベースMB上にはんだ層L1を介して配置された絶縁基板L2と、絶縁基板L2上にはんだ層L3を介して配置された半導体チップL4と、半導体チップL4に電気的に接続されたボンディングワイヤBWと、を備えている。ボンディングワイヤBWはアルミや銅により形成された配線であって、例えば超音波接合により半導体チップL4に接続されている。
【0017】
スイッチング制御部5は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムが記録されたメモリとを備えた演算回路を含み、ソフトウエアにより又はソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより、以下に説明する種々の機能を実現することができる。
【0018】
スイッチング制御部5は、電力変換器2の複数のパワー半導体の動作を制御する。スイッチング制御部5は、後述する負荷管理制御部8から供給される指令値に応じたゲート信号を生成し、電力変換器2へ出力する。また、スイッチング制御部5は、パワー半導体素子の推定ジャンクション温度(最大接合部温度)、推定ケース温度(図2に示すモジュールベースの温度)、電力変換器2を冷却しているフィンの周囲環境温度など、電力変換器2の温度情報を、第1寿命評価部7に出力する。
【0019】
スイッチング制御部5は、電力変換器2が負荷3に対して直流電力を供給する場合、電力変換器2と負荷3との間の直流電路の電圧を検出し、検出値が所定閾値を超えると電力変換器2が蓄電池1に対して充電し、所定閾値を下回ると電力変換器2が負荷3に対して放電するように制御を行ってもよい。
【0020】
図4は、図1に示す蓄電池の充放電特性の一例を概略的に示した図である。
この例では、スイッチング制御部5は、例えば直流電路の電圧がV1を超えたときに、蓄電池1を充電し、直流電路の電圧がV2を下回ったときに蓄電池1を放電するように、電力変換器2を制御する。
監視制御装置は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムが記録されたメモリとを備えた演算装置であって、ソフトウエアにより又はソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより、以下に説明する種々の機能を実現することができる。
【0021】
監視制御装置は、第2寿命評価部6と、第1寿命評価部7と、負荷管理制御部8と、を備えている。
第1寿命評価部7は、電力変換器2の寿命を評価する手段であって、例えば複数のパワー半導体素子SWを含むモジュールの寿命を評価する。パワー半導体素子SWの故障として、例えば、半導体チップL4の温度変化(ΔTj)による熱サイクル疲労によって、ボンディングワイヤBWが半導体チップL4から剥離する故障や、モジュールベースMBの温度変化(ΔTc)による熱サイクル疲労によってはんだ層L1にクラックが入り、半導体チップL4とモジュールベースMBとの間の熱抵抗が上昇し、最終的に半導体チップL4が破壊する故障がある。
【0022】
第1寿命評価部7は、スイッチング制御部5から取得したパワー半導体素子SWおよびモジュールの温度の履歴を用いて、前述の熱サイクルがパワー半導体素子SWおよびモジュール与えるダメージを計算することにより、電力変換器2の故障による寿命を評価する。また、第1寿命評価部7は、パワー半導体素子SWのオン時間に基づいて、前記パワー半導体に蓄積されるダメージ(寿命消費量)を計算することができる。本実施形態では、第1寿命評価部7は、例えば、先に述べた熱サイクル疲労によるボンディングワイヤBWの寿命評価値(寿命消費量)と、はんだ層L1のクラックによる寿命評価値と(寿命消費量)と、パワー半導体素子SWのオン時間に基づく寿命消費量とを加算した値、若しくは少なくともいずれかの値を、負荷管理制御部8へ供給する。
【0023】
第2寿命評価部6は、蓄電池監視部4で得られた情報に基づいて、蓄電池1の寿命消費量を算出する蓄電池寿命評価部である。具体的な蓄電池の寿命に関する定義は、用途に応じて異なるものであるが、例えば、蓄電池1が充電または放電可能なエネルギー(エネルギー容量)や、蓄電池1の内部抵抗値の少なくともいずれかを評価項目とすることができる。本実施形態では、第2寿命評価部6は、蓄電池監視部4から蓄電池1(又は電池セル)の温度、電圧、充電率、充電電流を取得し、蓄電池1の内部抵抗値、充電可能容量、放電可能容量の少なくともいずれか(蓄電池1に関する情報)に基づく評価結果(寿命消費量)を負荷管理制御部8に出力する。
【0024】
負荷管理制御部8は、第2寿命評価部6および第1寿命評価部7から、蓄電池1および電力変換器2の少なくともいずれかの寿命消費量を取得し、予め設定された寿命計画に沿う(若しくは下回らない)寿命消費をするように電力変換器2の出力を制御する指令値を生成し、スイッチング制御部5に指令値を出力する。寿命計画は、インタフェース部9を操作するユーザにより入力されてもよい。
【0025】
図3は、蓄電池および電力変換器の寿命計画の一例を概略的に示す図である。
図3には、稼働時間に応じて想定される残寿命値(寿命計画曲線)20と、寿命実績曲線21とを示している。例えばAの時点で、寿命実績曲線が寿命計画曲線を下回っている。この状況が続くと当初予定した計画寿命時間(残寿命値が1から0になるまでの時間)を満足することが出来ず、蓄電池1および電力変換器2の少なくともいずれかが早期に故障に至ることが推定される。その場合、負荷管理制御部8は、蓄電池1および電力変換器2の負荷を軽減する指令値をスイッチング制御部5へ出力する。
【0026】
また、負荷管理制御部8は、蓄電池1および電力変換器2の寿命評価結果(例えば寿命消費積算値)をインタフェース部9や電力管理システム(例えば電力指令所を含む)等の外部の装置へ出力してもよい。
【0027】
負荷管理制御部8は、スイッチング制御部5に対し、例えば電力変換器2の最大出力電流や最大出力電力、パワー半導体素子SWのスイッチング周波数等を指令することができる。また、負荷管理制御部8は、充電開始電圧値(図4に示すV1)や、放電開始電圧値(図4に示すV2)をスイッチング制御部5に出力してもよい。例えば、電力変換器2や蓄電池1の負荷を軽減するのであれば、負荷管理制御部8は、放電開始電圧値を下げることや、充電開始電圧値を上げることで軽減することが可能になる。また、電力変換器2や蓄電池1の負荷を増やすのであれば、負荷管理制御部8は、放電開始電圧値を上げることや充電開始電圧値を下げることで電力変換器2および蓄電池1の負荷の増大を図ることが可能になる。
【0028】
インタフェース部9は、負荷管理制御部8から取得した寿命評価結果をユーザが視認可能な態様で表示することができる。インタフェース部9は、通信ネットワークを介して外部に寿命評価結果を伝送してもよい。
【0029】
以下に、上述の電源システムの動作の一例について図面を参照して詳細に説明する。
図5は、本実施形態の電源システムにおいて、電力変換器の寿命評価値を用いた電力変換器の制御動作の一例について説明するための図である。
【0030】
スイッチング制御部5は、温度計算部51と、変換器制御部52と、を備えている。
温度計算部51は、パワー半導体素子SWの推定ジャンクション温度、所定期間におけるジャンクション温度の最大値、推定ケース温度(図2に示すモジュールベースMBの温度)、電力変換器2を冷却しているフィンの周囲環境温度などの少なくともいずれかを計算する。温度計算部51は、例えば、変換器制御部52で演算される電力変換器2の制御指令値に基づく電力変換器2の動作からパワー半導体SW等の温度を計算してもよく、電力変換器2の少なくとも一部に取り付けられた温度センサから取得した温度に基づいて、上記種々の温度の値を計算してもよい。温度計算部51は、計算した値を第1寿命評価部7へ出力する。
【0031】
なお、温度計算部51におけるパワー半導体素子SWの温度計算の周期(サンプリング周期)は、半導体素子SWの熱時定数を加味し、1s以下の周期でとすることが望ましい。
【0032】
第1寿命評価部7は、履歴保存部7Aと、熱サイクル解析部7Bと、熱疲労解析部7Cと、を備えている。
履歴保存部7Aは、温度計算部51から供給された温度値を時系列で保存している。なお、履歴保存部7Aは、例えば、温度計算部51から供給された最新の値から、過去に所定期間遡った時点までの温度値(時系列情報)を保存していればよく、古いデータを順次削除しても構わない。また、履歴保存部7Aは、必要に応じて、インタフェース部9へ温度値の履歴を送信してもよい。
【0033】
熱サイクル解析部7Bは、履歴保存部7Aに保存された温度値の時系列情報を用いて、パワー半導体素子SWの熱サイクル解析を行う。この時、熱サイクル解析部7Bは、周期的な負荷変動(負荷サイクル)1周期分以上の温度履歴データを用いて熱サイクル解析を行うことが望ましく、例えば鉄道やエレベータなどの社会インフラ設備の負荷であれば24時間以上のタスク周期で、前日分(24時間分)の温度履歴データに対して、熱サイクル解析を行うことが望ましい。熱サイクル解析部7Bは、例えばレインフロー法での熱サイクル解析を実施し、温度変化の大きさやその回数、継続時間などの解析結果を熱疲労解析部7Cに供給する。
【0034】
熱疲労解析部7Cは、熱サイクルの解析結果(温度変化の大きさやその回数、継続時間)を用いて、熱疲労解析を行い、先に述べたパワー半導体素子SWの各故障モードにおける1日分の寿命消費量の計算を行う。熱疲労解析部7Cは、計算した寿命消費量を負荷管理制御部8へ出力する。
【0035】
負荷管理制御部8は、加算器8Aと、遅延部8Bと、減算器8Cと、ゲイン乗算部8Dと、リミッタ8Eと、乗算器8Fと、を備えている。
加算器8Aは、熱疲労解析部7Cから出力された寿命消費量と、遅延部8Bから出力された前回計算値と、を加算した寿命消費積算値を算出して出力する。なお、加算器8Aから出力される値が、図2の寿命実績曲線の値に相当する。
【0036】
減算器8Cは、予め設定された残寿命計画値から寿命消費積算値を減算した差を出力する。
ゲイン乗算部8Dは、減算器8Cから出力された差に、調整ゲインKpを乗じた値を出力する。
リミッタ8Eは、ゲイン乗算部8Dから出力された値が0以上1以下の値となるように上限値と下限値とを制限して出力する。
【0037】
乗算器8Fは、出力電流リミット値にリミッタ8Eの出力値を乗じた値(リミット指令値)を出力する。すなわち、リミッタ8Eの出力値は、出力電流リミット値の可変ゲインである。乗算器8Fから出力されたリミット指令値は、スイッチング制御部5の変換器制御部52に供給される。
【0038】
変換器制御部52は電圧目標値とリミット指令値とを取得し、取得した値に応じて電力変換器2のパワー半導体素子SWの動作を制御するパルスのデューティを制御し、電力変換器2の最大出力電流および最大回生電流を制限することにより、電力変換器2の負荷を調整する。
【0039】
図6は、図5に示す変換器制御部の一構成例を概略的に示した図である。
変換器制御部52は、電圧制御部521と、電流制御部522と、PWM変調部523と、を備えている。
電圧制御部521は、減算器5A、5Cと、PI制御部5B、5Dと、を備えている。
減算器5Aは、目標充電電圧値から、電力変換器2から供給された電圧フィードバック値(充電電圧値)を引いた差を出力する。
【0040】
PI制御部5Bは、減算器5Aから供給された差がゼロとなるように、すなわち電圧フィードバック値(充電電圧値)が目標充電電圧値に追従するように、比例積分制御により電流制御指令値を演算して出力する。
減算器5Cは、目標放電電圧値から、電力変換器2から供給された電圧フィードバック値(放電電圧値)を引いた差を出力する。
【0041】
PI制御部5Dは、減算器5Cから供給された差がゼロとなるように、すなわち電圧フィードバック値(放電電圧値)が目標放電電圧値に追従するように、比例積分制御により電流制御指令値を演算して出力する。
【0042】
電流制御部522は、乗算部5Eと、リミッタ5F、5Gと、加算器5Hと、減算器5Iと、PI制御部5Jと、を備えている。
乗算部5Eは、負荷管理制御部8から供給されたリミット指令値に-1を乗じた積を出力する。
リミッタ5Fは、乗算部5Eから供給された値を下限値とし、0を上限値として、PI制御部5Bから供給された電流制御指令値の上限値と下限値とを制限して出力する。
【0043】
リミッタ5Gは、0を下限値とし、負荷管理制御部8から供給されたリミット指令値を上限値として、PI制御部5Dから供給された電流制御指令値の上限値と下限値を制限して出力する。
加算器5Hは、リミッタ5Fから出力された電流制御指令値と、リミッタ5Gから出力された電流制御指令値とを加算した合計値を出力する。
【0044】
減算器5Iは、加算器5Hから出力された電流制御指令値の合計値から、電力変換器2から供給された電流フィードバック値を引いた差を出力する。
PI制御部5Jは、減算器5Iから出力された差がゼロとなるように、すなわち、電流フィードバック値が電流制御指令値の合計値に追従するように、比例積分制御により電圧指令値を演算して出力する。
PWM変調部523は、PI制御部5Jから供給された電圧指令値と、キャリア搬送波とを比較することにより、パワー半導体素子SWのゲート指令を生成して電力変換器2へ出力する。
【0045】
上記のように、本実施形態の電源システム10では、電力変換器2の電流制御部522は、例えば、目標電圧を維持するための電流制御指令値をリミットする機能を有する。この時、充電電流リミット(下限値)や放電電流リミット(上限値)を負荷管理制御部8のリミット指令値に基づいて制御することで、電力変換器2の残寿命に応じて蓄電池1の最大充電電流および最大放電電流を制限することができ、結果として電力変換器2の負荷を制限することができる。この結果、期待した寿命計画曲線を大幅に下回ることなく、電力変換器2の寿命消費を計画通りに実現できるようになる。
【0046】
なお、上述のパワー半導体素子SWの温度計算及び履歴保存、熱サイクル解析、熱疲労解析は、上記実施形態で説明した特定の実装部位で実施する必要はなく、任意の機能部に実装し機能すればよく、実装される構成を限定するものではない。
【0047】
図7は、本実施形態の電源システムにおいて、電力変換器の寿命評価値を用いた電力変換器の制御動作の他の例について説明するための図である。
なお、図7において図5に示す構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図7では、力行および回生を行うDC1500V架線向け電力変換システムへの適用例を一例として示している。図7に示す電源システム10は、負荷管理制御部8において図5に示す構成と相違している。
【0048】
負荷管理制御部8は、加算器8A、8Gと、遅延部8Bと、減算器8C、8Iと、ゲイン乗算部8Dと、リミッタ8H、8Jと、を備えている。
加算器8Aは、熱疲労解析部7Cから出力された寿命消費量と、遅延部8Bから出力された前回計算値と、を加算した寿命消費積算値を算出して出力する。
【0049】
減算器8Cは、予め設定された寿命計画値から寿命消費積算値を減算した差を出力する。
ゲイン乗算部8Dは、減算器8Cから出力された差に、調整ゲインKpを乗じた値を出力する。
加算器8Gは、充電開始電圧の基準指令値にゲイン乗算部8Dの出力値を加算した和を出力する。
【0050】
リミッタ8Hは、加算器8Gから出力された和の上限値と下限値とを制限した値(充電開始電圧指令値)を出力する。本実施形態では、リミッタ8Hは、充電開始電圧指令値の上限値を1800Vとし、下限値を1000Vとしている。
減算器8Iは、放電開始電圧の基準指令値からゲイン乗算部8Dの出力値を減算した差を出力する。
【0051】
リミッタ8Jは、減算器8Iから出力された差の上限値と下限値とを制限した値(放電開始電圧指令値)を出力する。本実施形態では、リミッタ8Jは、放電開始電圧指令値の上限値を1800Vとし、下限値を900Vとしている。
上記のように、負荷管理制御部8は、寿命計画値と寿命消費積算値との差に応じて、蓄電池1の充電開始電圧と放電開始電圧との間の電圧幅(不感帯幅)を調整している。
【0052】
図8は、図7に示す変換器制御部の一構成例を概略的に示した図である。
なお、図8に示す変換器制御部52は、図6に示す場合と入力値が異なっている。
変換器制御部52は、電圧制御部521と、電流制御部522と、PWM変調部523と、を備えている。
【0053】
電圧制御部521は、減算器5A、5Cと、PI制御部5B、5Dと、を備えている。
減算器5Aは、充電開始電圧指令値から、電圧フィードバック値(架線電圧値)を引いた差を出力する。
PI制御部5Bは、減算器5Aから供給された差がゼロとなるように、すなわち電圧フィードバック値(架線電圧値)が充電開始電圧指令値に追従するように、比例積分制御により電流制御指令値を演算して出力する。
【0054】
減算器5Cは、放電開始電圧指令値から、電圧フィードバック値(架線電圧値)を引いた差を出力する。
PI制御部5Dは、減算器5Cから供給された差がゼロとなるように、すなわち電圧フィードバック値(架線電圧値)が放電開始電圧指令値に追従するように、比例積分制御により電流制御指令値を演算して出力する。
【0055】
電流制御部522は、乗算部5Eと、リミッタ5F、5Gと、加算器5Hと、減算器5Iと、PI制御部5Jと、を備えている。
乗算部5Eは、負荷管理制御部8から供給されたリミット指令値に-1を乗じた積を出力する。
リミッタ5Fは、乗算部5Eから供給された値を下限値とし、0を上限値として、PI制御部5Bから供給された電流制御指令値の上限値と下限値とを制限して出力する。
【0056】
リミッタ5Gは、0を下限値とし、負荷管理制御部8から供給されたリミット指令値を上限値として、PI制御部5Dから供給された電流制御指令値の上限値と下限値を制限して出力する。
加算器5Hは、リミッタ5Fから出力された電流制御指令値と、リミッタ5Gから出力された電流制御指令値とを加算した合計値を出力する。
【0057】
減算器5Iは、加算器5Hから出力された電流制御指令値の合計値から、電力変換器2から供給された電流フィードバック値を引いた差を出力する。
PI制御部5Jは、減算器5Iから出力された差がゼロとなるように、すなわち、電流フィードバック値が電流制御指令値の合計値に追従するように、比例積分制御により電圧指令値を演算して出力する。
【0058】
PWM変調部523は、PI制御部5Jから供給された電圧指令値と、キャリア搬送波とを比較することにより、パワー半導体素子SWのゲート指令を生成して電力変換器2へ出力する。
【0059】
この例では、上述のように、架線電圧をフィードバックして、充電開始電圧指令値と放電開始電圧指令値とに基づき、蓄電池1の充電と放電とを制御している。このとき、充電開始電圧値と放電開始電圧値との間に生じるギャップは不感帯となり、蓄電池1の充電および放電が行われない電圧領域である。この電圧制御系の不感帯幅を調整し、例えば充電開始電圧を高くすると蓄電池1が充電され難い動作となり、放電開始電圧を低くすると蓄電池1が放電され難い動作となる。このように、蓄電池1の充電開始電圧と放電開始電圧との間の電圧差を可変することにより、電力変換器2の負荷や蓄電池1の充放電負荷を調整することが可能になる。すなわち、上記不感帯幅が広くなればなるほど、蓄電池1の充放電の負荷責務は減り、逆に不感帯幅が狭くなると蓄電池1の負荷責務は増えることになり、蓄電池1および電力変換器2の寿命のコントロールが可能となる。
【0060】
図9は、本実施形態の電源システムにおいて、蓄電池の寿命評価値を用いた電力変換器の制御動作の他の例について説明するための図である。
第2寿命評価部6は、履歴保存部6Aと、電池劣化テーブル6Bとを備えている。
【0061】
履歴保存部6Aは、蓄電池監視部4から蓄電池1の温度、蓄電池1(若しくは電池セル)の充電状態(SOC:State of Charge)、蓄電池1(若しくは電池セル)の電圧、および、蓄電池1の充放電電流の値を取得し、取得した値を時系列で保存している。なお、履歴保存部6Aは、例えば、蓄電池監視部4から供給された最新の値から、過去に所定期間遡った時点までの値を保存していればよく、古いデータを順次削除しても構わない。また、履歴保存部6Aは、必要に応じて、インタフェース部9へ履歴を送信してもよい。
【0062】
電池劣化テーブル6Bは、例えば、蓄電池1の充電状態(SOC)と、その時の蓄電池1の温度と、その滞在時間とに対応する、蓄電池1の劣化を示す数値(寿命消費量)を格納している。電池劣化テーブル6Bは、履歴保存部6Aから供給された蓄電池1の充電状態(SOC)と、蓄電池1の温度とを用いて、その滞在時間に対応した寿命消費量を出力する。
【0063】
蓄電池1の寿命消費量は、蓄電池1の電圧と電流とを用いて算出されてもよい。例えば、蓄電池監視部4で観測される蓄電池1の電圧と電流とから、ある電流を流した時の蓄電池1の電圧変動が観測できる。例えば、第2寿命評価部6は、ΔV/ΔIの関係から蓄電池1の内部抵抗を算出することが可能であり、算出された内部抵抗値から蓄電池1の寿命消費量を算出してもよい。蓄電池1の内部抵抗値は蓄電池1の劣化の指標となり得、蓄電池1の使用期間に対する内部抵抗値を残寿命値(寿命計画曲線)20とすると、内部抵抗値を寿命実績値とすることも可能である。
【0064】
蓄電池1の劣化計算を24時間の周期で実施することで、1日当たりの蓄電池1の寿命消費量を算出することができる。1日当たりの寿命消費量が算定されれば、図5に示す負荷管理制御部8による負荷制限手法と同一の手法で、電力変換器2の出力制限を行うことができる。
【0065】
すなわち、負荷管理制御部8は、加算器8Aと、遅延部8Bと、減算器8Cと、ゲイン乗算部8Dと、リミッタ8Eと、乗算器8Fと、を備えている。なお、図9に示す負荷管理制御部8と図5に示す負荷管理制御部8とにおいて、説明のために同様の構成には同一の符号を付しているが入力値は異なっている。
【0066】
加算器8Aは、電池劣化テーブル6Bから出力された蓄電池1の寿命消費量と、遅延部8Bから出力された前回計算値と、を加算した寿命消費積算値を算出して出力する。なお、加算器8Aから出力される値が、図2の寿命実績曲線の値に相当する。
【0067】
減算器8Cは、予め設定された残寿命計画値から寿命消費積算値を減算した差を出力する。
ゲイン乗算部8Dは、減算器8Cから出力された差に、調整ゲインKpを乗じた値を出力する。
リミッタ8Eは、ゲイン乗算部8Dから出力された値が0以上1以下の値となるように上限値と下限値とを制限して出力する。
【0068】
乗算器8Fは、出力電流リミット値にリミッタ8Eの出力値を乗じた値(リミット指令値)を出力する。すなわち、リミッタ8Eの出力値は、出力電流リミット値の可変ゲインである。乗算器8Fから出力されたリミット指令値は、スイッチング制御部5の変換器制御部52に供給される。
【0069】
変換器制御部52は電圧目標値とリミット指令値とを取得し、取得した値に応じて電力変換器2のパワー半導体素子SWの動作を制御するパルスのデューティを制御し、電力変換器2の最大出力電流および最大回生電流を制限することにより、蓄電池1および電力変換器2の負荷を調整する。
【0070】
上記のように、本実施形態によれば、小型化および低コスト化を実現するとともに、早期故障を回避する電源システムを提供することができる。
なお、本実施形態の電源システム10は、第2寿命評価部6と第1寿命評価部7との両方を備えている必要はなく、いずれか一方を備えていればよい。その場合であっても上述の効果を得ることができる。
【0071】
次に、第2実施形態の電源システムについて図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、電源システム10は後述の編成制御システム73に適用され、鉄道車両の走行方法を調節することにより蓄電池1および電力変換器2の寿命をコントロールしている。
本実施形態の電源システム10において、蓄電装置の直流電源は、架線およびレールもしくは第3軌条およびレールで構成されるき電回路であり、負荷3は電気車を走行させるための電動機及び電動機を駆動する電力変換器である。
【0072】
図10は、第2実施形態の電源システムを含む鉄道車両駆動システムの一構成例を概略的に示す図である。
図10に示す鉄道車両駆動システムは、電動機Mと、電力変換器(第2電力変換器)72と、編成制御システム73と、荷重検知装置74と、を備えている。
【0073】
電動機Mは、電力変換器72から供給される電力により回転駆動され、電気車を駆動する。なお、電動機Mは電気車の編成内に複数備えられるものである。
電力変換器72は、例えば図1に示す電力変換器2から供給される電力を所定の電力に変換して電動機Mに供給するとともに、電動機Mから回生された電力を所定の電力に変換して電力変換器2へ供給する。なお、電力変換器72は、複数の電動機Mに対応して列車の一編成内に複数備えられている。
【0074】
荷重検知装置74は、例えばサスペンションの圧力から、編成内の鉄道車両の荷重情報を検知する装置である。
編成制御システム73は、荷重検知装置74により検知された値(荷重情報)により、複数の電動機Mのトルク分担を変化させる。すなわち、編成制御システム73は、検知された荷重の値に応じたトルク指令を、その荷重を負担する電動機Mに対応する電力変換器72に出力する。このことにより、荷重が大きい車両を担当する電動機Mほど大きなトルクを負担するようにトルクの分担が成される。
【0075】
このような制御が行われると、必ずしも各車両の混雑率や積載量が均一でないため、特定の車両の電動機Mだけに負荷が偏り、当該電動機Mに電力を供給する電力変換器2の寿命が低下することが想定される。編成内の各駆動用の電動機Mに対するトルク指令を均一化するという方法もあるが、レールと車輪との間の粘着が荷重条件によって変わるため、空転・滑走を誘発する可能性がある。
【0076】
そこで、本実施形態の電源システム10では、鉄道車両の走行方法を変更することで電力変換器2や蓄電池1の寿命を調整している。
図11は、第2実施形態の電源システムにより制御される鉄道車両の走行方法の一例を概略的に示す図である。
例えば、図2の寿命計画曲線20を寿命実績曲線21が下回る場合、負荷管理制御部8は、駅間において対象車両の最高速度を下げて走行するように変換器制御部5に対する指令値を算出する。このことで、最高速度に到達するまでの時間が短く電力変換器の出力電流が小さくなり電力変換器2および蓄電池1の寿命の延長を図ることが出来る。
【0077】
図12は、第2実施形態の電源システムにより制御される鉄道車両の走行方法の他の例を概略的に示す図である。
例えば、図2の寿命計画曲線20を寿命実績曲線21が下回る場合、負荷管理制御部8は、駅間において対象車両の加速度や減速度を下げて走行するように変換器制御部5に対する指令値を算出する。このことで、力行運転や回生運転における電力変換器の出力電流が小さくなり電力変換器2および蓄電池1の寿命の延長を図ることが出来る。
【0078】
なお、電気車は走行計画作成部(図示せず)を備えていてもよく、その場合には、駅間を走行計画に沿った時間で走行するように制御される。
上記のように、本実施形態によれば、小型化および低コスト化を実現するとともに、早期故障を回避する電源システムを提供することができる。
【0079】
本実施形態に係るプログラムは、電子機器に記憶された状態で譲渡されてよいし、電子機器に記憶されていない状態で譲渡されてもよい。後者の場合は、プログラムは、ネットワークを介して譲渡されてよいし、記憶媒体に記憶された状態で譲渡されてもよい。記憶媒体は、非一時的な有形の媒体である。記憶媒体は、コンピュータ可読媒体である。記憶媒体は、CD-ROM、メモリカード等のプログラムを記憶可能かつコンピュータで読取可能な媒体であればよく、その形態は問わない。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1…蓄電池、2…電力変換器、3…負荷、4…蓄電池監視部、5…スイッチング制御部、6…第2寿命評価部、7…第1寿命評価部、8…負荷管理制御部、9…インタフェース部10…電源システム、20…寿命計画曲線、21…寿命実績曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12