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特開2024-98365柱仕口部材の接合構造、及び柱仕口部材の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098365
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】柱仕口部材の接合構造、及び柱仕口部材の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
E04B1/58 508A
E04B1/58 505A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001833
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 楓子
(72)【発明者】
【氏名】津司 巧
(72)【発明者】
【氏名】黒川 雄太
(72)【発明者】
【氏名】山下 真吾
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC02
2E125BA41
(57)【要約】
【課題】下側コンクリート柱とプレキャスト仕口部材との接合構造において、下側コンクリート柱の柱頭部の構造を単純化することを目的とする。
【解決手段】柱仕口部材の接合構造は、柱主筋12が、柱頭部にて機械式継手に接続されずに柱頭部から上方へ突出された下側プレキャスト柱10と、柱主筋12が貫通された貫通孔を有し、下側プレキャスト柱10の柱頭部に載置されたプレキャスト仕口部材50と、貫通孔を貫通する柱主筋12の上端部に設けられた機械式定着16と、少なくとも機械式定着16の周囲に設けられ、機械式定着16が埋設される現場打ちコンクリートCと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱主筋が、柱頭部にて機械式継手に接続されずに該柱頭部から上方へ突出された下側コンクリート柱と、
前記柱主筋が貫通された貫通孔を有し、前記下側コンクリート柱の前記柱頭部に載置されたプレキャスト仕口部材と、
前記貫通孔を貫通する前記柱主筋の上端部に設けられた定着部と、
少なくとも前記定着部の周囲に設けられ、該定着部が埋設される現場打ちコンクリートと、
を備える柱仕口部材の接合構造。
【請求項2】
前記プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋が埋設され、
前記現場打ちコンクリートには、上端梁主筋が埋設されるとともに、複数の前記柱主筋の前記上端部にそれぞれ設けられた前記定着部が埋設される、
請求項1に記載の柱仕口部材の接合構造。
【請求項3】
前記プレキャスト仕口部材の上に載置されるとともに、前記下側コンクリート柱よりも断面積が小さい上側プレキャスト柱を備え、
前記プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋及び上端梁主筋が埋設され、
複数の前記柱主筋のうち、一部の前記柱主筋の上端部には、前記定着部が設けられ、他の前記柱主筋は、前記プレキャスト仕口部材の上面から突出し、前記上側プレキャスト柱の柱脚部に埋設された機械式継手に接続される、
請求項1に記載の柱仕口部材の接合構造。
【請求項4】
下側コンクリート柱の柱頭部上にプレキャスト仕口部材を降ろし、前記下側コンクリート柱の柱頭部から突出する柱主筋を、プレキャスト仕口部材に形成された貫通孔に貫通させる仕口部材設置工程と、
前記下側コンクリート柱とプレキャスト仕口部材との目地、及び前記貫通孔に充填材を充填する充填材施工工程と、
前記貫通孔を貫通する前記柱主筋の上端部に定着部を設ける定着部施工工程と、
少なくとも前記定着部の周囲に現場打ちコンクリートを打設し、該定着部を現場打ちコンクリートに埋設する現場打ちコンクリート施工工程と、
を備える柱仕口部材の施工方法。
【請求項5】
前記プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋が埋設され、
前記現場打ちコンクリート施工工程において、前記現場打ちコンクリートに、上端梁主筋を埋設するとともに、複数の前記柱主筋の前記上端部にそれぞれ設けられた前記定着部を埋設する、
請求項4に記載の柱仕口部材の施工方法。
【請求項6】
前記下側コンクリート柱よりも断面積が小さい上側プレキャスト柱を、前記プレキャスト仕口部材の上に降ろす上側柱設置工程を備え、
前記プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋及び上端梁主筋が埋設され、
前記定着部施工工程において、複数の前記柱主筋のうち、一部の前記柱主筋の上端部に前記定着部を設け、
前記上側柱設置工程において、前記上側プレキャスト柱の柱脚部に埋設された機械式継手に、前記プレキャスト仕口部材の上面から突出する他の前記柱主筋を挿入する、
請求項4に記載の柱仕口部材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱仕口部材の接合構造、及び柱仕口部材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCa製柱と、PCa製水平構造体との接合構造が知られている(例えば、特許文献1~特許文献4参照)。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、先ず、PCa製柱の柱頭部にPCa製水平構造体を載置する。次に、PCa製水平構造体に形成された貫通孔に、当該PCa製水平構造体の上から接続鉄筋を挿入する。そして、接続鉄筋の下端部を、PCa製柱の柱頭部に埋設された機械式継手に挿入するとともに、接続鉄筋の上端部に取り付けられた定着ナットをPCa製水平構造体の上端部に形成された収容部に収容する。次に、機械式継手にグラウトを充填するとともに、定着ナットが収容された収容部にグラウトを充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-104854号公報
【特許文献2】特開2004-278257号公報
【特許文献3】特開2014-109173号公報
【特許文献4】特開2022-018838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、PCa製水平構造体を用いることにより、型枠の仮設及び撤去作業を低減することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、PCa製柱の柱頭部に機械式継手を埋設するため、PCa製柱の柱頭部の構造が複雑化する。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、下側コンクリート柱とプレキャスト仕口部材との接合構造において、下側コンクリート柱の柱頭部の構造を単純化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の柱仕口部材の接合構造は、柱主筋が、柱頭部にて機械式継手に接続されずに該柱頭部から上方へ突出された下側コンクリート柱と、前記柱主筋が貫通された貫通孔を有し、前記下側コンクリート柱の前記柱頭部に載置されたプレキャスト仕口部材と、前記貫通孔を貫通する前記柱主筋の上端部に設けられた定着部と、少なくとも前記定着部の周囲に設けられ、該定着部が埋設される現場打ちコンクリートと、を備える。
【0009】
請求項1に係る柱仕口部材の接合構造によれば、下側コンクリート柱の柱頭部上には、プレキャスト仕口部材が載置される。プレキャスト仕口部材は、貫通孔を有する。この貫通孔には、下側コンクリート柱の柱頭部から上方へ突出された柱主筋が貫通される。
【0010】
また、貫通孔を貫通する柱主筋の上端部には、定着部が設けられる。定着部は、少なくとも定着部の周囲に設けられた現場打ちコンクリートに埋設される。これにより、下側コンクリート柱の柱主筋の上端部が、定着部を介して現場打ちコンクリートに定着される。
【0011】
このように本発明では、プレキャスト仕口部材を用いることにより、型枠の仮設及び撤去作業を低減することができる。
【0012】
また、下側コンクリート柱の柱頭部から柱主筋を予め突出させておくため、下側コンクリート柱の柱頭部にて、柱主筋を機械式継手で継ぐ必要がない。したがって、下側コンクリート柱の柱頭部の構造を単純化することができる。
【0013】
さらに、本発明では、前述したように、下側コンクリート柱の柱主筋の上端部に設けられた定着部を現場打ちコンクリートに埋設することにより、当該定着部をグラウト等に定着させる場合と比較して、定着強度を高めることができる。
【0014】
請求項2に記載の柱仕口部材の接合構造は、請求項1に記載の柱仕口部材の接合構造において、前記プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋が埋設され、前記現場打ちコンクリートには、上端梁主筋が埋設されるとともに、複数の前記柱主筋の前記上端部にそれぞれ設けられた前記定着部が埋設される。
【0015】
請求項2に係る柱仕口部材の接合構造によれば、プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋が埋設される。また、現場打ちコンクリートには、上端梁主筋が埋設されるとともに、複数の柱主筋の上端部にそれぞれ設けられた定着部が埋設される。
【0016】
つまり、本発明では、例えば、プレキャスト仕口部材の上に柱が立たない最上階において、型枠の仮設及び撤去作業を低減しつつ、下側コンクリート柱の柱頭部の構造を単純化することができる。
【0017】
請求項3に記載の柱仕口部材の接合構造は、請求項1に記載の柱仕口部材の接合構造において、前記プレキャスト仕口部材の上に載置されるとともに、前記下側コンクリート柱よりも断面積が小さい上側プレキャスト柱を備え、前記プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋及び上端梁主筋が埋設され、複数の前記柱主筋のうち、一部の前記柱主筋の上端部には、前記定着部が設けられ、他の前記柱主筋は、前記プレキャスト仕口部材の上面から突出し、前記上側プレキャスト柱の柱脚部に埋設された機械式継手に接続される。
【0018】
請求項3に係る柱仕口部材の接合構造によれば、プレキャスト仕口部材の上に載置される上側プレキャスト柱を備える。この上側プレキャスト柱は、下側コンクリート柱よりも断面積が小さい。また、プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋及び上端梁主筋が埋設される。
【0019】
ここで、複数の柱主筋のうち、一部の柱主筋の上端部には、定着部が設けられる。この定着部は、現場打ちコンクリートに埋設される。一方、複数の柱主筋のうち、他の柱主筋は、プレキャスト仕口部材の上面から突出し、上側プレキャスト柱の柱脚部に埋設された機械式継手に接続される。これにより、下側コンクリート柱にプレキャスト仕口部材を介して上側プレキャスト柱が接合される。
【0020】
このように本発明では、上側プレキャスト柱の断面積が下側コンクリート柱の断面積よりも小さい場合に、下側コンクリート柱の柱頭部の構造を単純化しつつ、下側コンクリート柱にプレキャスト仕口部材を介して上側プレキャスト柱を接合することができる。
【0021】
請求項4に記載の柱仕口部材の施工方法は、下側コンクリート柱の柱頭部上にプレキャスト仕口部材を降ろし、前記下側コンクリート柱の柱頭部から突出する柱主筋を、プレキャスト仕口部材に形成された貫通孔に貫通させる仕口部材設置工程と、前記下側コンクリート柱とプレキャスト仕口部材との目地、及び前記貫通孔に充填材を充填する充填材施工工程と、前記貫通孔を貫通する前記柱主筋の上端部に定着部を設ける定着部施工工程と、少なくとも前記定着部の周囲に現場打ちコンクリートを打設し、該定着部を現場打ちコンクリートに埋設する現場打ちコンクリート施工工程と、を備える。
【0022】
請求項4に係る柱仕口部材の施工方法によれば、先ず、仕口部材設置工程において、下側コンクリート柱の柱頭部上にプレキャスト仕口部材を降ろし、下側コンクリート柱の柱頭部から突出する柱主筋を、プレキャスト仕口部材に形成された貫通孔に貫通させる。
【0023】
次に、充填材施工工程において、下側コンクリート柱とプレキャスト仕口部材との目地、及び貫通孔に充填材を充填する。また、定着部施工工程において、貫通孔を貫通する柱主筋の上端部に定着部を設ける。次に、現場打ちコンクリート施工工程において、少なくとも定着部の周囲に現場打ちコンクリートを打設し、当該定着部を現場打ちコンクリートに埋設する。
【0024】
このように本発明では、プレキャスト仕口部材を用いることにより、型枠の仮設及び撤去作業を低減することができる。
【0025】
また、下側コンクリート柱の柱頭部から柱主筋を予め突出させておくため、下側コンクリート柱の柱頭部にて、柱主筋を機械式継手で継ぐ必要がない。したがって、下側コンクリート柱の柱頭部の構造を単純化することができる。
【0026】
さらに、本発明では、前述したように、下側コンクリート柱の柱主筋の上端部に設けられた定着部を現場打ちコンクリートに埋設することにより、当該定着部をグラウト等に定着させる場合と比較して、定着強度を高めることができる。なお、充填材施工工程及び定着部施工工程は、順不同である。
【0027】
請求項5に記載の柱仕口部材の施工方法は、請求項4に記載の柱仕口部材の施工方法において、前記プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋が埋設され、前記現場打ちコンクリート施工工程において、前記現場打ちコンクリートに、上端梁主筋を埋設するとともに、複数の前記柱主筋の前記上端部にそれぞれ設けられた前記定着部を埋設する。
【0028】
請求項5に係る柱仕口部材の施工方法によれば、プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋が埋設される。そして、現場打ちコンクリート施工工程において、現場打ちコンクリートに、上端梁主筋を埋設するとともに、複数の柱主筋の上端部にそれぞれ設けられた定着部を埋設する。
【0029】
つまり、本発明では、例えば、プレキャスト仕口部材の上に柱が立たない最上階において、型枠の仮設及び撤去作業を低減しつつ、下側コンクリート柱の柱頭部の構造を単純化することができる。
【0030】
請求項6に記載の柱仕口部材の施工方法は、請求項4に記載の柱仕口部材の施工方法において、前記下側コンクリート柱よりも断面積が小さい上側プレキャスト柱を、前記プレキャスト仕口部材の上に降ろす上側柱設置工程を備え、前記プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋及び上端梁主筋が埋設され、前記定着部施工工程において、複数の前記柱主筋のうち、一部の前記柱主筋の上端部に前記定着部を設け、前記上側柱設置工程において、前記上側プレキャスト柱の柱脚部に埋設された機械式継手に、前記プレキャスト仕口部材の上面から突出する他の前記柱主筋を挿入する。
【0031】
請求項6に係る柱仕口部材の施工方法によれば、プレキャスト仕口部材には、下端梁主筋及び上端梁主筋が埋設される。そして、定着部施工工程において、複数の柱主筋のうち、一部の柱主筋の上端部に定着部を設ける。
【0032】
その後、上側柱設置工程において、下側コンクリート柱よりも断面積が小さい上側プレキャスト柱を、プレキャスト仕口部材の上に降ろす。この際、上側プレキャスト柱の柱脚部に埋設された機械式継手に、プレキャスト仕口部材の上面から突出する他の柱主筋を挿入する。
【0033】
このように本発明では、上側プレキャスト柱の断面積が下側コンクリート柱の断面積よりも小さい場合に、下側コンクリート柱の柱頭部の構造を単純化しつつ、下側コンクリート柱にプレキャスト仕口部材を介して上側プレキャスト柱を接合することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、下側コンクリート柱とプレキャスト仕口部材との接合構造において、下側コンクリート柱の柱頭部の構造を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】第一実施形態に係る柱仕口部材の接合構造が適用されたプレキャスト仕口部材を示す図2の1-1線断面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図1の3-3線断面図である。
図4】下側プレキャスト柱及びプレキャスト仕口部材の施工過程を示す図3に対応する断面図である。
図5】第一実施形態に係る下側プレキャスト柱及びプレキャスト仕口部材の施工過程を示す図3に対応する断面図である。
図6】第二実施形態に係る柱仕口部材の接合構造が適用された下側プレキャスト柱及びプレキャスト仕口部材を示す図3に対応する断面図である。
図7】第二実施形態に係る下側プレキャスト柱及びプレキャスト仕口部材の施工過程を示す図6に対応する断面図である。
図8】第二実施形態に係る下側プレキャスト柱及びプレキャスト仕口部材の施工過程を示す図6に対応する断面図である。
図9】第一実施形態に係る柱仕口部材の接合構造の変形例が適用された下側プレキャスト柱及びプレキャスト仕口部材を示す図3に対応する断面図である。
図10】第一実施形態に係る柱仕口部材の接合構造の変形例が適用された下側プレキャスト柱及びプレキャスト仕口部材の施工過程を示す図9に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0037】
(柱仕口部材の接合構造)
図1図2、及び図3には、第一実施形態に係る柱仕口部材の接合構造が適用された下側プレキャスト柱10(図2及び図3参照)、及びプレキャスト仕口部材50が示されている。なお、各図において、矢印X方向及び矢印Y方向は、互いに直交する水平二方向を示している。
【0038】
(下側プレキャスト柱)
図2及び図3に示されるように、下側プレキャスト柱10は、構造物の最上階の柱を構成している。この下側プレキャスト柱10は、一例として、フルプレキャストコンクリート造とされている。また、下側プレキャスト柱10は、断面矩形状に形成されている。なお、下側プレキャスト柱10は、下側コンクリート柱の一例である。
【0039】
下側プレキャスト柱10の外周部には、複数の柱主筋12、及び複数のせん断補強筋14が埋設されている。複数の柱主筋12は、下側プレキャスト柱10の材軸方向に沿って配置されるとともに、下側プレキャスト柱10の周方向に間隔を空けて埋設されている。また、複数の柱主筋12の上端部は、下側プレキャスト柱10の柱頭部から上方へ突出し、後述するプレキャスト仕口部材50を上下方向に貫通している。
【0040】
なお、下側プレキャスト柱10の柱頭部は、機械式継手が埋設されておらず、柱主筋12は、下側プレキャスト柱10の柱頭部にて機械式継手に接続されていない。
【0041】
複数の柱主筋12の上端部には、ナット状の機械式定着16が取り付けられている。これらの機械式定着16は、後述する現場打ちコンクリートCに埋設されている。なお、複数の機械式定着16の周囲には、後述するせん断補強筋53が配筋されている。また、機械式定着16は、定着部の一例である。
【0042】
複数のせん断補強筋14は、下側プレキャスト柱10の材軸方向の間隔を空けて配置されている。また、複数のせん断補強筋14は、平面視にて、複数の柱主筋12を囲むように配置されている。
【0043】
このように構成された下側プレキャスト柱10の柱頭部には、後述するプレキャスト仕口部材50を介して第一コンクリート梁20、及び第二コンクリート梁40が接合されている。
【0044】
(第一コンクリート梁)
図2に示されるように、第一コンクリート梁20は、プレキャスト仕口部材50の所定方向(矢印X方向)の両側に配置されており、構造物の最上階の天井梁を構成している。各第一コンクリート梁20は、プレキャスト梁部材22と、現場打ちコンクリートCとを有している。
【0045】
プレキャスト梁部材22は、ハーフプレキャストコンクリート造とされている。このプレキャスト梁部材22には、複数の第一下端梁主筋24、複数の第一せん断補強筋28、及び複数の機械式継手30が埋設されている。
【0046】
複数の第一下端梁主筋24は、プレキャスト梁部材22の下端側に埋設されている。各第一下端梁主筋24の端部は、プレキャスト梁部材22の端部に埋設された機械式継手30の一端側に接続されている。この機械式継手30の他端側には、後述するプレキャスト仕口部材50の第一下端梁主筋54が接続されている。
【0047】
プレキャスト梁部材22の上には、複数の第一上端梁主筋26が配筋されている。複数の第一上端梁主筋26は、プレキャスト梁部材22の上面から突出する複数の第一せん断補強筋28に組付けられている。これらの第一上端梁主筋26の端部は、機械式継手30を介して後述するプレキャスト仕口部材50の第一上端梁主筋56と接続されている。
【0048】
現場打ちコンクリート(トップコンクリート)Cは、プレキャスト梁部材22の上に、図示しないスラブと一体に打設されている。この現場打ちコンクリートCには、第一上端梁主筋26、機械式継手30、及び第一せん断補強筋28の上端側等が埋設されている。
【0049】
(第二コンクリート梁)
図3に示されるように、第二コンクリート梁40は、プレキャスト仕口部材50の所定方向と直交する直交方向(矢印Y方向)の両側に配置されており、構造物の最上階の天井梁を構成している。
【0050】
第二コンクリート梁40は、鉄筋コンクリート造とされている。また、第二コンクリート梁40は、一例として、現場打ちコンクリートによって形成されている。この第二コンクリート梁40には、複数の第二下端梁主筋44、複数の第二上端梁主筋46、及び複数の第二せん断補強筋48が埋設されている。
【0051】
なお、第一コンクリート梁20及び第二コンクリート梁40の構造は、適宜変更可能である。つまり、第一コンクリート梁20及び第二コンクリート梁40は、現場打ちコンクリートによって形成されても良いし、プレキャストコンクリート(フルプレキャスト、ハーフプレキャスト)によって形成されても良い。また、第一コンクリート梁20及び第二コンクリート梁40の配置や本数も、適宜変更可能である。
【0052】
(プレキャスト仕口部材)
図2及び図3に示されるように、プレキャスト仕口部材50は、構造物の最上階において、下側プレキャスト柱10と、第一コンクリート梁20及び第二コンクリート梁40との仕口部Sの一部を構成するとともに、第一コンクリート梁20の端部の一部を構成している。
【0053】
図2に示されるように、プレキャスト仕口部材50は、一例として、ハーフプレキャストコンクリート造とされている。このプレキャスト仕口部材50の上には、現場打ちコンクリートCが設けられている。また、プレキャスト仕口部材50は、柱梁仕口部50A、及び2つの梁部50Bを有している。これらの柱梁仕口部50A及び2つの梁部50Bは、工場等において一体に形成されている。
【0054】
柱梁仕口部50Aは、断面矩形状に形成されている。また、柱梁仕口部50Aは、平面視にて、下側プレキャスト柱10と同じ形状及び大きさに形成されている。つまり、柱梁仕口部50A、及び下側プレキャスト柱10は、平面視にて、外形が一致している。この柱梁仕口部50Aは、下側プレキャスト柱10の柱頭部上に載置されている。
【0055】
なお、柱梁仕口部50Aの下面と下側プレキャスト柱10の上面との間に目地には、グラウト等の充填材Gが充填されている。
【0056】
柱梁仕口部50Aは、後述する現場打ちコンクリートCと共に、下側プレキャスト柱10と第一コンクリート梁20及び第二コンクリート梁40との仕口部(接合部)Sを構成している。この柱梁仕口部50Aの外周部には、複数のシース管52が埋設されている。
【0057】
複数のシース管52は、柱梁仕口部50Aの周方向に間隔を空けて配置されている。また、複数のシース管52は、円筒状に形成されており、上下方向に沿って柱梁仕口部50Aに埋設されている。これらのシース管52によって、柱梁仕口部50Aを上下方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。また、貫通孔には、下側プレキャスト柱10の柱頭部から上方へ突出する複数の柱主筋12がそれぞれ貫通されている。
【0058】
複数のシース管52の周囲には、複数のせん断補強筋53が埋設されている。複数のせん断補強筋53は、平面視にて、複数のシース管52を囲むように配置されている。また、せん断補強筋53は、現場打ちコンクリートCにも埋設されている。このせん断補強筋53は、平面視にて、複数の機械式定着16を囲むように配置されている。
【0059】
2つの梁部50Bは、柱梁仕口部50Aから所定方向(矢印X方向)の両側へそれぞれ跳ね出している。これらの梁部50Bは、現場打ちコンクリートCと共に第一コンクリート梁20の端部を構成している。
【0060】
柱梁仕口部50A、及び2つの梁部50Bの下端側には、所定方向(矢印X方向)に延びる複数の第一下端梁主筋54が埋設されている。複数の第一下端梁主筋54の両端部は、2つの梁部50Bの端面からそれぞれ突出している。これらの第一下端梁主筋54の両端部には、機械式継手30を介して第一コンクリート梁20の第一下端梁主筋24の端部が接続されている。なお、第一下端梁主筋54は、下端梁主筋の一例である。
【0061】
一方、柱梁仕口部50A、及び2つの梁部50Bの上には、所定方向(矢印X方向)に延びる複数の第一上端梁主筋56が配筋されている。複数の第一上端梁主筋56の両端部は、平面視にて、2つの梁部50Bの端面から突出している。これらの第一上端梁主筋56の両端部には、機械式継手30を介して、第一コンクリート梁20の第一上端梁主筋26が接続されている。
【0062】
複数の第一上端梁主筋56は、プレキャスト仕口部材50の所定方向の両側において、複数の第一せん断補強筋58を介して、複数の第一下端梁主筋54に組付けられている。なお、第一上端梁主筋56は、上端梁主筋の一例である。
【0063】
柱梁仕口部50Aには、複数のかんざし筋(定着補強筋)60が設けられている。複数のかんざし筋60は、下方が開口されたC字形状に屈曲されている。図1に示されるように、複数のかんざし筋60は、複数の第一上端梁主筋56を跨ぐように配置されており、その下端側が柱梁仕口部50A(図2及び図3参照)に埋設されている。なお、かんざし筋60の本数や配置は、適宜変更可能である。
【0064】
図3に示されるように、柱梁仕口部50Aの下端側には、直交方向(矢印Y方向)に延びる複数の第二下端梁主筋64が埋設されている。複数の第二下端梁主筋64の両端部は、柱梁仕口部50Aの両側の側面からそれぞれ突出している。これらの第二下端梁主筋64の両端部には、機械式継手30を介して、第二コンクリート梁40の第二下端梁主筋44が接続されている。なお、第二下端梁主筋64は、下端梁主筋の一例である。
【0065】
柱梁仕口部50Aの上には、所定方向(矢印X方向)に延びる複数の第二上端梁主筋66が配筋されている。複数の第二上端梁主筋66の両端部は、平面視にて、柱梁仕口部50Aの側面から突出している。これらの第二上端梁主筋66の両端部には、機械式継手30を介して、第二コンクリート梁40の第二上端梁主筋46が接続されている。
【0066】
複数の第二上端梁主筋66は、プレキャスト仕口部材50の直交方向の両側において、複数の第二せん断補強筋68を介して、複数の第二下端梁主筋64に組付けられている。なお、第二上端梁主筋66は、上端梁主筋の一例である。
【0067】
(現場打ちコンクリート)
プレキャスト仕口部材50の上には、現場打ちコンクリートCが設けられている。現場打ちコンクリートCは、前述したように、図示しないスラブと一体に現場打ちされている。この現場打ちコンクリートCには、下側プレキャスト柱10の柱主筋12の上端部に取り付けられた機械式定着16が埋設されている。これにより、下側プレキャスト柱10の柱主筋12が、機械式定着16を介して現場打ちコンクリートCに定着されている。
【0068】
(柱仕口部材の施工方法)
次に、第一実施形態に係る柱仕口部材の施工方法の一例について説明する。なお、第一コンクリート梁20及び第二コンクリート梁40の施工方法は、周知の施工方法と同様である。したがって、以下では、下側プレキャスト柱10及びプレキャスト仕口部材50の施工方法を中心に説明し、第一コンクリート梁20及び第二コンクリート梁40の施工方法は、適宜省略する。
【0069】
(仕口部材設置工程)
先ず、仕口部材設置工程について説明する。図4には、下側プレキャスト柱10が設置された状態が示されている。この状態から、仕口部材設置工程では、図示しない揚重機等によってプレキャスト仕口部材50を吊り上げ、当該プレキャスト仕口部材50の柱梁仕口部50Aを下側プレキャスト柱10の柱頭部上に降ろす。
【0070】
この際、図5に示されるように、下側プレキャスト柱10の柱頭部から上方へ突出する複数の柱主筋12を、プレキャスト仕口部材50の柱梁仕口部50Aに形成された複数の貫通孔(シース管52)にそれぞれ貫通させる。また、プレキャスト仕口部材50の柱梁仕口部50Aを、図示しないスペーサを介して下側プレキャスト柱10の柱頭部上に載置する。これにより、柱梁仕口部50Aの下面と下側プレキャスト柱10の上面との間に、グラウト等の充填材Gを充填する目地を形成する。
【0071】
(充填材施工工程)
次に、充填材施工工程について説明する。充填材施工工程では、プレキャスト仕口部材50の柱梁仕口部50Aの下面と下側プレキャスト柱10の上面との目地の外周部を図示しない型枠等で塞いだ状態で、当該目地にグラウト等の充填材Gを充填するとともに、目地を介して各貫通孔(シース管52)に充填材Gを充填する。この際、各貫通孔の上端にて、充填材Gの充填確認を行う。
【0072】
(定着部施工工程)
次に、定着部施工工程について説明する。定着部施工工程では、プレキャスト仕口部材50の柱梁仕口部50Aに形成された複数の貫通孔をそれぞれ貫通する複数の柱主筋12の上端部に、機械式定着16をそれぞれ取り付ける。また、必要に応じて、複数の機械式定着16の周囲にせん断補強筋53を配筋する。
【0073】
なお、定着部施工工程及び充填材施工工程は、順不同であり、定着部施工工程は、充填材施工工程に前後して、又は充填材施工工程と並行して実施しても良い。
【0074】
(現場打ちコンクリート施工工程)
次に、現場打ちコンクリート施工工程について説明する。図2及び図3に示されるように、現場打ちコンクリート施工工程では、プレキャスト仕口部材50上に、すなわち複数の機械式定着16の周囲に現場打ちコンクリートCを打設し、これらの機械式定着16を現場打ちコンクリートCに埋設する。これにより、下側プレキャスト柱10の各柱主筋12の上端部が、機械式定着16を介して、現場打ちコンクリートCに定着される。
【0075】
(効果)
次に、第一実施形態の効果について説明する。
【0076】
図2及び図3に示されるように、本実施形態によれば、下側プレキャスト柱10の柱頭部上には、プレキャスト仕口部材50の柱梁仕口部50Aが載置されている。柱梁仕口部50Aには、複数のシース管52が埋設されている。これらのシース管52によって、柱梁仕口部50Aに複数の貫通孔が形成されている。これらの貫通孔には、下側プレキャスト柱10の柱頭部から上方へ突出された複数の柱主筋12がそれぞれ貫通されている。
【0077】
また、貫通孔を貫通する柱主筋12の上端部には、機械式定着16が設けられている。機械式定着16は、プレキャスト仕口部材50の柱梁仕口部50A上に設けられた現場打ちコンクリートCに埋設されている。これにより、下側プレキャスト柱10の柱主筋12の上端部が、機械式定着16を介して現場打ちコンクリートCに定着されている。
【0078】
このように本実施形態では、プレキャスト仕口部材50を用いることにより、型枠の仮設及び撤去作業を低減することができる。
【0079】
また、下側プレキャスト柱10の柱頭部から柱主筋12を予め突出させておくため、下側プレキャスト柱10の柱頭部にて、柱主筋12を機械式継手で継ぐ必要がない。したがって、下側プレキャスト柱10の柱頭部の構造を単純化することができる。
【0080】
また、柱梁仕口部50A上に設けられた現場打ちコンクリートCには、下側プレキャスト柱10の各柱主筋12の上端部に設けられた全ての機械式定着16が埋設されている。つまり、本実施形態では、プレキャスト仕口部材50の柱梁仕口部50A上に柱が立たない最上階において、型枠の仮設及び撤去作業を低減しつつ、下側プレキャスト柱10の柱頭部の構造を単純化することができる。
【0081】
さらに、本実施形態では、前述したように、下側プレキャスト柱10の柱主筋12の上端部に設けられた機械式定着16を現場打ちコンクリートCに埋設することにより、当該機械式定着16をグラウト等に定着させる場合と比較して、定着強度を高めることができる。
【0082】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0083】
図6には、第二実施形態に係る柱仕口部材の接合構造が適用された下側プレキャスト柱10、上側プレキャスト柱80、及びプレキャスト仕口部材90が示されている。
【0084】
(下側プレキャスト柱)
下側プレキャスト柱10の断面積は、後述する上側プレキャスト柱80の断面積よりも大きくされている。そのため、下側プレキャスト柱10の複数の柱主筋12A,12Bのうち、一部の柱主筋12Bは、他の柱主筋12Aよりも下側プレキャスト柱10の柱頭部からの突出長が短くされている。
【0085】
一部の柱主筋12Bの上端部は、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aの上面に形成された切欠き92に配置されている。この一部の柱主筋12Bの上端部には、機械式定着16がそれぞれ取り付けられている。各機械式定着16は、後述する現場打ちコンクリートCに埋設されている。
【0086】
一方、下側プレキャスト柱10の複数の柱主筋12A,12Bのうち、他の柱主筋12Aは、一部の柱主筋12Bよりも下側プレキャスト柱10の柱頭部からの突出長が長くされている。これらの他の柱主筋12Aは、後述するプレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aを貫通し、上側プレキャスト柱80の柱脚部に埋設された機械式継手86に接続されている。
【0087】
なお、下側プレキャスト柱10の他の柱主筋12Aの上端部には、機械式定着16等の定着部が設けられていない。
【0088】
(上側プレキャスト柱)
上側プレキャスト柱80は、一例として、フルプレキャストコンクリート造とされている。また、上側プレキャスト柱80は、断面矩形状に形成されている。この上側プレキャスト柱80の断面積は、下側プレキャスト柱10の断面積よりも小さくされている。そのため、上側プレキャスト柱80は、平面視にて、下側プレキャスト柱10の一部と重なっている。
【0089】
上側プレキャスト柱80の外周部には、複数の柱主筋82、及び複数のせん断補強筋84が埋設されている。複数の柱主筋82は、上側プレキャスト柱80の材軸方向に沿って配置されるとともに、上側プレキャスト柱80の周方向に間隔を空けて埋設されている。
【0090】
複数のせん断補強筋84は、平面視にて、複数の柱主筋82を囲むように配置されている。また、複数のせん断補強筋84は、上側プレキャスト柱80の材軸方向の間隔を空けて配置されている。
【0091】
上側プレキャスト柱80の柱脚部の外周部には、複数の機械式継手86が埋設されている。複数の機械式継手86の上端側には、柱主筋82の下端部が接続されている。一方、複数の機械式継手86の下端側には、下側プレキャスト柱10の複数の柱主筋12A,12Bのうち、平面視にて上側プレキャスト柱80と重なる他の柱主筋12Aの上端部が挿入されている。これらの機械式継手86にグラウト等の充填材を充填することにより、下側プレキャスト柱10及び上側プレキャスト柱80の柱主筋12A,82同士が機械式継手86を介して接続されている。
【0092】
なお、上側プレキャスト柱80の下面とプレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aの上面との目地には、グラウト等の充填材Gが充填されている。
【0093】
(プレキャスト仕口部材)
プレキャスト仕口部材90は、一例として、ハーフプレキャストコンクリート造とされている。このプレキャスト仕口部材90は、柱梁仕口部90A、及び図示しない2つの梁部を有している。
【0094】
なお、プレキャスト仕口部材90の基本的構成は、上記第一実施形態のプレキャスト仕口部材50と同様である。そのため、以下では、上記第一実施形態のプレキャスト仕口部材50との相違点を中心に、プレキャスト仕口部材90の構成を説明する。
【0095】
柱梁仕口部90Aの上面の一部には、上側プレキャスト柱80の柱脚部が載置されている。この柱梁仕口部90Aにおいて、平面視にて上側プレキャスト柱80と重なる部分では、前述したように、下側プレキャスト柱10の柱主筋12Aが、柱梁仕口部90Aの貫通孔(シース管52)を貫通している。これらの柱主筋12Aの上端部は、上側プレキャスト柱80の柱脚部に埋設された複数の機械式継手86にそれぞれ挿入されている。
【0096】
一方、柱梁仕口部90Aにおいて、平面視にて上側プレキャスト柱80と重ならない部分には、切欠き92が形成されている。この切欠き92には、柱梁仕口部90Aの貫通孔(シース管52)を貫通する下側プレキャスト柱10の一部の柱主筋12Bの上端部が配置されている。これらの柱主筋12Bの上端部には、機械式定着16がそれぞれ取り付けられている。
【0097】
(現場打ちコンクリート)
柱梁仕口部90Aの切欠き92には、現場打ちコンクリートCが設けられている。現場打ちコンクリートCは、前述したように、図示しないスラブと一体に打設されている。この現場打ちコンクリートCには、下側プレキャスト柱10の一部の柱主筋12Bの上端部に取り付けられた機械式定着16が埋設されている。これにより、下側プレキャスト柱10の一部の柱主筋12Bが、機械式定着16を介して現場打ちコンクリートCに定着されている。
【0098】
(柱仕口部材の施工方法)
次に、第二実施形態に係る柱仕口部材の施工方法の一例について説明する。
【0099】
(仕口部材設置工程)
先ず、仕口部材設置工程について説明する。図7には、下側プレキャスト柱10が設置された状態が示されている。この状態から、仕口部材設置工程では、図示しない揚重機等によってプレキャスト仕口部材90を吊り上げ、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aを下側プレキャスト柱10の柱頭部上に降ろす。
【0100】
この際、図8に示されるように、下側プレキャスト柱10の柱頭部から上方へ突出する複数の柱主筋12A,12Bを、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aに形成された複数の貫通孔(シース管52)にそれぞれ貫通させる。また、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aを、図示しないスペーサを介して下側プレキャスト柱10の柱頭部上に載置する。これにより、柱梁仕口部90Aの下面と下側プレキャスト柱10の上面との間に、グラウト等の充填材Gを充填する目地を形成する。
【0101】
(充填材施工工程)
次に、充填材施工工程について説明する。充填材施工工程では、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aの下面と下側プレキャスト柱10の上面との目地の外周部を図示しない型枠等で塞いだ状態で、当該目地にグラウト等の充填材Gを充填するとともに、目地を介して各貫通孔(シース管52)の充填材Gを充填する。この際、各貫通孔の上端にて、充填材Gの充填確認を行う。
【0102】
(定着部施工工程)
次に、定着部施工工程について説明する。定着部施工工程では、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aに形成された複数の貫通孔をそれぞれ貫通する複数の柱主筋12A,12Bのうち、柱梁仕口部90Aの切欠き92に配置された一部の柱主筋12Bの上端部に機械式定着16を取り付ける。また、必要に応じて、複数の機械式定着16の周囲に、図示しないせん断補強筋及びかんざし筋を配筋する。
【0103】
なお、定着部施工工程及び充填材施工工程は、順不同であり、定着部施工工程は、充填材施工工程に前後して、又は充填材施工工程と並行して実施しても良い。
【0104】
(現場打ちコンクリート施工工程)
次に、現場打ちコンクリート施工工程について説明する。図6に示されるように、現場打ちコンクリート施工工程では、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aの切欠き92に、すなわち複数の機械式定着16の周囲に現場打ちコンクリートCを打設し、これらの機械式定着16を現場打ちコンクリートCに埋設する。これにより、下側プレキャスト柱10の複数の柱主筋12A,12Bのうち、一部の柱主筋12Bの上端部が、機械式定着16を介して現場打ちコンクリートCに定着される。
【0105】
(上側柱設置工程)
次に、上側柱設置工程について説明する。上側柱設置工程では、図示しない揚重機によって上側プレキャスト柱80を吊り上げ、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90A上に降ろす。
【0106】
この際、上側プレキャスト柱80を、図示しないスペーサを介してプレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90A上に載置する。これにより、上側プレキャスト柱80の下面と柱梁仕口部90Aの上面との間に目地を形成する。
【0107】
また、柱梁仕口部90Aの上面から突出する下側プレキャスト柱10の複数の柱主筋12Aの上端部を、上側プレキャスト柱80の柱脚部に埋設された複数の機械式継手86にそれぞれ挿入する。そして、上側プレキャスト柱80の下面と柱梁仕口部90Aの上面との目地、及び各機械式継手86にグラウト等の図示しない充填材を充填する。これにより、下側プレキャスト柱10及び上側プレキャスト柱80の柱主筋12,82同士が、機械式継手86を介して接続される。
【0108】
なお、上側柱設置工程及び現場打ちコンクリート施工工程は、順不同であり、上側柱設置工程は、現場打ちコンクリート施工工程に前後して、又は現場打ちコンクリート施工工程と並行して実施しても良い。
【0109】
(効果)
次に、第二実施形態の効果について説明する。
【0110】
図6に示されるように、本実施形態によれば、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90A上に載置される上側プレキャスト柱80を備えている。この上側プレキャスト柱80は、下側プレキャスト柱10よりも断面積が小さい。
【0111】
ここで、下側プレキャスト柱10の複数の柱主筋12A,12Bのうち、一部の柱主筋12Bの上端部は、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aに形成された切欠き92に配置されている。また、一部の柱主筋12Bの上端部には、機械式定着16が取り付けられている。この機械式定着16は、切欠き92に設けられた現場打ちコンクリートCに埋設されている。
【0112】
一方、下側プレキャスト柱10の複数の柱主筋12A,12Bのうち、他の柱主筋12Aは、プレキャスト仕口部材90の柱梁仕口部90Aの上面から突出し、上側プレキャスト柱80の下端部に埋設された機械式継手86に接続されている。これにより、下側プレキャスト柱10にプレキャスト仕口部材90を介して上側プレキャスト柱80が接合されている。
【0113】
このように本実施形態では、上側プレキャスト柱80の断面積が、下側プレキャスト柱10の断面積よりも小さい場合に、下側プレキャスト柱10の柱頭部の構造を単純化しつつ、下側プレキャスト柱10にプレキャスト仕口部材90を介して上側プレキャスト柱80を接合することができる。
【0114】
(変形例)
次に、上記第一実施形態及び第二実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二実施形態にも適宜適用可能である。
【0115】
上記第一実施形態では、下側プレキャスト柱10の柱主筋12の上端部が、構造物の最上階において、下側プレキャスト柱10と第一コンクリート梁20及び第二コンクリート梁40との仕口部Sに定着されている。しかし、下側プレキャスト柱10の柱主筋12の上端部の定着場所は、下側プレキャスト柱10と第一コンクリート梁20及び第二コンクリート梁40との仕口部Sに限らない。
【0116】
例えば、図9及び図10に示される変形例のように、構造物の最上階において、仕口部Sから上方に突出する柱突出部(柱突出型)102がある場合、当該柱突出部102に、機械式定着16を介して下側プレキャスト柱10の柱主筋12の上端部を定着させても良い。
【0117】
本変形例では、一例として、プレキャスト仕口部材100がフルプレキャストコンクリート造とされている。そして、下側プレキャスト柱10の複数の柱主筋12の上端部は、プレキャスト仕口部材100の柱梁仕口部100Aを貫通し、当該柱梁仕口部100Aの上面から上方へ突出している。これらの柱主筋12の上端部に、機械式定着16がそれぞれ取り付けられている。
【0118】
柱突出部102は、複数の機械式定着16の周囲に設けられた現場打ちコンクリートCによって形成されている。この柱突出部102に複数の機械式定着16が埋設されている。これにより、下側プレキャスト柱10の複数の柱主筋12の上端部が、複数の機械式定着16を介して柱突出部102に定着されている。
【0119】
ここで、本変形例では、プレキャスト仕口部材100の柱梁仕口部100Aの上面から突出する柱突出部102の突出長が所定値以上の場合、例えば、かんざし筋60(図1参照)を省略することができる。したがって、施工性が向上する。
【0120】
次に、上記第一実施形態では、定着部が機械式定着16とされている。しかし、定着部は、機械式定着16に限らず、例えば、L字形状に屈曲され、柱主筋12の上端部に溶接等によって接合される定着筋でも良い。
【0121】
また、上記第一実施形態では、第一上端梁主筋56及び第二上端梁主筋66がプレキャスト仕口部材50に予め組付けられている。しかし、第一上端梁主筋56及び第二上端梁主筋66は、例えば、現場において、プレキャスト仕口部材50上に配筋されても良い。また、第一上端梁主筋56及び第二上端梁主筋66は、プレキャスト仕口部材50に埋設されても良い。
【0122】
また、上記第一実施形態では、プレキャスト仕口部材50の柱梁仕口部50Aの両側に、2つの梁部50Bが設けられている。しかし、プレキャスト仕口部材50に設ける梁部50Bの数や配置は、適宜変更可能であり、プレキャスト仕口部材50には、少なくとも1つの梁部50Bを設けることができる。また、プレキャスト仕口部材50に梁部50Bを設けずに、プレキャスト仕口部材50を柱梁仕口部50Aのみで構成することも可能である。
【0123】
また、上記第一実施形態では、プレキャスト仕口部材50がハーフプレキャストコンクリート造とされている。しかし、プレキャスト仕口部材は、例えば、上記第二実施形態(図6参照)のプレキャスト仕口部材90のように、部分的にハーフプレキャストコンクリート造とされても良いし、前述した変形例(図9参照)のプレキャスト仕口部材100ように、フルプレキャストコンクリート造とされても良い。この場合、現場打ちコンクリートは、少なくとも下側コンクリート柱の柱主筋の上端部に設けられた定着部の周囲に設けられる。
【0124】
また、上記第一実施形態では、下側コンクリート柱が、下側プレキャスト柱10とされている。しかし、下側コンクリート柱は、プレキャストコンクリート造(フルプレキャスト、ハーフプレキャスト)に限らず、現場打ちコンクリート造でも良い。
【0125】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0126】
10 下側プレキャスト柱(下側コンクリート柱)
12 柱主筋
16 機械式定着(定着部)
22 プレキャスト梁部材
50 プレキャスト仕口部材
54 第一下端梁主筋(下端梁主筋)
56 第一上端梁主筋(上端梁主筋)
64 第二下端梁主筋(下端梁主筋)
66 第二上端梁主筋(上端梁主筋)
80 上側プレキャスト柱
86 機械式継手
90 プレキャスト仕口部材
100 プレキャスト仕口部材
102 柱突出部(現場打ちコンクリート)
C 現場打ちコンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10