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特開2024-98369鉄筋コンクリート造の建築物において通気層を有する密着型外断熱に用いられる窓開口部の外壁構造
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  • 特開-鉄筋コンクリート造の建築物において通気層を有する密着型外断熱に用いられる窓開口部の外壁構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098369
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート造の建築物において通気層を有する密着型外断熱に用いられる窓開口部の外壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20240716BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240716BHJP
   E04B 1/682 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
E04B1/70 D
E04B2/56 644H
E04B1/682 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001838
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】396027108
【氏名又は名称】株式会社テスク
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 高光
(72)【発明者】
【氏名】山田 英和
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001DB02
2E001EA01
2E001FA04
2E001FA32
2E001NA07
2E001ND12
2E002EC02
2E002FB02
2E002MA27
2E002MA32
(57)【要約】
【課題】 鉄筋コンクリート造の建築物の通気層を有する密着型外断熱に用いられる、窓開口部における通気機能を有する外壁構造を提供する
【解決手段】 外壁構造は、窓開口部の上部に位置するコンクリート外壁と、コンクリート外壁の屋外側の面に接する断熱層とを備える。さらに、外壁構造は、断熱層の屋外側の面に接する外装下地材と、外装下地材の屋外側の面に接する外装材とを備える。外装下地材は、複数の縦条溝と、断熱層の下端の位置より下方に突出する下突出部とを有する。断熱層の下面と外装下地材の下突出部の屋内側の面とで形成された空間には、断熱材片とその下面に配置された板状体とを有する下パネルが配置される。下パネルの下には、複数の縦条溝と連通し、外気を複数の縦通溝に導入する通気路が設けられる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気層を有する密着型外断熱に用いられる窓開口部の外壁構造であって、
窓開口部の上部に位置するコンクリート外壁と、
前記コンクリート外壁の屋外側の面に接する断熱層と、
前記断熱層の屋外側の面に接し、複数の縦条溝と前記断熱層の下端の位置より下方に突出する下突出部とを有する、外装下地材と、
前記外装下地材の屋外側の面に接する外装材と
を備え、
前記断熱層の下面と前記外装下地材の前記下突出部の屋内側の面とで形成された空間に、断熱材片とその下面に配置された板状体とを有する下パネルが配置され、
前記下パネルの下に、前記複数の縦条溝と連通し、外気を前記複数の縦通溝に導入する通気路が設けられた
外壁構造。
【請求項2】
前記下パネルの下に、相互に隔てられた複数の通路を有する中空構造板が配置され、前記複数の通路の各々が通気路として機能する、
請求項1に記載の外壁構造。
【請求項3】
前記外装下地材の前記下突出部の屋外側の面から前記中空構造板の下面にかけて、横断面形状が略L字形状の窓上化粧縁が配置され、前記中空構造板は、前記窓上化粧縁と前記下パネルとで挟まれることによって所定の位置に保持された、
請求項2に記載の外壁構造。
【請求項4】
前記窓上化粧縁は、横断面視で略L字形状の一方の腕部が前記板状体に固定され、他方の腕部が前記下突出部の屋外側の面に固定された、
請求項3に記載の外壁構造。
【請求項5】
前記他方の腕部と前記外装材との間にシーリング材及びバッカーが配置された、
請求項4に記載の外壁構造。
【請求項6】
前記下パネルの前記断熱材片と前記板状体とは密着している、
請求項1に記載の外壁構造。
【請求項7】
前記下パネルの屋内側の面と前記断熱層の下面とで形成された空間にモルタルが配置された、
請求項1に記載の外壁構造。
【請求項8】
前記モルタルは、前記下パネル側の下端部に空間を有し、この空間にシーリング材が配置された、
請求項7に記載の外壁構造。
【請求項9】
通気層を有する密着型外断熱に用いられる外壁構造であって、
窓開口部の側部に位置するコンクリート外壁と、
前記コンクリート外壁の屋外側の面に接する断熱層と、
前記断熱層の屋外側の面に接し、複数の縦条溝と前記断熱層の側端の位置より側方に突出する横突出部とを有する、外装下地材と、
前記外装下地材の屋外側の面に接する外装材と
を備え、
前記断熱層の側面と前記外装下地材の前記横突出部の屋内側の面とで形成された空間に、断熱材片とその側面に配置された板状体とを有する横パネルが配置された
外壁構造。
【請求項10】
前記横パネルの側面と前記外装下地材の前記横突出部の側端面とにわたって外装材が配置された、
請求項9に記載の外壁構造。
【請求項11】
前記外装下地材の前記横突出部の屋外側の面から前記横パネルの側面にかけて、横断面形状が略L字形状の窓横化粧縁が配置された、
請求項9に記載の外壁構造。
【請求項12】
前記窓横化粧縁は、横断面視で略L字形状の一方の腕部が前記板状体に固定され、他方の腕部が前記横突出部の屋外側の面に固定された、
請求項11に記載の外壁構造。
【請求項13】
前記他方の腕部と前記外装材との間にシーリング材及びバッカーが配置された、
請求項12に記載の外壁構造。
【請求項14】
前記横パネルの屋内側の面と前記断熱層の側面とで形成された空間にモルタルが配置された、
請求項9に記載の外壁構造。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造の外断熱建築物に関し、より具体的には、外断熱建築物の窓開口部における通気機能を付与する新たな外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造の外断熱建築物は、コンクリート躯体の外側を断熱層で被覆するため、太陽の日射による熱ストレスを原因とするひび割れを抑制できること、コンクリート躯体が空気に接触しないため、コンクリートの中性化を抑制することができて、鉄筋棒鋼の腐蝕を防止することが可能であり、建物の耐久性が向上すること、さらに、建物内の温度環境を維持することができて、建物内の結露発生を抑制することが可能であるため、カビ、ダニの発生を抑制することができ、健康面でも優れていることなどの理由により、省エネルギーの高性能建物として評価されている。このような鉄筋コンクリート造の外断熱建築物では、窓などが配置される外壁の開口部において外壁に対する通気性を確保することが煩雑であり、いかに合理化するかが課題となっている。
【0003】
従来、窓開口部用の通気性断熱複合パネルを用いて、窓開口部における通気機能を付与する構造がある。図7は、こうした外壁構造の縦断面図であり、特許文献1に記載の発明に係る外壁構造に関するものである。この外壁構造では、窓開口部の上方においては、外装下地材と断熱層との間に上下方向に延びる複数の細長い縦桟を配置し、複数の縦桟の間に縦通気層を形成した断熱複合パネルが配置されている。その断熱複合パネルの底面には、断熱複合パネルの厚さ方向に延びるように配置された複数の細長い横桟を介して外装下地材を水平に付設し、横桟の間に、縦通気層と連通する水平通気層が形成される。
【0004】
この外壁構造では、水平に付設された外装下地材の後端と窓枠との隙間から空気が流入し、流入した空気は水平通気層を通って縦通気層に入り、上昇する。水平通気層の下面には、下面全面にわたって水切鉄板が配置されている。縦通気層に浸入した雨水は、水切鉄板で誘導され、水平の外装下地材の後端隙間から排出される。この外壁構造では、従来必要であった、額縁前面と断熱複合パネルとの隙間へのシーリング充填が不要となり、シーリングのメンテナンスコストも軽減される。
【0005】
図7の外壁構造には、以下の課題がある。外装下地材の内面並びに縦桟及び横桟は、縦通気層に浸入して下降する雨水の吸収を防止するために、防水用のプライマーの塗布が必要であり、煩雑で高コストである。また、水平通気層の下に配置される水切鉄板の裏側に雨水が回り込んだ場合には、水平の外装下地材が雨水によって損傷するおそれがある。
【0006】
さらに、断熱複合パネルは、縦桟を通気層の厚さを確保して断熱層に埋設し、ねじを用いて外装下地材を縦桟に取り付けることによって製作されるため、製作が複雑であり、高コストである。さらに、断熱層の屋内側下端には、複数の横桟の一端を取り付けるための受桟が配置であるが、受桟は、断熱層との密着強度が低く、重たいタイルなどの外装材が剥離して落下するおそれがある。さらに、シーリングは断熱複合パネル取り付け前に配置されるため、経年劣化に対応して修理する必要性が生じた場合には、断熱複合パネルの下端を壊す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4953482号公報
【特許文献2】特開2020-063633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、鉄筋コンクリート造の建築物の通気層を有する密着型外断熱に用いられる、窓開口部における通気機能を有する外壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、通気層を有する密着型外断熱に用いられる窓開口部の上部の外壁構造を提供する。外壁構造は、窓開口部の上部に位置するコンクリート外壁と、コンクリート外壁の屋外側の面に接する断熱層とを備える。さらに、外壁構造は、断熱層の屋外側の面に接する外装下地材と、外装下地材の屋外側の面に接する外装材とを備える。
【0010】
外装下地材は、複数の縦条溝と、断熱層の下端の位置より下方に突出する下突出部とを有する。断熱層の下面と外装下地材の下突出部の屋内側の面とで形成された空間には、断熱材片とその下面に配置された板状体とを有する下パネルが配置される。下パネルの断熱材片と板状体とは、複数の縦条溝を下降する雨水が接合面から浸入することを防止するように、密着して接合されていることが好ましい。下パネルの下には、複数の縦条溝と連通し、外気を複数の縦条溝に導入する通気路が設けられる。
【0011】
下パネルの下には、相互に隔てられた複数の通路を有する中空構造板が配置されることが好ましい。中空構造板の複数の通路の各々は、複数の縦条溝と連通して外気を複数の縦条溝に導入する通気路として機能する。
【0012】
外装下地材の下突出部の屋外側の面から中空構造板の下面にかけて、横断面形状が略L字形状の窓上化粧縁が配置されることが好ましい。この窓上化粧縁と下パネルとで挟まれることによって、下パネルの下に配置される中空構造板を、所定の位置に保持することができる。窓上化粧縁は、横断面視で略L字形状の一方の腕部(すなわち、中空構造体の下面に位置する部分)を板状体に固定し、他方の腕部(すなわち、外装下地材の屋外側の面に位置する部分)を下突出部の屋外側の面に固定することによって、所定の位置に取り付けることができる。他方の腕部と外装材との間に、シーリング材及びバッカーが配置されることが好ましい。
【0013】
下パネルの屋内側の面と断熱層の下面とで形成された空間には、モルタルが配置される。モルタルは、下パネル側の下端部に空間を有することが好ましく、この空間にはシーリング材が配置される。
【0014】
本発明の別の態様は、通気層を有する密着型外断熱に用いられる窓開口部の側部の外壁構造を提供する。外壁構造は、窓開口部の側部に位置するコンクリート外壁と、コンクリート外壁の屋外側の面に接する断熱層とを備える。さらに、外壁構造は、断熱層の屋外側の面に接する外装下地材と、外装下地材の屋外側の面に接する外装材とを備える。
【0015】
外装下地材は、複数の縦条溝と、断熱層の側端の位置より側方に突出する横突出部とを有する。断熱層の側面と外装下地材の横突出部の屋内側の面とで形成された空間には、断熱材片とその側面に配置された板状体とを有する横パネルが配置される。
【0016】
一実施形態では、横パネルの側面と外装下地材の横突出部の側端面とにわたって、外装材を配置することができる。別の実施形態では、外装下地材の横突出部の屋外側の面から横パネルの側面にかけて、横断面形状が略L字形状の窓横化粧縁を配置することもできる。窓横化粧縁は、横断面視で略L字形状の一方の腕部(すなわち、横パネルの板状体に沿って位置する部分)を板状体に固定し、他方の腕部(すなわち、外装下地材の屋外側の面に沿って位置する部分)を横突出部の屋外側の面に固定することによって、所定の位置に取り付けることができる。他方の腕部と外装材との間に、シーリング材及びバッカーが配置されることが好ましい。横パネルの屋内側の面と断熱層の側面とで形成された空間には、モルタルが配置される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易で低コストでの施工が可能であり、かつ、耐水性及び経年耐久性の高い、窓周辺部の構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による、窓開口部の周辺における外壁構造の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による、窓開口部を含まない部分の外壁構造の一部を示し、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
図3】本発明の一実施形態による、窓開口部の周辺の縦断面図である。
図4】本発明の一実施形態による、窓開口部の上部とそこに用いられる各部材を示し、(A)は窓開口部の上部の一部拡大縦断面図、(B)は下パネルの斜視図、(C)は中空構造板の斜視図、(D)は、窓上化粧縁の斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による、窓開口部の一方の側部の横断面図である。
図6】本発明の別の実施形態による、窓開口部の一方の側部とそこに用いられる各部材を示し、(A)は窓開口部の一方の側部の横断面図、(B)は窓横化粧縁の斜視図である。
図7】従来の外壁構造における窓開口部周辺の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(外壁構造の概要)
図1は、本発明の一実施形態による窓開口部Wの周辺における密着型外断熱の外壁構造G(以下、構造Gという)を示す断面斜視図である。図2は、窓開口部Wを含まない部分の構造Gの一部を示し、図2(A)は横断面図、図2(B)は縦断面図である。以下においては、外装材2の外面に沿って地面に平行な方向を幅方向、外装材2の外面に沿って幅方向と直交する方向を高さ方向、幅方向及び高さ方向と直交する方向を厚さ方向という。また、構造Gの厚さ方向にみて外装材2の方向を屋外側、その反対方向を室内側という。
【0020】
構造Gは、躯体3のコンクリート外壁31と、その屋外側に配置される断熱複合パネル1とを備える。断熱複合パネル1は、断熱層15と外装下地材11と外装材2とがこの順で配置されたパネルである。断熱複合パネル1は、断熱層15がコンクリート外壁31の屋外側の面に接するように配置される。
【0021】
構造Gには、窓が配置される窓開口部Wが設けられている。窓開口部Wの周囲には、外窓8を取り付けるための窓枠80が配置される。窓開口部Wの上方には、複数の断熱複合パネル101が並置され、窓開口部Wの下方には、複数の断熱複合パネル102が並置され、窓開口部Wの側方には、複数の断熱複合パネル103が並置される。複数の断熱複合パネル101、102、103は、互いに縦目地42を介して並置される。複数の断熱複合パネル101と複数の断熱複合パネル102とは、横目地41を介して高さ方向に並置され、複数の断熱複合パネル103もまた、横目地41を介して高さ方向に並置される。断熱複合パネル101、102、103は、以下においてまとめて断熱複合パネル1という。
【0022】
(断熱複合パネル)
構造Gにおいては、断熱複合パネル1として、例えば特許文献2に開示されるものと概ね同じ構成のものを用いることができる。以下、断熱複合パネル1を説明する。断熱複合パネル1は、断熱層15の屋外側の面に外装下地材11が接し、外装下地材11の屋外側の面に外装材2が接する構造を有する。断熱層15として、限定されるものではないが、例えば厚さ75mm、幅500mm、高さ2500mmのサイズの1つの断熱材を用いることができる。断熱材の材質は、限定されるものではないが、典型的には、発泡プラスチック断熱材(JIS A9511)が用いられる。
【0023】
外装下地材11は、高さ方向に延びる複数の縦条溝14を有しており、縦条溝14の間には厚肉部13が配置され、縦条溝14の厚さ方向には薄肉部12が配置される。すなわち、外装下地材11は、厚肉部13と、縦条溝14及び薄肉部12とが、幅方向に交互に並んだ構造を有する。複数の縦条溝14は、内部を空気流70が通る区画通気層7を構成する。外装下地材11は、限定されるものではないが、例えば厚さ26mm、幅490mm、高さ2480mmのサイズを有し、例えば深さ13mm、開口幅30mmの複数の縦条溝14を有する1つの押出成形セメント板として形成することができる。
【0024】
断熱複合パネル1は、厚肉部13が断熱層15に接するとともに複数の縦条溝14が断熱層15に面するように、外装下地材11と断熱層15とが層着されて一体化されている。1つの断熱複合パネル1においては、典型的には、断熱層15が、外装下地材11に対して上端では50mm突出し、下端では30mm入り込み、一方の側端では20mm突出し、他方の側端では10mm入り込むように、断熱層15と外装下地材11とが層着されている。したがって、複数の断熱複合パネル1は、1つのパネルの上端の突出部分と隣接するパネルの下端の入り込み部分とを組み合わせ、1つのパネルの側端の突出部分と隣接するパネルの側端の入り込み部分とを組み合わせることによって、高さ方向及び幅方向に必要な枚数を並置することができる。外装材2として、限定されるものではないが、典型的には外装用タイル、石材、塗装仕上げなどが用いられる。
【0025】
幅方向に隣接する外装下地材11及び外装材2の間には、縦目地42が設けられる。図2(A)に示されるように、縦目地42には、断熱層15の側から順にバッカー421、一次シーリング材420、及び二次シーリング材422が配置される。一次シーリング材420と二次シーリング材422とは、連続するように配置され、一次シーリング材420は外装下地材11の端面に接着し、二次シーリング材422は外装材2の端面に接着している。そのため、これらのシーリング材420、422が連係して、外装下地材11及び外装材2の熱変動による収縮に対する耐久性を維持することができる。隣接する外装下地材11の間隔は、隣接する外装材2の間隔より広く、一次シーリング材420の幅は、二次シーリング材422の幅より広いため、万が一、二次シーリング材422に亀裂が生じ、そこから漏水があったとしても、一次シーリング材420のバックアップ効果によって水が内部に浸入するおそれはきわめて低い。
【0026】
また、高さ方向に隣接する外装下地材11及び外装材2の間には、横目地41が設けられる。横目地41には、図2(B)に示されるように、高さ方向に隣接する外装下地材11の各々の縦条溝14が連通するように複数の通路を有する通気バッカー45が配置され、これにより、縦条溝14は、外装下地材11の下端から上端まで連通し、空気流70が通る区画通気層7となる。また、高さ方向に隣接する外装材2の間の横目地41にはシーリング材430が配置され、その裏側には、高さ方向に隣接する外装下地材11の間に、弾力性のあるバッカー431が配置される。このようにシーリング材430とバッカー431とを配置することによって、外装材2及び外装下地材11の熱変動による収縮に対する耐久性を維持することができる。
【0027】
(窓部及びその周辺部の構造)
次に、窓開口部Wの周辺における構造Gについて説明する。図3は、窓開口部Wの周辺を示す縦断面図である。図3においては、中間部分(窓開口部Wの一部)を省略して窓開口部Wの上部及び下部が示されている。また、図4は、図3に示される窓開口部Wの上部と、そこに用いられる特徴的な部材とを示す。図4(A)は窓開口部Wの上部の一部拡大縦断面図、図4(B)は下パネル17の斜視図、図4(C)は中空構造板93の斜視図、図4(D)は窓上化粧縁91Aの斜視図である。また、図5は、本発明の一実施形態による、窓開口部Wの一方の側部の横断面図である。図6は、本発明の別の実施形態による、窓開口部Wの一方の側部と、そこに用いられる特徴的な部材とを示し、図6(A)は窓開口部Wの一方の側部の横断面図、図6(B)は窓横化粧縁91Bの斜視図である。
【0028】
構造Gのコンクリート外壁31、断熱層15、外装下地材11及び外装材2を貫通する窓開口部Wには、内窓6及び外窓8が配置される。外窓8は、窓開口部Wに面して設けられた窓枠80を有する。内窓6は、窓枠80より室内側に設けられた付枠63を有する。
【0029】
窓枠80とコンクリート外壁31との間の空間には、モルタル801が充填され、付枠63とコンクリート外壁31との間の空間には、発泡ウレタン802が充填されている。この構造は、燃焼しづらいモルタル801が屋外側にあり、燃焼しやすい発泡ウレタン802が室内側にあるため、屋外又は室内での火災時に断熱層15に延焼する可能性を低減させることができる。窓枠80は、支持棒鋼803を介してコンクリート外壁31と連結されているが、支持棒鋼803がモルタル801に埋設されるため、支持棒鋼803の腐食を防止し、窓の耐久性を向上させることができる。
【0030】
窓開口部Wの上部側においては、コンクリート外壁31の屋外側の面に接するように、断熱複合パネル1が配置される。断熱複合パネル1の断熱層15の下面とコンクリート外壁31の下面とは面一となっており、モルタル801は、これらの下面に接するように、かつ、断熱層15の厚みの半分程度の位置まで、充填されている。
【0031】
図2に示されるとおり複数の縦条溝14を有する外装下地材11は、断熱層15の下端より下方に突出する下突出部111を有する。外装下地材11は、断熱層15の屋外側の面に接しており、断熱層15の下面と下突出部111の屋内側の面とによって空間が形成される。この空間の屋内側に、下突出部111の屋内側の面に接するように下パネル17が配置される。この空間のさらに屋内側には、上述のとおり断熱層15の厚みの半分程度の位置までモルタル801が充填されている。すなわち、断熱層15の下面と下突出部111の屋内側の面とによって形成される空間には、下突出部111の屋内側の面に接するように配置された下パネル17と、下パネル17の屋内側の面に接するように配置されたモルタル801とが存在する。
【0032】
下パネル17は、図4(B)に示されるとおり、断熱材片171とその下面に配置された板状体172とを有する。下パネル17は、下パネル17が上記空間に配置されたときに板状体172の下面が外装下地材11の下端面と面一になるように形成される。断熱材片171は、限定されるものではないが、例えば高さ方向の長さ26mm、厚さ方向の長さ40mmとすることができ、幅方向の長さは窓開口部Wの幅に対応する。板状体172は、例えば、同様に高さ方向の長さ14mm、厚さ方向の長さ40mmとすることができ、幅方向の長さは窓開口部Wの幅に対応する。すなわち、下パネル17は、例えば、高さ方向の長さ40mm、厚さ方向の長さ40mm(幅方向の長さは窓開口部Wの幅に対応する)とすることができ、厚さ方向の長さは、断熱層15の厚さより短い。
【0033】
断熱材片171は、断熱層15と同様に、発泡プラスチック断熱材(JIS A9511)を用いることができる。板状体172は、限定されるものではなく、例えば、発泡ポリスチレン樹脂や再生プラスチックで作製することができる。
【0034】
断熱材片171と板状体172とは、限定されるものではないが、変性シリコーン樹脂系弾性接着剤で密着するように接合されることが好ましい。また、断熱層15と下パネル17とは、限定されるものではないが、例えばシリコーン樹脂の接着剤などで密着するように接合されることが好ましい。このうに、断熱層15、断熱材片171及び板状体172が互いに密着して接合されることによって、縦条溝14を下降する雨水が接合面から浸入することを防止することができる。
【0035】
モルタル801の下パネル17側の下端部には空間が設けられ、この空間に、(必要に応じてシーリング受け81を配置した上で)、シーリング材430が、その下面が板状体172の下面と面一となるように配置される。したがって、シーリング材430は、屋外から隠ぺいされるため、劣化が少ない。
【0036】
外装下地材11の下端面と面一になるように配置された下パネル17の下には、中空構造板93が配置される。中空構造板93は、図4(C)に示されるように、上下2枚の側辺931の間に複数の仕切片932が配置された構造を有し、限定されるものではないが、雨水による腐食を防止するために樹脂で形成されることが好ましい。
【0037】
中空構造板93は、複数の仕切片932によって相互に隔てられた複数の通路933が構造Gの厚さ方向に延びるように配置される。中空構造板93の厚さ方向の長さは、下パネル17と同じ長さである。一例として、中空構造板93は、高さ方向の長さ12mm、厚さ方向の長さ40mm、幅方向の長さは窓開口部Wの幅に対応するものとすることができる。
【0038】
窓枠80は、中空構造板93の屋内側の端部との間に間隔を設けて取り付けられ、この間隔から空気が複数の通路933に入り、通路933の屋外側から出た空気が複数の縦条溝14に導入されるようになっている。すなわち、複数の通路933は、複数の縦条溝14と連通し、外気を複数の縦条溝14に導入する通気路として機能する。外気が、複数の通路933を通り、複数の縦条溝14から上昇することによって、屋内から浸透してきた湿気が上昇する空気流70によって除去されるとともに、板状体172及び外装下地材11が冷却され、これらの熱伸縮を低減させることができる。中空構造板93の屋内側の端部には、虫が通路933に浸入することを防止するために、防虫網934を設けることが好ましい。
【0039】
図4(A)に示されるように、外装下地材11の下突出部111の屋外側の面から中空構造板93の下面にかけて、長さ方向を横切る横断面形状が略L字形状の窓上化粧縁91Aが配置される。窓上化粧縁91Aは、図4(D)に示されるように、中空構造板93の下面に当接する水平辺911A(窓上化粧縁91Aの長さ方向を横切る横断面視で略L字形状の一方の腕部に相当する)と、水平辺911Aの屋外側の縁部から水平辺911Aと直角をなすように延びる立上辺912A(同様に、略L字形状の他方の腕部に相当する)とを有する。立上辺912Aの上縁からは、上片913Aが水平に突出し、下縁からは突出片914Aが下方に突出する。窓上化粧縁91Aは、限定されるものではないが、雨水による腐食を防止することができるようにアルミニウムで形成されることが好ましい。
【0040】
立上辺912A(同様に、略L字形状の他方の腕部)は、下突出部111の屋外側の面に固定される。具体的には、窓上化粧縁91Aは、上片913Aが、外装下地材11の屋外側の面に固定された受材92Aにねじ(図示せず)などで取り付けられる。一方、水平辺911A(同様に、略L字形状の一方の腕部)は、板状体172に固定される。具体的には、中空構造板93の下面に当接する水平辺911Aは、ねじ穴916Aに挿通され下パネル17の板状体172に達するねじ(図示せず)によって、板状体172に固定される。中空構造板93は、このように取り付けられた窓上化粧縁91Aの水平辺911Aと下パネル17とによって挟まれることによって、所定の位置に保持される。
【0041】
窓上化粧縁91Aがこのように取り付けられていることによって、外装下地材11の下突出部111の下端面と窓上化粧縁91Aの水平辺911Aとの間に間隔が設けられ、この間隔が、中空構造板93の複数の通路933と外装下地材11の複数の縦条溝14との間の連通路として機能する。また、窓上化粧縁91Aが複数の縦条溝14を下降する雨水を広く受け止めて、中空構造板93の通路933を介して、窓枠80と中空構造板93の屋内側の端部との間から排出することができる。
【0042】
窓上化粧縁91Aの上片913Aと外装材2の下端面との間には、間隔44Cが設けられ、間隔44Cには、バッカー441及びシーリング材440が充填される。この構造により、外装材2及び窓上化粧縁91Aの熱による伸縮に対応可能である。また、窓上化粧縁91Aの突出片914Aは、雨水の廻り込みを防ぐ機能を有しており、これにより、水平辺911Aの底面の雨汚れを防止するとともに、窓枠80にかかる雨量を減らして屋内側への漏水を抑制することができる。
【0043】
窓開口部Wの下部側においても、上部側と同様に、コンクリート外壁31の屋外側の面に接するように、断熱複合パネル1が配置される。断熱複合パネル1の上端おいては、断熱層15と外装下地材11との上端面とが面一となっており、その上に水切板82が配置される。複数の縦条溝14の内部を上昇してきた空気流70は、複数の空気孔83を介して外部に排出される。水切板82と断熱複合パネル1の上端面との間、水切板82と窓枠80との間には、バッカー441、シーリング材440が適宜配置される。
【0044】
図5に示されるとおり、外装下地材11は、断熱層15の側端より側方に突出する横突出部112を有する。外装下地材11は、断熱層15の屋外側の面に接しており、断熱層15の側面と横突出部112の屋内側の面とによって空間が形成される。この空間の屋内側に、横突出部112の屋内側の面に接するように横パネル18が配置される。この空間のさらに屋内側には、断熱層15の厚みの半分程度の位置までモルタル801が充填されている。すなわち、断熱層15の側面と横突出部112の屋内側の面とによって形成される空間には、横突出部112の屋内側の面に接するように配置された横パネル18と、横パネル18の屋内側の面に接するように配置されたモルタル801とが存在する。
【0045】
横パネル18は、下パネル17と同様に、断熱材片181とその側面に配置された板状体182とを有する。横パネル18は、横パネル18が上記空間に配置されたときに板状体182の側面(窓開口部W側の面)が外装下地材11の側端面と面一になるように形成される。断熱材片181は、限定されるものではないが、例えば厚さ方向の長さ40mm、幅方向の長さ26mmとすることができ、高さ方向の長さは窓開口部Wの高さに対応する。板状体182は、例えば、同様に厚さ方向の長さ40mm、幅方向の長さ14mmとすることができ、高さ方向の長さは窓開口部Wの高さに対応する。すなわち、横パネル18は、例えば、厚さ方向の長さ40mm、幅方向の長さ40mm(高さ方向の長さは窓開口部Wの幅に対応する)とすることができ、厚さ方向の長さは、断熱層15の厚さより短い。
【0046】
断熱材片181及び板状体182は、下パネル17と同じ材料で形成することができる。また、断熱材片181と板状体182との接合、断熱層15と横パネル18との接合は、下パネル17に関して説明した接合方法と同じである。
【0047】
板状体182の側面と外装下地材11の側端面とは、上述のとおり面一になるように形成されており、これらの両面にわたって、外装材2が配置されることが好ましい。また、外装材2と窓枠80との間には、(必要に応じてシーリング受け81を配置した上で)、外装材2の側面と面一となるようにシーリング材430が配置される。
【0048】
図6に示されるように、図5において横パネル18の窓開口部W側に配置されて外装材2に代えて、外装下地材11の横突出部112の屋外側の面から横突出部112の側面にかけて、長さ方向を横切る横断面形状が略L字形状の窓横化粧縁91Bが配置されてもよい。窓横化粧縁91Bは、図6(B)に示されるように、横パネル18の板状体182に沿って位置する窓側辺911B(窓横化粧縁91Bの長さ方向を横切る横断面視で略L字形状の一方の腕部に相当する)と、窓側辺911Bの屋外側の縁部から窓側辺911Bと直角をなすように延びる屋外側辺912B(同様に、略L字形状の他方の腕部に相当する)とを有する。屋外側辺912Bの縁部からは、屋外側片913Bが外装下地材11の方向に突出し、窓側辺911Bの縁部からは窓側片915Bが板状体182の方向に突出する。窓横化粧縁91Bは、限定されるものではないが、雨水による腐食を防止することができるようにアルミニウムで形成されることが好ましい。
【0049】
屋外側辺912B(同様に、略L字形状の他方の腕部)は、横突出部112の屋外側の面に固定される。具体的には、窓横化粧縁91Bは、屋外側片913Bが、外装下地材11の屋外側の面に固定された受材92Bにねじ(図示せず)などで取り付けられる。一方、窓側辺911B(同様に、略L字形状の他方の腕部)は、板状体182に固定される。具体的には、窓側辺911Bは、ねじ穴916Bに挿通されたねじ(図示せず)によって、板状体182に固定される。
【0050】
窓横化粧縁91Bの屋外側片913Bと外装材2の側端面との間には、間隔44Cが設けられ、間隔44Cには、バッカー441及びシーリング材440が充填される。この構造により、外装材2及び窓横化粧縁91Bの熱により伸縮に対応可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、101、102、103 断熱複合パネル
11 外装下地材
111 下突出部
112 横突出部
12 薄肉部
13 厚肉部
14 縦条溝
15 断熱層
16 切り欠き部
17 下パネル
171 断熱材片
172 板状体
18 横パネル
181 断熱材片
182 板状体
2 外装材
3 躯体
31 コンクリート外壁
32 床スラブ
4 防水
41 横目地
42 縦目地
43、44A、44B、44C 充填部
420、422、430、440 シーリング材
411、421、431、441 バッカー
45 通気バッカー
5 内装
51 内装材
52 樹脂モルタル
53 四周板
6 内窓
61 窓枠
62 面板
63 付枠
7 区画通気層
70 上昇空気流
8 外窓
80 窓枠
801 モルタル
802 発泡ウレタン
803 支持棒鋼
804 支持棒鋼受け
81 シーリング受
82 水切板
83 空気孔
9 化粧材
91A 窓上化粧縁
911A 水平辺
912A 立上辺
913A 上片
914A 突出片
916A ねじ孔
91B 窓横化粧縁
911B 窓側辺
912B 屋外側辺
913B 屋外側片
915B 窓側片
916B ねじ孔
92A、92B 受材
93 中空構造板
931 側辺
932 仕切片
933 通路
934 防虫網
G 外壁構造
W 窓開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7