(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098372
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】バイフューエル車両
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20240716BHJP
F02D 19/06 20060101ALI20240716BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
F02D19/06 B
F02D19/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001842
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢元 統裕
【テーマコード(参考)】
3G092
3G093
【Fターム(参考)】
3G092AB02
3G092AB08
3G092AB12
3G092BB10
3G092BB20
3G092CA01
3G092EA14
3G092FA14
3G092GA01
3G092GA10
3G092HF02Z
3G092HF08Z
3G092HF21Z
3G092HF23Z
3G092HF26Z
3G093AA01
3G093BA22
3G093BA32
3G093BA33
3G093CA02
3G093DA06
3G093DB05
3G093DB15
3G093DB19
3G093EA05
3G093EA12
(57)【要約】
【課題】内燃機関の自動停止の実施と燃料切替の実施とを適切なタイミングで行うことができ、気筒間で燃料の種別が異なることによる内燃機関の異音や振動を抑制できるバイフューエル車両を提供すること。
【解決手段】ECUは、燃料切替を実施中か否かを判別し(ステップS2)、燃料切替を実施中であると判別した場合、自動停止を禁止する(ステップS3)。次いで、ECUは、燃料の切替完了から所定時間が経過したか否かを判別する(ステップS4)。ECUは、燃料の切替完了から所定時間が経過している場合(ステップS4でYes)、自動停止の禁止を解除する(ステップS5)。これにより、ECUは、燃料切替の途中でアイドリングストップによる内燃機関の自動停止が実行されることを防止する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに種別の異なる燃料を切替えて使用する内燃機関と、
所定の自動停止条件が成立した場合に燃料噴射の停止により前記内燃機関を自動停止させ、前記内燃機関の自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に前記内燃機関を再始動させる制御部と、を備えるバイフューエル車両であって、
前記制御部は、燃料切替が開始されてから前記内燃機関の全気筒において前記燃料切替が完了するまでの期間は前記内燃機関の自動停止を禁止することを特徴とするバイフューエル車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記内燃機関の自動停止のための燃料噴射の停止の直後は前記燃料切替を禁止することを特徴とする請求項1に記載のバイフューエル車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記内燃機関の自動停止のための燃料噴射の停止を開始してから所定時間の経過後に前記燃料切替の禁止を解除することを特徴とする請求項2に記載のバイフューエル車両。
【請求項4】
前記燃料は、互いに種別の異なる第1燃料と第2燃料であり、
前記第1燃料の使用時の前記内燃機関の再始動性は、前記第2燃料の使用時の前記内燃機関の再始動性より劣り、
前記制御部は、前記第2燃料から前記第1燃料への前記燃料切替の開始から完了までの期間は前記内燃機関の自動停止を禁止することを特徴とする請求項1に記載のバイフューエル車両。
【請求項5】
前記第1燃料は圧縮天然ガスであり、前記第2燃料はガソリンであることを特徴とする請求項4に記載のバイフューエル車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイフューエル車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させ、所定の再始動条件が成立したとき自動停止したエンジンを再始動させるアイドルストップ制御部を備えるアイドルストップ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、自動車等の車両においては、2種類の異なる燃料を切替えて使用するエンジンを搭載するバイフューエル車両がある。バイフューエル車両は、CNG(Compressed Natural Gas:圧縮天然ガス)やガソリン等の種別の異なる燃料を切替えて使用可能な内燃機関を搭載している。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のアイドルストップをバイフューエル車両において実施する場合、燃料切替の開始から完了までの期間は、気筒間で種別の異なる燃料が混在する状態となる。このため、燃料切替の途中でアイドリングストップ機能による内燃機関の自動停止または再始動が行われた場合、自動停止または再始動の際に内燃機関に異音や振動が発生するおそれがあった。
【0006】
例えば、ガソリンからCNGへの燃料切替を行う際に、燃料切替が完了するまでは、一部の気筒はCNGに切替わっているが他の気筒にはガソリンが供給されている状態が発生する。この状態で内燃機関が自動停止または再始動を行う場合、始動性の異なる燃料が気筒間で混在した状態でエンジンが自動停止または再始動することになるため、内燃機関に異音や振動が発生するおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、内燃機関の自動停止の実施と燃料切替の実施とを適切なタイミングで行うことができ、気筒間で燃料の種別が異なることによる内燃機関の異音や振動を抑制できるバイフューエル車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、互いに種別の異なる燃料を切替えて使用する内燃機関と、所定の自動停止条件が成立した場合に燃料噴射の停止により前記内燃機関を自動停止させ、前記内燃機関の自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に前記内燃機関を再始動させる制御部と、を備えるバイフューエル車両であって、前記制御部は、燃料切替が開始されてから前記内燃機関の全気筒において前記燃料切替が完了するまでの期間は前記内燃機関の自動停止を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、内燃機関の自動停止の実施と燃料切替の実施とを適切なタイミングで行うことができ、気筒間で燃料の種別が異なることによる内燃機関の異音や振動を抑制できるバイフューエル車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るバイフューエル車両の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るバイフューエル車両の燃料噴射装置の構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るバイフューエル車両のECUの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係るバイフューエル車両は、互いに種別の異なる燃料を切替えて使用する内燃機関と、所定の自動停止条件が成立した場合に燃料噴射の停止により内燃機関を自動停止させ、内燃機関の自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に内燃機関を再始動させる制御部と、を備えるバイフューエル車両であって、制御部は、燃料切替が開始されてから内燃機関の全気筒において燃料切替が完了するまでの期間は内燃機関の自動停止を禁止することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るバイフューエル車両は、内燃機関の自動停止の実施と燃料切替の実施とを適切なタイミングで行うことができ、気筒間で燃料の種別が異なることによる内燃機関の異音や振動を抑制できる。
【実施例0012】
以下、本発明の一実施例に係るバイフューエル車両について図面を用いて説明する。
図1、
図2、
図3は、本発明の一実施例に係るバイフューエル車両を説明する図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施例に係るバイフューエル車両1は、駆動源としての内燃機関2(図中、エンジンと記す)と、この内燃機関2から動力が伝達される変速機4と、変速機4から動力が伝達される駆動輪5と、を備えている。内燃機関2と変速機4との間にはクラッチ3が設けられている。
【0014】
また、バイフューエル車両1は、アクセルペダルセンサ12Aと、ブレーキペダルセンサ13Aと、内燃機関2等を制御する制御部としてのECU(Electronic Control Unit)11と、を含んで構成されている。
【0015】
内燃機関2は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うとともに、圧縮行程及び膨張行程の間に点火を行いバイフューエル車両1の駆動力を発生させる4サイクルのエンジンによって構成されている。バイフューエル車両1は、ISG(Integrated Starter Generator)6を備えている。ISG6は、内燃機関2を始動する始動装置(スタータ)と発電機(オルタネータ)を1つに統合したものである。
【0016】
ISG6は、図示しないバッテリから供給された電力により駆動し、内燃機関2のクランク軸2Aを回転させる(クランキングする)ことで内燃機関2を始動する。また、ISG6は、内燃機関2の動力またはバイフューエル車両1の減速時のエネルギーにより発電する。
【0017】
変速機4は、例えば、手動変速機に一般的に用いられる平行軸歯車式の変速機構として構成されている。クラッチ3は、乾式単板の摩擦クラッチとして構成されており、内燃機関2のクランク軸2Aに連結されたフライホイール3Aと、変速機4に連結されたクラッチディスク3Bとを有している。
【0018】
クラッチ3は、フライホイール3Aに対してクラッチディスク3Bが係合(接続)状態に切替えられた場合に内燃機関2と変速機4との間で動力を伝達し、開放(切断)状態に切替えられた場合に内燃機関2と変速機4との間の動力伝達を遮断する。なお、変速機4は、クラッチ3の代わりにトルクコンバータを備える遊星歯車式または無段変速式の自動変速機であってもよい。
【0019】
このように構成されたバイフューエル車両1において、内燃機関2から出力された回転は、変速機4で成立している変速段に応じた変速比で変速され、図示しないディファレンシャル装置およびドライブシャフトを介して駆動輪5に伝達される。
【0020】
アクセルペダルセンサ12Aは、アクセルペダル12に設けられており、アクセルペダル12の操作量を検出する。ブレーキペダルセンサ13Aは、ブレーキペダル13に設けられており、ブレーキペダル13の操作量を検出する。ここで、各ペダルの操作量とは、ドライバによる踏み込み量であり、踏み込み量が大きいほど操作量が大きくなる。なお、ブレーキペダルセンサ13Aは、ブレーキペダル13の踏み込み量に代わって、ブレーキペダル13に連結されたマスタシリンダの油圧(マスタシリンダ圧力)を検出するようになっていてもよい。
【0021】
内燃機関2は、互いに種別の異なる第1燃料と第2燃料とを切替えて使用可能なバイフューエル型の内燃機関である。第1燃料は、気体燃料のCNG(Compressed Natural Gas:圧縮天然ガス)である。第2燃料は、液体燃料のガソリンである。なお、内燃機関2は、CNGおよびガソリンに限らず、燃料特性の異なる複数種類の燃料を切替えて使用可能に構成されていてもよい。
【0022】
バイフューエル車両1は、第1燃料を貯留する第1燃料貯留部8と、第2燃料を貯留する第2燃料貯留部9とを備えている。CNGである第1燃料は、気体燃料用の図示しないインジェクタによって吸気経路に噴射される。ガソリンである第2燃料は液体燃料用の図示しないインジェクタによって吸気経路または燃焼室に噴射される。
【0023】
バイフューエル車両1は、内燃機関2に供給する燃料を第1燃料または第2燃料に切替える燃料切替装置7と、ドライバが使用燃料の選択操作を行う使用燃料選択スイッチ18とを備えている。燃料切替装置7は、使用燃料選択スイッチ18によるドライバの選択操作またはECU11の指令に応じて燃料切替を行う。言い換えれば、燃料切替装置7は、ドライバによる手動操作またはECU11による自動制御によって燃料切替を行う。
【0024】
バイフューエル車両1は、ドライバが内燃機関2の始動操作を行う始動スイッチ19を備えている。始動スイッチ19は、キーの回転操作により内燃機関2の始動操作を行うイグニッションキーや、押し込み操作により内燃機関2の始動操作を行うスタートボタンからなる。
【0025】
バイフューエル車両1は、アイドルストップ用センサ30を備えている。アイドルストップ用センサ30は、車速を検出する図示しない車速センサ、加速度を検出する図示しないGセンサ、バッテリ電圧を検出する図示しないバッテリ電圧センサ等からなる。アイドルストップ用センサ30の検出信号は、アイドルストップ機能としての内燃機関2の自動停止および再始動の可否の判断に用いられる。
【0026】
バイフューエル車両1は、報知部31を備えている。報知部31は、運転席に設けられており、メータ、ディスプレイ、音声案内装置等からなり、警告等の情報を視覚的、聴覚的にドライバに報知する。
【0027】
図2において、内燃機関2には、4つの円筒状の気筒20が形成されており、これらの気筒20は直列に配置されている。各気筒20には、図示しないピストンが往復に移動できるように収納されている。内燃機関2は、ピストンが気筒20を2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う4サイクルのエンジンによって構成されている。この内燃機関2は、圧縮行程と膨張行程の間に点火を行う。
【0028】
本実施形態において、内燃機関2は、直列4気筒のエンジンによって構成されているものとするが、本発明においては、直列3気筒エンジン等の種々の型式のエンジンによって構成されていてもよい。
【0029】
以下の説明において、4つの気筒20に対して内燃機関2の一端側から#1、#2、#3、#4の符号を付し、各気筒20を「気筒#1」、「気筒#2」、「気筒#3」または「気筒#4」ともいう。
【0030】
内燃機関2は、気筒#1、#2、#3、#4で燃料と空気との混合気を燃焼させることによりピストンを往復に移動させ、クランク軸2A(
図1参照)を回転させることにより、エンジントルクを発生するようになっている。
【0031】
本実施形態の内燃機関2は、気筒#1、気筒#3、気筒#4、気筒#2の順での各行程が行われるようになっているため、気筒#1と気筒#3、気筒#3と気筒#4、気筒#4と気筒#2、および気筒#2と気筒#1は、クランク角度で180°離れている。このため、気筒#1と気筒#4はクランク角度で360°離れており、気筒#2と気筒#3はクランク角度で360°離れている。
【0032】
内燃機関2には、吸気管21と、この吸気管21から分岐する4つの吸気マニホールド23とが設けられている。吸気マニホールド23は、各気筒#1、#2、#3、#4と連通している。吸気マニホールド23には、吸気の脈動および干渉を抑える所定容積のサージタンク22と、内燃機関2の吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ21Aとが設けられている。
【0033】
各気筒#1、#2、#3、#4の吸気マニホールド23には、液体燃料インジェクタ25と、気体燃料インジェクタ24とが設けられている。
【0034】
液体燃料インジェクタ25は、吸気マニホールド23を介して気筒#1、#2、#3、#4に向けて液体燃料を噴射するようになっている。液体燃料インジェクタ25は、ECU11によって制御される図示しないソレノイドコイルおよびニードルバルブを有している。各液体燃料インジェクタ25には、第2燃料としてのガソリンが所定の圧力で供給される。
【0035】
気体燃料インジェクタ24は、吸気マニホールド23を介して気筒#1、#2、#3、#4に向けて気体燃料を噴射するようになっている。気体燃料インジェクタ24は、ECU11によって制御されるソレノイドコイルおよびニードルバルブを有している。各液体燃料インジェクタ25には、第1燃料としてのCNGが所定の圧力で供給される。
【0036】
液体燃料インジェクタ25および気体燃料インジェクタ24は、ECU11によってソレノイドコイルが通電されると気体燃料を噴射するようになっている。
【0037】
気体燃料インジェクタ24は、液体燃料インジェクタ25よりも吸気マニホールド23における上流側に配置されている。このため、第1燃料用の気体燃料インジェクタ24から燃焼室までの経路が第2燃料用の液体燃料インジェクタ25から燃焼室までの経路よりも長い。
【0038】
内燃機関2には、排気ガスを車外に排出する排気管27と、この排気管27に集合する4つの排気マニホールド26とが設けられている。排気マニホールド26は、排気管27と各気筒#1、#2、#3、#4とを連通している。
【0039】
排気管27には、触媒装置27Aが設けられている。触媒装置27Aは、一般に、排気ガスに含まれる未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)といった有害物質を除去することができる三元触媒を備えている。この三元触媒は、好ましくはNOx含有率の高い排気ガスからでも、NOxを除去する機能を有するものが用いられる。
【0040】
図1において、ECU11は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されており、制御対象を電気的に制御する。
【0041】
ECU11のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU11として機能させるためのプログラムが記憶されている。ECU11において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、ECU11として機能する。
【0042】
ECU11の入力ポートには、内燃機関2と、アクセルペダルセンサ12A、ブレーキペダルセンサ13A、アイドルストップ用センサ30等の各種センサ類と、使用燃料選択スイッチ18と、始動スイッチ19とが電気的に接続されている。
【0043】
ECU11の出力ポートには、内燃機関2と、ISG6と、燃料切替装置7等の制御対象が接続されている。ECU11は、入力ポートに入力されたセンサ類等からの検出信号に基づいて、出力ポートに接続された制御対象を制御する。
【0044】
本実施例では、ECU11は、所定の自動停止条件が成立した場合に燃料噴射の停止により内燃機関2を自動停止させる。また、ECU11は、内燃機関2の自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に内燃機関2を再始動させる。このように、ECU11は、内燃機関2を自動停止および再始動させる、いわゆるアイドルストップ制御を実施する。
【0045】
ECU11は、使用燃料選択スイッチ18における燃料切替の操作、または車両状態に応じて、燃料切替装置7に指令を送って燃料切替を行う。ECU11は、例えば、一の燃料から別な燃料への燃料切替時には、燃料切替の開始時に内燃機関2において燃料噴射を行っている気筒の次の気筒から全気筒を一巡する間に、全気筒に対して切替後燃料の通常運転時の標準噴射量に加えて切替補正量を噴射するようになっている。
【0046】
CNGである第1燃料は、ガソリンである第2燃料と比較してエミッションを低減できるという特性を有する。そのため、エミッションを低減するためには、内燃機関2の使用燃料として第1燃料を使用することが好ましい。
【0047】
一方、CNGである第1燃料は、ガソリンである第2燃料と比較して発火点が高いという特性も有する。このため、第1燃料は、第2燃料よりも高い温度でないと発火(燃焼開始)できず、第2燃料を用いる場合よりも内燃機関2の始動性が相対的に劣る。したがって、第1燃料を用いて内燃機関2を始動する場合、ISG6による内燃機関2のクランキングを長時間行う必要がある。
【0048】
また、CNGである第1燃料とガソリンである第2燃料とを切替えて使用する内燃機関2にあっては、第1燃料用の気体燃料インジェクタ24から燃焼室までの経路が第2燃料用の液体燃料インジェクタ25から燃焼室までの経路よりも長いため、第1燃料の使用時の内燃機関2の始動に要する時間(始動時間)は、第2燃料の使用時の始動時間より長いという特性がある。
【0049】
このように、第1燃料と第2燃料とでは、燃料特性および燃料供給構造等が異なる。その結果、第1燃料の使用時の内燃機関2の再始動性は、第2燃料の使用時の内燃機関2の再始動性より劣る。ここで、再始動性とは、内燃機関2の再始動のし易さであり、例えば、内燃機関2がクランキングを開始してから自立回転をするまでの経過時間や、内燃機関2のクランキングの開始後のエンジン回転速度またはエンジントルクの上昇度合等により定量化することができる。
【0050】
ここで、燃料切替は、吸気経路に残存する燃料切替前の燃料が、内燃機関2の全気筒において吸気行程、圧縮行程、燃焼行程(膨張行程)および排気行程を経て内燃機関2から排出されるまで完了しない。このため、燃料切替の直後に内燃機関2においてアイドリングストップ機能による自動停止により燃料供給が停止された場合、燃料切替が完了せずに種別の異なる燃料が気筒間で混在した状態で内燃機関2が停止することになる。また、アイドリングストップ機能による自動停止の直後に燃料切替が行われた場合も、燃料切替が完了せずに種別の異なる燃料が気筒間で混在した状態で内燃機関2が停止することになる。種別の異なる燃料が気筒間で混在した状態とは、例えば、第2燃料から第1燃料への燃料切替が行われる場合において、気筒#1および気筒#3は燃料切替が完了して第1燃料が供給されているが、気筒#4および気筒#2は燃料切替が未完了であり第2燃料が供給されている状態である。種別の異なる燃料が気筒間で混在した状態で内燃機関2が自動停止する場合、内燃機関2の自動停止または再始動の際に、内燃機関2に異音や振動が発生することがある。言い換えると、燃料切替と内燃機関2の自動停止とが同時に実行された場合、内燃機関2に異音や振動が発生することがある。燃料切替と内燃機関2の自動停止とが同時に実行される状況には、燃料切替の開始後に内燃機関2の自動停止が開始される状況と、内燃機関2の自動停止の開始後に燃料切替が開始される状況とがある。
【0051】
そこで、本実施例では、ECU11は、燃料切替が開始されてから内燃機関2の全気筒において燃料切替が完了するまでの期間は内燃機関2の自動停止を禁止する。
【0052】
また、ECU11は、内燃機関2の自動停止のための燃料噴射の停止の直後は燃料切替を禁止する。そして、ECU11は、内燃機関2の自動停止のための燃料噴射の停止を開始してから所定時間の経過後に燃料切替の禁止を解除する。また、ECU11は、第2燃料から第1燃料への燃料切替の開始から完了までの期間は内燃機関2の自動停止を禁止する。
【0053】
なお、燃料切替のタイミングが推測制御等により予め判明している場合は、燃料切替の実施前からアイドルストップのための燃料噴射の停止を禁止してもよい。
【0054】
一方、アイドルストップための燃料噴射の停止のタイミングが推測制御等により予め判明している場合は、燃料噴射の停止の実施前から燃料切替を禁止してもよい。燃料噴射の停止の実施前から燃料切替を禁止する場合、例えば、4つの気筒20のうち、2つの気筒20だけ燃料切替が完了している場合はアイドルストップための燃料噴射の停止を禁止し(アイドルストップをしないように燃料噴射を継続し)、3つの気筒20まで燃料切替が完了している場合はアイドルストップのための燃料噴射の停止を許可することが好ましい。これにより、燃料切替が禁止される時間を最低限に抑えることができる。
【0055】
また、アイドルストップのための燃料噴射の停止のタイミングと燃料切替のタイミングとが同時に成立した場合は、燃料噴射の停止を優先することが好ましい。また、現在の各燃料の残量によって、アイドルストップと燃料切替との優先度を変更することが好ましい。また、ドライバによる使用燃料選択スイッチ18の操作により燃料切替が手動で実施される場合、ドライバによる使用燃料選択スイッチ18の操作(燃料切替の意思)を優先し、アイドルストップのための燃料噴射の停止を禁止した上で燃料切替を行うようにしてもよい。
【0056】
次に、
図3に示すフローチャートを参照して、本実施例に係るバイフューエル車両1のECU11の動作の流れについて説明する。
図3のフローチャートは所定間隔で繰り返し実行される。
【0057】
図3において、ECU11は、燃料噴射の停止を実施中か否かを判別する(ステップS1)。この燃料噴射の停止は、アイドリングストップによる内燃機関2の自動停止のための燃料噴射の停止をいう。
【0058】
ECU11は、ステップS1で燃料噴射の停止を実施中ではない場合、燃料切替を実施中か否かを判別する(ステップS2)。
【0059】
ECU11は、ステップS2で燃料切替を実施中ではないと判別した場合、今回の動作を終了し、燃料切替を実施中であると判別した場合、自動停止を禁止する(ステップS3)。
【0060】
次いで、ECU11は、燃料の切替完了から所定時間が経過したか否かを判別する(ステップS4)。
【0061】
ECU11は、燃料の切替完了から所定時間が経過していない場合(ステップS4でNo)、ステップS3に戻る。この場合、自動停止の禁止が継続される。これにより、燃料噴射の停止直後において燃料切替が未完了の状態で内燃機関2の自動停止が行われることが防止される。
【0062】
ECU11は、燃料の切替完了から所定時間が経過している場合(ステップS4でYes)、自動停止の禁止を解除し(ステップS5)、今回の動作を終了する。ステップS4における所定時間は、各気筒において吸気経路に燃料切替前の燃料が残存する時間を考慮して、全気筒において燃料切替前の燃料が残存しなくなる時間を考慮して決定されることが好ましい。なお、ステップS4における所定時間を0秒に設定してもよく、この場合は燃料の切替完了後に直ちに自動停止の禁止が解除される。
【0063】
このように、ステップS2からステップS5の処理が実行されることで、燃料切替の途中でアイドリングストップによる内燃機関2の自動停止が実行されることが防止される。
【0064】
一方、ECU11は、ステップS1で燃料噴射の停止を実施中である場合、燃料切替を禁止する(ステップS6)。
【0065】
次いで、ECU11は、燃料の切替要求が有るか否かを判別する(ステップS7)。
【0066】
ECU11は、燃料の切替要求が有る場合(ステップS7でYes)、切替ができない理由を報知部31によってドライバに報知する(ステップS8)。
【0067】
次いで、ECU11は、燃料噴射の停止を開始してから所定時間が経過したか否かを判別する(ステップS9)。ステップS9における所定時間は、ステップS4における所定時間とは異なる時間である。ステップS9における所定時間は、例えば、燃料噴射の停止を開始してから内燃機関2の全気筒において燃料噴射の停止が完了するまでの時間、または内燃機関2の回転数が所定回転数以下になるまでの時間に設定される。なお、ドライバによる使用燃料選択スイッチ18の操作に基づいて燃料切替が行われる場合、ステップS9における所定時間が長すぎると、ドライバの意思に反して燃料切替が禁止される時間が長すぎてしまうことでドライバが応答性に不満を持ち、ドライバビリティが損なわれる。そこで、ステップS9における所定時間は、ドライバの燃料切替の意思を優先し、ドライバビリティが損なわれないことを考慮して設定されることが好ましい。
【0068】
ECU11は、燃料噴射の停止を開始してから所定時間が経過していない場合(ステップS9でNo)、ステップS6に戻り、燃料噴射の停止を開始してから所定時間が経過している場合(ステップS9でYes)、燃料切替えの禁止を解除する(ステップS10)。
【0069】
ECU11は、燃料の切替要求がない場合(ステップS7でNo)、ステップS9の処理に進む。
【0070】
ECU11は、ステップS10の後、報知を停止し(ステップS11)、今回の動作を終了する。
【0071】
以上のように、本実施例のバイフューエル車両1において、ECU11は、燃料切替が開始されてから内燃機関2の全気筒において燃料切替が完了するまでの期間は内燃機関2の自動停止を禁止する。
【0072】
これにより、燃料切替が完了するまでの過渡状態において内燃機関2の自動停止が実行されることを防止でき、燃料切替と内燃機関2の自動停止とが同時に実施されることを回避できる。このため、全気筒の燃料切替が完了する前における気筒間で燃料の種別が異なる状態で内燃機関2の自動停止が実施されることを防止できる。この結果、内燃機関2の自動停止の実施と燃料切替の実施とを適切なタイミングで行うことができ、気筒間で燃料の種別が異なることによる内燃機関2の異音や振動を抑制できる。
【0073】
また、本実施例のバイフューエル車両1において、ECU11は、内燃機関2の自動停止のための燃料噴射の停止の直後は燃料切替を禁止する。
【0074】
これにより、内燃機関2の自動停止が完了するまでの過渡状態において燃料切替が実行されることを防止でき、燃料切替と内燃機関2の自動停止とが同時に実施されることを回避できる。このため、燃料噴射の停止により内燃機関2が自動停止する際に、気筒間で燃料の種別が異なる状態となることを回避できる。この結果、内燃機関2の自動停止の実施と燃料切替の実施とを適切なタイミングで行うことができ、気筒間で燃料の種別が異なることによる内燃機関2の異音や振動を抑制できる。
【0075】
また、本実施例のバイフューエル車両1において、ECU11は、内燃機関2の自動停止のための燃料噴射の停止を開始してから所定時間の経過後に燃料切替の禁止を解除する。
【0076】
これにより、燃料噴射の停止を開始してから所定時間が経過し、全気筒において燃料噴射の停止が完了した状態となってから燃料切替が実施される。このため、燃料切替が完了した状態で内燃機関2の再始動を開始することができ、内燃機関2の再始動を円滑かつ速やかに完了することができる。
【0077】
また、本実施例のバイフューエル車両1において、燃料は、互いに種別の異なる第1燃料と第2燃料であり、第1燃料の使用時の内燃機関2の再始動性は、第2燃料の使用時の内燃機関2の再始動性より劣る。そして、ECU11は、第2燃料から第1燃料への燃料切替の開始から完了までの期間は内燃機関2の自動停止を禁止する。
【0078】
これにより、第2燃料から内燃機関2の再始動性に劣る第1燃料への燃料切替を実施する際に、気筒間で燃料の種別が異なる状態で内燃機関2が自動停止されることを回避できる。
【0079】
また、本実施例のバイフューエル車両1において、第1燃料は圧縮天然ガス(CNG)であり、第2燃料はガソリンである。
【0080】
これにより、ガソリンから内燃機関2の再始動性に劣るCNGへの燃料切替を実施する際に、気筒間で燃料の種別が異なる状態で内燃機関2が自動停止されることを回避できる。
【0081】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。