(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098374
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20240716BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240716BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20240716BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B60C9/18 J
B60C9/00 J
B60C9/18 K
B60C9/22 B
B60C9/22 A
B60C11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001847
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】芝本 昇平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA39
3D131BA07
3D131BB06
3D131BC14
3D131BC15
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA52
3D131EA09V
3D131EA09X
(57)【要約】
【課題】直進安定性及び旋回性能を両立させた二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】二輪車用タイヤである。トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4と、カーカス6とを含む。トレッド部2は、接地面2sと、トレッド補強層9とを含む。トレッド補強層9は、ベルト層7と、バンド層8とを含む。ベルト層7は、第1ベルトプライ11と、第2ベルトプライ12とを含む。バンド層8は、タイヤ周方向に螺旋状に巻回された少なくとも1本のバンドコードを含む。バンド層8の展開幅は、ベルト層7の展開幅よりも小さい。二輪車用タイヤが正規リムに装着され、かつ、10kPaの内圧が充填された状態のタイヤ子午線断面において、タイヤ赤道Cを通るクラウン領域21での接地面2sの曲率半径Rcは、タイヤ断面幅の95%未満である。バンド層8のタイヤ軸方向の一端よりもタイヤ軸方向外側のショルダー領域22の接地面2sの曲率半径Rbは、前記曲率半径Rcよりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車用タイヤであって、
トレッド部と、一対のサイドウォール部と、一対のビード部と、一方の前記ビード部から前記トレッド部を経て他方の前記ビード部に至るカーカスとを含み、
前記トレッド部は、接地面と、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に配されたトレッド補強層とを含み、
前記トレッド補強層は、ベルトプライを複数含むベルト層と、前記ベルト層のタイヤ半径方向外側に配されたバンド層とを含み、
前記ベルト層は、前記カーカスに隣接して配された第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライとを含み、
前記バンド層は、タイヤ周方向に螺旋状に巻回された少なくとも1本のバンドコードを含み、
前記バンド層の展開幅は、前記ベルト層の展開幅よりも小さく、
前記二輪車用タイヤが正規リムに装着され、かつ、10kPaの内圧が充填された状態のタイヤ子午線断面において、
タイヤ赤道を通るクラウン領域での前記接地面の曲率半径Rcは、タイヤ断面幅の95%未満であり、
前記バンド層のタイヤ軸方向の一端よりもタイヤ軸方向外側のショルダー領域の前記接地面の曲率半径Rbは、前記曲率半径Rcよりも大きい、
二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記曲率半径Rbは、前記曲率半径Rcの2.0~3.0倍である、請求項1に記載の二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記第1ベルトプライは、タイヤ周方向に対して第1の方向に傾斜した複数の第1ベルトコードを含み、
前記第2ベルトプライは、タイヤ周方向に対して前記第1の方向とは反対の第2の方向に傾斜した複数の第2ベルトコードを含む、請求項1又は2に記載の二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記第1ベルトコードのタイヤ周方向に対する角度の平均は、10~40°である、請求項3に記載の二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記第2ベルトコードのタイヤ周方向に対する角度の平均は、10~40°である、請求項3に記載の二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記第1ベルトプライのタイヤ軸方向の端部における前記第1ベルトコードのタイヤ周方向に対する最大の角度は、タイヤ赤道上における前記第1ベルトコードのタイヤ周方向に対する最大の角度よりも大きい、請求項3に記載の二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向の端部における前記第2ベルトコードのタイヤ周方向に対する最大の角度は、タイヤ赤道上における前記第2ベルトコードのタイヤ周方向に対する最大の角度よりも大きい、請求項3に記載の二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記第2ベルトプライの展開幅は、前記第1ベルトプライの展開幅よりも大きい、請求項1又は2に記載の二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記バンド層の展開幅は、前記トレッド部の展開幅の20%~80%である、請求項1又は2に記載の二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記バンドコードの破断強力は、前記ベルト層に含まれるベルトコードの破断強力よりも大きい、請求項1又は2に記載の二輪車用タイヤ。
【請求項11】
前記バンドコードは、スチールコードである、請求項1又は2に記載の二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部にトレッド補強層を備えた自動二輪車用タイヤが提案されている。前記トレッド補強層は、ベルト層とバンド層とを含んでいる。前記ベルト層は、複数のベルトコードが配列された少なくとも1枚のベルトプライを含んでいる。前記バンド層は、ベルト層のタイヤ半径方向外側に設けられたバンドプライを含んでいる。前記バンドプライは、タイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列されたバンドコードを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のタイヤは、前記バンド層によってクラウン領域が強く拘束されるため、優れた直進安定性を発揮し得る。一方、上述のタイヤは、例えば、高速走行時、ショルダー領域において外径成長が生じ、その接地面の曲率半径が大きくなって、旋回性能を損ねる場合があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、直進安定性及び旋回性能を両立させた二輪車用タイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
二輪車用タイヤであって、トレッド部と、一対のサイドウォール部と、一対のビード部と、一方の前記ビード部から前記トレッド部を経て他方の前記ビード部に至るカーカスとを含み、前記トレッド部は、接地面と、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に配されたトレッド補強層とを含み、前記トレッド補強層は、ベルトプライを複数含むベルト層と、前記ベルト層のタイヤ半径方向外側に配されたバンド層とを含み、前記ベルト層は、前記カーカスに隣接して配された第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライとを含み、前記バンド層は、タイヤ周方向に螺旋状に巻回された少なくとも1本のバンドコードを含み、前記バンド層の展開幅は、前記ベルト層の展開幅よりも小さく、前記二輪車用タイヤが正規リムに装着され、かつ、10kPaの内圧が充填された状態のタイヤ子午線断面において、タイヤ赤道を通るクラウン領域での前記接地面の曲率半径Rcは、タイヤ断面幅の95%未満であり、前記バンド層のタイヤ軸方向の一端よりもタイヤ軸方向外側のショルダー領域の前記接地面の曲率半径Rbは、前記曲率半径Rcよりも大きい、二輪車用タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の二輪車用タイヤは、上記の構成を採用したことによって、直進安定性及び旋回性能を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の二輪車用タイヤの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1のタイヤの内部材を示す拡大斜視図である。
【
図4】低内圧状態におけるトレッド部のプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の二輪車用タイヤ1(以下、単に「タイヤ」ということがある。)の正規状態のタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。本実施形態のタイヤ1は、オンロードでのスポーツ走行に適した自動二輪車の前輪用のタイヤである。但し、本発明のタイヤは、このような態様に限定されるものではない。
【0010】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、前記正規状態で測定できない構成(例えば、タイヤ1の内部材である。)の寸法は、タイヤ1を出来るだけ前記正規状態に近似させた状態にして、測定された値である。
【0011】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2、一対のサイドウォール部3及び一対のビード部4を含む。サイドウォール部3は、トレッド部2のタイヤ軸方向の両側に連なっている。ビード部4は、サイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に連なっている。トレッド部2は、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積が得られるように、一方のトレッド端Teと他方のトレッド端Teとの間の接地面2sが、タイヤ半径方向外側に凸で円弧状に湾曲している。ビード部4には、ビードコア5が埋設されている。
【0014】
トレッド端Teは、トレッド部2の接地面2sの端に相当し、少なくとも、最大キャンバー角での旋回したときに路面と接触する。
【0015】
タイヤ1は、一方のビード部4から一方のサイドウォール部3、トレッド部2、他方のサイドウォール部3を経て他方のビード部4に至るカーカス6を含む。
【0016】
カーカス6は、例えば、複数のカーカスコードを含むカーカスプライ6Aを含む。本実施形態のカーカス6は、1枚のカーカスプライ6Aで構成されているが、複数のカーカスプライが重ねられるものでも良い。カーカスプライ6Aは、本体部6a及び折返し部6bを含む。本体部6aは、トレッド部2から両側のサイドウォール部3を経て両側のビード部4のビードコア5に至る。折返し部6bは、本体部6aに連なり、ビードコア5の廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返されている。
【0017】
トレッド部2は、カーカス6のタイヤ半径方向外側に配されたトレッド補強層9を含む。
図2には、タイヤの内部材を概念的に示す拡大斜視図が示されており、
図3には、トレッド補強層9を平面に展開した展開図が示されている。なお、
図2及び
図3に示されるように、トレッド補強層9は、ベルトプライを複数含むベルト層7と、ベルト層7のタイヤ半径方向外側に配されたバンド層8とを含む。
【0018】
図3に示されるように、ベルト層7は、例えば、タイヤ周方向に対して10~40°の角度で傾斜した複数のベルトコード15を含むベルトプライを含む。本発明のベルト層7は、カーカス6に隣接して配された第1ベルトプライ11と、第1ベルトプライ11のタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライ12とを含む。より望ましい態様では、ベルト層7は、これら2枚のベルトプライのみで構成されている。
【0019】
バンド層8は、タイヤ周方向に螺旋状に巻回された少なくとも1本のバンドコード20を含む。バンド層8は、1本又は複数本のバンドコードが連続して螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドでも良い。また、バンド層8は、トッピングゴムで被覆されたバンドコード20が巻回されるものでも良いし、ゴムシート上に、ゴム被覆されていないバンドコード20が巻回されるものでも良い。本実施形態のバンド層8は、例えば、トッピングゴムで被覆された4本のバンドコード20が螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドとして構成されている。また、バンド層8の展開幅W3は、ベルト層7の展開幅W2よりも小さい。なお、前記展開幅は、バンド層8やベルト層7を平面に展開したときのタイヤ軸方向の長さを意味する。本明細書の以下の記載においても、同様である。
【0020】
図4には、二輪車用タイヤ1が正規リムに装着され、かつ、10kPaの内圧が充填された状態(以下、「低内圧状態」という場合がある。)のタイヤ子午線断面における、トレッド部2のプロファイルが示されている。
図4に示されるように、本発明では、低内圧状態において、タイヤ赤道Cを通るクラウン領域21での接地面2sの曲率半径Rcは、タイヤ断面幅W1(
図1に示す)の95%未満である。なお、前記タイヤ断面幅W1は、前記正規状態におけるタイヤ軸方向の幅に相当する。
【0021】
また、本発明では、バンド層8のタイヤ軸方向の一端8a(
図3に示す)よりもタイヤ軸方向外側のショルダー領域22の接地面2sの曲率半径Rbは、曲率半径Rcよりも大きい。なお、
図4では、バンド層8の一端8a及び他端8b(
図3に示す)を通って接地面2sと直交する法線25が示されており、この法線よりもタイヤ赤道C側の領域がクラウン領域21となり、この法線25よりもタイヤ軸方向外側の領域が、ショルダー領域22となる。
【0022】
本発明の二輪車用タイヤは、上述の構成が採用されることにより、直進安定性及び旋回性能を両立させることができる。その理由は、以下の通りである。
【0023】
図3に示されるように、本発明では、上述のバンド層8によって、高速走行時のクラウン領域21の外径成長が効果的に抑制され、優れた直進安定性が得られる。また、バンド層8の展開幅W3がベルト層7の展開幅W2よりも小さいことにより、バンド層8が配されていない領域が接地するような旋回時においては、ベルト層7が大きなコーナリングフォースを発揮でき、優れた旋回性能が得られる。
【0024】
他方、一般に、トレッド部が2枚のベルトプライで補強された従来のタイヤでは、クラウン領域と比較してショルダー領域の方が外径成長し易く、旋回性能を損ね易い傾向があった。これに対し、
図4に示されるように、本発明では、低内圧状態でトレッド部2のプロファイルが上述の通り規定され、クラウン領域21の接地面2sの曲率半径Rcが比較的小さくなっている。このような本発明のタイヤ1では、正規内圧が充填されて、ショルダー領域22の外径成長が生じた場合でも、トレッド部2の接地面2sの曲率半径の変化は、主にクラウン領域21で生じ、ショルダー領域22では接地面2sの曲率半径の変化が生じ難い。したがって、ショルダー領域22の接地面2sの曲率半径が過度に大きくなることなく適正に維持され、旋回性能を維持することができる。
【0025】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0026】
図3に示されるように、本実施形態の第1ベルトプライ11は、タイヤ周方向に対して第1の方向(
図3では、右下がりである。)に傾斜した複数の第1ベルトコード16を含む。第2ベルトプライ12は、タイヤ周方向に対して前記第1の方向とは反対の第2の方向(
図3では、右上がりである。)に傾斜した複数の第2ベルトコード17を含む。このようなベルトコードの配置により、トレッド部2が強固に補強され、優れた旋回性能が発揮される。
【0027】
第1ベルトコード16のタイヤ周方向に対する角度θ1の平均は、10~40°である。前記角度θ1の平均とは、第1ベルトコード16を、長さが同じである複数の微小領域に区分し、各微小領域のタイヤ周方向に対する角度の合計を、前記微小領域の個数で除した値に相当する。本明細書の以下の記載においても、同様である。なお、1つの前記微小領域の長さは、5mm以下とされるのが望ましい。本実施形態では、第1ベルトコード16が上述の角度とされることにより、直進安定性と旋回性能とがバランス良く向上する。
【0028】
第1ベルトプライ11のタイヤ軸方向の端部における第1ベルトコード16のタイヤ周方向に対する最大の角度は、タイヤ赤道C上における第1ベルトコード16のタイヤ周方向に対する最大の角度よりも大きい。より望ましい態様では、ショルダー領域22における複数の第1ベルトコード16のタイヤ周方向に対する角度の平均は、クラウン領域21における複数の第1ベルトコード16のタイヤ周方向に対する角度の平均よりも大きい。このような第1ベルトコード16の配置により、クラウン領域21ではタイヤ周方向の剛性が向上し、ショルダー領域22ではタイヤ軸方向の剛性が向上する。したがって、直進安定性と旋回性能とがバランス良く向上する。
【0029】
第1ベルトプライ11の展開幅W5、及び、第2ベルトプライ12の展開幅W6は、それぞれ、トレッド部2の展開幅W4の80%~100%であり、望ましくは90%~95%である。また、第2ベルトプライ12の展開幅W6は、第1ベルトプライ11の展開幅W5よりも大きいのが望ましい。これにより、第1ベルトプライ11の端部付近を起点とした損傷が抑制され、ショルダー領域22の耐久性が向上する。なお、トレッド部2の展開幅W4とは、トレッド部2の接地面2sを平面に展開したときにおける、一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離に相当する。
【0030】
第2ベルトコード17のタイヤ周方向に対する角度θ2の平均は、10~40°である。また、第2ベルトプライ12のタイヤ軸方向の端部における第2ベルトコード17のタイヤ周方向に対する最大の角度は、タイヤ赤道C上における第2ベルトコード17のタイヤ周方向に対する最大の角度よりも大きい。より望ましい態様では、ショルダー領域22における複数の第2ベルトコード17のタイヤ周方向に対する角度の平均は、クラウン領域21における複数の第2ベルトコード17のタイヤ周方向に対する角度の平均よりも大きい。このような第2ベルトコード17の配置により、直進安定性と旋回性能とがバランス良く向上する。
【0031】
第1ベルトコード16及び第2ベルトコード17の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維又はアラミド繊維等の有機繊維が採用される。
【0032】
バンド層8の展開幅W3は、例えば、トレッド部2の展開幅W4の20%~80%である。一方、比較的小さいキャンバー角でも大きなコーナリングフォースを発揮させる観点からは、バンド層8の展開幅W3が比較的小さいのが望ましい。このような観点から、バンド層8の展開幅W3は、トレッド部2の展開幅W4の20%~60%が望ましく、より望ましくは20%~40%である。
【0033】
バンドコード20の破断強力(破断時の最大応力である)は、ベルトコード15の破断強力よりも大きいのが望ましい。このような観点から、バンドコード20は、スチールコードであるのが望ましい。これにより、バンド層8の展開幅W3が小さい場合でも、直進安定性が確実に向上する。
【0034】
図4に示されるように、前記低圧状態におけるクラウン領域21の曲率半径Rcは、タイヤ断面幅W1(
図1に示す)の40%~60%であるのが望ましい。これにより、正規状態のショルダー領域22の接地面の曲率半径が増加するのを確実に抑制することができる。
【0035】
前記低圧状態におけるショルダー領域22の曲率半径Rbは、クラウン領域21の曲率半径Rcの望ましくは2.0倍以上、より望ましくは2.5倍以上であり、望ましくは3.5倍以下、より望ましくは3.0倍以下である。これにより、直進安定性と旋回性能とがバランス良く向上する。
【0036】
以上、本発明の一実施形態の二輪車用タイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0037】
図1の基本構造を有するサイズ120/70ZR17の二輪車用タイヤ(前輪用タイヤである。)が、表1~2の仕様に基づき製造された。また、比較例1として、トレッド補強層に、バンド層のみが配されており、ベルト層が配されていないタイヤが試作された。また、比較例2として、トレッド補強層に、ベルト層のみが配されており、バンド層が配されていないタイヤが試作された。比較例3として、クラウン領域の曲率半径Rcが、ショルダー領域の曲率半径Rbと同じであるタイヤが試作された。比較例1~3のタイヤは、上述の事項を除き、実施例のタイヤと実質的に同じ構成を備えている。なお、いずれのタイヤも、ベルト層の展開幅W2は、トレッド部の展開幅W4の95%である。各テストタイヤについて、直進安定性の評価として、ブレーキ安定性及び外乱収斂性が評価された。また、旋回性能の評価として、回答性及び旋回自由度が評価された。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
リムサイズ:MT3.50×17
タイヤ内圧:250kPa
テスト車両:排気量1000cc
【0038】
<ブレーキ安定性及び外乱収斂性>
直進安定性の評価として、ブレーキ安定性と、外乱収斂性とが評価された。ブレーキ安定性は、アスファルト路面を220km/hで直進している状態からフルブレーキしたときの安定性である。外乱収斂性は、直進時において外乱入力したときの収斂性である。それぞれの結果は、比較例1を100とする評点で示されており、数値が大きい程、これらの評価項目が優れていることを示す。
【0039】
<回頭性及び旋回自由度>
旋回性能の評価として、回頭性と、旋回自由度とが評価された。回答性は、アスファルト路面の山岳路を走行したときの、コーナーにおける倒し込み時の車体の向きの変え易さを意味する。旋回自由度とは、旋回時における車速やキャンバー角の変更のし易さを意味する。それぞれの結果は、比較例1を100とする評点で示されており、数値が大きい程、これらの評価項目が優れていることを示す。
テストの結果が表1~2に示される。
【0040】
【0041】
【0042】
テストの結果、実施例のタイヤは、直進安定性及び旋回性能を両立させていることが確認できた。
【0043】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
[本発明1]
二輪車用タイヤであって、
トレッド部と、一対のサイドウォール部と、一対のビード部と、一方の前記ビード部から前記トレッド部を経て他方の前記ビード部に至るカーカスとを含み、
前記トレッド部は、接地面と、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に配されたトレッド補強層とを含み、
前記トレッド補強層は、ベルトプライを複数含むベルト層と、前記ベルト層のタイヤ半径方向外側に配されたバンド層とを含み、
前記ベルト層は、前記カーカスに隣接して配された第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ半径方向外側に配された第2ベルトプライとを含み、
前記バンド層は、タイヤ周方向に螺旋状に巻回された少なくとも1本のバンドコードを含み、
前記バンド層の展開幅は、前記ベルト層の展開幅よりも小さく、
前記二輪車用タイヤが正規リムに装着され、かつ、10kPaの内圧が充填された状態のタイヤ子午線断面において、
タイヤ赤道を通るクラウン領域での前記接地面の曲率半径Rcは、タイヤ断面幅の95%未満であり、
前記バンド層のタイヤ軸方向の一端よりもタイヤ軸方向外側のショルダー領域の前記接地面の曲率半径Rbは、前記曲率半径Rcよりも大きい、
二輪車用タイヤ。
[本発明2]
前記曲率半径Rbは、前記曲率半径Rcの2.0~3.0倍である、本発明1に記載の二輪車用タイヤ。
[本発明3]
前記第1ベルトプライは、タイヤ周方向に対して第1の方向に傾斜した複数の第1ベルトコードを含み、
前記第2ベルトプライは、タイヤ周方向に対して前記第1の方向とは反対の第2の方向に傾斜した複数の第2ベルトコードを含む、本発明1又は2に記載の二輪車用タイヤ。
[本発明4]
前記第1ベルトコードのタイヤ周方向に対する角度の平均は、10~40°である、本発明3に記載の二輪車用タイヤ。
[本発明5]
前記第2ベルトコードのタイヤ周方向に対する角度の平均は、10~40°である、本発明3又は4に記載の二輪車用タイヤ。
[本発明6]
前記第1ベルトプライのタイヤ軸方向の端部における前記第1ベルトコードのタイヤ周方向に対する最大の角度は、タイヤ赤道上における前記第1ベルトコードのタイヤ周方向に対する最大の角度よりも大きい、本発明3ないし5のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
[本発明7]
前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向の端部における前記第2ベルトコードのタイヤ周方向に対する最大の角度は、タイヤ赤道上における前記第2ベルトコードのタイヤ周方向に対する最大の角度よりも大きい、本発明3ないし6のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
[本発明8]
前記第2ベルトプライの展開幅は、前記第1ベルトプライの展開幅よりも大きい、本発明1ないし7のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
[本発明9]
前記バンド層の展開幅は、前記トレッド部の展開幅の20%~80%である、本発明1ないし8のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
[本発明10]
前記バンドコードの破断強力は、前記ベルト層に含まれるベルトコードの破断強力よりも大きい、本発明1ないし9のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。
[本発明11]
前記バンドコードは、スチールコードである、本発明1ないし10のいずれか1項に記載の二輪車用タイヤ。