(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098377
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】水素ガス輸送装置および圧縮機のパージ方法
(51)【国際特許分類】
F17C 7/00 20060101AFI20240716BHJP
F04B 41/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
F17C7/00 A
F04B41/00 B
F17C7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001855
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】八村 勇希
(72)【発明者】
【氏名】野村 宗充
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰三
【テーマコード(参考)】
3E172
3H076
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172DA90
3E172EB02
3E172EB20
3E172HA08
3E172KA03
3H076AA03
3H076AA39
3H076CC46
3H076CC91
(57)【要約】
【課題】圧縮機の駆動軸を覆うハウジングへパージ用に供給される不活性ガスの、水素ガスの輸送配管への混入を抑止する。
【解決手段】圧縮機12は、圧縮室22のピストン223を駆動する駆動軸23を収容するハウジング24を備える。ハウジング24は、圧縮室22に隣接し水素ガスがパージガスとして供給される第1パージ室25と、窒素ガスがパージガスとして供給される第2パージ室26とを含む。水素ガス輸送装置1Aは、パージ用水素ガスの供給経路として、輸送配管10から分岐し、第1パージ室25へ水素ガスを供給する第1パージ配管41と、水素ガス供給源40から第1パージ室25へ水素ガスを供給する第2パージ配管42とを備える。圧力計6が輸送配管10の圧力低下を検出したとき、第2パージ配管42から第1パージ室25へ水素ガスを供給するよう、第1自動弁43および第2自動弁44が制御される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスの輸送配管と、
前記輸送配管に配置され、前記水素ガスを送り出す圧縮機であって、
駆動源と、前記水素ガスの圧縮子を有し前記輸送配管が接続される圧縮室と、前記駆動源と前記圧縮子とを連結する駆動軸と、前記駆動軸を収容するハウジングと、を含み、
前記ハウジングが、前記圧縮室に隣接し水素ガスがパージガスとして供給される第1パージ室と、前記第1パージ室に隣接し不活性ガスがパージガスとして供給される第2パージ室と、前記圧縮室と前記第1パージ室とを区画する第1隔壁と、前記第1パージ室と前記第2パージ室とを区画する第2隔壁と、を有し、
前記駆動軸は、前記第1隔壁および前記第2隔壁を貫通して配置され、前記駆動軸の前記第1隔壁の貫通部分には第1軸シールが、前記第2隔壁の貫通部分には第2軸シールが各々配置されている圧縮機と、
前記輸送配管の圧力低下を検出する検出部と、
前記輸送配管から分岐し、前記第1パージ室へ水素ガスを供給する第1パージ配管と、
前記検出部が前記圧力低下を検出したときに、所定の水素ガス供給源から前記第1パージ室へ水素ガスを供給する第2パージ配管と、
前記第2パージ室へ不活性ガスを供給する第3パージ配管と、
を備える水素ガス輸送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水素ガス輸送装置において、
前記圧縮機がレシプロ式の圧縮機であって、前記駆動源が原動機の回転運動を往復運動に変換する往復機構を含み、前記圧縮室は前記圧縮子として往復運動するピストンを含み、前記駆動軸は前記往復機構と前記ピストンとを連結している、水素ガス輸送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の水素ガス輸送装置において、
前記検出部は、前記第1パージ室の圧力もしくは前記第1パージ配管内の圧力を検出する圧力計である、水素ガス輸送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の水素ガス輸送装置において、
前記検出部は、前記圧縮機の動作停止に関する情報を取得する情報取得部である、水素ガス輸送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の水素ガス輸送装置において、
前記水素ガス供給源が、圧縮機を備えた他の輸送配管、もしくは前記輸送配管と他の輸送配管とが合流した合流配管であり、
前記第2パージ配管は、前記圧縮機よりも下流側において前記輸送配管もしくは前記合流配管から分岐している、水素ガス輸送装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水素ガス輸送装置において、
前記圧縮室の圧力をP1、前記第1パージ室の圧力をP2、前記第2パージ室の圧力をP3とするとき、
前記第1パージ配管および前記第2パージ配管のいずれから前記第1パージ室へ水素ガスが供給されている場合でも、運転中はP1>P2>P3の関係が維持されるよう、水素ガスの供給圧が選ばれる、水素ガス輸送装置。
【請求項7】
水素ガスの輸送配管に配置され前記水素ガスを送り出す圧縮機のパージ方法であって、
前記圧縮機は、
駆動源と、前記水素ガスの圧縮子を有し前記輸送配管が接続される圧縮室と、前記駆動源と前記圧縮子とを連結する駆動軸と、前記駆動軸を収容するハウジングと、を含み、
前記ハウジングが、前記圧縮室に隣接し水素ガスがパージガスとして供給される第1パージ室と、前記第1パージ室に隣接し不活性ガスがパージガスとして供給される第2パージ室と、前記圧縮室と前記第1パージ室とを区画する第1隔壁と、前記第1パージ室と前記第2パージ室とを区画する第2隔壁と、を有し、
前記駆動軸は、前記第1隔壁および前記第2隔壁を貫通して配置され、前記駆動軸の前記第1隔壁の貫通部分には第1軸シールが、前記第2隔壁の貫通部分には第2軸シールが各々配置されており、
前記輸送配管の圧力低下が検出されないとき、前記輸送配管から分岐した第1パージ配管から前記第1パージ室へ水素ガスを供給し、
前記輸送配管の圧力低下が検出されたときに、所定の水素ガス供給源に連通した第2パージ配管から前記第1パージ室へ水素ガスを供給し、
前記第2パージ室へは第3パージ配管を用いて不活性ガスを供給する、圧縮機のパージ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、輸送配管に圧縮機が組み込まれた水素ガス輸送装置および前記圧縮機のパージ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスの輸送系は、輸送配管と、この輸送配管に組み入れられ水素ガスを圧縮して送り出す圧縮機とで構築することができる。例えば特許文献1には、液化水素の貯蔵タンクで発生したボイル・オフ・ガス(以下、BOG)を、BOG輸送配管および圧縮機で構成される輸送系にて、液化機に戻す方法が開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に前記圧縮機は、ピストンやタービンなどの圧縮子を備えた圧縮室と、前記圧縮子に駆動力を伝達する駆動軸とを含む。前記駆動軸は、パージガスが流通可能なハウジングで覆われる。水素ガスを前記輸送配管で送る場合、前記ハウジングを、前記圧縮室に隣接する第1パージ室と、この第1パージ室にさらに隣接する第2パージ室とを隔壁で区画し、前記駆動軸が前記隔壁を貫通するように配設する構造が考えられる。この場合、前記第1パージ室にはパージガスとして水素ガスが供給され、前記第2パージ室には大気と水素ガスとの隔離のため、窒素ガス等の不活性ガスが供給される。
【0005】
前記パージガスとしての水素ガスは、圧縮機の近辺に位置する前記輸送配管から取り出す構成とすることが合理的であり、一般的である。しかし、この構成を採用した場合、前記圧縮機を停止させると、前記第1パージ室の水素ガス圧が低下する。このため、前記第2パージ室の不活性ガスが、不純物として前記駆動軸の隔壁貫通部を通して前記圧縮室へ、ひいては前記輸送配管へ混入し得る。この場合、輸送先に不純物を含む水素ガスが送ガスされてしまい、前記輸送配管に接続されている各種機器に悪影響を与える懸念がある。
【0006】
本開示の目的は、圧縮機の駆動軸を覆うハウジングへパージ用に供給される不活性ガスの、水素ガスの輸送配管への混入を抑止できる水素ガス輸送装置および前記圧縮機のパージ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係る水素ガス輸送装置は、水素ガスの輸送配管と、前記輸送配管に配置され、前記水素ガスを送り出す圧縮機であって、駆動源と、前記水素ガスの圧縮子を有し前記輸送配管が接続される圧縮室と、前記駆動源と前記圧縮子とを連結する駆動軸と、前記駆動軸を収容するハウジングと、を備え、前記ハウジングが、前記圧縮室に隣接し水素ガスがパージガスとして供給される第1パージ室と、前記第1パージ室に隣接し不活性ガスがパージガスとして供給される第2パージ室と、前記圧縮室と前記第1パージ室とを区画する第1隔壁と、前記第1パージ室と前記第2パージ室とを区画する第2隔壁と、を有し、前記駆動軸は、前記第1隔壁および前記第2隔壁を貫通して配置され、前記駆動軸の前記第1隔壁の貫通部分には第1軸シールが、前記第2隔壁の貫通部分には第2軸シールが各々配置されている圧縮機と、前記輸送配管の圧力低下を検出する検出部と、前記輸送配管から分岐し、前記第1パージ室へ水素ガスを供給する第1パージ配管と、前記検出部が前記圧力低下を検出したときに、所定の水素ガス供給源から前記第1パージ室へ水素ガスを供給する第2パージ配管と、前記第2パージ室へ不活性ガスを供給する第3パージ配管と、を備える。
【0008】
本開示の他の局面に係る圧縮機のパージ方法は、水素ガスの輸送配管に配置され前記水素ガスを送り出す圧縮機のパージ方法であって、前記圧縮機は、駆動源と、前記水素ガスの圧縮子を有し前記輸送配管が接続される圧縮室と、前記駆動源と前記圧縮子とを連結する駆動軸と、前記駆動軸を収容するハウジングと、を含み、前記ハウジングが、前記圧縮室に隣接し水素ガスがパージガスとして供給される第1パージ室と、前記第1パージ室に隣接し不活性ガスがパージガスとして供給される第2パージ室と、前記圧縮室と前記第1パージ室とを区画する第1隔壁と、前記第1パージ室と前記第2パージ室とを区画する第2隔壁と、を有し、前記駆動軸は、前記第1隔壁および前記第2隔壁を貫通して配置され、前記駆動軸の前記第1隔壁の貫通部分には第1軸シールが、前記第2隔壁の貫通部分には第2軸シールが各々配置されており、前記輸送配管の圧力低下が検出されないとき、前記輸送配管から分岐した第1パージ配管から前記第1パージ室へ水素ガスを供給し、前記輸送配管の圧力低下が検出されたときに、所定の水素ガス供給源に連通した第2パージ配管から前記第1パージ室へ水素ガスを供給し、前記第2パージ室へは第3パージ配管を用いて不活性ガスを供給する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、水素ガス輸送装置において、圧縮機の駆動軸を覆うハウジングへパージ用に供給される不活性ガスの、水素ガスの輸送配管への混入を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の水素ガス輸送装置が適用される水素ガス輸送ラインを示すシステム図である。
【
図2】
図2は、比較例の水素ガス輸送装置の構成を示すシステム図である。
【
図3】
図3は、本開示の水素ガス輸送装置の構成を示すシステム図である。
【
図4】
図4は、水素ガス輸送装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5(A)および(B)は、パージ用水素ガスを供給する第2パージ配管の配置例を示すシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示に係る水素ガス輸送装置の実施形態を詳細に説明する。本開示の水素ガス輸送装置は、圧縮機を用いて水素ガスの輸送を要する各種の施設に適用可能である。例えば、水素ガス発生源としての水素ガスタンクから、圧縮機を用いて発電所などの水素ガス使用設備に水素ガスを送ガスするラインなどに、本開示の水素ガス輸送装置を適用できる。或いは、前記水素ガス発生源がBOG発生源であると想定した場合、液化水素の生産設備において発生したBOGを液化機に戻すライン、生産した液化水素を運搬船やローリーへ荷役する際に生じるBOGを回収するライン、液化水素の受け入れ施設での荷役の際に生じるBOGを回収するラインなどに、本開示の水素ガス輸送装置を適用できる。
【0012】
[水素ガス輸送ライン]
図1は、本開示の水素ガス輸送装置が適用される水素ガス輸送ライン1の一例を示すシステム図である。
図1に示す水素ガス輸送ライン1は、水素ガスの輸送配管10と、この輸送配管10に順に配置された水素ガス発生源11、圧縮機12、バッファタンク13および水素ガス使用設備14とを含む。
【0013】
輸送配管10は、水素ガスを輸送可能な配管である。輸送配管10には、必要に応じて断熱外層や真空断熱構造が適用される。水素ガス発生源11は、例えば陸上に設置された液化水素貯蔵タンク、水素運搬船等に備えられた液化水素貯蔵タンク、あるいは液化水素の輸送配管などの水素関連設備である。これら設備から供給される水素ガス、あるいはこれら設備への入熱により液化水素が蒸発することによって発生するBOGが、輸送配管10での輸送対象となる。なお、輸送配管10の輸送対象は、上掲の極低温の水素関連設備から供給される水素ガスまたはBOGに限定されるものではない。例えば、水素ガスを水電解や化石燃料の改質により生産する設備を水素ガス発生源11とし、これら設備で生産された水素ガスを輸送配管10の輸送対象としても良い。
【0014】
圧縮機12は、輸送配管10の上流側から水素ガス(BOG)を取り入れ、当該水素ガスを圧縮して輸送配管10の下流側に送り出すことが可能な機器である。
図1では2台の圧縮機12;第1圧縮機12Aおよび第2圧縮機12Bがパラレルに輸送配管10へ組み入れられている例を示している。圧縮機12としては、後記で例示するレシプロ式圧縮機のほか、羽根車を用いた遠心式圧縮機などを用いることができる。
【0015】
バッファタンク13は、圧力変動の吸収のため、圧縮機12から送られる水素ガスを一時的に貯留するタンクである。水素ガス使用設備14は、例えば水素ガスによる発電設備などである。
【0016】
水素ガス輸送ライン1が、液化水素の受け入れ基地における水素ガスの送ガスラインに適用される場合の運用例を説明する。水素ガス使用設備14への通常の送ガス時には、第1圧縮機12Aを稼働させる一方、第2圧縮機12Bは休止させて、水素ガスの送り出し動作を行わせる。これに対し、液化水素の荷役時には、水素ガス発生源11において大量にBOGが発生する。このため、第1、第2圧縮機12A、12Bの双方を稼働させ、輸送配管10におけるBOGを含む水素ガスの輸送を行わせる。つまり、第1圧縮機12Aは常用圧縮機である一方、第2圧縮機12Bは、BOGの大量輸送が必要な場合にだけ稼働される非常用圧縮機である。
【0017】
水素ガス輸送ライン1が、液化水素の生産・出荷基地におけるBOG回収ラインに適用される場合、
図1で点線にて示すように、バッファタンク13の下流側には、水素ガス使用設備14に代わり液化機15が接続される。すなわち、水素ガス輸送ライン1は、水素関連設備で発生したBOGを再液化するための輸送ラインとなる。これら設備への入熱により液化水素が蒸発することによって発生するBOGが、輸送配管10での輸送対象となる。
【0018】
液化機15は、BOGに冷熱を与えて再液化する機器である。液化機15は、水素ガスや窒素ガスを冷媒としBOGを冷却する複数の熱交換器、圧縮機12で加圧されたBOGの圧力を下げて液化させる膨張タービンおよび膨張弁を含む。例えば、液化水素の生産および出荷基地に適用される水素ガス輸送ライン1であれば、液化機15の下流側に液化水素貯蔵タンク、出荷用荷役配管などが接続される。
【0019】
水素ガス輸送ライン1がBOG回収ラインに適用される場合、液化機15よりも下流側の輸送配管10や液化水素貯蔵タンクで生じたBOGが、
図1の水素ガス発生源11から圧縮機12へ送り出されるBOGとなる。液化水素を生産する通常時では、発生するBOG量はさほど多くない。このため、第1圧縮機12Aを稼働させる一方、第2圧縮機12Bは休止させて、BOGの送り出し動作を行わせる。これに対し、液化水素の出荷を行う荷役時には、大量にBOGが発生する。このため、第1、第2圧縮機12A、12Bの双方を稼働させ、輸送配管10におけるBOGの輸送を行わせる。つまり、第1圧縮機12Aは常用圧縮機である一方、第2圧縮機12Bは、BOGの大量輸送が必要な場合にだけ稼働される非常用圧縮機である。
【0020】
上述の通り、非常用圧縮機となる第2圧縮機12Bについては、休止と運転とが繰り返される。また、非常用の第2圧縮機12Bは、常用の第1圧縮機12Aに故障が発生した場合や、メンテナンスが必要な場合等にも一時的に運転され、その処置の後に休止する。このように間欠的に運転と休止が為される圧縮機12では、次述の通りパージ効果の低下が問題となる。
【0021】
[比較例の水素ガス輸送装置]
図2は、比較例のパージ構造を有する圧縮機120を備えた水素ガス輸送装置100Aの構成を示すシステム図である。ここでは、レシプロ式の圧縮機120を例示している。プロセスラインである輸送配管10への、窒素ガスなどの不純物の混入は可及的に回避せねばならない。例えば、輸送配管10で送ガスする水素ガスに混入する不純物濃度を10ppm程度とすることを求める水素ガス使用設備14も存在する。圧縮機120は、輸送配管10へ直接組み入れられる機器である。このため、当該圧縮機120を通した不純物の混入を抑止すべく、水素ガスをパージガスとして用いるパージ構造が付設される。パージガスとしての水素ガスは、輸送配管10を流れる水素ガス(BOG)が利用される。
【0022】
パージ構造を含む圧縮機120の構造を詳述する。圧縮機120は、駆動源21、圧縮室22、駆動軸23およびハウジング24を備えている。駆動源21は、圧縮機120の駆動力の発生源であり、原動機211とクランク室212とを含む。原動機211は、モーターなどの回転力発生器である。クランク室212は、原動機211の出力軸の回転運動を往復運動に変換するクランク機構を収容するハウジングであり、クランクシャフトおよびコネクティングロッドなどを収容している。
【0023】
圧縮室22は、水素ガスの圧縮を行うシリンダであり、水素ガスの吸気口221および吐出口222を備える。吸気口221には、輸送配管10の上流管101が接続され、水素ガス発生源11に吸気口221が連通している。吐出口222には、輸送配管10の下流管102が接続されている。下流管102には、圧縮機120で圧縮された水素ガスが送られる。圧縮室22内には、圧縮子として往復動するピストン223が収納されている。ピストン223の往復動により、圧縮室22内へ導入された水素ガスが圧縮される。駆動軸23は、クランク室212のクランク機構とピストン223とを連結しており、前記クランク機構の往復運動をピストン223に伝達する。
【0024】
ハウジング24は、駆動軸23を収容する密閉型の筐体である。ハウジング24は、圧縮室22に隣接する第1パージ室25と、第1パージ室25の駆動源21側の側面に隣接する第2パージ室26とを備えている。第1パージ室25には、水素ガスがパージガスとして供給される。第2パージ室26には、不活性ガスがパージガスとして供給される。本実施形態では、前記不活性ガスとして窒素ガスが選ばれている。
【0025】
圧縮室22と第1パージ室25とは、第1隔壁31で区画されている。第1パージ室25と第2パージ室26とは第2隔壁32で、第2パージ室26とクランク室212とは第3隔壁33で、それぞれ区画されている。駆動軸23は、これら3つの隔壁;第1隔壁31、第2隔壁32および第3隔壁33を貫通して配置されている。駆動軸23の第1隔壁31の貫通部分には、当該貫通部分におけるシール性を確保するための第1軸シール34が配置されている。同様に、駆動軸23の第2隔壁32の貫通部分には第2軸シール35が、第3隔壁33の貫通部分には第3軸シール36が、各々配置されている。
【0026】
第1パージ室25には、水素ガスパージ配管410を通してパージガスとしての水素ガスが供給される。水素ガスパージ配管410は、輸送配管10の圧縮機120よりも下流側に設定された分岐部Bにおいて、輸送配管10から分岐された配管である。水素ガスパージ配管410の下流端は、第1パージ室25に設けられた導入開口に接続されている。つまり、輸送配管10で輸送対象とし圧縮機120で加圧されたBOGの一部を、輸送配管10から取り出してパージガスとしている。圧縮機120が運転状態にあれば、自ずと水素ガスが水素ガスパージ配管410から第1パージ室25へ供給される。第1パージ室25の排出開口には、パージに用いた水素ガスを排出する排出管45が接続されている。
【0027】
第2パージ室26には、窒素ガスパージ配管510を通してパージガスとしての窒素ガスが供給される。窒素ガスパージ配管510の上流端は、パージ用窒素ガスを貯留するタンク等の窒素ガス供給源50に接続され、下流端は第2パージ室26の導入開口に接続されている。第2パージ室26の排出開口には、パージに用いた窒素ガスを排出する排出管52が接続されている。第2パージ室26が介在されることで、第1パージ室25の水素ガスとクランク室212内の空気との直接接触を回避できる。
【0028】
圧縮機120の運転時には、圧縮室22の圧力、つまり輸送配管10の下流管102へのBOGを吐出する圧力は、所要の圧力P1に設定される。これに対し、第1パージ室25の圧力P2は、P1よりも小さい値に設定される。さらに、第2パージ室26の圧力P3は、P2よりも小さい値に設定される。すなわち、3者の圧力関係は、水素ガス輸送装置100Aの運転中において、
P1>P2>P3
に設定される。この圧力関係の設定により、第2パージ室26内に存在する窒素ガスが、第2軸シール35および第1軸シール34を通して圧縮室22へ進入することを防止できる。
【0029】
しかし、上記の圧力関係は、圧縮機120の停止ないしは吐出圧力の大幅な低下により成立しなくなる。つまり、圧縮機120が停止すると、水素ガスパージ配管410に水素ガスが供給されなくなり、結果として第1パージ室25の圧力P2も低下する。当然、圧縮室22の圧力P1も低下している。このため、
図2に矢印REで示すように、第2パージ室26に存在する窒素ガスが、第2隔壁32の第2軸シール35および第1隔壁31の第1軸シール34を通して圧縮室22へ進入し得る。圧縮室22へ進入した窒素ガスは、さらに輸送配管10へ混入し、輸送配管10に接続されている水素ガス使用設備14や液化機15に悪影響を与えかねない。本実施形態では、このような不具合を解消できる水素ガス輸送装置を提示する。
【0030】
[実施例の水素ガス輸送装置]
図3は、実施例のパージ構造を有する圧縮機12を備えた水素ガス輸送装置1Aの構成を示すシステム図である。圧縮機12は、駆動源21、圧縮室22、駆動軸23およびハウジング24を備えている。ハウジング24は、第1パージ室25および第2パージ室26と、これらの室を区画する第1隔壁31、第2隔壁32および第3隔壁33を備えている。駆動軸23の第1隔壁31、第2隔壁32および第3隔壁33の貫通部分には、それぞれ第1軸シール34、第2軸シール35、第3軸シール36が配置されている。これらの構成は、先に比較例の圧縮機120について説明したものと同様であるので、ここでは説明を省く。
【0031】
水素ガス輸送装置1Aは、第1パージ室25へパージガスとしての水素ガスを送る配管として、2つのパージ配管;第1パージ配管41および第2パージ配管42と、第2パージ室26へパージガスとしての窒素ガスを送る配管として、第3パージ配管51とを備えている。また、水素ガス輸送装置1Aは、第1パージ配管41に組み入れられた第1自動弁43、第2パージ配管42に組み入れられた第2自動弁44、水素ガス供給源40、窒素ガス供給源50、第1圧力計61および第2圧力計62(検出部)を備えている。
【0032】
第1パージ配管41は、上述した比較例の水素ガスパージ配管410と同様な配管である。第1パージ配管41は、輸送配管10の圧縮機12よりも下流側に位置する下流管102に設定された分岐部B1において、輸送配管10から分岐された配管である。第1パージ配管41の下流端は、第1パージ室25に設けられた導入開口に接続されている。
【0033】
第1パージ配管41には、第1圧力計61が取り付けられている。第1圧力計61は、第1パージ配管41内を通過する水素ガスのガス圧を計測する。第1圧力計61が計測する圧力は、輸送配管10のプロセスライン圧に対応し、圧縮室22の圧力P1に対応する。第1自動弁43の開・閉により、第1パージ配管41から第1パージ室25への水素ガスの供給・停止を切り替えることができる。
【0034】
第2パージ配管42は、第1パージ配管41とは別個に、第1パージ室25へ水素ガスを供給することが可能な配管である。第2パージ配管42は、圧縮機12の停止や吐出圧力の低下により、輸送配管10の下流管102の圧力低下、つまり圧縮室22の圧力P1が低下したときに、第1パージ室25へ水素ガスを供給するために設置されている。すなわち、第2パージ配管42は、圧縮機12の停止等で第1パージ配管41からの水素ガス供給が不能となったときに、パージ用の水素ガスを代替的に第1パージ室25へ供給する配管である。
【0035】
第2パージ配管42の上流端は、パージ用水素ガスを供給可能な水素ガス供給源40に接続されている。水素ガス供給源40は、第1パージ配管41が分岐されている下流管102を除く他の水素ガスの輸送配管や、水素ガスタンクなどである。第2パージ配管42の下流端は、第1自動弁43よりも下流側において第1パージ配管41に設定された合流部B2に接続されている。もちろん、第2パージ配管42の下流端を直接、第1パージ室25の導入開口に接続しても良い。第2自動弁44の開・閉により、第2パージ配管42から第1パージ室25への水素ガスの供給・停止を切り替えることができる。
【0036】
第3パージ配管51は、上述した比較例の窒素ガスパージ配管510と同様な配管である。第2パージ室26には、第3パージ配管51を通して、窒素ガス供給源50からパージガスとしての窒素ガスが供給される。
【0037】
第1パージ室25に対して、第2圧力計62が取り付けられている。第2圧力計62は、第1パージ室25の圧力P2を計測する。第1圧力計61については省略することも可能である。しかし、プロセスライン圧をダイレクトに計測する第1圧力計61と、第1パージ室25の圧力P2をダイレクトに計測する第2圧力計62とを並置しておけば、機器の運転停止等による圧力低下を素早く計測することが出来、第1自動弁43および第2自動弁44の開閉制御をより正確に行い得る。
【0038】
図4は、水素ガス輸送装置1Aの制御構成を示すブロック図である。水素ガス輸送装置1Aは、第1パージ室25へのパージ用水素ガスの供給動作を制御する制御装置7を備えている。制御装置7は、第1パージ配管41に配設されている第1自動弁43、および第2パージ配管42に配設されている第2自動弁44の開閉動作を制御することで、第1パージ室25へのパージ用水素ガスの供給経路を切り替える。
【0039】
制御装置7は、プログラムの実行により動作するプロセッサーを備え、機能的に情報取得部71を有する。情報取得部71は、圧力計6(第1圧力計61および/または第2圧力計62)から圧力情報を取得する。また、情報取得部71は、圧縮機12から動作停止情報を取得する。前記圧力情報は、圧力計6により計測された、第1パージ配管41内の圧力データ、または第1パージ室25の圧力データである。前記動作停止情報は、原動機211の動作停止信号、クランク室212のクランク機構に取り付けられた回転角センサの検出信号等、圧縮機12が動作停止に至ったことを検知可能な何らかの情報である。
【0040】
制御装置7は、前記圧力情報または前記動作停止情報のいずれか一方もしくは双方を用いて、第1自動弁43および第2自動弁44の開閉動作を制御する。制御装置7は、圧縮機12の平常運転時と異常運転時とで、第1、第2自動弁43、44の開閉状態を反転させる。前記平常運転時は、圧縮機12が運転状態にあり、且つ、当該圧縮機12の吐出圧力が正常であることが圧力計6の計測結果に基づき確認されているときである。前記異常運転時は、圧縮機12が運転停止状態に至っている、もしくは圧縮機12の吐出圧力が所定の閾値よりも低下しているときである。
【0041】
前記平常運転時、制御装置7は、第1自動弁43を「開」とし、第2自動弁44を「閉」とする制御を行う。すなわち、第1パージ配管41から第1パージ室25へパージ用水素ガスを供給させる。第1パージ室25へのパージ用水素ガスの供給圧は、上述のP1>P2>P3の関係が成立するように選択される。前記平常運転時、第2パージ配管42は休止状態となる。
【0042】
前記異常運転時、制御装置7は、第1自動弁43を「閉」とし、第2自動弁44を「開」とする制御を行う。すなわち、水素ガス供給源40を使用して、第2パージ配管42から第1パージ室25へパージ用水素ガスを供給させる。第2パージ配管42からの水素ガス供給に経路変更されても、第1パージ室25へのパージ用水素ガスの供給圧は、上述のP1>P2>P3の関係が維持されるように設定される。これにより、第1軸シール34および第2軸シール35には平常運転時と同じガス圧が加わった状態となり、窒素ガスの圧縮室22への混入を阻止できる。
【0043】
水素ガス供給源40は、輸送配管10の系統とは別個に設置された水素ガスタンク等であっても良いが、本実施形態のように複数台の圧縮機12を備える水素ガス輸送装置1Aの場合は、自身の輸送配管10の系統を水素ガス供給源40とすることが望ましい。
図5(A)および(B)は、パージ用水素ガスを供給する第2パージ配管42を、輸送配管10の系統に対して配置した例を示すシステム図である。ここでは、非常用圧縮機である第2圧縮機12Bに対する第1パージ配管41および第2パージ配管42の配置だけを例示している。
【0044】
輸送配管10は、第1圧縮機12Aおよび第2圧縮機12Bの下流側に各々、個別の第1下流管103aおよび第2下流管103bを有している。さらに、輸送配管10は、第1、第2下流管103a、103bの下流側に、これらの下流管が合流する合流配管104を有している。
【0045】
図5(A)は、第2圧縮機12Bの第2パージ配管42の水素ガス供給源が、合流配管104である例を示す。第2圧縮機12Bの第1パージ配管41は、第2圧縮機12Bの下流側の第2下流管103bから分岐し、自身の第1パージ室25まで引き回されている。この点は、
図3に示した実施形態と同じである。一方、第2圧縮機12Bの第2パージ配管42は、合流配管104から分岐し、第2圧縮機12Bの第1パージ室25まで引き回されている。
【0046】
例えば荷役時において、第1圧縮機12Aおよび第2圧縮機12Bの双方が運転されている状態から、通常の運転状態に移行するに当たり、非常用圧縮機である第2圧縮機12Bが停止されるとする。この場合、第1パージ配管41から第1パージ室25へのパージ用水素ガスの供給は停止する。しかし、常用の第1圧縮機12Aのみのシングル運転状態に変更されても、合流配管104には水素ガス(BOG)が流れ続ける。このため、合流配管104より分岐する第2パージ配管42から第1パージ室25へ、パージ用水素ガスを供給することができる。従って、第1パージ室25のパージ状態を維持できる。
【0047】
図5(B)は、第2圧縮機12Bの第2パージ配管42の水素ガス供給源が、他の輸送配管10Aである例を示す。第1パージ配管41は、第2圧縮機12Bの第2下流管103bから分岐している。第2パージ配管42は、他の輸送配管10Aに組み込まれたバッファタンク130から分岐し、第2圧縮機12Bの第1パージ室25まで引き回されている。第1圧縮機12Aおよび第2圧縮機12Bのパラレル運転状態から、第1圧縮機12Aのみのシングル運転状態に変更されても、他の輸送配管10Aのバッファタンク130から、第2パージ配管42を通して第1パージ室25へ、パージ用水素ガスを供給することができる。
【0048】
以上説明した本実施形態の水素ガス輸送装置1Aによれば、第1パージ室25へパージ用水素ガスを供給するルートとして、輸送配管10から分岐する第1パージ配管41に加え、輸送配管10の圧力低下時に稼働する第2パージ配管42を備える。このため、圧縮機12の出力低下や停止等の事情により第1パージ配管41から第1パージ室25へのパージ用水素ガスの供給が滞っても、第2パージ配管42を通したルートで補完できる。従って、第1軸シール34および第2軸シール35を通して、第2パージ室26の窒素ガスが圧縮室22ないしは輸送配管10へ混入することを抑制できる。
【0049】
[変形例]
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば次のような変形実施形態を採用できる。
【0050】
(1)上記実施形態では、第1パージ配管41、第2パージ配管42に各々第1自動弁43、第2自動弁44を設置し、制御装置7がそれら自動弁の開閉制御を行う例を示した。第1自動弁43および第2自動弁44に代えて、手動の開閉弁を適用しても良い。この場合、輸送配管10の圧力低下を検出したときに、警報、音声、画像等で報知を行わせ、作業員に前記開閉弁の操作を促すものとする。
【0051】
(2)上記実施形態では、輸送配管10に2台の圧縮機12;第1圧縮機12Aおよび第2圧縮機12Bがパラレルに組み入れられている例を示した。輸送配管10に組み入れられる圧縮機は1台であっても良い。この場合、第2パージ配管42は、輸送配管10とは独立した別の輸送配管から分岐される、もしくは独立した水素ガス供給源40から水素ガスの供給を受けることになる。
【0052】
(3)上記実施形態では、圧縮機12としてレシプロ式を例示し、第1パージ室25および第2パージ室26が明確に区画された密閉状の空間である例を示した。例えば、圧縮機12として遠心式圧縮機を用いる場合、第1パージ室25および第2パージ室26は一部に開放部分を備えていても良い。
【0053】
(4)上記実施形態では、輸送配管10への水素ガスの供給態様として、水素ガス発生源11から水素ガスを送り出す態様を例示した。輸送配管10は、水素ガスを循環させるための配管であっても良い。例えば水素の液化機15において、冷媒としての水素ガスを循環させる配管を輸送配管10と扱い、この循環用配管に配置される圧縮機に対して、上記実施形態のパージ構造を適用しても良い。
【0054】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0055】
本開示の第1の態様に係る水素ガス輸送装置は、水素ガスの輸送配管と、前記輸送配管に配置され、前記水素ガスを送り出す圧縮機であって、駆動源と、前記水素ガスの圧縮子を有し前記輸送配管が接続される圧縮室と、前記駆動源と前記圧縮子とを連結する駆動軸と、前記駆動軸を収容するハウジングと、を備え、前記ハウジングが、前記圧縮室に隣接し水素ガスがパージガスとして供給される第1パージ室と、前記第1パージ室に隣接し不活性ガスがパージガスとして供給される第2パージ室と、前記圧縮室と前記第1パージ室とを区画する第1隔壁と、前記第1パージ室と前記第2パージ室とを区画する第2隔壁と、を有し、前記駆動軸は、前記第1隔壁および前記第2隔壁を貫通して配置され、前記駆動軸の前記第1隔壁の貫通部分には第1軸シールが、前記第2隔壁の貫通部分には第2軸シールが各々配置されている圧縮機と、前記輸送配管の圧力低下を検出する検出部と、前記輸送配管から分岐し、前記第1パージ室へ水素ガスを供給する第1パージ配管と、前記検出部が前記圧力低下を検出したときに、所定の水素ガス供給源から前記第1パージ室へ水素ガスを供給する第2パージ配管と、前記第2パージ室へ不活性ガスを供給する第3パージ配管と、を備える。
【0056】
第1の態様によれば、第1パージ室へパージガスとしての水素ガスを供給するルートとして、輸送配管から分岐する第1パージ配管に加え、前記輸送配管の圧力低下時に稼働する第2パージ管を備える。このため、圧縮機の出力低下や停止等の事情により前記第1パージ配管から前記第1パージ室への水素ガス供給が滞っても、前記第2パージ管を通したルートで補完できる。従って、第1軸シールおよび第2軸シールを通して、第2パージ室の不活性ガスが圧縮室ないしは輸送配管へ混入することを抑制できる。
【0057】
第2の態様に係る水素ガス輸送装置は、第1の態様の水素ガス輸送装置において、前記圧縮機がレシプロ式の圧縮機であって、前記駆動源が原動機の回転運動を往復運動に変換する往復機構を含み、前記圧縮室は前記圧縮子として往復運動するピストンを含み、前記駆動軸は前記往復機構と前記ピストンとを連結している。
【0058】
第2の態様によれば、レシプロ式の圧縮機が採用される場合において、パージガスとしての不活性ガスが、ピストンが往復動する圧縮室へ混入することを抑止できる。従って、不活性ガスの凍結によりピストン摺動が阻害されるといった不具合を防止できる。
【0059】
第3の態様に係る水素ガス輸送装置は、第1または第2の態様の水素ガス輸送装置において、前記検出部は、前記第1パージ室の圧力もしくは前記第1パージ配管内の圧力を検出する圧力計である。
【0060】
第3の態様によれば、圧力計の計測結果に基づき、輸送配管の圧力低下によりパージ効果が低減している状態を直ちに把握することができる。
【0061】
第4の態様に係る水素ガス輸送装置は、第1または第2の態様の水素ガス輸送装置において、前記検出部は、前記圧縮機の動作停止に関する情報を取得する情報取得部である。
【0062】
圧縮機の動作停止は輸送配管の圧力低下に直結する。第4の態様によれば、情報取得部が取得する前記圧縮機の停止情報に基づき、パージ効果の低減状態を直ちに把握できる。
【0063】
第5の態様に係る水素ガス輸送装置は、第1~第4の態様の水素ガス輸送装置において、前記水素ガス供給源が、圧縮機を備えた他の輸送配管、もしくは前記輸送配管と他の輸送配管とが合流した合流配管であり、前記第2パージ配管は、前記圧縮機よりも下流側において前記輸送配管もしくは前記合流配管から分岐している。
【0064】
圧縮機よりも下流側の輸送配管では、当該輸送配管を流れる水素ガスの圧力が高められている。第5の態様によれば、第2パージ配管から第1パージ室へ、所要のパージ圧を備えた水素ガスを供給し易い。また、前記第2パージ配管の水素ガス供給源を身近で確保し易い。
【0065】
第6の態様に係る水素ガス輸送装置は、第1~第5の態様の水素ガス輸送装置において、前記圧縮室の圧力をP1、前記第1パージ室の圧力をP2、前記第2パージ室の圧力をP3とするとき、前記第1パージ配管および前記第2パージ配管のいずれから前記第1パージ室へ水素ガスが供給されている場合でも、運転中はP1>P2>P3の関係が維持されるよう、水素ガスの供給圧が選ばれる。
【0066】
第6の態様によれば、水素ガス輸送装置の運転中は常時P1>P2>P3の圧力関係が維持されるので、不活性ガスの圧縮室への混入を確実に防止できる。
【0067】
本開示の第7の態様に係る圧縮機のパージ方法は、水素ガスの輸送配管に配置され前記水素ガスを送り出す圧縮機のパージ方法であって、前記圧縮機は、駆動源と、前記水素ガスの圧縮子を有し前記輸送配管が接続される圧縮室と、前記駆動源と前記圧縮子とを連結する駆動軸と、前記駆動軸を収容するハウジングと、を含み、前記ハウジングが、前記圧縮室に隣接し水素ガスがパージガスとして供給される第1パージ室と、前記第1パージ室に隣接し不活性ガスがパージガスとして供給される第2パージ室と、前記圧縮室と前記第1パージ室とを区画する第1隔壁と、前記第1パージ室と前記第2パージ室とを区画する第2隔壁と、を有し、前記駆動軸は、前記第1隔壁および前記第2隔壁を貫通して配置され、前記駆動軸の前記第1隔壁の貫通部分には第1軸シールが、前記第2隔壁の貫通部分には第2軸シールが各々配置されており、前記輸送配管の圧力低下が検出されないとき、前記輸送配管から分岐した第1パージ配管から前記第1パージ室へ水素ガスを供給し、前記輸送配管の圧力低下が検出されたときに、所定の水素ガス供給源に連通した第2パージ配管から前記第1パージ室へ水素ガスを供給し、前記第2パージ室へは第3パージ配管を用いて不活性ガスを供給する。
【0068】
第7の態様によれば、前記第1パージ配管から前記第1パージ室への水素ガス供給が滞っても、前記第2パージ管を通したルートで補完できる。従って、第1軸シールおよび第2軸シールを通して、第2パージ室の不活性ガスが圧縮室ないしは輸送配管へ混入することを抑制できる。
【符号の説明】
【0069】
1 水素ガス輸送ライン
1A 水素ガス輸送装置
10 輸送配管
11 水素ガス発生源
12 圧縮機
12A、12B 第1、第2圧縮機
21 駆動源
212 クランク室(往復機構)
22 圧縮室
223 ピストン(圧縮子)
23 駆動軸
24 ハウジング
25 第1パージ室
26 第2パージ室
31 第1隔壁
32 第2隔壁
34 第1軸シール
35 第2軸シール
40 水素ガス供給源
41 第1パージ配管
42 第2パージ配管
6 圧力計
61、62 第1、第2圧力計(検出部)
7 制御装置
71 情報取得部(検出部)