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特開2024-98379電子機器、計算表示方法およびプログラム
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  • 特開-電子機器、計算表示方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098379
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】電子機器、計算表示方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 15/02 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
G06F15/02 315N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001857
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 博和
【テーマコード(参考)】
5B019
【Fターム(参考)】
5B019HD09
5B019HD20
5B019HE08
(57)【要約】
【課題】主に四則演算のように左から順番に計算を実行していくような計算式に限らず、より複雑な構文木で解析される計算式について、計算式の各部の計算の順番がわかるように表示すること。
【解決手段】入力された計算式を、階層的な表示指定情報に従い数学自然表示させると共に、解析した構文木(階層的な計算指定情報)に従い再帰的且つ深さ優先探索的な優先順位に従い計算(演算)を実行する。計算式の計算(演算)を各計算対象要素の優先順に従い順番に実行するのに応じて、表示要素計算要素対応情報に基づき数学自然表示された計算式の各表示対象要素を特定し、未計算の表示対象要素を未計算を示す表示形態(例えば橙色OG)で、計算中の表示対象要素を計算中を示す表示形態(例えば青色BL)で、計算済みの表示対象要素を計算済みを示す表示形態(例えば黒色BK)で識別表示させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された計算式を表示部に表示させ、
前記計算式の構文木を解析し、
前記計算式の構文木に基づいて前記計算式に含まれる各計算部分の再帰的な計算の順番を特定し、
前記再帰的な計算の順番に従って、前記計算式における各計算部分を識別表示させる、
制御部を備えた電子機器。
【請求項2】
前記制御部は、
入力された前記計算式を数学自然表示の表示形態で表示部に表示させ、
前記再帰的な計算の順番に従って、数学自然表示の表示形態で表示させた前記計算式における各計算部分を識別表示させる、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記再帰的な計算の順番に従って前記計算式の計算を実行するとともに、前記計算式における計算中の計算部分を識別表示させる、
請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記計算式の全体を数学自然表示の表示形態で表示させた状態で、前記計算の進行とともに前記識別表示させる計算部分を変更する、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、
複数の演算子の演算優先度を定める優先度情報を取得し、
前記優先度情報に定められた前記演算子の演算優先度に基づき、前記計算式に含まれる複数の演算子の再帰的な計算の順番を示す構文木を解析する、
請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、
前記計算式に含まれる計算中の演算子と、前記計算中の演算子により演算対象となっている前記計算式の計算部分とを、未計算の計算部分とは識別して識別表示させる、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項7】
前記制御部は、
ユーザ操作に応じて指定される第1表示制御状態または第2表示制御状態のいずれかに応じて、前記計算式における計算中の計算部分を識別表示させるものであり、
前記第1表示制御状態では、前記計算式の構文木で示される特定階層の計算部分を対象として、前記計算の進行に従い識別表示させ、
前記第2表示制御状態では、前記計算式の構文木で示される全ての階層の計算式部分を対象として、前記計算の進行に従い識別表示させる、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御部は、
前記計算式の計算を途中で中断することなく進行させていき、
前記計算中の計算部分の計算の終了に伴わせて前記識別表示させる計算部分を変更していく、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項9】
前記制御部は、
前記計算中の計算部分を、未計算、計算中、計算済みを示す状態に分けて識別表示させる、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項10】
前記制御部は、
前記表示されている前記計算式の計算部分を、前記計算部分の表示形態を変更して識別表示させる、
請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項11】
前記表示形態の変更は、表示色の変更である、
請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記表示形態の変更は、表示フォントの変更である、
請求項10に記載の電子機器。
【請求項13】
コンピュータにより、
入力された計算式を表示部に表示させ、
前記計算式の構文木を解析し、
前記計算式の構文木に基づいて前記計算式に含まれる各計算部分の再帰的な計算の順番を特定し、
前記再帰的な計算の順番に従って、前記表示部に表示させた計算式における各計算部分を識別表示させる、
ようにした計算表示方法。
【請求項14】
コンピュータを、
入力された計算式を表示部に表示させ、
前記計算式の構文木を解析し、
前記計算式の構文木に基づいて前記計算式に含まれる各計算部分の再帰的な計算の順番を特定し、
前記再帰的な計算の順番に従って、前記表示部に表示させた計算式における各計算部分を識別表示させる、
ように機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器、計算表示方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通称、電卓と称される電子式卓上計算機には、三角関数や指数関数、対数関数などの多様な数学関数の計算機能を備えた関数電卓が存在する。
【0003】
また、インターネット上に設けた計算サーバ(クラウドコンピューティング)によって、ユーザが使用するPC(Personal Computer)やタブレット端末などの通信機器に対して、多様な計算サービスを提供することも行われている。
【0004】
従来、入力式に基づいて演算を開始し、その演算結果が導かれるまでの演算の進行状況を、段階を追って確認可能な電子式卓上計算機が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-200483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電子式卓上計算機は、主に四則演算のように、左から順番に計算を実行していくような計算式について計算中の部分を識別表示していくものであるが、より複雑な構文木で解析される計算式について、計算式の各部の計算の順番がわかるように表示するものではない。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、より複雑な構文木で解析される計算式について、計算式の各部の計算の順番がわかるように表示することが可能になる電子機器、計算表示方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器は、
入力された計算式を表示部に表示させ、
前記計算式の構文木を解析し、
前記計算式の構文木に基づいて前記計算式に含まれる各計算部分の再帰的な計算の順番を特定し、
前記再帰的な計算の順番に従って、前記計算式における各計算部分を識別表示させる、制御部を備える。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の電子機器によれば、主に四則演算のように左から順番に計算を実行していくような計算式に限らず、より複雑な構文木で解析される計算式について、計算式の各部の計算の順番がわかるように表示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の電子機器、計算表示方法およびプログラムの実施形態に係る関数電卓10の外観構成を示す正面図。
図2】関数電卓10において入力された計算式を表示させるための数式表示制御機能と、計算式の計算を実行させるための数式計算実行機能と、計算式の表示対象要素と計算対象要素とを対応付ける対応情報を生成するための対応情報生成機能とを説明する図。
図3】電子機器(関数電卓)10の電子回路の構成を示すブロック図。
図4】電子機器(関数電卓)10の電卓制御プログラム12aに従った計算実行表示処理(その1)を示すフローチャート。
図5】電子機器(関数電卓)10の電卓制御プログラム12aに従った計算実行表示処理(その2)を示すフローチャート。
図6】電子機器(関数電卓)10の計算実行表示処理に従い入力された計算式と計算式を解析して生成された階層的な計算指定情報(構文木)を示す図。
図7】電子機器(関数電卓)10の計算実行表示処理に従った図6に示す計算式の表示遷移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
(実施形態の構成)
図1は、本発明の電子機器、計算表示方法およびプログラムの実施形態に係る関数電卓10の外観構成を示す正面図である。
【0013】
電子機器は、関数電卓10に限定されるものではなく、少なくとも計算機能を有し、キー入力部11と、表示部12と、制御部(CPU)13(図3参照)と、記憶部14(図3参照)と、を備えた他の電子機器も含まれる。制御部13は、少なくとも一つのプロセッサを含む。
【0014】
また、電子機器は、インターネット上に設けられ、ユーザが使用するPCやタブレット端末などの端末装置(通信機器)に対して、関数電卓10のエミュレータを含む多様な計算サービスを提供する計算サーバであってよい。
【0015】
関数電卓10は、その携帯性の必要からユーザが片手で十分把持し片手で操作可能な小型サイズからなり、関数電卓10の本体正面にはキー入力部11、表示部12が設けられる。
【0016】
キー入力部11には、数値、記号、演算子などを含む計算式を入力したり計算の実行を指示したりするための数値・演算記号キー群111、各種の関数や変数を入力するための関数機能キー群112、表示部12に表示されたカーソルの移動操作やデータ項目の選択操作(指定操作)などを行うためのカーソルキー113、表示部12の下端に沿って並べて表示された各種の機能の項目を指定するためのファンクションキー群114などが備えられる。
【0017】
数値・演算記号キー群111としては、[0]~[9](数値)キー、[+][-][×][÷](四則演算子)キー、[EXE](実行)キー111E、[AC](クリア)キーなどが配列される。
【0018】
関数機能キー群112としては、[□/□](分数)キー、[√□](ルート)キー、[sin](サイン)キー、[cos](コサイン)キー、[tan](タンジェント)キー、[∫dx](積分)キーなどが配列される。
【0019】
また、キー入力部11のキーは、関数機能キー群112の[SHIFT]キーが操作された後に続けて操作されることで、そのキートップに表記されたキー機能ではなく、そのキーの上縁に沿ってキー入力部11のパネル上に記載された文字列や記号に対応するキーとして機能できるようになっている。
【0020】
これにより、キー入力部11は、数値、変数、記号、演算子、関数を選択的に指定してユーザ任意の多様な計算式を入力できる。
【0021】
表示部12は、ドットマトリクス型のカラー液晶表示ユニットからなる。
【0022】
<関数電卓10の機能>
図2は、関数電卓10において入力された計算式を表示させるための数式表示制御機能と、計算式の計算を実行させるための数式計算実行機能と、計算式の表示対象要素と計算対象要素とを対応付ける対応情報を生成するための対応情報生成機能とを説明する図である。
【0023】
実施形態の関数電卓10は、少なくとも以下の機能(a)~(d)を有する。
【0024】
(a)入力された計算式を、その演算子(関数)および引数(定数、数値)を表示対象要素として数学自然表示(演算子や数値を左右に並べるだけでなく上下方向にも広がって表示させる表示形態)させるための階層的な表示指定情報を生成する数式表示制御機能(表示用パーサ<LatexやMath MLなど>を含む数式表示制御部14a1による)。
【0025】
(b)入力された計算式を、その演算子(関数)および引数(定数、数値)を計算対象要素として演算優先度(図3の14b参照)に基づく構文木に解析し、構文木の先頭ノード(計算対象要素)から再帰的且つ深さ優先探索的に計算(演算)を実行させるための階層的な計算指定情報(構文木)を生成する数式計算実行機能(計算用パーサ<Prattパーサなど>を含む数式計算実行部14a2による)。
【0026】
(c)計算式の表示対象要素と計算対象要素とを対応付ける対応情報(表示要素計算要素対応情報)を生成するための対応情報生成機能。
【0027】
(d)計算式の計算(演算)の実行に応じて、表示要素計算要素対応情報に基づき計算実行中(計算中)の計算対象要素に対応する表示対象要素を特定し、数学自然表示された計算式のうち、未計算の表示対象要素は未計算を示す色、計算中の表示対象要素は計算中を示す色、計算済みの表示対象要素は計算済みを示す色を指定して識別表示させる機能。
【0028】
図2では、入力された計算式“(2+4)/5”を、電卓制御プログラム12a(図3参照)の表示用パーサを含む数式表示制御部14a1により表示対象要素の階層的な表示指定情報を生成し数学自然表示させると共に、電卓制御プログラム12a(図3参照)の計算用パーサを含む数式計算実行部14a2により計算対象要素の階層的な計算指定情報(構文木)を生成し再帰的且つ深さ優先探索的に計算(演算)を実行する例を示している。
【0029】
そして、数学自然表示させた計算式の各表示対象要素である数値“2”、べき乗数値“3”、加算記号“+”、数値“4”、分数記号“-”、数値“5”は、その各々が、対応情報生成機能により、破線矢印T1~T6に示すように、構文木の各計算対象要素である数値ノード(2)Nv1、関数ノード(べき乗)Nc1および数値ノード(3)Nv2、演算子ノード(+)Nc2、数値ノード(4)Nv3、演算子ノード(/)Nc3、数値ノード(5)Nv4に対応付けられる。
【0030】
これにより、関数電卓10は、入力された計算式“(2+4)/5”の構文木に従い、“2”→“+4”→“/5”と順番に計算(演算)を実行するのに応じて、表示要素計算要素対応情報に基づき数学自然表示された計算式の各表示対象要素を特定し、未計算の表示対象要素を未計算を示す色(表示形態)で、計算中の表示対象要素を計算中を示す色(表示形態)で、計算済みの表示対象要素を計算済みを示す色(表示形態)で識別表示できる。
【0031】
図1の関数電卓10の表示部12は、入力された計算式を数学自然表示させて計算を実行している過程であって、未計算の計算式部分を橙色OGで識別表示させ、計算中の計算式部分を青色BLで識別表示させ、計算済みの計算式部分を黒色BKで識別表示させた状態を示している。
【0032】
なお図1では、本出願の図面を白黒以外の色で表現できないことによる都合上、未計算を示す橙色OGを細い実線で、計算中を示す青色を太い点線で、計算済みを示す黒色BKを太い実線で表現している。後述する図7での計算式の表現についても同様である。
【0033】
<関数電卓10の電子回路>
図3は、電子機器(関数電卓)10の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0034】
電子機器(関数電卓)10の電子回路は、キー入力部11および表示部12に加えて、コンピュータである制御部(CPU)13と、記憶部14と、記録媒体読取部15と、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信部16と、を備えている。CPU13は、少なくとも一つのプロセッサを有している。
【0035】
制御部13は、記憶部14に記憶されている電卓制御プログラム14aに従い回路各部の動作を制御し、キー入力部11からのキー入力信号および外部から通信部16を介して受信される受信信号に応じた各種の演算処理を実行する。
【0036】
電卓制御プログラム14aは、少なくとも前述の機能(a)~(d)を実行するためのプログラムを含む。
【0037】
電卓制御プログラム14aは、記憶部14に予め記憶されていてもよいし、あるいはメモリカードなどの外部記録媒体Mから記録媒体読取部15を介して記憶部14に読み込まれて記憶されたものでもよいし、あるいは外部の通信ネットワークN上のWebサーバ(ここではプログラムサーバ)30から通信部16を介して記憶部14にダウンロードされ記憶されたものであってもよい。電卓制御プログラム14aは、ユーザがキー入力部11の操作によって書き換えできないようになっている。
【0038】
電卓制御プログラム14aがWebサーバ30に記憶され、端末装置のWebブラウザ等からのアクセスに応じて、Webサーバ30が電卓制御プログラム14aを実行して計算式の計算を行うとともに、計算式を識別して表示するための表示データを作成し、作成した表示データを端末装置に送信し、端末装置のWebブラウザが端末装置の表示部で計算式の識別表示を行うようにしてもよい。
【0039】
また、端末装置のWebブラウザ等からのアクセスに応じて、Webサーバ30が電卓制御プログラム14aを端末装置に送信し、端末装置が電卓制御プログラム14aを実行して計算式の計算を行うとともに、端末装置の表示部で計算式の識別表示を行うようにしてもよい。
【0040】
また、計算式の計算を行うためのデータやプログラムと、計算式の識別表示を行うためのデータやプログラムは、Webサーバ30と端末装置とに分けて記憶したり、一方をサーバ30が実行し、他方を端末装置で実行したりするように構成してもよい。この場合、計算式の計算を行うためのデータ(構文木)と、計算式の識別表示を行うためのデータ(数学自然表示用データ)とを関連付ける情報を、ネットワークNを介して送受信するようにしてもよい。
【0041】
これ以外にも、データやプログラムの記憶や実行の各装置への分割をどのように行うかは任意に決めてよい。
【0042】
記憶部14には、さらに、演算優先度データ記憶領域14b、計算式データ記憶領域14c、計算式表示データ記憶領域14d、表示要素計算要素対応データ記憶領域14e、表示要素表示状態データ記憶領域14f、表示モードデータ記憶領域14gおよび作業データ記憶領域14hなどの各種のデータ記憶領域が確保される。
【0043】
演算優先度データ記憶領域14bには、計算式の入力に伴いキー入力部11により入力可能な各種の記号、演算子、関数について、計算式の中での演算優先度(演算を実行する優先順位)を予め設定した演算優先度情報のデータが記憶される。
【0044】
計算式データ記憶領域14cには、キー入力部11の操作に応じて入力された計算式のデータ、計算結果のデータなどが記憶される。
【0045】
計算式表示データ記憶領域14dには、計算式データ記憶領域14cに記憶された計算式を、表示用パーサを含む数式表示制御部14a1に従い数学自然表示の形態に変換した計算式の表示データ(表示対象要素の階層的な表示位置を含む表示指定情報)が記憶される。
【0046】
表示要素計算要素対応データ記憶領域14eには、入力された計算式の表示対象要素と計算対象要素とを対応付ける対応情報(表示要素計算要素対応情報)のデータが記憶される。
【0047】
表示要素表示状態データ記憶領域14fには、入力された計算式の構文木(計算対象要素の階層的な計算順位を含む計算指定情報)に従い計算(演算)を実行する過程において、計算式の計算対象要素のそれぞれが未計算であるか、計算中であるか、計算済みであるかの状態を示すデータが記憶される。
【0048】
表示モードデータ記憶領域14gには、表示部12に表示させた計算式において、計算中の表示対象要素を識別表示させる表示モード(第1表示モードまたは第2表示モード)のデータが、ユーザ操作により選択的に指定されて記憶される。
【0049】
第1表示モードは、計算中の表示対象要素のうち演算記号や関数記号すなわち構文木の演算子(関数)ノードNcn(演算子(関数)ノードNcnの下位で演算対象となっている数値・変数・記号ノードNvを除く)に対応する表示対象要素(計算式部分)を識別表示させる表示モードである。
【0050】
第2表示モードは、計算中の表示対象要素のうち演算記号や関数記号すなわち構文木の演算子(関数)ノードNcnおよび演算子(関数)ノードNcnの下位で演算対象となっている数値・変数・記号ノードNvに対応する表示対象要素(計算式部分)を識別表示させる表示モードである。
【0051】
例えば、図2に示す表示計算式の場合、第1表示モードでは、先ず、関数ノード(べき乗)Nc1に対応するべき乗数値“3”、次に、演算子ノード(+)Nc2に対応する加算記号“+”、次に、演算子ノード(/)Nc3に対応する分数記号“-”が、計算の進行に伴い順番に計算中を示す表示状態で識別表示される。一方、第2表示モードでは、先ず、関数ノード(べき乗)Nc1およびその下位の数値ノード(3)Nv2に対応するべき乗数値“3”、次に、演算子ノード(+)Nc2およびその下位の数値ノード(4)Nv3に対応する加算記号“+”および数値“4”、次に、演算子ノード(/)Nc3およびその下位の数値ノード(5)Nv4に対応する分数記号“-”および数値“5”が、計算の進行に伴い順番に計算中を示す表示状態で識別表示される。
【0052】
すなわち、図1の関数電卓10の表示部12に表示されている計算式は、第1表示モードでの表示状態であって、計算中の演算子ノード(/)に対応する分数記号“-”が計算中を示す青色BLで識別表示された状態を示す。ここで第2表示モードである場合は、計算中の演算子ノード(/)の下位の数値ノード(4)に対応する数値“4”も含めて計算中を示す青色BLで識別表示される。
【0053】
なお、計算式における未計算、計算中、計算済みの表示対象要素(計算式部分)をそれぞれ識別表示させる表示形態は、異なる表示色を指定して識別表示させる表示形態に限らず、例えば、図1で示した通り、それぞれ異なる表示フォントを指定して識別表示させたり、表示フォントの点滅や明暗を指定して識別表示させたりしてもよい。
【0054】
作業データ記憶領域14hには、制御部13による各部の動作の制御に応じて生成または取得される各種のデータが必要に応じて一時的に記憶される。
【0055】
このように構成された電子機器としての関数電卓10は、制御部13が電卓制御プログラム14a(数式表示制御部14a1,数式計算実行部14a2を含む)に記述された命令に従い回路各部の動作を制御し、ソフトウエアとハードウエアとが協働して動作することにより、後述の動作説明で述べるような各種の機能を実現する。
【0056】
(実施形態の動作)
次に、実施形態の電子機器(関数電卓)10の動作について説明する。
【0057】
図4は、電子機器(関数電卓)10の電卓制御プログラム12aに従った計算実行表示処理(その1)を示すフローチャートである。
【0058】
図5は、電子機器(関数電卓)10の電卓制御プログラム12aに従った計算実行表示処理(その2)を示すフローチャートである。
【0059】
図6は、電子機器(関数電卓)10の計算実行表示処理に従い入力された計算式と計算式を解析して生成された階層的な計算指定情報(構文木)を示す図である。
【0060】
図7は、電子機器(関数電卓)10の計算実行表示処理に従った図6に示す計算式の表示遷移を示す図である。
【0061】
ここでは、図6(A)に示す計算式“[{√(2!)}/4]+∫(5~6)sin(x)dx”を入力して計算を実行する場合であって、計算中の表示対象要素を識別表示させる表示モードが第1表示モードに指定されている場合を仮定する。
【0062】
キー入力部11のユーザ操作に応じて計算式が入力されると、制御部13は、入力された計算式の計算式部分を入力順に表示部12に表示させると共に計算式データ記憶領域14cに記憶させる(ステップS1)。
【0063】
[EXE](実行)キー111Eが操作されると、制御部13は、入力された計算式を、表示用パーサを含む数式表示制御部14a1に従い、その計算式の演算子(関数)および引数(定数、数値)を表示対象要素として図6(A)に示すように数学自然表示させるための階層的な表示指定情報を生成し、生成した表示指定情報を含む計算式の表示データを計算式表示データ記憶領域14dに記憶させる(ステップS2)。
【0064】
また制御部13は、入力された計算式を、計算用パーサを含む数式計算実行部14a2に従い、演算子(関数)および引数(定数、数値)を計算対象要素としてその演算優先度(14b)に基づき、図6(B)に示すように構文木に解析し、構文木の先頭ノード(計算対象要素)から再帰的且つ深さ優先探索的に計算(演算)を実行させるための階層的な計算指定情報(構文木)を生成する(ステップS3)。
【0065】
制御部13は、ステップS2にて生成した階層的な表示指定情報に含まれる計算式の各表示対象要素と、ステップS3にて生成した階層的な計算指定情報(構文木)に含まれる計算式の各計算対象要素とを対応付ける表示要素計算要素対応情報を生成し、表示要素計算要素対応データ記憶領域14eに記憶させる(ステップS4)。
【0066】
制御部13は、計算式表示データ記憶領域14dに記憶される計算式の階層的な表示指定情報に含まれる全ての表示対象要素に対して、未計算を示す表示色(ここでは橙色OG)を指定し、計算式を、数式表示制御部14a1に従い、図7(A)に示すように表示部12に橙色OGで数学自然表示させる(ステップS5)。
【0067】
制御部13は、計算式の階層的な計算指定情報(構文木)に含まれる最上位のノード(図6(B)では演算子ノード(+)Nc6)を計算対象要素とし(ステップS6)、計算対象要素(+)Nc6は、それより下位のノード(図6(B)では演算子ノード(/)Nc4および関数ノード(∫)Nc5)を引数とする計算が必要であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0068】
ここで、計算対象要素(+)Nc6は未計算でありその下位のノード(図6(B)では演算子ノード(/)Nc4および関数ノード(∫)Nc5)の計算結果を引数とする計算が必要であると判定されると(ステップS7(Yes))、制御部13は、同計算対象要素(+)Nc6の全ての下位のノード(図6(B)では演算子ノード(/)Nc4および関数ノード(∫)Nc5)は計算済みであるか否かを判定する(ステップS8)。
【0069】
ここで、演算子ノード(/)Nc4および関数ノード(∫)Nc5は何れも未計算であり計算済みではないと判定されると(ステップS8(No))、制御部13は、未計算の下位のノードの1つ(図6(B)では左側が深さ優先探索の優先となり演算子ノード(/)Nc4)を計算対象要素とする(ステップS9)。
【0070】
制御部13は、ステップS9にて計算対象要素とした演算子ノード(/)Nc4も未計算でありその下位のノード(図6(B)では演算子ノード(べき乗)Nc3および数値ノード(4)Nv3)の計算結果を引数とする計算が必要であると判定する(ステップS7(Yes))。
【0071】
また制御部13は、計算対象要素(/)Nc4の全ての下位のノード(図6(B)では演算子ノード(べき乗)Nc3および数値ノード(4)Nv3)は計算済みではないと判定し(ステップS8(No))、未計算の下位のノードの1つ(図6(B)では左側が深さ優先探索の優先となり演算子ノード(べき乗)Nc3)を計算対象要素とする(ステップS9)。
【0072】
また制御部13は、前述同様に、ステップS9にて計算対象要素とした演算子ノード(べき乗)Nc3も未計算でありその下位のノード(図6(B)では関数ノード(√)Nc2および数値ノード(3)Nv2)の計算結果を引数とする計算が必要であると判定する(ステップS7(Yes))。
【0073】
また制御部13は、計算対象要素(べき乗)Nc3の全ての下位のノード(図6(B)では関数ノード(√)Nc2および数値ノード(3)Nv2)は計算済みではないと判定し(ステップS8(No))、未計算の下位のノードの1つ(図6(B)では関数ノード(√)Nc2)を計算対象要素とする(ステップS9)。
【0074】
また制御部13は、前述同様に、ステップS9にて計算対象要素とした関数ノード(√)Nc2も未計算でありその下位のノード(図6(B)では関数ノード(!)Nc1)の計算結果を引数とする計算が必要であると判定する(ステップS7(Yes))。
【0075】
また制御部13は、計算対象要素(√)Nc2の全ての下位のノード(図6(B)では関数ノード(!)Nc1)は計算済みではないと判定し(ステップS8(No))、未計算の下位のノードの1つ(図6(B)では関数ノード(!)Nc1)を計算対象要素とする(ステップS9)。
【0076】
また制御部13は、前述同様に、ステップS9にて計算対象要素とした関数ノード(!)Nc1も未計算でありその下位のノード(図6(B)では数値ノード(2)Nv1)の計算結果を引数とする計算が必要であると判定する(ステップS7(Yes))。
【0077】
ここで制御部13は、計算対象要素(!)Nc1の下位のノード(図6(B)では数値ノード(2)Nv1)は数値なので計算済みであると判定し(ステップS8(Yes))、計算対象要素(!)Nc1の状態を計算中とする(ステップS10)。
【0078】
これにより、制御部13は、計算式を解析した構文木の先頭ノードから深さ優先探索的に計算対象要素の演算子(関数)ノード(ここでは関数ノード(!)Nc1)を特定し、構文木の左側の最深部の演算子(関数)ノードから先頭ノードの方向へ計算を開始する。
【0079】
制御部13は、表示要素計算要素対応情報(14e)に基づいて、計算対象要素(ここでは関数ノード(!)Nc1)に対応する階層的な表示指定情報の表示対象要素(ここでは階乗記号“!”)を特定する(ステップS11)。
【0080】
そして制御部13は、特定した表示対象要素(階乗記号“!”)の表示状態を、数式表示制御部14a1に従い、未計算を示す表示色(橙色OG)から計算中を示す表示色(青色BL)に変更して指定し、図7(B)に示すように計算式の階乗記号“!”を青色BLに変更して識別表示させ(ステップS12)、下位の計算対象要素(数値ノード(2)Nv1)の数値“2”を引数として計算対象要素(関数ノード(!)Nc1)の演算を実行する(ステップS13)。
【0081】
この際、第1表示モードに指定されている場合には、計算対象要素(関数ノード(!)Nc1)の演算対象である引数の数値“2”は、図7(B)で示すように、計算済みに相当する表示色(黒色BK)に指定されて識別表示される。なお、第2表示モードに指定されている場合には、計算対象要素(関数ノード(!)Nc1)の演算対象である引数の数値“2”も計算中を示す表示色(青色BL)に指定されて識別表示される。
【0082】
制御部13は、ステップS13にて実行した演算が終了すると(ステップS14(Yes))、特定した表示対象要素(階乗記号“!”)の表示状態を、数式表示制御部14a1に従い、計算中を示す表示色(青色BL)から計算済みを示す表示色(黒色BK)に変更して指定し、図7(C)に示すように計算式の階乗記号“!”も黒色BKに変更して識別表示させる(ステップS15)。
【0083】
これにより、ユーザは、橙色OGで表示されている未計算の計算式のうちの計算式部分(階乗“!”)について、青色BLに変化して識別表示されることで計算中となった後、黒色BKに変化して識別表示されることで、計算済みとなるまでの時間を、明確に認識することできる。
【0084】
制御部13は、ステップS14にて演算を終了した計算対象要素(関数ノード(!)Nc1)の上位のノード(図6(B)では関数ノード(√)Nc2)を計算対象要素とする(ステップS16)。
【0085】
すると制御部13は、ステップS16にて計算対象要素とした関数ノード(√)Nc2は未計算でありその下位のノード(関数ノード(!)Nc1)の計算結果を引数とする計算が必要であると判定する(ステップS7(Yes))。
【0086】
また制御部13は、計算対象要素(√)Nc2の下位のノード(関数ノード(!)Nc1)は計算済みであると判定し(ステップS8(Yes))、計算対象要素(√)Nc2の状態を計算中とする(ステップS10)。
【0087】
制御部13は、表示要素計算要素対応情報(14e)に基づいて、計算対象要素(関数ノード(√)Nc2)に対応する階層的な表示指定情報の表示対象要素(ルート記号“√”)を特定する(ステップS11)。
【0088】
そして制御部13は、特定した表示対象要素(ルート記号“√”)の表示状態を、数式表示制御部14a1に従い、未計算を示す表示色(橙色OG)から計算中を示す表示色(青色BL)に変更して指定し、図7(C)に示すように計算式のルート記号“√”を青色BLに変更して識別表示させ(ステップS12)、下位の計算対象要素(関数ノード(!)Nc1)の計算結果を引数として計算対象要素(関数ノード(√)Nc2)の演算を実行する(ステップS13)。
【0089】
この際、第1表示モードに指定されている場合には、計算対象要素(関数ノード(√)Nc2)の演算対象である関数ノード(!)Nc1の計算結果に対応する階乗記号“!”は、図7(C)で示すように、計算済みに相当する表示色(黒色BK)に指定されて識別表示される。なお、第2表示モードに指定されている場合には、計算対象要素(関数ノード(√)Nc2)の演算対象である関数ノード(!)Nc1の計算結果に対応する階乗記号“!”も計算中を示す表示色(青色BL)に指定されて識別表示される。
【0090】
制御部13は、ステップS13にて実行した演算が終了すると(ステップS14(Yes))、特定した表示対象要素(ルート記号“√”)の表示状態を、数式表示制御部14a1に従い、計算中を示す表示色(青色BL)から計算済みを示す表示色(黒色BK)に変更して指定し、図7(D)に示すように計算式のルート記号“√”も黒色BKに変更して識別表示させる(ステップS15)。
【0091】
これにより、ユーザは、橙色OGで表示されている未計算の計算式のうちの計算式部分(ルート“√”)についても、前述同様に、青色BLに変化して識別表示されることで計算中となった後、黒色BKに変化して識別表示されることで、計算済みとなるまでの時間を、明確に認識することできる。
【0092】
制御部13は、ステップS14にて演算を終了した計算対象要素(関数ノード(√)Nc2)の上位のノード(図6(B)では関数ノード(べき乗)Nc3)を計算対象要素とする(ステップS16)。
【0093】
すると制御部13は、ステップS16にて計算対象要素とした関数ノード(べき乗)Nc3は未計算でありその下位のノード(関数ノード(√)Nc2)の計算結果を引数とする計算が必要であると判定する(ステップS7(Yes))。
【0094】
また制御部13は、計算対象要素(べき乗)Nc3の下位のノード(関数ノード(√)Nc2)は計算済みであると判定し(ステップS8(Yes))、計算対象要素(べき乗)Nc3の状態を計算中とする(ステップS10)。
【0095】
制御部13は、表示要素計算要素対応情報(14e)に基づいて、計算対象要素(関数ノード(べき乗)Nc3)に対応する階層的な表示指定情報の表示対象要素(ここではべき乗の数値“3”)を特定する(ステップS11)。
【0096】
そして制御部13は、特定した表示対象要素(数値“3”)の表示状態を、数式表示制御部14a1に従い、未計算を示す表示色(橙色OG)から計算中を示す表示色(青色BL)に変更して指定し、図7(D)に示すように計算式のべき乗の数値“3”を青色BLに変更して識別表示させ(ステップS12)、下位の計算対象要素(関数ノード(√)Nc2)の計算結果を引数として計算対象要素(関数ノード(べき乗)Nc3)の演算を実行する(ステップS13)。
【0097】
この際、第1表示モードに指定されている場合には、計算対象要素(関数ノード(べき乗)Nc3)の演算対象である(関数ノード(√)Nc2)の計算結果に対応するルート記号“√”は、図7(D)で示すように、計算済みに相当する表示色(黒色BK)に指定されて識別表示される。なお、第2表示モードに指定されている場合には、計算対象要素(関数ノード(べき乗)Nc3)の演算対象である関数ノード(√)Nc2の計算結果に対応するルート記号“√”も計算中を示す表示色(青色BL)に指定されて識別表示される。
【0098】
制御部13は、ステップS13にて実行した演算が終了すると(ステップS14(Yes))、特定した表示対象要素(べき乗の数値“3”)の表示状態を、数式表示制御部14a1に従い、計算中を示す表示色(青色BL)から計算済みを示す表示色(黒色BK)に変更して指定し、図7(E)に示すように計算式のべき乗の数値“3”も黒色BKに変更して識別表示させる(ステップS15)。
【0099】
これにより、ユーザは、橙色OGで表示されている未計算の計算式のうちの計算式部分(べき乗“3”)についても、前述同様に、青色BLに変化して識別表示されることで計算中となった後、黒色BKに変化して識別表示されることで、計算済みとなるまでの時間を、明確に認識することできる。
【0100】
制御部13は、ステップS14にて演算を終了した計算対象要素(関数ノード(べき乗)Nc3)の上位のノード(図6(B)では演算子ノード(/)Nc4)を計算対象要素とする(ステップS16)。
【0101】
すると制御部13は、前述同様に、ステップS7~S15の処理を実行することで、計算対象要素(/)Nc4の状態を計算中とし、これに対応して特定した表示対象要素(分数記号“-”)の表示状態を、未計算を示す表示色(橙色OG)から計算中を示す表示色(青色BL)に変更して指定する。そして、図7(E)に示すように計算式の分数記号“-”を青色BLに変更して識別表示させ、計算対象要素(/)Nc4の演算を実行した後に、表示対象要素(分数記号“-”)の表示状態を、計算中を示す表示色(青色BL)から計算済みを示す表示色(黒色BK)に変更して指定し、図7(F)に示すように計算式の分数記号“-”も黒色BKに変更して識別表示させる。
【0102】
制御部13は、前述同様に、演算を終了した計算対象要素(演算子ノード(/)Nc4)の上位のノード(図6(B)では最上位のノードとなる演算子ノード(+)Nc6)を計算対象要素とする(ステップS16)。
【0103】
すると制御部13は、ステップS16にて計算対象要素とした演算子ノード(+)Nc6は未計算でありその下位のノード(図6(B)では演算子ノード(/)Nc4および関数ノード(∫)Nc5)の計算結果を引数とする計算が必要であると判定する(ステップS7(Yes))。
【0104】
また制御部13は、計算対象要素(+)Nc6の全ての下位のノード(図6(B)では演算子ノード(/)Nc4および関数ノード(∫)Nc5)は計算済みではないと判定し(ステップS8(No))、未計算の下位のノードの1つ(図6(B)では関数ノード(∫)Nc5)を計算対象要素とする(ステップS9)。
【0105】
制御部13は、前述同様に、ステップS9にて計算対象要素とした関数ノード(∫)Nc5も未計算でありその下位のノード(図6(B)では関数ノード(sin)Nc51および変数ノード(x)Nv41および数値ノード(5)Nv42および数値ノード(6)Nv43)を引数とする計算が必要であると判定する(ステップS7(Yes))。
【0106】
制御部13は、計算対象要素(∫)Nc5の下位のノードである関数ノード(sin)Nc51および変数ノード(x)Nv41はその組合せに基づき計算済みであると判定すると共に、同下位のノードである数値ノード(5)Nv42および数値ノード(6)Nv43もその数値に基づき計算済みであると判定し(ステップS8(Yes))、計算対象要素(∫)Nc5の状態を計算中とする(ステップS10)。
【0107】
すると制御部13は、前述同様に、計算対象要素(∫)Nc5に対応して特定した表示対象要素(積分記号“∫dx”)の表示状態を、未計算を示す表示色(橙色OG)から計算中を示す表示色(青色BL)に変更して指定し、図7(F)に示すように計算式の積分記号“∫dx”を青色BLに変更して識別表示させる(ステップS11,S12)。
【0108】
この際、第1表示モードに指定されている場合には、計算対象要素(関数ノード(∫)Nc5)の演算対象である関数ノード(sin)Nc51および変数ノード(x)Nv41および数値ノード(5)Nv42および数値ノード(6)Nv43に対応するサイン記号“sin”および変数記号“x”および数値“5”“6”は、図7(F)で示すように、計算済みに相当する表示色(黒色BK)に指定されて識別表示される。なお、第2表示モードに指定されている場合には、計算対象要素(関数ノード(∫)Nc5)の演算対象に対応するサイン記号“sin”および変数記号“x”および数値“5”“6”も計算中を示す表示色(青色BL)に指定されて識別表示される。
【0109】
そして制御部13は、計算対象要素(∫)Nc5の演算を実行した後に、表示対象要素(積分記号“∫dx”)の表示状態を、計算中を示す表示色(青色BL)から計算済みを示す表示色(黒色BK)に変更して指定し、図7(G)に示すように計算式の積分記号“∫dx”も黒色BKに変更して識別表示させる(ステップS13~S15)。
【0110】
制御部13は、ステップS14にて演算を終了した計算対象要素(関数ノード(∫)Nc5)の上位のノード(図6(B)では最上位のノードとなる演算子ノード(+)Nc6)を計算対象要素とする(ステップS16)。
【0111】
すると制御部13は、前述同様に、ステップS7~S15の処理を実行することで、計算対象要素(+)Nc6の状態を計算中とし、これに対応して特定した表示対象要素(加算記号“+”)の表示状態を、未計算を示す表示色(橙色OG)から計算中を示す表示色(青色BL)に変更して指定する。そして、図7(G)に示すように計算式の加算記号“+”を青色BLに変更して識別表示させ、計算対象要素(+)Nc6の演算を実行した後に、表示対象要素(加算記号“+”)の表示状態を、計算中を示す表示色(青色BL)から計算済みを示す表示色(黒色BK)に変更して指定し、図7(H)に示すように計算式の加算記号“+”も黒色BKに変更して識別表示させる。
【0112】
これにより、ユーザは、橙色OGで表示されている未計算の計算式“[{√(2!)}/4]+∫(5~6)sin(x)dx”のうちの各計算式部分について、“( )!”→“√( )”→“( )”→“( )/4”→“∫( )dx”→“( )+( )”と順番に青色BLに変化して識別表示され計算中となった後、黒色BKに変化して識別表示されることで、計算式全体の連続する計算の中でそれぞれの計算式部分が計算済みとなるまでの時間を明確に認識し把握することできる。
【0113】
(実施形態のまとめ)
実施形態の電子機器(関数電卓)10によれば、入力された計算式を、階層的な表示指定情報に従い数学自然表示させると共に、解析した構文木(階層的な計算指定情報)に従い再帰的且つ深さ優先探索的な優先順位に従い計算(演算)を実行する。そして、計算式の計算(演算)を各計算対象要素の優先順に従い順番に実行するのに応じて、表示要素計算要素対応情報に基づき数学自然表示された計算式の各表示対象要素を特定し、未計算の表示対象要素を未計算を示す表示形態(例えば橙色OG)で、計算中の表示対象要素を計算中を示す表示形態(例えば青色BL)で、計算済みの表示対象要素を計算済みを示す表示形態(例えば黒色BK)で識別表示する。
【0114】
これにより、ユーザは、未計算の計算式のうち、計算中の計算式部分が計算中を示す表示形態に変化して識別表示され、その計算後は計算済みを示す表示形態に変化して識別表示されることで、計算の進行を途中で中断させることなく、計算式に含まれる各計算式部分のそれぞれについて、計算済みとなるまでの時間(進捗)を明確に認識し把握できるようになる。
【0115】
ユーザは、例えば、計算を行っている状況によって、ある計算式部分の計算に時間が掛かり過ぎて不都合な場合に、現在の計算式による計算を停止させて別の計算式による計算に変えたり、計算が必要な次の計算式の計算に移ったりして対処することで、その不都合さを効率よく軽減できる。
【0116】
よって、実施形態の電子機器(関数電卓)10によれば、計算式の全体を表示したままで計算式の各計算部分の実際の計算に要する時間(進捗)がわかるように、実時間での計算の進行に合わせて計算式の識別表示を更新して行くことが可能になる。
【0117】
また、主に四則演算のように左から順番に計算を実行していくような計算式に限らず、より複雑な構文木で解析される計算式や、数学自然表示が必要な計算式について、計算式の各部の計算の順番や計算に要する時間が(進捗)わかるように表示することが可能になる。
【0118】
なお、前記実施形態では、計算式の各計算式部分(表示対象要素/計算対象要素)について、計算中(演算の実行中)は計算中を示す表示形態に変更して識別表示させ、計算後(演算の終了後)は計算済みを示す表示形態に変更して識別表示させたが、このうち計算中を示す表示形態では、該当する計算式部分の計算(演算)の進行に応じてその表示形態を連続的あるいは段階的に変化させてよい。
【0119】
例えば、表示色を変化させる場合は色の濃淡を変化(淡色から濃色に変化)させたり、表示フォントを変化させる場合はフォントの濃淡またはフォントの点滅速度を変化(低速から高速に変化)させたりする。これによれば、ユーザは、計算式の各計算式部分での計算の時間(進捗)をより詳細且つ直観的に把握できるようになる。この場合は特に、繰返しの演算を必要とする計算式部分の識別表示に有効となる。
【0120】
また、前記実施形態では、入力された計算式の構文木に基づいた各計算部分の再帰的な計算の順番に従って計算式の計算を実行すると共に、計算中の各計算部分を識別表示させたが、計算の実行とは関係なく、計算式の各計算部分の再帰的な計算の順番に従って各計算部分を識別表示させてよい。これによれば、より複雑な構文木で解析される計算式について、計算式の各部の計算の順番がわかるように表示できる。
【0121】
以上の実施形態において記載した電子機器(関数電卓)10による各処理の手法、すなわち、図3および図4のフローチャートに示す計算実行表示処理などの各手法は、何れもコンピュータに実行させることができるプログラムとして、メモリカード(ROMカード、RAMカードなど)、磁気ディスク(フロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの外部記録装置の媒体に格納して配布することができる。そして、電子機器の制御部(CPU)は、この外部記録装置の媒体に記録されたプログラムを記憶装置に読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、実施形態において説明した各種の機能を実現し、前述した手法による同様の処理を実行することができる。
【0122】
また、各手法を実現するためのプログラムのデータは、プログラムコードの形態として通信ネットワーク(N)上を伝送させることができ、この通信ネットワーク(N)に接続されたコンピュータ装置(プログラムサーバ)から、前記プログラムのデータを電子機器に取り込んで記憶装置に記憶させ、前述した各種の機能を実現することもできる。
【0123】
なお、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0124】
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲の主要な請求項について、実施形態での対応個所(符号、段落番号など)および効果について記載する。
【0125】
[請求項1]
入力された計算式を表示部に表示させ(図1の12;図4のS1~S5;図7(A))、
前記計算式の構文木を解析し(図2図4のS3;図6)、
前記計算式の構文木に基づいて前記計算式に含まれる各計算部分の再帰的な計算の順番を特定し(図4図5のS6~S9)、
前記再帰的な計算の順番に従って、前記計算式における各計算部分を識別表示させる(図5のS7~S16;図6図7(B)~(H)のBL,BK)、
制御部(13)を備えた電子機器。
【0126】
ユーザは、主に四則演算のように左から順番に計算を実行していくような計算式に限らず、より複雑な構文木で解析される計算式について、計算式の各部の計算の順番を容易に確認できる。
【0127】
[請求項2]
前記制御部(13)は、
入力された前記計算式を数学自然表示の表示形態で表示部に表示させ(図1の12;図4のS5;図7(A)~(H))、
前記再帰的な計算の順番に従って、数学自然表示の表示形態で表示させた前記計算式における各計算部分を識別表示させる(図4図5のS6~S16;図7(A)~(H)のOG,BL,BK)、
請求項1に記載の電子機器。
【0128】
ユーザは、入力した計算式を数学自然表示の表示形態で表示させた状態で、再帰的な計算の順番に従った各計算部分の計算の順番を容易に確認できる。
【0129】
[請求項3]
前記制御部(13)は、
前記再帰的な計算の順番に従って前記計算式の計算を実行するとともに、前記計算式における計算中の計算部分を識別表示させる(図4図5のS6~S16;図7(A)~(H)のOG,BL,BK)、
請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【0130】
ユーザは、入力した計算式を表示させた状態で、表示中の計算式における再帰的な計算の順番に従った各計算部分を計算の進行とともに容易に確認できる。
【0131】
[請求項4]
前記制御部(13)は、
前記計算式の全体を数学自然表示の表示形態で表示させた状態で(図4のS5)、前記計算の進行とともに前記識別表示させる計算部分を変更する(図5のS7~S16;図7(A)~(H)のOG,BL,BK)、
請求項3に記載の電子機器。
【0132】
ユーザは、入力した計算式を数学自然表示の表示形態で表示させた状態で、各計算部分の計算の進行状況を容易に確認できる。
【0133】
[請求項5]
前記制御部(13)は、
複数の演算子の演算優先度を定める優先度情報を取得し(図3の14b)、
前記優先度情報に定められた前記演算子の演算優先度に基づき、前記計算式に含まれる複数の演算子の再帰的な計算の順番を示す構文木を解析する(図2図4のS3;図6;段落[0064])、
請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【0134】
ユーザは、入力した計算式の各計算部分の計算の順番を、各計算部分に含まれる演算子の演算優先度に応じた順番で容易に確認できる。
【0135】
[請求項6]
前記制御部(13)は、
前記計算式に含まれる計算中の演算子と、前記計算中の演算子により演算対象となっている前記計算式の計算部分とを、未計算の計算部分とは識別して識別表示させる(図4図5のS5,S12,S15;図7(A)~(H)のOG,BL,BK)、
請求項3に記載の電子機器。
【0136】
ユーザは、入力した計算式の計算中において、各計算部分の計算の進行状況を、未計算の計算部分と、計算中の計算部分とに分けて容易に確認できる。
【0137】
[請求項7]
前記制御部(13)は、
ユーザ操作に応じて指定される第1表示制御状態または第2表示制御状態のいずれかに応じて、前記計算式における計算中の計算部分を識別表示させるものであり(図3の14g;段落[0048]~[0053])、
前記第1表示制御状態では、前記計算式の構文木で示される特定階層の計算部分を対象として、前記計算の進行に従い識別表示させ(段落[0049])、
前記第2表示制御状態では、前記計算式の構文木で示される全ての階層の計算式部分を対象として、前記計算の進行に従い識別表示させる(段落[0050])、
請求項3に記載の電子機器。
【0138】
ユーザは、第1表示制御状態(第1表示モード)を指定した場合には、入力した計算式の各計算部分の計算の進行状況を、計算式の構文木で示される特定階層の計算部分(演算子(関数)ノードNcn)が識別表示されることにより容易に確認でき、また、第2表示制御状態(第2表示モード)を指定した場合には、入力した計算式の各計算部分の計算の進行状況を、特定階層の計算部分(演算子(関数)ノードNcn)およびその特定階層に対応する計算対象の計算部分(数値・変数・記号ノードNv)が識別表示されることにより容易に確認できる。
【0139】
[請求項8]
前記制御部(13)は、
前記計算式の計算を途中で中断することなく進行させていき(図4図5のS6~S16)、
前記計算中の計算部分の計算の終了に伴わせて前記識別表示させる計算部分を変更していく(図5のS10~S15;図7(A)~(H)のOG,BL,BK)、
請求項3に記載の電子機器。
【0140】
ユーザは、入力した計算式の全体を表示させたままで、計算式の各計算部分の実際の計算に要する時間(進捗)を、実時間での計算の進行に合わせて容易に確認できる。
【0141】
[請求項9]
前記制御部(13)は、
前記計算中の計算部分を、未計算、計算中、計算済みを示す状態に分けて識別表示させる(図4図5のS5,S12,S15;図7(A)~(H)のOG,BL,BK)、
請求項3に記載の電子機器。
【0142】
ユーザは、入力した計算式の計算中において、各計算部分の計算の進行状況を、未計算、計算中、計算済みを示す状態に分けて容易に確認できる。
【0143】
[請求項10]
前記制御部(13)は、
前記表示されている前記計算式の計算部分を、前記計算部分の表示形態を変更して識別表示させる(図5のS12,S15;図7(B)~(H)のBL,BK;段落[0053])、
請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【0144】
ユーザは、入力した計算式の各計算部分の計算の順番を、各計算部分の表示形態が変更されて識別表示されることにより明確且つ容易に確認できる。
【0145】
[請求項11]
前記表示形態の変更は、表示色の変更である(図5のS12,S15;図7(B)~(H)のBL,BK)、
請求項10に記載の電子機器。
【0146】
ユーザは、入力した計算式の各計算部分の計算の順番を、各計算部分の表示色が変更されて識別表示されることにより明確且つ容易に確認できる。
【0147】
[請求項12]
前記表示形態の変更は、表示フォントの変更である(段落[0053])、
請求項10に記載の電子機器。
【0148】
ユーザは、入力した計算式の各計算部分の計算の順番を、各計算部分の表示フォントが変更されて識別表示されることにより明確且つ容易に確認できる。
【符号の説明】
【0149】
10 …電子機器(関数電卓)
11 …キー入力部
111…数値・演算記号キー群
112…関数機能キー群
12 …表示部
13 …制御部(CPU)
14 …記憶部
14a…電卓制御プログラム
14a1…数式表示制御部
14a2…数式計算実行部
14b…演算優先度データ記憶領域
14c…計算式データ記憶領域
14d…計算式表示データ記憶領域
14e…表示要素計算要素対応データ記憶領域
14f…表示要素表示状態データ記憶領域
14g…表示モードデータ記憶領域
14h…作業データ記憶領域
16 …近距離無線通信部
30 …Webサーバ
N …通信ネットワーク(Web)
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図7