(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098381
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】積層基板に関するシミュレーション装置、およびシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20240716BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H05K3/00 D
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001862
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 継紅
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 章夫
(72)【発明者】
【氏名】天花寺 英明
(72)【発明者】
【氏名】小松 信之
(72)【発明者】
【氏名】高根沢 悟
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA32
5E316CC02
5E316CC09
5E316CC14
5E316CC32
5E316CC34
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC39
5E316EE08
5E316GG28
5E316HH11
5E316HH31
(57)【要約】
【課題】積層基板の寸法安定性を容易に評価することができるようにする。
【解決手段】シミュレーション方法は、複数の材料を含む積層基板(10)の製造時または加工時の変形をコンピュータ(100)がシミュレーションする方法であって、前記コンピュータ(100)が前記積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)の一部の要素を有効化または無効化する工程を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の材料を含む積層基板(10)の製造時または加工時の変形をコンピュータ(100)がシミュレーションする方法であって、
前記コンピュータ(100)が前記積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)の一部の要素を有効化または無効化する工程を含む、シミュレーション方法。
【請求項2】
無効化された前記要素を有効化することで前記シミュレーションモデル(20)に生じた変位を除去するように前記シミュレーションモデル(20)を変形させる変形処理を前記コンピュータ(100)が行う工程を含む、請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項3】
前記コンピュータ(100)が前記変形に対応する反力を前記シミュレーションモデル(20)に作用させるとともに前記変形処理を解除する工程を含む、請求項2に記載のシミュレーション方法。
【請求項4】
前記積層基板(10)は、第1部分(11)と、第2部分(12)と、第3部分(13)とを含み、前記第3部分(13)に前記第2部分(12)が接合された後、前記第2部分(12)に前記第1部分(11)が接合され、
前記コンピュータ(100)は、前記第3部分(13)に前記第2部分(12)が接合されるときの温度を初期温度として前記第1部分(11)を示す要素(21)、前記第2部分(12)を示す要素(22)および前記第3部分(13)を示す要素(23)を含んだ前記積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)を作成する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
【請求項5】
有限要素法を用いて前記シミュレーションを行う、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
【請求項6】
前記コンピュータ(100)上で前記シミュレーションモデル(20)の要素を有効化または無効化することにより、前記積層基板(10)を構成する各層を積層する工程、または、前記積層基板(10)を加工する工程を表現する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
【請求項7】
前記積層基板(10)を構成する各層の材料特性には、温度依存性のある材料物性が含まれる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
【請求項8】
前記積層基板(10)を構成する各層の材料特性には、等方性弾性体の材料構成式、または等方性非弾性体の材料構成式が含まれ、
前記等方性弾性体には、弾塑性体、粘弾塑性体、弾粘塑性体、またはクリープ変形体が含まれる、請求項7に記載のシミュレーション方法。
【請求項9】
前記積層基板(10)を構成する各層の材料特性には、異方性弾性体の材料構成式、または異方性非弾性体の材料構成式が含まれ、
前記異方性非弾性体には、異方性弾塑性体、異方性粘弾塑性体、異方性弾粘塑性体、または異方性クリープ変形体が含まれる、請求項7に記載のシミュレーション方法。
【請求項10】
前記異方性弾性体の材料構成式、または前記異方性非弾性体の材料構成式については、直交異方性体の材料構成式を用いる、請求項9に記載のシミュレーション方法。
【請求項11】
前記異方性弾性体の材料構成式、または前記異方性非弾性体の材料構成式については、Hillの直交異方性体の材料構成式を用いる、請求項10に記載のシミュレーション方法。
【請求項12】
前記コンピュータ(100)が前記積層基板(10)の寸法安定性を評価する評価工程を含み、
前記評価工程では、前記積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)を用いて前記積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスをシミュレーションしたときの前記シミュレーションモデル(20)上の所定の2点間の距離(E,e)の変化に関する値(R)に基づいて前記積層基板(10)の寸法安定性が評価される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
【請求項13】
前記コンピュータ(100)が前記シミュレーションモデル(20)にシミュレーションによるエッチング処理を施す工程を含み、
前記所定の2点間の距離(E,e)の変化は、前記エッチング処理を施す前の前記所定の2点間の距離(E)と、前記エッチング処理を施した後の前記所定の2点間の距離(e)とを比較したときの前記所定の2点間の距離(E,e)の変化を示す、請求項12に記載のシミュレーション方法。
【請求項14】
前記シミュレーションモデル(20)には、前記積層基板(10)に形成される孔(15)を示す領域(W)が複数設けられ、
前記所定の2点間の距離(E,e)は、前記複数の領域(W)のうちの1つの領域(W)内の点と、前記複数の領域(W)のうちの他の1つの領域(W)内の点との距離である、請求項12に記載のシミュレーション方法。
【請求項15】
前記コンピュータ(100)が前記積層基板(10)の寸法安定性を評価する評価工程と、
前記コンピュータ(100)が前記シミュレーションモデル(20)にシミュレーションによるエッチング処理を施す工程と
を含み、
前記シミュレーションモデル(20)には、前記積層基板(10)に形成される孔(15)を示す領域(W)が設けられ、
前記評価工程では、前記エッチング処理を施す前の前記領域(W,W1)に対する、前記エッチング処理を施した後の前記領域(W,W2)の位置ズレ量に基づいて、前記積層基板(10)の寸法安定性が評価される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
【請求項16】
前記評価工程は、前記積層基板(10)の成形時、または前記積層基板(10)の加工時における前記積層基板(10)の各層の変形、前記各層に作用する応力、または前記各層のひずみを予測する工程を含む、請求項12に記載のシミュレーション方法。
【請求項17】
前記積層基板(10)は、第1部分(11)と、第2部分(12)とを含み、
前記積層基板(10)の製造時において、前記第2部分(12)に前記第1部分(11)が接合されていない状態は、前記コンピュータ(100)上では、前記第2部分(12)を示す要素(22)が有効化されるが前記第1部分(11)を示す要素(21)が無効化された状態で示され、
前記積層基板(10)の製造時において、前記第2部分(12)に前記第1部分(11)が接合された状態は、前記コンピュータ(100)上では、前記第1部分(11)を示す要素(21)および前記第2部分(12)を示す要素(22)の各々が有効化された状態で示される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
【請求項18】
前記積層基板(10)は、前記積層基板(10)を貫通する孔(15)が形成される所定個所を含み、
前記積層基板(10)の製造時または加工時において、前記所定個所に前記孔(15)が形成されていない状態は、前記コンピュータ(100)上では、前記所定個所を示す要素(25)が有効化された状態で示され、
前記積層基板(10)の製造時または加工時において、前記所定個所に前記孔(15)が形成された状態は、前記コンピュータ(100)上では、前記シミュレーションモデル(20)における前記所定個所を示す要素(25)が無効化された状態で示される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
【請求項19】
複数の材料を含む積層基板(10)の製造時または加工時の変形をシミュレーションする装置であって、
前記積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)の一部の要素を有効化または無効化する制御部を備える、シミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層基板に関するシミュレーション装置、およびシミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層の厚さとその材料物性を制御することにより積層基板の寸法安定性が図られてきた(例えば、特許文献1)。積層基板の寸法安定性を評価する際、試作試験が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、試作試験により積層基板の寸法安定性の評価が行われる場合、評価対象とする積層基板の製造プロセスを試作品を用いて実際に再現し、さらに、製造プロセスで生じる積層基板の寸法の変化を実際に計測していかなければならないので、時間とコストとを要することになり、寸法安定性の評価点数も限られてくる。そのため、試験試作の評価結果のみに基づいて、積層基板の最適な構成仕様を見いだすことが困難である。また試験試作だけでは、往々にして問題の本質を見抜くことも難しい。
【0005】
本開示の目的は、積層基板の寸法安定性を容易に評価することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、シミュレーション方法とする。シミュレーション方法は、複数の材料を含む積層基板(10)の製造時または加工時の変形をコンピュータ(100)がシミュレーションする方法であって、前記コンピュータ(100)が前記積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)の一部の要素を有効化または無効化する工程を含む。
【0007】
第1の態様では、積層基板(10)の寸法安定性を容易に評価することができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、シミュレーション方法は、無効化された前記要素を有効化することで前記シミュレーションモデル(20)に生じた変位を除去するように前記シミュレーションモデル(20)を変形させる変形処理を前記コンピュータ(100)が行う工程を含む。
【0009】
第2の態様では、無効化された要素を有効化することでシミュレーションモデル(20)に生じた変位が除去されることで、積層基板(10)の寸法とシミュレーションモデル(20)の寸法との間にズレが生じることを防止することができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第2の態様において、シミュレーション方法は、前記コンピュータ(100)が前記変形に対応する反力を前記シミュレーションモデル(20)に作用させるとともに前記変形処理を解除する工程を含む。
【0011】
第3の態様では、変形処理によるシミュレーションモデル(20)の変形を、反力による変形に置き換えることで、シミュレーションモデル(20)を強制的に変形させる変形処理を解除してシミュレーションを継続することができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1の態様~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記積層基板(10)は、第1部分(11)と、第2部分(12)と、第3部分(13)とを含み、前記第3部分(13)に前記第2部分(12)が接合された後、前記第2部分(12)に前記第1部分(11)が接合され、前記コンピュータ(100)は、前記第3部分(13)に前記第2部分(12)が接合されるときの温度を初期温度として前記第1部分(11)を示す要素(21)、前記第2部分(12)を示す要素(22)および前記第3部分(13)を示す要素(23)を含んだ前記積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)を作成する。
【0013】
第4の態様では、第1部分(11)を示す要素と第2部分(12)を示す要素と第3部分(13)を示す要素とを含んだ状態のシミュレーションモデル(20)を用いて、積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスのシミュレーションを開始することができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1の態様~第4の態様のいずれか1つにおいて、有限要素法を用いて前記シミュレーションを行う。
【0015】
第5の態様では、有限要素法を用いてシミュレーションを行うことができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1の態様~第5の態様のいずれか1つにおいて、前記コンピュータ(100)上で前記シミュレーションモデル(20)の要素を有効化または無効化することにより、前記積層基板(10)を構成する各層を積層する工程、または、前記積層基板(10)を加工する工程を表現する。
【0017】
第6の態様では、積層基板(10)を構成する各層が積層された状態のシミュレーションモデル(20)を用いて、積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスのシミュレーションを開始することができる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1の態様~第6の態様のいずれか1つにおいて、前記積層基板(10)を構成する各層の材料特性には、温度依存性のある材料物性が含まれる。
【0019】
第7の態様では、温度依存性を考慮して積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスのシミュレーションを行うことができる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第7の態様において、前記積層基板(10)を構成する各層の材料特性には、等方性弾性体の材料構成式、または等方性非弾性体の材料構成式が含まれ、前記等方性非弾性体には、弾塑性体、粘弾塑性体、弾粘塑性体、またはクリープ変形体が含まれる。
【0021】
第8の態様では、等方性弾性体の材料構成式または等方性非弾性体の材料構成式が使用されたシミュレーションを行うことができる。
【0022】
本開示の第9の態様は、第7の態様において、前記積層基板(10)を構成する各層の材料特性には、異方性弾性体の材料構成式、または異方性非弾性体の材料構成式が含まれ、前記異方性非弾性体には、異方性弾塑性体、異方性粘弾塑性体、異方性弾粘塑性体、または異方性クリープ変形体が含まれる。
【0023】
第9の態様では、異方性弾性体の材料構成式または異方性非弾性体の材料構成式が使用されたシミュレーションを行うことができる。
【0024】
本開示の第10の態様は、第9の態様において、前記異方性弾性体の材料構成式、または前記異方性非弾性体の材料構成式については、直交異方性体の材料構成式を用いる。
【0025】
第10の態様では、異方性弾性体の材料構成式、または前記異方性非弾性体の材料構成式については、直交異方性体の材料構成式を用いてシミュレーションを行うことができる。
【0026】
本開示の第11の態様は、第10の態様において、前記異方性弾性体の材料構成式、または前記異方性非弾性体の材料構成式については、Hillの直交異方性体の材料構成式を用いる。
【0027】
第11の態様では、異方性弾性体の材料構成式、または前記異方性非弾性体の材料構成式については、Hillの直交異方性体の材料構成式を用いてシミュレーションを行うことができる。
【0028】
本開示の第12の態様は、第1の態様~第11の態様のいずれか1つにおいて、シミュレーション方法は、前記コンピュータ(100)が前記積層基板(10)の寸法安定性を評価する評価工程を含み、前記評価工程では、前記積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)を用いて前記積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスをシミュレーションしたときの前記シミュレーションモデル(20)上の所定の2点間の距離(E,e)の変化に関する値(R)に基づいて前記積層基板(10)の寸法安定性が評価される。
【0029】
第12の態様では、所定の2点間の距離(E,e)の変化に関する値(R)に基づいて積層基板(10)の寸法安定性を評価することができる。
【0030】
本開示の第13の態様は、第12の態様において、シミュレーション方法は、前記コンピュータ(100)が前記シミュレーションモデル(20)にシミュレーションによるエッチング処理を施す工程を含み、前記所定の2点間の距離(E,e)の変化は、前記エッチング処理を施す前の前記所定の2点間の距離(E)と、前記エッチング処理を施した後の前記所定の2点間の距離(e)とを比較したときの前記所定の2点間の距離(E,e)の変化を示す。
【0031】
第13の態様では、エッチング処理の前後の所定の2点間の距離(E,e)の変化に基づいて積層基板(10)の寸法安定性を評価することができる。
【0032】
本開示の第14の態様は、第12の態様または第13の態様において、前記シミュレーションモデル(20)には、前記積層基板(10)に形成される孔(15)を示す領域(W)が複数設けられ、前記所定の2点間の距離(E,e)は、前記複数の領域(W)のうちの1つの領域(W)内の点と、前記複数の領域(W)のうちの他の1つの領域(W)内の点との距離である。
【0033】
第14の態様では、2点間のの距離(E,e)の変化に基づいて積層基板(10)の寸法安定性を評価することができる。
【0034】
本開示の第15の態様は、第1の態様~第11の態様のいずれか1つにおいて、シミュレーション方法は、前記コンピュータ(100)が前記積層基板(10)の寸法安定性を評価する評価工程と、前記コンピュータ(100)が前記シミュレーションモデル(20)にシミュレーションによるエッチング処理を施す工程とを含み、前記シミュレーションモデル(20)には、前記積層基板(10)に形成される孔(15)を示す領域(W)が設けられ、前記評価工程では、前記エッチング処理を施す前の前記領域(W,W1)に対する、前記エッチング処理を施した後の前記領域(W,W2)の位置ズレ量に基づいて、前記積層基板(10)の寸法安定性が評価される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。
【0035】
第15の態様では、領域(W,W1)に対する領域(W,W2)の位置ズレ量に基づいて積層基板(10)の寸法安定性を評価することができる。
【0036】
本開示の第16の態様は、第12~第15の態様のいずれか1つにおいて、前記評価工程は、前記積層基板(10)の成形時、または前記積層基板(10)の加工時における前記積層基板(10)の各層の変形、前記各層に作用する応力、または前記各層のひずみを予測する工程を含む。
【0037】
第16の態様では、積層基板(10)の各層の変形、各層に作用する応力、または各層のひずみに基づいて積層基板(10)の寸法安定性を評価することができる。
【0038】
本開示の第17の態様は、第1の態様~第16の態様のいずれか1つにおいて、前記積層基板(10)は、第1部分(11)と、第2部分(12)とを含み、前記積層基板(10)の製造時において、前記第2部分(12)に前記第1部分(11)が接合されていない状態は、前記コンピュータ(100)上では、前記第2部分(12)を示す要素(22)が有効化されるが前記第1部分(11)を示す要素(21)が無効化された状態で示され、前記積層基板(10)の製造時において、前記第2部分(12)に前記第1部分(11)が接合された状態は、前記コンピュータ(100)上では、前記第1部分(11)を示す要素(21)および前記第2部分(12)を示す要素(22)の各々が有効化された状態で示される。
【0039】
第17の態様では、第1部分(11)を示す要素(21)を無効化または有効化することで、第2部分(12)に第1部分(11)が接合されていない状態、または第2部分(12)に第1部分(11)が接合された状態を表現することができる。
【0040】
本開示の第18の態様は、第1の態様~第17の態様のいずれか1つにおいて、前記積層基板(10)は、前記積層基板(10)を貫通する孔(15)が形成される所定個所を含み、前記積層基板(10)の製造時または加工時において、前記所定個所に前記孔(15)が形成されていない状態は、前記コンピュータ(100)上では、前記所定個所を示す要素(25)が有効化された状態で示され、前記積層基板(10)の製造時または加工時において、前記所定個所に前記孔(15)が形成された状態は、前記コンピュータ(100)上では、前記シミュレーションモデル(20)における前記所定個所を示す要素(25)が無効化された状態で示される。
【0041】
第18の態様では、所定個所を示す要素を有効化または無効化することで、積層基板(10)に孔が形成されていない状態、または積層基板(10)に孔が形成された状態を表現することができる。
【0042】
本開示の第19の態様は、シミュレーション装置を対象とする。シミュレーション装置は、複数の材料を含む積層基板(10)の製造時または加工時の変形をシミュレーションする。シミュレーション装置は、前記積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)の一部の要素を有効化または無効化する制御部(140)を備える。
【0043】
第19の態様では、積層基板(10)の寸法安定性を容易に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図2】
図2(a)~
図2(c)は、積層基板が積層される工程を示す模式図である。
【
図3】
図3は、シミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1層の応力ひずみ線図を示す第1情報の図である。
【
図5】
図5は、第1層の線膨張係数を示す第2情報の図である。
【
図6】
図6は、制御部の動作を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、製造・加工処理を示すフロー図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(c)は、積層基板の各層の構成を示す模式図である。
【
図9】
図9(a)~
図9(c)は、積層基板のシミュレーションモデルの構成を示す模式図である。
【
図10】
図10(a)~
図10(c)は、シミュレーションの開始時のシミュレーションモデルを示す模式図である。
【
図11】
図11(a)~
図11(c)は、第1昇温処理が行われたときのシミュレーションモデルを示す模式図である。
【
図12】
図12(a)~
図12(c)は、第1要素が有効化されたときのシミュレーションモデルを示す模式図である。
【
図13】
図13(a)~
図13(c)は、変形処理、および解除処理が行われたときのシミュレーションモデルを示す模式図である。
【
図14】
図14(a)~
図14(c)は、エッチング処理が行われる前の孔を示す要素の位置を表す模式図である。
【
図15】
図15(a)~
図15(c)は、エッチング処理が行われた後の孔を示す要素の位置を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付し、詳細な説明及びそれに付随する効果等の説明は繰り返さない。
【0046】
―積層基板―
積層基板(10)は、例えば、高周波基板(例えば、5G向けの高周波基板)、プリント基板、または積層回路基板(多層基板)として用いられる。
図1に示すように、積層基板(10)は、第1層(11)と、一対の第2層(12)と、一対の第3層(13)とを備える。一対の第3層(13)の間に一対の第2層(12)が位置し、一対の第2層(12)の間に第1層(11)が位置する。第1層(11)と一対の第2層(12)とは、例えば、125μm程度の厚みを有する。第3層(13)は、例えば、18μm程度の厚みを有する。
【0047】
第1層(11)は、ポリフェニレンエーテル(PPE)およびエポキシ樹脂のような樹脂を含む。第2層(12)は、フッ素樹脂のような樹脂を含む。フッ素樹脂の好ましい形態の一つとして、TFE単位及びPAVE単位を含むTFE/PAVE共重合体[PFA]が挙げられる。第2層(12)に含まれる樹脂の種類は、第1層(11)に含まれる樹脂の種類と異なる。第3層(13)は、金属を含む。第3層(13)に含まれる金属は、銅、ステンレス、アルミニウム、鉄、銀、金、ルテニウム及び、それらの合金からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、銅、銀、金、ステンレス及びアルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、銅であることが更に好ましい。ステンレスとしては、オーステナイト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス等が挙げられる。銅としては、例えば、圧延銅、電解銅等が挙げられる。
【0048】
積層基板(10)の製造時において、第1層(11)と第2層(12)と第3層(13)とは、1つのプロセスで接合(固定)されず、2つのプロセスを経て接合される。第2層(12)に含まれる樹脂と、第1層(11)に含まれる樹脂とは、接合に必要な加熱温度が異なるので、第2層(12)を接合するための第1接合処理と、第1層(11)を接合するための第2接合処理とを、加熱温度を異ならせて別個に行わなければならないからである。
【0049】
図2(a)に示すように、第1接合処理では、第2層(12)と第3層(13)とがプレス機等で加熱及び加圧されることで、第2層(12)の片面に第3層(13)が接合された一対の接合体(14)が製造される。第1接合処理において、第2層(12)に第3層(13)を接合する際、第3層(13)に含まれる金属の接合に必要な第1接合温度になるように第2層(12)と第3層(13)が昇温される。第1接合温度は、例えば、300℃である。
【0050】
図2(b)および
図2(c)に示すように、第2接合処理では、一対の接合体(14)の間に第1層(11)を配置して、一対の接合体(14)と第1層(11)とがプレス機等で加熱及び加圧されることで、一対の接合体(14)に第1層(11)が接合される。第2接合処理において、一対の接合体(14)に第1層(11)を接合する際、接合体(14)を構成する第2層(12)と第3層(13)とは既に互いに固定されているので、第1層(11)に含まれる樹脂の接合に必要な第2接合温度になるように第1層(11)と一対の接合体(14)が昇温される。第2接合温度は、第1接合温度と異なる温度である。第2接合温度は、例えば、190℃である。
【0051】
―全体構成―
図3を参照して、本発明に係るシミュレーション装置の実施例であるシミュレーション装置(100)について説明する。
図2は、シミュレーション装置(100)の構成を示すブロック図である。
【0052】
シミュレーション装置(100)は、複数の材料を含む積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスをシミュレーションすることで積層基板(10)の寸法安定性を評価する。シミュレーション装置(100)は、例えば、PC(Personal Computer)を含む。
図3に示すように、シミュレーション装置(100)は、表示部(110)と、入力部(120)と、記憶部(130)と、制御部(140)とを備える。
【0053】
表示部(110)は、ディスプレイ等を含み、シミュレーション結果等の情報を表示する。入力部(120)は、シミュレーション装置(100)に対する外部からの指示の入力を受け付ける。入力部(120)は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等を含む。
【0054】
記憶部(130)は、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置(例えば、半導体メモリ)を含み、補助記憶装置(例えば、ハ-ドディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、SD(Secure Digital)メモリカード、又は、USB(Universal Seral Bus)フラッシメモリ)をさらに含んでもよい。記憶部(130)は、制御部(140)によって実行される種々のコンピュータープログラムを記憶する。
【0055】
制御部(140)は、CPU及びMPUのようなプロセッサーを含む。制御部(140)は、記憶部(130)に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、シミュレーション装置(100)の各構成要素を制御する。制御部(140)は、例えば、ANSYS等のような市販の有限要素法のプログラム(汎用プログラム)、又は、専用プログラムを実行することで、積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスをシミュレーションする。本実施例では、制御部(140)は、積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスをシミュレーションする際、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いる。
【0056】
―特性情報―
特性情報は、積層基板(10)を構成する各層(第1層(11)、第2層(12)および第3層(13))の材料特性を示す情報である。特性情報は、積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスをシミュレーションする際に、積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)を作成ための情報としてシミュレーション装置(100)に入力される。
【0057】
図4および
図5に示すように、第1層(11)の特性情報は、例えば、第1層(11)の材料の応力ひずみ線図を示す第1情報(G1)と、第1層(11)の材料の線膨張係数(ppm)を示す第2情報(G2)とを含む。
図5に示すように、第1情報(G1)は、第1層(11)の複数の温度と、各温度のときの第1層(11)の材料の応力ひずみ線図とを対応付けた情報である。第1情報(G1)は、第1層(11)の材料の温度と材料の応力ひずみ線図との相関を規定しており、第1層(11)の材料の応力ひずみ線図の温度依存性(温度により材料の応力ひずみ線図が変化すること)を示している。
図6に示すように、第2情報(G2)は、第1層(11)の複数の温度と、各温度のときの第1層(11)の材料の線膨張係数とを対応付けた情報である。第2情報(G2)は、第1層(11)の材料の温度と材料の線膨張係数との相関を規定しており、第1層(11)の材料の線膨張係数の温度依存性(温度により材料の線膨張係数が変化すること)を示している。第2情報(G2)のα1~α6は実数である。
【0058】
第2層(12)の特性情報は、例えば、第2層(12)の材料の応力ひずみ線図を示す第3情報と、第2層(12)の材料の線膨張係数を示す第4情報とを含む。第3情報は、上記第1情報(G1)(
図5参照)と同様に、第2層(12)の複数の温度と、各温度のときの第2層(12)の材料の応力ひずみ線図とを対応付けた情報であり、第2層(12)の材料の応力ひずみ線図の温度依存性を示している。第4情報は、上記第2情報(G2)(
図6参照)と同様に、第2層(12)の複数の温度と、各温度のときの第2層(12)の材料の線膨張係数とを対応付けた情報であり、第2層(12)の材料の線膨張係数の温度依存性を示している。
【0059】
第3層(13)の特性情報は、例えば、第3層(13)の材料の応力ひずみ線図を示す第5情報と、第3層(13)の材料の線膨張係数を示す第6情報とを含む。第5情報は、上記第1情報(G1)(
図5参照)と同様に、第3層(13)の複数の温度と、各温度のときの第3層(13)の材料の応力ひずみ線図とを対応付けた情報であり、第3層(13)の材料の応力ひずみ線図の温度依存性を示している。第6情報は、第3層(13)の材料の線膨張係数の温度依存性を考慮せず、第3層(13)の温度に関係なく一定の線膨張係数となる。なお、第6情報においても、上記第2情報(G2)(
図6参照)と同様に、第3層(13)の複数の温度と、各温度のときの第3層(13)の材料の線膨張係数とを対応付けた情報とし、第3層(13)の材料の線膨張係数の温度依存性が示されていてもよい。
【0060】
以上のように、本実施例では、積層基板(10)を構成する各層の材料特性には、温度依存性のある材料物性が含まれる。
【0061】
―制御部の動作―
制御部(140)によりシミュレーションが行われる手順について説明する。本実施例では、制御部(140)は、積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスをシミュレーションすることで、積層基板(10)の寸法安定性を評価する。積層基板(10)の寸法安定性を評価するは、積層基板(10)を製造または加工する過程で積層基板(10)を構成する材料に生じる寸法の変化が抑制されるか否かを評価することである。制御部(140)は、積層基板(10)の寸法安定性が確保されているか否かを判定することで、積層基板(10)の寸法安定性を評価する。
【0062】
図3及び
図6に示すように、ステップS10において、入力部(120)が基板情報の入力を受け付ける。基板情報は、シミュレーションの対象となる積層基板(10)を構成する各層の形状、幅、厚さ等の外観に関する情報、積層基板(10)を構成する各層の特性情報等を含む。
【0063】
ステップS20において、制御部(140)は、基板情報に基づいて積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)を作成する。シミュレーションモデル(20)は、コンピュータであるシミュレーション装置(100)上で、積層基板(10)の物理モデルを仮想的な形で表した数理モデルである。シミュレーションモデル(20)は、第1層(11)に相当する第1要素(21)と、第2層(12)に相当する第2要素(22)と、第3層(13)に相当する第3要素(23)とを含む。
【0064】
ステップS30において、制御部(140)は、製造・加工処理を実行する。製造・加工処理は、シミュレーションモデル(20)を用いて積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスをシミュレーションにより実行することである。製造・加工処理では、上記の第1接合処理が終了した段階、すなわち、接合体(14)(
図2(a)参照)が製造された段階から、積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスのシミュレーションが開始される。
図8(a)から
図8(c)に示すように、積層基板(10)の各層(第1層(11)、一対の第2層(12)、および一対の第3層(13))が、Z軸方向に沿って第3層(13)、第2層(12)、第1層(11)、第2層(12)および第3層(13)の順番に積層される。本実施例では、積層基板(10)がX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に対称であるため、積層基板(10)をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に沿って8等分したうちの1つの積層基板(10A)のシミュレーションモデル(20A)を用いて、積層基板(10A)の製造プロセスまたは加工プロセスのシミュレーションが行われる。積層基板(10)を8等分したうちの1つの積層基板(10A)を用いてシミュレーションを行うことで、制御部(140)の演算負荷を低減できる。なお、8等分されていない元のシミュレーションモデル(20)を用いて積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスのシミュレーションが行われてもよい。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。
【0065】
積層基板(10A)は、第1層(11)の一部(X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に沿って8等分したうちの1つ)である第1層(11A)と、第2層(12)の一部である第2層(12A)と、第3層(13)の一部である第3層(13A)とを含む。第1層(11A)と第2層(12A)と第3層(13A)とは、Z軸方向に沿って第1層(11A)、第2層(12A)および第3層(13A)の順番に配置される。
【0066】
図8(a)~
図9(c)に示すように、シミュレーションモデル(20A)は、第1層(11A)に相当する第1要素(21A)と、第2層(12A)に相当する第2要素(22A)と、第3層(13A)に相当する第3要素(23A)とを含む。
【0067】
図3、
図7および
図10(a)~
図10(c)に示すように、ステップS31において、制御部(140)は、シミュレーションモデル(20A)に含まれる各要素(第1要素(21A)、第2要素(22A)および第3要素(23A))のうち、第1要素(21A)を無効化し、第2要素(22A)と第3要素(23A)とを有効化する。
【0068】
以下では、シミュレーションモデル(20A)のうち、第1要素(21A)を無効化し、第2要素(22A)と第3要素(23A)とを有効化したものを第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)と記載することがある。
【0069】
第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)は、接合体(14A)(
図2(a)参照)をシミュレーション装置(100)上で表した数理モデルである。接合体(14A)は、接合体(14)の一部である。第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)は、無効化された第1要素(21A)と、有効化された第2要素(22A)と、有効化された第3要素(23A)とを含む。
【0070】
要素を無効化することは、無効にされる要素に対する剛性マトリクスに、例えば、1.0e―6のような小さい乗数を掛け、全体の質量のマトリクスには無効にされた要素が影響しないようにし、無効にされた要素に対して荷重ベクトルが生成されないようにすることである。要素を無効化することで、無効化された要素の解析依存の状態変数(応力、塑性、クリープ、ひずみ等)がゼロに設定される。
【0071】
要素を有効化することは、無効化による制限(要素の解析依存の状態変数をゼロに設定する、荷重ベクトルが生成されない等)が要素に課せられないようにすることである。
【0072】
制御部(140)は、第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)を作成すると、第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の温度(初期温度)を、第2層(12A)に第3層(13A)を接合するときの温度である上記の第1接合温度(例えば、300℃)に設定する。
【0073】
ステップS32において、制御部(140)は、第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の温度が第1接合温度から第1温度となるように第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)を降温させるシミュレーション(第1降温処理)を行い、第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の第1熱変形解析を実施する。
図10(a)~
図10(c)の点線(L1)は、第1降温処理により収縮した第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の外形を示す。第1温度は、上記の第1接合温度よりも低い温度であり、本実施例では常温(例えば、25℃)である。
【0074】
図3、
図7および
図11(a)~
図11(c)に示すように、ステップS33において、制御部(140)は、第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の温度が第1温度から上記の第2接合温度(例えば、190℃)となるように第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)を昇温させるシミュレーション(第1昇温処理)を行い、第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の熱変形解析を実施する。
図11(a)~
図11(c)の点線(L2)は、第1昇温処理により膨張した第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の外形を示す。熱変形解析の結果、
図11(a)~
図11(c)の点線(L2)に示す第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の第1要素(21A)のX軸方向の端部位置(AB)と、Y軸方向の端部位置(CD)とが確認される。X軸方向の端部位置、およびY軸方向の端部位置は、X軸、Y軸およびZ軸で構成される座標系において、一方の端部をZ軸上に配置したときの他方の端部の位置である。
【0075】
制御部(140)は、第1昇温処理により膨張した第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の端部位置を示す情報を記憶部(130)に記憶させる。本実施例では、端部位置(AB)を示す情報と、端部位置(CD)を示す情報とが記憶される。
【0076】
図3、
図7および
図12(a)~
図12(c)に示すように、ステップS34において、制御部(140)は、第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の温度を第2接合温度に保持した状態で、第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)の第1要素(21A)を有効化する。その結果、シミュレーションモデル(20A)に含まれる全ての要素(第1要素(21A)、第2要素(22A)および第3要素(23A))が有効化される。
【0077】
以下では、シミュレーションモデル(20A)のうち、第1要素(21A)、第2要素(22A)および第3要素(23A)の全ての要素を有効化したものを第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)と記載することがある。
【0078】
第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)は、積層基板(10A)(
図2(a)参照)をシミュレーション装置(100)上で表した数理モデルである。第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)は、有効化された第1要素(21A)と、有効化された第2要素(22A)と、有効化された第3要素(23A)とを含む。
【0079】
図10(a)~
図10(c)に示す第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)では第1要素(21A)が無効化されることで第1要素(21A)に制限(要素の解析依存の状態変数をゼロに設定する、荷重ベクトルが生成されない等)が課せられている。ステップS34において、
図12(a)~
図12(c)に示す第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)が作成される際、第1要素(21A)が有効化されると、第1要素(21A)に課せられていた上記制限が解除される。制御部(140)は、このときの第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の変形解析を実施する。上記制限の解除に起因して第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)が変形(収縮まはた膨張)する。
図12(a)~
図12(c)の点線(L3)は、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)で変形解析を実施した後の外形を示す。変形解析の結果、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)(図~の点線(L3))に含まれる第1要素(21A)のX軸方向の端部位置(ab)と、Y軸方向の端部位置(cd)とが確認される。第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の端部位置(ab)よりも第1シミュレーションモデル(20A1)の端部位置(AB)の方がZ軸からX軸方向に離れた場所に位置する。第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の端部位置(cd)よりも第1シミュレーションモデル(20A1)の端部位置(CD)の方がZ軸からY軸方向に離間した場所に位置する。
【0080】
図3、
図7および
図13(a)~
図13(c)に示すように、ステップS35において、制御部(140)は、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の温度を第2接合温度に保持した状態で、変形処理を行う。変形処理は、無効化された要素を有効化することでシミュレーションモデル(20A)に生じた変位を除去するようにシミュレーションモデル(20A)を強制的に変形させる処理である。以下では、強制的に変形させることを強制変位と記載することがある。変形には、変位が含まれる。
【0081】
本実施例では、ステップS34において、第1要素(21A)が有効化されることで第1シミュレーションモデル(20A, 20A1)から第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)が作成されるが、第1要素(21A)が有効化されることにより、第1要素(21A)のX軸方向の端部位置が端部位置(AB)から端部位置(ab)へ変位し、Y軸方向の端部位置が端部位置(CD)から端部位置(cd)へ変位している(
図12(a)~
図12(c)参照)。
【0082】
図12(a)~
図13(c)に示すように、本実施例では、制御部(140)は、変形処理として、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の第1要素(21A)のX軸方向の端部位置を端部位置(ab)から端部位置(AB)へ強制変位させ、Y軸方向の端部位置を端部位置(cd)から端部位置(CD)へ強制変位させる処理が行われる。その結果、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の外形が点線(L3)(
図12(a)~
図12(c)参照)から、点線(L2)(
図13(a)~
図13(c)参照)に変更される。
【0083】
図3、
図7および
図13(a)~
図13(c)に示すように、ステップS36において、制御部(140)は、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の温度を第2接合温度に保持した状態で、解除処理を行う。
【0084】
解除処理は、変形処理によるシミュレーションモデル(20A)の変形(強制変位)に対応する反力をシミュレーションモデル(20A)に作用させるとともに変形処理を解除する処理である。変形(強制変位)に対応する反力を作用させることは、変形処理が行われる直前の形状に戻すような力を作用させることである。変形処理を解除することは、変形処理によりシミュレーションモデル(20A)が変形(強制変位)している状態を解除することである。解除処理を行うことで、シミュレーションモデル(20A)に対して強制変位を作用させてシミュレーションモデル(20A)を変形処理が行われる直前の形状に戻す解析問題が、シミュレーションモデル(20A)に対して反力を作用させてシミュレーションモデル(20A)を変形処理が行われる直前の形状に戻す解析問題に置き換えられる。変形処理されたシミュレーションモデル(20A)の形状と、解除処理されたシミュレーションモデル(20A)の形状とは、同じである。
【0085】
本実施例では、制御部(140)は、解除処理を行うことで、強制変位させた第1要素(21A)の端部位置(AB,CD)を示す領域の節点に対して強制変位に対応する反力を作用させ、さらに、変形処理が解除される。その結果、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の端部位置が反力により端部位置(AB, CD)に位置するものと解析される。
【0086】
図3、
図7および
図14(a)~
図14(c)に示すように、ステップS37において、制御部(140)は、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の温度が第2接合温度から第2温度となるように第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)を降温させるシミュレーション(第2降温処理)を行い、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の熱変形解析を実施する。
図14(a)~
図14(c)の点線(L4)は、第2降温処理により収縮した第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の外形を示す。第2温度は、上記の第2接合温度よりも低い温度であり、本実施例では常温(例えば、25℃)である。
【0087】
図3、
図7および
図14(a)~
図14(c)に示すように、ステップS38において、制御部(140)は、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の温度を第2温度に保持した状態で、孔開け処理を行う。孔開け処理は、積層基板(10A)の所定個所に孔を形成する処理をシミュレーションモデル(20A)上でシミュレーションにより表現する処理である。
【0088】
本実施例では、制御部(140)は、孔開け処理として、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)における所定個所を示す要素(25)を無効化して、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の変形解析を実施する。本実施例では、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の要素(25)を無効化することが、積層基板(10A)の所定個所に孔(15)(
図8(a)~
図8(c)参照)を形成することを表現している。無効化された要素(25)(
図14(a)~
図14(c)参照)は、孔(15)を示している。無効化された要素(25)によって構成される領域(W)は、積層基板(10A)の孔(15)を示している。
【0089】
以下では、孔開け処理が行われた直後の要素(25)を、第1孔要素(25.251)と記載することがある。孔開け処理が行われた直後の領域(W)を、第1孔領域(W,W1)と記載することがある。
【0090】
ステップS39において、制御部(140)は、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の温度が第2温度から第3温度となるように第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)を昇温させるシミュレーション(第2昇温処理)を行い、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の熱変形解析を実施する。第3温度は、積層基板(10A)の第3層(13A)にエッチングを施すときの積層基板(10A)の温度であり、第2温度よりも高く、例えば、43℃である。
【0091】
ステップS3Aにおいて、制御部(140)は、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の温度を第3温度に保持した状態で、エッチング処理を行う。エッチング処理は、積層基板(10A)の第3層(13A)にエッチングを施す処理をシミュレーションモデル(20A)上でシミュレーションにより表現する処理である。
【0092】
本実施例では、制御部(140)は、エッチング処理として、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)における第3層(13A)を示す第3要素(23A)を無効化して、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の変形解析を実施する。本実施例では、第3要素(23A)を無効化することが、第3層(13A)にエッチングを施すことを表現している。
【0093】
図3、
図7および
図15(a)~
図15(c)に示すように、ステップS3Bにおいて、制御部(140)は、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の温度が第3温度から第4温度となるように第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)を降温させるシミュレーション(第3降温処理)を行い、第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の熱変形解析を実施する。
図15(a)~
図15(c)の点線(L5)は、第3降温処理により収縮した第2シミュレーションモデル(20A, 20A2)の外形を示す。第4温度は、上記の第3温度よりも低い温度であり、本実施例では常温(例えば、25℃)である。
【0094】
以下では、第3降温処理が行われた直後の要素(25)を、第2孔要素(25.252)と記載することがある。第3降温処理が行われた直後の領域(W)を、第2孔領域(W,W2)と記載することがある。
【0095】
ステップS3Bが終了すると、処理がステップS40へ移行する。
【0096】
ステップS40において、制御部(140)は、評価処理を行う。評価処理は、積層基板(10)の寸法安定性を評価する処理である。本実施例では、制御部(140)は、エッチング処理(ステップS3A参照)の前後での2つの領域(W)の距離の変化率R(%)に基づいて積層基板(10)の寸法安定性を評価する。変化率Rは、積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)を用いて積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスをシミュレーションしたときのシミュレーションモデル(20)上の所定の2点間の距離(E,e)の変化に関する値(R)の一例である。
【0097】
制御部(140)は、下記数1を用いて変化率Rを出力する。
【0098】
(数1)
R=(e―E)/E×100
【0099】
Eは、エッチング処理(ステップS3A参照)が施される前の2つの領域(W)の距離である。2つの領域(W)の距離は、1つの領域(W)の点と、他の1つの領域(W)の点との距離を示す。本実施例では、領域(W)の点は、領域(W)の中心点である。本実施例では、Eは、X軸方向に離間する2つの第1孔領域(W,W1)の距離である(
図9(a)の寸法線が実線で示されるE参照)。本実施例では、シミュレーションモデル(20A)は、シミュレーションモデル(20)をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に対称に8等分したうちの1つである(
図9(a)~
図9(c)参照)。よって、Eは第1孔領域(W,W1)のX軸方向の距離E1(
図14(a)~
図14(c)参照)を2倍した値となる(E=E1×2)。
【0100】
eは、エッチング処理(ステップS3A参照)が施された後の2つの領域(W)の距離である。本実施例では、eは、X軸方向に離間する2つの第2孔領域(W,W2)の距離である(
図9(a)の寸法線が実線で示されるe参照)。eは、第2孔領域(W,W2)のX軸方向の距離e1(
図15(a)~
図15(c)参照)を2倍した値となる(e=e1×2)。なお、
図9(a)について、Eとeとが図面上では同じ大きさで表されているが、
図9(a)は、Eとeとがシミュレーションモデル(20)上のどの範囲に該当するかを示しているにすぎず、Eとeとの寸法を表しているわけではない。
【0101】
なお、Eは、第1孔領域(W,W1)のY軸方向の距離E2(
図14(a)~
図14(c)参照)を2倍した値であってもよい(E=E2×2)(
図9(a)の寸法線が点線で示されるE参照)。この場合、eは、第2孔領域(W,W2)のY軸方向の距離e2(
図15(a)~
図15(c)参照)を2倍した値となる(e=e2×2)(
図9(a)の寸法線が点線で示されるe参照)。
【0102】
制御部(140)は、例えば、変化率Rが所定の閾値の範囲内の値である場合は積層基板(10)の寸法安定性が確保されていると判定し、変化率Rが所定の閾値の範囲内の値でない場合は積層基板(10)の寸法安定性が確保されていないと判定する。
【0103】
図16は、変化率Rをシミュレーション装置(100)によるシミュレーションで出力した計算値と、実験により出力した実験値との比較結果を示す。
図16において、白抜きの丸は実験値を示し、黒抜きの丸は計算値を示す。実験値は、第2層(12)(第2要素(22))の厚さを10μmに固定して変化率Rを出力したものである。
図16に示すように、シミュレーション装置(100)によるシミュレーションを行う際に第2層(12)(第2要素(22))の厚さを10μmに設定した場合、計算値と実験値とで変化率Rが略同じになる。その結果、シミュレーション装置(100)が変化率Rを精度よく出力できることが確認された。
【0104】
なお、制御部(140)は、評価処理を行う際、積層基板(10)の成形時、または積層基板(10)の加工時における積層基板(10)の各層の変形、前記各層に作用する応力、または前記各層のひずみを予測してもよい。
【0105】
―効果―
以上のように、シミュレーション装置(100)の制御部(140)は、積層基板(10)の製造時または加工時の変形をシミュレーションし、積層基板(10)の製造プロセスまたは加工プロセスのシミュレーションを行う際、積層基板(10)のシミュレーションモデル(20)の一部の要素を有効化または無効化する。これにより、コンピュータであるシミュレーション装置(100)にシミュレーションを行わせることで試作試験を行う必要がなくなるので、積層基板(10)の寸法安定性を容易に評価することができる。
【0106】
また、シミュレーション装置(100)によるシミュレーションにより積層基板(10)の寸法安定性を評価するので、試作品を実際に用意する必要がなく、寸法安定性の評価点数を容易に増やすことができる。その結果、シミュレーション装置(100)による積層基板(10)の寸法安定性の評価結果に基づいて、積層基板(10)の最適な構成仕様を容易に見いだすことができる。
【0107】
また、試作試験で把握が困難な積層基板(10)における残留応力、残留ひずみ等の分布等を、シミュレーション装置(100)による上記のシミュレーションを行うことで容易に把握することができ、さらに、積層基板(10)の寸法安定性に及ぼす設計パラメータの影響や反りの発生メカニズムを解明できるため、シミュレーション装置(100)による評価結果を(フィルム)材料開発の指針とすることができる。また、フィルム用素材として用いられる樹脂材料の応用範囲が広がり、用途開発を行いやすくなる。また、評価結果に基づいてフィルムを用いた積層基板(10)の製造条件や積層構成を容易に最適化することができる。
【0108】
また、制御部(140)は、無効化された要素を有効化することでシミュレーションモデル(20)に生じた変位を除去するようにシミュレーションモデル(20)を変形させる変形処理を行う。これにより、積層基板(10)の寸法とシミュレーションモデル(20)の寸法との間にズレが生じることを防止することができる。
【0109】
また、制御部(140)は、変形処理による変形に対応する反力をシミュレーションモデル(20)に作用させるとともに変形処理を解除する。これにより、変形処理によるシミュレーションモデル(20)の変形を、反力による変形に置き換えることで、シミュレーションモデル(20)を強制的に変形させる変形処理を解除してシミュレーションを継続することができる。
【0110】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう(例えば、下記(1)~(6))。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0111】
(1)積層基板(10)を構成する各層の材料特性には、等方性弾性体の材料構成式、または等方性非弾性体の材料構成式が含まれていてもよい。等方性非弾性体は、弾塑性体、粘弾塑性体、弾粘塑性体、またはクリープ体を含む。
【0112】
(2)積層基板(10)を構成する各層の材料特性には、異方性弾性体の材料構成式、または異方性非弾性体の材料構成式が含まれていてもよい。異方性非弾性体には、異方性弾性体、異方性粘弾塑性体、異方性弾粘塑性体、または異方性クリープ変形体が含まれる。異方性は、対象物を引っ張る際、引っ張る方向によって当該対象物の応力ひずみ線図が異なる性質を示す。
【0113】
(3)異方性弾性体の材料構成式については、直交異方性体の材料構成式が用いられてもよい。また、異方性弾性体の材料構成式については、Hillの直交異方性体の材料構成式(Hillポテンシャル理論)が用いられてもよい。
【0114】
(4)異方性非弾性体の材料構成式については、直交異方性体の材料構成式が用いられてもよい。また、異方性非弾性体の材料構成式については、Hillの直交異方性体の材料構成式(Hillポテンシャル理論)が用いられてもよい。
【0115】
(5)本実施例では、積層基板(10)は、3種類の材料(第1部分(11)、第2部分(12)、および第3部分(13))で構成される。しかし、本発明はこれに限定されない。積層基板(10)は、4種類以上の材料で構成されていてもよい。積層基板(10)は、4種類以上の材料で構成される場合、少なくとも、第1層(11)と、一対の第2層(12)と、一対の第3層(13)とを備えていればよい。例えば、積層基板(10)は、4種類の材料で構成される場合、第1層(11)と、一対の第2層(12)と、一対の第3層(13)と、一対の第4層とを備え、一対の第4層の間に一対の第3層(13)が位置し、一対の第3層(13)の間に一対の第2層(12)が位置し、一対の第2層(12)の間に第1層(11)が位置する構造を有する。積層基板(10)が4種類以上の材料で構成されると、シミュレーションモデル(20)についても、第1部分(11)、第2部分(12)、および第3部分(13)を含んだ、4種類以上の部分で構成される。本実施例は、積層基板(10)が3種類の材料から構成されることで、2つの接合温度(第1接合温度および第2接合温度)が用いられる。積層基板(10)が4種類以上の材料から構成される場合は、3つ以上の接合温度が用いられてもよい。例えば、積層基板(10)が4種類の材料(第1層(11)、第2層(12)、第3層(13)および第4層)で構成される場合、第2層(12)と第3層(13)とが接合される際は第1接合温度で接合され、第1層(11)と第2層(12)とが接合される際は第2接合温度で接合され、第3層(13)と第4層とが接合される際は第3接合温度で接合される。また、本実施例は、制御部(140)によりシミュレーションが行われる際、1回の強制変位および解除処理(ステップS35およびステップS36)が行われる。積層基板(10)が4種類以上の材料から構成される場合は、強制変位および解除処理が2回以上行われてもよい。例えば、積層基板(10)が4種類の材料で構成され、第3層(13)と第4層とが接合された状態からシミュレーションが開始される場合、開始時のシミュレーションモデル(20A)は、第3層(13)を示す第3要素(23A)と第4層を示す第4要素とが有効化され、第1層(11)を示す第1要素(21A)と第2層(12)を示す第2要素(22A)とが無効化されている。この状態から、第2要素(22A)を有効化することによって第3層(13)に第2層(12)を接合する処理が表され、第1要素(21A)を有効化することによって第2層(12)に第1層(11)を接合する処理が表される。この場合、第2要素(22A)が有効化されたときに1回目の強制変位および解除処理が行われ、第1要素(21A)が有効化されたときに2回目の強制変位および解除処理が行われる。
【0116】
(6)本実施例では、ステップS40において、制御部(140)は、2点間の距離(E,e)の変化率Rに基づいて、積層基板(10)の寸法安定性を評価する。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部(140)は、第1孔領域(W,W1)に対する第2孔領域(W,W2)の位置ズレ量に基づいて、積層基板(10)の寸法安定性を評価してもよい。第1孔領域(W,W1)に対する第2孔領域(W,W2)の位置ズレ量は、例えば、第1孔領域(W,W1)の中心点に対する第2孔領域(W,W2)の中心点の位置ズレ量である。制御部(140)は、第1孔領域(W,W1)に対する第2孔領域(W,W2)の位置ズレ量が所定の範囲内である場合は積層基板(10)の寸法安定性が確保されていると判定し、第1孔領域(W,W1)に対する第2孔領域(W,W2)の位置ズレ量が所定の範囲内でない場合は積層基板(10)の寸法安定性が確保されていないと判定する。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上説明したように、本開示は、シミュレーション装置、およびシミュレーション方法について有用である。
【符号の説明】
【0118】
10 積層基板
11 第1層(第1部分)
12 第2層(第2部分)
13 第3層(第3部分)
15 孔
21 第1要素(第1部分を示す要素)
22 第2要素(第2部分を示す要素)
23 第3要素(第3部分を示す要素)
25 孔を示す要素
20 シミュレーションモデル
100 シミュレーション装置(コンピュータ)
140 制御部