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特開2024-98384印刷装置、異常処理方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098384
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】印刷装置、異常処理方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J2/01 207
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001867
(22)【出願日】2023-01-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大竹 雅樹
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB40
2C056EC07
2C056EC26
(57)【要約】
【課題】印刷を中止する異常が発生した場合に、インク又は記録媒体の不要な消費を抑制することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、主制御回路と、前記主制御回路に直列的に接続され、前記主制御回路からの印刷データを上流から下流に転送する副制御回路群と、前記副制御回路群によって駆動されるヘッド群とを備え、前記副制御回路群は、第1副制御回路と、前記第1副制御回路の上流側又は下流側に接続される第2副制御回路とを含み、前記ヘッド群は、前記第1副制御回路によって駆動される第1ヘッドと、前記第2副制御回路によって駆動される第2ヘッドとを含み、前記第1副制御回路又は前記第1ヘッドに異常が発生した場合、前記第1副制御回路は前記第2副制御回路に前記ヘッド群を停止させる停止信号を送信する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主制御回路と、
前記主制御回路に直列的に接続され、前記主制御回路からの印刷データを上流から下流に転送する副制御回路群と、
前記副制御回路群によって駆動されるヘッド群と
を備え、
前記副制御回路群は、第1副制御回路と、前記第1副制御回路の上流側又は下流側に接続される第2副制御回路とを含み、
前記ヘッド群は、前記第1副制御回路によって駆動される第1ヘッドと、前記第2副制御回路によって駆動される第2ヘッドとを含み、
前記第1副制御回路又は前記第1ヘッドに異常が発生した場合、前記第1副制御回路は前記第2副制御回路に前記ヘッド群を停止させる停止信号を送信する
印刷装置。
【請求項2】
前記副制御回路群は、前記第2副制御回路の上流側又は下流側に接続され、前記第1副制御回路とは異なる第3副制御回路を含み、
前記第2副制御回路が前記第1副制御回路から前記停止信号を受信したか否かを判定し、
前記第2副制御回路が前記第1副制御回路から前記停止信号を受信した場合、前記第2副制御回路は前記第2ヘッドの駆動を停止させ、かつ、前記第3副制御回路に前記停止信号を送信する
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記副制御回路群は、前記第2副制御回路の上流側又は下流側に接続され、前記第1副制御回路とは異なる第4副制御回路を含み、
前記ヘッド群は、前記第3副制御回路によって駆動される第3ヘッドと、前記第4副制御回路によって駆動される第4ヘッドとを含み、
前記第4副制御回路が前記第4副制御回路又は前記第4ヘッドに異常が発生したか否かを判定し、
前記第4副制御回路又は前記第4ヘッドに異常が発生したと前記第4副制御回路が判定した場合、前記第4副制御回路は前記第2副制御回路に前記停止信号を送信し、
前記第2副制御回路が前記第1副制御回路及び前記第4副制御回路から前記停止信号を受信した場合、前記第2副制御回路は前記第2ヘッドの駆動を停止させ、かつ、前記停止信号を送信しない
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記副制御回路群は最下流の副制御回路を含み、
前記最下流の副制御回路が前記停止信号を受信した場合、前記最下流の副制御回路は前記停止信号を送信しない
請求項1から3のいずれか一つに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記主制御回路と前記副制御回路群とを接続し、前記印刷データの通信を行うためのデータ通信路を備え、
前記第1ヘッドは、インクを吐出するノズルを有し、
前記異常が前記第1ヘッドの前記ノズルからのインクの不吐出である場合、前記第1副制御回路は前記データ通信路を使用して前記停止信号を送信する
請求項1から3のいずれか一つに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1副制御回路は前記データ通信路を使用して、前記不吐出に関する情報を送信する
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記主制御回路は、
前記主制御回路が前記情報を受信した場合、前記情報に基づいて前記ヘッド群の停止後に実行する処理を示す信号を前記副制御回路群に送信する
請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第1副制御回路は、前記第1ヘッドの前記ノズルからのインクの不吐出が検出されたか否かを判定する
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記主制御回路と前記副制御回路群とを接続し、前記停止信号を送信するための信号路を備え、
前記異常が前記印刷データの通信に関する異常である場合、前記第1副制御回路は前記信号路を使用して前記停止信号を送信する
請求項1から3のいずれか一つに記載の印刷装置。
【請求項10】
主制御回路と、前記主制御回路に直列的に接続され、前記主制御回路からの印刷データを上流から下流に転送する副制御回路群と、前記副制御回路群によって駆動されるヘッド群とを備え、前記副制御回路群は、第1副制御回路と、前記第1副制御回路の上流側又は下流側に接続される第2副制御回路とを含み、前記ヘッド群は、前記第1副制御回路によって駆動される第1ヘッドと、前記第2副制御回路によって駆動される第2ヘッドとを含む印刷装置にて実行される異常処理方法であって、
前記第1副制御回路又は前記第1ヘッドに異常が発生した場合、前記第1副制御回路は前記第2副制御回路に前記ヘッド群を停止させる停止信号を送信する
異常処理方法。
【請求項11】
主制御回路と、前記主制御回路に直列的に接続され、前記主制御回路からの印刷データを上流から下流に転送する副制御回路群と、前記副制御回路群によって駆動されるヘッド群とを備え、前記副制御回路群は、第1副制御回路と、前記第1副制御回路の上流側又は下流側に接続される第2副制御回路とを含み、前記ヘッド群は、前記第1副制御回路によって駆動される第1ヘッドと、前記第2副制御回路によって駆動される第2ヘッドとを含む印刷装置にて実行されるコンピュータプログラムであって、
前記印刷装置に、
前記第1副制御回路又は前記第1ヘッドに異常が発生した場合、前記第1副制御回路は前記第2副制御回路に前記ヘッド群を停止させる停止信号を送信する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ヘッドから液体を吐出して印刷を行う印刷装置と、前記印刷装置にて実行される異常処理方法及びコンピュータプログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
本体部と、複数の素子基板とを直列に接続した記録装置が提案されている。素子基板はエラー検出回路と、エラー出力回路とを備える。エラー検出回路の検出結果はエラー出力回路に入力される。第1の素子基板のエラー出力回路は、下流側の第2の素子基板のエラー出力回路に前記検出結果を出力する。第2の素子基板のエラー出力回路は、第1の素子基板から入力された前記検出結果がエラーを示す場合、第2の素子基板のエラー検出回路の検出結果に拘わらず、エラーを示す検出結果を更に下流の第3の素子基板のエラー出力回路に出力する。最下流の素子基板のエラー出力回路から本体部にエラーを示す検出結果が入力された場合、本体部は、例えば記録媒体の搬送を停止することができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-255670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エラーを示す検出結果が入力された後、本体部は記録媒体の搬送を停止する。そのため、エラー発生後、本体部が前記搬送の停止を実行するまで印刷が継続され、インク及び記録媒体が不要に消費されるおそれがある。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、印刷を中止する異常が発生した場合に、インク又は記録媒体の不要な消費を抑制することができる印刷装置、異常処理方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る印刷装置は、主制御回路と、前記主制御回路に直列的に接続され、前記主制御回路からの印刷データを上流から下流に転送する副制御回路群と、前記副制御回路群によって駆動されるヘッド群とを備え、前記副制御回路群は、第1副制御回路と、前記第1副制御回路の上流側又は下流側に接続される第2副制御回路とを含み、前記ヘッド群は、前記第1副制御回路によって駆動される第1ヘッドと、前記第2副制御回路によって駆動される第2ヘッドとを含み、前記第1副制御回路又は前記第1ヘッドに異常が発生した場合、前記第1副制御回路は前記第2副制御回路に前記ヘッド群を停止させる停止信号を送信する。
【0007】
本開示の一実施形態に係る異常処理方法は、主制御回路と、前記主制御回路に直列的に接続され、前記主制御回路からの印刷データを上流から下流に転送する副制御回路群と、前記副制御回路群によって駆動されるヘッド群とを備え、前記副制御回路群は、第1副制御回路と、前記第1副制御回路の上流側又は下流側に接続される第2副制御回路とを含み、前記ヘッド群は、前記第1副制御回路によって駆動される第1ヘッドと、前記第2副制御回路によって駆動される第2ヘッドとを含む印刷装置にて実行される異常処理方法であって、前記第1副制御回路又は前記第1ヘッドに異常が発生した場合、前記第1副制御回路は前記第2副制御回路に前記ヘッド群を停止させる停止信号を送信する。
【0008】
本開示の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、主制御回路と、前記主制御回路に直列的に接続され、前記主制御回路からの印刷データを上流から下流に転送する副制御回路群と、前記副制御回路群によって駆動されるヘッド群とを備え、前記副制御回路群は、第1副制御回路と、前記第1副制御回路の上流側又は下流側に接続される第2副制御回路とを含み、前記ヘッド群は、前記第1副制御回路によって駆動される第1ヘッドと、前記第2副制御回路によって駆動される第2ヘッドとを含む印刷装置にて実行されるコンピュータプログラムであって、前記印刷装置に、前記第1副制御回路又は前記第1ヘッドに異常が発生した場合、前記第1副制御回路は前記第2副制御回路に前記ヘッド群を停止させる停止信号を送信する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態に係る印刷装置、異常処理方法及びコンピュータプログラムにあっては、第1副制御回路が異常を検知した場合、第1副制御回路は第2副制御回路にヘッド群を停止させる停止信号を送信する。各副制御回路に停止信号が転送されるので、各副制御回路は主制御回路からの停止指令無しに各ヘッドを停止させて、インク又は記録媒体の不要な消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る印刷装置の略示平面図である。
図2】インクジェットヘッドの平面透視図である。
図3】制御装置及びインクジェットヘッドのブロック図である。
図4】第kヘッドモジュールのブロック図である
図5】SoC(k)による異常処理方法を説明するフローチャートである。
図6】主制御回路による異常処理方法を説明するフローチャートである。
図7】実施の形態2に係る制御装置及びインクジェットヘッドのブロック図である。
図8】第kヘッドモジュールのブロック図である。
図9】SoC(k)による異常処理方法を説明するフローチャートである。
図10】主制御回路による異常処理方法を説明するフローチャートである。
図11】実施の形態3に係るSoC(k)による異常処理方法を説明するフローチャートである。
図12】主制御回路による異常処理方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。図1は、印刷装置1の略示平面図である。図1において、記録用紙100の搬送方向は印刷装置1の前後方向に対応する。また記録用紙100の幅方向は印刷装置1の左右方向に対応する。また前後方向及び左右方向と直交する方向、即ち図1の紙面垂直方向は印刷装置1の上下方向に対応する。
【0012】
図1に示すように、印刷装置1は、ケース2内に収容されたプラテン3、四つのインクジェットヘッド4、二つの搬送ローラ5、6、及び制御装置7等を備える。プラテン3の上面を、記録用紙100が通過する。四つのインクジェットヘッド4は、プラテン3の上方において、搬送方向に並んでいる。各インクジェットヘッド4は、いわゆるラインタイプのヘッドである。インクジェットヘッド4には、インクタンク(図示略)からインクが供給される。四つのインクジェットヘッド4には、異なる色のインクが供給される。
【0013】
図1に示すように、二つの搬送ローラ5、6は、プラテン3に対して後側と前側にそれぞれ配置されている。二つの搬送ローラ5、6は、図示しないモータによってそれぞれ駆動され、プラテン3上の記録用紙100を前方へ搬送する。
【0014】
図2は、インクジェットヘッド4の平面透視図である。インクジェットヘッド4は複数のヘッドを備える。複数のヘッド42は、前後方向に2列で配置されている。前側の列では、左右方向に沿って4個のヘッド42が配置され、後側の列では、左右方向に沿って5個のヘッドが配置されている。ヘッド42の下面には複数のノズル42aが設けられている。インクジェットヘッド4は駆動機構(図示略)を備え、該駆動機構によってフラッシング受け(図示略)まで移動することができる。
【0015】
図3は、制御装置7及びインクジェットヘッド4のブロック図である。制御装置7は主制御回路7aを備える。主制御回路7aは制御部7b、記憶部7c、及び通信インタフェース(I/F)7dを備える。制御部7bはロジック回路、例えばFPGAを備える。なお制御部7bはプロセッサ、例えばCPU、又はASIC等を備えてもよい。記憶部7cは主記憶装置及び補助記憶装置を含む。主記憶装置としては例えばRAMが挙げられる。補助記憶装置としては、例えばROM及び書き換え可能な記憶媒体、例えばEEPROM、EPROM、ハードディスク等が挙げられる。補助記憶装置に制御プログラムが記憶される。制御部7bは補助記憶装置から主記憶装置に制御プログラムを読み出して実行する。制御プログラムは記録媒体70(図1参照)、例えば光ディスク、持ち運び可能なフラッシュメモリから補助記憶装置にインストールされてもよい。なお制御プログラムは、印刷装置1に通信ネットワークを介して接続されたサーバから補助記憶装置にダウンロードされてもよい。通信I/F7dはデータ通信路51に接続される。制御装置7は、制御プログラムに基づいて、印刷装置1を制御する。
【0016】
インクジェットヘッド4は、複数のヘッドモジュール40を備える。複数のヘッドモジュール40は、例えば左右方向に一列に並び、データ通信路51を介して直列に接続される。複数のヘッドモジュール40は、例えば、第1ヘッドモジュール40(1)、第2ヘッドモジュール40(2)、第3ヘッドモジュール40(3)、・・・、第nヘッドモジュール40(n)を有する(nは自然数)。第1ヘッドモジュール40(1)は最も左に位置し、第nヘッドモジュール40(n)は最も右に位置する。第1ヘッドモジュール40(1)が全ヘッドモジュール40の中で制御装置7に最も近い位置にあり、第nヘッドモジュール40(n)が全ヘッドモジュール40の中で制御装置7から最も遠い位置にある。
【0017】
図4は、第kヘッドモジュール40(k)のブロック図である(kはn以下の自然数)。第kヘッドモジュール40(k)は、SoC41と、ヘッド42と、センサ43とを備える。以下、第kヘッドモジュール40(k)のSoC41をSoC(k)と、ヘッド42をヘッド(k)とも称する。SoC(k)は副制御回路に対応する。SoC(k)は、制御部41a、記憶部41b、上流側の通信I/F41c、下流側の通信I/F41dを備える。制御部41aは例えばロジック回路又はプロセッサを備える。記憶部41bは、EEPROM、EPROM、ハードディスク等の書き換え可能な記憶媒体、ROM及びRAM等を含む。通信I/F41c、41dはデータ通信路51に接続される。SoC(k)は副制御回路を構成する。複数のSoC、即ちSoC(1)~SoC(n)は副制御回路群410を構成し、複数のヘッド42、即ちヘッド(1)~ヘッド(n)はヘッド群420を構成する(図3参照)。
【0018】
センサ43は、ノズル42aの不吐出を検出するためのセンサであり、例えばCMOSイメージセンサを備える。センサ43は記録用紙100に形成された画像を検出し、SoC(k)に送信する。SoC(k)は画像に基づいて、各ノズル42aが不吐出の状態であるか否か判定する。なおセンサ43を用いずにノズル42aが不吐出の状態であるか否か判定してもよい。例えば、ノズル42aは圧力室、振動板及び電極を備え、電極に電圧を印加することによって振動板は振動し、ノズル42aから液体が吐出される。電極への電圧印加後、振動板は残留振動(自由振動)する。残留振動による波形、即ち残留波に基づいて、ノズル42aが不吐出の状態であるか否か判定してもよい。インクの粘度が増加した場合、残留振動の減衰が大きくなり、ノズル42aからインクを吐出しにくくなる。インクの粘度が所定の粘度よりも大きくなった場合、ノズル42aが不吐出の状態であると判断できる。またノズル42aは共通電極と、個別電極と、共通電極及び個別電極の間に挟まれた圧電体とを備えている。印刷装置に圧電体の静電容量を検出する容量検出回路を設けて、容量検出回路によって検出された静電容量に基づいて、ノズル42aが不吐出の状態であるか否か判定してもよい。静電容量はノズル42aの温度に対応し、温度が所定温度よりも高くなった場合、ノズル42aが不吐出の状態であると判断できる。
【0019】
各I/F7d、41c、41dは双方向通信可能なインタフェースであり、データ通信路51によって、直列的に接続されている。データ通信路51は、画像データを含む印刷データ、各ヘッドモジュール40の状態を示すステータスデータ及び同期信号等を送信するための配線である。例えば、I/F7eは印刷データに含まれる画像データをSoC(1)の通信I/F41cに送信する。SoC(1)の通信I/F41dは画像データをSoC(2)の通信I/F41cに転送し、SoC(2)の通信I/F41dはSoC(3)の通信I/F41cに送信する。このようにして、画像データはSoC(n)の通信I/F41cまで順に転送される。
【0020】
画像データは、SoC(1)~SoC(n)それぞれの識別子と、各識別子に紐づけられた画像情報とを含む。例えばSoC(1)~SoC(n)の制御部41aは、受信した画像データから自身の識別子に紐づけられた画像情報を取得する。SoC(1)~SoC(n)の制御部41aは画像データ全体を下流側のSoCに転送してもよいし、取得した画像情報(自身の識別子に紐づけられた画像情報)を除いた画像データを下流側のSoCに転送してもよい。
【0021】
搬送ローラ5、6はモータ(図示略)を備え、前記モータにはエンコーダ(図示略)が設けられている。エンコーダは前記モータの回転位置又は速度を検出する。モータの回転位置又は速度は記録用紙100の前後位置に対応し、エンコーダは印刷位置(記録用紙100における1ラインの印刷を行うべき位置)に対応した回転位置又は速度を検出する都度、主制御回路7aに同期信号を送信する。主制御回路7aは、必要に応じて、同期信号をSoC(1)~(n)に送信する。各SoC(1)~(n)は同期信号が示す時点にて、ヘッド(1)~(n)を駆動させ、インクをノズル42aから吐出させる。
【0022】
SoC(k)は異常が発生しているか否か判定する。例えば、SoC(k)はセンサ43の検出結果に基づいて、ヘッド(k)の各ノズル42aが不吐出の状態であるか否か判定する。いずれかのノズル42aが不吐出の状態である場合、異常が発生していると判定する。
【0023】
ヘッド(k)のいずれかのノズル42aが不吐出の状態であると判定した場合、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させ、ノズルからのインクの吐出を停止させ、不吐出信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)及び第k+1ヘッドモジュール40(k+1)に送信する。ここで不吐出信号は、いずれかのノズル42aが不吐出の状態であることを示す。
【0024】
第k-1ヘッドモジュール40(k-1)から第1ヘッドモジュール40(1)まで不吐出信号は順に転送される。SoC(k-1)~(1)はヘッド(k-1)~(1)の駆動を停止させ、ノズルからのインクの吐出を停止させる。第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から第nヘッドモジュール40(n)まで不吐出信号は順に転送される。SoC(k+1)~(n)はヘッド(k+1)~(n)の駆動を停止させ、ノズルからのインクの吐出を停止させる。即ち、第kヘッドモジュール40(k)から上流側及び下流側に不吐出信号が送信され、第1ヘッドモジュール40(1)及び第nヘッドモジュール40(n)まで不吐出信号が送信され、各ヘッド(1)~(n)の駆動が停止される。
【0025】
SoC(1)は、不吐出信号を受信した場合、主制御回路7aに不吐出信号を送信する。主制御回路7aはメンテナンス指示を、例えばインクジェットヘッド4の駆動機構に送信する。インクジェットヘッド4はフラッシング受け(図示略)の上側に移動する。ヘッド(k)はフラッシングを行う。
【0026】
例えば、SoC(k)は、第k+1ヘッドモジュール40(k+1)に印刷データを送信した後、所定時間内に、第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から受信確認を取得できない場合、第kヘッドモジュール40(k)と第k+1ヘッドモジュール40(k+1)との間で通信異常が生じている、即ち異常が発生していると判定する。通信異常の原因としては、例えば断線又は通信制御ソフトウェアの不具合が挙げられる。
【0027】
第kヘッドモジュール40(k)と第k+1ヘッドモジュール40(k+1)との間で通信異常が発生していると判定した場合、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させ、ノズルからのインクの吐出を停止させ、通信異常信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)に送信する。ここで通信異常信号は、第kヘッドモジュール40(k)よりも下流側にて通信異常が発生していることを示す。
【0028】
第k-1ヘッドモジュール40(k-1)から第1ヘッドモジュール40(1)まで通信異常信号は順に転送される。SoC(k-1)~(1)はヘッド(k-1)~(1)の駆動を停止させ、ノズルからのインクの吐出を停止させる。即ち、第kヘッドモジュール40(k)から上流側に不吐出信号が送信され、ヘッド(k-1)~(1)の駆動が停止される。なお通信異常によって、第k+1ヘッドモジュール40(k+1)~第nヘッドモジュール40(n)、即ち第kヘッドモジュール40(k)よりも下流側に印刷データは送信されず、ヘッド(k+1)~ヘッド(n)は駆動しない。
【0029】
SoC(1)は、通信異常信号を受信した場合、主制御回路7aに通信異常信号を送信する。主制御回路7aは表示部(図示略)に通信異常が発生したことを表示させる。ユーザは通信異常の発生を確認することができる。
【0030】
図5は、SoC(k)による異常処理方法を説明するフローチャートである。SoC(k)は印刷データを受信したか否か判定する(S1)。印刷データを受信していない場合(S1:NO)、SoC(k)はステップS1に処理を戻す。印刷データを受信している場合(S1:YES)、SoC(k)は印刷開始信号を制御装置7から受信したか否か判定する(S2)。印刷開始信号を受信していない場合(S2:NO)、SoC(k)はステップS2に処理を戻す。
【0031】
印刷開始信号を受信した場合(S2:YES)、SoC(k)はヘッド(k)を駆動させて、インクの吐出を開始する(S3)。SoC(k)は印刷が終了したか否か判定する(S4)。印刷が終了した場合(S4:YES)、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて、インクの吐出を停止し(S11)、処理を終了する。SoC(k)は印刷終了信号を、第k-1ヘッドモジュール40(k-1)に、即ち上流側のヘッドモジュール40に送信する。
【0032】
印刷終了信号を受信していない場合(S4:NO)、SoC(k)は第kヘッドモジュール40(k)に異常が発生したか否か判定する(S5)。例えばセンサ43の検出結果残留波又は静電容量に基づいて、ヘッド(k)のノズル42aについてインクの不吐出が検出されたか否かを判定する。例えば第kヘッドモジュール40(k)と第k+1ヘッドモジュール40(k+1)との間で通信異常が発生した否か判定する。異常が発生した場合(S5:YES)、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて、インクの吐出を停止し(S6)、異常が発生したことを示す信号(以下、異常発生信号)を、データ通信路51を使用して第k-1ヘッドモジュール40(k-1)又は第k+1ヘッドモジュール40(k+1)に送信し(S7)、処理を終了する。ステップS6において、ヘッド(k)の駆動を停止した場合、SoC(k)は主制御回路7aにヘッド(k)の駆動を停止したことを通知する。異常発生信号は不吐出信号及び通信異常信号を含む。不吐出信号は、ステータスデータと共に送信される。ヘッドモジュール40の状態を示すステータスデータは、例えば不吐出のノズル42aの位置を示すアドレスデータ等を含む。異常発生信号は停止信号を構成する。ヘッドモジュール40の状態を示すステータスデータは不吐出に関する情報に対応する。
【0033】
異常発生信号が不吐出信号である場合、ステップS7において、SoC(k)は不吐出信号及び前記ステータスデータを、データ通信路51を使用して第k-1ヘッドモジュール40(k-1)及び第k+1ヘッドモジュール40(k+1)に送信する。異常発生信号が通信異常信号である場合、ステップS7において、SoC(k)は通信異常信号を、データ通信路51を使用して第k-1ヘッドモジュール40(k-1)に送信する。
【0034】
ステップS5において、異常が発生していない場合(S5:NO)、SoC(k)は異常発生信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)又は第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から受信したか否か判定する(S8)。異常発生信号を受信していない場合(S8:NO)、SoC(k)はステップS4に処理を戻す。異常発生信号を受信した場合(S8:YES)、SoC(k)はk-1ヘッドモジュール40(k-1)及び第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から、即ち上流側及び下流側の両側から異常発生信号を受信したか否か判定する(S9)。両側から異常発生信号を受信していない場合(S9:NO)、即ち上流側及び下流側のいずれか一方から異常発生信号を受信した場合、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて、インクの吐出を停止し(S6)、異常発生信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)又は第k+1ヘッドモジュール40(k+1)に送信し(S7)、処理を終了する。
【0035】
ステップS9において、第k-1ヘッドモジュール40(k-1)、即ち上流側からのみ異常発生信号を受信した場合(S9:NO)、ステップS7において、SoC(k)は異常発生信号を第k+1ヘッドモジュール40(k+1)、即ち下流側に送信する。この場合、SoC(k-1)は第1副制御回路を構成し、SoC(k)は第2副制御回路を構成し、SoC(k+1)は第3副制御回路を構成する。
【0036】
ステップS9において、第k+1ヘッドモジュール40(k+1)、即ち下流側からのみ異常発生信号を受信した場合(S9:NO)、ステップS7において、SoC(k)は異常発生信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)、即ち上流側に送信する。この場合、SoC(k+1)は第1副制御回路を構成し、SoC(k)は第2副制御回路を構成し、SoC(k-1)は第3副制御回路を構成する。
【0037】
上流側及び下流側の両側から異常発生信号を受信した場合(S9:YES)、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて(S10)、処理を終了する。SoC(k)は主制御回路7aにヘッド(k)の駆動を停止したことを通知する。SoC(k)が上流側及び下流側の両側から異常発生信号を受信した場合、第kヘッドモジュール40(k)よりも上流側及び下流側のヘッドモジュール40は異常発生信号を受信済みなので、SoC(k)は異常発生信号を送信しない。この場合、SoC(k+1)及びSoC(k-1)は第1副制御回路及び第4副制御回路を構成し、SoC(k)は第2副制御回路を構成する。
【0038】
ステップS8において、最下流のSoC41、即ちSoC(n)が異常発生信号を受信した場合(S8:YES)、SoC(n)はステップS7の処理、即ち異常発生信号の他のヘッドモジュール40への送信をしない。SoC(n)が異常発生信号を受信した場合、SoC(n)よりも上流の各ヘッドモジュール40は異常発生信号を受信済みであるか、異常が発生しているヘッドモジュール40であるからである。
【0039】
なおステップS5において、ヘッド(k)のいずれかのノズル42aが不吐出の状態であり、且つ第kヘッドモジュール40(k)と第k+1ヘッドモジュール40(k+1)との間で通信異常が発生している場合、即ち不吐出の異常と通信異常との両方が発生している場合、第k-1ヘッドモジュール40(k-1)から第1ヘッドモジュール40(1)まで不吐出信号及び通信異常信号は順に転送される。即ち、第kヘッドモジュール40(k)から上流側に不吐出信号及び通信異常信号は順に転送される。この場合、主制御回路7aはメンテナンス指示をインクジェットヘッド4の駆動機構に送信し、且つ表示部(図示略)に通信異常が発生したことを表示させる。
【0040】
なおステップS5において、異常が発生していると判定した後(S5:YES)、SoC(k)は異常発生信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)又は第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から受信したか否か判定してもよい。即ち、異常の発生と、異常発生信号の受信との両方が存在するか否か判定してもよい。前記両方が存在する場合、SoC(k)はステップS6及びステップS7の処理を実行する。この場合、SoC(k)は下流側から異常発生信号を受信した場合、ステップS7において上流側に異常発生信号を送信する。またSoC(k)は上流側から異常発生信号を受信した場合、ステップS7において下流側に異常発生信号を送信する。
【0041】
図6は、主制御回路7aによる異常処理方法を説明するフローチャートである。主制御回路7aは印刷データを第1ヘッドモジュール40(1)に送信し(S21)、印刷開始信号を第1ヘッドモジュール40(1)に送信する(S22)。印刷開始信号は第1ヘッドモジュール40(1)から下流側に転送され、第nヘッドモジュール40(n)まで転送される。主制御回路7aは印刷が終了したか否か判定する(S23)。例えば、全ヘッドモジュール40(1)~(n)から印刷終了信号を受信した場合、主制御回路7aは印刷が終了したと判定する。印刷が終了した場合(S23:YES)、主制御回路7aは処理を終了する。
【0042】
印刷が終了していない場合(S23:NO)、主制御回路7aは第1ヘッドモジュール40(1)から異常発生信号を受信したか否か判定する(S24)。異常発生信号を受信していない場合(S24:NO)、主制御回路7aはステップS23に処理を戻す。異常発生信号を受信した場合(S24:YES)、主制御回路7aは異常発生信号が通信異常を示すか否か判定する(S25)。通信異常を示す場合(S25:YES)、主制御回路7aは表示部に通信異常を表示させて(S26)、処理を終了する。
【0043】
通信異常を示さない場合(S25:NO)、即ちノズルの不吐出を示す場合、主制御回路7aはヘッド群420が停止したか判定する(S27)。例えば、各SoC(1)~(n)から各ヘッド(1)~(n)の駆動が停止したことを示す通知を受信した場合、主制御回路7aはヘッド群420が停止したと判定する。ヘッド群420が停止していない場合(S27:NO)、主制御回路7aはステップS27に処理を戻す。ヘッド群420が停止している場合(S27:YES)、主制御回路7aはインクジェットヘッド4の駆動機構及び不吐出のノズル42aを有するSoC41にメンテナンス指示を送信する(S28)。主制御回路7aは、ステータスデータに基づいて不吐出のノズル42aを特定し、不吐出のノズル42aを有するヘッド42のSoC41にメンテナンス指示を送信する。具体的には、主制御回路7aは不吐出のノズル42aのアドレスデータを記憶部7cに記憶させることで、不吐出のノズル42aを特定する。続いて、主制御回路7aは、不吐出のノズル42aのアドレスデータに基づき不吐出のノズル42aを含むヘッド42に関する情報を記憶部7cに記憶させる。例えば、ノズル42aのアドレスデータとヘッド42とを対応付けたテーブルを参照することで、該当するヘッド42をテーブルから読み出し、該当するヘッド42に関する情報を記憶部7cに記憶させる。これにより、主制御回路7aは、不吐出のノズル42aを有するヘッド42のSoC41にメンテナンス指示を送信することが可能となる。主制御回路7aはメンテナンス処理が終了したか否か判定する(S29)。メンテナンス処理は、ヘッド群の停止後に実行する処理である。例えば不吐出のノズル42aを有するヘッド42のフラッシングが終了し、インクジェットヘッド4がフラッシング受けから印刷のための位置に戻った場合、主制御回路7aはメンテナンス処理が終了したと判定する。メンテナンス処理が終了していない場合(S29:NO)、主制御回路7aはステップS29に処理を戻す。メンテナンス処理が終了した場合(S29:YES)、主制御回路7aは印刷データを生成し(S30)、ステップS21に処理を戻す。
【0044】
実施の形態1に係る印刷装置にあっては、SoC(k)が異常を検出した場合、SoC(k)はSoC(k-1)又はSoC(k-1)に異常発生信号(停止信号)を送信する。各SoC(1)~SoC(n)に異常発生信号が転送されるので、各SoC(1)~(n)は主制御回路7aからの停止指令無しに各ヘッド(1)~(n)を停止させて、インク又は記録媒体の不要な消費を抑制することができる。
【0045】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2の構成のうち、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図7は制御装置7及びインクジェットヘッド4のブロック図、図8は、第kヘッドモジュール40(k)のブロック図である。
【0046】
主制御回路7aは信号I/F7eを備える。第kヘッドモジュール40(k)は信号I/F41eと、信号I/F41fとを備える。信号I/F7eは信号路52を介して第1ヘッドモジュール40(1)の信号I/F41eに接続される。第kヘッドモジュール40(k)の信号I/F41eは信号路52を介して第k-1ヘッドモジュール40(k-1)の信号I/F41fに接続される。第kヘッドモジュール40(k)の信号I/F41fは信号路52を介して第k+1ヘッドモジュール40(k+1)の信号I/F41eに接続される。
【0047】
信号路52は、ヘッド群420を停止させる停止信号を送信するための配線であり、データ通信路51とは別の配線である。信号路52は、データ通信路51とは異なり、印刷データ、各ヘッドモジュール40の状態を示すステータスデータ及び同期信号を送信することはできない。停止信号のデータ量は異常発生信号よりも少ないので、信号路52の伝送速度はデータ通信路51よりも遅くすることができ、また停止信号は異常発生信号よりも短時間で目標とするヘッドモジュール40まで伝送されやすい。
【0048】
各ヘッドモジュール40は異常が発生した場合、停止信号を割込信号として、信号I/F41e、41fから信号路52に送信する。即ち、各ヘッドモジュール40は異常が発生した場合、割込信号(停止信号)を上流側及び下流側のヘッドモジュール40に送信する。
【0049】
図9は、SoC(k)による異常処理方法を説明するフローチャートである。SoC(k)は印刷データを受信したか否か判定する(S41)。印刷データを受信していない場合(S41:NO)、SoC(k)はステップS41に処理を戻す。印刷データを受信している場合(S41:YES)、SoC(k)は印刷開始信号を制御装置7から受信したか否か判定する(S42)。印刷開始信号を受信していない場合(S42:NO)、SoC(k)はステップS42に処理を戻す。
【0050】
印刷開始信号を受信した場合(S42:YES)、SoC(k)はヘッド(k)を駆動させて、インクの吐出を開始する(S43)。SoC(k)は印刷が終了したか否か判定する(S44)。印刷が終了した場合(S44:YES)、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて、インクの吐出を停止し(S48)、処理を終了する。SoC(k)は印刷終了信号を、第k-1ヘッドモジュール40(k-1)に、即ち上流側のヘッドモジュール40に送信する。
【0051】
印刷終了信号を受信していない場合(S44:NO)、SoC(k)は第kヘッドモジュール40(k)に異常が発生したか否か判定する(S45)。異常が発生した場合(S45:YES)、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて、インクの吐出を停止し(S46)、割込信号(停止信号)を、信号路52を使用して第k-1ヘッドモジュール40(k-1)及び第k+1ヘッドモジュール40(k+1)に送信する(S47)。即ちSoC(k)は割込信号を上流側及び下流側のヘッドモジュール40に送信し、処理を終了する。ステップS46において、ヘッド(k)の駆動を停止した場合、SoC(k)は主制御回路7aにヘッド(k)の駆動を停止したことを通知する。
【0052】
ステップS45において、異常が発生していない場合(S45:NO)、SoC(k)は割込信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)又は第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から受信したか否か判定する(S49)。割込信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)又は第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から受信していない場合(S49:NO)、SoC(k)はステップS44に処理を戻す。
【0053】
割込信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)又は第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から受信している場合(S49:YES)、SoC(k)はk-1ヘッドモジュール40(k-1)及び第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から、即ち上流側及び下流側の両側から割込信号を受信したか否か判定する(S50)。両側から割込信号を受信していない場合(S50:NO)、即ち上流側及び下流側のいずれか一方から割込信号を受信した場合、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて、インクの吐出を停止し(S46)、割込信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)又は第k+1ヘッドモジュール40(k+1)に送信し(S47)、処理を終了する。
【0054】
ステップS50において、第k-1ヘッドモジュール40(k-1)、即ち上流側からのみ割込信号を受信した場合(S50:NO)、ステップS47において、SoC(k)は割込信号を第k+1ヘッドモジュール40(k+1)、即ち下流側に送信する。
【0055】
ステップS50において、第k+1ヘッドモジュール40(k+1)、即ち下流側からのみ割込信号を受信した場合(S50:NO)、ステップS47において、SoC(k)は割込信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)、即ち上流側に送信する。
【0056】
上流側及び下流側の両側から割込信号を受信した場合(S50:YES)、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて(S51)、処理を終了する。SoC(k)が上流側及び下流側の両側から割込信号を受信した場合、第kヘッドモジュール40(k)よりも上流側及び下流側のヘッドモジュール40は割込信号を受信済みなので、SoC(k)は割込信号を送信しない。ステップS51において、ヘッド(k)の駆動を停止した場合、SoC(k)は主制御回路7aにヘッド(k)の駆動を停止したことを通知する。
【0057】
図10は主制御回路7aによる異常処理方法を説明するフローチャートである。主制御回路7aは印刷データを第1ヘッドモジュール40(1)に送信し(S61)、印刷開始信号を第1ヘッドモジュール40(1)に送信する(S62)。印刷開始信号は第1ヘッドモジュール40(1)から下流側に転送され、第nヘッドモジュール40(n)まで転送される。主制御回路7aは印刷が終了したか否か判定する(S63)。例えば、全ヘッドモジュール40(1)~(n)から印刷終了信号を受信した場合、主制御回路7aは印刷が終了したと判定する。印刷が終了した場合(S63:YES)、主制御回路7aは処理を終了する。
【0058】
印刷が終了していない場合(S63:NO)、主制御回路7aは第1ヘッドモジュール40(1)から割込信号を受信したか否か判定する(S64)。割込信号を受信していない場合(S64:NO)、主制御回路7aはステップS63に処理を戻す。割込信号を受信した場合(S64:YES)、主制御回路7aは表示部に異常の発生を表示させて(S65)、処理を終了する。
【0059】
割込信号はヘッド群420を停止させる停止信号であり、異常の内容を示すものではない。そのため、主制御回路7aは割込信号を解析しても、異常の内容を把握することはできず、メンテナンス処理又は通信異常の表示を行うことはできない。
【0060】
割込信号は、データ通信路51とは異なる信号路52を介して送信される。そのため、例えば第kヘッドモジュール40(k)と、第k+1ヘッドモジュール40(k+1)との間のデータ通信路51に通信異常が発生した場合であっても、第kヘッドモジュール40(k)は、第k+1ヘッドモジュール40(k+1)及びそれよりも下流側のヘッドモジュール40に割込信号を送信することができる。
【0061】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。実施の形態3に係る構成のうち、実施の形態2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図11は、SoC(k)による異常処理方法を説明するフローチャートである。
【0062】
SoC(k)は印刷データを受信したか否か判定する(S71)。印刷データを受信していない場合(S71:NO)、SoC(k)はステップS71に処理を戻す。印刷データを受信している場合(S71:YES)、SoC(k)は印刷開始信号を制御装置7から受信したか否か判定する(S72)。印刷開始信号を受信していない場合(S72:NO)、SoC(k)はステップS72に処理を戻す。
【0063】
印刷開始信号を受信した場合(S72:YES)、SoC(k)はヘッド(k)を駆動させて、インクの吐出を開始する(S73)。SoC(k)は印刷が終了したか否か判定する(S74)。印刷が終了した場合(S74:YES)、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて、インクの吐出を停止し(S79)、処理を終了する。SoC(k)は印刷終了信号を、第k-1ヘッドモジュール40(k-1)に、即ち上流側のヘッドモジュール40に送信する。
【0064】
印刷終了信号を受信していない場合(S74:NO)、SoC(k)は第kヘッドモジュール40(k)に異常が発生したか否か判定する(S75)。異常が発生した場合(S75:YES)、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて、インクの吐出を停止する(S76)。SoC(k)は主制御回路7aにヘッド(k)の駆動を停止したことを通知する。SoC(k)は、発生した異常が通信異常であるか否か判定する(S77)。通信異常である場合(S77:YES)、SoC(k)は信号路52を使用して割込信号(停止信号)を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)及び第k+1ヘッドモジュール40(k+1)に送信する(S78)。即ちSoC(k)は割込信号を上流側及び下流側のヘッドモジュール40に送信し、処理を終了する。ステップS77において、通信異常でない場合(S77:NO)、即ち、発生した異常がノズル42aの不吐出である場合、SoC(k)はデータ通信路51を使用して、不吐出信号及び第kヘッドモジュール40(k)の状態を示すステータスデータ等を上流側及び下流側のヘッドモジュール40に送信し(S80)、処理を終了する。
【0065】
ステップS75において、異常が発生していない場合(S75:NO)、SoC(k)は異常発生信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)又は第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から受信したか否か判定する(S81)。異常発生信号を受信していない場合(S81:NO)、SoC(k)はステップS74に処理を戻す。異常発生信号を受信した場合(S81:YES)、SoC(k)はk-1ヘッドモジュール40(k-1)及び第k+1ヘッドモジュール40(k+1)から、即ち上流側及び下流側の両側から異常発生信号を受信したか否か判定する(S82)。
【0066】
両側から異常発生信号を受信していない場合(S82:NO)、即ち上流側及び下流側のいずれか一方から異常発生信号を受信した場合、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて、インクの吐出を停止し(S76)ステップS77、S78及びS80に処理を進める。ステップS78において、上流側から割込信号を受信した場合、SoC(k)は割込信号を第k+1ヘッドモジュール40(k+1)に送信し、下流側から割込信号を受信した場合、SoC(k)は割込信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)に送信する。ステップS80において、上流側から割込信号を受信した場合、SoC(k)は不吐出信号を第k+1ヘッドモジュール40(k+1)に送信し、下流側から不吐出信号を受信した場合、SoC(k)は不吐出信号を第k-1ヘッドモジュール40(k-1)に送信する。
【0067】
ステップS82において、両側から異常発生信号を受信している場合(S82:YES)、SoC(k)はヘッド(k)の駆動を停止させて、インクの吐出を停止し(S83)、処理を終了する。SoC(k)は主制御回路7aにヘッド(k)の駆動を停止したことを通知する。
【0068】
図12は主制御回路7aによる異常処理方法を説明するフローチャートである。主制御回路7aは印刷データを第1ヘッドモジュール40(1)に送信し(S91)、印刷開始信号を第1ヘッドモジュール40(1)に送信する(S92)。印刷開始信号は第1ヘッドモジュール40(1)から下流側に転送され、第nヘッドモジュール40(n)まで転送される。主制御回路7aは印刷が終了したか否か判定する(S93)。例えば、全ヘッドモジュール40(1)~(n)から印刷終了信号を受信した場合、主制御回路7aは印刷が終了したと判定する。印刷が終了した場合(S93:YES)、主制御回路7aは処理を終了する。
【0069】
印刷が終了していない場合(S93:NO)、主制御回路7aは第1ヘッドモジュール40(1)から割込信号を受信したか否か判定する(S94)。割込信号を受信した場合(S94:YES)、主制御回路7aは表示部に通信異常を表示させて(S95)、処理を終了する。ステップS94において割込信号を受信していない場合(S94:NO)、主制御回路7aは不吐出信号を受信したか否か判定する(S96)。不吐出信号を受信していない場合(S96:NO)、主制御回路7aはステップS93に処理を戻す。
【0070】
ステップS96において、不吐出信号を受信している場合(S96:YES)、主制御回路7aはヘッド群420が停止したか判定する(S97)。ヘッド群420が停止していない場合(S97:NO)、主制御回路7aはステップS97に処理を戻す。ヘッド群420が停止している場合(S97:YES)、主制御回路7aはインクジェットヘッド4の駆動機構にメンテナンス指示を送信する(S98)。主制御回路7aはメンテナンスが終了したか否か判定する(S99)。例えばヘッド(k)のフラッシングが終了し、インクジェットヘッド4がフラッシング受けから印刷のための位置に戻った場合、主制御回路7aはメンテナンスが終了したと判定する。メンテナンスが終了していない場合(S99:NO)、主制御回路7aはステップS99に処理を戻す。メンテナンスが終了した場合(S99:YES)、主制御回路7aは印刷データを生成し(S100)、ステップS91に処理を戻す。
【0071】
SoC(k)は通信異常が発生している場合、ヘッド(k)のノズル42aからの吐出を停止し、信号路52を介して割込信号を他のヘッドモジュール40に送信する(S75~S78)。SoC(k)はヘッド(k)のノズル42aが不吐出の状態にある場合、ヘッド(k)のノズル42aからの吐出を停止し、データ通信路51を介して不吐出信号を他のヘッドモジュール40に送信する(S75~S77、S80)。通信が可能な状態にある場合はデータ通信路51を使用することによって、SoC(k)は不吐出信号のみならず、ヘッドモジュール40の状態を示すステータスデータを送信し、より詳細な情報を送信することができる。通信異常が発生している場合、信号路52を使用することによって、SoC(k)は割込信号(停止信号)を他のヘッドモジュール40に送信し、各ヘッドモジュール40のノズル42aの吐出を速やかに停止させることができる。
【0072】
コンピュータプログラム(制御プログラム)は、単一のコンピュータ上で、または1つのサイトに配置されるか、若しくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0073】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 印刷装置
7 制御装置
7a 主制御回路
7d 通信I/F
7e 信号I/F
41 SoC(副制御回路)
41c、41d 通信I/F
41e、41f 信号I/F
42 ヘッド
42a ノズル
410 副制御回路群
420 ヘッド群
51 データ通信路
52 信号路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12